(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20230529BHJP
B65G 35/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B65G54/02
B65G35/00 B
(21)【出願番号】P 2021565189
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049309
(87)【国際公開番号】W WO2021124429
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】楠木 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】露木 淳一
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062614(JP,A)
【文献】特許第5473591(JP,B2)
【文献】特開平04-020477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
B65G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダと、
リニアモータと、前記スライダが乗り継ぎ可能な複数のガイドレールとを含み、前記スライダを搬送する搬送部と、
複数の前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動または前記リニアモータの駆動電力に基づいて、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得する制御部と、を備え
、
前記搬送部は、固定的に設けられた第1搬送部および第2搬送部と、前記ガイドレールおよび前記リニアモータを移動させる移動機構を有し、前記スライダを前記第1搬送部から前記第2搬送部に搬送するための第3搬送部と、を含み、
前記第3搬送部と前記第1搬送部または前記第2搬送部との前記ガイドレールの乗り継ぎ部分の近傍には、振動センサが設けられ、
前記制御部は、前記第1搬送部から前記第3搬送部への前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分、および、前記第3搬送部から前記第2搬送部への前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方における、前記振動センサの振動検知結果に基づいて、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている、搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態に基づいて、乗り継ぎの状態を通知する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1搬送部から前記第3搬送部への前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分、および、前記第3搬送部から前記第2搬送部への前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方におけ
る前記リニアモータの駆動電力に基づいて、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記振動センサは、前記第3搬送部に設けられている、請求項
1~3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1搬送部および前記第2搬送部は、前記ガイドレールおよび前記リニアモータを有し互いに直列に接続される複数の搬送モジュールを各々含み、
前記制御部は、直列に接続された複数の前記搬送モジュールの前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動または前記リニアモータの駆動電力に基づいて、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている、請求項
1~4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動または前記リニアモータの駆動電力が所定のしきい値を越えた場合に、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動または前記リニアモータの駆動電力が、初期状態から所定の割合分だけ増加した場合に、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記スライダは、複数設けられており、
前記制御部は、複数の前記スライダの各々を区別して、前記スライダの前記ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている、請求項1~
7のいずれか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送装置に関し、特に、スライダが乗り継ぎ可能な複数のガイドレールを含む搬送部を備える搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライダが乗り継ぎ可能な複数のガイドレールを含む搬送部を備える搬送装置が知られている。このような搬送装置は、たとえば、特開2019-062614号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2019-062614号公報には、搬送台車(スライダ)と、搬送台車を搬送する搬送部と、を備える搬送装置が開示されている。搬送部は、リニアモータ、および、搬送台車が乗り継ぎ可能な複数のガイドレールを含んでいる。この特開2019-062614号公報の搬送装置では、ガイドレールの位置情報に基づいて、乗り継ぐガイドレールの位置を補正することにより、ガイドレール間の乗り継ぎ位置を精度よく位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2019-062614号公報の搬送装置では、設置環境温度の変化により搬送台車を設置する架台とのバイメタル効果や、経時変化などに起因して、ガイドレールの乗り継ぎ部分の形状が変化すると、複数のガイドレールの乗り継ぎ位置を精度よく位置合わせすることが困難になる。この場合、複数のガイドレールの乗り継ぎ位置において搬送台車に衝撃が生じ、搬送台車およびガイドレールに損傷が発生する可能性が高くなるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数のガイドレールの乗り継ぎ位置においてスライダに衝撃が生じることに起因して、ガイドレールおよびスライダに損傷が発生するのを抑制することが可能な搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による搬送装置は、スライダと、リニアモータと、スライダが乗り継ぎ可能な複数のガイドレールとを含み、スライダを搬送する搬送部と、複数のガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得する制御部と、を備え、搬送部は、固定的に設けられた第1搬送部および第2搬送部と、ガイドレールおよびリニアモータを移動させる移動機構を有し、スライダを第1搬送部から第2搬送部に搬送するための第3搬送部と、を含み、第3搬送部と第1搬送部または第2搬送部とのガイドレールの乗り継ぎ部分の近傍には、振動センサが設けられ、制御部は、第1搬送部から第3搬送部へのガイドレール間の乗り継ぎ部分、および、第3搬送部から第2搬送部へのガイドレール間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方における、振動センサの振動検知結果に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による搬送装置では、上記のように、複数のガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得する制御部を設ける。これにより、ガイドレール間の乗り継ぎ部分をスライダが通過する際に、振動または駆動電力に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を把握することができるので、ガイドレール間の乗り継ぎ部分においてスライダに衝撃が生じることを事前に予測することができる。これにより、ガイドレールおよびスライダの予防保全に有効に反映させることができる。その結果、ガイドレールの乗り継ぎ位置においてスライダに衝撃が生じることに起因して、ガイドレールおよびスライダに損傷が発生するのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、制御部は、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態に基づいて、乗り継ぎの状態を通知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、スライダのガイドレール間の乗り継ぎ状態に基づいて、異常が発生する前に通知を行うことができるので、ガイドレールおよびスライダに損傷が発生する前に、作業者はスライダおよび搬送部の保守点検を行うことができる。
【0010】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、制御部は、第1搬送部から第3搬送部へのガイドレール間の乗り継ぎ部分、および、第3搬送部から第2搬送部へのガイドレール間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方におけるリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。このように構成すれば、固定的に設けられた第1搬送部および第2搬送部に対して移動する第3搬送部と、第1搬送部または第2搬送部とのガイドレール間の乗り継ぎ部分において、位置合わせの精度の変化に起因する乗り継ぎ状態の変化を取得することができる。これにより、相対移動するガイドレール間の乗り継ぎ部分において、ガイドレールおよびスライダに損傷が発生するのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による搬送装置では、第3搬送部と第1搬送部または第2搬送部とのガイドレールの乗り継ぎ部分の近傍には、振動センサが設けられ、制御部は、振動センサの振動検知結果に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。これにより、第3搬送部と第1搬送部または第2搬送部とのガイドレールの乗り継ぎ部分の近傍に設けた振動センサにより、スライダのガイドレール間の乗り継ぎ時の振動を容易に取得することができる。
【0012】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、振動センサは、第3搬送部に設けられている。このように構成すれば、移動する第3搬送部に振動センサを設けることにより、固定的に設けられた第1搬送部または第2搬送部に比べて振動しやすい第3搬送部の振動を精度よく検出することができる。
【0013】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、第1搬送部および第2搬送部は、ガイドレールおよびリニアモータを有し互いに直列に接続される複数の搬送モジュールを各々含み、制御部は、直列に接続された複数の搬送モジュールのガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。このように構成すれば、固定的に設けられた第1搬送部または第2搬送部の搬送モジュール間のガイドレールの乗り継ぎ部分のスライダの乗り継ぎ状態を取得することができる。
【0014】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、制御部は、ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力が所定のしきい値を越えた場合に、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている。このように構成すれば、振動またはリニアモータの駆動電力が所定のしきい値を越えて大きくなった場合に、スライダおよび搬送部の保守点検を行うように作業者に促すことができる。
【0015】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、制御部は、ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力が、初期状態から所定の割合分だけ増加した場合に、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている。このように構成すれば、初期状態から所定の割合分だけ振動またはリニアモータの駆動電力が増加した場合に、スライダおよび搬送部の保守点検を行うように作業者に促すことができる。
【0016】
上記一の局面による搬送装置において、好ましくは、スライダは、複数設けられており、制御部は、複数のスライダの各々を区別して、スライダのガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。このように構成すれば、個々のスライダまたはガイドレール間の乗り継ぎ部分のいずれに原因があるのかを容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、ガイドレールの乗り継ぎ位置においてスライダに衝撃が生じることに起因して、ガイドレールおよびスライダに損傷が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による搬送装置を示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による搬送装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による搬送装置の搬送部およびスライダを示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による搬送装置の振動の検知の一例を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による搬送装置の制御部による乗継状態通知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による搬送装置100の構成について説明する。
【0021】
(搬送装置の構成)
本実施形態による搬送装置100は、搬送部1、2に沿ってスライダ30に載置された搬送対象物を搬送するように構成されている。また、搬送装置100により搬送される搬送対象物は、複数の搬送位置において作業が行われる。搬送対象物は、ロボットや作業者により作業が行われる。
【0022】
搬送装置100は、
図1に示すように、搬送部1と、搬送部2と、乗継搬送部3と、乗継搬送部4と、スライダ30と、を備えている。また、搬送装置100は、
図2に示すように、制御部40と、表示部50とを備えている。なお、搬送部1は、請求の範囲の「第1搬送部」および「第2搬送部」の一例であり、搬送部2は、請求の範囲の「第1搬送部」および「第2搬送部」の一例である。また、乗継搬送部3は、請求の範囲の「搬送部」および「第3搬送部」の一例であり、乗継搬送部4は、請求の範囲の「搬送部」および「第3搬送部」の一例である。
【0023】
搬送部1は、複数(3つ)の搬送モジュール10を含んでいる。搬送部2は、複数(3つ)の搬送モジュール10を含んでいる。複数の搬送モジュール10は、互いに直列的に接続されて、スライダ30の搬送路が形成されている。スライダ30は、搬送部1および2をX方向に搬送され、乗継搬送部3および4により、搬送部1(2)から搬送部2(1)にY方向に搬送される。つまり、スライダ30は、搬送部1、乗継搬送部3、搬送部2、乗継搬送部4の順に搬送されて循環して用いられる。
【0024】
搬送モジュール10は、
図2に示すように、リニアモータ固定子11と、位置検知部12と、振動センサ13とを含んでいる。また、搬送モジュール10は、
図1および
図3に示すように、ガイドレール14を含んでいる。また、搬送モジュール10は、カバー15を含んでいる。なお、リニアモータ固定子11は、請求の範囲の「リニアモータ」の一例である。
【0025】
乗継搬送部3および4は、
図2に示すように、スライダ30をX方向に搬送する搬送機構20と、搬送機構20をY方向に移動させる移動機構21とを含んでいる。搬送機構20は、リニアモータ固定子11と、位置検知部12と、振動センサ13とを有している。移動機構21は、ガイドレールと、ボールねじ機構とを有している。
【0026】
スライダ30は、
図3に示すように、スライダ本体31と、リニアモータ可動子32と、ガイドブロック33と、磁気スケール34とを含んでいる。スライダ30は、複数設けられている。また、複数のスライダ30は、搬送部1、2、乗継搬送部3および4上を、各々独立して移動するように構成されている。
【0027】
搬送部1および2は、略平行に設けられている。搬送部1は、スライダ30をX2方向に搬送し、搬送部2は、スライダ30をX1方向に搬送する。搬送部1および2は、架台上に固定的に設けられている。つまり、搬送部1および2のリニアモータ固定子11およびガイドレール14は、固定的に設けられている。
【0028】
乗継搬送部3は、搬送部1および2のX2方向側に隣接した位置に配置されている。また、乗継搬送部4は、搬送部1および2のX1方向側に隣接した位置に配置されている。乗継搬送部3および4は、移動機構21によりガイドレール14およびリニアモータ固定子11をY方向に移動させる。乗継搬送部3および4は、スライダ30を搬送部1(2)から搬送部2(1)に搬送するために設けられている。
【0029】
リニアモータ固定子11は、電磁石を含み、電磁石に駆動電力(電流)が供給されることにより、スライダ30を移動させる。リニアモータ固定子11は、搬送方向(X方向)に沿って配置されている。また、
図3に示すように、リニアモータ固定子11の電磁石は、芯がY方向に沿って延びるように配置されている。
【0030】
位置検知部12は、スライダ30に設けられた磁気スケール34とY方向に対向するように設けられている。位置検知部12は、磁気スケール34の磁気を検知して、スライダ30の位置を検知するように構成されている。位置検知部12により検知したスライダ30の位置は、スライダ30の移動のフィードバック制御に用いられる。
【0031】
振動センサ13は、スライダ30の移動の際の振動を検知する。具体的には、振動センサ13は、搬送モジュール10間のスライダ30の移動、搬送モジュール10から乗継搬送部3へのスライダ30の移動、乗継搬送部3から搬送モジュール10へのスライダ30の移動の際の振動を検知する。また、振動センサ13は、加速度を計測して振動を検知する。振動センサ13は、搬送モジュール10間の乗り継ぎ部分の近傍に設けられている。また、振動センサ13は、搬送モジュール10と乗継搬送部3または4との乗り継ぎ部分の近傍に設けられている。また、振動センサ13は、乗継搬送部3において、搬送モジュール10との乗り継ぎ部分の近傍に設けられている。また、振動センサ13は、乗継搬送部4において、搬送モジュール10との乗り継ぎ部分の近傍に設けられている。
【0032】
ガイドレール14は、スライダ30の搬送方向(X方向)に沿って延びるように配置されている。ガイドレール14は、Y方向に沿って平行に一対設けられている。ガイドレール14は、X方向に隣接する搬送モジュール10間において、スライダ30が乗継可能に位置合わせされて配置されている。ガイドレール14には、スライダ30のガイドブロック33がX方向に移動可能に係合している。
【0033】
カバー15は、リニアモータ固定子11、位置検知部12、振動センサ13およびガイドレール14の上方を覆うように設けられている。つまり、カバー15は、スライダ30がない場合でも、リニアモータ固定子11、位置検知部12、振動センサ13およびガイドレール14の上方が露出しないように設けられている。
【0034】
スライダ本体31は、搬送対象物が載置されるように構成されている。また、スライダ本体31は、搬送方向(X方向)から見て、搬送部1および2のカバー15を囲むように設けられている。スライダ本体31には、リニアモータ可動子32と、ガイドブロック33と、磁気スケール34とが取り付けられている。
【0035】
リニアモータ可動子32は、リニアモータ固定子11をY方向において挟み込むように設けられている。リニアモータ可動子32は、搬送方向(X方向)に沿って配列された複数の永久磁石を含んでいる。
【0036】
ガイドブロック33は、ガイドレール14に沿って移動可能に設けられている。ガイドブロック33は、移動方向に沿って移動して循環する複数のボールを有している。
【0037】
磁気スケール34は、搬送方向(X方向)に沿って所定のパターンに着磁されている。
【0038】
制御部40は、搬送装置100の各部を制御するように構成されている。制御部40は、リニアモータ固定子11に供給する電力を制御して、スライダ30の移動を制御する。また、制御部40は、乗継搬送部3および4の移動機構21の駆動を制御して、搬送機構20の移動を制御する。制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、メモリなどを含んでいる。
【0039】
ここで、制御部40は、複数のガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータ固定子11の駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。また、制御部40は、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態に基づいて、乗り継ぎの状態を通知する制御を行うように構成されている。
【0040】
具体的には、制御部40は、スライダ30のガイドレール14の乗り継ぎの状態を表示部50に表示して通知する。
【0041】
また、制御部40は、搬送部1(2)から乗継搬送部3(4)へのガイドレール14間の乗り継ぎ部分、および、乗継搬送部3(4)から搬送部2(1)へのガイドレール14間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方における振動またはリニアモータ固定子11の駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。
【0042】
また、制御部40は、直列に接続された複数の搬送モジュール10のガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータ固定子11の駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。
【0043】
また、制御部40は、複数のスライダ30の各々を区別して、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。つまり、制御部40は、複数のスライダ30の各々を区別して、それぞれの位置を把握しながら移動を制御している。そして、制御部40は、スライダ30がガイドレール14間の乗り継ぎ部分に位置している状態も取得しているので、その際の乗り継ぎ状態を取得する。
【0044】
また、制御部40は、振動センサ13の振動検知結果に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成されている。
【0045】
また、制御部40は、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータ固定子11の駆動電力が所定のしきい値を越えた場合に、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている。たとえば、
図4に示す例のように、振動に起因する加速度がしきい値を越えた場合に、制御部40は、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を通知する。なお、しきい値は、スライダ30およびガイドレール14が損傷しない程度の値に設定されている。また、制御部40は、スライダ30がガイドレール14間の乗継部分を通過時の時間として所定の時間(たとえば、400ms)を設定する。そして、制御部40は、所定の時間内の振動を乗り継ぎ部分において発生している振動であると認識する。
【0046】
また、制御部40は、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータ固定子11の駆動電力が、初期状態から所定の割合分だけ増加した場合に、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を通知するように構成されている。たとえば、制御部40は、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動の最大値が初期状態(据付時)よりも所定の割合(たとえば、20%)増加した場合に、乗り継ぎの状態を通知する。また、制御部40は、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分におけるリニアモータ固定子11の駆動電力の最大値が初期状態(据付時)よりも所定の割合(たとえば、20%)増加した場合に、乗り継ぎの状態を通知する。
【0047】
たとえば、制御部40は、「場所P1において、日時T1からの振動が増加しています。場所P1の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。また、制御部40は、「場所P2、スライダD1において、日時T2からの振動が増加しています。場所P2の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認、および、スライダD1の状態確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。また、制御部40は、「場所P3において、日時T3からの乗継時電流値が増加しています。場所P3の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。また、制御部40は、「場所P4、スライダD2において、日時T4からの乗継時電流値が増加しています。場所P4の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認、および、スライダD2の状態確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。また、制御部40は、「場所P5において、日時T5からの振動および乗継時電流値が増加しています。場所P5の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。また、制御部40は、「場所P6、スライダD3において、日時T6からの振動および乗継時電流値が増加しています。場所P6の乗り継ぎ部分のガイドレール位置確認、および、スライダD3の状態確認を実施してください。」という通知を表示部50に表示する。
【0048】
表示部50は、搬送装置100の操作のための画面、搬送装置100の状態の情報、作業状態に関する情報などを表示する。また、表示部50は、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を表示する。表示部50は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの薄型のディスプレイにより構成されている。また、表示部50は、操作を受け付けるためのタッチパネルを含んでいる。
【0049】
(乗継状態通知処理)
図5を参照して、搬送装置100の制御部40による乗継状態通知処理について説明する。
【0050】
図5のステップS1において、制御部40は、スライダ30のガイドレール14間の乗継時の振動およびリニアモータ固定子11の駆動電流を取得する。ステップS2において、制御部40は、取得した振動または駆動電流がしきい値より大きいか、または、取得した振動または駆動電流が据付時から20%以上増加したか否かを判断する。取得した振動または駆動電流がしきい値より大きいか、または、取得した振動または駆動電流が据付時から20%以上増加した場合、ステップS4に進む。一方、取得した振動または駆動電流がしきい値以下、および、取得した振動または駆動電流が据付時から20%以上増加していなければ、ステップS3に進む。
【0051】
ステップS3において、制御部40は、問題なしと判断する。この場合、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態は通知されない。また、取得したスライダ30のガイドレール14間の乗継時の振動およびリニアモータ固定子11の駆動電流を保存する。その後、ステップS1に戻る。
【0052】
ステップS4において、制御部40は、特定のスライダ30の依存があるか否かを判断する。つまり、制御部40は、特定のスライダ30がガイドレール14間の乗り継ぎ部分を通過する場合に振動が発生しているか否かを判断する。複数のスライダ30において、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分で振動が発生している場合は、特定のスライダ30の依存がないと判断される。特定のスライダ30の依存があれば、ステップS5に進み、特定のスライダ30の依存がなければ、ステップS6に進む。
【0053】
ステップS5において、制御部40は、ガイドレール14間の乗継位置、特定のスライダ30の両方を確認するように通知する。また、特定のスライダ30のみが振動に関与している場合は、特定のスライダ30を確認するように通知する。その後、乗継状態通知処理が終了される。
【0054】
ステップS6において、制御部40は、ガイドレール14間の乗継位置を確認するように通知する。その後、乗継状態通知処理が終了される。
【0055】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、複数のガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得する制御部40を設ける。これにより、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分をスライダ30が通過する際に、振動または駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を把握することができるので、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分においてスライダ30に衝撃が生じることを事前に予測することができる。これにより、ガイドレール14およびスライダ30の予防保全に有効に反映させることができる。その結果、ガイドレール14の乗り継ぎ位置においてスライダ30に衝撃が生じることに起因して、ガイドレール14およびスライダ30に損傷が発生するのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態に基づいて、乗り継ぎの状態を通知する制御を行うように構成する。これにより、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎ状態に基づいて、異常が発生する前に通知を行うことができるので、ガイドレール14およびスライダ30に損傷が発生する前に、作業者はスライダ30、搬送部1、2、乗継搬送部3および4の保守点検を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、搬送部1(2)から乗継搬送部3(4)へのガイドレール14間の乗り継ぎ部分、および、乗継搬送部3(4)から搬送部2(1)へのガイドレール14間の乗り継ぎ部分の少なくとも一方における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成する。これにより、固定的に設けられた搬送部1および2に対して移動する乗継搬送部3(4)と、搬送部1または2とのガイドレール14間の乗り継ぎ部分において、位置合わせの精度の変化に起因する乗り継ぎ状態の変化を取得することができる。これにより、相対移動するガイドレール14間の乗り継ぎ部分において、ガイドレール14およびスライダ30に損傷が発生するのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、乗継搬送部3(4)と搬送部1または2とのガイドレール14の乗り継ぎ部分の近傍に、振動センサ13を設け、制御部40を、振動センサ13の振動検知結果に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成する。これにより、乗継搬送部3(4)と搬送部1または2とのガイドレール14の乗り継ぎ部分の近傍に設けた振動センサ13により、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎ時の振動を容易に取得することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、振動センサ13を、乗継搬送部3および4に設ける。これにより、移動する乗継搬送部3および4に振動センサ13を設けることにより、固定的に設けられた搬送部1または2に比べて振動しやすい乗継搬送部の振動を精度よく検出することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、直列に接続された複数の搬送モジュール10のガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力に基づいて、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成する。これにより、固定的に設けられた搬送部1または2の搬送モジュール10間のガイドレール14の乗り継ぎ部分のスライダ30の乗り継ぎ状態を取得することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力が所定のしきい値を越えた場合に、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を通知するように構成する。これにより、振動またはリニアモータの駆動電力が所定のしきい値を越えて大きくなった場合に、スライダ30、搬送部1、2、乗継搬送部3および4の保守点検を行うように作業者に促すことができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、ガイドレール14間の乗り継ぎ部分における振動またはリニアモータの駆動電力が、初期状態から所定の割合分だけ増加した場合に、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を通知するように構成する。これにより、初期状態から所定の割合分だけ振動またはリニアモータの駆動電力が増加した場合に、スライダ、搬送部1、2、乗継搬送部3および4の保守点検を行うように作業者に促すことができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、複数のスライダ30の各々を区別して、スライダ30のガイドレール14間の乗り継ぎの状態を取得するように構成する。これにより、個々のスライダ30またはガイドレール14間の乗り継ぎ部分のいずれに原因があるのかを容易に判別することができる。
【0065】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0066】
たとえば、上記実施形態では、ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動およびリニアモータの駆動電力の両方を検出して、ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動およびリニアモータの駆動電力のうち少なくとも一方を検出して、ガイドレール間の乗り継ぎの状態を取得してもよい。また、ガイドレール間の乗り継ぎ部分における振動を検出しない場合は、振動センサを設けなくてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、複数の搬送モジュールおよび乗継搬送部(第3搬送部)の各々に振動センサを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガイドレール間の乗り継ぎ部分におけるいずれか一方のみに振動センサを設けてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、乗継搬送部(第3搬送部)の移動機構がリニアモータおよびガイドレールを水平方向に移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3搬送部の移動機構がリニアモータおよびガイドレールを上下方向に移動させる構成でもよい。この場合、第1搬送部および第2搬送部は、上下方向に配列されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、乗継搬送部(第3搬送部)の移動機構がリニアモータおよびガイドレールを並進移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3搬送部の移動機構がリニアモータおよびガイドレールを回動させて移動させる構成でもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ガイドレール間の乗り継ぎの状態を表示部に表示して通知する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガイドレール間の乗り継ぎの状態を音声により通知してもよい。また、外部の端末に情報を送信して通知してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、搬送部(第1搬送部、第2搬送部)が各々3つの搬送モジュールを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、搬送部は、1、2または4以上の搬送モジュールを含んでいてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部による制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部による制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1、2 搬送部(第1搬送部、第2搬送部)
3、4 乗継搬送部(搬送部、第3搬送部)
10 搬送モジュール
11 リニアモータ固定子(リニアモータ)
13 振動センサ
14 ガイドレール
21 移動機構
30 スライダ
40 制御部
100 搬送装置