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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】油膜除去装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20230530BHJP
【FI】
C02F1/40 B
C02F1/40 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019132153
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021016807
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】村木 政幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 庸造
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074645(JP,A)
【文献】特開昭48-070156(JP,A)
【文献】国際公開第2010/058513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
G01N 21/00-21/01
G01N 21/03-21/15
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と油が混合した排水の油膜を除去する油膜除去装置であって、
流入管から排水が流入する流入槽と、
前記流入槽を形成する壁面に連なると共に当該流入槽への排水の流入位置側に壁面が向くよう設けられた第1の流路形成壁と、
前記流入槽を形成する壁面であって前記第1の流路形成壁が連なる壁面と相対する壁面に連なり、当該流入槽の排水が流通可能な連絡流路を当該第1の流路形成壁との間に形成する第2の流路形成壁と、
前記連絡流路の流出口側に設けられ、当該連絡流路を介して前記流入槽から排水が流入可能な回収槽と、
前記回収槽の水面に浮かべるように設けられ、水面上の油膜を回収する回収ポンプとを備え
前記第1の流路形成壁には、前記連絡流路の流入口側の端部に、当該流入口を開閉する扉部材が設けられている
ことを特徴とする油膜除去装置。
【請求項2】
前記回収槽には、前記連絡流路の流出口を囲む仕切り壁が設けられて、当該連絡流路の流出口に水面が繋がる仕切り壁の内側領域と当該連絡流路から水面が分断した仕切り壁の外側領域とに仕切られて、当該仕切り壁で囲まれた内側領域に前記回収ポンプが配置されると共に、
水面下において前記仕切り壁の内側領域と外側領域とが繋がるようにした請求項1記載の油膜除去装置。
【請求項3】
前記仕切り壁は、前記回収槽に面する前記第1の流路形成壁および第2の流路形成壁の壁面から下流側へ延在する一対の第1の仕切り壁と、当該一対の第1の仕切り壁を繋ぐ第2の仕切り壁とを備えている請求項2記載の油膜除去装置。
【請求項4】
前記扉部材は、当該扉部材の開閉先端を前記第2の流路形成壁に最接近させた状態で、当該第2の流路形成壁との間に隙間が空くよう構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の油膜除去装置。
【請求項5】
前記連絡流路の水面上の油膜を油膜検出装置で検出するようにした請求項1~の何れか一項に記載の油膜除去装置。
【請求項6】
前記流入槽に排水が流入する流入位置と前記連絡流路の流入口との間に位置するよう遮蔽壁を設けた請求項1~の何れか一項に記載の油膜除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水の水面上に浮遊する油膜を回収可能な油膜除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場などでは、各種工作機械やその生産設備の稼働に際して洗浄水や冷却水などといった水が使用されるほか各種の加工油や潤滑油などといった油類が使用され、その稼働により水と油が混合した排水が発生する。このような排水は水質汚染の原因ともなることから、排水上に浮遊する油膜や混入したスラッジ等の汚泥を除去するなど所定の環境基準に合致するように処理を行った後に、工場外に排水したり、再利用に供される。このような排水の油膜を検出するための装置として、例えば特許文献1の排水油膜検出装置が知られている。この排水油膜検出装置は、測定室の水面を横切るように一対の誘導板を設けて、誘導板の間の油膜を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2010/058513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置は、排水中に含まれる油膜を検出することができるものの、油膜の除去に関しては特段の考慮がなされておらず、油膜を効率的に除去し得るものではない。特に、油膜を検出した後に測定室から流出室に流れる過程で排水が流れ落ちることで、水面上の油膜が撹拌されるため、油膜を除去することが困難になる。
【0005】
すなわち本発明は、排水の油膜を効率的に除去可能な油膜除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
水と油が混合した排水の油膜を除去する油膜除去装置であって、
流入管から排水が流入する流入槽と、
前記流入槽を形成する壁面に連なると共に当該流入槽への排水の流入位置側に壁面が向くよう設けられた第1の流路形成壁と、
前記流入槽を形成する壁面であって前記第1の流路形成壁が連なる壁面と相対する壁面に連なり、当該流入槽の排水が流通可能な連絡流路を当該第1の流路形成壁との間に形成する第2の流路形成壁と、
前記連絡流路の流出口側に設けられ、当該連絡流路を介して前記流入槽から排水が流入可能な回収槽と、
前記回収槽の水面に浮かべるように設けられ、水面上の油膜を回収する回収ポンプとを備える
ことを要旨とする。
このように、第1および第2の流路形成壁により形成される連絡流路を介して流入槽から回収槽に排水を導くようにすることで、排水の油膜を効率的に取り除くことができる。このとき、流路形成壁の壁面を流入槽への排水の流入位置側に向けるようにすることで、流入槽への排水の流入に伴う水面の波打ちが流路形成壁の間の流路に進入し難くすることができる。このため、水面の波打ちが穏やかな状態で油膜を回収することができ、油膜の回収効率を高めることができる。
【0007】
第2の手段は、
前記回収槽には、前記連絡流路の流出口を囲む仕切り壁が設けられて、当該連絡流路の流出口に水面が繋がる仕切り壁の内側領域と当該連絡流路から水面が分断した仕切り壁の外側領域とに仕切られて、当該仕切り壁で囲まれた内側領域に前記回収ポンプが配置されると共に、
水面下において前記仕切り壁の内側領域と外側領域とが繋がるようにしたことを要旨とする。
このように、連絡流路の流出口を仕切り壁で囲むと共に、水面下に設けた流路により仕切り壁で囲まれた内側領域と外側領域とを繋ぐ流路により水の流通を許容するようにすることで、仕切り壁の外側への油膜の流出を防止しながら排水の流れを確保することができる。
【0008】
第3の手段は、
前記仕切り壁は、前記回収槽に面する前記第1の流路形成壁および第2の流路形成壁の壁面から下流側へ延在する一対の第1の仕切り壁と、当該一対の第1の仕切り壁を繋ぐ第2の仕切り壁とを備えていることを要旨とする。
このように、連絡流路の流出口を第1および第2の仕切り壁で囲むことで、油膜の流出を確実に防止することができる。
【0009】
第4の手段は、
前記第1の流路形成壁には、前記連絡流路の流入口側の端部に、当該流入口を開閉する扉部材が設けられていることを要旨とする。
このように、扉部材を設けることで、流入槽への排水の流入に伴う水面の波打ちが流路形成壁の間の連絡流路に進入し難くすることができる。
【0010】
第5の手段は、
前記扉部材は、当該扉部材の開閉先端を前記第2の流路形成壁に最接近させた状態で、当該第2の流路形成壁との間に隙間が空くよう構成されていることを要旨とする。
このように、扉部材の開閉先端を前記流路形成壁に最接近させた状態で、当該流路形成壁との間に隙間が空くようにすることで、排水の水面に浮遊する油膜を流入槽から回収槽へ流れるようにすることができ、油膜が流入槽に滞留するのを防止できる。
【0011】
第6の手段は、
前記連絡流路の水面上の油膜を油膜検出装置で検出するようにしたことを要旨とする。
このように、流入槽への排水の流入に伴う水面の波打ちが進入し難い流路形成壁の間の連絡流路上で油膜を検出することにより、油膜の検出精度を高めることができる。
【0012】
第7の手段は、
前記流入槽に排水が流入する流入位置と前記連絡流路の流入口との間に位置するよう遮蔽壁を設けたことを要旨とする。
このように、遮蔽壁を設けることで流入槽への排水の流入に伴う水面の波打ちが流路形成壁の間の連絡流路に進入するのをより効率的に抑制することができ、水面の波打ちが穏やかな状態で油膜を回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水の油膜を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係る油膜除去装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)は図1のB部拡大図であり、(b)はB部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る油膜除去装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【0016】
図1図2に示すように、本実施形態の油膜除去装置10は、排水からの油膜除去に供する処理槽12が流入槽14と回収槽30とに区切られており、当該流入槽14と回収槽30とを繋ぐ流路を介して流入槽14から回収槽30に導かれた排水の油膜を除去するよう構成されている。具体的に、この油膜除去装置10は、図1に示すように、相対する壁面12a,12bから互い違いになるよう設けられた流路形成壁18,20により流入槽14と回収槽30とに処理槽12が区切られて、当該回収槽30の水面Lに浮かべるように回収ポンプ(油膜回収手段)50が設けられると共に、排水を回収槽30(処理槽12)の外に排水する排水ポンプ(排水手段)52が当該回収ポンプ50より下流に設けられている。この流路形成壁18,20は、その間に排水が流通可能な流路22を形成するよう構成されて、当該排水ポンプ52により排水を吸い込むことで、当該流路形成壁18,20の間の流路22を介して流入槽14から回収槽30に向けて排水が流れるようなっており、回収槽30に流入した排水の水面Lの油膜を回収ポンプ50で除去するよう構成されている。この、流入槽14および回収槽30は、水面レベルが略同じ高さに位置するよう流路22により繋がっている。なお、流入管16の放出口16aが流入槽14の水面Lより上方に位置するよう配置されており、工場等から排出された排水が流入槽14に放出されるようになっている。この流入管16の放出口16aを流入槽14の水面下に位置させるようにしてもよい。
【0017】
前記流路形成壁18,20は、図1に示すように、処理槽12(流入槽14)の第1壁面12aから相対する第2壁面12bに向けて延在する第1の流路形成壁18と、当該第1の流路形成壁18よりも流入管16の放出口16a(排水の流入位置)から離間する位置において第2壁面12bから第1壁面12aに向けて延在する第2の流路形成壁20とを備えている。ここで、第1の流路形成壁18の延出端部(側端部)は、第2の流路形成壁20の延出端部(側端部)よりも第2壁面12b側に位置すると共に、第2の流路形成壁20の延出端部(側端部)は、第1の流路形成壁18の延出端部(側端部)よりも第1壁面12a側に位置して、当該第1の流路形成壁18の壁面と第2の流路形成壁20の壁面とが一定の間隔を隔てて対向するように構成されている。すなわち、流入槽14(処理槽12)の相対する壁面(第1壁面12aおよび第2壁面12b)から第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20が互い違いに延在するよう設けられ、これにより第1の流路形成壁18と第2の流路形成壁20との間に排水の流路22が形成されるようになっている。なお、以下において、説明の便宜上、第1の流路形成壁18と第2の流路形成壁20との間に形成された排水の流路を連絡流路22と指称して区別する場合がある。ここで、前記第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20は、流入管16の放出口16a(排水の流入位置)側に壁面が向くよう設けられており、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちが前記連絡流路22に直接進入しないようにしてある。
【0018】
ここで、図2に示すように、前記第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20は、排水の水面Lを堰き止めるよう水面上および水面下に亘って延在すると共に、流入槽14(処理槽12)の底面から下端部が離間するよう設けられている。すなわち、流入槽14と回収槽30とは、前記連絡流路22により繋がると共に、当該第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20の下側に形成される水面下の流路により繋がっており、流入槽14から回収槽30への流れる排水の流量を水面下の流路により確保しつつ、連絡流路22を介して水面上の油膜を回収槽30に導くようにしてある。このように、第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20は、少なくとも処理槽12(流入槽14)に貯めた排水の水面Lを横切るように形成され、水面上に浮かぶ油膜が前記連絡流路22を通って回収槽30に導かれるようにしてある。
【0019】
また、流入槽14には、流入管16の放出口16a(排水の流入位置)と連絡流路22の流入口との間に遮蔽壁24が設けられている。この遮蔽壁24は、壁面を流入管16の放出口16a(排水の流入位置)側に向けた状態で流入槽14(処理槽12)の底面に連なると共に上端が水面Lから突出するよう形成され、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちを抑制して水面Lの波打ちが連絡流路22に進入しないようにしてある。なお、遮蔽壁24の両側端部は第1壁面12aおよび第2壁面12bから離間するよう構成され、当該遮蔽壁24および第1壁面12aの間と、遮蔽壁24および第2壁面12bの間の夫々に排水の流路を確保している。
【0020】
また、前記回収槽30には、前記連絡流路22の流出口を囲む仕切り壁32が設けられている。具体的に、前記仕切り壁32は、前記第1の流路形成壁18の壁面に対して第2の流路形成壁20の延出端部(側端部)より第1壁面12a側で連なって回収槽30の内側に延在する第1仕切り壁(第1の仕切り壁)32aと、第2の流路形成壁20の壁面に対して第1の流路形成壁18の延出端部(側端部)より第2壁面12b側で連なって回収槽30の内側に延在する第2仕切り壁(第1の仕切り壁)32bと、当該第1仕切り壁32aおよび第2仕切り壁32bの延出端部に連なる第3仕切り壁(第2の仕切り壁)32cとから連絡流路22の流出口を囲むよう構成されている。なお、仕切り壁32の構成としては、このような構成に限られるものではなく、連絡流路22の流出口を囲む形態であれば、例えば第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20の壁面に端部が連なる円弧状の壁等の任意の形態で形成することができる。
【0021】
この仕切り壁32は、回収槽30の水面Lを堰き止めるよう水面上および水面下に亘って延在すると共に、回収槽30(処理槽12)の底面から下端部が離間するよう設けられている。すなわち、回収槽30は、仕切り壁32の下側に形成される水面下の流路により仕切り壁32で囲まれた内側領域34と外側領域36とが繋がっている。また、排水ポンプ52は、回収槽30において仕切り壁32の外側領域36に吸い込み口が位置するよう設けられている。これにより、連絡流路22を通って流入槽14から回収槽30への排水の流通を可能にすると共に、連絡流路22を通って回収槽30に導かれた排水の水面上の油膜を仕切り壁32で囲まれた内側領域34に留めつつ、当該水面下の流路により内側領域34から外側領域36への排水の流通を許容するようになっている。
【0022】
そして、仕切り壁32で囲まれた内側領域34に前記回収ポンプ50が配置され、当該内側領域34に留めた水面上の油膜を取り除くようにしてある。この回収ポンプ50は、複数(図 では3つ)のフロートにより排水管を接続した水中ポンプを浮かべるようにしたフロート式の回収ポンプ50である。このような回収ポンプ50としては、例えば、特開2000-24656号公報等に開示の装置が挙げられる。
【0023】
また、本実施例の油膜除去装置10は、前記連絡流路22の水面Lを浮遊する油膜を検出する油膜検出装置54を備えており、当該連絡流路22を排水が流れる過程で回収槽30へ流れる油膜を検出するようになっている。この油膜検出装置54としては、反射光方式、偏光比解析方式、蛍光方式等の従来公知の各種装置を採用することができる。ここで、反射光方式は、水面Lに対して照射した発光ダイオード光やレーザー光等の光の反射強度が水に比較して油の方が大きくなることを利用したもので、反射光強度の増加を指標として水面上の油膜を検出するものである。また偏光比解析方式は、水面Lに対して照射した発光ダイオード光やレーザー光等の光の反射光を偏光分離した際に、その偏光比が水に比較して油の方が大きくなることを利用したもので、偏光比の増加を指標として水面上の油膜を検出するものである。また蛍光方式は、油が蛍光を発生する性質があることを利用したもので、特定の波長の励起光を水面Lに照射した際の蛍光スペクトルを計測して、その蛍光強度の増加を指標として油膜を検出するものである。この実施例では、前記第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20の上端部に、前記連絡流路22の上方に位置するよう掛け渡した支持板38に蛍光方式を利用した油膜検出装置54が配置されており、この油膜検出装置54から300~400nmの紫外線を連絡流路22の水面Lに向けて照射し、400~500nmの蛍光を測定した場合に、連絡流路22の水面Lに油膜があるものと判定するよう構成してある。なお、油膜検出装置54から照射する励起光の波長や、油膜として判定する蛍光スペクトルは一例であり適宜に変更可能である。そして、油膜検出装置54による油膜検出に基づいて前記回収ポンプ50が作動して油膜を除去し、油膜検出装置54が油膜を非検出になることを契機として回収ポンプ50の作動を停止するようになっている。
【0024】
また、第1の流路形成壁18の延出端部には、前記連絡流路22の流入口を開閉する第1扉部材41が設けられると共に、第2の流路形成壁20の延出端部には、当該連絡流路22の流出口を開閉する第2扉部材42が設けられており、当該第1扉部材41および第2扉部材42により連絡流路22の流入口および流出口の開口幅を可変し得るようになっている。ここで、第1扉部材41および第2扉部材42は、基本的に同一構成により開閉可能に構成されていることから、第1扉部材41について説明し、第2扉部材42については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
図3に示すように、第1扉部材41は、第1の流路形成壁18の延出端部に設けたヒンジ部材44により回動可能に支持されており、角度調整部材46により第1の流路形成壁18に対する回動角度を変更した状態で保持するようになっている。ここで、角度調整部材46は、前記支持板38に一端が回動可能に支持された棒状の部材であって、長手方向に離間する複数箇所(実施例では5箇所)に上下に貫通する貫通孔46aが設けられている。そして、角度調整部材46の貫通孔46aに上方から差し込んだ固定ピン48を、第1扉部材41の上端面に形成した孔部(図示せず)に挿入することで、当該固定ピン48を差し込んだ貫通孔46aの位置に応じた角度で第1扉部材41が保持されるようになっている。
【0026】
この実施例では、第1の流路形成壁18に沿って第1扉部材41が延在する開放位置(図3(a)では実線により図示)と、第1の流路形成壁18に対して第1扉部材41が直交する閉鎖位置(図3(b)では二点鎖線により図示)との間の複数の角度位置で第1扉部材41を保持し得るようになっている。ここで、前記第1扉部材41の開閉先端が第2の流路形成壁20に最接近する状態(閉鎖位置の状態)で、当該第1扉部材41と第2の流路形成壁20との間に隙間Sが空くよう構成されている。すなわち、第1扉部材41を閉鎖位置にした状態であっても、排水の油膜が流入槽14から連絡流路22に流入し得るようになっている。同様に、第2の流路形成壁20に沿って第2扉部材42が延在する開放位置と、第2の流路形成壁20に対して第2扉部材42が直交する閉鎖位置との間の複数の角度位置で第2扉部材42を保持し得る構成されており、当該第2扉部材42の開閉先端が第1の流路形成壁18に最接近する状態(閉鎖位置の状態)で、当該第2扉部材42と第1の流路形成壁18との間に隙間Sが空くよう構成されている。すなわち、第2扉部材42を閉鎖位置にした状態であっても、排水の油膜が連絡流路22から回収槽30に流入するようになっている。
【0027】
このように、実施例に係る油膜除去装置10では、排水管から流入槽14に流入する排水を、第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20の間に形成される連絡流路22を介して回収槽30に導くようにしたことで、排水の流入に伴う波打ちの影響が少ない状態で油膜を回収することができ、排水の油膜を効率的に取り除くことができる。特に、第1の流路形成壁18および第2の流路形成壁20の壁面を流入槽14への排水の流入位置側に向けるようにしたことで、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちが流路形成壁の間の流路に進入し難くすることができる。このため、水面Lの波打ちが穏やかな状態で油膜を回収することができ、油膜の回収効率を高めることができる。
【0028】
更に、前記流入槽14に排水が流入する流入位置と連絡流路22の流入口との間に位置するよう遮蔽壁24を設けてあるから、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちが連絡流路22に進入するのをより効率的に抑制することができ、水面Lの波打ちが穏やかな状態で油膜を回収することが可能となる。そして、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちが進入し難い流路形成壁18,20の間の連絡流路22上の油膜を油膜検出装置54で検出することで、油膜の検出精度を高めることができる。
【0029】
また、連絡流路22の流出口を仕切り壁32で囲み、仕切り壁32の内側領域34に回収ポンプ50を配置するようにしたことで、連絡流路22を通って流入槽14から回収槽30へ流入する油膜が仕切り壁32の外側に流出するのを防止できると共に、仕切り壁32で囲まれた内側領域34に集約される油膜を回収ポンプ50で効率良く回収することができる。このとき、水面下では、仕切り壁32で囲まれた内側領域34から下流への水の流通が許容されているから、連絡流路22を介して仕切り壁32の内側領域34に流れ込む排水の流れを確保することができる。すなわち、油膜の流出を防止しながら排水の流れを確保して、排水の油膜を仕切り壁32の内側領域34に効率良く集約することができる。また、連絡流路22の流出口は、第1の流路形成壁18の壁面に連なる第1仕切り壁32aと、第2の流路形成壁20の壁面に連なる第2仕切り壁32bと、当該第1仕切り壁32aおよび第2仕切り壁32bの延出端部に連なる第3仕切り壁32cとからなる簡単な構成で囲むだけで油膜の流出を確実に防止することができる。
【0030】
また、第1の流路形成壁18の延出端部に第1扉部材41を設け、連絡流路22の流入口を開閉し得るようにすることで、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちに合わせて連絡流路22の流入口の開放度合いを調整することができ、水面Lの波打ちの連絡流路22への進入を効率良く抑制できる。すなわち、連絡流路22の流入口を、流入槽14への排水の流入量によって変動する水面Lの波打ちに合わせた開放度合いすることができる。このように、第1扉部材41により連絡流路22への水面Lの波打ちを抑制することで、油膜検出装置54による油膜検出をより正確に行うことが可能になる。そして、第1扉部材41の開閉先端を第1の流路形成壁18に最接近させた状態(第1扉部材41を閉じた状態)で、当該第1扉部材41と第1の流路形成壁18との間に隙間Sが空くようにすることで、排水の水面Lに浮遊する油膜を流入槽14から連絡流路22(回収槽30)へ流れるようにすることができ、油膜が流入槽14に滞留するのを防止できる。
【0031】
更に、第2の流路形成壁20の延出端部に第2扉部材42を設け、連絡流路22の流出口を開閉し得るようにすることで、流入槽14への排水の流入に伴う水面Lの波打ちに合わせて連絡流路22の流出口の開放度合いを調整することができ、水面Lの波打ちの回収槽30への進入を効率良く抑制できる。すなわち、連絡流路22の流出口を、流入槽14への排水の流入量によって変動する水面Lの波打ちに合わせた開放度合いすることができる。また、油膜除去装置10を屋外に設置するなどのように回収槽30側(仕切り壁32の内側領域34)で水面Lの波打ちが生じ易い環境であっても、当該回収槽30の水面Lの波打ちに合わせて連絡流路22の流出口の開放度合いを調整することができ、回収槽30の水面Lの波打ちの連絡流路22への進入を効率良く抑制できる。このように、第2扉部材42により連絡流路22への水面Lの波打ちを抑制することで、油膜検出装置54による油膜検出をより正確に行うことが可能になる。そして、第2扉部材42の開閉先端を第2の流路形成壁20に最接近させた状態(第1扉部材41を閉じた状態)で、当該第2扉部材42と第2の流路形成壁20との間に隙間Sが空くようにすることで、排水の水面Lに浮遊する油膜を連絡流路22から回収槽30へ流れるようにすることができ、油膜が連絡流路22に滞留するのを防止できる。また、回収槽30に滞留する油膜量に応じて第2扉部材42により連絡流路22の流出口の開放度合いを調整することで、回収槽30から連絡流路22への油膜の逆流を抑制することができ、油膜検出装置54による油膜検出をより正確に行うことが可能になる。
【0032】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1) 実施例では、各流路形成壁の下端部を流入槽(処理槽)の底面から離間させるよう設けたが、両流路形成壁または一方の流路形成壁の下端部を底面に連なるよう設けるようにしてもよい。このような構成であっても、流路形成壁の間に形成される流路を介して流入槽から回収槽に排水を導くことができる。また、水面下に位置するよう流路形成壁に開口を形成して、水面下において流入槽から回収槽へ排水が流通する流路を形成するようにしてもよい。
(2) 実施例では、仕切り壁の下端部を回収槽(処理槽)の底面から離間させるよう設けたが、当該底面に連なるよう設けた仕切り壁に水面下に位置するよう開口を形成して、水面下において仕切り壁で囲まれた内側領域34から下流への水の流通を許容する流路を形成するようにしてもよい。
(3) 実施例では、回収槽の一部(連絡流路の流出口)を仕切り壁で囲むようにしたが、当該仕切り壁を省略するようにしてもよい。
(4) 実施例では、流入槽と回収槽とを備えるようにしたが、回収槽の下流側に油膜を除去した排水に対する水質改善処理を行う水槽を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 油膜除去装置,12a 第1壁面(流入槽を形成する壁面)
12b 第2壁面(第1の流路形成壁が連なる壁面と相対する壁面)
14 流入槽,16 流入管,18 第1の流路形成壁,20 第2の流路形成壁
24 遮蔽壁,30 回収槽,32 仕切り壁
32a 第1仕切り壁(第1の仕切り壁),32b 第2仕切り壁(第1の仕切り壁)
32c 第3仕切り壁(第2の仕切り壁),34 内側領域,36 外側領域
41 第1扉部材(扉部材),50 回収ポンプ,54 油膜検出装置,S 隙間
図1
図2
図3