(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20230530BHJP
B65D 77/06 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D77/06 A
B65D77/06 F
(21)【出願番号】P 2018099401
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168662(US,A1)
【文献】特表2012-511472(JP,A)
【文献】特開2009-202925(JP,A)
【文献】特開2015-145249(JP,A)
【文献】特開2014-091538(JP,A)
【文献】特開2015-048114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包するボトル形状の外容器とが剥離可能に積層された二重容器であって、
前記内容器の肩部は、
前記肩部の周長が前記肩部の外接円の円周長よりも長くなるように、径方向外方に突出する凸形状を有し前記外接円が通る山部と、前記山部よりも径方向内方に窪んだ凹形状を有し前記肩部の内接円が接する谷部とを周方向に交互に有し、前記内容器が収縮する際に折り畳まれる折り畳み構造を構成し、
前記山部と前記谷部との間の面には、前記面に対して略垂直方向に起伏する起伏部が設けられ、
前記折り畳み構造は、前記山部が、前記内容器における前記山部と前記谷部との間の内面同士を接近させるように曲がり、前記谷部が、前記内容器における前記山部と前記谷部との間の外面同士を接近させるように曲がることで、前記内容器の収縮前における前記内接円よりも径方向内方へと移動するように折り畳まれる、
二重容器。
【請求項2】
前記山部は、前記谷部より薄肉に形成される、
請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
前記山部及び前記谷部は、前記二重容器の中心軸に直交する平面で切断された断面の形状が、前記中心軸を対称中心として点対称となるように設けられる、
請求項1又は2に記載の二重容器。
【請求項4】
前記山部及び前記谷部は、前記二重容器の口部から視て放射状に延びるように設けられる、
請求項1~3の何れか一項に記載の二重容器。
【請求項5】
前記内容器の前記肩部は、周方向において他より薄い肉厚を有する薄肉部と、前記薄肉部より厚い肉厚を有し前記薄肉部より内方に位置する非薄肉部とを含み、
前記折り畳み構造は、前記薄肉部と前記非薄肉部とを含んで構成される、
請求項1に記載の二重容器。
【請求項6】
前記外容器の肩部は、前記内容器の前記肩部に沿った形状を有する、
請求項1~
5の何れか一項に記載の二重容器。
【請求項7】
前記外容器及び前記内容器は、二軸延伸ブロー成形によって製造される、
請求項1~
6の何れか一項に記載の二重容器。
【請求項8】
前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される、
請求項1~
7の何れか一項に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体調味料又は液体化粧品等の内容物を収容し、その鮮度を保持する容器として、デラミボトル、エアレスボトル又は積層剥離容器等と称される、二重容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二重容器の肩部では、ブロー成形での横延伸倍率が容器の胴部よりも低く、薄肉化が不十分となる傾向がある。このため、特許文献1に記載の二重容器では、内容物を収容する内容器が内容物の減少に伴って収縮する際、内容器の肩部が胴部よりも収縮し難い可能性がある。また、特許文献1に記載の二重容器では、内容器の肩部において収縮態様が不規則となり、内容物を注出するための流路を確保し難い可能性がある。よって、特許文献1に記載の二重容器では、内容器の肩部において内容物が残留してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、容器の肩部における内容物の残留を抑制可能な二重容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二重容器は、内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包するボトル形状の外容器とが剥離可能に積層された二重容器であって、前記内容器の肩部は、前記肩部の周長が前記肩部の外接円の円周長よりも長くなるように、径方向外方に突出する凸形状を有し前記外接円が通る山部と、前記山部よりも径方向内方に窪んだ凹形状を有し前記肩部の内接円が接する谷部とを周方向に交互に有し、前記内容器が収縮する際に折り畳まれる折り畳み構造を構成し、前記山部と前記谷部との間の面には、前記面に対して略垂直方向に起伏する起伏部が設けられ、前記折り畳み構造は、前記山部が、前記内容器における前記山部と前記谷部との間の内面同士を接近させるように曲がり、前記谷部が、前記内容器における前記山部と前記谷部との間の外面同士を接近させるように曲がることで、前記内容器の収縮前における前記内接円よりも径方向内方へと移動するように折り畳まれる。
【0008】
好適には、前記二重容器において、前記山部は、前記谷部より薄肉に形成される。
【0009】
好適には、前記二重容器において、前記山部及び前記谷部は、前記二重容器の中心軸に直交する平面で切断された断面の形状が、前記中心軸を対称中心として点対称となるように設けられる。
【0010】
好適には、前記二重容器において、前記山部及び前記谷部は、前記二重容器の口部から視て放射状に延びるように設けられる。
【0012】
好適には、前記二重容器において、前記内容器の前記肩部は、周方向において他より薄い肉厚を有する薄肉部と、前記薄肉部より厚い肉厚を有し前記薄肉部より内方に位置する非薄肉部とを含み、前記折り畳み構造は、前記薄肉部と前記非薄肉部とを含んで構成される。
【0013】
好適には、前記二重容器において、前記外容器の肩部は、前記内容器の前記肩部に沿った形状を有する。
【0014】
好適には、前記二重容器において、前記外容器及び前記内容器は、二軸延伸ブロー成形によって製造される。
【0015】
好適には、前記二重容器において、前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る二重容器は、容器の肩部における内容物の残留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る二重容器の外観構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示された二重容器の縦断面形状を示す図である。
【
図3】
図1に示された二重容器の肩部における横断面形状を拡大して示す図である。
【
図4】
図1に示された二重容器の肩部を拡大して上方から視た図である。
【
図5】
図1に示された二重容器の肩部における内容器の収縮過程を説明するための図である。
【
図6】実施形態2に係る二重容器の肩部を拡大して上方から視た図である。
【
図7】実施形態3に係る二重容器の肩部を拡大して上方から視た図である。
【
図8】実施形態4に係る二重容器の肩部における横断面形状を示す図である。
【
図9】実施形態5に係る二重容器の肩部における横断面形状を示す図である。
【
図10】実施形態6に係る二重容器の肩部における横断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態では、ボトル形状を有する二重容器1の中心軸Zに沿った方向を「軸方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する方向を「径方向」とも称する。また、本実施形態では、二重容器1の口部2から底部5へ向かう軸方向を「下方」とも称し、二重容器1の底部5から口部2へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、本実施形態では、二重容器1の中心軸Zに沿った平面で二重容器1を切断した断面を「縦断面」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する平面で二重容器1を切断した断面を「横断面」とも称する。
【0020】
[実施形態1:二重容器の構成]
図1は、実施形態1に係る二重容器1の外観構成を模式的に示す図である。
図2は、
図1に示された二重容器1の縦断面形状を示す図である。なお、
図2には、
図1に示されたA-A線を含む平面で切断された二重容器1の縦断面形状が示されている。
【0021】
二重容器1は、
図1に示されるように、ボトル形状を有する容器である。二重容器1は、二重容器1の一端部であり内容物が注出される口部2と、二重容器1の他端部であり接地面を有する底部5と、径方向外方に広がりながら口部2から下方へ延びる肩部3と、肩部3から下方に延びて底部5に連なる胴部4とを備える。
【0022】
二重容器1は、
図2に示されるように、二重容器1の外郭を構成し内容器20を内包するボトル形状の外容器10と、内容物を収容し内容物の減少に伴って収縮可能な内容器20とを備える。二重容器1は、外容器10の内面と内容器20の外面とが剥離可能に積層されたボトルである。
【0023】
外容器10及び内容器20は、合成樹脂製の容器であり、ブロー成形によって製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、試験管形状のプリフォームを用いた二軸延伸ブロー成形によって製造される。具体的には、外容器10及び内容器20は、外容器10のプリフォームの中に内容器20のプリフォームを挿入して重ねた状態で、外容器10のプリフォームと内容器20のプリフォームとを、同時に延伸ブロー成形することによって製造される。或いは、外容器10及び内容器20は、外容器10のプリフォームを延伸ブロー成形した後に、外容器10の内側において内容器20のプリフォームを延伸ブロー成形することによって製造されてよい。
【0024】
外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニル系共重合体、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフエニレンオキサイド樹脂、又は、生分解性樹脂を用いて製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。より好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。このポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び、これらの共重合ポリエステル等の樹脂が挙げられる。特に好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
【0025】
外容器10は、底部5が接地して自立するように形成される。外容器10は、自立した状態で、口部2、肩部3、胴部4及び底部5の形態が保持されるように形成される。外容器10の肩部3及び胴部4は、スクイズ操作により押圧されると内方に撓んで変形し、押圧が解除されると押圧前の原形に復元するように形成される。
【0026】
内容器20は、内容物を収容する収容空間Sを有し、外容器10に沿った形状を有するように形成される。内容器20の肩部3及び胴部4は、内容物の減少に伴って収縮するよう、外容器10よりも薄い肉厚を有するように形成される。
【0027】
外容器10の口部2は、外容器10の胴部4より高い剛性を有するように形成される。外容器10の口部2の上端部には、内容器20の口部2が挿入される開口部11が設けられる。外容器10の開口部11は、内容器20の口部2に設けられた後述の開口部22よりも下方に配置される。開口部11の縁部の上面は、後述する内容器20のリング部24の下面と当接し、内容器20を下方から支持する。
【0028】
外容器10の口部2の下部には、外容器10の把持及び搬送に利用されるサポートリング12が設けられる。サポートリング12は、径方向外方に突出し周方向に延びるように設けられる。外容器10の開口部11とサポートリング12との間には、外容器10と内容器20との間に外気を導入するための外気導入孔13が設けられる。外気導入孔13は、空隙P1及び空気層P2と連通するように設けられる。空隙P1は、外容器10の口部2と内容器20の口部2との間に位置する空間である。空気層P2は、外容器10と内容器20とが剥離することによって、外容器10の肩部3から底部5と、内容器20の肩部3から底部5との間に形成される空間である。
【0029】
内容器20の口部2は、内容器20の胴部4より高い剛性を有するように形成され、外容器10の口部2と固定される。内容器20の口部2は、外容器10の開口部11から上方に突出する上部21と、上部21から下方に延びて外容器10の開口部11より下方に位置する下部25とを含む。
【0030】
上部21の上端部には、内容物が注出される開口部22が設けられる。上部21の開口部22より下方には、逆止弁付きのキャップが装着される装着部23が設けられる。装着部23は、キャップがねじ込み式で装着可能となるよう、螺旋状のねじ山又はねじ溝によって構成されてよい。或いは、装着部23は、キャップが打栓式で装着可能となるよう、周方向に延びる突条によって構成されてよい。上部21の装着部23より下方には、内容器20の把持及び搬送に利用されるリング部24が設けられる。リング部24は、径方向外方に突出し周方向に延びるように設けられる。リング部24は、外容器10の開口部11の縁部と当接し、外容器10の位置を規制する。下部25は、空隙P1が形成されるよう、少なくとも外気導入孔13から下方の外径が、外容器10の口部2の内径より小さくなるように設けられる。
【0031】
図3は、
図1に示された二重容器1の肩部3における横断面形状を拡大して示す図である。
図4は、
図1に示された二重容器1の肩部3を拡大して上方から視た図である。なお、
図3には、
図2に示されたB-B線を含む平面で切断された二重容器1の横断面形状が拡大されて示されている。
図4では、口部2の図示が省略されている。
【0032】
上述のように、外容器10及び内容器20は、ブロー成形によって製造されるため、内容器20は外容器10に沿った形状を有する。すなわち、内容器20の肩部3は、外容器10の肩部3に沿った形状を有する。言い換えると、外容器10の肩部3は、内容器20の肩部3に沿った形状を有する。外容器10及び内容器20の肩部3は、横断面形状が略相似する形状を有する。
【0033】
本実施形態において、外容器10及び内容器20の肩部3は、
図1に示されるように、径方向外方に広がって口部2から胴部4へ延びる傾斜面が、平坦でなく凹凸形状を有するように設けられる。具体的には、外容器10及び内容器20の肩部3は、
図1、
図3及び
図4に示されるように、径方向外方に突出する凸形状を有する山部31と、山部31よりも径方向内方に窪んだ凹形状を有する谷部32とを含むように設けられる。内容器20の山部31は、山部31を境に隣接する内容器20の2つの内面33同士を周方向において接近させるように曲がる。内容器20の谷部32は、谷部32を境に隣接する内容器20の2つの外面34同士を周方向において接近させるように曲がる。
【0034】
山部31及び谷部32は、径方向外方に広がりながら口部2から胴部4へ向かって延びる肩部3の傾斜面に沿って延び、周方向において交互に配置されるように設けられる。山部31及び谷部32は、横断面形状において、中心軸Zを対称中心として点対称となるように設けられる。山部31及び谷部32は、
図4に示されるように、二重容器1の上方から視て、すなわち二重容器1の口部2から視て、放射状に延びるように設けられる。山部31及び谷部32を含む肩部3は、横断面形状において、中心軸Zを中心とし、山部31と頂点とする星形正多角形形状を有するように設けられる。
図1~
図4の例では、山部31及び谷部32を含む肩部3は、横断面形状において、中心軸Zを中心とし、山部31と頂点とする八芒星形状を有するように設けられている。
【0035】
山部31及び谷部32は、径方向における中心軸Zからの距離が異なる。具体的には、径方向における中心軸Zから山部31までの距離は、径方向における中心軸Zから谷部32までの距離よりも長い。このため、山部31は、ブロー成形において、径方向の延伸倍率である横延伸倍率が谷部32よりも高く、谷部32よりも薄い肉厚を有するように設けられる。特に、内容器20の山部31は、谷部32よりも15%以上薄い肉厚を有するように設けられる。それにより、内容器20の山部31は、周方向において他より薄い肉厚を有する薄肉部を構成し、内容器20の谷部32は、山部31より厚い肉厚を有する非薄肉部を構成する。
【0036】
外容器10及び内容器20の肩部3は、肩部3の周長が、肩部3の外接円の円周長より長くなるように設けられる。肩部3の周長は、肩部3の周方向に沿った長さである。肩部3の周長は、肩部3の横断面形状が星形正多角形形状を有する場合には、この星形正多角形における各辺の長さの合計に相当する。肩部3の外接円の円周長は、横断面視において、中心軸Zを中心とし、山部31を通る円の円周長である。特に、内容器20の肩部3の周長は、
図3に示されるように、内容器20の肩部3における外接円C1の円周長より長くなるように設けられる。
【0037】
好適には、外容器10及び内容器20の肩部3は、肩部3の外接円の直径が、肩部3の内接円の直径より1.25倍以上長くなるように設けられる。特に、内容器20の肩部3は、
図3に示されるように、内容器20の肩部3における外接円C1の直径D1が、内容器20の肩部3における内接円C2の直径D2より、1.25倍以上長くなるように設けられる。
【0038】
[実施形態1:二重容器における内容器の収縮過程]
図5は、
図1に示された二重容器1の肩部3における内容器20の収縮過程を説明するための図である。
図5(a)は、内容器20の収縮前の状態を示す。
図5(b)は、内容物が注出された後の内容器20の収縮状態を示す。
図5(c)は、
図5(b)よりも更に内容物が注出された後の内容器20の収縮状態を示す。なお、
図5(a)~
図5(c)では、簡略化のため、外容器10及び内容器20の肩部3における横断面形状が、単なる太線で描かれている。
【0039】
二重容器1では、スクイズ操作によって内容物が注出される際、外容器10の胴部4が押圧される。外容器10の胴部4が押圧されて内容物が注出されると、内容器20は、内容物の減少に伴って収縮し、収容空間Sの容積を減少させる。この際、内容器20の肩部3では、
図5(b)に示されるように、山部31が、隣接する2つの内面33を接近させるように曲がると共に、谷部32が、隣接する2つの外面34を接近させるように曲がる。このため、内容器20の肩部3では、山部31及び谷部32が折り目となって蛇腹のように折り畳まれ、一様な収縮態様で収縮し易くなる。
【0040】
更に、内容器20の肩部3では、肩部3の周長が外接円C1の円周長より長くなるように設けられる。このため、内容器20の肩部3では、ブロー成形において横延伸倍率が向上し薄肉化されるため、収縮し易くなる。同時に、内容器20の肩部3では、横断面形状において、中心軸Zから山部31までの距離と中心軸Zから谷部32までの距離との差が大きくなるため、山部31及び谷部32で曲り易くなり、折り畳まれ易くなる。
【0041】
更に、内容器20の肩部3では、山部31は谷部32よりも径方向外方に位置するため、山部31が薄肉部を構成し、谷部32が非薄肉部を構成する。このため、内容器20の肩部3では、薄肉部を構成する山部31が起点となって曲がり易くなり、スムーズに折り畳まれ易くなる。それにより、内容器20の肩部3では、非薄肉部である谷部32が薄肉部である山部31よりも径方向内方に位置したまま、
図5(a)の状態から
図5(b)の状態となるように折り畳まれながら収縮する。
【0042】
また、内容器20の肩部3は、山部31及び谷部32が、周方向において交互に配置されるように設けられる。好適には、内容器20の山部31及び谷部32は、横断面形状において、中心軸Zを対称中心として点対称となるように設けられる。このため、内容器20の肩部3では、山部31及び谷部32が周方向において均等に配置されて、周方向において偏りなく折り畳まれ易くなる。しかも、内容器20の肩部3では、山部31及び谷部32が、口部2から視て放射状に延びるように設けられるため、周方向だけなく軸方向においても偏りなく折り畳まれ易くなる。
【0043】
スクイズ操作による外容器10の押圧が解除されると、外容器10は、押圧前の原形に復元する。その際、空気層P2には、外気導入孔13から空隙P1を介して外気が導入される。このため、内容器20の収縮状態は、
図5(b)に示されるように、空気層P2に導入された外気の圧力によって維持される。
【0044】
内容器20の肩部3における収縮状態は、非薄肉部である谷部32が薄肉部である山部31よりも径方向内方に位置して折り畳まれた状態である。このため、二重容器1の揺動等によって内容物が内容器20の内面に衝突する場合、内容器20の肩部3では、径方向内方に位置する非薄肉部の谷部32の方が、薄肉部の山部31よりも強い衝撃力を受ける。言い換えると、内容器20の肩部3では、内容物の強い衝撃力を受ける谷部32が、比較的剛性の高い非薄肉部にて構成される。それにより、内容器20の肩部3では、谷部32が外方に向かって反転するような意図しない変形が発生し難くなり、折り畳まれて収縮した状態が維持され易くなる。
【0045】
図5(b)の状態から更に内容物が注出されると、内容器20の肩部3は、
図5(b)の状態から更に山部31及び谷部32が曲がって折り畳まれ、
図5(c)のように収縮する。内容器20の肩部3では、
図5(c)のように比較的大きく収縮した状態であっても、収容空間Sの中心軸Z付近において、内容物を注出するための流路が確保される。
【0046】
このように、内容器20の肩部3に形成された山部31及び谷部32は、内容器20が収縮する際に折り畳まれる折り畳み構造30を構成する。
【0047】
[実施形態1:作用効果]
以上のように、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3の周長が肩部3の外接円C1の円周長よりも長くなるように設けられると共に、内容器20の肩部3が折り畳み構造30を有する。このため、実施形態1に係る二重容器1は、内容器20の肩部3を、薄肉化して収縮し易く、且つ、折り畳み易くすることができ、肩部3における内容器20の収縮態様を適切に規制することができる。それにより、実施形態1に係る二重容器1は、内容物の減少に伴って内容器20が収縮しても、内容器20の肩部3において内容物を注出するための流路を適切に確保することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1は、肩部3において内容物が残留してしまうことを抑制することができる。
【0048】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、折り畳み構造30が、内容器20における山部31と谷部32とを含んで構成される。このため、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3を、山部31及び谷部32を折り目とした蛇腹のように折り畳むことができ、一様な収縮態様で収縮し易くすることができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0049】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20において山部31が谷部32より薄肉に形成される。このため、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の山部31が起点となって曲がり易くなり、内容器20の肩部3をスムーズに折り畳み易くすることができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、内容物の肩部3での残留を更に抑制することができる。
【0050】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、山部31及び谷部32が、横断面形状において、中心軸Zを対称中心として点対称となるように設けられる。このため、実施形態1に係る二重容器1では、山部31及び谷部32が周方向において均等に配置されるため、内容器20の肩部3を、周方向において偏りなく折り畳むことができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0051】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、山部31及び谷部32が、口部2から視て放射状に延びるように設けられる。このため、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3を、周方向だけなく軸方向においても偏りなく折り畳むことができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0052】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、折り畳み構造30が、周方向において他より薄い肉厚を有する薄肉部と、薄肉部より厚い肉厚を有し薄肉部より内方に位置する非薄肉部とを含んで構成される。それにより、内容器20の肩部3では、非薄肉部としての谷部32が外方に向かって反転するような意図しない変形を発生し難くすることができ、適切に折り畳まれて収縮した状態を維持することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0053】
更に、実施形態1に係る二重容器1では、外容器10の肩部3が内容器20の肩部3に沿った形状を有する。すなわち、実施形態1に係る二重容器1では、外容器10及び内容器20を、ブロー成形という既存の製造方法によって製造することができる。特に、実施形態1に係る二重容器1では、外容器10及び内容器20を、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた二軸延伸ブロー成形によって製造することができる。このため、実施形態1に係る二重容器1では、外容器10及び内容器20を、リサイクル性の高い既存の樹脂を用いて、既存の製造方法によって製造することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1は、肩部3での内容物の残留を抑制可能であってリサイクル性の高い二重容器でありながらも、簡易かつ安価に製造可能となる。
【0054】
[他の実施形態]
実施形態2~6に係る二重容器1について説明する。実施形態2~6に係る二重容器1の説明において、実施形態1に係る二重容器1と同様の構成及び動作に係る説明については、重複する説明となるため省略する。
【0055】
図6は、実施形態2に係る二重容器1の肩部3を拡大して上方から視た図である。なお、
図6、及び、後述する
図7では、
図4と同様に、口部2の図示が省略されている。
【0056】
実施形態1に係る二重容器1では、外容器10及び内容器20の肩部3に設けられた山部31及び谷部32が、
図4に示されるように、口部2から視て放射状に延びるように設けられる。この場合、実施形態1に係る山部31及び谷部32は、中心軸Zを中心として径方向外方に沿って直線的に延びるように設けられてよい。
【0057】
これに対し、実施形態2に係る山部31及び谷部32は、
図6に示されるように、径方向に対して周方向に傾斜して直線的に延びるように設けられてよい。なお、実施形態2に係る山部31及び谷部32を含む肩部3においても、実施形態1と同様に、横断面形状が、中心軸Zを中心とし山部31と頂点とする星形正多角形形状を有し得る。このような構成であっても、実施形態2に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を抑制することができる。
【0058】
図7は、実施形態3に係る二重容器1の肩部3を拡大して上方から視た図である。
【0059】
実施形態3に係る山部31及び谷部32は、
図7に示されるように、周方向に湾曲して曲線的に延びるように設けられてよい。なお、実施形態3に係る山部31及び谷部32を含む肩部3においても、実施形態1と同様に、横断面形状が、中心軸Zを中心とし山部31と頂点とする星形正多角形形状を有し得る。このような構成であっても、実施形態3に係る二重容器1では、内容器20の肩部3において内容物の流路を適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を抑制することができる。
【0060】
図8は、実施形態4に係る二重容器1の肩部3における横断面形状を示す図である。なお、
図8、並びに、後述する
図9及び
図10では、
図5(a)~
図5(c)と同様に、外容器10及び内容器20の肩部3における横断面形状が太線で描かれている。
【0061】
実施形態1に係る二重容器1では、外容器10及び内容器20の肩部3において、山部31と谷部32との間の面が、
図3に示されるように、平坦に形成される。
【0062】
これに対し、実施形態4に係る二重容器1では、
図8に示されるように、山部31と谷部32との間の面が平坦ではなく、山部31と谷部32との間の面には、径方向において起伏する起伏部35が設けられてよい。起伏部35は、溝、リブ又はビード等であってよい。それにより、実施形態4に係る二重容器1では、内容器20の肩部3の周長が外接円C1の円周長よりも更に長くなるため、内容器20の肩部3を更に薄肉化して収縮し易くすることができる。よって、実施形態4に係る二重容器1は、内容器20の肩部3において内容物の流路を更に適切に確保することができ、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0063】
図9は、実施形態5に係る二重容器1の肩部3における横断面形状を示す図である。
【0064】
実施形態5に係る起伏部35は、
図9に示されるように、山部31と谷部32との間の面の一部だけではなく、山部31と谷部32との間の面の全体に亘って設けられてよい。例えば、実施形態5に内容器20の肩部3は、横断面形状において、波線が周方向に延びるような形状を有してよい。それにより、実施形態5に係る二重容器1では、内容器20の肩部3の周長が外接円C1の円周長よりも更に長くなり、更に薄肉化して収縮し易くすることができるため、肩部3での内容物の残留を更に抑制することができる。
【0065】
図10は、実施形態6に係る二重容器1の肩部3における横断面形状を示す図である。
【0066】
実施形態1に係る二重容器1では、外容器10肩部3が、内容器20の肩部3に沿った形状を有する。
【0067】
これに対し、実施形態6に係る外容器10の肩部3は、
図10に示されるように、内容器20の肩部3とは異なる形状を有してよい。例えば、実施形態6に係る外容器10の肩部3は、横断面形状が円形形状、楕円形状又は多角形形状を有してよい。
【0068】
実施形態6に係る二重容器1は、次のようにして製造することができる。例えば、山部31及び谷部32を模った成形金型を用いて外容器10及び内容器20を二軸延伸ブロー成形によって成形した後、内容器20の内部に空気を吹き込み、外容器10及び内容器20の谷部32を外方へ反転させる。その後、外気導入孔13から空気を吹き込む、又は、内容器20の内部から空気を吸引することによって、内容器20の山部31を内方へ反転させる。それにより、
図10に示されるような、外容器10の肩部3の横断面形状が円形形状であり、内容器20の肩部3の横断面形状が星形正多角形形状である二重容器1を製造することができる。
【0069】
このように、実施形態6に係る二重容器1では、内容器20の肩部3が折り畳み構造30を有しながらも、外容器10の肩部3を自由度の高い形状で形成することができる。よって、実施形態6に係る二重容器1は、肩部3での内容物の残留を抑制しつつ、外観デザインの自由度を向上させることができる。
【0070】
[その他]
上述の実施形態において、二重容器1は、特許請求の範囲に記載された「二重容器」の一例に該当する。外容器10は、特許請求の範囲に記載された「二重容器」の一例に該当する。内容器20は、特許請求の範囲に記載された「二重容器」の一例に該当する。口部2は、特許請求の範囲に記載された「口部」の一例に該当する。肩部3は、特許請求の範囲に記載された「肩部」の一例に該当する。折り畳み構造30は、特許請求の範囲に記載された「折り畳み構造」の一例に該当する。山部31は、特許請求の範囲に記載された「山部」の一例に該当する。谷部32は、特許請求の範囲に記載された「谷部」の一例に該当する。起伏部35は、特許請求の範囲に記載された「起伏部」の一例に該当する。
【0071】
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0072】
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0073】
1 二重容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
10 外容器
11 開口部
12 サポートリング
13 外気導入孔
20 内容器
21 上部
22 開口部
23 装着部
24 リング部
25 下部
30 折り畳み構造
31 山部
32 谷部
33 内面
34 外面
35 起伏部
C1 外接円
C2 内接円
D1 直径
D2 直径
P1 空隙
P2 空気層
S 収容空間
Z 中心軸