(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】撓み測定装置、撓み測定方法及び品質管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20230529BHJP
A63B 53/00 20150101ALI20230529BHJP
【FI】
G01N3/20
A63B53/00 B
(21)【出願番号】P 2022171790
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2023-01-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼公開日 令和3年11月1日 ▲2▼刊行物等 https://www.youtube.com/watch?v=xggmelu1k74 ▲1▼公開日 令和3年11月2日 ▲2▼刊行物等 https://www.youtube.com/watch?v=xggmelu1k74
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克典
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-082028(JP,A)
【文献】特開2021-101187(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03133646(DE,A)
【文献】特許第4335289(JP,B1)
【文献】米国特許第06526613(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169869(US,A1)
【文献】特開平11-178952(JP,A)
【文献】特開2014-228333(JP,A)
【文献】特開平02-061537(JP,A)
【文献】特開昭62-075225(JP,A)
【文献】実開平03-039138(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103018028(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
A63B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が固定されたシャフトの他端側に荷重を負荷する荷重負荷部を含む駆動装置と、
前記シャフトの撓み量を測定する測定装置と、
前記駆動装置及び前記測定装置を制御する制御装置と、を有し、
前記荷重負荷部は、
ロードセルを有し、
前記他端側
の周面に継続的に接触する測定ヘッド機構と、
前記シャフトの軸方向と交差する一軸方向に、前記測定ヘッド機構を移動させ
るロードセル移動機構と、
を含み、
前記測定装置は、
前記ロードセルに対して前記シャフト
の前記他端側から受ける力を測定する荷重測定部と、
移動する
前記測定ヘッド機構の変位量を測定する変位量測定部と、
を含み、
前記測定ヘッド機構は、前記シャフトの撓みに追従して前記他端側の前記周面に継続的に接触するように、前記ロードセル移動機構に対して回転可能に設けられている、撓み測定装置。
【請求項2】
前記測定ヘッド機構は、前記シャフト
の前記他端側の前記周面と継続的に接触
する少なくとも2個の接触コマを含む、請求項1に記載の撓み測定装置。
【請求項3】
前記少なくとも2個の接触コマは、回転可能に設けられている、請求項2に記載の撓み測定装置。
【請求項4】
前記少なくとも2個の接触コマのうち、前記シャフトの前記他端側と接触する2個の接触コマを結ぶ直線は、前記シャフトの前記軸方向に対して平行である、請求項2に記載の撓み測定装置。
【請求項5】
前記測定ヘッド機構は、
さらに、前記シャフトの撓みに追従して接触するための角度調整機構を
含む、請求項2
乃至請求項4のいずれか一項に記載の撓み測定装置。
【請求項6】
シャフトの一端側を固定し、
ロードセルを有する測定ヘッド機構を前記シャフトの他端側に接触させ、
前記測定ヘッド機構と連結されたロードセル移動機構により、前記測定ヘッド機構を前記シャフトの軸方向と交差する一軸方向に移動し、
前記シャフトの
前記他端側
の周面に荷重を負荷し、前記シャフトの撓み量を測定する
、撓み測定方法であって、
前記測定ヘッド機構は、前記シャフトの撓みに追従して前記他端側の前記周面に継続的に接触するように、前記ロードセル移動機構に対して回転可能に設けられ、
前記荷重は、前記荷重が負荷される
前記シャフト上の地点における
前記シャフトの半径方向に作用する反発力に一致する、撓み測定方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の撓み測定方法
を、前記シャフトを軸回りに回転させて複数回繰り返すことにより取得された撓み量のデータのばらつきを算出し、前記ばらつきに基づき前記シャフトの特性につき合否判定を行う、品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャフトの撓み測定方法及び測定方装置、並びにそれらを使用した品質管理方法に関し、更に詳しくはゴルフクラブ用のシャフト(カーボンシャフト、樹脂シャフト又は金属製シャフト)の撓みを高精度で測定するシャフトの撓み測定方法及びその装置並びにそれらを使用した品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブなどに使用されるシャフトの撓み測定方法として、例えば重り式測定方法、固有振動数測定方法などが使用されてきた。
【0003】
図1はこれらの従来の方法の概要を説明する模式図である。
重り式測定方法は、シャフトの一端(グリップ側)を水平に固定し、他端側(ヘッド側)の所定位置に所定重量の重りを吊り下げてシャフトを鉛直下方向に撓ませ、この時の撓み量を、スケール等の目盛りを用いて読み取る測定方法である。
【0004】
固有振動数測定方法は、シャフトの一端(グリップ側)を水平に固定し、他端側(ヘッド側)の所定位置に所定重量の重りを取り付け、シャフトを一定量まで撓ませた後、開放して振動させる。そして、その際の振動数を測定する方法である。
【0005】
しかし、重り式測定方法は、基本的に手作業になるため測定に時間がかかり、多数のシャフトを全数測定することは難しい。また、測定値のばらつきが大きく品質保証上の信頼性に欠けていた。また固有振動数測定方法は、例えばカーボンシャフトなどを測定する場合に、カーボンシャフト特有のいわゆる巻き癖が原因で振動方向が斜めになることがあり、やはり測定値のばらつきが大きく、品質保証上の信頼性に欠けるという問題点があった。
【0006】
特許文献1には、スイング中のシャフトにかかる曲げモーメントの分布を計測し、その計測されたデータとシャフトの曲げ剛性分布により求まる曲率分布よりシャフトの調子を含む特性を判定する方法が記載されている。
特許文献2には、支持フレームにシャフトの一端を固定し、他端側の所定位置にシャフトと直交する方向から荷重をかけてシャフトを撓ませ、シャフトの撓みに沿って撓み量検出センサーを移動させながらシャフトの撓み量を測定する方法であって、前記シャフトに荷重をかけて撓ませる際、荷重方向が常に一定になるように制御するシャフトの撓み測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-178952号公報
【文献】特開2003-315229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1及び特許文献2の方法を用いても、なお撓み量測定値のばらつきが大きく、品質保証上の信頼性に欠けるという問題があった。
【0009】
本発明者は、シャフトからの受ける力を、常にシャフトの軸方向に対し垂直な方向(半径方向)になるよう調整することにより、撓み測定値のばらつきを大きく低減させ、良好な品質管理を実現できることを今般見出した。
【0010】
従って、本発明の目的は、多数のシャフトの撓み量を効率的に自動測定する方法であり、且つ測定値のばらつきが大きく改善された撓み測定装置、撓み測定方法を提供するものである。さらに本発明の目的は、これらの測定方法を使用した信頼性の高い品質管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態における一態様の撓み測定装置は、ロードセルを有し、一端を固定されたシャフトの他端側周面に継続的に接触する測定ヘッド機構と、測定ヘッド機構を移動させることでシャフトに対して荷重を負荷するロードセル移動機構と、を有する荷重負荷部を有する駆動装置と、ロードセルに対してシャフトから受ける力を測定する荷重測定部と、ロードセル移動機構により移動する測定ヘッド機構の変位量を測定する変位量測定部と、駆動装置と測定装置とを制御する制御装置と、を有する。
【0012】
本発明の実施形態における一態様の撓み測定方法は、シャフトの一端側を固定し、シャフトの他端側周面に荷重を負荷し、シャフトの撓み量を測定することを含み、当該荷重は、シャフト上の荷重が負荷される地点におけるシャフトの半径方向に作用する反発力に一致する。
【0013】
本発明の実施形態における一態様の品質管理方法は、本発明の撓み測定方法により取得された撓み量のデータのばらつきを算出し、当該ばらつきに基づきシャフトの特性につき合否判定を行う、ことを含む。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、多数のシャフトの撓み量を効率的に自動測定することができ、且つ測定値のばらつきが大きく改善される。その結果、信頼性の高い品質管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来技術におけるシャフトの撓みを測定する方法を表す模式図である。
【
図2】本発明の一態様に係る撓み測定装置全体の概略図である方法を示す模式図である。
【
図3】本発明の一態様に係る撓み測定装置全体の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一態様に係る撓み測定方法を示す概略図である。
【
図5A】本発明の一態様に係る撓み測定装置における測定ヘッド機構の上面図である。
【
図5B】本発明の一態様に係る撓み測定装置における測定ヘッド機構の側面図(断面図)である。
【
図6A】本発明の一態様に係る撓み測定装置における測定ヘッド機構の動きを表す模式図である。
【
図6B】本発明の一態様に係る撓み測定装置における測定ヘッド機構の動きを表す模式図である。
【
図7A】本発明の一態様に係る撓み測定装置における荷重負荷の工程を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一態様に係る撓み測定方法における、シャフトの角度を回転させる際のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付して、説明が重複する場合にはその説明を省略する場合がある。また、図面においては、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0017】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0018】
本明細書において、実際に行われる撓み測定工程において鉛直上向方向又は鉛直上向きに近い方向を「上」又は「上方」とし、「下」又は「下方」とは、「上」又は「上方」の反対方向をいう。また、説明に上面図を使用する場合において、図面上の上方又は下方であり、実際は水平方向であるものを、説明の便宜上「上方」又は「下方」呼ぶ場合がある。
【0019】
本明細書中において、シャフトに荷重をかけて撓みを測定する場合、シャフトから荷重を押し戻そうとする反発力を反力と呼ぶ。また、シャフトにおける荷重を負荷させる地点における反力の方向であり、シャフトの接線方向に対して垂直かつ荷重が負荷される方向の逆向きの方向を「半径方向」と呼ぶ。
【0020】
<シャフト>
本発明の実施形態における一態様の撓み測定装置の測定対象であるシャフトについて説明する。近年、ゴルフクラブに利用されるシャフトとしては、主に金属からなるスチールシャフト及びカーボンファイバを用いたカーボンシャフトが挙げられる。
【0021】
カーボンシャフトの製造工程はここでは詳しく述べないが、カーボンシートを芯金に巻き付けテーピングし、熱硬化させ、その後芯金とテーピングを外し、研磨する。通常はこの段階で撓み測定を含むシャフトの材料特性に関する検査が行われ、検査に合格したシャフトに対して塗装され、出荷される。
【0022】
カーボンシャフトの検査は、上述のようにカーボン繊維の巻き癖に起因して、撓み測定値が測定方向により異なることがある。かかる撓み方向によるばらつきが生じた場合は、シャフトの再研磨などにより再調整され、撓み方向によるばらつきが低減され、次工程に送られることがある。
【0023】
<撓み測定装置の全体構成>
図2は、本発明の実施形態における一態様の撓み測定装置の構成を簡略化して表した概略図である。また、
図3は本発明の実施形態における一態様の撓み測定装置の構成を表すブロック図である。本発明の撓み測定装置は、シャフト202の搬送や撓み測定時の各部材や各機構の駆動を行う駆動装置320、シャフト202の撓み及びそれに関連する物性値を測定する測定装置340、駆動装置320の各機構の動き及び測定装置340における測定を制御し、さらに測定結果に基づき合否判断などを行う制御装置300を有する。
【0024】
また、
図2において、検査前のシャフト202の貯蔵場所である貯蔵部200、検査後のシャフト202を次工程に送る前の一時的な保管場所としての保管部226を有してもよい。
【0025】
図2に基づいて本発明の実施形態における一態様の撓み測定工程を簡単に説明する。
前述したシャフト202の製造工程において研磨工程を終えたシャフト202は、複数本まとめて貯蔵部200にて一時的に保管され、撓み測定の順番を待つ。
【0026】
撓み測定が行われる順番となったシャフト202は、駆動装置320におけるシャフト搬送部204により、測定台214上の固定ステージ221へ送られる。
【0027】
貯蔵部200から固定ステージ221へシャフト202を送るシャフト搬送部322の態様は特に限定されるものではなく、ロボットアームのような一本ずつ搬送するものであっても、コンベア式で順次連続的に搬送するものであってもよい。
【0028】
固定ステージ221へ送られたシャフトは、一端(グリップ側)を固定治具222により水平に固定される。その際、他端側(ヘッド側)は一軸ロボット212のレール217の上に重なるように配置される。
【0029】
レール217と重なるシャフト202の部分の周面に対し、一軸ロボット212のレール217上を、シャフト202の長手方向に対して略垂直方向に移動可能に配置された荷重負荷部324により、シャフト202に負荷が掛けられる。すわなち、荷重負荷部324における測定ヘッド機構216が、シャフト202の周面に接するように設置する。一軸ロボット212は制御装置300により制御される。測定ヘッド機構216はロードセル移動機構218と連結し、レール217上を移動することでシャフト202が撓む方向(
図2においては上方向)に移動させる。
【0030】
測定ヘッド機構216は、2つの接触コマ(
図5A:504)の両方がシャフト202の周面と接触を維持することによりシャフト202と接することができ、シャフト202を撓ませながら変位する構造になっているが、この構造は後述する。
【0031】
荷重負荷部324にはロードセル(
図5A:510)が設置されている。荷重負荷部324がシャフト202を撓ませながら移動する際、シャフト202は、測定ヘッド機構216の2つの接触コマに接触し続けるため、シャフト202と接触コマ504との2つの接点を結ぶ直線に対し垂直な方向(半径方向)の反力を与え続けることとなる。荷重負荷部324に加えられた反力は、荷重負荷部324に設置されたロードセル510のレール217上での変位に関する位置情報とともに制御装置300に信号として送信される。
【0032】
なお、一軸ロボット212は制御装置300により制御されてもよく、一軸ロボット212周辺に設置された操作盤230により制御されてもよい。
【0033】
撓み測定を終えたシャフト202は、シャフト搬送部204-2により、保管部226へ搬送された後、保管部226にて一時的に保管され、その後次工程へ送られる。
【0034】
駆動装置320は、ロボットアームやコンベアのような、測定装置内の各ステージ間でのシャフト202の搬送を行うシャフト搬送部204、シャフト202を撓ませるために荷重を負荷する荷重負荷部324、シャフト202の撓み方向のばらつきを測定する際に、シャフト202を軸回りに回転させるシャフト回転機構326を使用してもよい。
【0035】
測定装置340は、測定ヘッド機構216をシャフト202に接触させながら一軸ロボット212により変位させることにより、撓んだシャフト202から受ける反力を測定する荷重測定部342、またその際の荷重負荷部324の移動距離を測定する変位量測定部344を有する。
【0036】
制御装置300は、撓み測定装置100の各部の管理制御を行う装置であり、駆動装置320内の各部及び機構、並びに測定装置内の各部の制御を行う制御部302、荷重や変位距離などの測定に用いるアプリケーションソフト及び測定データなどを保管する記憶部304、測定データに基づきシャフト202の合否判定を行う判定部306を有する。以下、各部について詳細に説明する。
【0037】
<駆動装置>
前述のとおり、駆動装置320はシャフト202の搬送や撓み測定時の各部材や各機構の駆動を行う。
シャフト搬送部204は、前工程(研磨工程)を終えたシャフト202の撓みを測定し、合否判定を終えて次工程に送られるまでに、各装置間の移動を伴う必要がある場合に、当該シャフト202の場所を移動させるための部分である。
【0038】
例えば、シャフト202の場所を移動させるケースとしては、
図2における装置構成において、研磨工程を終え貯蔵部200に貯蔵されたシャフト202を測定台214に搬送する場合、或いは撓み測定が終わった後に次工程に回すために保管部226に移動させるケースが想定される。
【0039】
シャフト搬送部204としては、多軸アームロボットや装置間に設置されたコンベアなど、或いはそれらの組み合わせが利用できる。
シャフト搬送部204の動きは制御装置300内の制御部302で、他の工程、例えば撓み測定の工程などの動きと連動してコントロールされる。
【0040】
荷重負荷部324は、シャフト202に荷重を負荷し、シャフト202を撓ませる動作を行う部分である。
荷重負荷部324は、シャフト202に直接接触する機構である測定ヘッド機構216及びロードセル(
図5A:510)を含む測定ヘッド機構216を変位させることによりシャフト202を所定の方向に押し、撓ませるロードセル移動機構218を含む。
【0041】
図4は、本発明の実施形態における一態様の撓み測定装置による撓み測定工程を表す模式図であり、装置全体を上側から見た上面図である。
シャフト搬送部204により測定台に搬送されたシャフト202は、固定治具222によりグリップ側の一端が固定される。その時点ではシャフト202は撓んでおらず他端(ヘッド側)はAの位置で静止している。
図4におけるシャフト202の下側(実際はシャフト202の真横)から荷重負荷部324における測定ヘッド機構216が接触される。
【0042】
Aの位置から測定ヘッド機構216が一軸ロボット212のレール217上を上側に向かって(実際は水平かつシャフト202の長手方向に対して垂直方向)に移動し、B地点に到達した場合、シャフト202はグリップ側の一端が固定されているため一定量撓むこととなる。その場合のレール217の平行な移動距離D1を基準としてシャフト202の撓み量の評価に使用する。
【0043】
測定ヘッド機構216がB地点まで変位した際、測定ヘッド機構216はシャフト202との接触部位から反力Nを受けることとなる。本発明の測定ヘッド機構216は、この反力Nを常にシャフト202との接触部分における半径方向から受けることができる構造になっている。
【0044】
ここで、測定ヘッド機構216について詳細に説明する。
図5Aは、本発明の実施形態における一態様の測定ヘッド機構216上面図である。
図5Bは
図5A内のI-I‘線に沿って切断した一部断面となっている側面図である。測定ヘッド機構216はシャフト202と一対の接触コマ504にて常に2点で接触する。接触コマ504は
図5Aに記載された回転軸514回りに回転可能に設置されている。
【0045】
接触コマ504には、シャフトと202と接触する地点に凹部518が設けられており、この凹部518はシャフト202を接触コマ504の中心(軸方向)に誘導する構造となっている。
接触コマ504は連結ブロック506に設けられた取付部材506a上に固定される。
【0046】
連結ブロック506は、取付部材506aの位置とは反対側においてロードセル510と接続している。接触コマ504に対して外力がかかると、そのまま連結ブロック506に伝達され、その際、連結ブロック506がロードセル510に押し付けられることにより、ロードセル510は外力の情報を電気信号として、配線512を通って制御装置300に伝達させる。
【0047】
連結ブロック506は、リニアガイド508(508-1及び508-2)を介して測定ヘッドベース502上に設置される。リニアガイド508は、接触コマ504を通じて測定ヘッド機構216に負荷される荷重の方向を調整する機構であり、ロードセル510に対して常に一定方向の力がかかるようにすることができる。
シャフト202の撓み測定において、シャフト202から受ける反力Nの方向は、実際は3次元的でありロードセル510に対する方向は常に一定とは言えない。そのため、リニアガイド508を用いて三次元的に変動する力の方向を常に一定方向に修正し、測定値のばらつきを抑える役割を担っている。リニアガイド508は、反力Nがロードセルに垂直に伝達されるものであればその内容は限定されるものではなく、例えばリニアシャフトなどを使用してもよい。
【0048】
測定ヘッドベース502にはロードセル510を固定するための背面板502aが設けられもよいが、ロードセル510を固定する態様はこれに限定されるものではない。
【0049】
測定ヘッドベース502は回転軸514を介して固定ベース220に接続されており、回転軸514回りに回転可能である。測定ヘッドベース502が回転可能となることにより、測定ヘッドベース502上に固定された接触コマ504がシャフト202の変位に追従可能となり、反力Nの方向が変わってもロードセルに対して一定の方向から力を伝達させることができる。
【0050】
回転軸514は測定ヘッドベース502側、又は固定ベース220側のいずれに固定されていてもよい。
図5Bにおいて、回転軸514は測定ヘッドベース502に固定されており、固定ベース220においてベアリング520を設け、固定ベース220との接合部位にて回転可能となっている。
なお、回転軸514の中心線(
図5B中の破線)は、シャフト202の断面の中心を通るように調整されてもよい。回転軸514とシャフト202の位置をかかる関係に調整することにより、接触コマ504をシャフト202に接触させ続けることが可能になる。
【0051】
図6A及び
図6Bはシャフト202の変位に、測定ヘッド機構216が追従する様子を表す。
図6Aは、シャフト202からの反力Nが無い状態であるが、
図6Bのようにシャフト202の位置が変位した場合、測定ヘッドベース502に取り付けられた部分が回転し、シャフト202の変位に追従し2つの接触コマ504の両方をシャフト202へ接触させ続けることができる。その際、固定ベース220の位置は変動しない。
【0052】
なおシャフト202からの反力を、測定ヘッド機構216とシャフト202との接触部位(2つの接触コマ504)の接触点を結ぶ直線に対し垂直な方向(半径方向)に保つことにより、シャフト202から受ける反力とシャフト202の撓み測定値のばらつきが低減し、信頼性の高い品質管理を実現することができる。
【0053】
なお、
図5Aでは接触コマ504は2つであるが、3つ以上の接触コマ504を有し、いずれもシャフト202の外周面と接触する態様であってもよい。3つ以上の接触コマ504がシャフト202の周面と接する場合は、複数の接触コマ504の中から選択される少なくとも2つ以上の接触コマ504の接触点を結ぶ直線に対し垂直な方向(半径方向)に保つように、調整することができる。
【0054】
図4に戻り、ロードセル移動機構218について説明する。ロードセル移動機構218はロードセル510を搭載した部分、(
図4の場合は測定ヘッド機構216)を変位させることによりシャフト202を所定の方向に押すことで荷重を負荷し、撓ませる機構である。
【0055】
図4において、ロードセル移動機構218は一軸ロボット212となり、一軸ロボット212のレール217上において、測定ヘッド機構216をシャフト202に接触させたまま移動させることにより、シャフト202を撓ませることができる。
【0056】
ロードセル移動機構218は制御装置300により、その駆動を制御されてもよいが、測定操作の便宜より撓み測定装置周辺に操作盤(
図2における230)を設けて制御してもよい。
ロードセル移動機構218は、ロードセル510を搭載した部分の位置をコントロールできれば一軸ロボットに限定されるものではない。
【0057】
シャフト回転機構326は、シャフト202の撓み測定をシャフト202の円周方向に複数通りに変化させたパターンを測定したい場合に使用される。前述のように、カーボンシャフトにはシャフト202による巻き癖が有る場合があり、複数の半径方向に撓ませて測定した結果を総合的に判断することで、シャフト202の良好な品質管理を行うことができる。
【0058】
シャフト回転機構326は、シャフト202を軸回りに所定の角度回転させることができれば特に限定されるものではなく、例えば公知のロボットアームを使用して、その動きを制御装置300にて制御させてもよい。
【0059】
<測定装置>
測定装置340はシャフト202の撓み量を測定し、評価するためのデータを生成する部分である。測定装置340は、ロードセル510に負荷される荷重を測定する荷重測定部342、及びロードセル510を搭載した部分、(
図4の場合は測定ヘッド機構216)の変位(
図4の場合は移動距離D1)を測定する変位量測定部344を有する。
【0060】
荷重測定部342は、ロードセル510に負荷される荷重が測定できれば、特に限定されない。
図5Aの場合、ロードセル510自体が荷重測定部342と同一であるが、例えば、弾性定数が分かっている弾性体を設置し、反力Nを負荷した場合の変位を測定することにより、ロードセル510に負荷される荷重の測定値としてもよい。
【0061】
変位量測定部344は、ロードセル510を搭載した部分の変位が測定できれば特に限定されるものではない。
図4においては、一軸ロボットに搭載された変位量測定機器(図示せず)が変位量測定部344に相当するが、変位量測定部344は一軸ロボット212と一体になっていなくともよく、例えば撓み測定装置を上面から撮像し、撮像画像によりロードセル510を搭載した部分の変位を算出してもよい。
【0062】
変位量測定部344で測定される変位の態様は測定結果に基づく評価の基準により適宜定めればよく、限定されるものではない。例えば、
図4においては一軸ロボット212におけるレールに平行な方向の移動距離D1を用いているが、
図4における変位角度Cを使用してもよい。
【0063】
<制御装置>
図3に戻り、制御装置300を説明する。制御装置300は、駆動装置320及び測定装置340の動作を制御する制御部302、並びに前記各部の稼働に使用されるプログラム及びデータを保存する記憶部304、及び測定結果に基づきシャフト202品質評価を行う判定部306により構成される。
【0064】
制御部302は、例えば、駆動装置320のシャフト搬送部204における6軸ロボットなどの動作制御、ロードセル移動機構218となる一軸ロボットの動作制御、シャフト回転機構326の回転制御、或いは荷重測定部342により測定された荷重データ及び変位量測定部344により測定されたロードセル510を搭載した部分の変位データ分析などを行うことができる。
【0065】
記憶部304は、制御部302又は各部の駆動に必要なプログラムを格納する。さらに、各部で取得されたデータ、例えば変位量測定部344から送信される測定データなどに係るデータなどを保存する。
【0066】
制御部302及び記憶部304は、市販のコンピュータとメモリの組み合わせであってよく、駆動装置320及び測定装置340との間で、双方向にデータの授受ができることが好ましい。
【0067】
<撓み測定方法>
次に、本発明の実施形態における一態様に係るシャフト202の測定方法について説明する。
図4において、前述の通り、シャフト202は固定ステージ221上の固定治具222により固定され、位置Aに配置される。
【0068】
測定にあたり、測定者は予めシャフト202の測定したい特性項目を設定する。例えば、所定の荷重mが負荷された際に、一軸ロボット212のレール上での変位D1を測定する場合を用いた例にて説明する。
【0069】
目標となる荷重を負荷する工程は、正確な測定値を算出するために、特に弾性体であるシャフト202が振動しないよう、数段階に分けて行うことが好ましい。
図7Aは、本発明の実施形態の態様における一態様に係る撓み測定時の荷重負荷のフローチャートである。また
図7Bは、前記フローチャートを時間と荷重とのグラフで表した図である。
【0070】
測定ヘッド機構216がシャフト202に接触した状態から開始し(ステップS101)、目標荷重mの30%~50%程度の荷重aまで荷重が増加するよう、ロードセル移動機構218により変位させる(ステップS102)。その後、シャフト202の振動を抑制するため、いったん低速で荷重をbまで下げシャフト202の振動を抑制する(ステップS103)。その後、目標荷重Dの80~90%程度の荷重であるcとなるまで高速で変位させ(ステップS104)、その後、低速で目標荷重mに到達させる。目標荷重mに到達した際の距離d1を測定し、シャフト202の撓み測定として制御装置300にデータが送信され、データは制御装置300の記憶部304に保存される。
【0071】
シャフト202は弾性体であるため、このような数段階からなる荷重負荷の工程により、シャフト202の無用な振動を抑制でき、ばらつきの少ない測定データを得ることができる。
【0072】
このような段階式の荷重負荷工程は、カーボンシャフトなどしなりが大きいシャフト202を測定する場合には有効であるが、これに限定されるものではない。測定されるシャフト202の材質や形状に応じて、測定者側で適宜設定することができる。
【0073】
図8は、シャフト202に対する荷重負荷について、シャフト202の複数の半径方向にて測定する場合の工程を表すフローチャートである。
図8では45度ずつ4回に分けて測定しており(ステップS201~S204)それぞれの測定結果に応じて、シャフト202の品質についての合否判定を下すことができる。
【0074】
シャフト202に対する荷重負荷の方向については、1本のシャフト202に対し少なくとも2種類の角度で行うことが好ましく、4種以上の角度から荷重を負荷することがより好ましい。
【0075】
<品質管理>
シャフト202の品質管理に伴う、撓み測定値に基づく合否判定について説明する。
本発明の実施形態における一態様では、撓み測定により得られたデータの評価者は品質管理に伴う評価項目及び判定基準を任意に設定することができる。
【0076】
評価項目としては、例えば目標荷重の設定数、荷重負荷プロセス、荷重負荷方向(角度)を決めたのち、各パターンにおいて測定される撓みの位置変位(
図4におけるd1)、シャフト202の角度変位(
図4におけるc1)など対して閾値を設定して管理することができる。
【0077】
本発明の実施形態における一態様では、評価者は測定値のばらつきを評価項目とすることができる。例えば前記閾値を逸脱したパターンの割合を使用してもよいし、閾値を逸脱しないまでも、測定最大値と最小値との差分、或いは標準偏差(σ)などを評価項目としてもよい。
【0078】
本発明の実施形態における一態様では、同一の条件で複数回の測定を行うことが好ましい。また、同一の条件で行う複数の測定において、その都度、固定治具222を外し、掴み返したのち再度測定を行う態様にしてもよい。
【0079】
なお、測定結果に基づく評価の結果、不合格となった製品については廃棄してもよいし、測定結果をフィードバックすることにより、シャフト202の一部を研磨する処置を施したのち、再度評価を行ってもよい。
【0080】
本明細書に記載された一実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、も
しくは設計変更を行ったもの、又は工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったもの
も、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0081】
また、本明細書に記載された一実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【0082】
<変形例>
上述の本発明の実施形態の一態様である撓み測定装置では、荷重負荷は一軸ロボットを用いた一方向に限定されていた。しかし、荷重を負荷する方向は一方向に限定されるものではなく、任意の方向にしてもよい。
その場合、シャフト202の半径方向について荷重の負荷方向を変えるために軸回りに回転させていた工程が不要となり、撓み測定の工程を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0083】
200:貯蔵部、202:シャフト、204:シャフト搬送部、212:一軸ロボット、216:測定ヘッド機構、217:レール、220:固定ベース、222:固定治具、218:ロードセル移動機構、300:制御装置、302;制御部、304:記憶部、306:判定部、326:シャフト回転機構、340:測定装置、342:荷重測定部、344:変位量測定部、502:測定ヘッドベース:504:接触コマ、506:連結ブロック、508:リニアガイド、510:ロードセル、512:配線