(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】リニアコンベアシステム、リニアコンベアシステムの制御方法、リニアコンベアシステムの制御プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20230529BHJP
B65G 35/00 20060101ALI20230529BHJP
B65G 43/08 20060101ALI20230529BHJP
B65G 47/53 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B65G54/02
B65G35/00 B
B65G43/08 B
B65G47/53 Z
(21)【出願番号】P 2021511691
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014160
(87)【国際公開番号】W WO2020202310
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴吉
(72)【発明者】
【氏名】保科 大樹
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055755(WO,A1)
【文献】特開平05-193731(JP,A)
【文献】特許第5977145(JP,B2)
【文献】特開2018-008337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
B65G 47/53
B65G 43/08
B65G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、
前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であり、
前記制御部は、前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記対象物の駆動を開始する前に判定し、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記可動リニアモジュールの位置を含み、
前記制御部は、
前記スライダーの現在位置を取得するとともに前記スライダーの目標位置を取得し、前記スライダーを現在位置から目標位置まで移動させるのに前記可動リニアモジュールを使用するか否かを判定し、前記スライダーを目標位置へ駆動するために、前記複数の固定リニアモジュールのうち
、停止中の前記スライダーが係合する一の固定リニアモジュールから前記可動リニアモジュールへの前記スライダーの移動が必要である場合、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲内に前記可動リニアモジュールが位置すれば、前記一の固定リニアモジュールから前記対向範囲への前記スライダーの駆動を許可する一方、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲外に前記可動リニアモジュールの少なくとも一部が位置すれば、前記スライダーの駆動を禁止す
るリニアコンベアシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記スライダーの駆動を許可した場合には、前記一の固定リニアモジュールから前記可動リニアモジュールへの前記スライダーの移動が完了するまで、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲からの前記可動リニアモジュールの前記第2方向への駆動を禁止する請求項
1に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項3】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、
前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であり、
前記制御部は、前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記対象物の駆動を開始する前に判定し、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記スライダーの位置を含み、
前記制御部は、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む駆動禁止領域に、駆動開始前の前記スライダーが重複しない場合には前記可動リニアモジュールの駆動を許可し、前記駆動禁止領域に駆動開始前の前記スライダーが重複する場合には前記可動リニアモジュールの駆動を禁止す
るリニアコンベアシステム。
【請求項4】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、
前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、
前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であり、
前記制御部は、前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記対象物の駆動を開始する前に判定し、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動先である目標位置を含み、
前記制御部は、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む停止禁止領域に、前記目標位置に駆動された前記スライダーが重複しないと予測した場合には前記目標位置への前記スライダーの駆動を許可し、前記目標位置に駆動された前記スライダーが前記停止禁止領域に重複する予測した場合には前記スライダーの駆動を禁止す
るリニアコンベアシステム。
【請求項5】
前記制御部が前記対象物の駆動を禁止したことをユーザーに報知する報知部をさらに備える請求項
1ないし4のいずれか一項に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項6】
前記報知部は、前記対象物の駆動が禁止された原因をさらに報知する請求項
5に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項7】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を備え
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記可動リニアモジュールの位置を含み、
前記位置関連情報を取得する工程では、前記スライダーの現在位置を取得するとともに前記スライダーの目標位置を取得し、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、前記スライダーを現在位置から目標位置まで移動させるのに前記可動リニアモジュールを使用するか否かを判定し、前記スライダーを目標位置へ駆動するために、前記複数の固定リニアモジュールのうち、停止中の前記スライダーが係合する一の固定リニアモジュールから前記可動リニアモジュールへの前記スライダーの移動が必要である場合、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲内に前記可動リニアモジュールが位置すれば、前記一の固定リニアモジュールから前記対向範囲への前記スライダーの駆動を許可する一方、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲外に前記可動リニアモジュールの少なくとも一部が位置すれば、前記スライダーの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御方法。
【請求項8】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を備え
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記スライダーの位置を含み、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む駆動禁止領域に、駆動開始前の前記スライダーが重複しない場合には前記可動リニアモジュールの駆動を許可し、前記駆動禁止領域に駆動開始前の前記スライダーが重複する場合には前記可動リニアモジュールの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御方法。
【請求項9】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を備え
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動先である目標位置を含み、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む停止禁止領域に、前記目標位置に駆動された前記スライダーが重複しないと予測した場合には前記目標位置への前記スライダーの駆動を許可し、前記目標位置に駆動された前記スライダーが前記停止禁止領域に重複する予測した場合には前記スライダーの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御方法。
【請求項10】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を、コンピューターに実行させ
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記可動リニアモジュールの位置を含み、
前記位置関連情報を取得する工程では、前記スライダーの現在位置を取得するとともに前記スライダーの目標位置を取得し、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、前記スライダーを現在位置から目標位置まで移動させるのに前記可動リニアモジュールを使用するか否かを判定し、前記スライダーを目標位置へ駆動するために、前記複数の固定リニアモジュールのうち、停止中の前記スライダーが係合する一の固定リニアモジュールから前記可動リニアモジュールへの前記スライダーの移動が必要である場合、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲内に前記可動リニアモジュールが位置すれば、前記一の固定リニアモジュールから前記対向範囲への前記スライダーの駆動を許可する一方、前記一の固定リニアモジュールに対向する前記対向範囲外に前記可動リニアモジュールの少なくとも一部が位置すれば、前記スライダーの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御プログラム。
【請求項11】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を、コンピューターに実行させ
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動開始前における前記スライダーの位置を含み、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む駆動禁止領域に、駆動開始前の前記スライダーが重複しない場合には前記可動リニアモジュールの駆動を許可し、前記駆動禁止領域に駆動開始前の前記スライダーが重複する場合には前記可動リニアモジュールの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御プログラム。
【請求項12】
それぞれ第1方向に延設されて前記第1方向にスライダーを駆動可能であり、前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、前記複数の固定リニアモジュールに前記第1方向からそれぞれ対向しつつ前記第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、前記第1方向に前記スライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、前記第2方向に前記可動リニアモジュールを駆動することで前記複数の対向範囲の間で前記可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、前記第1方向の端から前記固定リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記固定リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記第1方向の端から前記可動リニアモジュールに対して、前記スライダーが係合および離脱可能であり、前記可動リニアモジュールは、係合する前記スライダーを前記第1方向に駆動し、前記複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する前記可動リニアモジュールと、前記一の対向範囲に対向する前記固定リニアモジュールとの間で前記スライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、
前記スライダーあるいは前記可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、
前記スライダーおよび前記可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、前記位置関連情報に基づき、前記対象物の駆動を開始する前に判定する工程と
を、コンピューターに実行させ
、
前記位置関連情報は、前記スライダーの駆動先である目標位置を含み、
前記対象物の駆動を許可するか禁止するかを判定する工程では、互いに対向する前記固定リニアモジュールの端部と前記対向範囲の端部とを含む停止禁止領域に、前記目標位置に駆動された前記スライダーが重複しないと予測した場合には前記目標位置への前記スライダーの駆動を許可し、前記目標位置に駆動された前記スライダーが前記停止禁止領域に重複する予測した場合には前記スライダーの駆動を禁止するリニアコンベアシステムの制御プログラム。
【請求項13】
請求項
10ないし12のいずれか一項に記載のリニアコンベアシステムの制御プログラムを、コンピューターにより読み出し可能に記録する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアモジュールによりスライダーを駆動する機構を備えたリニアコンベアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、スライダーをX方向に搬送する搬送装置と、搬送装置から受け取ったスライダーをY方向に搬送する移載装置とを備え、スライダーを駆動することで、スライダーに支持されたパレットを搬送する搬送システムが記載されている。かかる搬送システムは、2台の搬送装置をY方向に間隔を空けて配置し、これら搬送装置のX方向の両側に2台の移載装置を配置することで、パレットを支持するスライダーを循環的に駆動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、それぞれX方向にスライダーを駆動する複数の固定リニアモジュール(搬送装置)の間でスライダーを移載する上記の移載装置を、Y方向に移動可能な可動リニアモジュールにより構成することができる。かかる構成では、可動リニアモジュールは、複数の固定リニアモジュールにX方向からそれぞれ対向する複数の対向範囲の間を移動する。そして、複数の対向範囲のうち、一の対向範囲に対向する固定リニアモジュールと、一の対向範囲に位置する可動リニアモジュールとの間でスライダーを移動できる。このような可動リニアモジュールを用いることで、複数の固定リニアモジュールの間でスライダーを移載できる。
【0005】
しかしながら、このようなリニアコンベアシステムでは、固定リニアモジュールあるいは可動リニアモジュールといったリニアモジュールとスライダーとの位置関係が不適切であるために、これらの間で干渉が生じる場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、可動リニアモジュールを用いることで、複数の固定リニアモジュールの間でスライダーを移載するリニアコンベアシステムにおいて、リニアモジュールとスライダーとの干渉が発生するのを抑制可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリニアコンベアシステムは、それぞれ第1方向に延設されて第1方向にスライダーを駆動可能であり、第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、複数の固定リニアモジュールに第1方向からそれぞれ対向しつつ第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、第1方向にスライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、第2方向に可動リニアモジュールを駆動することで複数の対向範囲の間で可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構と、スライダーおよび可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を制御する制御部とを備え、第1方向の端から固定リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、固定リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、第1方向の端から可動リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、可動リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する可動リニアモジュールと、一の対向範囲に対向する固定リニアモジュールとの間でスライダーを移動させることが可能であり、制御部は、スライダーあるいは可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報に基づき、対象物の駆動を許可するか禁止するかを、対象物の駆動を開始する前に判定する。
【0008】
本発明に係るリニアコンベアシステムの制御方法は、それぞれ第1方向に延設されて第1方向にスライダーを駆動可能であり、第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、複数の固定リニアモジュールに第1方向からそれぞれ対向しつつ第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、第1方向にスライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、第2方向に可動リニアモジュールを駆動することで複数の対向範囲の間で可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、第1方向の端から固定リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、固定リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、第1方向の端から可動リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、可動リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する可動リニアモジュールと、一の対向範囲に対向する固定リニアモジュールとの間でスライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、 スライダーあるいは可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、 スライダーおよび可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、位置関連情報に基づき、対象物の駆動を開始する前に判定する工程とを備える。
【0009】
本発明に係るリニアコンベアシステムの制御プログラムは、それぞれ第1方向に延設されて第1方向にスライダーを駆動可能であり、第1方向に交差する第2方向に配列された複数の固定リニアモジュールと、複数の固定リニアモジュールに第1方向からそれぞれ対向しつつ第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、第1方向にスライダーを駆動可能な可動リニアモジュールを有し、第2方向に可動リニアモジュールを駆動することで複数の対向範囲の間で可動リニアモジュールを搬送するスライダー移載機構とを備え、第1方向の端から固定リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、固定リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、第1方向の端から可動リニアモジュールに対して、スライダーが係合および離脱可能であり、可動リニアモジュールは、係合するスライダーを第1方向に駆動し、複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する可動リニアモジュールと、一の対向範囲に対向する固定リニアモジュールとの間でスライダーを移動させることが可能であるコンベアシステムの制御方法であって、スライダーあるいは可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報を取得する工程と、スライダーおよび可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかを、位置関連情報に基づき、対象物の駆動を開始する前に判定する工程とを、コンピューターに実行させる。
【0010】
本発明に係る記録媒体は、上記のリニアコンベアシステムの制御プログラムを、コンピューターにより読み出し可能に記録する。
【0011】
このように構成された本発明(リニアコンベアシステム、リニアコンベアシステムの制御方法、リニアコンベアシステムの制御プログラムおよび記録媒体)では、複数の固定リニアモジュールが第2方向に配列されており、各固定リニアモジュールは、第2方向に交差する第1方向に延設されて、第1方向にスライダーを駆動可能である。また、これら複数の固定リニアモジュールの間でスライダーを移載するために、スライダー移載機構が設けられている。このスライダー移載機構は、第2方向に移動可能な可動リニアモジュールを備える。この可動リニアモジュールは、複数の固定リニアモジュールに第1方向からそれぞれ対向しつつ第2方向に並ぶ複数の対向範囲の間を移動可能であって、第1方向にスライダーを駆動可能である。そして、複数の対向範囲のうち、一の対向範囲内に位置する可動リニアモジュールと、一の対向範囲に対向する固定リニアモジュールとの間でスライダーを移動させることが可能である。かかるスライダー移載機構を用いることで、複数の固定リニアモジュールの間でスライダーを移載できる。
【0012】
そして、本発明では、スライダーあるいは可動リニアモジュールの位置に関する位置関連情報に基づき、スライダーおよび可動リニアモジュールの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかが、対象物の駆動を開始する前に判定される。これによって、可動リニアモジュールを用いることで、複数の固定リニアモジュールの間でスライダーを移載するリニアコンベアシステムにおいて、リニアモジュールとスライダーとの干渉が発生するのを抑制することが可能となっている。
【0013】
また、位置関連情報は、スライダーの駆動開始前における可動リニアモジュールの位置を含み、制御部は、スライダーを目標位置へ駆動するために、複数の固定リニアモジュールのうちの一の固定リニアモジュールから可動リニアモジュールへのスライダーの移動が必要である場合、一の固定リニアモジュールに対向する対向範囲内に可動リニアモジュールが位置すれば、一の固定リニアモジュールから対向範囲へのスライダーの駆動を許可する一方、一の固定リニアモジュールに対向する対向範囲外に可動リニアモジュールの少なくとも一部が位置すれば、スライダーの駆動を禁止するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。これによって、固定リニアモジュールから可動リニアモジュールへスライダーを移動させた際に、スライダーと可動リニアモジュールとの干渉が発生するのを抑制することができる。
【0014】
また、制御部は、スライダーの駆動を許可した場合には、一の固定リニアモジュールから可動リニアモジュールへのスライダーの移動が完了するまで、一の固定リニアモジュールに対向する対向範囲からの可動リニアモジュールの第2方向への駆動を禁止するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。これによって、スライダーと可動リニアモジュールとの干渉を抑制しつつ、固定リニアモジュールから可動リニアモジュールへのスライダーの移動を完了できる。
【0015】
また、位置関連情報は、スライダーの駆動開始前におけるスライダーの位置を含み、制御部は、互いに対向する固定リニアモジュールの端部と対向範囲の端部とを含む駆動禁止領域に、駆動開始前のスライダーが重複しない場合には可動リニアモジュールの駆動を許可し、駆動禁止領域に駆動開始前のスライダーが重複する場合には可動リニアモジュールの駆動を禁止するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、スライダーが固定リニアモジュールの端部と可動リニアモジュールの端部の両方に係合した状態で可動リニアモジュールが第2方向に駆動されることで、スライダーと可動リニアモジュールとの干渉が発生するのを抑制することができる。
【0016】
また、位置関連情報は、スライダーの駆動先である目標位置を含み、制御部は、互いに対向する固定リニアモジュールの端部と対向範囲の端部とを含む停止禁止領域に、目標位置に駆動されたスライダーが重複しないと予測した場合には目標位置へのスライダーの駆動を許可し、目標位置に駆動されたスライダーが停止禁止領域に重複する予測した場合にはスライダーの駆動を禁止するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。つまり、スライダーを目標位置に駆動した結果、スライダーが停止禁止領域に重複する場合、スライダーが固定リニアモジュールの端部と可動リニアモジュールの端部の両方に係合した状態で停止するおそれがある。この際、可動リニアモジュールを第2方向に駆動すると、スライダーと可動リニアモジュールとの間で干渉が発生することとなる。そこで、目標位置に駆動されたスライダーが停止禁止領域に重複する場合にはスライダーの駆動をそもそも禁止することで、これらの間での干渉の発生を抑制することができる。
【0017】
また、制御部が対象物の駆動を禁止したことをユーザーに報知する報知部をさらに備えるように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、ユーザーは、対象物の駆動が禁止されたことを把握した上で、駆動の禁止を解消するための作業を適宜実行できる。
【0018】
また、報知部は、対象物の駆動が禁止された原因をさらに報知するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、ユーザーは、対象物の駆動が禁止された原因を把握して、駆動の禁止を解消するための作業を効果的に実行できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のリニアモジュールを用いてスライダーを駆動するリニアコンベアシステムにおいて、スライダーとリニアモジュールとの干渉が発生するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るリニアコンベアシステムが備えるリニアモジュールの一例を示す斜視図。
【
図2】
図1のリニアモジュールの内部を部分的に露出させて示す斜視図。
【
図3】本発明に係るリニアコンベアシステムの一例を模式的に示す図。
【
図4】
図3のリニアコンベアシステムが備える電気的構成の一例を示すブロック図。
【
図5】スライダーとリニアモジュールとの間において生じる干渉のモードを模式的に示す図。
【
図6】
図3に示すリニアコンベアシステムで実行される駆動制御の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図6の駆動制御で実行される通常駆動モードの一例を示すフローチャート。
【
図8】
図6の駆動制御で実行される乗り継ぎ駆動モードの一例を示すフローチャート。
【
図9】
図6の駆動制御でリニアモジュールに対して設定される各種禁止範囲を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係るリニアコンベアシステムが備えるリニアモジュールの一例を示す斜視図であり、
図2は
図1のリニアモジュールの内部を部分的に露出させて示す斜視図である。
図1および
図2では、水平方向に平行なX方向、X方向に直交しつつ水平方向に平行なY方向および鉛直方向に平行なZ方向を有するXYZ直交座標軸が表記されている。さらに、X方向に沿って両図の右斜め上側がX1側と表記され、X方向に沿って両図の左斜め下側がX2側と表記されている。同様の表記は、以下の図においても適宜用いられる。このリニアモジュールは、例えばWO2018/055709A1に記載のリニアコンベア装置のモジュールと同様の基本構成を具備する。ここでは、リニアモジュールの説明を行ってから、リニアコンベアシステムの全体の説明を行う。
【0022】
図1および
図2では、X方向に延設されたリニアモジュール2と、リニアモジュール2を下側から支持するベース部材3と、リニアモジュール2に係合するスライダー4とが示されている。リニアモジュール2は、X方向に等間隔で並ぶ3個のベース部材3の上端に取り付けられており、磁力によってスライダー4をX方向に駆動する。ここの例では、リニアモジュール2は、X方向に配列された2個のモジュールユニット20で構成される。ただし、リニアモジュール2を構成するモジュールユニット20の個数は、2個に限られず、1個あるいは3個以上でもよい。
【0023】
モジュールユニット20は、X方向に延設された基板21を有する。基板21はZ方向からの平面視で矩形状を有する平板である。基板21の上面には、X方向に平行な2本のガイドレール22がY方向に間隔を空けて配置されている。さらに、基板21の上面には、所定の配列ピッチP23でX方向に一列に並ぶ複数のリニアモーター固定子23と、所定の配列ピッチP24でX方向に一列に並ぶ複数の磁気センサー24とが取り付けられている。ここで、リニアモーター固定子23の配列ピッチP23よりも、磁気センサー24の配列ピッチP24の方が長い。Y方向において、複数のリニアモーター固定子23は、2本のガイドレール22の間に配置され、複数の磁気センサー24は、リニアモーター固定子23と1本のガイドレール22との間に配置されている。
【0024】
リニアモーター固定子23は、コイルと当該コイルに挿入されたコアとで構成された電磁石である。一方、スライダー4には、永久磁石と当該永久磁石を保持するバックヨークで構成された可動子が設けられている。リニアモーター固定子23は、印加された電流に応じた磁束を発生することでスライダー4の可動子に磁気的な推進力を与えて、スライダー4をX方向に駆動する。また、スライダー4には、X方向への位置を示す磁気スケールが取り付けられており、磁気センサー24は、磁気スケールを読み取ることでスライダー4のX方向への位置を検出する。そして、後述するように、磁気センサー24が検出したスライダー4の位置に基づきリニアモーター固定子23に印加する電流をフィードバック制御することで、スライダー4をX方向に駆動する。
【0025】
また、モジュールユニット20は、これらガイドレール22、リニアモーター固定子23および磁気センサー24を上側から覆う、平面視で矩形状のカバー部材25を有する。カバー部材25は、Y方向の中央で下方に突出する支持脚251を有し、支持脚251が基板21の上面に取り付けられる。Y方向の両端において、カバー部材25と基板21との間には隙間が形成され、この隙間からカバー部材25と基板21との間に入り込んだスライダー4の両端部がそれぞれ2本のガイドレール22に係合する。
【0026】
このようなモジュールユニット20を複数(2個)X方向に配列することで、リニアモジュール2が構成される。かかるリニアモジュール2は、平面視において矩形状を有する。リニアモジュール2の2個のモジュールユニット20のうち、X1側のモジュールユニット20は3個のベース部材3のうちX1側の端のベース部材3と中央のベース部材3との間に架設され、X2側のモジュールユニット20は3個のベース部材3のうちX2側の端のベース部材3と中央のベース部材3との間に架設される。
【0027】
スライダー4は、X方向においてリニアモジュール2の端からリニアモジュール2の中央側に進入して、リニアモジュール2のガイドレール22に係合することができる。こうして、ガイドレール22に係合したスライダー4は、リニアモジュール2によってX方向に駆動される。また、スライダー4は、X方向においてリニアモジュール2の端から外側に抜けて、リニアモジュール2のガイドレール22から離脱することができる。
【0028】
図3は本発明に係るリニアコンベアシステムの一例を模式的に示す図である。リニアコンベアシステム1は、4台のリニアモジュール2を備える。なお、同図では、4台のリニアモジュール2に対して互いに異なる符合2a、2b、2c、2dが付されている。
【0029】
リニアモジュール2a、2bはリニアコンベアシステム1の設置面に固定された固定リニアモジュールであり、リニアモジュール2c、2dは設置面に対してY方向に動くことができる可動リニアモジュールである。固定リニアモジュール2a、2bと、可動リニアモジュール2c、2dとは、Y方向に同一の幅を有する一方、X方向において異なる長さを有する。ただし、これらは、X方向における長さを除いて、
図1および
図2に示した共通の基本構成を有する。
【0030】
2個の固定リニアモジュール2a、2bは、Y方向に間隔を空けつつX方向に平行に配置されている。こうしてX方向に並列に配置された固定リニアモジュール2a、2bは、X方向に同一の長さを有する。一方、可動リニアモジュール2c、2dは、X方向において、固定リニアモジュール2a、2bよりも短い、同一の長さを有する。
【0031】
かかるリニアコンベアシステム1は、可動リニアモジュール2c、2dをY方向に駆動する2個のアクチュエーター5c、5dを有する。アクチュエーター5cは、固定リニアモジュール2a、2bのX方向のX1側で、Y方向に平行に配置される。アクチュエーター5dは、固定リニアモジュール2a、2bのX方向のX2側で、Y方向に平行に配置される。このように、2個のアクチュエーター5c、5dは、X方向から2個の固定リニアモジュール2a、2bを挟むように配置されている。
【0032】
アクチュエーター5cは、例えばY方向に平行なボールネジを備えた単軸ロボットであり、アクチュエーター5cのボールネジのナットに可動リニアモジュール2cが取り付けられている。このアクチュエーター5cは、可動域Rcに沿ってY方向に可動リニアモジュール2cを駆動する。ここで、可動域Rcは、X方向においてX1側から固定リニアモジュール2aのX1側の端に対向する対向範囲Fcaと、X方向においてX1側から固定リニアモジュール2bのX1側の端に対向する対向範囲Fcbとを含み、Y方向に延びる領域である。対向範囲Fcaは、固定リニアモジュール2aとX方向に一列に並ぶ可動リニアモジュール2cの存在範囲(可動リニアモジュール2cの公差を含む)に相当し、対向範囲Fcbは、固定リニアモジュール2bとX方向に一列に並ぶ可動リニアモジュール2cの存在範囲(固定リニアモジュール2bの公差を含む)に相当する。
【0033】
アクチュエーター5dは、例えばY方向に平行なボールネジを備えた単軸ロボットであり、アクチュエーター5dのボールネジのナットに可動リニアモジュール2dが取り付けられている。このアクチュエーター5dは、可動域Rdに沿ってY方向に可動リニアモジュール2dを駆動する。ここで、可動域Rdは、X方向においてX2側から固定リニアモジュール2aのX2側の端に対向する対向範囲Fdaと、X方向においてX2側から固定リニアモジュール2bのX2側の端に対向する対向範囲Fdbとを含み、Y方向に延びる領域である。対向範囲Fdaは、固定リニアモジュール2aとX方向に一列に並ぶ可動リニアモジュール2dの存在範囲(可動リニアモジュール2dの公差を含む)に相当し、対向範囲Fdbは、固定リニアモジュール2bとX方向に一列に並ぶ可動リニアモジュール2dの存在範囲(固定リニアモジュール2bの公差を含む)に相当する。
【0034】
このようなリニアコンベアシステム1では、スライダー4を循環的に駆動することができる。例えば可動リニアモジュール2cが対向範囲Fca内に位置する状態で、固定リニアモジュール2aがそれに係合するスライダー4をX方向のX1側に駆動することで、固定リニアモジュール2aから可動リニアモジュール2cにスライダー4を移動させることができる。そして、アクチュエーター5cが対向範囲Fcaから対向範囲Fcbに可動リニアモジュール2cを移動させてから、対向範囲Fcb内に位置する可動リニアモジュール2cがそれに係合するスライダー4をX方向のX2側に駆動することで、可動リニアモジュール2cから固定リニアモジュール2bにスライダー4を移動させることができる。
【0035】
さらに、可動リニアモジュール2dが対向範囲Fdb内に位置する状態で、固定リニアモジュール2bがそれに係合するスライダー4をX方向のX2側に駆動することで、固定リニアモジュール2bから可動リニアモジュール2dにスライダー4を移動させることができる。そして、アクチュエーター5dが対向範囲Fdbから対向範囲Fdaに可動リニアモジュール2dを移動させてから、対向範囲Fda内に位置する可動リニアモジュール2dがそれに係合するスライダー4をX方向のX1側に駆動することで、可動リニアモジュール2dから固定リニアモジュール2aにスライダー4を移動させることができる。
【0036】
こうして、スライダー4を反時計回りに循環的に駆動することができる。また、上記と逆の動作を実行することで、スライダー4を時計回りに循環的に駆動することができる。なお、循環駆動は、リニアコンベアシステム1で実行可能なスライダー4の駆動態様の一例に過ぎず、他の種々の態様でスライダー4を駆動することができる。
【0037】
図4は
図3のリニアコンベアシステムが備える電気的構成の一例を示すブロック図である。リニアコンベアシステム1は、システム全体を監視しつつ各スライダー4の位置を制御する制御装置11を備える。この制御装置11は、例えばパーソナルコンピューター等のコンピューターである。
【0038】
制御装置11は、制御部12、記憶部13およびディスプレイ14を備える。制御部12は例えばCPU(Central Processing Unit)で構成されたプロセッサーであり、制御装置11での演算を担う。記憶部13は例えばHDD(Hard Disk Drive)で構成され、制御装置2での演算で用いられるデータやプログラムを記憶する。特に、記憶部13は、後述する制御を制御装置11の制御部12に実行させるプログラム18を記憶する。このプログラム18は、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の記録媒体19により、制御装置11により読み出し可能な状態で提供されて記憶部13にインストールされてもよいし、インターネットサーバーからダウンロードされて記憶部13にインストールされてもよい。ディスプレイ14は、例えばタッチパネルディスプレイであり、ユーザーへの表示を行うのみならず、ユーザーからの入力操作も受け付けるUI(User Interface)として機能する。
【0039】
かかる制御装置11の制御部12は、磁気センサー24が検出したスライダー4の位置に基づきリニアモーター固定子23をフィードバック制御することで、固定リニアモジュール2a~2dのそれぞれにスライダー4を駆動させる。また、アクチュエーター5c、5dのそれぞれは、ボールネジを回転させるサーボモーター51と、サーボモーター51の回転位置を検出するエンコーダー52とを有し、制御部12は、エンコーダー52が検出した回転位置に基づきサーボモーター51をフィードバック制御することで、アクチュエーター5c、5dのそれぞれに可動リニアモジュール2c、2dを駆動させる。
【0040】
ところで、
図5に示すように、このようなリニアコンベアシステム1では、スライダーとリニアモジュールとの干渉が種々のモードで発生しうる。
図5はスライダーとリニアモジュールとの間において生じる干渉のモードを模式的に示す図である。
【0041】
干渉モードM1では、可動リニアモジュール2cの一部が対向範囲Fcaの外に位置しつつ他部が対向範囲Fcaの内に位置する状態で、固定リニアモジュール2aがスライダー4を対向範囲Fcaに向けてX1側に駆動する。この場合、固定リニアモジュール2aの端からX1側へ抜けたスライダー4は、可動リニアモジュール2cに係合できずに、可動リニアモジュール2cに衝突する。
【0042】
干渉モードM2では、固定リニアモジュール2aのX1側の端部と、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cのX2側の端部とにスライダー4が跨った状態で、アクチュエーター5cが可動リニアモジュール2cをY方向に駆動する。この場合、固定リニアモジュール2aとスライダー4とが互いにY方向に押し付けられるとともに、可動リニアモジュール2cとスライダー4とが互いにY方向に押し付けられる。
【0043】
このような干渉モードM1、M2が発生すると、固定リニアモジュール2a、可動リニアモジュール2cあるいはスライダー4が破損するおそれがある。また、これら干渉モードM1、M2は、
図5に示したリニアモジュール2a、2cについてのみ生じうるのではなく、リニアモジュール2a、2d、リニアモジュール2b、2cおよびリニアモジュール2b、2dについても同様に生じうる。これに対して、リニアコンベアシステム1では、このような干渉を抑制するため、次に示す駆動制御によりスライダー4の搬送が管理される。
【0044】
図6は
図3に示すリニアコンベアシステムで実行される駆動制御の一例を示すフローチャートであり、
図7は
図6の駆動制御で実行される通常駆動モードの一例を示すフローチャートであり、
図8は
図6の駆動制御で実行される乗り継ぎ駆動モードの一例を示すフローチャートであり、
図9は
図6の駆動制御でリニアモジュールに対して設定される各種禁止範囲を模式的に示す図である。
【0045】
各フローチャートはプログラム18により規定され、制御部12がプログラム18に基づき各部を制御することで実行される。なお、これらのフローチャートは、リニアコンベアシステム1に設けられた複数(4個)のスライダー4に共通に実行できる。ただし、ここでは、4個のスライダー4のうち1個のスライダー4を代表に挙げて、これらのフローチャートを実行する場合を説明する。なお、このフローチャートの開始時点では、スライダー4および可動リニアモジュール2c、2dは停止しているものとする。
【0046】
ステップS101では、4台のリニアモジュール2(2a~2d)のうちから、スライダー4が係合する1台のリニアモジュール2が特定される。具体的には、スライダー4を検出する磁気センサー24を確認することで、リニアモジュール2を特定できる。さらに、ステップS101では、スライダー4の現在位置が取得される。スライダー4が係合するリニアモジュール2が固定リニアモジュール2a、2bである場合には、磁気センサー24の検出結果からスライダー4の現在位置を取得できる。また、スライダー4が係合するリニアモジュール2が可動リニアモジュール2c、2dである場合には、エンコーダー52の出力結果からスライダー4の現在位置を取得できる。
【0047】
ステップS102では、スライダー4の目標位置(すなわち、移動先)が取得され、目標位置でのスライダー4の駆動を担当するリニアモジュール2が、4台のリニアモジュール2のうちから特定される。
【0048】
ステップS103では、ステップS101で取得した情報に基づき、スライダー4が駆動禁止領域Hdに重複しているかが判定される。つまり、制御部12は、X方向に隣接する固定リニアモジュール2a、2bの端部と、対向範囲Fca、Fda、Fcb、Fdb(換言すれば、対向範囲Fca、Fda、Fcb、Fdb内に位置する可動リニアモジュール2c、2d)との端部に重複させて駆動禁止領域Hdを設定する。固定リニアモジュール2aと対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cとを例に挙げた
図9を用いてこの点について説明する。
【0049】
上述のように、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cは、固定リニアモジュール2aのX1側の端にX1側から対向する。これに対して、駆動禁止領域Hdは、固定リニアモジュール2aのX1側(一方側)の端部と、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cのX2側(他方側)の端部とを含むように設定される。換言すれば、駆動禁止領域Hdは、X方向において相互に隣接する、固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cの端部とを含むように設定される。つまり、X方向において、駆動禁止領域HdのX2側の端は固定リニアモジュール2aのX1側の端よりもX2側に位置し、駆動禁止領域HdのX1側の端は、対向範囲Fca内の可動リニアモジュール2cのX2側の端よりもX1側に位置する。固定リニアモジュール2aと駆動禁止領域Hdとの重複範囲dfのX方向の長さと、対向範囲Fca内の可動リニアモジュール2cと駆動禁止領域Hdとの重複範囲dmのX方向の長さとは等しい。
【0050】
このように、X方向において、互いに隣接する固定リニアモジュール2aの端部と対向範囲Fcaの端部とを含むように、駆動禁止領域Hdが設定される。ここで、対向範囲Fcaは、Y方向において上述の通り可動リニアモジュール2cの幅(可動リニアモジュール2cの公差を含む)を有する。また、X方向においては、対向範囲Fcaは可動リニアモジュール2cと同一の長さを有し、対向範囲Fcaの両端の位置は可動リニアモジュール2cの両端の位置に一致する。また、対向範囲Fca以外の対向範囲Fda、Fcb、Fdbのそれぞれも、X方向およびY方向において可動リニアモジュール2cあるいは可動リニアモジュール2dと同様の寸法関係を有し、これらに対しても同様に駆動禁止領域Hdが設定される。
【0051】
すなわち、かかる駆動禁止領域Hdは、
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fca(換言すれば、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2c)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fda(換言すれば、対向範囲Fda内に位置する可動リニアモジュール2d)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2bの端部と、対向範囲Fcb(換言すれば、対向範囲Fcb内に位置する可動リニアモジュール2c)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2bの端部と、対向範囲Fdb(換言すれば、対向範囲Fdb内に位置する可動リニアモジュール2d)の端部
のそれぞれに対して設定される。
【0052】
ステップS103では、スライダー4が駆動禁止領域Hdに重複するか、すなわちスライダー4の少なくとも一部が駆動禁止領域Hd内に位置するか否かが判定される。そして、スライダー4が駆動禁止領域Hdに重複する場合(ステップS103で「YES」の場合)には、当該駆動禁止領域Hdに重複する可動リニアモジュール2c、2dの駆動(すなわち、Y方向への移動)が禁止される(ステップS104)。例えば、固定リニアモジュール2aと対向範囲Fcaとの境界に設定された駆動禁止領域Hdにスライダー4が重複する場合には、可動リニアモジュール2cの駆動が禁止される、これによって、
図5の「干渉モードM2」に示すように、スライダー4が固定リニアモジュール2aと可動リニアモジュール2cの両方に跨った状態(つまり、両方に重複した状態)の場合は、可動リニアモジュール2cの駆動が禁止されるため、
図5に示した「干渉モードM2」の発生を抑制できる。さらに、スライダー4がこれらに跨らなくても、その一部が駆動禁止領域Hdに重複する場合には、可動リニアモジュール2cの駆動が禁止される。これによって、干渉モードM2の発生をより確実に抑制できる。
【0053】
そして、ステップS105では、可動リニアモジュール2c、2dの駆動が禁止されたことを、ディスプレイ14がユーザーに報知する。この際、ディスプレイ14は、可動リニアモジュール2c、2dの駆動が禁止された原因を併せて報知する。具体的には、ディスプレイ14は、例えば数字の組み合わせで構成されるエラーコードを示したり、スライダー4が駆動禁止領域Hdに存在すると言語で示したりする。この際、前者のみあるいは後者のみを示すように構成してもよいし、前者を示した上で、前者に対してユーザーがタッチ等の操作を実行した際に後者を示すように構成してもよい。
【0054】
一方、現在停止中のスライダー4が各駆動禁止領域Hdの外に位置しており、このスライダー4がいずれの駆動禁止領域Hdに重複しない場合(ステップS103で「NO」の場合)には、目標位置に移動後のスライダー4が停止禁止領域Hsに重複するか否かが判定される。つまり、制御部12は、X方向に隣接する固定リニアモジュール2a、2bの端部と、対向範囲Fca、Fda、Fcb、Fdb(換言すれば、対向範囲Fca、Fda、Fcb、Fdb内に位置する可動リニアモジュール2c、2d)との端部に重複させて停止禁止領域Hsを設定する。固定リニアモジュール2aと対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cとを例に挙げた
図9を用いてこの点について説明する。
【0055】
上述のように、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cは、固定リニアモジュール2aのX1側の端にX1側から対向する。これに対して、停止禁止領域Hsは、固定リニアモジュール2aのX1側(一方側)の端部と、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cのX2側(他方側)の端部とを含むように設定される。換言すれば、停止禁止領域Hsは、X方向において相互に隣接する、固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2cの端部とを含むように設定される。つまり、X方向において、停止禁止領域HsのX2側の端は固定リニアモジュール2aのX1側の端よりもX2側に位置し、停止禁止領域HsのX1側の端は、対向範囲Fca内の可動リニアモジュール2cのX2側の端よりもX1側に位置する。固定リニアモジュール2aと停止禁止領域Hsとの重複範囲sfのX方向の長さと、対向範囲Fca内の可動リニアモジュール2cと停止禁止領域Hsとの重複範囲smのX方向の長さとは等しい。このように、X方向において、互いに隣接する固定リニアモジュール2aの端部と対向範囲Fcaの端部とを含むように、停止禁止領域Hsが設定される。また、対向範囲Fca以外の対向範囲Fda、Fcb、Fdbに対しても同様に停止禁止領域Hsが設定される。
【0056】
すなわち、かかる停止禁止領域Hsは、
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fca(換言すれば、対向範囲Fca内に位置する可動リニアモジュール2c)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2aの端部と、対向範囲Fda(換言すれば、対向範囲Fda内に位置する可動リニアモジュール2d)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2bの端部と、対向範囲Fcb(換言すれば、対向範囲Fcb内に位置する可動リニアモジュール2c)の端部
・X方向に隣接する固定リニアモジュール2bの端部と、対向範囲Fdb(換言すれば、対向範囲Fdb内に位置する可動リニアモジュール2d)の端部
のそれぞれに対して設定される。
【0057】
ステップS106では、スライダー4を目標位置に移動させた場合に、このスライダー4が停止禁止領域Hsに重複するか、すなわちスライダー4の少なくとも一部が停止禁止領域Hs内に位置するか否かが予測される。そして、移動後のスライダー4が停止禁止領域Hsに重複すると予測される場合(ステップS106で「YES」の場合)には、スライダー4の駆動が禁止される(ステップS111)。これによって、
図5の「干渉モードM2」に例示するように、スライダー4が固定リニアモジュール2aと可動リニアモジュール2cの両方に跨った状態(つまり、両方に重複した状態)で、目標位置に停止することが回避される。その結果、目標位置にスライダー4を移動させて、さらに可動リニアモジュール2cが駆動されたことで
図5に示した「干渉モードM2」が発生するのを予め防止できる。さらに、スライダー4がこれらに跨らなくても、その一部が停止禁止領域Hsに重複すると予測される場合には、スライダー4の駆動が禁止される。これによって、干渉モードM2の発生をより確実に防止できる。
【0058】
そして、ステップS105では、スライダー4の駆動が禁止されたことを、ディスプレイ14がユーザーに報知する。この際、ディスプレイ14は、スライダー4の駆動が禁止された原因を併せて報知する。具体的には、ディスプレイ14は、例えば数字の組み合わせで構成されるエラーコードを示したり、移動後のスライダー4が停止禁止領域Hsに位置すると言語で示したりする。この際、前者のみあるいは後者のみを示すように構成してもよいし、前者を示した上で、前者に対してユーザーがタッチ等の操作を実行した際に後者を示すように構成してもよい。
【0059】
一方、スライダー4を目標位置に移動させた場合に、スライダー4が各停止禁止領域Hsの外に位置することとなり、このスライダー4がいずれの停止禁止領域Hsにも重複しないと予測される場合(ステップS106で「NO」の場合)には、スライダー4を現在位置から目標位置まで移動させるのに可動リニアモジュール2c、2dを使用するか否かが判定される(ステップS107)。可動リニアモジュール2c、2dを使用しない場合(ステップS107で「NO」の場合)には、ステップS108の通常駆動モードが実行される。
【0060】
図7に示すように、通常駆動モードでは、スライダー4に係合するリニアモジュール2が当該スライダー4の駆動を開始する(ステップS201)。そして、スライダー4が目標位置に到達すると(ステップS202で「YES」)、スライダー4を停止させる(ステップS203)。
【0061】
一方、スライダー4の移動に可動リニアモジュール2c、2dを使用する場合(ステップS107で「YES」の場合)には、使用予定の可動リニアモジュール2c、2dの現在位置が取得される(ステップS109)。ステップS110では、停止中のスライダー4が係合する固定リニアモジュール2a、2bから、使用予定の可動リニアモジュール2c、2dへのスライダー4の乗り継ぎを実行可能か否かが判定される。具体的には、停止中のスライダー4が係合する固定リニアモジュール2a、2bに対する対向範囲Fca、Fcb、Fda、Fda内に、使用予定の可動リニアモジュール2c、2dが位置するか否かに基づき、乗り継ぎの可否が判定される。そして、乗り継ぎができない場合(ステップS110で「NO」の場合には)、ステップS111に進む。
【0062】
例えば、固定リニアモジュール2aに係合するスライダー4を、可動リニアモジュール2cを用いて移動させる場合には、可動リニアモジュール2cが対向範囲Fca内に位置するか否かが判定される。可動リニアモジュール2cの少なくとも一部が対向範囲Fcaの外に位置する場合には、ステップS110で乗り継ぎができない(NO)と判定されて、ステップS111に進む。
【0063】
ステップS111では、スライダー4の駆動が禁止される。これによって、例えば
図5の「干渉モードM1」に例示するように、可動リニアモジュール2cの少なくとも一部が対向範囲Fca外に位置する状態の場合には、スライダー4の駆動が禁止されるため、
図5に示した「干渉モードM1」の発生を抑制できる。
【0064】
そして、ステップS105では、スライダー4の駆動が禁止されたことを、ディスプレイ14がユーザーに報知する。この際、ディスプレイ14は、スライダー4の駆動が禁止された原因を併せて報知する。具体的には、ディスプレイ14は、例えば数字の組み合わせで構成されるエラーコードを示したり、可動リニアモジュール2cが対向範囲Fcaから外れているためにスライダー4の乗り継ぎができないと言語で示したりする。この際、前者のみあるいは後者のみを示すように構成してもよいし、前者を示した上で、前者に対してユーザーがタッチ等の操作を実行した際に後者を示すように構成してもよい。
【0065】
一方、ステップS110で、停止中のスライダー4が係合する固定リニアモジュール2a、2bから、使用予定の可動リニアモジュール2c、2dへのスライダー4の乗り継ぎが可能(YES)と判定されると、ステップS112の乗り継ぎ駆動モードが実行される。例えば、固定リニアモジュール2aに係合するスライダー4を、可動リニアモジュール2cを用いて移動させる場合には、可動リニアモジュール2cが対向範囲Fca内に位置すると判定されると、ステップS110で乗り継ぎができる(YES)と判定されて、ステップS112に進む。
【0066】
図8に示すように、乗り継ぎ駆動モードでは、使用する可動リニアモジュール2c、2dの駆動が禁止される(ステップS301)。これによって、例えば、固定リニアモジュール2aに係合するスライダー4を、可動リニアモジュール2cを用いて移動させる場合には、可動リニアモジュール2cの対向範囲Fcaからの駆動が禁止される。
【0067】
こうして、使用する可動リニアモジュール2c、2dを停止させた状態で、スライダー4の駆動が開始される(ステップS302)。そして、スライダー4の乗り継ぎが完了したと判定されると(ステップS303で「YES」)、乗り継ぎ先の可動リニアモジュール2c、2dの駆動禁止が解除される。例えば、固定リニアモジュール2aに係合するスライダー4を、可動リニアモジュール2cを用いて移動させる場合には、固定リニアモジュール2aから可動リニアモジュール2cへのスライダー4の乗り継ぎが完了してから、可動リニアモジュール2cの駆動禁止が解除される。
【0068】
そして、可動リニアモジュール2c、2dは受け取ったスライダー4を目標位置へ向けて駆動する。可動リニアモジュール2cが固定リニアモジュール2aからスライダー4を受け取る例では、スライダー4の目標位置が可動リニアモジュール2c上であれば、可動リニアモジュール2cは当該目標位置にスライダー4を駆動する。あるいは、スライダー4の目標位置が固定リニアモジュール2b上であれば、可動リニアモジュール2cは、この目標位置へ向かう経路の途中に相当する対向範囲Fcbにスライダー4を駆動し、対向範囲Fcbの可動リニアモジュール2cから固定リニアモジュール2bへとスライダー4がさらに受け渡されて、スライダー4が目標位置に駆動される。そして、スライダー4が目標位置に到達すると(ステップS305で「YES」)、スライダー4を停止させる(ステップS306)。
【0069】
以上に説明した実施形態では、複数の固定リニアモジュール2a、2bがY方向に配列されており、各固定リニアモジュール2a、2bは、Y方向に直交するX方向に延設されて、X方向にスライダー4を駆動可能である。また、これら複数の固定リニアモジュール2a、2bの間でスライダー4を移載するために、可動リニアモジュール2c、2dおよびアクチュエーター5c、5dで構成されるスライダー移載機構が設けられている。このスライダー移載機構は、Y方向に移動可能な可動リニアモジュール2c、2dを備える。この可動リニアモジュール2c、2dは、複数の固定リニアモジュール2a。2bにX方向からそれぞれ対向しつつY方向に並ぶ複数の対向範囲Fca、Fcb、Fda、Fdbの間を移動可能であって、X方向にスライダー4を駆動可能である。そして、複数の対向範囲Fca、Fcb、Fda、Fdbのうち、一の対向範囲(例えば、対向範囲Fca)内に位置する可動リニアモジュール(例えば、可動リニアモジュール2c)と、一の対向範囲(例えば、対向範囲Fca)に対向する固定リニアモジュール(例えば、固定リニアモジュール2a)との間でスライダー4を移動させることが可能である。かかるスライダー移載機構を用いることで、複数の固定リニアモジュール2a、2bの間でスライダー4を移載できる。
【0070】
そして、この実施形態では、スライダー4あるいは可動リニアモジュール2c、2dの位置に関する位置関連情報に基づき、スライダー4および可動リニアモジュール2c、2dの少なくとも一方の対象物の駆動を許可するか禁止するかが、対象物の駆動を開始する前に判定される。これによって、可動リニアモジュール2c、3dを用いることで、複数の固定リニアモジュール2a、2bの間でスライダー4を移載するリニアコンベアシステム1において、リニアモジュール2a~2dとスライダー4との干渉が発生するのを抑制することが可能となっている。
【0071】
また、ステップS110では、スライダー4の駆動開始前における可動リニアモジュール2c、2dの位置(位置関連情報)が取得される。そして、制御部12は、スライダー4を目標位置へ駆動するために、複数の固定リニアモジュール2a、2bのうちの一の固定リニアモジュール(例えば2a)から可動リニアモジュール(例えば2c)へのスライダー4の移動が必要である場合(ステップS108で「YES」の場合)、次のような制御を実行する。つまり、一の固定リニアモジュール(例えば2a)に対向する対向範囲(例えばFca)内に可動リニアモジュール(例えば2c)が位置すれば、一の固定リニアモジュール(例えば2a)から対向範囲(例えばFca)へのスライダーの駆動を許可する。一方、一の固定リニアモジュール(例えば2a)に対向する対向範囲(例えばFca)外に可動リニアモジュール(例えば2c)の少なくとも一部が位置すれば、スライダー4の駆動を禁止する。これによって、固定リニアモジュール2a、2bから可動リニアモジュール2c、2dへスライダー4を移動させた際に、スライダー4と可動リニアモジュール2c、2dとの干渉が発生するのを抑制することができる。
【0072】
また、制御部12は、スライダー4の駆動を許可した場合には、一の固定リニアモジュール(例えば2a)から可動リニアモジュール(例えば2c)へのスライダー4の移動が完了するまで、一の固定リニアモジュール(例えば2a)に対向する対向範囲(例えばFca)からの可動リニアモジュール(例えば2c)のY方向への駆動を禁止する。これによって、スライダー4と可動リニアモジュール2c、2dとの干渉を抑制しつつ、固定リニアモジュール2a、2bから可動リニアモジュール2c、2dへのスライダー4の移動を完了できる。
【0073】
また、ステップS101では、スライダー4の駆動開始前におけるスライダー4の位置(位置関連情報)が取得される。そして、制御部12は、互いに対向する固定リニアモジュール2a、2bの端部と対向範囲Fca、Fda、Fcb、Fdbの端部とを含む駆動禁止領域Hdに、駆動開始前のスライダー4が重複しない場合には可動リニアモジュール2c、2dの駆動を許可し、駆動禁止領域Hdに駆動開始前のスライダー4が重複する場合には可動リニアモジュール2c、2dの駆動を禁止する。かかる構成では、スライダー4が固定リニアモジュール2a、2bの端部と可動リニアモジュール2c、2dの端部の両方に係合した状態で可動リニアモジュール2c、2dがY方向に駆動されることで、スライダー4と可動リニアモジュール2c、2dとの干渉が発生するのを抑制することができる。
【0074】
また、ステップS102では、スライダー4の駆動先である目標位置(位置関連情報)が取得される。そして、制御部12は、互いに対向する固定リニアモジュール2a、2bの端部と対向範囲Fca、Fcd、Fcb。Fdbの端部とを含む停止禁止領域Hsに、目標位置に駆動されたスライダー4が重複しないと予測した場合には目標位置へのスライダー4の駆動を許可し、目標位置に駆動されたスライダー4が停止禁止領域Hsに重複する予測した場合にはスライダー4の駆動を禁止する。つまり、スライダー4を目標位置に駆動した結果、スライダー4が停止禁止領域Hsに重複する場合、スライダー4が固定リニアモジュール2a、2bの端部と可動リニアモジュール2c、2dの端部の両方に係合した状態で停止するおそれがある。この際、可動リニアモジュール2c、2dをY方向に駆動すると、スライダー4と可動リニアモジュール2c、2dとの間で干渉が発生することとなる。そこで、目標位置に駆動されたスライダー4が停止禁止領域Hsに重複する場合にはスライダー4の駆動をそもそも禁止することで、これらの間での干渉の発生を抑制することができる。
【0075】
また、制御部12が対象物(スライダー4、可動リニアモジュール2c、2d)の駆動を禁止したことをユーザーに報知するディスプレイ14が設けられている。かかる構成では、ユーザーは、対象物(スライダー4、可動リニアモジュール2c、2d)の駆動が禁止されたことを把握した上で、駆動の禁止を解消するための作業を適宜実行できる。
【0076】
また、ディスプレイ14は、対象物(スライダー4、可動リニアモジュール2c、2d)の駆動が禁止された原因をさらに報知する。かかる構成では、ユーザーは、対象物(スライダー4、可動リニアモジュール2c、2d)の駆動が禁止された原因を把握して、駆動の禁止を解消するための作業を効果的に実行できる。
【0077】
このように本実施形態では、リニアコンベアシステム1が本発明の「リニアコンベアシステム」の一例に相当し、スライダー4が本発明の「スライダー」の一例に相当し、固定リニアモジュール2a、2bが本発明の「固定リニアモジュール」の一例に相当し、可動リニアモジュール2c、2dが本発明の「可動リニアモジュール」の一例に相当し、可動リニアモジュール2c、2dとアクチュエーター5c、5dが協働して本発明の「スライダー移載機構」を構成し、制御部12が本発明の「制御部」の一例に相当し、ディスプレイ14が本発明の「報知部」の一例に相当し、X方向が本発明の「第1方向」の一例に相当し、Y方向が本発明の「第2方向」の一例に相当し、駆動禁止領域Hdが本発明の「駆動禁止領域」の一例に相当し、停止禁止領域Hsが本発明の「停止禁止領域」の一例に相当し、プログラム18が本発明の「リニアコンベアシステムの制御プログラム」の一例に相当し、記録媒体19が本発明の「記録媒体」の一例に相当し、制御装置11が本発明の「コンピューター」の一例に相当する。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば固定リニアモジュール2a、2bが配列される方向はY方向(水平方向)に限られず、Z方向(鉛直方向)でも構わない。この場合、アクチュエーター5c、5dはZ方向に可動リニアモジュール2c、2dを昇降させる。
【0079】
また、1個の固定リニアモジュール2aと、可動リニアモジュール2dを駆動する1個のアクチュエーター5dとで構成されるL字状の経路でスライダー4を移動させるように、リニアコンベアシステム1を構成しても良い。あるいは、
図3の状態から、固定リニアモジュール2bを、X方向に平行に移動させて、アクチュエーター5cに対して固定リニアモジュール2aの反対側に配ししてもよい。
【0080】
また、固定リニアモジュール2a、2bの個数は、2個に限られず、3個以上でもよい。
【0081】
また、駆動禁止領域Hdの寸法を適宜変更してもよく、例えば重複範囲dfが重複範囲dmより短くてもあるいは長くてもよい。
【0082】
また、停止禁止領域Hsの寸法を適宜変更してもよく、例えば重複範囲sfが重複範囲smより短くてもあるいは長くてもよい。
【0083】
また、固定リニアモジュール2a、2bがスライダー4を駆動する方向と、アクチュエーター5c、5dがスライダー4を駆動する方向とは、必ずしも直交する必要は無く、傾いていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…リニアコンベアシステム
2a、2b…固定リニアモジュール
2c、2d…可動リニアモジュール(スライダー移載機構)
4…スライダー
5c、5d…アクチュエーター(スライダー移載機構)
11…制御装置(コンピューター)
12…制御部
14…ディスプレイ(報知部)
18…プログラム(リニアコンベアシステムの制御プログラム)
19…記録媒体
Hd…駆動禁止領域
Hs…停止禁止領域
X…X方向(第1方向)
Y…Y方向(第2方向)