(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】人工知能基盤の射出成形システムおよび成形条件生成方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2022520141
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(86)【国際出願番号】 KR2020015202
(87)【国際公開番号】W WO2021091191
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142773
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141748
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509023012
【氏名又は名称】エル エス エムトロン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS Mtron Ltd.
【住所又は居所原語表記】127, LS-ro, Dongan-gu, Anyang-si, Gyeonggi-do, 14119 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヒョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、キョンホ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ、サロブ
(72)【発明者】
【氏名】リー、スンチョル
(72)【発明者】
【氏名】リー、チヒョン
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/182145(WO,A1)
【文献】特開2015-083352(JP,A)
【文献】特開2017-030152(JP,A)
【文献】国際公開第2019/051011(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0108996(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を金型に注入して製品を射出成形する射出成形機(100);
前記製品の射出成形時に前記金型内部に注入されている前記成形材料の粘度プロファイルおよび射出圧力値のうち少なくとも一つを含む現在射出状態データを獲得する射出状態データ獲得部(710);
予め定められたターゲット射出状態データで学習された成形品質維持モデル(735)に前記現在射出状態データを入力して成形品質維持の有無を判断する判断部(720);および
前記判断部(720)によって成形品質が維持されないものと判断されると、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを追従するように既設定された成形条件を変更させる成形条件設定部(730)を含む
ものであり、
前記射出状態データ獲得部(710)は、射出成形される前記製品の厚さおよび前記金型内部で時間の変化による圧力変化量を利用して前記粘度プロファイルを獲得することを特徴とする、人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項2】
前記成形条件設定部(730)は前記成形条件のうち、射出速度、バレル温度、および金型温度のうち少なくとも一つを変更させることを特徴とする、請求項1に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項3】
前記ターゲット射出状態データは、良品の射出成形時に獲得されたターゲット粘度プロファイルおよび前記良品の射出成形時に測定されたターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項4】
前記判断部(720)は、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを基準として設定された臨界範囲を外れるものと判断されると成形品質が維持されないものと判断することを特徴とする、請求項1に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項5】
前記判断部(720)によって成形品質が維持されないものと判断されると、
前記成形条件設定部(730)は、前記現在射出状態データと前記ターゲット射出状態データ間の偏差分を算出し、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを追従するように、予め定められた射出速度制限値内で射出速度を前記偏差分に比例する値だけ変更することを特徴とする、請求項1に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項6】
前記成形条件設定部(730)は、前記射出速度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記射出速度が前記射出速度制限値を外れることになる場合、前記射出速度を前記射出速度制限値に変更し、予め定められたバレル温度制限値内でバレル温度を前記偏差分に比例する値だけ変更することを特徴とする、
請求項5に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項7】
前記成形条件設定部(730)は、前記バレル温度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記バレル温度が前記バレル温度制限値を外れることになる場合、前記バレル温度を前記バレル温度制限値に変更し、予め定められた金型温度制限値内で金型温度を前記偏差分に比例する値だけ変更することを特徴とする、
請求項6に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項8】
前記成形条件設定部(730)は、前記金型温度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記金型温度が前記金型温度制限値を外れることになる場合、前記金型温度を前記金型温度制限値に変更することを特徴とする、請求項7に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項9】
良品の射出成形時に測定された複数個のターゲット粘度プロファイルおよび複数個のターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを含む前記ターゲット射出状態データでニューラルネットワークを学習させて前記成形品質維持モデル(735)を生成するモデル生成部(740)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工知能基盤の射出成形システム。
【請求項10】
成形材料を金型に注入して製品を射出成形する時、前記金型内部に注入されている前記成形材料の粘度プロファイルおよび射出圧力値のうち少なくとも一つを含む現在射出状態データを獲得するものであり、
前記粘度プロファイルは、射出成形される前記製品の厚さおよび前記金型内部で時間の変化による圧力変化量を利用して獲得される、段階;
良品の射出成形時に測定されたターゲット粘度プロファイルおよびターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを含むターゲット射出状態データで学習された成形品質維持モデル(735)に前記現在射出状態データを入力して成形品質維持の有無を判断する段階;および
成形品質が維持されないものと判断されると、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを追従するように既設定された成形条件を変更させる段階を含むことを特徴とする、人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【請求項11】
前記成形条件を変更させる段階は、
前記成形条件のうち、射出速度、バレル温度、および金型温度のうち少なくとも一つを変更させることを特徴とする、
請求項10に記載の人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【請求項12】
前記成形条件を変更させる段階は、
成形品質が維持されないものと判断されると、前記現在射出状態データと前記ターゲット射出状態データ間の偏差分を算出し、予め定められた射出速度制限値内で射出速度を前記偏差分に比例する値だけ変更する段階を含むことを特徴とする、請求項10に記載の人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【請求項13】
前記成形条件を変更させる段階は、
前記射出速度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記射出速度が前記射出速度制限値を外れることになる場合、前記射出速度を前記射出速度制限値に変更し、予め定められたバレル温度制限値内でバレル温度を前記偏差分に比例する値だけ変更する段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項12に記載の人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【請求項14】
前記成形条件を変更させる段階は、
前記バレル温度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記バレル温度が前記バレル温度制限値を外れることになる場合、前記バレル温度を前記バレル温度制限値に変更し、予め定められた金型温度制限値内で金型温度を前記偏差分に比例する値だけ変更する段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項13に記載の人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【請求項15】
前記成形条件を変更させる段階は、
前記金型温度を前記偏差分に比例する値だけ変更すると前記金型温度が前記金型温度制限値を外れることになる場合、前記金型温度を前記金型温度制限値に変更する段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項14に記載の人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形システムに関し、より具体的には射出成形システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機で製品を製造するためには、温度、速度、圧力、または時間などのような多様な成形条件が適切に設定されないと品質が優秀な製品が生産され得ない。しかし、適切な成形条件が設定された状態で射出成形が遂行されても、射出成形時に周囲の温度/湿度の変化または成形材料の物性変化などのような外乱によって優秀な品質の製品が生産されないこともある。
【0003】
これに伴い、均一な品質の製品を生産するためには周囲の環境や成形材料の物性変化などによる成形条件の変更が必要であるが、作業者が成形条件を変更する場合、同一の外乱が発生しても作業者により成形条件が異なって設定され得るため、均一な成形品質を期待し難いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前述した問題点を解決するためのもので、製品の射出成形時に外乱によって不良製品が生産される時、良品が生産され得るように成形条件を変更させることができる、人工知能基盤の射出成形システムを提供することをその技術的課題とする。
【0005】
また、本発明によると、ディープラーニング基盤の成形品質維持モデルを利用して優秀な成形品質が維持され得る成形条件を設定できる、人工知能基盤の射出成形システムを提供することをその技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための本発明の一側面に係る人工知能基盤の射出成形システムは、成形材料を金型に注入して製品を射出成形する射出成形機100;前記製品の射出成形時に前記金型内部に注入されている前記成形材料の粘度プロファイルおよび射出圧力値のうち少なくとも一つを含む現在射出状態データを獲得する射出状態データ獲得部710;予め定められたターゲット射出状態データで学習された成形品質維持モデル735に前記現在射出状態データを入力して成形品質維持の有無を判断する判断部720;および前記判断部720によって成形品質が維持されないものと判断されると、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを追従するように既設定された成形条件を変更させる成形条件設定部730を含むことを特徴とする。
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の他の側面に係る人工知能基盤射出成形システムの成形条件生成方法は、成形材料を金型に注入して製品を射出成形する時、前記金型内部に注入されている前記成形材料の粘度プロファイルおよび射出圧力値のうち少なくとも一つを含む現在射出状態データを獲得する段階;良品の射出成形時に測定されたターゲット粘度プロファイルおよびターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを含むターゲット射出状態データで学習された成形品質維持モデル735に前記現在射出状態データを入力して成形品質維持の有無を判断する段階;および成形品質が維持されないものと判断されると、前記現在射出状態データが前記ターゲット射出状態データを追従するように既設定された成形条件を変更させる段階を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、製品の射出成形時に外乱によって不良製品が生産される時、ディープラーニング基盤のニューラルネットワークで具現された成形条件生成装置が自動で成形条件を変更させることができるため、製品の品質が向上するようにすることができるという効果がある。
【0009】
また、本発明によると、成形条件の変更が成形条件生成装置によって自動で遂行されるため、熟練した専門家がなくても短い時間内に成形条件を良品条件に変更させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る人工知能基盤の射出成形システムを示している図面である。
【0011】
【
図2】本発明の一実施例に係る射出成形機の構成を示している図面である。
【0012】
【
図3】固定金型と移動金型が型開されている姿を示している図面である。
【0013】
【
図4】移動部によって固定金型と移動金型が型閉されることを示している図面である。
【0014】
【
図5】本発明の一実施例に係る成形条件生成装置の構成を示している図面である。
【0015】
【
図6】本発明の一実施例に係る成形条件生成方法を示しているフローチャートである。
【0016】
【
図7】本発明の一実施例に係る成形条件変更方法を示しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付される図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施例に係る人工知能基盤の射出成形システムを示している図面である。
【0019】
本発明に係る人工知能基盤の射出成形システム(10、以下「射出成形システム」という)は、成形材料を利用して最適な成形条件に従って製品を生産する。このために
図1に図示された通り、射出成形システム10は射出成形機100および成形条件生成装置200を含む。
【0020】
本発明に係る射出成形機100は製品を製造するために射出成形を遂行する。
【0021】
図2は、本発明の一実施例に係る射出成形機100の構成を示している図面である。
図1および
図2を参照して射出成形機100についてより具体的に説明する。
【0022】
図1および
図2に図示された通り、本発明に係る射出成形機100は射出装置102および型締装置103を含む。
【0023】
射出装置102は型締装置103に溶融状態の成形材料を供給する。射出装置102はバレル121、バレル121の内部に配置された射出スクリュー122、および射出スクリュー122を駆動させる射出駆動部123を含むことができる。バレル121は第1軸方向(X軸方向)に対して平行に配置され得る。第1軸方向(X軸方向)は射出装置102および型締装置103が互いに離隔した方向に対して平行な方向であり得る。バレル121の内部に成形材料が供給されると、射出駆動部123は射出スクリュー122を回転させることによってバレル121の内部に供給された成形材料を第1方向(FD矢印方向)に移動させることができる。この過程で、成形材料は摩擦および加熱によって溶融し得る。第1方向(FD矢印方向)は射出装置102から型締装置103に向かう方向であって、第1軸方向(X軸方向)に対して平行な方向であり得る。溶融状態の成形材料が射出スクリュー122に対して第1方向(FD矢印方向)側に位置すると、射出駆動部123は射出スクリュー122を第1方向(FD矢印方向)に移動させることができる。これに伴い、溶融状態の成形材料はバレル121から型締装置103に供給され得る。
【0024】
型締装置103は溶融状態の成形材料を冷却を通じて凝固させる。型締装置103は固定金型150が結合された固定型板131、移動金型160が結合された移動型板132、および移動型板132を第1軸方向(X軸方向)に沿って移動させる移動部133を含むことができる。
【0025】
図3および
図4は、移動部が固定金型と移動金型を型閉させることを示している図面である。
【0026】
移動部133が移動型板132を第2方向(SD矢印方向)に移動させて移動金型160と固定金型150を型閉させると、射出装置102は移動金型160と固定金型150の内部に溶融状態の成形材料を供給する。第2方向(SD矢印方向)は第1軸方向(X軸方向)に対して平行し、かつ第1方向(FD矢印方向)に対して反対となる方向である。その後、型締装置103が移動金型160と固定金型150の内部に満たされた溶融状態の成形材料を冷却を通じて凝固させると、移動部133は移動型板132を第1方向(FD矢印方向)に移動させることによって移動金型160と固定金型150を型開させる。
【0027】
型締装置103はタイバー134を含むことができる。タイバー134は移動型板132の移動をガイドする。移動型板132はタイバー134に移動可能に結合され得る。移動型板132はタイバー134に沿って第1軸方向(X軸方向)に移動することができる。タイバー134は第1軸方向(X軸方向)に対して平行に配置され得る。タイバー134は固定型板131および移動型板132それぞれに挿入されるように結合され得る。
【0028】
一方、本発明に係る射出成形機100は成形条件生成装置200により生成された成形条件に従って成形材料を型閉された移動金型160と固定金型150に供給して製品を生産する。以下では、移動金型160および固定金型150を金型と記載することにする。
【0029】
成形条件生成装置200は成形条件を生成して射出成形機100に伝達する。この時、成形条件生成装置200は最適な成形条件を生成するために、該当成形条件に従って生産された製品を利用して成形条件が適合であったかどうかを判断する。
【0030】
以下、
図5を参照して本発明に係る成形条件生成装置200についてより具体的に説明する。
【0031】
図5は、本発明の一実施例に係る成形条件生成装置の構成を示している図面である。
図5に図示された通り、成形条件生成装置200は射出状態データ獲得部710、判断部720、成形条件設定部730、および成形品質維持モデル735を含む。
図5では判断部720、成形条件設定部730、および成形品質維持モデル735が別個の構成であるものとして図示したが、これは一例に過ぎず、判断部720および成形条件設定部730はソフトウェアの形態で構成された一つのエンジン725で具現されてもよい。また、本発明に係る成形条件生成装置200は
図5に図示された通り、モデル生成部740およびデータベース750をさらに含んでもよい。
【0032】
射出状態データ獲得部710は射出成形機100が製品を射出成形している時、射出成形機100から射出状態データを獲得する。一実施例において、射出状態データは金型内部に注入されている成形材料の粘度プロファイルおよび射出圧力値のうち少なくとも一つを含むことができる。この時、成形材料の粘度プロファイルは射出製品の厚さ、金型内部の時間の変化による圧力変化量に基づいて算出され得る。
【0033】
例えば、射出状態データ獲得部710は下記の数学式1を利用して成形材料の粘度プロファイルを算出することができる。
【0034】
【0035】
数学式1で、ηは粘度(Visocity)を示し、σwはせん断応力(Wall Shear Stress)を示し、γwはせん断率(Wall Shear Rate)を示す。また、Hは射出製品の厚さを示し、Lは圧力センサと温度センサ間の距離(または2個の圧力センサ間の距離)で定義される流動距離を示し、△Pは圧力変化量を示し、△tは時間変化量を示す。ここで、圧力変化量は流動距離Lだけ流動する間変化した圧力の量を意味し、時間変化量は流動距離Lだけ流動する間にかかる時間を意味する。
【0036】
このために、射出状態データ獲得部710は射出成形機100による射出作業が進行中であるとき、時間変化量による金型内部の圧力変化量を測定したり射出圧力を測定することができる。射出状態データ獲得部710は測定された時間変化量、圧力変化量、射出製品の厚さ、流動距離を利用して成形材料の粘度プロファイルを算出することになる。
【0037】
射出状態データ獲得部710は、予め定められた時点ごとにまたは判断部720から射出状態データ獲得要請が受信されるたびに射出成形機100から射出成形データを獲得して判断部720に提供することができる。以下、予め定められた時点ごとにまたは射出状態データ獲得要請が受信されるたびに獲得される射出状態データを現在射出状態データと指称することにする。
【0038】
一方、射出状態データ獲得部710は射出成形機100によって過去に生産された製品が予め定められた条件を満たす良品であったとき、該当製品の射出成形時に獲得された射出状態データをターゲット射出状態データとして決定し、決定されたターゲット射出状態データをデータベース750に保存することができる。ターゲット射出状態データはターゲット粘度プロファイルおよびターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを含むことができ、ターゲット粘度プロファイルは生産された製品が予め定められた条件を満たす良品であったとき、該当製品の射出成形時に測定される時間変化量、圧力変化量、射出製品の厚さ、流動距離に基づいて算出され得る。
【0039】
判断部720は射出状態データ獲得部710によって獲得された現在射出状態データを利用して、製品の品質が予め定められた成形条件によって射出された製品の品質と同一に維持されるかどうかを判断する。この時、予め定められた成形条件は成形条件設定部730により射出成形機100の初期動作時に設定された初期成形条件であり得、このような初期成形条件は良品生産時に獲得された成形条件であり得る。
【0040】
一実施例において、判断部720は射出状態データ獲得部710によって獲得された現在射出状態データを成形品質維持モデル735に入力することによって、成形品質が維持されているかどうかを判断することができる。この時、成形品質維持モデル735はターゲット射出状態データで学習されているディープラーニング基盤のニューラルネットワーク(Neural Network)であり得、成形品質維持モデル735は入力された現在射出状態データがターゲット射出状態データを基準として設定される臨界範囲から外れるものと判断されると、成形品質が維持されないものと判断することができる。
【0041】
成形条件設定部730は、射出成形機100の初期動作時に適用される初期成形条件を設定して射出成形機100に出力する。一実施例において、初期成形条件は金型内部の温度および圧力、射出圧力、バレル温度、射出速度、保圧時間、および保圧圧力のうち少なくとも一つを含むことができる。この時、初期成形条件は前述した通り、良品生産時に獲得された成形条件として設定され得る。
【0042】
特に、本発明に係る成形条件設定部730は判断部720による成形品質維持の有無の判断結果により、射出成形機100に適用された成形条件を変更させることができる。成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されているものと判断されると、現在設定されている成形条件を維持するものと決定する。しかし、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断されると、射出状態データ獲得部710によって獲得された現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように成形条件を変更させる。
【0043】
一実施例において、成形条件設定部730は成形条件のうち、射出速度、バレル温度、および金型温度のうち少なくとも一つを変更させることができる。成形条件設定部730は射出速度、バレル温度、および金型温度のうち、適用が容易で迅速に適用できる成形条件から先に変更させることができる。一例として、射出速度は即刻に変更が可能成形条件であるので、成形条件設定部730は射出速度を最も先に変更させるものと決定することができる。バレル温度は、制御は可能であるものの、射出速度に比べて適用にかかる時間が長いため、成形条件設定部730は射出速度の変更後にバレル温度を変更するものと決定することができる。また、金型温度は制御は可能であるものの、射出成形機100の直接的な構成ではないため適用にかかる時間が相対的に最も長いので、成形条件設定部730はバレル温度の変更後に金型温度を変更するものと決定することができる。
【0044】
具体的には、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断されると、成形品質維持モデル735を利用して現在射出状態データとターゲット射出状態データ間の偏差分を算出し、現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように射出速度を偏差分に比例する値だけ変更する。
【0045】
例えば、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在粘度プロファイルとターゲット粘度プロファイル間の偏差分を算出した後、現在粘度プロファイルがターゲット粘度プロファイルを追従するように射出速度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0046】
この時、粘度プロファイル値が大きい場合粘度が大きいという意味であり、成形材料がよく流れないということを示すので、現在粘度プロファイルがターゲット粘度プロファイルより大きいと、射出速度を増加させるか、バレル温度や金型温度を増加させることによって粘度プロファイル値を低くして、成形材料がよく流れるようにすることができる。
【0047】
他の例として、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在射出圧力値とターゲット射出圧力値間の偏差分を算出した後、現在射出圧力値がターゲット射出圧力値を追従するように射出速度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0048】
ここで、成形条件設定部730は、射出速度を偏差分に比例する値に変更させる場合、予め定められた射出速度制限値内で射出速度を変更させる。
【0049】
成形条件設定部730は、射出速度を偏差分に比例する値だけ変更すると射出速度が射出速度制限値を外れることになる場合、成形品質維持モデル735を利用して現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように、射出速度を射出速度制限値に変更し、バレル温度を偏差分に比例する値だけ変更する。
【0050】
例えば、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在粘度プロファイルとターゲット粘度プロファイル間の偏差分を算出し、現在粘度プロファイルがターゲット粘度プロファイルを追従するように、射出速度を射出速度制限値に変更し、バレル温度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0051】
他の例として、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在射出圧力値とターゲット射出圧力値間の偏差分を算出し、現在射出圧力値がターゲット射出圧力を追従するように、射出速度を射出速度制限値に変更し、バレル温度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0052】
ここで、成形条件設定部730は、バレル温度を偏差分に比例する値に変更させる場合、予め定められたバレル温度制限値内でバレル温度を変更させる。
【0053】
この時、成形条件設定部730は、射出速度を射出速度制限値に変更時に適用される偏差分を除き、残りの偏差分に比例する値だけバレル温度を変更させてもよい。
【0054】
成形条件設定部730は、バレル温度を偏差分に比例する値だけ変更するとバレル温度がバレル温度制限値を外れることになる場合、成形品質維持モデル735を利用して現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように、バレル温度をバレル温度制限値に変更し、金型温度を偏差分に比例する値だけ変更する。
【0055】
例えば、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在粘度プロファイルとターゲット粘度プロファイル間の偏差分を算出し、現在粘度プロファイルがターゲット粘度プロファイルを追従するように、射出速度を射出速度制限値に変更し、バレル温度をバレル温度制限値に変更し、金型温度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0056】
他の例として、成形条件設定部730は、判断部720によって成形品質が維持されていないものと判断される場合、成形品質維持モデル735を利用して現在射出圧力値とターゲット射出圧力値間の偏差分を算出し、現在射出圧力値がターゲット射出圧力を追従するように、射出速度を射出速度制限値に変更し、バレル温度をバレル温度制限値に変更し、金型温度を偏差分に比例する値だけ変更させる。
【0057】
ここで、成形条件設定部730は、金型温度を偏差分に比例する値に変更させる場合、予め定められた金型温度制限値内で金型温度を変更させる。
【0058】
この時、成形条件設定部730は、射出速度を射出速度制限値に変更時に適用される偏差分およびバレル温度をバレル温度制限値に変更時に適用される偏差分を除き、残りの偏差分に比例する値だけ金型温度を変更させてもよい。
【0059】
成形条件設定部730は、金型温度を偏差分に比例する値だけ変更すると金型温度が金型温度制限値を外れることになる場合、金型温度を金型温度制限値に変更する。
【0060】
一方、金型温度を偏差分に比例する値だけ変更すると金型温度が金型温度制限値を外れることになる場合、成形条件生成装置200は成形品質の維持が難しいものと判断して作業者にアラームを発生させてもよい。
【0061】
このように、本発明に係る成形条件設定部730は、現在射出状態データとターゲット射出状態データ間に差がある場合、現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように、射出速度、バレル温度、および金型温度を順次変更させるため、射出作業時に外乱が発生しても射出を通じて生産される製品の品質が良品と同一の水準に維持されるようにすることができる。
【0062】
また、本発明によると、成形条件の変更が作業者の経験によって遂行されるものではなく、ディープラーニング基盤のニューラルネットワークで構成された成形品質維持モデル735を利用して遂行されるため、作業者の熟練の程度にかかわらず成形品質を一定に維持させることができる。
【0063】
成形条件設定部730は変更された成形条件を射出成形機100に出力する。これに伴い、射出成形機100は変更された成形条件によって射出成形を遂行して製品を生産することになる。
【0064】
成形品質維持モデル735は射出状態データ獲得部710によって現在射出状態データが入力されると、現在射出状態データおよびターゲット射出状態データに基づいて成形品質維持の有無を判断する。成形品質維持モデル735はモデル生成部740により学習され得る。一実施例において、成形品質維持モデル735は複数個の加重値および複数個のバイアス(bias)に基づいて成形品質維持の有無が判断され得るようにするディープラーニング基盤のニューラルネットワークであり得る。このような実施例に従う場合、成形品質維持モデル735はANN(Artificial Neural Network)アルゴリズムで具現され得る。
【0065】
モデル生成部740は成形品質維持モデル735を生成し、生成された成形品質維持モデル735を学習させる。具体的には、モデル生成部740は複数個のターゲット射出状態データを学習データセットとして利用してニューラルネットワークを学習させることによって、成形品質維持モデル735を生成することができる。
【0066】
具体的には、モデル生成部740は良品生産時に獲得されたターゲット粘度プロファイルおよびターゲット射出圧力値のうち少なくとも一つを利用して複数個の学習データセットを生成し、生成された複数個の学習データセットでニューラルネットワークを学習させることによって成形品質維持モデル735を生成する。
【0067】
また、モデル生成部740は一定の周期で新しいターゲット射出状態データが生成されると、新しいターゲット射出状態データを利用して成形品質維持モデル735を学習させてもよい。
【0068】
このように、本発明はモデル生成部740によって生成された成形品質維持モデル735を通じて、作業者が射出成形に関する専門的な知識がなくても成形品質維持の有無に対する判断および成形品質維持のための成形条件の変更を遂行するようにガイドすることができるため、射出作業に対する専門家の依存度が低くなって無人射出成形システムに基づいて射出分野のスマートファクトリーを構築することができるという効果がある。
【0069】
データベース750には射出状態データ獲得部710によって生成された現在射出状態データおよびターゲット射出状態データが保存され得る。また、データベース750には成形条件設定部730によって設定または変更される成形条件が保存され得る。その他にも、データベース750には射出成形時に利用される多様な情報が保存され得る。
【0070】
以下、本発明に係る射出成形システムでの成形条件生成方法について
図6を参照して具体的に説明する。
図6は、本発明の一実施例に係る射出成形システムでの成形条件生成方法を示しているフローチャートである。
図6に図示された射出成形システムでの成形条件生成方法は、
図1に図示された射出成形システムによって遂行され得る。
【0071】
射出成形機100は成形条件生成装置200によって設定された成形条件によって製品を生産する(S800)。一実施例において、射出成形機は良品生産中であった時に適用された成形条件を初期成形条件として設定することができる。
【0072】
成形条件生成装置200は射出成形機100により製品が射出成形中であるとき、射出成形機100の金型内部に注入されている成形材料の現在粘度プロファイルおよび現在射出圧力値のうち少なくとも一つを含む現在射出状態データを獲得する(S810)。
【0073】
一実施例において、現在粘度プロファイルは製品の射出成形時の時間変化量、圧力変化量、射出製品の厚さ、および流動距離を利用して算出され得る。
【0074】
その後、成形条件生成装置200は現在射出成形データおよびターゲット射出成形データに基づいて成形品質が維持されているかどうかを判断する(S820)。この時、ターゲット射出成形データは良品生産中であった時に獲得された射出状態データを意味する。一実施例において、成形条件生成装置200はターゲット射出状態データで学習された成形品質維持モデルに現在射出状態データを入力することによって成形品質維持の有無を判断することができる。
【0075】
具体的には、成形条件生成装置200は成形品質維持モデルによって、現在射出状態データがターゲット射出状態データを基準として設定される臨界範囲を外れるものと判断されると成形品質が維持されないものと判断し、臨界範囲を外れないものと判断されると成形品質が維持されるものと判断する。
【0076】
S820の判断結果、成形品質が維持されないものと判断されると、成形条件生成装置200は現在射出状態データがターゲット射出状態データを追従するように既設定された成形条件を変更させる(S830)。一実施例において、成形条件生成装置200は既設定された成形条件のうち、射出速度、バレル温度、および金型温度のうち少なくとも一つを変更させることができる。
【0077】
この時、成形条件生成装置200によって変更される成形条件が射出成形機100に出力されることによって、射出成形機100は変更される成形条件によって射出成形を遂行することになる(S800)。
【0078】
一方、S820の判断結果、成形品質が維持されているものと判断されると、成形条件生成装置200は現在適用された成形条件を維持するものと決定する(S840)。
【0079】
この時、成形条件生成装置200により成形条件を維持するものと判断されることによって、射出成形機100は適用された成形条件により射出成形を遂行することになる(S800)。
【0080】
以下、
図7を参照して、成形条件生成装置が成形条件を変更させる過程をより具体的に説明する。
図7は、本発明の一実施例に係る成形条件生成装置が成形条件を変更させる過程を示しているフローチャートである。
図7に図示された過程は成形条件生成装置200により遂行され、成形条件生成装置200は成形品質維持モデルを利用して
図7に図示された過程を遂行できる。
【0081】
まず、成形条件生成装置200は
図6に図示されたS820の判断結果、成形品質が維持されないものと判断されると、現在射出状態データとターゲット射出状態データ間の偏差分を算出する(S900)。
【0082】
成形条件生成装置200は偏差分に比例する値だけ射出速度を変更させる(S910)。
【0083】
成形条件生成装置200は変更された射出速度が射出速度制限値を外れるかどうかを判断する(S920)。
【0084】
S920の判断結果、変更された射出速度が射出速度制限値を外れないものと判断されると、成形条件生成装置200は変更された射出速度を含む変更された成形条件を射出成形機100に出力する(S1000)。
【0085】
一方、S920の判断結果、変更された射出速度が射出速度制限値を外れるものと判断されると、成形条件生成装置200は射出速度を射出速度制限値に変更し(S930)、偏差分に比例する値だけバレル温度を変更させる(S940)。この時、射出速度を射出速度制限値に変更時に適用される偏差分を除き、残りの偏差分に比例する値だけバレル温度を変更させてもよい。
【0086】
成形条件生成装置200は変更されたバレル温度がバレル温度制限値を外れるかどうかを判断する(S950)。
【0087】
S950の判断結果、変更されたバレル温度がバレル温度制限値を外れないものと判断されると、成形条件生成装置200は変更された射出速度(射出速度制限値)および変更されたバレル温度を含む変更された成形条件を射出成形機100に出力する(S1000)。
【0088】
一方、S950の判断結果、変更されたバレル温度がバレル温度制限値を外れるものと判断されると、成形条件生成装置200はバレル温度をバレル温度制限値に変更し(S960)、偏差分に比例する値だけ金型温度を変更させる(S970)。この時、射出速度を射出速度制限値に変更時に適用される偏差分およびバレル温度をバレル温度制限値に変更時に適用される偏差分を除き、残りの偏差分に比例する値だけ金型温度を変更させてもよい。
【0089】
成形条件生成装置200は変更された金型温度が金型温度制限値を外れるかどうかを判断する(S980)。
【0090】
S980の判断結果、変更された金型温度が金型温度制限値を外れないものと判断されると、成形条件生成装置200は変更された射出速度(射出速度制限値)、変更されたバレル温度(バレル温度制限値)、および変更された金型温度を含む変更された成形条件を射出成形機100に出力する(S1000)。
【0091】
一方、S950の判断結果、変更された金型温度が金型温度制限値を外れるものと判断されると、成形条件生成装置200は金型温度を金型温度制限値に変更し(S990)、変更された射出速度(射出速度制限値)、変更されたバレル温度(バレル温度制限値)、および変更された金型温度(金型温度制限値)を含む変更された成形条件を射出成形機100に出力する(S1000)。
【0092】
一方、成形条件生成装置200は変更された金型温度が金型温度制限値を外れるものと判断されると、成形品質の維持が難しいものと判断して作業者にアラームを発生させてもよい。
【0093】
本発明が属する技術分野の当業者は、前述した本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得るということが理解され得るであろう。
【0094】
また、本明細書に説明されている方法は少なくとも部分的に、一つ以上のコンピュータプログラムまたは構成要素を使って具現され得る。この構成要素は、揮発性および不揮発性メモリを含むコンピュータ読み取り可能な媒体または機械読み取り可能な媒体を通じて一連のコンピュータ指示語で提供され得る。前記指示語はソフトウェアまたはファームウェアで提供され得、全体的または部分的に、ASICs、FPGAs、DSPs、またはその他の類似素子のようなハードウェア構成に具現されてもよい。前記指示語は一つ以上のプロセッサまたは他のハードウェア構成によって実行されるように構成され得るが、前記プロセッサまたは他のハードウェア構成は前記一連のコンピュータ指示語を実行する時、本明細書に開示された方法および手続きのすべてまたは一部を遂行したり遂行できるようにする。
【0095】
したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態は本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。