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特許7287059情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20230530BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20230530BHJP
【FI】
C09K5/04 C
G06N99/00 180
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019066571
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164647
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147164
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】實宝 秀幸
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】International Journal of Refrigeration,1995年,Vol.18, No.8,p.518-523
【文献】Journal of Loss Prevention in the Process Industries,Vol.13, No.3-5,2000年,p.385-392
【文献】ASHRAE Transactions,Vol.105,1999年,p.1143-1150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含む混合冷媒材料の燃焼性を評価する情報処理装置であって、
前記複数の成分各々について、分子構造に含まれる水素の原子数、ハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる第1の値に前記混合冷媒材料において該当する混合比率を乗算した第2の値を計算して、前記複数の成分各々について計算した前記第2の値の総和を計算する計算部と、
前記計算部によって計算した前記総和に基づき、前記混合冷媒材料を所定の燃焼性クラスに分類する分類部と
を備え
前記第1の値は、分子構造に含まれる単結合の数から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記第1の値は、前記ハロゲンの原子数に10以上の係数を乗算した値と前記水素の原子数との和から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記総和は、前記混合冷媒材料の成分iにおける前記水素の原子数をH 、前記ハロゲンの原子数をF 、前記二重結合の数をd 、前記係数をα、混合比率をy とすると、


によって定義されることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
コンピュータを用いて、複数の成分を含む混合冷媒材料の燃焼性を評価する情報処理方法であって、
前記複数の成分各々について、分子構造に含まれる水素の原子数、ハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる第1の値に前記混合冷媒材料において該当する混合比率を乗算した第2の値を計算して、前記複数の成分各々について計算した前記第2の値の総和を計算し、
計算した前記総和に基づき、前記混合冷媒材料を所定の燃焼性クラスに分類し、
前記第1の値は、分子構造に含まれる単結合の数から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記第1の値は、前記ハロゲンの原子数に10以上の係数を乗算した値と前記水素の原子数との和から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記総和は、前記混合冷媒材料の成分iにおける前記水素の原子数をH 、前記ハロゲンの原子数をF 、前記二重結合の数をd 、前記係数をα、混合比率をy とすると、


によって定義される
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
複数の成分を含む混合冷媒材料の燃焼性を評価する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記複数の成分各々について、分子構造に含まれる水素の原子数、ハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる第1の値に前記混合冷媒材料において該当する混合比率を乗算した第2の値を計算して、前記複数の成分各々について計算した前記第2の値の総和を計算する計算工程と、
前記計算工程にて計算した前記総和に基づき、前記混合冷媒材料を所定の燃焼性クラスに分類する分類工程と
を実行させ
前記第1の値は、分子構造に含まれる単結合の数から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記第1の値は、前記ハロゲンの原子数に10以上の係数を乗算した値と前記水素の原子数との和から前記二重結合の数を減じた値に反比例し、
前記総和は、前記混合冷媒材料の成分iにおける前記水素の原子数をH 、前記ハロゲンの原子数をF 、前記二重結合の数をd 、前記係数をα、混合比率をy とすると、


によって定義されることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコンや冷蔵庫に搭載される冷媒として、純冷媒材料を混合した混合冷媒材料が開発されている。純冷媒材料では、沸点や熱伝導率等の物性に由来する冷却機能と、地球温暖化係数を下げる等の環境性能との両立が困難であるが、混合冷媒材料ではそれらの両立を実現することができる。このため、混合冷媒材料を用いることで、環境負荷を抑制しつつエアコンや冷蔵庫等のエネルギー効率向上ができる。
【0003】
冷媒材料は性能向上とともに、製品の安全性のために高い難燃性が求められる。難燃性を含む混合冷媒材料の物性は、混合冷媒材料の混合成分・混合比率によって変化する。既存の純冷媒材料の種類は60種類以上であり、混合冷媒材料の混合成分・混合比率の組み合わせの数は膨大となる。よって、混合成分・混合比率の組み合わせを総当たりで実験することによって物性と難燃性の情報を得ることは、時間的制約から現実的でない。
【0004】
そこで、物性が未知である混合冷媒材料について混合成分・混合比率の組み合わせから燃焼性を予測し、難燃性と予測される混合冷媒材料から優先的に他の物性についても調査する方法が冷媒材料開発の時間を短縮する方法として考えられる。
【0005】
混合冷媒材料の燃焼性を予測する方法として、燃焼性が既知の混合冷媒材料の混合成分・混合比率の組み合わせから燃焼性の傾向を数値化し、燃焼性が未知の混合冷媒材料の混合成分・混合比率の組み合わせ及び燃焼性の傾向に基づいて燃焼性を予測する方法が考えられる。
【0006】
燃焼性の傾向の指標として、冷媒の国際規格ISO817が知られており、燃焼実験で求められる純冷媒材料の燃焼性クラスが大きく以下の3つに分類される。
・クラス1:不燃性(火炎が伝播しない)
・クラス2:弱燃性(燃焼限界 ≧ 3.5 vol% & 燃焼熱 < 19 MJ/kg)
・クラス3:強燃性(燃焼限界 < 3.5 vol% or 燃焼熱 ≧ 19 MJ/kg)
上記の燃焼性クラスに分類される純冷媒材料を成分として含む混合冷媒材料について、各成分の燃焼性クラスと混合比率とを乗算した値を評価指数として用いる方法が考えられる。
【0007】
また、混合物の可燃性は炭素-水素結合と比べた炭素-フッ素結合の割合に関連していることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】国際規格ISO817
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2013-519776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
純冷媒材料の燃焼性クラスに混合比率を乗算した燃焼性評価指数や、純冷媒材料の分子構造について一つのパラメータを考慮した燃焼性評価指数では、燃焼性評価指数の値が非線形となり燃焼性の区別をつけることができない。これは、上記のような燃焼性評価指数では純冷媒材料の混合による例外的な物性の変化を反映できないためである。
【0011】
燃焼性評価指数の値が非線形であるとき、例えば、燃焼性クラス1と燃焼性クラス2との区別がつけられない。混合冷媒材料の混合成分・混合比率の組み合わせから燃焼性を予測できず、燃焼性を検証する追加の実験が必要となる。
【0012】
そこで、本実施形態の第1の側面の目的は、燃焼性の予測精度を向上させる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態の第1の側面では、複数の成分を含む混合冷媒材料の燃焼性を評価する情報処理装置であって、複数の成分各々について、分子構造に含まれる水素の原子数、ハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる第1の値に混合冷媒材料において該当する混合比率を乗算した第2の値を計算して、複数の成分各々について計算した第2の値の総和を計算する計算部と、計算部によって計算した総和に基づき、混合冷媒材料を所定の燃焼性クラスに分類する分類部とを備えることを特徴とする情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
第1の側面によれば、燃焼性評価の精度を高めた情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態にかかる情報処理装置を示す図である。
図2図2は、情報処理装置の一例による処理手順を示すフローチャート図である。
図3図3は、情報処理装置の一例による処理結果を示す図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる情報処理装置による処理手順を示すフローチャート図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる情報処理装置による処理結果を示す図である。
図6図6は、図5の詳細を示す図である。
図7図7は、第2実施形態にかかる情報処理装置を示す図である。
図8図8は、第2実施形態にかかる情報処理装置による処理手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態にかかる情報処理装置について説明する。第1実施形態にかかる情報処理装置は混合冷媒材料の燃焼性評価装置である。
【0017】
図1は、第1実施形態にかかる情報処理装置を示す図である。図1に示すように、混合冷媒の燃焼性評価装置10は、入力パラメータ取得部11と、燃焼性評価指数計算部12と、記憶部100とを備える。入力パラメータ取得部11は記憶部100と接続され、燃焼性評価指数計算部12は入力パラメータ取得部11と接続され、記憶部100は燃焼性評価指数計算部12と接続される。
【0018】
入力パラメータ取得部11は、記憶部100に記憶されている入力パラメータ110を読み込む。入力パラメータ取得部11に読み込まれた入力パラメータ110は、後述する燃焼性評価指数Aの変数として燃焼性評価指数計算部12に送られる。燃焼性評価指数計算部12は、送られた入力パラメータ110に基づいて燃焼性評価指数Aを計算する。記憶部100は、燃焼性評価指数計算部12によって計算された燃焼性評価指数Aを出力パラメータ120として記憶する。
【0019】
記憶部100には、入力パラメータ110として、燃焼性を評価する混合冷媒材料の成分に関する情報である混合成分数n、混合成分iの化学式、混合成分iの混合比率yと、燃焼性評価指数Aの係数αとが記憶されている。
【0020】
入力パラメータ取得部11及び燃焼性評価指数計算部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部100は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクである。
【0021】
ここで、情報処理装置の一例にかかる燃焼性評価方法について説明する。情報処理装置の一例にかかる燃焼性評価方法では、燃焼試験で決まる混合成分iの燃焼性クラスと、混合成分iの混合比率yとを乗算した混合冷媒材料の成分ごとの値の総和を燃焼性評価指数Aとして計算する。燃焼性評価指数Aは、混合成分iの燃焼性クラスをC、混合比率をyとすると、下記の式(1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
情報処理装置の一例にかかる燃焼性評価方法は、記憶部100に入力パラメータ110として混合成分数n、混合成分iの燃焼性クラスが記憶された混合冷媒の燃焼性評価装置10によって実現される。
【0024】
図2は、情報処理装置の一例による処理手順を示すフローチャート図である。図2に示すように、まず、入力パラメータ取得部11が、iに1を代入し、Aに0を代入する(ステップS1)。iは、評価対象の混合冷媒材料に含まれる混合成分を示す。Aは、評価対象の混合冷媒材料についての評価対象指数の値を示す。次に、入力パラメータ取得部11が、混合成分iの燃焼性クラスCを取得する(ステップS5)。次に、入力パラメータ取得部11が、混合成分iの混合比率yを取得する(ステップS7)。次に、燃焼性評価指数計算部12が、ステップS5、S7にて取得された燃焼性クラスC及び混合比率yを用いて下記に示される式(2)の計算を実行する(ステップS9)。
【0025】
【数2】
【0026】
式(2)の右辺のAは、繰り返し処理により計算された燃焼性評価指数の値である。次に、iをインクリメントする(ステップS11)。次に、繰り返し処理の分岐条件として、i≦nであるか否かを判断する(ステップS13)。nは、評価対象の混合冷媒材料に含まれる混合成分の数を示す。i≦nである場合(ステップS13:YES)、ステップS5~ステップS11の処理を繰り返す。i≦nでない場合(ステップS13:NO)、繰り返し処理を終了し、燃焼性評価指数Aを出力する(ステップS15)。出力された燃焼性評価指数Aは、記憶部100に出力パラメータ120として記憶される。
【0027】
図3は、情報処理装置の一例による処理結果を示す図である。燃焼性が既知の既存の混合冷媒材料49個について、情報処理装置の一例による燃焼性評価方法を適用した結果を示す。縦軸は、既存の混合冷媒材料49個について、情報処理装置の一例による処理手順に従って計算された燃焼性評価指数Aの値を示す。横軸は、既存の混合冷媒材料49個について燃焼実験の結果に基づいて分類された燃焼性クラスを示す。既存の混合冷媒材料49個については、下記に示される表1に記載する。
【0028】
燃焼実験は、対象の材料を充填したフラスコに着火することで燃焼熱、燃焼限界空気体積比を測定する。測定された燃焼熱、燃焼限界空気体積比から、国際規格ISO817の基準に照らし合わせて冷媒材料の燃焼性を分類している。
【0029】
【表1】
【0030】
図3に示すように、情報処理装置の一例による処理手順に従って計算された燃焼性評価指数Aの値は、実験で分類された燃焼性クラスに対して非線形となる。燃焼性評価指数Aの値に対して閾値を設定することによって燃焼性クラス2と燃焼性クラス3との区別はできるが、燃焼性クラス1と燃焼性クラス2との区別はできないことが分かる。例えば、燃焼性クラス1と燃焼性クラス2との境界値をA=1.60と設定すると、実験で燃焼性クラス2と分類された混合冷媒材料について、燃焼性評価指数Aが1.60より小さい値となり燃焼性クラス1と予測される場合が11回発生する。
【0031】
クラス分け間違いが11回発生する要因は、同じ燃焼性クラス2に分類された純冷媒材料の間で、燃焼性に差があるためと考えられる。
【0032】
予測によって燃焼性クラス1の混合冷媒材料を求めたい場合にクラス分け間違いが10回以上発生すると、予測の検証をする追加の燃焼実験にかかる時間が膨大となる。前述の燃焼実験には、1個の混合冷媒材料につき約10分間を要する。よって、予測の検証をする追加の燃焼実験に余分な時間がかかることとなる。情報処理装置の一例による処理手順に従って計算された燃焼性評価指数Aを用いた燃焼性評価は、精度が低く燃焼性を予測する根拠として不十分である。
【0033】
次に、第1実施形態にかかる情報処理装置の燃焼性評価方法について説明する。第1実施形態にかかる燃焼性評価方法では、混合成分iの分子構造に含まれる、水素の原子数及びハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる値と、混合成分iの混合比率とを乗算した混合冷媒材料の成分ごとの値の総和を燃焼性評価指数Aとして計算する。燃焼性指数Aは、混合成分iの分子構造に含まれる、水素の原子数をH、ハロゲンの原子数をF、二重結合の数をdとすると、下記の式(3)で表される。
【0034】
【数3】
【0035】
式(3)の値が大きいほど混合冷媒材料の燃焼性は高い。燃焼性評価指数Aは上記式(3)に限らず、混合冷媒材料の複数の成分各々の分子構造に含まれる、水素の原子数及びハロゲンの原子数及び二重結合の数に基づいて求められる値に、複数の成分各々の混合比率を乗算した値の総和を用いることができる。
【0036】
特に、二重結合の数が多い材料ほど燃えやすいという知見に基づくと、求められる値は、分子構造に含まれる単結合の数から二重結合の数を減じた値に反比例することが、混合冷媒材料の燃焼性を評価する精度を向上する観点で望ましい。式(3)では、分母にdがあることで、分子構造に含まれる単結合の数、すなわち水素の原子数及びハロゲンの原子数から、二重結合を減じた値に反比例することになる。これは、単結合が増加するにつれて燃焼性が下がっていくことが、二重結合の数で緩和することを示す。単結合が増加して分子量が大きくなると、分子間力が強くなり反応性が下がる。分子構造に二重結合を含む場合、二重結合と酸素との反応性が高いため、単結合よりも燃焼性が高いといえる。
【0037】
また、水素原子に比べてハロゲン原子は、多く含まれているほど燃えにくいという知見に基づくと、ハロゲンの原子数に1より大きい係数を乗算した値と水素の原子数との和から二重結合の数を減じた値に反比例することが、混合冷媒材料の燃焼性を評価する精度を向上する観点で望ましい。式(3)では、分母にてハロゲンの原子数Fに1より大きい係数αが乗算されていることで、ハロゲンによる燃焼性低下の影響を反映させることができる。ハロゲンは電気陰性度が水素よりも強く、結合を切断しにくく燃焼に要するエネルギーが大きい。ハロゲンの原子数は、燃焼性への影響が水素よりも大きく、燃焼性評価指数Aにおいて比重を高く評価することが望ましい。式(3)の係数αは、予測精度改善のために10以上の値が望ましい。
【0038】
また、式(3)に含まれる二重結合の数dは、混合成分iの分子構造に含まれる炭素の原子数をCとすると、下記の式(4)で表される。
【0039】
【数4】
【0040】
図4は、第1実施形態にかかる情報処理装置による処理手順を示すフローチャート図である。第1実施形態にかかる燃焼性評価方法は、図2にて説明される燃焼性評価方法の一例に対して、共通の符号を用いる処理は同等だが、以下の点で異なる。図2にて説明されるフローチャートのステップS5~S11の繰り返し処理にて、取得する入力パラメータ110と、計算する燃焼性評価指数Aを示す式が異なる。
【0041】
図4に示すように、入力パラメータ取得部11が、混合成分iの分子構造に“C”、“H”、“F”、“Cl”以外の文字が含まれるか否か判断する(ステップS17)。分子構造は、例えば、記憶部100に入力パラメータ110として記憶される混合成分iの分子式について文字認識を行うことによって判断する。混合成分iの分子構造に“C”、“H”、“F”、“Cl”以外の文字が含まれる場合(ステップS17:YES)、処理を終了する。分子構造に“C”、“H”、“F”、“Cl”以外の文字を含む混合成分iについては、燃焼性評価の例外処理を行う。混合成分iの分子構造に“C”、“H”、“F”、“Cl”以外の文字が含まれない場合(ステップS17:NO)、入力パラメータ取得部11が、“C”、“H”、“F”、“Cl”それぞれの原子数c、h、f、clについて取得する(ステップS21)。原子数c、h、f、clは、例えば、分子式の下付き文字から取得できる。次に、入力パラメータ取得部11が、ステップS21にて取得された原子数c、h、f、clに基づいて、混合成分iの分子構造に含まれる炭素の原子数C、水素の原子数H、ハロゲンの原子数Fを決定する(ステップS23)。ここで、ステップS21にて取得された原子数c、hは混合成分iの分子構造に含まれる炭素の原子数C、水素の原子数Hにそれぞれ対応し、原子数fと原子数clの和が混合成分iの分子構造に含まれるハロゲンの原子数Fに対応する。次に、燃焼性評価指数計算部12が、ステップS23にて決定された混合成分iの分子構造に含まれる炭素の原子数C、水素の原子数H、ハロゲンの原子数Fを用いて、混合成分iの分子構造に含まれる二重結合の数dを計算する(ステップS25)。次に、燃焼性評価指数計算部12が、ステップS23、S25にて決定されたC、H、F及びdを用いて下記に示される式(5)の計算を実行する(ステップS27)。
【0042】
【数5】
【0043】
式(5)の右辺のAは、繰り返し処理により計算された燃焼性評価指数の値である。
【0044】
図5は、第1実施形態にかかる情報処理装置による処理結果を示す図である。図6は、図5の詳細を示す図である。燃焼性が既知の既存の混合冷媒材料49個について、第1実施形態にかかる情報処理装置による燃焼性評価方法を適用した結果を示す。縦軸は、既存の混合冷媒材料49個について第1実施形態にかかる情報処理装置による処理手順に従って計算された燃焼性評価指数Aの値を示す。横軸は、既存の混合冷媒材料49個について燃焼実験の結果に基づいて分類された燃焼性クラスを示す。既存の混合冷媒材料49個については、前述の表1に記載する。また、式(3)における係数αは100とした。
【0045】
例えば、燃焼性クラス1と燃焼性クラス2との境界値をA=0.006と設定すると、実験で燃焼性クラス2と分類された混合冷媒材料について、燃焼性評価指数Aが0.006より小さい値となり燃焼性クラス1と予測される場合が3回発生する。
【0046】
クラス分け間違い回数が少なくなるため、予測の検証をする追加の燃焼性実験に要する時間が低減される。第1実施形態にかかる情報処理装置による処理手順に従って計算された燃焼性評価指数Aを用いた燃焼性評価は、比較例に対して精度が高い。
【0047】
第2実施形態にかかる情報処理装置について説明する。第2実施形態にかかる情報処理装置は、燃焼性評価指数Aの算出によって未知の混合冷媒材料の燃焼性クラスを分類する装置である。図7は、第2実施形態にかかる情報処理装置を示す図である。第2実施形態にかかる情報処理装置は、図1にて説明される情報処理装置に対して、共通の符号を用いる構成は同等だが、以下の点で異なる。図7に示すように、混合冷媒の燃焼性クラス分類装置20は、図1にて説明される記憶部100に対し記憶するパラメータが異なる記憶部200を備える。また、図1にて説明される情報処理装置に加えて、燃焼性評価指数計算部12に接続され、記憶部200への入出力が可能な燃焼性クラス分類部23を更に備える。
【0048】
記憶部200には、入力パラメータ210として、図1にて説明される入力パラメータ110に加え、燃焼性評価指数Aの値に対して燃焼性クラス1と燃焼性クラス2とを分別するための閾値T12、燃焼性クラス2と燃焼性クラス3とを分別するための閾値T23が更に記憶されている。また、記憶部200には、出力パラメータ230として、燃焼性クラス分類部23によって分類された燃焼性クラス分類結果が記憶される。燃焼性クラス分類部23による分類については後述する。
【0049】
燃焼性クラス分類部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0050】
ここで、第2実施形態にかかる情報処理装置の燃焼性クラス分類方法について説明する。図8は、第2実施形態にかかる情報処理装置による処理手順を示すフローチャート図である。図8に示す処理手順は、図4にて説明される第1実施形態に処理手順の開始からステップS15までの燃焼性評価方法を実行した後に実行される。ステップS15にて出力された燃焼性評価指数Aが記憶部200に出力パラメータ120として記憶されたことを契機に処理を開始し、まず、燃焼性クラス分類部23が、燃焼性評価指数Aを記憶部200から取得する(ステップS30)。次に、燃焼性クラス分類部23が、ステップS30にて取得した燃焼性評価指数Aと記憶部200から取得した閾値T23とについて、T23<Aか判断する(ステップS32)。T23<Aである場合(ステップS32:YES)、混合冷媒材料を燃焼性クラス3と決定し、燃焼性クラス分類結果として記憶部200に記憶させ、処理を終了する(ステップS34)。T23<Aでない場合(ステップS32:NO)、燃焼性クラス分類部23が、S30にて取得した燃焼性評価指数Aと記憶部200から取得した閾値T12とについて、T12<Aか判断する(ステップS36)。T12<Aである場合(ステップS36:YES)、混合冷媒材料を燃焼性クラス2と決定し、燃焼性クラス分類結果として記憶部200に記憶させ、処理を終了する(ステップS38)。T12<Aでない場合(ステップS36:NO)、混合冷媒材料を燃焼性クラス1と決定し、燃焼性クラス分類結果として記憶部200に記憶させ、処理を終了する(ステップS40)。燃焼性クラス分類結果は、混合冷媒材料と決定された燃焼性クラスとを関連づけた情報であり、出力パラメータ230として記憶部200に記憶される。
【0051】
混合冷媒の燃焼性クラス分類装置20は、未知の混合冷媒材料について燃焼性評価指数Aを求め、高い精度で燃焼性クラスを分類することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 混合冷媒の燃焼性評価装置
11 入力パラメータ取得部
12 燃焼性評価指数計算部
100 記憶部
110 入力パラメータ
120 出力パラメータ
20 混合冷媒の燃焼性クラス分類装置
23 燃焼性クラス分類部
200 記憶部
210 入力パラメータ
230 出力パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8