(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】データ作成装置、データ作成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230529BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20230529BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230529BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230529BHJP
【FI】
G06Q50/06
G16Y10/35
G16Y20/20
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021206339
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2019063780の分割
【原出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502167083
【氏名又は名称】株式会社管総研
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘
(72)【発明者】
【氏名】平田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】大江 真理子
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-362105(JP,A)
【文献】特開2002-372200(JP,A)
【文献】特開平06-203112(JP,A)
【文献】特開2009-238210(JP,A)
【文献】特開2006-118198(JP,A)
【文献】特開2006-125114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16Y 10/35
G16Y 20/20
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管網について解析を行うために用いるデータ作成装置であって、
前記配管網を構成する複数の管のうち、口径が不明な管を属性不明管として特定する属性不明管特定部と、
前記属性不明管における両端のそれぞれについて始点または終点とすると、前記属性不明管の前記始点に口径が既知の属性既知管が複数接続されているとともに、前記属性不明管の前記終点に接続されている管が存在しない場合に補完可能と判断する属性補完可否判断部と、
前記属性補完可否判断部が補完可能と判断した場合、前記属性不明管に係る属性を、前記複数接続されている属性既知管の口径のうち最も小さい口径を前記属性不明管の属性として補完する属性補完部と、
前記属性補完部により補完された前記属性不明管の属性を含むよう、前記配管網を構成する複数の管に係る属性を示す配管網属性データを作成する配管網属性データ作成部と、を備えていることを特徴とするデータ作成装置。
【請求項2】
データ作成装置が実行する、配管網について解析を行うために用いるデータ作成方法であって、
前記データ作成装置の属性不明管特定部が、前記配管網を構成する複数の管のうち、口径が不明な管を属性不明管として特定する属性不明管特定ステップと、
前記属性不明管における両端のそれぞれについて始点または終点とすると、
前記データ作成装置の属性補完可否判断部が、前記属性不明管の前記始点に口径が既知の属性既知管が複数接続されているとともに、前記属性不明管の前記終点に接続されている管が存在しない場合に補完可能と判断する属性補完可否判断ステップと、
前記属性補完可否判断ステップにおいて補完可能と判断された場合、
前記データ作成装置の属性補完部が、前記属性不明管に係る属性を、前記複数接続されている属性既知管の口径のうち最も小さい口径を前記属性不明管の属性として補完する属性補完ステップと、
前記データ作成装置の配管網属性データ作成部が、前記属性補完ステップにより補完された前記属性不明管の属性を含むよう、前記配管網を構成する複数の管に係る属性を示す配管網属性データを作成する配管網属性データ作成ステップと、を含むことを特徴とするデータ作成方法。
【請求項3】
請求項
1に記載のデータ作成装置における各部としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ作成装置、データ作成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道等の配管網について水理解析または管網評価を行う場合、マッピングシステムの管網データが活用されている。管網データとは、配管網を構成する複数の管の管種、口径、および布設年度等である属性を示すデータである。
【0003】
管網データ中に属性が不明な管が存在する場合、当該管に対して補完を行うことが一般的である。補完とは、属性が既知である周囲の管の属性に基づいて、属性が不明な管の属性を推定することである。しかしながら、現状補完についての明確なルールは存在せず、補完を行う計画者の経験および類似事例を参考に管の属性が判断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように計画者が補完を行う場合、補完される属性に計画者の個人的な傾向が反映される可能性がある。これにより計画者ごとに補完された管網データについてずれが生じる恐れがある。また、補完された管の属性は、管網解析システムによって検証されるが、上記のようなずれが生じていた場合、補完が適切ではないとされ、再度補完を繰り返すことが必要となる。さらに、適切な補完を行うにあたって、経験の豊かな計画者を配置する、または類似事例を調査するとしても、それに伴う人件費が嵩み、現実的ではない側面がある。
【0005】
本発明の一態様は、管路属性を効率的に補完することができるデータ作成装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るデータ作成装置は、配管網について解析を行うために用いるデータ作成装置であって、前記配管網を構成する複数の管のうち、属性が不明な管を属性不明管として特定する属性不明管特定部と、前記配管網のうち、属性について既知である属性既知管の属性から、前記属性不明管に係る属性の補完可否を判断する属性補完可否判断部と、前記属性補完可否判断部が補完可能と判断した場合、前記属性不明管に係る属性を、前記属性既知管に係る属性に基づき補完する属性補完部と、前記属性補完部により補完された前記属性不明管の属性を含むよう、前記配管網を構成する複数の管に係る属性を示す配管網属性データを作成する配管網属性データ作成部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、管路属性を効率的に補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係るデータ作成装置のブロック図である。
【
図2】管が一直線に接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【
図3】属性不明管の始点に複数の属性既知管が接続されているとともに、終点には接続されている管が存在しない場合の配管網の一例を示す概略図である。
【
図4】布設年度について補完を行う場合の補完条件を示す図である。
【
図5】ある属性不明管の始点および終点に複数の管が接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【
図6】管種について補完を行う場合の補完条件を示す図である。
【
図7】ある属性不明管の始点及び終点に複数の管が接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図7を用いて詳細に説明する。
【0010】
(データ作成装置1の構造)
図1は、データ作成装置1の構造を示すブロック図である。
図1に示すように、データ作成装置1は、制御部2、入力部3、および記憶部4を備えている。データ作成装置1は、配管網について解析を行うために、入力部3で管網データを取得し、制御部2で管網データに基づいて補完および配管網属性データの作成を行い、作成した配管網データを記憶部4に記憶する。
【0011】
ここで、管網データとは、ある配管網を構成する複数の管の配置および管に係る属性を示すデータであり、配管網属性データとは、制御部2において補完された管に係る属性を含む管網データを示すデータである。また、管に係る属性には、少なくとも(1)管種、(2)口径、および(3)布設年度の3要素が含まれている。
【0012】
図1に示すように、制御部2は、属性不明管特定部5、属性補完可否判断部6、属性補完部7、および配管網属性データ作成部8を備えている。また、制御部2は、入力部3から管網データを取得する。
【0013】
属性不明管特定部5は、管網データに基づいて、配管網を構成する複数の管の中で属性が不明な管を属性不明管として特定する。なお、属性不明管とは異なり、属性について既知である管を属性既知管と称する。属性不明管特定部5は、特定した属性不明管の配置および不明な属性の情報を属性補完可否判断部6に出力する。
【0014】
属性補完可否判断部6は、管網データおよび属性不明管特定部5から取得した属性不明管の配置および不明な属性の情報に基づいて、属性既知管の属性から当該属性不明管に係る属性の補完可否を判断する。また、属性補完可否判断部6は、配管網属性データ作成部8から配管網属性データを取得し、配管網属性データ内の属性不明管に係る属性の補完可否を判断する。属性補完可否判断部6は、上記の補完可否に係る判断結果を属性補完部7に出力する。
【0015】
属性補完部7は、属性補完可否判断部6から、上記の補完可否に係る判断結果を取得する。属性不明管について、補完が可能であると判断された場合、属性補完部7は管網データを参照し、当該属性不明管に係る属性を、属性既知管に係る属性に基づき補完する。また、属性補完部7は、補完した属性不明管に係る属性を配管網属性データ作成部8に出力する。
【0016】
配管網属性データ作成部8は、属性補完部7から、属性補完部7により補完された属性不明管の属性を取得する。また、配管網属性データ作成部8は、管網データを取得し、当該管網データに当該属性を含むよう配管網属性データを作成し、記憶部4に出力する。また、配管網属性データ作成部8は、作成した配管網属性データに属性不明管が存在する場合、配管網属性データを属性補完可否判断部6に出力する。
【0017】
入力部3は、外部から管網データを取得し、制御部2に出力する。管網データを取得する際、入力部3は、管に係る属性データの手入力を受け付けてもよいし、データ作成装置1の外部に格納されているデータを取得してもよい。
【0018】
記憶部4は、配管網属性データ作成部8から配管網属性データを取得し、格納するための記憶領域である。なお、属性不明管について補完が行われなかった場合、記憶部4は、制御部2から管網データを取得し、配管網属性データとして格納する。
【0019】
(データ作成装置1における処理の流れの一例)
本発明の実施形態1に係るデータ作成装置1におけるデータ作成方法の処理の流れについて説明する。まず、データ作成装置1は、入力部3において管網データを取得し、制御部2に出力する。次に、制御部2は、以下の各ステップを順番に行う。
(1)属性不明管特定ステップ:属性不明管特定部5が、管網データに基づいて、属性が不明な管を属性不明管として特定する。
(2)属性補完可否判断ステップ:属性補完可否判断部6が、上記属性不明管の属性補完可否を判断する。
(3)属性補完ステップ:属性補完部7が、補完可能と判断された属性不明管の属性を補完する。
(4)配管網属性データ作成ステップ:配管網属性データ作成部8が、補完された属性不明管の属性を含むように配管網属性データを作成する。
【0020】
配管網属性データ作成ステップにて作成された配管網属性データは、記憶部4に配管網属性データを出力する。最後に、記憶部4は、取得した配管網属性データを格納する。
【0021】
(口径の補完方法)
以下、管に係る属性の補完方法について説明する。まず、管に係る属性として、口径について補完を行う場合の補完方法を、
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、管が一直線に接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【0022】
ある属性不明管について、始点および終点の口径が同じ場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、当該口径を属性不明管の口径として補完する。また、始点および終点の口径が異なる場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、2つの口径の内、より大きい口径を属性不明管の口径として選択し補完する。また、始点または終点のどちらか一方のみについて口径が取得されており、他方の口径が取得されていない場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断する。また、属性補完部7は、取得した口径を属性不明管の口径として補完する。また、属性不明管の始点および終点のどちらも口径が取得されていない場合、属性補完可否判断部6は、口径について属性補完できないと判断する。
【0023】
なお、上述した方法では、属性不明管の始点および終点の口径が異なる場合はより大きい方の口径が選択されるが、補完条件としてより小さい口径を選択すると設定してもよい。
【0024】
図2に示すように、管10~14は一直線に接続していることを想定する。ここで、管11が属性不明管であり、管11の始点に接続している管10、および管11の終点に接続している管12が属性既知管である場合における口径の補完方法について説明する。
【0025】
例えば、管10の口径が100mmであり、管12の口径が75mmであるとすると、属性補完部7は、大きい口径、つまり100mmを、管11の口径として選択し、補完する。
【0026】
次に、管11~13が属性不明管であり、管10および管14が属性既知管である場合の補完方法について説明する。管10の口径が100mmであり、管14の口径が75mmであるとする。この時、まず、属性補完部7は、管11の口径として100mmを選択し、管13の口径として75mmを選択し、補完する。
【0027】
次に、属性補完可否判断部6は、管11および管13について補完された口径を用いることにより、管12について属性補完可能であると判断する。そして、属性補完部7は、管12の口径として、補完された口径のうち大きい口径である100mmを選択し、補完する。
【0028】
このように、複数の属性未知管が連続している場合でも、ある属性不明管について補完が行われた場合、補完された属性を用いて別の属性不明管に係る属性を補完することができる。
【0029】
次に、属性不明管の始点に管が複数接続されている場合における口径の補完方法について説明する。
図3に示すように、管17の始点に複数の管15および16が接続されており、管17はその口径が不明な属性不明管であり、管15および16については、属性としての口径が既知の属性既知管であると仮定する。さらに、管15の口径が100mmであり、管16の口径が75mmであると仮定する。
【0030】
この場合においては、管17の口径については、管15の口径および管16の口径のうち小さい方の口径を選択し、75mmと補完する。
【0031】
(布設年度の補完方法)
次に、管に係る属性として、布設年度について補完を行う場合の補完方法を説明する。
図4は布設年度について補完を行う場合の補完条件を示す図であり、
図5は、ある属性不明管の始点および終点に複数の管が接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【0032】
布設年度または管種について補完を行う場合、属性補完可否判断部6は、属性不明管の始点および終点の代表値を取得する。ここで、代表値とは、属性不明管の始点および終点に接続している属性既知管に係る、属性不明管において不明な属性である。属性不明管の始点または終点に複数の属性既知管が接続している場合は、属性不明管に係る属性のうち既知である属性ともっとも一致する要素が多い属性既知管の属性が代表値として選択される。
【0033】
図4を用いて、布設年度について補完を行う条件について説明する。ある属性不明管の始点および終点について取得された代表値が同じ場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、当該代表値を属性不明管の布設年度として補完する。また、始点および終点の代表値が異なる場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、2つの代表値の内、より古い布設年度を属性不明管の布設年度として選択し補完する。また、始点または終点のどちらか一方のみについて代表値が取得されており、他方の代表値が取得されていない場合、属性補完可否判断部6は属性補完可能であると判断する。また、属性補完部7は、取得した代表値を属性不明管の布設年度として補完する。また、属性不明管の始点および終点のどちらも代表値が取得されていない場合、属性補完可否判断部6は、布設年度について属性補完できないと判断する。
【0034】
図2を用いて、布設年度について属性補完を行う方法を説明する。例えば、管11の布設年度が不明であり、管10の布設年度が1990年であり、管12の布設年度が1970年であることが既知とする。この場合、属性補完可否判断部6は、属性補完可能であると判断する。また、属性補完部7は、より古い布設年度である1970年を、管11に係る属性として選択し、補完する。
【0035】
次に、
図5を用いて、管21について布設年度が不明な属性不明管であるとともに、管21の始点および終点に複数の属性既知管が接続している場合について補完を行う方法を説明する。
図5に示すように、管21には、始点に管18~20、また終点に管22~24が接続している。また、
図5の吹き出しは、それぞれの管に係る属性を示す。
【0036】
補完を行うに当たり、属性補完可否判断部6は、まず管21の始点および終点の代表値を取得する。
図5に示すように、管21の始点に接続された管18,19および20の属性について整理すると、以下のとおりである。
管18‐管種:B、口径:50mm、布設年度:β年
管19‐管種:A、口径:100mm、布設年度:1960年
管20‐管種:C、口径:75mm、布設年度:α年
ここで、管21の管種はAであり、口径は100mmであるため、属性補完可否判断部6は、管21と管種および口径が一致する管19の布設年度である1960年を管21における始点の代表値として選択する。
【0037】
また、
図5に示すように、管21の終点に接続された管22,23および24の属性について整理すると、以下のとおりである。
管22‐管種:A、口径:100mm、布設年度:1957年
管23‐管種:A、口径:100mm、布設年度:1958年
管24‐管種:C、口径:75mm、布設年度:γ年
ここで、管21の管種はAであり、口径は100mmである。したがって、管21と管22及び管23とは、管種および口径において一致する。そこで、属性補完可否判断部6は、管22および管23の布設年度のうち、より古い布設年度である1957年を管21における始点の代表値として選択する。
【0038】
従って、管21における始点の代表値は1960年として取得され、終点の代表値は1957年として取得される。このように、属性不明管の始点および終点とで代表値が異なっている場合、属性補完可否判断部6は、属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、
図4に示すように、より古い布設年度である1957年を、管21の布設年度として補完する。
【0039】
(管種の補完方法)
次に、管に係る属性として、管種について補完を行う場合の補完方法を説明する。
図6は管種について補完を行う場合の補完条件を示す図であり、
図7は、ある属性不明管の始点および終点に複数の管が接続している場合の配管網の一例を示す概略図である。
【0040】
図6に示すように、管種について補完を行う条件は、概ね布設年度について補完を行う場合と同様である。ただし、属性不明管の始点および終点の代表値が異なる場合、属性補完可否判断部6は、補完を行えないと判断する。
【0041】
図2を用いて、管種について属性補完を行う方法を説明する。例えば、管11の管種が不明であり、管10および管12の管種がHIVP(High impact resistance unplasticized poly (vinyl chloride)(PVC-U) pipe)であるとする。この場合、属性補完可否判断部6は、属性補完可能であると判断する。また、属性補完部7は、HIVPを管11に係る属性として補完する。
【0042】
図7を用いて、属性不明管である管21の管種について補完を行う方法を説明する。
図7に示すように、管21には、始点に管18~20、また終点に管22~24が接続している。また、
図7の吹き出しは、それぞれの管に係る属性を示す。
【0043】
補完を行うに当たり、属性補完可否判断部6は、まず管21の始点および終点の代表値を取得する。
図7に示すように、管21の始点に接続された管18,19および20の属性について整理すると、以下のとおりである。
管18‐管種:HIVP、口径:75mm、布設年度:1980年
管19‐管種:DCIP(Ductile iron pipe)、口径:100mm、布設年度:1980年
管20‐管種:DCIP、口径:100mm、布設年度:1990年
ここで、管21の口径は100mmであり、布設年度は1980年であるため、属性補完可否判断部6は、口径および布設年度が一致する管19の管種であるDCIPを管21における始点の代表値として選択する。
【0044】
また、
図7に示すように、管21の終点に接続された管22,23および24の属性について整理すると、以下のとおりである。
管22‐管種:DCIP、口径:100mm、布設年度:1980年
管23‐管種:DCIP、口径:100mm、布設年度:1980年
管24‐管種:VP(unplasticized poly (vinyl chloride)(PVC-U) pipe)、口径:50mm、布設年度:1990年
つまり、管21および管23の口径および布設年度が管21の口径および布設年度と一致する。ここで、管21および管23の管種はどちらもDCIPであるため、属性補完可否判断部6は、DCIPを管21における始点の代表値として選択する。
【0045】
従って、管21において始点および終点の代表値はどちらもDCIPである。属性補完可否判断部6は、属性補完可能であると判断し、属性補完部7は、
図4に示すように、DCIPを、管21の管種として補完する。
【0046】
例えば、上記の例において、管22の管種がVPである場合、属性不明管である管21と、口径および布設年度において一致する管22および管23の管種が異なる。この場合は、終点の代表値は取得されず、属性補完部7は、始点の代表値であるDCIPを管21の管種として補完する。
【0047】
また、同様に管22および管23の管種がVPである場合、終点の代表値はVPとなる。この場合は、始点と終点との代表値が異なるため、属性補完可否判断部6は属性補完を行うことができないと判断する。
【0048】
上記のように、管の属性として、管種、口径、および布設年度が含まれている時、ある属性不明管について、管種または布設年度のいずれか一方が不明であり、当該不明な要素以外の2つの要素について既知である場合において、属性補完可否判断部6は、属性不明管の始点および終点のそれぞれに接続された属性既知管に係る属性について、属性不明管における属性のうち既知である2つの要素との整合度合いが低ければ、属性不明管について不明な属性は補完できないと判断し、上記整合度合いが高ければ、属性不明管についての不明な属性を補完可能と判断する。
【0049】
「整合度合い」とは、ある管と他の管との間においてどの程度属性が一致しているかを示している。また、整合度合いについて補完可能な程度に「高い」または「低い」と判断する基準は、補完を行う属性によって異なる。この点について、
図4および
図5に係る「布設年度」補完、
図6および
図7に係る「管種」補完を例にとってより具体的に説明する。
【0050】
まず、
図4および
図5に係る「布設年度」補完について説明する。
図4に示すように、布設年度について補完が行われるための条件としては、(1)始点と終点の代表値が同じ場合、(2)始点と終点の代表値が異なる場合および(3)始点か終点のどちらかのみ代表値を取得している場合の3類型となる。
【0051】
この3類型について共通しているのは、始点および終点の少なくとも一方においては、代表値を取得できているということである。換言すれば、属性不明管は、その始点および終点において接続されている管とある程度属性が一致している場合は、始点および終点の少なくとも一方について代表値を取得できるということである。
【0052】
一方、
図4に示すように、始点と終点のどちらも代表値を取得できていない場合においては、布設年度の補完は実施されない。始点および終点のどちらについても代表値を取得できてないということは、換言すれば、属性不明管は、その始点および終点において接続されている管とさほど属性が一致していない場合は、代表値を取得できないということである。
【0053】
上述の布設年度に係る補完について、補完がなされる場合と、補完がなされない場合とを整理すると、上記(1)~(3)の場合は「整合度合い」が「高い」と判断し、始点と終点のどちらも代表値を取得できていない場合は「整合度合い」が「低い」と判断する。つまり、「整合度合い」に基づいて、補完可否を判断している。
【0054】
また、
図6および
図7に係る「管種」補完について説明する。
図6に示すように、管種について補完が行われるための条件としては、(1)始点と終点の代表値が同じ場合、(2)始点または終点の内どちらか一方のみ代表値を取得している場合の2類型となる。
【0055】
この2類型について共通しているのは、始点および終点において代表値が1種類のみ取得されるということである。換言すれば、属性不明管は、その始点および終点において接続されている管とある程度属性が一致しており、さらに始点において接続されている管と終点において接続されている管との間においてもある程度属性が一致している場合は、始点および終点の少なくとも一方から1種類の代表値を取得できるということである。
【0056】
一方、
図4に示すように、管種について補完が行われない条件としては、(3)始点と終点の代表値が異なる(4)始点と終点のどちらも代表値を取得できていない場合の2類型である。
【0057】
この2類型について共通していることは、始点及び終点において取得された代表値が1種類ではないということである。換言すれば、属性不明管は、その始点および終点において接続されている管とさほど属性が一致していない場合または属性不明管は始点および終点において接続されている管とある程度属性が一致していても、始点において接続している管と終点において接続している管との間においてさほど属性が一致していない場合は、取得される代表値が1種類ではないということである。
【0058】
上述の管種に係る補完について、補完がなされる場合と、補完がなされない場合とを整理すると、上記(1)~(2)の場合は「整合度合い」が「高い」と判断し、上記(3)~(4)の場合は「整合度合い」が「低い」と判断する。つまり、「整合度合い」に基づいて、補完可否を判断している。
【0059】
このようにして、属性補完可否判断部6は、属性不明管の始点および終点のそれぞれに接続された属性既知管に係る属性について、属性不明管における属性のうち既知である2つの要素との整合度合いが低ければ、属性不明管について不明な属性は補完できないと判断し、上記整合度合いが高ければ、属性不明管についての不明な属性を補完可能と判断する。
【0060】
〔ソフトウェアによる実現例〕
データ作成装置1の制御ブロック(特に属性不明管特定部5、属性補完可否判断部6、属性補完部7、および配管網属性データ作成部8)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0061】
後者の場合、データ作成装置1は、各部において各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 データ作成装置
2 制御部
3 入力部
4 記憶部
5 属性不明管特定部
6 属性補完可否判断部
7 属性補完部
8 配管網属性データ作成部