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特許7286906パーソナル空調機器の制御装置、パーソナル空調システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】パーソナル空調機器の制御装置、パーソナル空調システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/62 20180101AFI20230530BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230530BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230530BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20230530BHJP
   F24F 120/14 20180101ALN20230530BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/74
F24F110:10
F24F110:20
F24F120:14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019164473
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042894
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】田中 規敏
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓朗
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-058595(JP,A)
【文献】特開平06-060049(JP,A)
【文献】特開平06-180139(JP,A)
【文献】特開平07-120043(JP,A)
【文献】特開2003-042508(JP,A)
【文献】特開2013-204966(JP,A)
【文献】特開2021-042893(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029679(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを蓄積する記録部と、
前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定部と、
前記変更操作判定部で前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、
前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、
を備えるパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項2】
前記ユーザの代謝量に基づいて、前記ユーザの代謝状態が予め定められた高代謝状態であるか否かを判定する代謝状態判定部を備え、
前記記録部は、前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態である場合の前記データを蓄積し、
前記制御部は、前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態である場合に、前記予測モデルを用いて前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する、
請求項1に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項3】
前記代謝状態判定部は、一定期間における前記ユーザの動きの加速度の平均値を算出することによって前記ユーザの代謝量を検出する、
請求項2に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項4】
前記記録部としての第一記録部と、
前記制御部としての第一制御部と、
前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態よりも低い安定状態である場合のデータであって、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記パーソナル空調機器の吹出風量との関係を表すデータを蓄積する第二記録部と、
前記ユーザの代謝状態が前記安定状態である場合に、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度の各々のデータに基づいて、前記第二記録部に蓄積されたデータを統計処理し、前記統計処理の結果に基づいて前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する第二制御部と、
を備える、
請求項2又は請求項3に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項5】
パーソナル空調機器と、
前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度を検出する環境センサと、
前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量を検出する代謝量センサと、
前記パーソナル空調機器を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを蓄積する記録部と、
前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定部と、
前記変更操作判定部で前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、
前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、
を備えるパーソナル空調システム。
【請求項6】
パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを記録部に蓄積する記録ステップと、
前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定ステップと、
前記変更操作判定ステップで前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習ステップと、
前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナル空調機器の制御装置、パーソナル空調システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械学習により構築された予測モデルを用い、空調機器が設置された環境の温度及び湿度並びに空調機器の吹出温度等の条件に基づいて空調機器の吹出風量等を制御する空調機器の制御装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。この従来の制御装置では、空調機器の吹出風量等がユーザの好みに合わない場合に、ユーザが申告すると、この申告時のデータが蓄積される。そして、この蓄積されたデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-94292号公報
【文献】特開2018-9770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の制御装置では、例えば、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新するためには、ユーザの申告が必要であり煩わしい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のパーソナル空調機器の制御装置は、パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを蓄積する記録部と、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定部と、前記変更操作判定部で前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、を備える。
【0007】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、ユーザによって吹出風量の変更操作がされると、これをきっかけにして機械学習が実行され、予想モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0008】
請求項2に記載のパーソナル空調機器の制御装置は、請求項1に記載のパーソナル空調機器の制御装置において、前記ユーザの代謝量に基づいて、前記ユーザの代謝状態が予め定められた高代謝状態であるか否かを判定する代謝状態判定部を備え、前記記録部は、前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態である場合の前記データを蓄積し、前記制御部は、前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態である場合に、前記予測モデルを用いて前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する。
【0009】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、ユーザの代謝状態が高代謝状態である場合のデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、ユーザの代謝状態が高代謝状態である場合に予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、ユーザの代謝状態が高代謝状態である場合のデータのみが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載のパーソナル空調機器の制御装置は、請求項2に記載のパーソナル空調機器の制御装置において、前記代謝状態判定部が、一定期間における前記ユーザの動きの加速度の平均値を算出することによって前記ユーザの代謝量を検出する。
【0011】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、代謝量と相関が高く、また、制御対象である吹出風量とも相関が高い、一定期間におけるユーザの動きの加速度の平均値を算出することによって代謝量が検出される。したがって、代謝量の検出精度、ひいては、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載のパーソナル空調機器の制御装置は、請求項2又は請求項3に記載のパーソナル空調機器の制御装置において、前記記録部としての第一記録部と、前記制御部としての第一制御部と、前記ユーザの代謝状態が前記高代謝状態よりも低い安定状態である場合のデータであって、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記パーソナル空調機器の吹出風量との関係を表すデータを蓄積する第二記録部と、前記ユーザの代謝状態が前記安定状態である場合に、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度の各々のデータに基づいて、前記第二記録部に蓄積されたデータを統計処理し、前記統計処理の結果に基づいて前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する第二制御部と、を備える。
【0013】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、ユーザの代謝状態が安定状態である場合には、この安定状態である場合のデータに基づいて統計処理される。したがって、ユーザの代謝状態が安定状態である場合に統計処理を用いて吹出風量の制御を行うときには、ユーザの代謝状態が安定状態である場合のデータのみが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載のパーソナル空調システムは、パーソナル空調機器と、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度を検出する環境センサと、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量を検出する代謝量センサと、前記パーソナル空調機器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを蓄積する記録部と、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定部と、前記変更操作判定部で前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、を備える。
【0015】
このパーソナル空調システムによれば、ユーザによって吹出風量の変更操作がされると、これをきっかけにして機械学習が実行され、予想モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0016】
請求項6に記載のプログラムは、パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度並びに前記パーソナル空調機器の吹出温度及び吹出風量と、前記パーソナル空調機器を使用するユーザの代謝量との関係を表すデータを記録部に蓄積する記録ステップと、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する変更操作判定ステップと、前記変更操作判定ステップで前記変更操作がされたと判定された場合に、前記記録部に蓄積されたデータを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習ステップと、前記予測モデルを用い、前記パーソナル空調機器の設置環境の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の吹出温度と、前記ユーザの代謝量の各々のデータに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0017】
このプログラムによれば、ユーザによって吹出風量の変更操作がされると、これをきっかけにして機械学習が実行され、予想モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置をハードウェア構成によって示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置をデータ記録処理の機能ブロックによって示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置を制御処理の機能ブロックによって示す図である。
図4】制御装置で実行されるデータ記録処理の流れを示すフローチャートである。
図5】制御装置で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
図6】(A)は、高代謝状態データ記録部の記録データの第一例を示す表であり、(B)は、予測処理部の入力データに対する出力データの第一例を示す表である。
図7】(A)は、高代謝状態データ記録部の記録データの第二例を示す表であり、(B)は、予測処理部の入力データに対する出力データの第二例を示す表である。
図8図6図7のデータをまとめたグラフである。
図9】(A)、(B)は、安定状態データ記録部の記録データの一例を示す表であり、(C)は、統計処理部の入力データに対する出力データの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1には、本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システム10の全体構成が示されている。図1に示されるように、本実施形態に係るパーソナル空調システム10は、パーソナル空調機器14と、環境センサ16と、ウェアラブル端末18と、制御装置20とを備える。
【0022】
パーソナル空調機器14は、ユーザ22が使用する座席24に対応して設置されており、ユーザ22が個別に使用するものである。このパーソナル空調機器14は、座席24に着席するユーザ22に対して空調空気26を吹き出す構成とされている。また、このパーソナル空調機器14は、ユーザ22によって吹出温度及び吹出風量を任意に設定することが可能となっており、ユーザ22によって吹出温度及び吹出風量が設定されると、この設定された吹出温度及び吹出風量のデータを出力する構成とされている。
【0023】
環境センサ16は、パーソナル空調機器14の設置環境(例えば、建物の室内におけるパーソナル空調機器14の近辺)に設けられる。この環境センサ16は、温度センサ28と、湿度センサ30とを有する。温度センサ28は、設置環境の温度として室内温度を検出し、湿度センサ30は、設置環境の湿度として室内湿度を検出する。この環境センサ16は、温度センサ28及び湿度センサ30で検出した室内温度及び室内湿度のデータを出力する構成とされている。
【0024】
ウェアラブル端末18は、例えば、腕時計型とされており、ユーザ22に装着される。このウェアラブル端末18は、加速度センサ32と、ユーザ情報出力部34とを有する。加速度センサ32は、ユーザ22の動きに伴ってウェアラブル端末18に作用する加速度を検出し、この加速度のデータを出力する構成とされている。この加速度センサ32は、「代謝量センサ」の一例である。ユーザ情報出力部34は、ユーザ22を識別するためのユーザ情報を記憶しており、このユーザ情報を出力する構成とされている。
【0025】
制御装置20は、パーソナル空調機器14、環境センサ16及びウェアラブル端末18から出力されたデータに基づいてパーソナル空調機器14の吹出風量を制御するものである。図1には、制御装置20のハードウェア構成が示されている。
【0026】
この制御装置20は、ハードウェア構成として、入出力インターフェース38と、CPU(Central Processing Unit)40と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)44と、不揮発性メモリ46を有している。CPU40は、「コンピュータ」の一例である。
【0027】
入出力インターフェース38と、CPU40と、ROM42と、RAM44と、不揮発性メモリ46とは、バス48を介して相互に通信可能に接続されている。不揮発性メモリ46には、パーソナル空調機器14の吹出風量を制御するためのプログラム50が記憶されている。このプログラム50は、データ記録処理のためのプロセスと、制御処理のためのプロセスとを有する。
【0028】
図2には、データ記録処理を実行する制御装置20の機能ブロックが示されている。図2に示されるように、制御装置20は、データ記録処理を実行する機能部として、データ取得部60と、データ記録部62と、代謝状態判定部64と、高代謝状態データ記録部66と、変更操作判定部68と、機械学習部70と、予測モデル記憶部72と、安定状態データ記録部74とを有する。
【0029】
データ取得部60と、代謝状態判定部64と、変更操作判定部68と、機械学習部70は、図1に示されるCPU40がプログラム50を実行することにより実現される。一方、データ記録部62と、高代謝状態データ記録部66と、予測モデル記憶部72と、安定状態データ記録部74は、図1に示される不揮発性メモリ46によって形成される。高代謝状態データ記録部66は、「記録部」及び「第一記録部」の一例であり、安定状態データ記録部74は、「第二記録部」の一例である。
【0030】
図3には、制御処理を実行する制御装置20の機能ブロックが示されている。図3に示されるように、制御装置20は、制御処理を実行する機能部として、データ取得部80と、ユーザ判定部82と、代謝状態判定部84と、予測処理部92と、統計処理部94と、デフォルト処理部96とを有する。
【0031】
データ取得部80と、ユーザ判定部82と、代謝状態判定部84と、予測処理部92と、統計処理部94と、デフォルト処理部96は、図1に示されるCPU40がプログラム50を実行することにより実現される。予測処理部92は、「制御部」及び「第一制御部」の一例であり、統計処理部94は、「第二制御部」の一例である。
【0032】
次に、本実施形態に係るパーソナル空調機器の制御方法について説明する。
【0033】
なお、以下の説明において、パーソナル空調システム10の構成については、上述の図1図3を適宜参照することにする。図4には、制御装置20で実行されるデータ記録処理の流れが示されている。データ記録処理では、以下のステップS1~ステップS8が実行される。
【0034】
ステップS1では、温度センサ28によって検出された室内温度と、湿度センサ30によって検出された室内湿度と、加速度センサ32によって検出された加速度と、パーソナル空調機器14の吹出温度及び吹出風量(設定値)の各々のデータがデータ取得部60によって取得される。また、ユーザ情報出力部34から出力されたユーザ情報も、データ取得部60によって取得される。
【0035】
ステップS2では、データ取得部60で取得されたデータがユーザ情報と関連付けてデータ記録部62に記録される。また、このとき、データ取得部60で取得されたデータは、パーソナル空調機器14の起動時間毎にデータ記録部62に記録される。
【0036】
ステップS3では、代謝状態判定部64によって、データ記録部62に記録された一定期間におけるユーザ22の動きの加速度の平均値が算出され、この算出された平均値によってユーザ22の代謝量が検出される。そして、この検出された代謝量に基づいて、ユーザ22の代謝状態が予め定められた高代謝状態であるか否かが代謝状態判定部64によって判定される。
【0037】
本実施形態では、一例として、データ記録部62に記録された過去30分間の加速度の平均値が予め定められた規定値以上で、かつ、パーソナル空調機器14が起動してから30分以内である場合に、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態であると判定される。このステップS3は、「代謝状態判定ステップ」の一例である。
【0038】
ここで、ステップS3において、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態であると判定された場合には、ステップS4に移行する。
【0039】
ステップS4では、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態である場合のデータであって、室内温度及び室内湿度並びにパーソナル空調機器14の吹出温度及び吹出風量(設定値)と、ユーザ22の代謝量との関係を表すデータがパーソナル空調機器14の起動時間毎に高代謝状態データ記録部66に蓄積される。このステップS4は、「記録ステップ」の一例である。
【0040】
ステップS5では、変更操作判定部68によって、データ取得部60で取得された吹出風量のデータと、データ記録部62に記録された吹出風量のデータとが比較され、吹出風量がユーザによって変更操作されたか否かが判定される。このステップS5は、「変更操作判定ステップ」の一例である。
【0041】
ここで、吹出風量がユーザによって変更操作されていないと判定された場合には、ステップS1に戻る。一方、吹出風量がユーザによって変更操作されたと判定された場合には、ステップS6に移行する。
【0042】
ステップS6では、機械学習部70によって、高代謝状態データ記録部66に蓄積されたデータを用いて機械学習が実行され、ユーザ22のための予測モデルが更新される。このステップS6は、「機械学習ステップ」の一例である。予測モデルには、例えば、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)や、ニューラルネットワーク等が用いられる。
【0043】
ステップS7では、機械学習部70によって更新された予測モデルが予測モデル記憶部72に記憶される。
【0044】
一方、ステップS3において、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態よりも低い安定状態であると判定された場合には、ステップS8に移行する。
【0045】
ステップS8では、ユーザ22の代謝状態が安定状態である場合のデータであって、室内温度及び室内湿度並びにパーソナル空調機器14の吹出温度と、パーソナル空調機器14の吹出風量との関係を表すデータが安定状態データ記録部74に蓄積される。
【0046】
以上のステップS1~ステップS8は、データ取得部60でデータが取得される毎に実行される。
【0047】
図5には、制御装置20で実行される制御処理の流れが示されている。制御処理では、以下のステップS11~ステップS16が実行される。
【0048】
ステップS11では、温度センサ28によって検出された室内温度と、湿度センサ30によって検出された室内湿度と、加速度センサ32によって検出された加速度と、パーソナル空調機器14の吹出温度及び吹出風量(設定値)の各々のデータがデータ取得部80によって取得される。また、ユーザ情報出力部34から出力されたユーザ情報も、データ取得部80によって取得される。
【0049】
ステップS12では、ユーザ判定部82によって、データ取得部80で取得されたユーザ情報が読み出され、このユーザ情報に基づいて、データ記録部62に記録されたデータから、ユーザ22が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人であるか否かが判定される。
【0050】
ここで、ステップS12において、ユーザ22が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人ではないと判定された場合には、ステップS13に移行する。
【0051】
ステップS13では、デフォルト処理部96によってデフォルト処理が実行される。すなわち、デフォルト処理として、パーソナル空調機器14の吹出風量が予め定められた吹出風量(デフォルト値)に制御される。
【0052】
一方、ステップS12において、ユーザ22が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人であると判定された場合には、ステップS14に移行する。
【0053】
ステップS14は、上述のステップS3と同様である。このステップS14では、データ記録部62に記録された一定期間におけるユーザ22の動きの加速度の平均値が算出され、この算出された平均値によってユーザ22の代謝量が検出される。そして、この検出された代謝量に基づいて、ユーザ22の代謝状態が予め定められた高代謝状態であるか否かが代謝状態判定部84によって判定される。
【0054】
ここで、ステップS14において、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態であると判定された場合には、ステップS15に移行する。
【0055】
ステップS15では、予測処理部92によって、予測モデル記憶部72に記憶された予測モデルが読み出され、この予測モデルを用い、パーソナル空調機器14の起動時間と、室内温度及び室内湿度と、パーソナル空調機器14の吹出温度と、ユーザ22の代謝量の各々の直近のデータに基づいて、パーソナル空調機器14の吹出風量(予測値)が算出される。そして、この算出された吹出風量にパーソナル空調機器14が制御される。このステップS15は、「制御ステップ」の一例である。
【0056】
一方、ステップS14において、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態よりも低い安定状態であると判定された場合には、ステップS16に移行する。
【0057】
ステップS16では、統計処理部94によって、室内温度及び室内湿度並びにパーソナル空調機器14の吹出温度の各々の直近のデータに基づいて、安定状態データ記録部74に蓄積されたデータが統計処理される。そして、この統計処理の結果に基づいてパーソナル空調機器14の吹出風量が制御される。
【0058】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
以上詳述した通り、本実施形態によれば、ユーザ22によって吹出風量の変更操作がされると、これをきっかけにして機械学習部70で機械学習が実行され、予想モデルが更新される(ステップS5~ステップS6)。したがって、ユーザ22の申告が無くても、ユーザ22の好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0060】
しかも、本実施形態によれば、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態である場合のデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される(ステップS3~ステップS6)。したがって、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態である場合に予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには(ステップS15)、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態である場合のデータのみが反映されるので、ユーザ22の好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、代謝量と相関が高く、また、制御対象である吹出風量とも相関が高い、一定期間におけるユーザ22の加速度の平均値を算出することによって代謝量が検出される(ステップS3)。したがって、代謝量の検出精度、ひいては、ユーザ22の好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態によれば、ユーザ22の代謝状態が安定状態である場合には、この安定状態である場合のデータに基づいて統計処理される(ステップS8、ステップS16)。したがって、ユーザ22の代謝状態が安定状態である場合に統計処理を用いて吹出風量の制御を行うときには、ユーザ22の代謝状態が安定状態である場合のデータのみが反映されるので、ユーザ22の好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0063】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
【0064】
上記実施形態では、好ましい例として、一定期間におけるユーザ22の動きの加速度の平均値から代謝量が算出されるが、代謝量は、一定期間におけるユーザ22の動きの加速度の平均値以外によって算出されてもよい。
【0065】
次に、実施例について説明する。
【0066】
図6(A)には、高代謝状態データ記録部66の記録データ(起動時間、室内温度、室内湿度、吹出温度、代謝量、吹出風量の設定値)の第一例が示されており、図6(B)には、予測処理部92の入力データ(起動時間、室内温度、室内湿度、吹出温度、代謝量)に対する出力データ(吹出風量の予測値)の第一例が示されている。吹出風量の設定値は、ユーザ22が設定した好みの値である。
【0067】
また、図7(A)には、高代謝状態データ記録部66の記録データ(起動時間、室内温度、室内湿度、吹出温度、代謝量、吹出風量の設定値)の第二例が示されており、図7(B)には、予測処理部92の入力データ(起動時間、室内温度、室内湿度、吹出温度、代謝量)に対する出力データ(吹出風量の予測値)の第二例が示されている。
【0068】
図8は、図6図7のデータをまとめたグラフである。図8の縦軸は吹出風量の値を示し、図8の横軸は起動時間を示している。
【0069】
図6図8に示されるように、本実施形態によれば、ユーザ22の代謝状態が高代謝状態である場合のデータを用いて予測モデルが更新され、この予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うので、吹出風量の設定値に近い吹出風量の予測値を得ることができる。
【0070】
図9(A)、(B)には、安定状態データ記録部74の記録データ(室内温度、室内湿度、吹出温度、吹出風量の設定値)の一例が示されており、図9(C)には、統計処理部94の入力データ(室内温度、室内湿度、吹出温度)に対する出力データ(吹出風量の出力値)の一例が示されている。
【0071】
図9に示されるように、本実施形態によれば、ユーザ22の代謝状態が安定状態である場合のデータを用いて統計処理が実行され、この統計処理の結果に基づいて吹出風量の制御を行うので、吹出風量の設定値に近い吹出風量の出力値を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 パーソナル空調システム
14 パーソナル空調機器
16 環境センサ
18 ウェアラブル端末
20 制御装置
22 ユーザ
28 温度センサ
30 湿度センサ
32 加速度センサ(代謝量センサの一例)
40 CPU(コンピュータの一例)
50 プログラム
64 代謝状態判定部
66 高代謝状態データ記録部(記録部及び第一記録部の一例)
68 変更操作判定部
70 機械学習部
72 予測モデル記憶部
74 安定状態データ記録部(第二記録部の一例)
92 予測処理部(制御部及び第一制御部の一例)
94 統計処理部(第二制御部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9