(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】動力工具及び制御回路
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B25F5/00 B
B25F5/00 C
(21)【出願番号】P 2019101837
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】新戸 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥和
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-069613(JP,A)
【文献】特開昭57-024479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチ
であって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、
を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記
第3外部接続端子とグランドとの間に前記操作スイッチが設けられ
、
電源が投入された状態において前記操作スイッチがオンの場合は前記スイッチング素子はオン、電源が投入された状態において前記操作スイッチがオフの場合は前記スイッチング素子はオフであり、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源入力部から前記スイッチング素子を経由して前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される、動力工具。
【請求項2】
前記駆動源がモータであり、前記操作スイッチの操作量に応じて前記モータの回転数が変化する、請求項
1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記制御回路は制御部を備え、
前記スイッチング素子の前記
検出端子側の電圧である第1電圧、及び前記スイッチング素子の前記制御端子の電圧である第2電圧が、前記制御部に入力される、請求項1
又は2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記第1電圧は、前記スイッチング素子のオンオフによってレベルが異なり、
前記第2電圧は、前記操作スイッチのオンオフによってレベルが異なり、
前記制御部は、前記第1及び第2電圧がそれぞれ所定レベルであることを、前記駆動源を駆動する条件とする、請求項
3に記載の動力工具。
【請求項5】
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチ
であって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、
を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記操作スイッチは、前記
第1外部接続端子と前記
第2外部接続端子との間に、前記スイッチング素子と並列に設けられ
、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源入力部から、前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記操作スイッチを経由して、前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される、動力工具。
【請求項6】
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチ
であって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、
を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記操作スイッチは、前記駆動源の電流経路に設けられ、
前記操作スイッチの前記駆動源側と
、前記スイッチング素子の前記
検出端子側
に接続された前記第1外部接続端子と
、が互いに接続され
、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源から、前記操作スイッチ及び前記第1外部接続端子を経由して、前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される、動力工具。
【請求項7】
動力工具の駆動源を制御する制御回路であって、
電源入力部と、
電源投入時に前記電源入力部から自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、を備え、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備える、制御回路。
【請求項8】
単一の基板に設けられている、請求項
7に記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガスイッチ等の操作スイッチが駆動を指示する状態で電源が投入されたときにモータ等の駆動源の駆動を防止する機能(以下「電源投入時誤動作防止機能」とも表記)を有する動力工具、及び動力工具の駆動源を制御する制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、電源投入時誤動作防止機能を実現する回路の一例を開示する。この回路は、モータの電流経路に操作スイッチを備えることが動作の前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの電流経路に操作スイッチを備えていない動力工具も存在する。そのような動力工具に電源投入時誤動作防止機能を搭載する場合、特許文献1の回路構成をそのまま適用することはできない。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電源投入時誤動作防止機能を実現する回路の汎用性を高めた動力工具及び制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、動力工具である。この動力工具は、
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチであって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記第3外部接続端子とグランドとの間に前記操作スイッチが設けられ、
電源が投入された状態において前記操作スイッチがオンの場合は前記スイッチング素子はオン、電源が投入された状態において前記操作スイッチがオフの場合は前記スイッチング素子はオフであり、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源入力部から前記スイッチング素子を経由して前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される。
【0009】
前記駆動源がモータであり、前記操作スイッチの操作量に応じて前記モータの回転数が変化してもよい。
【0010】
前記制御回路は制御部を備え、
前記スイッチング素子の前記検出端子側の電圧である第1電圧、及び前記スイッチング素子の前記制御端子の電圧である第2電圧が、前記制御部に入力されてもよい。
【0011】
前記第1電圧は、前記スイッチング素子のオンオフによってレベルが異なり、
前記第2電圧は、前記操作スイッチのオンオフによってレベルが異なり、
前記制御部は、前記第1及び第2電圧がそれぞれ所定レベルであることを、前記駆動源を駆動する条件としてもよい。
【0012】
本発明の別の態様は、動力工具である。この動力工具は、
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチであって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記操作スイッチは、前記第1外部接続端子と前記第2外部接続端子との間に、前記スイッチング素子と並列に設けられ、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源入力部から、前記第1外部接続端子、前記第2外部接続端子、及び前記操作スイッチを経由して、前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される。
【0013】
本発明の別の態様は、動力工具である。この動力工具は、
駆動源と、
前記駆動源を制御する制御回路と、
前記駆動源の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチであって、オンのときに前記駆動源の駆動を指示し、オフのときに前記駆動源の停止を指示する操作スイッチと、を備え、
前記制御回路は、
電源入力部と、
電源投入時に自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備え、
前記操作スイッチは、前記駆動源の電流経路に設けられ、
前記操作スイッチの前記駆動源側と、前記スイッチング素子の前記検出端子側に接続された前記第1外部接続端子と、が互いに接続され、
前記操作スイッチがオンの状態で電源が投入されると、前記電源から、前記操作スイッチ及び前記第1外部接続端子を経由して、前記検出端子に前記所定値以上の電圧が印加される。
【0015】
本発明の別の態様は、動力工具の駆動源を制御する制御回路であって、
電源入力部と、
電源投入時に前記電源入力部から自身の検出端子に所定値以上の電圧が印加された場合に前記駆動源の駆動を防止する防止回路と、
前記電源入力部と前記検出端子との間に設けられたスイッチング素子と、を備え、
前記スイッチング素子の一端に接続された第1外部接続端子と、
前記スイッチング素子の他端に接続された第2外部接続端子と、
前記スイッチング素子の制御端子に接続された第3外部接続端子と、を備える。
【0016】
前記制御回路は、単一の基板に設けられてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源投入時誤動作防止機能を実現する回路の汎用性を高めた動力工具及び制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る動力工具1の側断面図。
【
図2】トリガスイッチ7がモータ6の電流経路に設けられる場合の動力工具1の概略回路図。
【
図3】トリガスイッチ7がモータ6の電流経路以外に設けられて制御部21に接続される場合の動力工具1の概略回路図。
【
図4】トリガスイッチ7が無段変速トリガスイッチである場合の動力工具1の概略回路図。
【
図6】
図4の回路の電源投入時誤動作防止機能が作動する場合のタイムチャート。
【
図7】
図4の回路の動作中にスイッチング素子30が故障した場合のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本実施の形態は、動力工具1及びその制御回路30に関する。動力工具1は、電池パック9の電力で動作するコードレスタイプのジグソーである。動力工具1の機械的な構成及び動作は周知なので、以下では簡単な説明に留める。
図1に示すように、動力工具1は、ベース2と、ベース2の上方に設けられたハウジング3と、を有する。ハウジング3の後端部に、電池パック9が着脱可能に接続される。ハウジング3内に、駆動源としてのモータ6、減速機構5、往復動変換機構8、及びメイン基板(制御基板)20が設けられる。
【0022】
モータ6は、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータ6の回転は、減速機構5によって減速され、往復動変換機構8によってプランジャ10の上下の往復動に変換される。プランジャ10の下端部に、プランジャ10と共に上下に往復動する先端工具としてのブレード11が取り付けられる。ブレード11は、ベース2の下面から下方に突出する。ハウジング3のハンドル部3aに、トリガスイッチ7が設けられる。トリガスイッチ7は、作業者がモータ6の駆動、停止を切替え可能な操作スイッチの一例である。
【0023】
トリガスイッチ7は、
図2に示すようにモータ6の電流経路に設けられる場合、
図3に示すようにモータ6の電流経路以外に設けられて制御部21に接続される場合、及び
図4に示すように無段変速トリガスイッチであって一端がグランドに接続される場合がある。無段変速トリガスイッチは、操作量に応じてモータの回転数を変化させることの可能であるが、操作量に応じた信号を送信する関係上、一端をグランドに接続する必要があり、自身を介して制御部21に信号を送ることができない。本実施の形態の制御回路30は、トリガスイッチ7が
図2から
図4のいずれの構成、配置であっても共通に電源投入時誤動作防止機能を実現するものである。制御回路30は、単一のメイン基板20に設けられる。
【0024】
図2~
図4に示すように、制御回路30は、制御部21、電源回路(電源IC)28、電源投入時誤動作防止回路29、スイッチング素子40、及び外部接続端子31~37を備える。外部接続端子37は、電源入力部であって、電池パック9の正極端子に接続される。外部接続端子37を介して電池パック9の出力電圧が電源回路28及び電源投入時誤動作防止回路29に電源電圧として供給される。
【0025】
外部接続端子37と電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aとの間に、PチャネルのバイポーラトランジスタやFET(Field effect transistor)等のスイッチング素子40が設けられる。スイッチング素子40は、ここでは自身の制御端子(ゲート)がGNDと通電したときにオン、開放されたときにオフとなる素子である。スイッチング素子40は、
図4の場合、すなわちトリガスイッチ7が無段変速トリガスイッチ等の、一端がグランドに接続されるスイッチである場合にのみ利用される。
【0026】
外部接続端子(第1外部接続端子)31は、スイッチング素子40の一端、電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29a及び制御部21の第1電圧入力端子に接続される。外部接続端子(第2外部接続端子)32は、スイッチング素子40の他端及び外部接続端子37に接続される。外部接続端子(第3外部接続端子)33は、スイッチング素子40の制御端子及び制御部21の第2電圧入力端子に接続される。外部接続端子34は、電源回路28の出力電圧(制御系電源電圧)Vccが供給される電源ライン(以下、単に「電源ライン」とも表記)に接続される。外部接続端子35は、制御部21の速度調節信号入力端子に接続される。外部接続端子36は、グランドに接続される。
【0027】
図2の場合、トリガスイッチ7の一端は、電池パック9の正極端子に接続される。トリガスイッチ7の他端は、インバータ回路47を介してモータ6に接続され、かつ外部接続端子31に接続される。
図3の場合、トリガスイッチ7の一端は外部接続端子31に接続され、他端は外部接続端子32に接続される。すなわち、トリガスイッチ7は、外部接続端子31、32の間に、スイッチング素子40と並列に設けられる。
【0028】
図4の場合、トリガスイッチ7は、外部接続端子33、36の間に設けられる。トリガスイッチ7は、外部接続端子34、36間に設けられたボリューム(可変抵抗器)を含み、作業者によるトリガスイッチ7の操作量(引き量)に応じた電圧(速度調節信号)を外部接続端子35に出力する。トリガスイッチ7がオンになると、スイッチング素子40の制御端子の電圧がローレベルとなってスイッチング素子40がターンオンし、電池パック9の出力電圧Vbtがスイッチング素子40を介して電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aに印加される。
【0029】
図2及び
図3の場合、トリガスイッチ7がオンになると、トリガスイッチ7を介して電池パック9の出力電圧Vbtが電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aに印加される。これに対し
図4の場合、トリガスイッチ7の一端をグランドに接続する必要があるため、トリガスイッチ7を介して電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aに電圧を印加することができない。本実施の形態の制御回路30は、スイッチング素子40を有することで、
図4のようにトリガスイッチ7の一端がグランドに接続される場合でも、トリガスイッチ7がオンになったとき、スイッチング素子40を介して電池パック9の出力電圧Vbtを電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aに印加することができる。
【0030】
外部接続端子31の電圧は、第1スイッチ検出電圧Vaとして制御部21の第1電圧入力端子に入力される。外部接続端子33の電圧は、第2スイッチ検出電圧Vbとして制御部21の第2電圧入力端子に入力される。外部接続端子35の電圧は、速度調節信号として制御部21の速度調節信号入力端子に入力される。外部接続端子33~36は、スイッチング素子40と同様に、
図4の場合、すなわちトリガスイッチ7が無段変速トリガスイッチ等の、一端がグランドに接続されるスイッチである場合にのみ利用される。このため、制御部21は、
図4の場合以外では、外部接続端子33、35の電圧を無視するように事前に設定しておく。
【0031】
電源回路28は、電池パック9の出力電圧Vbtを降圧して制御系電源電圧Vccとし、制御部21等に動作電圧として供給する。電源投入時誤動作防止回路29は、トリガスイッチ7がオンの状態で電池パック9が接続された場合(電源が投入された場合)、すなわち電源投入時に検出端子29aに所定値以上の電圧(ここでは電源電圧Vbtと略等しい電圧)が印加された場合に、電源回路28が起動する前に電源回路28に動作禁止信号を出力し、電源回路28の起動を阻止することで、モータ6の駆動を防止、すなわち動力工具1の駆動を防止する。なお、モータ6の駆動の防止の方法として、電源回路28の起動阻止によらず、モータ6の電流経路に設けたスイッチング素子のターンオンを阻止してもよいし、制御部21に駆動禁止信号を送出してモータ6の駆動制御を禁止してもよい。電源回路28は、電源が投入された後にトリガスイッチ7が操作されるという、正しい順序のときにだけ、制御系電源電圧Vccを生成するように構成されている。
【0032】
インバータ回路47は、三相ブリッジ接続されたIGBTやFET等の6つのスイッチング素子を含む。各スイッチング素子は、制御部21の制御、例えばPWM制御に従ってスイッチング動作し、モータ6のステータコイルに駆動電流を供給する。制御部21は、MCU(Micro Controller Unit)等の演算部を含む。制御部21は、トリガスイッチ7のオンを検出すると、インバータ回路47を構成するスイッチング素子の制御により、モータ6の駆動を制御する。
図4の場合、制御部21は、トリガスイッチ7の操作量に応じた速度調節信号により、モータ6の回転速度(回転数)を制御する(変化させる)。
【0033】
図2及び
図3の場合、制御部21は、第1スイッチ検出電圧Vaにより、トリガスイッチ7のオンオフを検出する。第1スイッチ検出電圧Vaは、ハイレベルがトリガスイッチ7のオン、ローレベルがトリガスイッチ7のオフを示す。
図4の場合、制御部21は、第1スイッチ検出電圧Vaに替えて又は加えて、第2スイッチ検出電圧Vbにより、トリガスイッチ7のオンオフを検出する。第2スイッチ検出電圧Vbは、ローレベルがトリガスイッチ7のオン、ハイレベルがトリガスイッチ7のオフを示す。
【0034】
図4において、制御部21が第2スイッチ検出電圧Vbをトリガスイッチ7のオンオフ検出に利用するのは、スイッチング素子40の短絡故障(オン故障)対策である。スイッチング素子40が短絡故障すると、第1スイッチ検出電圧Vaは、トリガスイッチ7のオンオフによらず、トリガスイッチ7のオンを示すハイレベルとなる。しかし、第2スイッチ検出電圧Vbは、スイッチング素子40が短絡故障しても、トリガスイッチ7がオフであれば、トリガスイッチ7のオフを示すハイレベルとなる。したがって、
図4の場合、制御部21は、第2スイッチ検出電圧Vbにより、スイッチング素子40の故障有無によらず、トリガスイッチ7のオンオフを確実に検出できる。また、制御部21は、第2スイッチ検出電圧Vbがトリガスイッチ7のオフを示すハイレベルであるにも関わらず第1スイッチ検出電圧Vaがトリガスイッチ7のオンを示すハイレベルである場合、スイッチング素子40の故障と判断し、作業者にアラームや発光(LEDの点灯や点滅)により報知することができる。
【0035】
図5は、
図4の回路の通常動作のタイムチャートである。時刻t1において、トリガスイッチ7がオフの状態で動力工具1に電池パック9が接続されると(電源が投入されると)、電源入力部である外部接続端子37の電圧(電源電圧Vbt)が立ち上がり、また第2スイッチ検出電圧Vbがハイレベルとなる。時刻t2においてトリガスイッチ7がオンになると、第1スイッチ検出電圧Vaがハイレベルとなり、第2スイッチ検出電圧Vbがローレベルとなる。時刻t3において電源回路28の起動が完了し、制御系電源Vccが立ち上がる。時刻t4において制御部21の起動が完了し、制御部21はモータ6の駆動を開始する。時刻t6においてトリガスイッチ7がオフになると、第1スイッチ検出電圧Vaがローレベルとなり、第2スイッチ検出電圧Vbがハイレベルとなる。時刻t7において制御部21は、モータ6を停止する。
図5から第2スイッチ検出電圧Vbを除けば、
図2及び
図3の回路の動作のタイムチャートとなる。
【0036】
図6は、
図4の回路の電源投入時誤動作防止機能が作動する場合のタイムチャートである。動力工具1に電池パック9が接続される前の時刻t11において、トリガスイッチ7がオンされる。時刻t12において動力工具1に電池パック9が接続されると、電源電圧Vbtが立ち上がり、第1スイッチ検出電圧Vaがハイレベルとなる。時刻t13において電源投入時誤動作防止回路29が作動し、電源回路28に動作禁止信号を送信する。時刻t14においてトリガスイッチ7がオフになると、第1スイッチ検出電圧Vaがローレベルとなり、第2スイッチ検出電圧Vbがハイレベルとなる。時刻t15において、誤動作防止回路29は、電源回路28への動作禁止信号の送信を停止する。時刻t16においてトリガスイッチ7がオンになると、第1スイッチ検出電圧Vaがハイレベルとなり、第2スイッチ検出電圧Vbがローレベルとなる。時刻t17において電源回路28の起動が完了し、制御系電源Vccが立ち上がる。時刻t18において制御部21の起動が完了し、制御部21はモータ6の駆動を開始する。
図6から第2スイッチ検出電圧Vbを除けば、
図2及び
図3の回路の動作のタイムチャートとなる。
【0037】
図7は、
図4の回路の動作中にスイッチング素子30が故障した場合のタイムチャートである。
図7において、時刻t4までの動作は
図5と同様である。時刻t5においてスイッチング素子40が短絡故障する。時刻t6においてトリガスイッチ7がオフになると、第1スイッチ検出電圧Vaはスイッチング素子40がオンのためにハイレベルに留まり、第2スイッチ検出電圧Vbはハイレベルとなる。時刻t7において制御部21は、モータ6を停止する。
【0038】
図8は、
図4の回路の動作を示すフローチャートである。動力工具1に電池パック9が接続されたとき(S1のYes)、トリガスイッチ7がオフでない場合(S2のNo)、電源投入時誤動作防止回路29が起動する(S3)。トリガスイッチ7がオフの場合(S2のYes)、電源投入時誤動作防止回路29が起動していれば(S4のYes)、電源投入時誤動作防止回路29が停止する(S5)。モータ6は停止している(S7)。第1スイッチ検出電圧Vaが電源電圧Vbtと略等しい場合(S8のYes)、制御部21が起動していなければ(S8aのNo)、制御部21が起動する(S8b)。制御部21は、第2スイッチ検出電圧Vbが正常、すなわちローレベル(グランドレベル)であり(S9のYes)、かつスイッチング素子40の故障を検出してなければ(S10のNo)、モータ6を駆動する(S11)。制御部21は、ステップS9において第2スイッチ検出電圧Vbが異常、すなわちローレベルでない場合(S9のNo)、その状態が一定時間以上継続していると(S12のYes)、スイッチング素子40の故障であると検出し(S13)、モータ6を停止する(S7)。制御部21は、ステップS10においてスイッチング素子40が故障している場合(S10のYes)、モータ6を停止する(S7)。制御部21は、ステップS8において第1スイッチ検出電圧Vaがローレベルの場合、(S8のNo)、モータ6を停止する(S7)。
【0039】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0040】
(1) 制御回路30は、スイッチング素子40を有することで、
図4のようにトリガスイッチ7の一端がグランドに接続される場合でも、トリガスイッチ7がオンになったとき、スイッチング素子40を介して、電池パック9の出力電圧Vbtを電源投入時誤動作防止回路29の検出端子29aに印加できる。このため、制御回路30は、トリガスイッチ7が
図2から
図4のいずれの構成、配置であっても共通に電源投入時誤動作防止機能を実現できる。したがって、電源投入時誤動作防止機能を実現する回路をトリガスイッチ7の構成、配置に応じて設計する必要がなく、設計の手間を削減しコストを抑制できる。
【0041】
(2) 制御部21は、トリガスイッチ7の他端が接続された外部接続端子33の電圧(第2スイッチ検出電圧Vb)がローレベルであることをモータ6の駆動の条件とするため、スイッチング素子40が短絡故障しても、トリガスイッチ7がオフであればモータ6を駆動しない。したがって、スイッチング素子40の短絡故障時に、トリガスイッチ7がオフにも関わらずモータ6を駆動する誤動作が抑制される。
【0042】
(3) 制御部21は、第2スイッチ検出電圧Vbがトリガスイッチ7のオフを示すハイレベルであるにも関わらず第1スイッチ検出電圧Vaがトリガスイッチ7のオンを示すハイレベルである場合、スイッチング素子40の故障と判断し、作業者にアラームや発光により報知することができる。
【0043】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0044】
本発明の動力工具は、実施の形態で例示したジグソーに限定されず、電源投入時誤動作防止機能を有する他の種類の動力工具であってもよい。モータは、ブラシ付きモータであってもよい。本発明の動力工具は、電池パックの電力で動作するコードレスタイプに限定されず、外部電源からの電力で動作するコード付きタイプであってもよい。この場合、交流電圧が入力される整流、平滑回路の出力電圧が電源電圧Vbtに対応する。また、電源コードを外部電源に接続することが、電源投入に対応する。
【符号の説明】
【0045】
1 動力工具、2 ベース、3 ハウジング、3a ハンドル部、5 減速機構、6 モータ、7 トリガスイッチ(操作部)、9 電池パック、10 プランジャ、11 ブレード(先端工具)、20 メイン基板(制御基板)、21 演算部(制御部)、28 電源回路(電源IC)、29 電源投入時誤動作防止回路、29a 検出端子、30 制御回路、31~36 第6外部接続端子、40 スイッチング素子、47 インバータ回路