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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】遊具用システム
(51)【国際特許分類】
   A63G 1/00 20060101AFI20230530BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A63G1/00
G02F1/13 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019131013
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021013668
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 利晃
(72)【発明者】
【氏名】中山 健太郎
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174424(JP,A)
【文献】特開平05-161762(JP,A)
【文献】実開昭57-003780(JP,U)
【文献】特開2006-235373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G1/00-33/00
G02F1/13
1/137-1/141
G03B21/132
21/56-21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の面積の領域内を乗物が動く遊具の外側を囲う外周壁であって、調光スクリーンとプロジェクタを含む投影切替ユニットを複数備える前記外周壁と、
前記乗物の位置である第一位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記乗物とは前記投影切替ユニットを挟んで反対側にいる見学者の位置である第二位置を検出する第二の位置検出手段と、
前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段からの位置情報を基に前記調光スクリーンの透過率を制御する制御部と、を備え、
前記投影切替ユニットを基準とする位置検出領域が予め設定されており、
前記制御部は、前記位置検出領域内に前記第一位置および前記第二位置の両方が含まれている間、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程を備える
ことを特徴とする遊具用システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置検出領域外に前記第一位置および前記第二位置の少なくとも一方が含まれている間、前記調光スクリーンを不透明状態に制御する工程を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具用システム。
【請求項3】
前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程の前に、前記調光スクリーンと対応する前記プロジェクタの投影を停止する工程を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の遊具用システム。
【請求項4】
前記投影切替ユニットにマスタセンサをさらに備え、
前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段がセンサであり、
前記マスタセンサにより前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段の位置情報を取得する工程を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遊具用システム。
【請求項5】
前記第一の位置検出手段では前記乗物の駆動情報から前記乗物の位置を算出し、
前記第二の位置検出手段はGPS機能を用いる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遊具用システム。
【請求項6】
前記第二の位置検出手段は前記第二位置の情報を発信しないことを選択可能にする機構をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の遊具用システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の遊具用システムを備えた遊具であって、
前記位置検出領域を前記見学者が把握できるマーカーを備える
ことを特徴とする遊具。
【請求項8】
前記乗物を備えた回転機構が回転することにより前記乗物が動くことを特徴とする請求項7に記載の遊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊具用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遊具には、メリーゴーラウンドや回転ブランコ、コーヒーカップ、ゴーカートなど、人を乗せた乗物が一定の領域内を機械的に動く遊具がある。たとえば、メリーゴーラウンドは、大きな円盤の上に木馬や馬車などの乗物が配置され、円盤の回転にあわせて、その乗物が回る遊具である。特許文献1には、その基本的な構造が開示されている。このような遊具の多くは、その装飾や、運転時の音楽等に統一感や物語性を持たせ、独自の世界観を演出しようと設計されている。乗物に乗る搭乗者は、遊具の世界観を楽しみ、その搭乗者の関係者は見学者として、搭乗者の様子を見たり、撮影したりする。搭乗者と見学者は、例えば子とその親である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-249084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のメリーゴーラウンドなどの遊具では、遊具の世界観と周囲の景色とが合わないことや、見学者が気になることから、乗物に乗る搭乗者が遊具の世界観に没入することができない。遊具の世界観に合った装飾を施した壁で遊具の外周を囲うようにすると、周囲の景色の影響を排除することができる。しかし、見学者も壁の内側に入る場合は、搭乗者は他の搭乗者を見る見学者が気になり遊具の世界観に没入できない。一方で、壁の内側に見学者を入れない場合は、搭乗者と関係のある見学者であっても搭乗者の様子を見たり撮影したりすることができない。
【0005】
本発明は、搭乗者が遊具の世界観に没入でき、搭乗者と関係のある見学者がその搭乗者の様子を見ることができる遊具用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一定の面積の領域内を乗物が動く遊具の外側を囲う外周壁であって、調光スクリーンとプロジェクタを含む投影切替ユニットを複数備える前記外周壁と、
前記乗物の位置である第一位置を検出する第一の位置検出手段と、前記乗物とは前記投影切替ユニットを挟んで反対側にいる見学者の位置である第二位置を検出する第二の位置検出手段と、前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段からの位置情報を基に前記調光スクリーンの透過率を制御する制御部と、を備え、前記投影切替ユニットを基準とする位置検出領域が予め設定されており、前記制御部は、前記位置検出領域内に前記第一位置および前記第二位置の両方が含まれている間、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程を備えることを特徴とする遊具用システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムであって、前記制御部は、前記位置検出領域外に前記第一位置および前記第二位置の少なくとも一方が含まれている間、前記調光スクリーンを不透明状態に制御する工程を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムであって、前記調光スクリーンを透明状態に制御する工程の前に、前記調光スクリーンと対応する前記プロジェクタの投影を停止する工程を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムであって、前記投影切替ユニットにマスタセンサをさらに備え、前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段がセンサであり、前記マスタセンサにより前記第一の位置検出手段および前記第二の位置検出手段の位置情報を取得する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムであって、前記第一の位置検出手段では前記乗物の駆動情報から前記乗物の位置を算出し、前記第二の位置検出手段はGPS機能を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムであって、前記第二の位置検出手段は前記第二の位置の情報を発信しないことを選択可能にする機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記の遊具用システムを備えた遊具であって、前記位置検出領域を前記見学者が把握できるマーカーを備えることを特徴とする遊具である。
【0013】
本発明の一態様は、上記の遊具であって、前記乗物を備えた回転機構が回転することにより前記乗物が動くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搭乗者が遊具の世界観に没入でき、搭乗者と関係のある見学者がその搭乗者の様子を見ることができる遊具用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の遊具用システムの外周壁の展開図である。
図2】実施形態の遊具用システムの動作を説明するための図である。
図3】実施形態の遊具用システムの概略構成を示す図である。
図4】実施形態の遊具用システムのシステムコントローラにおいて実行される処理を示す図である。
図5】実施形態の遊具用システムの各マスタセンサにおいて実行される処理を示す図である。
図6】実施形態の遊具用システムの調光部材30の構造を説明するための図である。
図7】第2実施形態の遊具用システムの外周壁の展開図である。
図8】第2実施形態の遊具用システムの動作を説明するための図である。
図9】第2実施形態の遊具用システムの概略構成を示す図である。
図10】第2実施形態の遊具用システムのシステムコントローラにおいて実行される処理を示す図である。
図11】実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一実施形態>
以下、本発明の遊具用システムの第一実施形態について図1図2を参照して説明する。図1は、遊具用システム1の外周壁10の展開図である。また、図2は、遊具用システム1の動作を説明するための図である。外周壁10には、複数の投影切替ユニット11が備わっている。各投影切替ユニット11は、調光スクリーン21とプロジェクタ22とマスタセンサ5とを備える。外周壁10の調光スクリーン21は、遊具2を中心として遊具2の周りを囲うように配置される。また、調光スクリーン21に投影できる位置にプロジェクタ22が設置される。すなわち、プロジェクタ22の設置位置は調光スクリーン21よりも内側(遊具2と同じ側)に設置してもよいし、調光スクリーン21よりも外側(遊具2とは反対側)に設置してもよい。マスタセンサ5は調光スクリーン21に取り付けられるか、調光スクリーン21の近傍に設置される。
【0017】
調光スクリーン21は、印加される電圧に応じて透過率が変化する部材からなる。プロジェクタ22は、公知の投影装置である。調光スクリーン21が不透明な状態のときに、調光スクリーン21の一方の面から映像を投射することで、調光スクリーン21の同一面もしくは他方の面に映像を映す。
【0018】
調光スクリーン21は、図6(a)に示すように、調光部材30と、制御部36と、支持体40と、を備える。調光部材30は、図6(b)に示すように、一対の積層体32の間に液晶層31が挟持された構造を有する。
【0019】
液晶層31は、三次元の網目状の高分子ネットワークと、その空隙に保持された液晶材料とを備える。高分子ネットワークは、高分子材料の硬化物から形成される。液晶材料は、誘電率異方性が正の液晶分子を含む。液晶分子の長手方向の誘電率は、液晶分子の長手方向に直交する方向の誘電率よりも大きい。液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。
【0020】
各積層体32は、基材33、電極層34および配向膜35がこの順に積層されたものである。各積層体32は、それぞれの配向膜35を液晶層31と対向させた状態で、液晶層31を挟持する。
【0021】
配向膜35は、垂直配向膜である。液晶層31中の液晶分子を、液晶分子の長手方向が配向膜35の法線方向に沿うように配向させる。このとき、調光スクリーン21に入射した光が透過し、調光スクリーン21は透明状態である。そのため、調光スクリーン21は、電圧の印加がないときに透明状態を呈する。他方、調光スクリーン21に電圧を印加すると、液晶層31中の液晶分子の長手方向が不規則になり、入射した光は液晶分子で散乱されるため調光スクリーン21は不透明状態になる。
【0022】
配向膜35を構成する材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、または、これらの混合物により構成されている。
【0023】
電極層34は、導電性を有し、透明である。電極層34の材料には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含む高分子が用いられる。
【0024】
基材33は、透明であり、例えば、ガラス基板や樹脂製フィルムである。樹脂製フィルムの材料には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド等、種々の高分子材料を用いることができる。
【0025】
調光部材30は、その一部に、一方の積層体32、液晶層31、および他方の積層体32の配向膜35が除かれ、後者の積層体32の電極層34が露出した給電領域60を有する。給電領域60では、露出した電極層34に、導電性部材61を介して電気配線62が設けられる。導電性部材61には、銀ペーストやカーボンテープ、銅テープなど、導電性の高い種々の部材を用いることができる。電気配線62は、制御部36に接続されている。調光部材30は制御部36により駆動が制御される。
【0026】
調光スクリーン21は、調光部材30が支持体40により支持された構造を有する。支持体40は例えば透明な板状の部材であり、調光部材30と貼り合せて用いられる。支持体40は枠状の部材であって、その枠内に調光部材30を張るように用いられてもよい。また支持体40は垂直に立てる棒状の部材であって、調光部材30を吊るすように用いられてもよい。
【0027】
マスタセンサ5は、調光部材30の画像が投影される領域を搭乗者から見て遮らないように、調光スクリーン21に設けられる。例えば支持体40に設けられる。マスタセンサ5は、マスタセンサ5がセンシングする位置検出領域において、搭乗者センサ3と見学者センサ4とを検知する。
【0028】
図2において、搭乗者は、遊具2の乗物50に乗って移動する。搭乗者は搭乗者センサ3を保持する。搭乗者と関係のある見学者は、外周壁10の外側におり、搭乗者センサ3と対応する見学者センサ4を保持する。あるいは搭乗者が搭乗者センサ3を保持するのではなく、乗物50に搭乗者センサ3を備える構成を採用してもよい。搭乗者センサ3を乗物50に搭載することで、搭乗者は搭乗者センサ3を保持する必要がなくなる。例えば搭乗者が搭乗者センサ3を自身で所持することが難しい幼児や児童などの低年齢者であっても、搭乗者センサ3を持たせることなく本発明の効果を奏することができるため好ましい。
【0029】
搭乗者センサ3と見学者センサ4は対応関係にある。対応をとる方法は公知の方法でよい。例えば搭乗者が乗物50に乗る際に搭乗者センサ3aを持ち、搭乗者センサ3aと対応する見学者センサ4aを見学者に渡してもよい。また、搭乗者が乗る乗物50に固有番号を振っておき、該固有番号と対応する見学者センサ4を見学者に渡しても良い。
【0030】
搭乗者が搭乗者センサ3xを保持し、その搭乗者と関係のある見学者が見学者センサ4xを保持した状態において、搭乗者センサ3xと見学者センサ4xを複数あるマスタセンサ5のうちの一つのマスタセンサ5aが検知する場合について説明する。
マスタセンサ5aが、その検知領域に、搭乗者センサ3xと見学者センサ4xとのいずれをも検知しない場合、および搭乗者センサ3xと見学者センサ4xのうち一方のセンサを検知して他方のセンサを検知しない場合、マスタセンサ5aと対応する調光スクリーン21aは不透明状態である。そして、プロジェクタ22aは調光スクリーン21aに映像を投影するように制御される。このとき、搭乗者と見学者は互いを見ることができず、搭乗者はプロジェクタから投影される映像を見ることができる。
マスタセンサ5aが、その検知領域に、搭乗者センサ3xと見学者センサ4xの両方を検知した場合、対応する調光スクリーン21aは透明状態に制御される。このとき、搭乗者と見学者は互いを見ることができ、見学者は搭乗者を撮影等することができる。
すなわち透明状態とは、見学者が搭乗者と他の搭乗者とを区別できる程度に透明であればよいが、透明度が高いほど区別しやすくなるため好ましい。また、不透明状態とは透明状態ではない状態を指す。
調光スクリーン21aが透明状態となったときにプロジェクタ22aが光を発しないように制御することで、搭乗者あるいは見学者がプロジェクタによる眩しさを感じないようにできるため好ましい。
【0031】
次に、図3を用いて、遊具用システム1の概略構成を説明する。システムコントローラ6は、遊具用システム1の全体を統括制御する。遊具用システム1は、システムコントローラ6と調光スクリーン21とプロジェクタ22と搭乗者センサ3と見学者センサ4とマスタセンサ5を備え、必要に応じて操作パネル7と記憶装置8とをさらに備える。
【0032】
システムコントローラ6は、各調光スクリーン21の透過率の制御と各プロジェクタ22の動作の制御を行う。システムコントローラ6は、マスタセンサ5の信号に基づいて各調光スクリーン21の透過率を切り替える。システムコントローラ6は、不透明状態の調光スクリーン21aに対し、対応するプロジェクタ22aにより適当なタイミングで適当な映像が投影されるように制御する。プロジェクタに投影される映像は、記憶装置8に保存されている。
【0033】
システムコントローラ6はまた、操作パネル7からの情報を取得し、その情報に基づいた制御を行う。操作パネル7は、遊具2および遊具用システム1の運営者(以下、スタッフ)が、運転の開始や停止などの操作を行うための操作パネルである。操作パネル7は遊具2の運転状況を機械的に切替るスイッチなどでもよい。以下は操作パネル7を用いた場合について説明する。
【0034】
システムコントローラ6は、図4に示す処理を繰り返して遊具用システム1を制御する。まずシステムコントローラ6は、動作スイッチがオンであるか否かを判定する(S1)。動作スイッチは、スタッフが操作パネル7を操作することにより、オンまたはオフにされる。システムコントローラ6は、動作スイッチがオンになるまで、S1の処理を繰り返す。S1にて、スイッチがオンであった場合、システムコントローラ6がすべての調光スクリーン21を不透明状態にする(S3)。これにより、搭乗者から周囲の景色が遮られ、搭乗者は非現実な世界に導入されたと感じる。次に、システムコントローラ6は、すべてのプロジェクタ22を起動し、調光スクリーン21に、映像を投影させる(S5)。映像は、各調光スクリーン21の映像が連結して一つの画面を形成してもよいし、各調光スクリーン21の映像が他の調光スクリーン21の映像と繋がらず独立していてもよい。投影される映像は記憶装置8に保存されている。
【0035】
続いて、システムコントローラ6は、S7~S23の処理により、動作スイッチがオンである限り、搭乗者センサ3と見学者センサ4とが離れている間(位置検出領域にいない間)は調光スクリーン21を不透明状態にすると共に、プロジェクタ22からの映像が投影された状態にする。そして、搭乗者センサ3と見学者センサ4とが一定の範囲(位置検出領域)内にいる間は搭乗者センサ3と見学者センサ4のそばの調光スクリーン21を透明状態に制御する。
【0036】
まず、システムコントローラ6は、第2トリガ信号を受信したか否かを判定する(S7)。第2トリガ信号は、搭乗者センサ3と見学者センサ4との少なくとも一方がマスタセンサ5により検知されなかった場合に、マスタセンサ5より発される。つまり第2トリガ信号は、搭乗者と見学者とが近くにいない状況で発される。システムコントローラ6は、第2トリガ信号を受信した場合、S17~S23の調光スクリーン21の透過率を下げる処理に移行する。
【0037】
システムコントローラ6は、S7にて第2トリガ信号を受信しなかった場合、第1トリガ信号を受信したか否かを判断する(S9)。第1トリガ信号は、搭乗者センサ3と見学者センサ4との両方がマスタセンサ5により検知された場合に、マスタセンサ5より発される。つまり第1トリガ信号は、搭乗者と見学者とが近くにいる状況で発される。システムコントローラ6は、第1トリガ信号を受信しなかった場合、トリガ信号受信エラーの可能性もあるため、S15の処理の後の工程に移行する。システムコントローラ6は、第1トリガ信号を受信した場合、S11~S15の調光スクリーン21の透過率を上げる処理に移行する。S7の処理とS9の処理は逆転していてもよい。すなわち、第1トリガ受信を判断するステップの後に第2トリガの受信を判断するステップの順でも良い。
【0038】
調光スクリーン21の透過率を下げる処理(S17~S23)の次、あるいは調光スクリーン21の透過率を上げる処理(S11~S15)の次に、システムコントローラ6は動作スイッチがオンであるか否かを判定する(S25)。S25にて動作スイッチがオンである場合、S7の処理が行われる。システムコントローラ6は、S25にて動作スイッチがオフになるまで、S7~S25の処理を繰り返す。
【0039】
調光スクリーン21の透過率を上げる処理S11~S15について説明する。まず、システムコントローラ6は、第1トリガ信号のヘッダを確認し、この信号が複数あるうちどのマスタセンサ5により発されたか、すなわち搭乗者と見学者とがどの調光スクリーン21のそばにいるかのアドレス情報を取得する(S11)。次に、システムコントローラ6は、該当するアドレスのプロジェクタ22による投射動作を停止する(S13)。続いて、システムコントローラ6は、該当するアドレスの調光スクリーン21の透過率を上げる(S15)。このとき、該当するアドレスの調光スクリーン21のそばにいる搭乗者と見学者とは互いを見合うことができ、見学者は搭乗者を撮影することができる。なお、調光スクリーン21が透明時においてもプロジェクタ22の投影を続ける場合はS13の工程を省略しても良い。
【0040】
調光スクリーン21の透過率を下げる処理S17~S23について説明する。まず、システムコントローラ6は、第2トリガ信号のヘッダを確認し、この信号が複数あるうちどのマスタセンサ5により発されたか、すなわちどの調光スクリーン21のそばからそれまでいた搭乗者または見学者が離れたかのアドレス情報を取得する(S17)。次に、システムコントローラ6は、該当するアドレスの調光スクリーン21が透明か否かを判断する(S19)。調光スクリーン21が透明だった場合、調光スクリーン21の透過率を下げる(S21)。続いて、システムコントローラ6は、該当するアドレスのプロジェクタ22による投射動作を開始する(S23)。このとき、該当するアドレスの調光スクリーン21は透過率が低く映像が投影された状態であり、遊具2の世界観を効果的に演出する。該当する調光スクリーン21が不透明だった場合、不透明状態を維持する。
【0041】
ここで、第1トリガ信号および第2トリガ信号のアドレス情報は公知の他の方法により取得されてもよい。例えば、システムコントローラ6が、対応するマスタセンサからの信号を受信する複数の受信部を有し、どの受信部に受信したかによってアドレス情報を取得してもよい。この場合は、ヘッダ確認処理(S11およびS17)の代わりに、受信部確認処理が行われる。
【0042】
S25にて動作スイッチがオフであった場合は、運転停止のための処理(S27およびS29)が行われる。動作スイッチは、スタッフが操作パネル7を操作することによりオフにされる。システムコントローラは全てのプロジェクタ22の動作を停止し(S27)、続いて全ての調光スクリーン21を透過率が高い状態にする(S29)。
【0043】
操作パネル7の操作によらず、S1にて動作スイッチがオンになってから一定の時間が経過したことを契機として運転停止のための処理が行われるようにしてもよい。例えば、S25にて動作スイッチがオンであった場合に、システムコントローラ6が、S1の動作スイッチのオンの判定から一定時間が経過したか否かを判定し、そこで一定時間が経過したと判定された場合にはS27の処理に進み、一定時間が経過していないと判定された場合にはS7に進む。S25にて動作スイッチがオフであった場合にもS27の処理に進む。このとき、遊具2の運転開始から一定時間が経過するまでは、動作スイッチがオンである限り運転が継続される。動作スイッチがオンであっても遊具2の運転開始から一定時間が経過していれば自動的に運転停止の処理が行われ、また動作スイッチがオフであれば遊具2の運転開始からの経過時間に関係なく運転停止の処理が行われる。
【0044】
マスタセンサ5aから第1トリガ信号および第2トリガ信号が送信される処理について、図5を用いて説明する。まず、マスタセンサ5aは、その検知領域において見学者センサ4が検知されたか否かを判定する(S51)。マスタセンサ5aは、見学者センサが検知されるまで、S51の処理を繰り返す。マスタセンサ5aは、見学者センサが検知された場合は、次に、その検知領域において搭乗者センサ3が検知されたか否かを判定する(S53)。S53にて、搭乗者センサ3が検知されなかった場合は、S51の処理が行われる。S53にて、搭乗者センサ3が検知された場合は、マスタセンサ5aは、第1トリガ信号を送信する(S55)。S51の処理とS53の処理の順番は逆転していてもよい。すなわち、センサ3の検知を判断するステップの後にセンサ4の検知を判断するステップの順でも良い。
【0045】
次に、マスタセンサ5aは、その検知領域において見学者センサ4が検知されたか否かを判定する(S57)。S57にて、見学者センサ4が検知されなかった場合に、マスタセンサ5aは、第2トリガ信号を送信する(S61)。S57にて、搭乗者センサ4が検知された場合は、マスタセンサ5aは、搭乗者センサ4が検知されたか否かを判定する(S59)。S59にて、搭乗者センサ4が検知されなかった場合に、マスタセンサ5aは、第2トリガ信号を送信する(S61)。S59にて、搭乗者センサ4が検知された場合は、マスタセンサ5aはS57の処理を行う。
【0046】
<第二実施形態>
第二実施形態について図7から図10を用いて説明する。第一実施形態と同じものには同一の符号をつけると共に、説明を省略している。
図7は、遊具用システム1の外周壁10の展開図である。外周壁10は、複数の投影切替ユニット11で構成されている。各投影切替ユニット11は、調光スクリーン21とプロジェクタ22を備える。すなわち第二実施形態はマスタセンサ5が投影切替ユニット11に含まれない構成である。
【0047】
図8は、第二実施形態における遊具用システム1の動作を説明するための図である。搭乗者は、遊具2の乗物50に乗って移動する。乗物50には搭乗者センサ3が備わっていない。すなわち第二実施形態では搭乗者センサ3を用いない。乗物50は決められたルートおよび速度で進行する。そのため、運転開始からの時間を計測することで乗物50の現在位置を割り出すことができる。
【0048】
見学者の位置は公知の方法で測定する。例えば第一実施形態における見学者センサ4として、見学者のスマートフォンに搭載されたGPS情報を用いる。
搭乗者の乗る乗物50と見学者センサ4は対応関係にある。対応をとる方法は公知の方法でよい。例えば搭乗者が乗る乗物50に固有番号を振っておき、該固有番号を見学者のスマートフォンのアプリ内で選択してもよい。または搭乗者の乗る乗物50と対応するQRコード(登録商標)やバーコードなどの識別手段を設けておき、見学者のスマートフォンで読み取っても良い。
【0049】
次に、図9を用いて、第二実施形態における遊具用システム1の概略構成を説明する。図3の構成と異なる点は、システムコントローラ6が駆動制御部55および一つのマスタセンサ5を備える点である。駆動制御部55は乗物50の駆動を制御する機構である。駆動制御時の情報を用いて乗物50の現在位置を割り出す。
マスタセンサ5は見学者センサ4の位置情報を検出する。図8に示すように、予めそれぞれの調光スクリーン21に対応する位置検出領域23を設定しておき、見学者センサ4のGPS情報が位置検出領域23におけるどの領域に属するかを判断する。したがって、見学者センサ4の位置と対応する調光スクリーン21を特定することができる。また、見学者センサ4の位置が位置検出領域23を一単位として検出されるため、GPSの精度が低い場合であっても誤検出されづらくなる。
以上の構成により、第一実施形態のように投影切替ユニット11に設置された複数のマスタセンサ5で搭乗者センサ3の信号を走査する必要がなくなる。その結果、マスタセンサ5は見学者センサ4の位置情報を走査するだけでよくなるため、より簡便なシステムでの提供が可能となる。
【0050】
システムコントローラ6は、図10に示す処理を繰り返して第二実施形態における遊具用システム1を制御する。S1からS5までの処理は第一実施形態と同じである。
【0051】
続いて、システムコントローラ6は、S71からS79の処理により、動作スイッチがオンである限り、搭乗者が乗る乗物50と見学者センサ4とが離れている間(位置検出領域にいない間)は調光スクリーン21を不透明状態にすると共に、プロジェクタ22からの映像が投影された状態にする。そして、搭乗者が乗る乗物50と見学者センサ4とが一定の範囲(位置検出領域)内にいる間は見学者センサ4のそばの調光スクリーン21を透明状態に制御する。そしてS71にて見学者センサ4が検知されないとき、換言すると見学者センサ4が位置検出領域にいないときは、S80からS81の処理により調光スクリーン21を不透明状態にすると共に、プロジェクタ22からの映像が投影された状態にする。
【0052】
システムコントローラ6は、S71にて見学者センサ4の位置情報がマスタセンサ5で検知されているか否かを判定する。検知された場合、見学者センサ4に最も近い調光スクリーン21を特定する(S73)。続いて特定した調光スクリーン21に対応する位置検出領域に乗物50が存在するか否かを判定する(S75)。乗物50が存在する場合、ステップS76、S77の処理に移行する。乗物50が存在しない場合、ステップS78、S79の処理に移行する。S76、S77の処理は第一実施形態のS13、S15(図4)の処理と同じであり、S78、S79の処理は第一実施形態のS21、S23(図4)の処理と同じである。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0054】
<変形例>
変形例として、調光部材30は、各積層体32に配向膜35を備えない構成を採用してもよい。すなわち、電圧が印加された状態で透過率が高く、電圧が印加されていない状態で透過率が低い、所謂ノーマル型の切り替えが可能な部材を用いてもよい。
電極層34に駆動電力が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは不規則である。そのため、調光部材30に入射した光は散乱し、不透明状態となる。他方、電極層34間に駆動電力が印加されると、液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が電極層34間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光部材30を光が透過しやすくなり、透明状態となる。
【0055】
また、調光部材30は、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応による色調の変化を利用して透過率を切り替えるものでもよい。
【0056】
変形例として、図11に示すように支持体40の一部領域に調光スクリーン21を備え、調光スクリーン21以外の領域に絵や写真などの静止画部を施した構成としてもよい。図7において静止画部の領域をドットで示している。プロジェクタ22による動画再生と絵や写真などの静止画部を組み合わせた表現が可能となるため、搭乗者の没入感をさらに高めることができる。
【0057】
変形例として、投影切替ユニット11におけるプロジェクタ22の配置数を調光スクリーン21の配置数より少なくしても良い。例えば2つの調光スクリーン21を一つのプロジェクタ22で投影することで、プロジェクタ数の低減を図ることができる。その結果、隣接する調光スクリーン間の投影映像の連動性が高まり滑らかな投影が可能となる他、コストを削減できる。
【0058】
変形例として、図4のフローのS13の処理の際に、マスタセンサ5と対応する調光スクリーン21に隣接する複数の調光スクリーン21の透過率を下げる処理をしてもよい。例えばマスタセンサ5bと対応する調光スクリーン21bの両隣の調光スクリーンとなる調光スクリーン21a、21cも同時に透明化する処理をしてもよい。複数の調光スクリーンを透明状態にすることで、見学者はより長時間搭乗者の状態を知ることができる。
【0059】
変形例として、見学者センサ4の位置情報をマスタセンサ5に発信しない機構を見学者センサ4に備えていても良い。機構は例えば見学者センサ4の位置情報の発信有無を切り替えることができるスイッチである。見学者は位置検出領域に存在するが搭乗者の様子を確認する必要がないときに本機構を活用することで、調光スクリーン21は不透明状態を維持することができる。これにより搭乗者は周囲の景色が遮られる時間が長くなり、没入感をより高めることができる。
【0060】
変形例として、見学者が位置検出領域を把握できるように、マーカーで位置検出領域を可視化してもよい。本構成により、見学者は本発明の効果を奏する領域を簡便に把握することができ、利便性が高まる。見学者マーカーの一例として、本発明の遊具用システムを搭載した遊具の位置検出領域と対応する床面の色を他の床面と異なる色で塗ることが挙げられる。あるいは、見学者のスマートフォンの画面上に位置検出領域を現してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1・・・遊具用システム、2・・・遊具、3・・・搭乗者センサ、4・・・見学者センサ、5・・・マスタセンサ、6・・・システムコントローラ、7・・・操作パネル、8・・・記憶装置、10…外周壁、11・・・投影切替ユニット、21・・・調光スクリーン、22・・・プロジェクタ、30・・・調光部材、31・・・液晶層、32・・・積層体、33・・・基材、34・・・電極層、35・・・配向膜、36・・・制御部、40・・・支持体、50・・・乗物、55・・・駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11