(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】インクジェット記録用洗浄液、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230530BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230530BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230530BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20230530BHJP
C11D 1/18 20060101ALI20230530BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20230530BHJP
C11D 3/28 20060101ALI20230530BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20230530BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230530BHJP
【FI】
B41J2/165 401
C11D17/08
C11D3/20
C11D1/90
C11D1/18
C11D1/10
C11D3/28
C11D3/04
C09D11/322
B41J2/165 201
(21)【出願番号】P 2018222429
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-10-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼折 靖子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 範晃
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100341(JP,A)
【文献】特開2018-087290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0216127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C11D 17/08
C11D 3/20
C11D 1/90
C11D 1/18
C11D 1/10
C11D 3/28
C11D 3/04
C09D 11/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、ヤシ油脂肪酸界面活性剤と、有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物とを含有し、
前記多価アルコールは、1,3-プロパンジオールであり、
前記ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム及びN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含み、
前記ヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上
0.75質量%以下であり、
前記有機潮解剤の含有量は、0.10質量%以上
2.00質量%以下であり、
JIS Z 8803:2011に記載の方法に準拠して25℃で測定された粘度は、5.5mPa・s以上7.5mPa・s以下である、インクジェット記録用洗浄液。
【請求項2】
前記有機潮解剤は、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンを含む、請求項
1に記載のインクジェット記録用洗浄液。
【請求項3】
前記塩基性無機化合物は、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1
又は2に記載のインクジェット記録用洗浄液。
【請求項4】
インクを、記録ヘッドの吐出面から記録媒体へ吐出する吐出工程と、
洗浄液を、前記吐出面へ供給する供給工程と、
前記インクを、加圧して前記吐出面から排出させるパージ工程と、
前記吐出面を、払拭するワイプ工程と、
を含み、
前記洗浄液は、請求項1~
3の何れか一項に記載のインクジェット記録用洗浄液である、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用洗浄液、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の記録ヘッドの吐出面に付着した凝集物等を、洗浄液を用いて洗浄する方法が知られている。例えば、特許文献1に記載の2液型インクジェットヘッド洗浄液は、A液とB液とを組み合わせてなる。A液は、アルキルアミンオキサイドと、水とを含む。B液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と、水とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の洗浄液の洗浄性が不十分であることが、本発明者らの検討により判明した。特に、特許文献1に記載の洗浄液は、記録ヘッドの吐出面上及びノズル内で固化したインクを洗浄する点で、不十分であることが、本発明者らの検討により判明した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドの吐出面の洗浄性、インクの吐出性能の低下の抑制、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の何れにも優れるインクジェット記録用洗浄液を提供することである。また、本発明の別の目的は、このようなインクジェット記録用洗浄液を用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット記録用洗浄液は、水と、ヤシ油脂肪酸界面活性剤と、有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物とを含有する。前記多価アルコールは、アルカンジオールである。前記ヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下である。前記有機潮解剤の含有量は、0.10質量%以上30.00質量%以下である。
【0007】
本発明に係る画像形成方法は、インクを、記録ヘッドの吐出面から記録媒体へ吐出する吐出工程と、洗浄液を、前記吐出面へ供給する供給工程と、前記インクを、加圧して前記吐出面から排出させるパージ工程と、前記吐出面を、払拭するワイプ工程とを含む。前記洗浄液は、上記インクジェット記録用洗浄液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインクジェット記録用洗浄液は、記録ヘッドの吐出面の洗浄性、インクの吐出性能の低下の抑制、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の何れにも優れる。本発明に係る画像形成方法によれば、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の向上、インクの吐出性能の低下の抑制、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第2実施形態に係る画像形成方法に使用される画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る画像形成方法を説明する図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る画像形成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。なお、粉体に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製の「ゼータサイザー ナノZS」)を用いて測定した値である。
【0011】
また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0012】
<第1実施形態:インクジェット記録用洗浄液>
本発明の第1実施形態は、インクジェット記録用洗浄液(以下、単に「洗浄液」と記載することがある)に関する。第1実施形態の洗浄液は、水と、ヤシ油脂肪酸界面活性剤と、有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物とを含有する。以下、洗浄液に含有される有機潮解剤を、「第1有機潮解剤」と記載することがある。多価アルコールは、アルカンジオールである。洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下である。洗浄液における第1有機潮解剤の含有量は、0.10質量%以上30.00質量%以下である。
【0013】
第1実施形態の洗浄液を用いることにより、吐出面で乾燥して吐出面に固着したインク(以下、「固着インク」と記載する)を、記録ヘッドの吐出面から好適に除去できる。理解を助けるために、第1実施形態の洗浄液の詳細な説明に先立ち、インクジェット記録装置を用いた画像形成方法と、固着インクの形成プロセスとを説明する。
【0014】
インクジェット記録装置を用いた画像形成方法の一例について説明する。画像形成方法で用いられるインクジェット記録装置は、記録ヘッドを備える。記録ヘッドは、吐出面を有する。吐出面には、撥水膜と、複数個の吐出口とが設けられる。画像形成方法の一例において、まず、水性インク(以下、単に「インク」と記載することがある)を、記録ヘッドの吐出面から記録媒体へ吐出する。次に、吐出面への洗浄液の供給と、パージ動作とを行う。「パージ動作」は、インクを加圧して、吐出面に設けられた吐出口からインクを排出させる動作を意味する。以下、パージ動作で排出されるインクを「パージインク」と記載することがある。続いて、ワイプ動作を行う。「ワイプ動作」は、吐出面を払拭する動作を意味する。吐出面への洗浄液の供給と、パージ動作とは、各々、吐出面から記録媒体へのインクの吐出よりも後であって、ワイプ動作よりも前に、行われる。吐出面への洗浄液の供給は、パージ動作の前に行われても良いし、パージ動作の後に行われても良いし、パージ動作と同時に行われても良い。
【0015】
次に、固着インクの形成プロセスについて説明する。なお、この形成プロセスは、推測される一例であって、本発明はこの形成プロセスに限定されるものではない。インクは、例えば、水性溶媒と顔料粒子とを含有する。顔料粒子は、例えば、顔料を含有する顔料コアと、顔料コアの表面に設けられた被覆樹脂とを備える。被覆樹脂としては、樹脂塩が使用されることが多い。樹脂塩は、分子内に電離可能な官能基(例えばCOONa基)を有する。このようなインクを記録ヘッドの吐出面から記録媒体へ吐出すると、インクが吐出面に付着することがある。インクが吐出面に付着すると、インクと空気との接触に起因して、インクが乾燥する。インクが乾燥していない状態では、インクが十分な量の水性溶媒を含有する。このため、被覆樹脂の表面で電離(例えばCOO-基の形成)が起こり易く、顔料粒子同士が電気的に反発して、顔料粒子が凝集し難い。しかし、インクが乾燥すると、インクにおける水性溶媒の含有量が減少するため、被覆樹脂の表面で電離(例えばCOO-基の形成)が起こり難くなる。これにより、顔料粒子同士が電気的に反発し難くなり、顔料粒子が互いに凝集し易くなる。顔料粒子が互いに凝集すると、各顔料粒子が有する被覆樹脂同士が接触して、被覆樹脂からなる膜(以下、「樹脂膜」と記載する)が形成され易くなる。そして、各顔料粒子が有する顔料コアの凝集体と、この凝集体を被覆する樹脂膜が形成される。このようにして、固着インクが形成される。以上、インクジェット記録装置を用いた画像形成方法と、固着インクの形成プロセスとを説明した。
【0016】
第1実施形態の洗浄液を吐出面に供給することと、パージ動作と、ワイプ動作とを行うことにより、上記のような形成プロセスにより形成した固着インクを、吐出面から除去できる。これにより、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上できる。また、固着インクが吐出口を塞ぐことを防止し、インクの吐出性能の低下を防止できる。吐出性能の低下としては、例えば、インクが吐出され難くなること、及びインクが所望の吐出方向とは異なる方向に吐出されることが挙げられる。更に、第1実施形態の洗浄液を吐出面に供給することで、インクジェット記録装置の部材が吐出面に接触して、記録ヘッドの吐出面の撥水膜が削れることを抑制できる。撥水膜の削れが抑制されることから、吐出面にインクが固着することを長期間にわたって抑制できる。このため、第1実施形態の洗浄液によれば、安定した洗浄効果を長期間にわたって発揮できる。第1実施形態の洗浄液が以上のような利点を有する理由については、「第1~第6の利点」で後述する。
【0017】
次に、第1実施形態の洗浄液に含有されるヤシ油脂肪酸界面活性剤と、第1有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物とについて説明する。また、必要に応じて洗浄液に含有されてもよいその他の成分(ヤシ油脂肪酸界面活性剤、第1有機潮解剤、多価アルコール、及び塩基性無機化合物以外の成分)について説明する。また、洗浄液の粘度、表面張力、及びpH、並びに洗浄液の製造方法について説明する。
【0018】
(ヤシ油脂肪酸界面活性剤)
ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、ヤシ油に由来する脂肪酸から調製された界面活性剤である。洗浄液がヤシ油脂肪酸界面活性剤を含有することで、以下に示す第1及び第2の利点が得られる。
【0019】
第1の利点を説明する。ヤシ油脂肪酸界面活性剤の分子量は、比較的高い。このため、ヤシ油脂肪酸界面活性剤を含有する洗浄液が吐出面に供給されると、ヤシ油脂肪酸界面活性剤が潤滑剤として働く。このため、洗浄液を吐出面へ供給するための部材(例えば、スポンジ)及びワイプ動作に使用される部材(例えば、ブレード)が吐出面に接触した場合であっても、部材と吐出面との間の摩擦力を低減でき、吐出面の撥水膜が削れることを抑制できる。
【0020】
第2の利点を説明する。上記「固着インクの形成プロセス」で説明したように、固着インクの表面は、樹脂膜で構成される。樹脂膜は被覆樹脂からなり、被覆樹脂としては樹脂塩が使用されることが多い。そのため、固着インクが、水を含有する洗浄液と接触すると、固着インクの表面では電離(例えばCOO-基の形成)が起こり、固着インクの表面は親水性を示し易い。一方、吐出面は、一般的に、疎水性を示し易い。そのため、洗浄液が吐出面へ供給されると、洗浄液に含有されるヤシ油脂肪酸界面活性剤の親水基は、固着インクの表面に対して親和性(親水性相互作用)を示す。一方、ヤシ油脂肪酸界面活性剤の疎水基は、吐出面に対して親和性(疎水性相互作用)を示す。これらの相互作用から、ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、固着インクと吐出面との間に安定して存在できる。このため、ヤシ油脂肪酸界面活性剤を含有する洗浄液が吐出面へ供給されると、固着インクの表面から、固着インクと吐出面との間へ、洗浄液が浸入する。侵入した洗浄液によって吐出面が洗浄されるため、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。
【0021】
ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤の何れであってもよい。ヤシ油脂肪酸界面活性剤が潤滑剤として好適に働くこと、及び吐出面の撥水性が維持されやすいことから、ヤシ油脂肪酸界面活性剤としては、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤が好ましく、両性界面活性剤がより好ましい。なお、両性界面活性剤は、酸性液体中ではカチオン界面活性剤の性質を示し、塩基性液体中ではアニオン界面活性剤の性質を示す。インクは、一般に、弱塩基性を示す。そのため、ヤシ油脂肪酸界面活性剤が両性界面活性剤である場合、固着インクと洗浄液とが接触すると、両性界面活性剤は、アニオン界面活性剤の性質を示し易くなる。
【0022】
吐出面の洗浄性を向上させ、インクの吐出性能の低下を抑制し、吐出面の撥水膜の削れを抑制するためには、ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、及びN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンのうちの少なくとも1つを含むことがより好ましい。例えば、ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、及びN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンのうちの1つのみを含んでいてもよい。
【0023】
洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下である。洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量が0.01質量%以上であれば、潤滑剤としても働くヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量を確保でき、吐出面の撥水膜の削れを抑制できる。洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量が3.00質量%以下であれば、洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の分散性を確保でき、吐出面の洗浄性の向上、及びインクの吐出性能の低下の抑制が可能となる。吐出面の撥水膜の削れを更に抑制するためには、洗浄液におけるヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量が、0.50質量%以上3.00質量%以下であることが好ましい。
【0024】
(第1有機潮解剤)
第1有機潮解剤は、潮解性を有する有機化合物である。洗浄液が第1有機潮解剤を含有することにより、以下に示す第3及び第4の利点が得られる。第3の利点を説明する。吐出面への洗浄液の供給と、パージ動作とが行われると、水性溶媒を含有するパージインクが、第1有機潮解剤に吸収される。上記「第2の利点」で説明したように、洗浄液は、固着インクの表面から、固着インクと吐出面との間へ浸入する。このとき、洗浄液中の第1有機潮解剤に吸収されたパージインクも、固着インクの表面から、固着インクと吐出面との間へ浸入する。固着インクと吐出面との間へ侵入するパージインクの量が多くなることにより、吐出面に付着した直後のインクだけでなく、吐出面に付着して時間が経過した後の固着インクを、吐出面から除去できる。このため、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。
【0025】
第4の利点を説明する。ワイプ動作において洗浄液の拭き残りが発生した場合、拭き残り洗浄液も第1有機潮解剤を含有する。そのため、アンキャップ動作を行えば、拭き残り洗浄液に含有される第1有機潮解剤が、空気中の水分を吸収して液化する。拭き残り洗浄液が液化すれば、予備ワイプを行うことで、拭き残り洗浄液を除去できる。なお、アンキャップ動作、及び予備ワイプについては、第2実施形態で後述する。
【0026】
第1有機潮解剤の例としては、ソルビトール、トリメチロールプロパン、及び1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンが挙げられる。洗浄液は、1種の第1有機潮解剤のみを含有してもよく、2種以上の第1有機潮解剤を含有してもよい。
【0027】
第1有機潮解剤としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンが好ましい。以下、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンを、「有機潮解剤A」と記載することがある。
【0028】
第1有機潮解剤が有機潮解剤Aを含むことにより、次の利点が得られる。固着インクと、水を含有する洗浄液とが接触すると、固着インクの表面では電離(例えばCOO-基の形成)が起こり易くなる。有機潮解剤Aは、電荷を有していない。このため、有機潮解剤Aと固着インクの表面との間に電気的引力が発生し難い。このため、有機潮解剤Aが固着インクの表面に存在し難く、固着インクと吐出面との間へ浸入する傾向がある。従って、パージインクを吸収した有機潮解剤Aが、固着インクと吐出面との間へ好適に浸入し、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。
【0029】
また、第1有機潮解剤が有機潮解剤Aを含むことにより、次の利点も得られる。有機潮解剤Aの粘度は比較的低い。このため、洗浄液の粘度が高くなり過ぎず、固着インクと吐出面との間へ洗浄液が好適に浸入する。従って、パージインクを吸収した有機潮解剤Aが、固着インクと吐出面との間へ好適に浸入し、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。
【0030】
更に、第1有機潮解剤が有機潮解剤Aを含むことにより、次の利点も得られる。有機潮解剤Aの粘度は比較的低い。このため、ワイプ動作又は予備ワイプを行うことで、有機潮解剤Aが拭き取られ易く、吐出面に有機潮解剤Aが残存し難い。
【0031】
洗浄液における第1有機潮解剤の含有量は、0.10質量%以上30.00質量%以下である。洗浄液における第1有機潮解剤の含有量が0.10質量%以上であれば、第1有機潮解剤が吸収するパージインクの量を確保でき、固着インクと吐出面との間へ侵入するパージインクの量を確保できる。このため、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。洗浄液における第1有機潮解剤の含有量が30.00質量%以下であれば、洗浄液の粘度が高くなり過ぎず、洗浄液を吐出面に均一に塗布できる。また、洗浄液における第1有機潮解剤の含有量が30.00質量%以下であれば、洗浄液において第1有機潮解剤が析出することを防止でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。記録ヘッドの吐出面の洗浄性を向上させるためには、洗浄液における第1有機潮解剤の含有量は、0.50質量%以上30.00質量%以下であることが好ましい。なお、洗浄液が2種以上の第1有機潮解剤を含有する場合には、洗浄液における第1有機潮解剤の含有量は、2種以上の第1有機潮解剤の合計含有量である。
【0032】
(多価アルコール)
多価アルコールは、アルカンジオールである。アルカンジオールは、2個のヒドロキシ基で置換された直鎖状又は分枝鎖状のアルカンである。洗浄液が多価アルコールとしてアルカンジオールを含有することにより、以下に示す第5の利点が得られる。第5の利点を説明する。洗浄液に多価アルコールとしてアルカンジオールを含有させることで、インクの吐出性能の低下を防止できる。また、洗浄液に多価アルコールとしてアルカンジオールを含有させることで、記録ヘッドの吐出面の撥水膜が削れることを抑制できる。
【0033】
多価アルコールであるアルカンジオールの例としては、炭素原子数1以上6以下のアルカンジオールが挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルカンジオールの例としては、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。洗浄液は、1種の多価アルコールのみを含有してもよく、2種以上の多価アルコールを含有してもよい。
【0034】
多価アルコールであるアルカンジオールは、炭素原子数1以上6以下のアルカンジオールであることが好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルカンジオールであることがより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルカンジオールであることが更に好ましく、1,3-プロパンジオールであることが特に好ましい。
【0035】
洗浄液における多価アルコールの含有量は、0.50質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
(塩基性無機化合物)
洗浄液が塩基性無機化合物を含有することで、以下の第6の利点が得られる。既に述べたように、ヤシ油脂肪酸界面活性剤は、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤の何れであってもよい。このため、ヤシ油脂肪酸界面活性剤を含有する洗浄液のpHが、低下することがある。塩基性無機化合物を洗浄液に含有させて、洗浄液のpHを高めることにより、洗浄液中の成分の分散性を向上できる。
【0037】
塩基性無機化合物は、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。塩基性無機化合物は、これらのうちの1つのみを含んでもよい。例えば、塩基性無機化合物は、水酸化ナトリウムを含んでもよく、水酸化ナトリウムのみを含んでもよい。
【0038】
洗浄液における塩基性無機化合物の含有量は、0.0001mol/L以上0.015mol/L以下であることが好ましく、0.001mol/L以上0.003mol/L以下であることがより好ましい。また、洗浄液における塩基性無機化合物の含有量は、洗浄液のpHが7.5以上9.0以下となうような量であることが好ましく、洗浄液のpHが7.5以上7.8以下となるような量であることがより好ましい。
【0039】
(その他の成分)
洗浄液は、必要に応じて、溶解安定剤を含有してもよい。洗浄液が溶解安定剤を含有すれば、洗浄液に含有される成分が相溶し易くなるため、洗浄液の溶解状態を安定化できる。溶解安定剤は、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びγ-ブチローラークトンのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。溶解安定剤は、これらのうちの1つのみを含んでもよい。例えば、溶解安定剤は、2-ピロリドンを含んでもよく、2-ピロリドンのみを含んでもよい。洗浄液における溶解安定剤の含有量は、0.50質量%以上20.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上10.00質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
洗浄液は、必要に応じて、浸透剤を含有してもよい。浸透剤は、1,2-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。浸透剤は、これらのうちの1つのみを含んでもよい。例えば、浸透剤は、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含んでもよく、トリエチレングリコールモノブチルエーテルのみを含んでもよい。洗浄液における浸透剤の含有量は、好ましくは0.50質量%以上20.00質量%以下である。
【0041】
(洗浄液の粘度、表面張力、及びpH)
洗浄液の25℃での粘度は、5.5mPa・s以上7.5mPa・s以下であることが好ましく、5.5mPa・s以上6.0mPa・s未満であることがより好ましい。洗浄液の25℃での粘度がこのような範囲内であると、洗浄液を吐出面に均一に塗布できる。洗浄液の表面張力は、32mN/m以上35mN/m以下であることが好ましい。洗浄液のpHは、7.5以上9.0以下であることが好ましく、7.5以上7.8以下であることがより好ましい。
【0042】
なお、第1実施形態の洗浄液は、水を含有する水性洗浄液である。第1実施形態の洗浄液は、有機溶剤を含有しないことが好ましい。また、第1実施形態の洗浄液は、既に述べたように、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドの吐出面の洗浄に使用される。また、第1実施形態の洗浄液は、吐出面の洗浄だけでなく、ワイプ動作において使用されるインクジェット記録装置のブレードの洗浄にも使用できる。また、第1実施形態の洗浄液は、吐出面の洗浄だけでなく、インクジェット記録装置が備える搬送ローラーの洗浄にも使用できる。
【0043】
(洗浄液の製造方法)
洗浄液の製造方法の一例は、材料(例えば、水と、ヤシ油脂肪酸界面活性剤と、第1有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物)を所定の配合量で混合する工程を含む。攪拌機(例えば、新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて材料を混合することが好ましい。
【0044】
<第2実施形態:画像形成方法>
本発明の第2実施形態は、画像形成方法に関する。第2実施形態の画像形成方法には、第1実施形態の洗浄液を使用する。そのため、第2実施形態の画像形成方法によれば、第1実施形態で説明した理由と同じ理由により、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の向上、インクの吐出性能の低下の抑制、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制が可能となる。
【0045】
第2実施形態の画像形成方法は、例えば、吐出工程と、供給工程と、パージ工程と、ワイプ工程とを含む。吐出工程では、インクを、記録ヘッドの吐出面から記録媒体へ吐出する。供給工程では、洗浄液を、吐出面へ供給する。パージ工程では、パージ動作が行われる。より具体的には、インク(パージインク)を、加圧して吐出面から排出させる。ワイプ工程では、ワイプ動作が行われる。より具体的には、吐出面を払拭する。供給工程と、パージ工程とは、各々、吐出工程よりも後であってワイプ工程よりも前に、行われる。供給工程は、パージ工程の前に行われても良いし、パージ工程の後に行われても良いし、パージ工程と同時に行われても良い。第2実施形態の画像形成方法は、インクと第1実施形態の洗浄液とが装填されたインクジェット記録装置を用いて、実施できる。
【0046】
以下、
図1~
図3を用いて、第2実施形態に係る画像形成方法の一例を具体的に説明する。
図1は、第2実施形態に係る画像形成方法に使用される画像形成装置1の構成を示す図である。
図2及び
図3は、各々、第2実施形態に係る画像形成方法を説明する図である。より具体的には、
図2は、供給工程を説明する図である。また、
図3は、パージ動作とワイプ動作とを説明する図である。ここで、
図1~
図3に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。また、
図2及び
図3は、各々、
図1に示す画像形成装置1の要部を側面から見た図である。
【0047】
まず、
図1に示す画像形成装置1の構成を説明する。
図1に示す画像形成装置1は、給紙部3と、記録ヘッド4と、液体収容部5と、用紙搬送部7と、排出部8と、メンテナンスユニット9とを備える。
【0048】
給紙部3は、複数個の給紙カセット31と、複数個の給紙ローラー32aとを有する。給紙カセット31には、複数枚の記録媒体S(例えばコピー用紙)が重ねられた状態で収納されている。
【0049】
記録ヘッド4には、
図2及び
図3に示すように、ノズル41と、インク流入口43と、インク流出口45とが形成されている。また、記録ヘッド4は、吐出面47を有する。ノズル41は、吐出面47において開口しており、インクを記録媒体S(
図1参照)へ向かって吐出する。記録ヘッド4は、例えば、ラインヘッドである。インクは、第2タンク52(
図1参照)に収容されている。インクは、第2タンク52からインク流入口43を通って記録ヘッド4へ流入し、インク流出口45を通って記録ヘッド4から流出する。
【0050】
液体収容部5には、
図1に示すように、カートリッジ51が設けられている。カートリッジ51は、画像形成装置1に着脱自在に装着される。カートリッジ51は、第1タンク53と、第2タンク52とを有する。第1タンク53は、第1実施形態の洗浄液を収容する。第2タンク52は、インクを収容する。
【0051】
用紙搬送部7は、第1搬送ユニット71と、第2搬送ユニット72とを有する。排出部8は、排出トレイ81を有する。
【0052】
メンテナンスユニット9は、スポンジ91と、ブレード92とを有する。スポンジ91と、ブレード92とは、各々、吐出面47(
図2及び
図3参照)に対向する位置と第2搬送ユニット72に対向する位置(
図1に示す位置)との間を移動可能である。スポンジ91は、
図2に示すように、上昇方向D1及び下降方向D2の各々の方向に沿って移動可能である。スポンジ91は、洗浄液を含浸する。洗浄液は、第1タンク53(
図1参照)に収容されており、第1タンク53からスポンジ91へ供給される。ブレード92は、
図3に示すように、上昇方向D1、下降方向D2、及びワイピング方向D3の各々の方向に沿って移動可能である。ここで、「上昇方向D1」は、Z軸方向に沿って吐出面47へ近づく方向を意味する。また、「下降方向D2」は、Z軸方向に沿って吐出面47から遠ざかる方向を意味する。また、「ワイピング方向D3」は、吐出面47に沿う方向を意味する。
【0053】
図1に示す画像形成装置1を用いて画像を記録媒体Sに形成する場合には、まず、給紙ローラー32aが、給紙カセット31に収納された記録媒体Sを最上部から一枚ずつ取り出し、取り出した記録媒体Sを第1搬送ユニット71へ送出する。記録媒体Sが吐出面47(
図2参照)に対向する位置に到達すると、インクが、吐出面47(より具体的にはノズル41の開口)から記録媒体Sへ吐出される(吐出工程)。なお、記録媒体Sの大きさがA4サイズであり記録媒体Sの縦方向と記録媒体Sの搬送方向とが平行である場合には、第1搬送ユニット71による記録媒体Sの搬送速度は、100枚/分以上であることが好ましい。その後、記録媒体Sは、第2搬送ユニット72へ送出されて、排出トレイ81へ排出される。
【0054】
吐出工程では、インクが吐出面47に付着することがある。インクが吐出面47に付着すると、インクと空気との接触に起因して固着インク(不図示)が形成される。そのため、吐出工程の後に、供給工程とパージ工程とワイプ工程とが行われる。
【0055】
図2を参照しながら、供給工程を説明する。供給工程では、まず、洗浄液がスポンジ91に含浸される。次に、スポンジ91が、吐出面47に対向する位置(
図2に示す位置)まで移動した後、上昇方向D1に沿って移動して吐出面47に押し当てられる。このようにして、スポンジ91に含浸された洗浄液が、吐出面47へ供給される。このとき、スポンジ91が吐出面47に押し当てられた状態(以下、「スポンジ91の押し当て状態」と記載する)が、所定時間、維持されることが好ましい。所定時間としては、1秒以上5分以下であることが好ましく、1秒以上30秒以下であることがより好ましい。また、スポンジ91が上昇方向D1に沿って移動する動作と、スポンジ91の押し当て状態が維持されることと、スポンジ91が下降方向D2に沿って移動する動作とが繰り返されても良い。また、スポンジ91の押し当て状態が維持されながら、スポンジ91が吐出面47に沿う方向(
図2に示すX軸方向に沿う方向)に移動しても良い。
【0056】
所定時間が経過すると、スポンジ91が下降方向D2に沿って移動し、スポンジ91の押し当て状態が解除される。これにより、供給工程が終了する。供給工程の後に、パージ工程が行われる。
【0057】
図3を参照しながら、パージ工程を説明する。パージ工程では、パージ動作が行われる。パージ動作では、記録ヘッド4がパージ処理を行う。パージ処理におけるインクの加圧により、パージインクNfが、吐出面47(より具体的にはノズル41の開口)から強制的に排出される。パージ工程の後に、ワイプ工程が行われる。
【0058】
図3を参照しながら、ワイプ工程を説明する。ワイプ工程では、ワイプ動作が行われる。ワイプ動作では、ブレード92が、吐出面47に対向する位置(
図3に示す位置)まで移動した後、上昇方向D1に沿って移動して吐出面47に押し当てられる。そして、ブレード92が吐出面47に押し当てられた状態が維持されながら、ブレード92が吐出面47に沿う方向(
図3に示すワイピング方向D3)に移動する。これにより、ブレード92によって吐出面47が払拭され、固着インクが除去される。
【0059】
長期間にわたってインクを吐出しない場合には、ワイプ工程の後にキャップ動作を行う。「キャップ動作」は、吐出口を密閉する動作である。キャップ動作を行えば、吐出口が密閉されるため、ノズル41内のインクが乾燥することを防止できる。これにより、ノズル41内で目詰まりが起こることを防止できる。キャップ動作では、吐出面47をゴム製のキャップ(不図示)で覆う。これにより、ノズル41の吐出口が密閉される。
【0060】
キャップ動作の後にインクの吐出を再開する場合には、アンキャップ動作を行う。「アンキャップ動作」は、吐出口の密閉状態を解除する動作である。アンキャップ動作では、ゴム製のキャップを吐出面47から取り外す。これにより、ノズル41の開口の密閉状態が解除される。その後、予備ワイプを行った後に、吐出工程を行う。「予備ワイプ」とは、ワイプ動作の1種であり、アンキャップ動作よりも後であってインクの再吐出よりも前に行われるワイプ動作を意味する。予備ワイプでは、
図3に示すワイプ動作と同じように、ブレード92が吐出面47に沿う方向(
図3に示すワイピング方向D3)に移動する。
【0061】
以上、
図1~
図3を用いて第2実施形態に係る画像形成方法の一例を説明した。なお、上記例の供給工程では洗浄液を含浸したスポンジ91によって洗浄液を吐出面47へ供給したが、洗浄液の供給方法はこれに限定されない。洗浄液の供給方法は、例えば、洗浄液を含浸したシートによる供給、インクジェット法による洗浄液の吐出、ローラーを用いた洗浄液の塗布、又は洗浄液の噴霧であってもよい。また、第2実施形態に係る画像形成方法では、カートリッジ51をインクジェット記録装置に装填して画像を形成しても良い。カートリッジ51は、第1実施形態の洗浄液を収容する第1タンク53と、インクを収容する第2タンク52とを含む。このようなカートリッジ51をインクジェット記録装置に装填すれば、第2実施形態に係る画像形成を容易に実施できる。また、第2実施形態に係る画像形成方法では、カートリッジ51の形態ではなく、別々に準備されたインク及び洗浄液を用いて画像を形成しても良い。
【0062】
<画像形成方法に用いられるインク>
以下、第2実施形態の画像形成方法に用いられるインクについて説明する。インクは、水性溶媒を含有する水性インクである。インクは、例えば、顔料粒子と、水性溶媒とを含有する。インクは、有機潮解剤を更に含有することが好ましい。以下、インクが含有する有機潮解剤を「第2有機潮解剤」と記載することがある。インクは、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、及び浸透剤のうちの少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
【0063】
(顔料粒子)
顔料粒子は、例えば、各々、顔料コアと、被覆樹脂とを含むことが好ましい。顔料粒子は、水性溶媒中に顔料粒子が互いに分散した顔料分散液の状態で、インクに添加されてもよい。
【0064】
(顔料粒子の顔料コア)
顔料コアは、顔料を含有する。顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193が挙げられる。橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、及び71が挙げられる。赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド122、及び202が挙げられる。赤色顔料として、キナクリドン・マゼンタ(PR122)を使用しても良い。青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、及び15:3が挙げられる。紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット19、23、及び33が挙げられる。黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック7が挙げられる。黒色顔料として、カーボンブラックを使用しても良い。
【0065】
インクにおける顔料コアの含有量は、4質量%以上8質量%以下であることが好ましい。インクにおける顔料コアの含有量が4質量%以上であれば、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。インクにおける顔料コアの含有量が8質量%以下であれば、インクの流動性が確保され易い。このことによっても、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。また、記録媒体に対するインクの浸透性が確保され易い。
【0066】
顔料コアの体積中位径(D50)は、30nm以上200nm以下であることが好ましい。これにより、インクの色濃度、色相、又は安定性が向上する。より好ましくは、顔料コアの体積中位径(D50)は70nm以上130nm以下である。
【0067】
(顔料粒子の被覆樹脂)
被覆樹脂は、顔料コアの表面に設けられる。被覆樹脂は、アニオン性を有することが好ましく、例えば、スチレン-アクリル酸系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体のうちの少なくとも1つであることが好ましい。より好ましくは、被覆樹脂は、スチレン-アクリル酸系樹脂である。被覆樹脂がスチレン-アクリル酸系樹脂であれば、顔料粒子を容易に作製できる。また、顔料コアの分散性を高めることができる。
【0068】
スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンに由来する単位と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルに由来する単位とを含む樹脂である。好ましくは、スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンとアクリル酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとマレイン酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、及びスチレンとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体のうちの少なくとも1つである。より好ましくは、スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体である。より具体的には、スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体である。
【0069】
被覆樹脂の質量平均分子量(Mw)は5000以上100000以下であることが好ましく、15000以上25000以下であることがより好ましい。被覆樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましく、90mgKOH/g以上110mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0070】
被覆樹脂の含有量は、100質量部の顔料コアに対して、15質量部以上100質量部以下であることが好ましい。被覆樹脂の含有量が15質量部以上であれば、画像形成後の記録媒体に裏抜けが生じ難くなる。一方、被覆樹脂の含有量が100質量部以下であれば、所望の画像濃度が得られ易い。
【0071】
(水性溶媒)
水性溶媒は、水を含有することが好ましく、イオン交換水を含有することがより好ましい。水性溶媒が水を含有する場合、インクにおける水の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。インクにおける水の含有量がこのような範囲内であると、適切な粘度を有するインクを提供できる。
【0072】
水性溶媒は、水に加えて、グリセリン及びグリコールの一方又は両方を更に含有することが好ましい。グリセリン及びグリコールの一方又は両方を含有すれば、インクの乾燥を更に防止できる。
【0073】
水性溶媒は、水に加えて、アルコール及びグリコールエーテルの一方又は両方を更に含有することが好ましい。インクがアルコール及びグリコールエーテルの一方又は両方を含有すれば、記録媒体に対するインクの浸透性を高めることができる。
【0074】
グリコールエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルが挙げられる。
【0075】
(第2有機潮解剤)
インクは、第2有機潮解剤を更に含有することが好ましい。インクが第2有機潮解剤を含有することで、次の利点が得られる。固着インクは、インクが乾燥して形成されたものである。そのため、インクが第2有機潮解剤を含有する場合には、固着インクも第2有機潮解剤を含有する。吐出面への洗浄液の供給とパージ動作とを行うと、固着インクが含有する第2有機潮解剤に、水を含有する洗浄液と、水性溶媒を含有するパージインクとが吸収される。このため、固着インクの表面から固着インクと吐出面との間へ、洗浄液及びパージインクが浸入し易い。これにより、固着インクが、水性溶媒及びパージインクに溶解され易くなり、固着インクを吐出面から除去できる。従って、吐出面の洗浄性を向上でき、インクの吐出性能の低下を抑制できる。
【0076】
また、インクが第2有機潮解剤を含有することで、次の利点も得られる。インクが第2有機潮解剤を含有すると、拭き残りインクも第2有機潮解剤を含有する。そのため、アンキャップ動作を行えば、拭き残りインクは、空気中の水分を吸収して液化する。拭き残りインクが液化すれば、予備ワイプを行うことで拭き残りインクを除去できる。
【0077】
第2有機潮解剤の例としては、ソルビトール、トリメチロールプロパン、及び1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンが挙げられる。インクは、1種の第2有機潮解剤のみを含有してもよく、2種以上の第2有機潮解剤を含有してもよい。また、洗浄液が含有する第1有機潮解剤と、インクが含有する第2有機潮解剤とは、互いに同一であっても良いし、互いに異なっても良い。第2有機潮解剤としては、ソルビトールが好ましい。
【0078】
インクにおける第2有機潮解剤の含有量は、0.1質量%以上7.0質量%以下である。インクにおける第2有機潮解剤の含有量が0.1質量%以上であれば、パージインクの浸入量を確保できる。インクにおける第2有機潮解剤の含有量が7.0質量%以下であれば、インクの間欠吐出性能の低下を防止できる。好ましくは、インクにおける第2有機潮解剤の含有量は、0.5質量%以上5.0質量%以下である。ここで、「インクの間欠吐出性能」とは、キャップ動作が行われることなくインクが間欠的に吐出されている場合におけるインクの吐出性能を意味する。例えば、インクの間欠吐出性能は、数時間の間隔をあけてインクが吐出される場合におけるインクの吐出性能である。
【0079】
なお、インクが2種以上の第2有機潮解剤を含有する場合には、インクにおける第2有機潮解剤の含有量の合計が0.1質量%以上7.0質量%以下である。好ましくは、インクにおける第2有機潮解剤の含有量の合計が0.5質量%以上5.0質量%以下である。
【0080】
(界面活性剤)
インクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。インクが界面活性剤を含有すれば、記録媒体に対するインクの濡れ性が向上する。インクに含有される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。インクにおける非イオン性界面活性剤の含有量は、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。これにより、画像のオフセットを抑制しつつ、画像濃度が向上する。
【0081】
インクに含有される非イオン性界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤であることが好ましく、アセチレンジオールエチレンオキサイド付加物であることがより好ましい。
【0082】
(溶解安定剤)
インクは、溶解安定剤を更に含有することが好ましい。インクが溶解安定剤を含有すれば、インクに含まれる成分が相溶し易くなるため、インクの溶解状態を安定化できる。溶解安定剤は、好ましくは、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びγ-ブチローラークトンのうちの少なくとも1つである。インクにおける溶解安定剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以上15.0質量%以下である。
【0083】
(保湿剤)
インクは、保湿剤を更に含有することが好ましい。インクが保湿剤を含有すれば、インクからの液体成分の揮発を抑制できる。保湿剤は、好ましくは、ポリアルキレングリコール類、アルキレングリコール類、及びグリセリンのうちの少なくとも1つである。ポリアルキレングリコール類は、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールであることが好ましい。アルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール(即ち、1,3-プロパンジオール)、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3-ブタンジオール、又は1,5-ペンタンジオールであることが好ましい。インクにおける保湿剤の含有量は、好ましくは2.0質量%以上30.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以上25.0質量%以下である。
【0084】
(浸透剤)
インクは、浸透剤を更に含有することが好ましい。インクが浸透剤を含有すれば、記録媒体へのインクの浸透性が向上する。浸透剤は、好ましくは、1,2-へキシレングリコール、1,2-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちの少なくとも1つである。インクにおける浸透剤の含有量は、好ましくは0.50質量%以上20.0質量%以下である。
【0085】
インクと洗浄液とでは、水性溶媒、有機潮解剤、及び溶解安定剤のうちの少なくとも1つの材料が互いに同一又は類似となることが好ましい。同一又は類似となることで、洗浄液とインクとの親和性を高めることができる。ここで、固着インクは、インクが乾燥して形成されたものである。そのため、洗浄液とインクとの親和性を高めることができれば、洗浄液と固着インクとの親和性を高めることができる。従って、固着インクと吐出面との間への洗浄液の浸入が更に容易となる。また、良好な画像を記録媒体に形成するためには、インクの25℃での粘度が、5.8mPa・s以上6.2mPa・s以下であることが好ましく、5.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であることがより好ましい。
【0086】
(インクの製造方法)
インクの製造方法の一例は、顔料分散液の調製工程と、顔料分散液と他のインク成分との混合工程とを含む。
【0087】
(顔料分散液の調製工程)
まず、被覆樹脂を合成する。詳しくは、所定の溶媒に、重合により被覆樹脂を合成可能なモノマー又はプレポリマーと、重合開始剤とを加え、所定の温度で加熱還流を行う。このようにして、被覆樹脂が合成される。より具体的には、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンとの混合液に、スチレンと、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、重合開始剤とを加え、70℃で加熱還流を行う。これにより、スチレン-アクリル酸系樹脂が合成される。
【0088】
次に、分散機(例えばメディア型分散機)を用いて、合成された樹脂と、顔料コアと、水性溶媒とを混練する。このようにして、顔料粒子を含む顔料分散液を得る。メディア型分散機で用いるメディアの粒子径(例えば、ビーズの径)を変えることで、顔料粒子の分散度合、顔料分散液において顔料粒子から遊離する樹脂の量、又は顔料粒子の粒子径を調整できる。例えば、メディアの粒子径を小さくするほど、顔料粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。
【0089】
(顔料分散液と他のインク成分との混合工程)
得られた顔料分散液と、他のインク成分とを混合する。攪拌機(例えば、新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を用いて、顔料分散液と他のインク成分とを混合することが好ましい。他のインク成分の例としては、第2有機潮解剤、水性溶媒、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、及び浸透剤のうちの少なくとも1つが挙げられる。顔料分散液と他のインク成分とを混合した後、必要に応じてろ過を行う。このようにして、インクが得られる。以上、第2実施形態の画像形成方法で用いられるインクについて説明した。
【実施例】
【0090】
本発明の実施例を説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
【0091】
[洗浄液の調製]
実施例及び比較例に係る洗浄液(b)~(m)を調製した。洗浄液(b)~(m)の各々に含有される材料及びその配合量を、表1及び表2に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
表1及び表2において、「NaOH」としては、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)を使用した。「有機潮解剤A」は、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオンを意味する。「ブチセノール30」は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(KHネオケム株式会社製「ブチセノール30」)を意味する。「-」は、該当する成分を含有しないことを示す。なお、各洗浄液の粘度は、「JIS Z 8803:2011(液体の粘度測定方法)」に記載の方法に準拠して、測定された。各洗浄液の表面張力は、Wilhelmy法(プレート法)に準拠し、表面張力測定計(協和界面科学株式会社製「自動表面張力計 DY-300」)を用いて、測定された。各洗浄液の粘度及び表面張力の測定環境は、25℃であった。各洗浄液のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製「D-51」)を用いて、測定された。
【0095】
表1及び表2において、「界面活性剤1~4」は、表3に示すとおりであった。表1及び表2の界面活性剤の配合量の欄には、洗浄液の調製で添加した界面活性剤(例えば、界面活性剤の水溶液)の量(単位:質量%)、及び表3に示す界面活性剤固形分濃度から換算した界面活性剤の実質的な量(単位:質量%)を示す。界面活性剤の実質的な量は、式「界面活性剤の実質的な量(単位:質量%)=洗浄液の調製で添加した界面活性剤の量(単位:質量%)×界面活性剤固形分濃度(単位:質量%)/100」から算出される。界面活性剤固形分濃度から換算した界面活性剤の実質的な量は、洗浄液における界面活性剤の実質的な含有量(単位:質量%)に相当する。表1及び表2において、界面活性剤固形分濃度から換算した界面活性剤の実質的な量を、括弧を付して示す。例えば、表1の洗浄液(b)の界面活性剤1の配合量の欄に記載される「2.50(0.75)」は、洗浄液の調製で界面活性剤1(界面活性剤の水溶液)を2.50質量%添加したこと、及び洗浄液(b)における界面活性剤の実質的な含有量が0.75質量%であったことを示す。
【0096】
【0097】
表3において、界面活性剤1は、旭化成ファインケム株式会社製「アミノサーファクト(登録商標)」あった。界面活性剤2は、日油株式会社製「ダイヤポン(登録商標)K-TS」であった。界面活性剤3は、第一工業製薬株式会社製「アモーゲン(登録商標)CB-H」であった。界面活性剤4は、日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)485」であった。
【0098】
<洗浄液(b)の調製>
69.40gの水と、3.00gの2-ピロリドンと、2.50gの界面活性剤1(界面活性剤固形分量:0.75g)と、0.10gの水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)と、2.00gの有機潮解剤A(1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオン)と、20.0gのブチセノール30と、3.00gの1,3-プロパンジオールとを、ビーカーに入れた。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、ビーカーの内容物を均一になるまで、ビーカーの内容物を回転速度400rpmで攪拌した。このようにして、洗浄液(b)を得た。
【0099】
<洗浄液(c)~(m)の調製>
表1及び表2に示す材料を、表1及び表2に示す配合量で、ビーカーに入れたこと以外は、洗浄液(b)の調製と同じ方法で、洗浄液(c)~(m)の各々を調製した。
【0100】
[インクの調製]
洗浄液の評価に使用するための4色のインクを調製した。4色のインクは、シアン系のインク(I-C)と、イエロー系のインク(I-Y)と、マゼンタ系のインク(I-M)と、ブラック系のインク(I-B)とであった。
【0101】
<インク(I-C)の調製>
表4に、インク(I-C)に含有される材料及びその配合量を示す。
【0102】
【0103】
表4において、「アセチレンジオールのEO付加物」は、日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」を意味し、「EO」は、エチレンオキサイドを意味する。「エーテル」は、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを意味する。イオン交換水の配合量が「調整量」であることと、グリセリンの配合量が「調整量」であることとは、インク(I-C)の25℃での粘度が6.0±0.2mPa・sとなるようにイオン交換水の配合量とグリセリンの配合量とを調整したことを意味する。なお、インク(I-C)の粘度は、「JIS Z 8803:2011(液体の粘度測定方法)」に記載の方法に準拠して、測定された。インク(I-C)の粘度の測定環境は、25℃であった。また、「顔料分散液(L1)」の材料及びその配合量は、表5に示すとおりであった。
【0104】
【0105】
表5において、「樹脂B-Na」とは、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和された樹脂Bを意味する。インク(I-C)は、40.0質量%の顔料分散液(L1)を含有していた(表4参照)。顔料分散液(L1)は、15.0質量%のシアン系顔料を含有していた(表5参照)。そのため、インク(I-C)は、6.0質量%のシアン系顔料を含有していた。以下、インク(I-C)の調製方法について、説明する。
【0106】
(樹脂Bの合成)
まず、樹脂Bを合成した。詳しくは、四つ口フラスコ(容量1000mL)に、スターラーと、窒素導入管と、コンデンサー(攪拌機)と、滴下ロートとをセットした。次に、フラスコに、100gのイソプロピルアルコールと300gのメチルエチルケトンとを入れた。フラスコ内容物に窒素をバブリングしながら、70℃で加熱還流を行った。
【0107】
また、40.0gのスチレンと、10.0gのメタクリル酸と、40.0gのメタクリル酸メチルと、10.0gのアクリル酸ブチルと、0.400gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合して、モノマー溶液を得た。70℃で加熱還流させた状態で、約2時間かけて、モノマー溶液をフラスコに滴下した。滴下後、更に6時間、70℃で加熱還流を行った。
【0108】
0.200gのAIBNとメチルエチルケトンとを含有する溶液を、15分かけて、フラスコに滴下した。滴下後、更に5時間、70℃で加熱還流を行った。このようにして、樹脂B(スチレン-アクリル酸系樹脂)を得た。得られた樹脂Bでは、質量平均分子量(Mw)が20000であり、酸価が100mgKOH/gであった。
【0109】
ここで、樹脂Bの質量平均分子量Mwは、ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて、下記条件で、測定された。
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
【0110】
なお、検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンから、F-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500、及びA-1000の7種とn-プロピルベンゼンとを選択して作成された。
【0111】
また、樹脂Bの酸価は、「JIS(日本工業規格)K0070-1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)」に記載の方法に準拠して、求められた。
【0112】
(顔料分散液(L1)の調製)
次に、合成された樹脂Bを用いて、顔料分散液(L1)を調製した。詳しくは、メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製「ダイノ(登録商標)ミル」)のベッセル(容量0.6L)に、6.0質量%の樹脂Bと、15.0質量%のフタロシアニンブルー15:3(東洋インキ株式会社製「リオノール(登録商標)ブルーFG-7330」)と、0.5質量%の1,2-オクタンジオールと、イオン交換水(残量)とを入れた。
【0113】
また、樹脂Bの中和に必要な量の水酸化ナトリウム水溶液をベッセルに加えた。ここで、ベッセル内容物のpHが8になるように、NaOH水溶液をベッセルに加えた。より具体的には、中和当量の1.1倍の質量のNaOH水溶液をベッセルに加えた。また、NaOH水溶液に含まれる水の質量と中和反応で生じた水の質量とは、イオン交換水の質量に加えた。
【0114】
充填量がベッセルの容量に対して70体積%となるように、メディア(径が0.5mmのジルコニアビーズ)をベッセルに充填した。温度が10℃であり且つ周速が8m/秒である条件でベッセルを水冷しながら、顔料粒子の体積中位径(D50)が70.0nm以上130nm以下の範囲に入るように、メディア型分散機を用いてベッセル内容物を混練した。このようにして、顔料分散液(L1)が得られた。
【0115】
ここで、顔料粒子の体積中位径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製の「ゼータサイザー ナノZS」)を用いて測定した値であった。
【0116】
(顔料分散液(L1)と他のインク成分との混合)
表4に記載の材料を、表4に記載の配合量でビーカーに入れた。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いてビーカーの内容物を回転速度400rpmで攪拌して、ビーカーの内容物を均一に混合した。フィルター(孔径5μm)を用いて得られた混合液をろ過し、混合液に含有される異物及び粗大粒子を除去した。このようにして、インク(I-C)を得た。
【0117】
<インク(I-Y)の調製>
表5に示すシアン系顔料15.0質量%を、イエロー系顔料(C.I.ピグメントイエロー74)16.3質量%に変更したこと以外は、インク(I-C)の調製と同じ方法で、イエロー系のインク(I-Y)を調製した。インク(I-Y)は、40.0質量%の顔料分散液(L1)を含有していた(表4参照)。インク(I-Y)の調製に用いた顔料分散液(L1)は、16.3質量%のイエロー系顔料を含有していた。そのため、インク(I-Y)は、6.5質量%のイエロー系顔料を含有していた。
【0118】
<インク(I-M)の調製>
表5に示すシアン系顔料15.0質量%を、マゼンタ系顔料(キナクリドン・マゼンタ PR122)20.0質量%に変更したこと以外は、インク(I-C)の調製と同じ方法で、マゼンタ系のインク(I-M)を調製した。インク(I-M)は、40.0質量%の顔料分散液(L1)を含有していた(表4参照)。インク(I-M)の調製に用いた顔料分散液(L1)は、20.0質量%のマゼンタ系顔料を含有していた。そのため、インク(I-M)は、8.0質量%のマゼンタ系顔料を含有していた。
【0119】
<インク(I-B)の調製>
表5に示すシアン系顔料15.0質量%を、ブラック系顔料(カーボンブラック)20.0質量%に変更したこと以外は、インク(I-C)の調製と同じ方法で、ブラック系のインク(I-B)を調製した。インク(I-B)は、40.0質量%の顔料分散液(L1)を含有していた(表4参照)。インク(I-B)の調製に用いた顔料分散液(L1)は、20.0質量%のブラック系顔料を含有していた。そのため、インク(I-B)は、8.0質量%のブラック系顔料を含有していた。
【0120】
[評価方法及び評価結果]
<記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価>
まず、第1評価機を準備した。第1評価機として、4つの記録ヘッド(それぞれラインヘッド)を備えるインクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作評価機)を用いた。記録ヘッドは、各々、解像度360dpi(=180dpi×2列)、ノズル数512個(=256個×2列)、液滴量14pL、及び駆動周波数12.8kHzのピエゾ型ヘッド(コニカミノルタ株式会社製)であった。また、記録ヘッドは、その長手方向が紙の搬送方向に直交するように、間隔20mmで配列されていた。4つの記録ヘッドに、各々、インク(I-C)、(I-Y)、(I-M)、及び(I-B)を充填した。紙の搬送速度を、350mm/秒に設定した。
【0121】
次に、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で、第1評価機を用いて、画像(印字率100%)を、5000枚の紙(ゼロックス社製「P」)に連続して印刷した(吐出工程に相当)。5000枚印刷した後に、パージ動作と、洗浄液の供給と、ワイプ動作とを行った。詳しくは、まず、4つの記録ヘッドの各々がパージ処理を行った(パージ動作)。また、3gの洗浄液(より具体的には、洗浄液(b)~(m)の何れか)を浸み込ませたシート(旭化成株式会社製「ベンコット(登録商標)M-3II」の裁断品、裁断品の大きさは吐出面の大きさよりも大きかった)を準備した。そのシートを、4つの記録ヘッドの各々の吐出面に30秒間接触させた(洗浄液の供給)。次に、第1評価機が備えるブレードの先端を、4つの記録ヘッドの各々の吐出面にワイプさせた(ワイプ動作)。パージ動作と洗浄液の供給とワイプ動作とを含むこの一連の動作(以下、「メンテナンス動作」と記載する)を1回行った。
【0122】
メンテナンス動作後に、光学顕微鏡を用いて、50倍の倍率で、吐出面を観察した。そして、拭き残されたインクが吐出面に付着しているか否かを確認した。確認結果から、下記基準に従って、記録ヘッドの吐出面の洗浄性を評価した。評価結果を、表6及び表7に示す。評価A及びBの場合を、記録ヘッドの吐出面の洗浄性が良好であると評価した。評価Cの場合を、記録ヘッドの吐出面の洗浄性が不良(NG)であると評価した。
評価A:吐出面にインクの付着が確認されなかった。
評価B:吐出面にインクの付着がわずかに確認された。
評価C:吐出面にインクの付着が明確に確認された。
【0123】
<メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価>
まず、第2評価機を準備した。第2評価機として、4つの記録ヘッド(それぞれラインヘッド)を備えるインクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作評価機)を用いた。記録ヘッドは、各々、ノズル数2656個、液滴量10pL、及び駆動周波数20kHzのピエゾ型ヘッドであった。4つの記録ヘッドに、各々、インク(I-C)、(I-Y)、(I-M)、及び(I-B)を充填した。インクの吐出性能の評価は、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で行った。
【0124】
第2評価機を用いて、1枚の紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)に、ドット列を形成した。より具体的には、1枚の紙に対して、4つの記録ヘッドの全てのノズルから一滴のインクを吐出した。このようにドット列を形成した紙を、初期の評価紙とした。
【0125】
次に、第2評価機を用いて、画像(印字率100%)を、5000枚の紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)に連続して印刷した(吐出工程に相当)。5000枚印刷した後に、上記<記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価>で説明したメンテナンス動作を1回行った。
【0126】
メンテナンス動作を行った直後に、1枚の紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)に、ドット列を形成した。より具体的には、1枚の紙に対して、4つの記録ヘッドの全てのノズルから一滴のインクを吐出した。このようにドット列を形成した紙を、5000枚印刷後の評価紙とした。
【0127】
得られた初期の評価紙、及び5000枚印刷後の評価紙の各々を、画像解析装置(王子計測機器株式会社製「高速高精細画像処理解析システム Dot Analyzer DA-6000」)を用いて観察し、ドット列の乱れを確認した。より具体的には、評価紙上に形成されたインク(I-C)の2656個のドット、インク(I-Y)の2656個のドット、インク(I-M)の2656個のドット、及びインク(I-B)の2656個のドットの全てについて、評価紙の横方向への位置のズレ幅と、評価紙の縦方向への位置のズレ幅とを測定した。測定結果から、評価紙の横方向への位置のズレ幅の個数平均値(3σx、単位:μm)と、評価紙の縦方向への位置のズレ幅の個数平均値(3σy、単位:μm)とを算出した。そして、計算式「3σ=3√[(σx)2+(σy)2]」から、評価紙に形成されたドット列の位置のズレ幅3σ(単位:μm)を算出した。そして、計算式「Δ3σ=|(初期の評価紙の3σ)-(5000枚印刷後の評価紙の3σ)|」から、5000枚印刷前後における評価紙に形成されたドット列の位置のズレ幅の変化量Δ3σ(単位:μm)を算出した。
【0128】
算出した変化量Δ3σから、下記基準に従って、メンテナンス動作直後のインクの吐出性能を評価した。評価結果を、表6及び表7に示す。評価Aの場合を、メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価が良好であると評価した。評価Bの場合を、メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価が不良(NG)であると評価した。
評価A:変化量Δ3σが、3μm未満である。
評価B:変化量Δ3σが、3μm以上である。
【0129】
<メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能の評価>
メンテナンス動作を行った直後に1枚の紙にドット列を形成したことを、メンテナンス動作から3日経過後に1枚の紙にドット列を形成したことに変更した以外は、上記<メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価>と同じ方法で、メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能を評価した。評価Aの場合を、メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能の評価が良好であると評価した。評価Bの場合を、メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能の評価が不良(NG)であると評価した。
【0130】
<記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価>
上記<記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価>で使用した第1評価機を準備した。まず、第1評価機が備える記録ヘッドの吐出面に対して、イオン交換水に対する接触角θ1を測定した。次いで、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で、第1評価機を用いて、上記<記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価>で説明したメンテナンス動作を繰り返し行った。1000回のメンテナンス動作を行う毎に、吐出面に対して、イオン交換水に対する接触角θ2を測定した。接触角θ1及びθ2は、接触角測定装置(英弘精機株式会社製「OCA40」)を用いて測定した。計算式「接触角差=接触角θ1-接触角θ2」から、メンテナンス動作前後における接触角差を算出した。接触角差が10度以上となる場合、メンテナンス動作によって吐出面の撥水膜が削れて、吐出面の撥水性が低下したと判断した。少ない回数のメンテナンス動作で吐出面の接触角差が10度以上となる程、吐出面の撥水膜が削れ易く、吐出面の撥水性が低下し易いことを示す。そこで、メンテナンス動作の回数と接触角差とから、下記基準に従って、吐出面の撥水膜の削れの抑制を評価した。評価結果を、表6及び表7に示す。評価A及びBの場合を、吐出面の撥水膜の削れの抑制が良好であると評価した。評価C及びDの場合を、吐出面の撥水膜の削れの抑制が不良(NG)であると評価した。
評価A:21000回以上のメンテナンス動作後に、接触角差が10度以上となった。
評価B:11000回以上21000回未満のメンテナンス動作後に、接触角差が10度以上となった。
評価C:4000回以上11000回未満のメンテナンス動作後に、接触角差が10度以上となった。
評価D:4000回未満のメンテナンス動作後に、接触角差が10度以上となった。
【0131】
【0132】
【0133】
表6及び表7において、「洗浄性」は、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価を示す。「吐出性能(直後)」は、メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価を示す。「吐出性能(3日後)」は、メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能の評価を示す。「膜削れ」は、記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価を示す。「NG」は、該当する評価の結果が、不良であったことを示す。
【0134】
表1に示すように、洗浄液(b)~(g)の各々は、水と、ヤシ油脂肪酸界面活性剤と、有機潮解剤と、多価アルコールと、塩基性無機化合物とを含有していた。多価アルコールは、アルカンジオール(より具体的には、1,3-プロパンジオール)であった。ヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下であった。有機潮解剤の含有量は、0.10質量%以上30.00質量%以下であった。表6に示すように、洗浄液(b)~(g)を用いてメンテナンス動作を行った場合、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価結果、メンテナンス動作直後及び3日経過後のインクの吐出性能の評価結果、並びに記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価結果が、何れも良好であった。
【0135】
表2に示すように、洗浄液(h)は、界面活性剤を含有していなかった。表7に示すように、洗浄液(h)を用いてメンテナンス動作を行った場合、記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価結果が、不良であった。表2に示すように、洗浄液(i)は、多価アルコール(より具体的には、1,3-プロパンジオール)を含有していなかった。表7に示すように、洗浄液(i)を用いてメンテナンス動作を行った場合、メンテナンス動作から3日経過後のインクの吐出性能、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価結果が不良であった。表2に示すように、洗浄液(j)は、界面活性剤としてサーフィノール(登録商標)485を含有していたが、これはヤシ油脂肪酸界面活性剤ではなかった。また、洗浄液(j)は、塩基性無機化合物(より具体的には、水酸化ナトリウム)を含有していなかった。表7に示すように、洗浄液(j)を用いてメンテナンス動作を行った場合、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価結果、メンテナンス動作直後のインクの吐出性能の評価結果、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価結果が、不良であった。表2に示すように、洗浄液(k)は、有機潮解剤を含有していなかった。表7に示すように、洗浄液(k)を用いてメンテナンス動作を行った場合、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価結果、並びにメンテナンス動作直後及び3日経過後のインクの吐出性能の評価結果が、不良であった。表2に示すように、洗浄液(l)は、有機潮解剤の含有量が30.00質量%以下ではなかった。表7に示すように、洗浄液(l)を用いてメンテナンス動作を行った場合、メンテナンス動作直後及び3日経過後のインクの吐出性能の評価結果が、不良であった。表2に示すように、洗浄液(m)は、ヤシ油脂肪酸界面活性剤の含有量が3.00質量%以下ではなかった。表7に示すように、洗浄液(m)を用いてメンテナンス動作を行った場合、記録ヘッドの吐出面の洗浄性の評価結果、メンテナンス動作直後及び3日経過後のインクの吐出性能の評価結果、並びに記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制の評価結果が、何れも不良であった。
【0136】
以上のことから、本発明に包含される洗浄液(b)~(g)は、洗浄液(h)~(m)と比較して、記録ヘッドの吐出面の洗浄性、インクの吐出性能の低下の抑制、及び記録ヘッドの吐出面の撥水膜の削れの抑制に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明に係る洗浄液は、例えばインクジェットプリンターを洗浄するために用いることができる。
【符号の説明】
【0138】
4 記録ヘッド
47 吐出面
52 第2タンク
53 第1タンク
Nf パージインク
S 記録媒体