(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20230530BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230530BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/03 100C
B60C11/00 Z
B60C9/18 N
(21)【出願番号】P 2019149112
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】温品 良介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-152906(JP,A)
【文献】特開2016-74391(JP,A)
【文献】特開2014-184808(JP,A)
【文献】特開2016-88120(JP,A)
【文献】特開2005-75289(JP,A)
【文献】特開2005-132305(JP,A)
【文献】特開2012-17001(JP,A)
【文献】特開2006-213205(JP,A)
【文献】特開2009-78790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18
B60C 11/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、
規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、前記荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、前記空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)としたとき、前記荷重W40,W75,W100及び前記コーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)
2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足し、
前記複数本の主溝が少なくとも1本のセンター主溝とタイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝を含み、前記トレッド部に、前記2本のショルダー主溝の内側に区画されるセンター領域と該2本のショルダー主溝の外側に区画されるショルダー領域とを定義したとき、タイヤ子午線断面において、前記センター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記センター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記センター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcが0.2mm≦Hc≦1.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記センター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの平均値Hc
aveが0.2mm≦Hc
ave≦0.8mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数本の主溝が少なくとも2本のセンター主溝を含み、前記センター領域において、タイヤ赤道に最も近い陸部をセンター陸部とし、それ以外の陸部をミドル陸部としたとき、前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記センター陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hccと前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記ミドル陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量HcmとがHcc>Hcmの関係を満足することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記ショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記センター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hc
maxと前記ショルダー領域の基準プロファイルラインに対する前記ショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値Hs
maxがHc
max≧Hs
maxの関係を満足することを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記センター領域に含まれる陸部はタイヤ周方向に実質的に連続するリブ構造を有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2としたとき、前記最大接地長LA1,LB1,LC1及び前記外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、1.00≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20、0.75≦LB2/LB1≦1.00の関係を満足することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、層間でベルトコードが互いに交差する複数層のベルト層が埋設され、前記ベルト層のセンター部における前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度αが21°≦α≦30°の関係を満足することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、トレッド部のセンター偏摩耗を抑制すると共に、操縦安定性のリニアリティを改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えると共に、一対のビード部間に装架されたカーカス層と、トレッド部におけるカーカス層のタイヤ径方向外側に配置された複数層のベルト層とを備えた構造を有している。
【0003】
このような空気入りタイヤにおいては、特に新車向け乗用車用タイヤの場合、恒久的な課題として、操縦安定性のリニアリティを改善することが求められている(例えば、特許文献1参照)。例えば、ハンドル操舵初期に車両の動き(舵の効き)に遅れが生じる一方で、操舵中盤から後半にかけてコーナリングパワーが増大して車両の動きが過敏になるような走行状態は、操縦安定性のリニアリティ(線形感)が良好ではない。そのため、操縦安定性のリニアリティが良好になるようなチューニングが求められている。
【0004】
これに対して、低荷重域のコーナリングパワーを高めることで操縦安定性を改善することが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。しかしながら、低荷重域のコーナリングパワーを高めるだけでは、操縦安定性のリニアリティの改善要求に対して十分に応えることができないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-141268号公報
【文献】特開2011-230737号公報
【文献】特開2012-17001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、トレッド部のセンター偏摩耗を抑制すると共に、操縦安定性のリニアリティを改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、
規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、前記荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、前記空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)としたとき、前記荷重W40,W75,W100及び前記コーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足し、
前記複数本の主溝が少なくとも1本のセンター主溝とタイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝を含み、前記トレッド部に、前記2本のショルダー主溝の内側に区画されるセンター領域と該2本のショルダー主溝の外側に区画されるショルダー領域とを定義したとき、タイヤ子午線断面において、前記センター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記センター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、センター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることにより、トレッド部のセンター領域での剛性を確保してセンター偏摩耗を抑制することができる。また、センター領域に含まれる各陸部の接地長が増加するため、低荷重域から高いコーナリングパワーを確保することができる。しかも、荷重W40,W75,W100及びコーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足することにより、高荷重域のコーナリングパワーの過度の増大を抑制することができる。これにより、ハンドル操舵初期から遅延なくタイヤが動き、荷重の増大に伴って適度なコーナリングパワーが発揮されるので、操縦安定性のリニアリティを改善することができる。特に、タイヤサイズによりコーナリングパワーの出易さが異なるため、上記関係式は(R×D/2A)2の値により補正されている。つまり、偏平比が低く、外径が小さいタイヤほど高荷重側のコーナリングパワーの寄与を低下させるのである。
【0009】
本発明において、センター領域の基準プロファイルラインに対するセンター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcは0.2mm≦Hc≦1.5mmの範囲にあることが好ましい。センター領域に含まれる各陸部の突出量Hcを上記範囲に設定することにより、センター領域に含まれる各陸部の接地長を適正化することができる。
【0010】
センター領域の基準プロファイルラインに対するセンター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの平均値Hcaveは0.2mm≦Hcave≦0.8mmの範囲にあることが好ましい。センター領域に含まれる各陸部の突出量Hcの平均値Hcaveを上記範囲に設定することにより、センター領域に含まれる各陸部の接地長を適正化することができる。
【0011】
複数本の主溝は少なくとも2本のセンター主溝を含み、センター領域において、タイヤ赤道に最も近い陸部をセンター陸部とし、それ以外の陸部をミドル陸部としたとき、センター領域の基準プロファイルラインに対するセンター陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hccとセンター領域の基準プロファイルラインに対するミドル陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量HcmとがHcc>Hcmの関係を満足することが好ましい。このようにタイヤ赤道に最も近いセンター陸部の突出量Hccを最も大きくすることにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大し、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。
【0012】
ショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインはショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることが好ましい。このようにショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出する構造も低荷重域でのコーナリングパワーの増大に寄与する。
【0013】
センター領域の基準プロファイルラインに対するセンター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hcmaxとショルダー領域の基準プロファイルラインに対するショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値HsmaxはHcmax≧Hsmaxの関係を満足することが好ましい。このようにセンター領域に含まれる各陸部の突出量Hcの最大値Hcmaxをショルダー領域に含まれる各陸部の突出量Hsの最大値Hsmaxよりも大きくすることにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大し、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。
【0014】
センター領域に含まれる陸部はタイヤ周方向に実質的に連続するリブ構造を有することが好ましい。これにより、トレッド部のセンター領域での剛性を確保して低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大すると共に、センター偏摩耗を抑制することができる。なお、タイヤ周方向に実質的に連続するリブ構造とは、陸部を横断するラグ溝及びサイプが形成されていない構造又は陸部を横断するサイプのみが形成された構造である。ここで、ラグ溝は溝幅が1.0mm超である溝を意味し、サイプは溝幅が1.0mm以下である溝を意味する。
【0015】
本発明において、空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2としたとき、最大接地長LA1,LB1,LC1及び前記外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、1.00≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20、0.75≦LB2/LB1≦1.00の関係を満足することが好ましい。このように接地形状の荷重依存性をコントロールすることにより、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。
【0016】
本発明において、トレッド部に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、層間でベルトコードが互いに交差する複数層のベルト層が埋設される場合、ベルト層のセンター部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度αが21°≦α≦30°の関係を満足することが好ましい。ベルト層のセンター部におけるベルトコードの傾斜角度αを極度に低角度化しないことにより、ベルト層の剛性の増大を抑えてコーナリングパワーの荷重依存性をコントロールし、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。
【0017】
本発明において、コーナリングパワーは、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で所定の荷重を負荷した条件にて、キャンバー角度を0°とし、速度を10km/hとし、スリップ角度を変化させながらコーナリングフォースを測定し、スリップ角度が0°~1°となる範囲におけるコーナリングフォースに基づいて算出される。トレッド部の接地形状は、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて所定の荷重を負荷した条件にて測定される。空気入りタイヤの外径は、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態でタイヤ中心位置において測定される。トレッド部のプロファイルライン及び基準プロファイルラインは、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で測定される。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。空気圧は230kPaとする。また、所定の荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている最大負荷能力の40%,75%又は100%の荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【
図3】
図1の空気入りタイヤのトレッド部の輪郭を示す断面図である。
【
図4】トレッド部の輪郭の変形例を示す断面図である。
【
図5】トレッド部の輪郭の他の変形例を示す断面図である。
【
図6】
図1の空気入りタイヤの接地形状(40%荷重)を示す平面図である。
【
図7】
図1の空気入りタイヤの接地形状(75%荷重)を示す平面図である。
【
図8】
図1の空気入りタイヤの接地形状(100%荷重)を示す平面図である。
【
図9】本発明の空気入りタイヤを構成するベルト層を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、
図2はそのトレッドパターンを示し、
図3はそのトレッド部の輪郭を示すものである。
図2において、CLはタイヤ中心位置(タイヤ赤道)であり、Tcはタイヤ周方向であり、Twはタイヤ幅方向である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0021】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0022】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7を構成するベルトコードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、タイヤ周方向に配向する複数本のバンドコードを含む少なくとも1層のベルト補強層8が配置されている。ベルト補強層8は少なくとも1本のバンドコードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。ベルト補強層8を構成するバンドコードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0023】
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝10が形成されている。主溝10はウエアインジケーターが施された周方向溝である。これら主溝10は、タイヤ中心位置CLの両側の位置でタイヤ周方向に延びる一対のセンター主溝11,11と、該センター主溝11,11よりもタイヤ幅方向外側の位置でタイヤ周方向に延びる一対のショルダー主溝12,12とを含んでいる。センター主溝11及びショルダー主溝12は、ストレート形状を有していても良く、或いは、ジグザグ形状を有していても良い。これにより、センター主溝11,11の相互間にはセンター陸部20が区画され、センター主溝11とショルダー主溝12との間にはミドル陸部30が区画され、ショルダー主溝12の外側にはショルダー陸部40が区画されている。これら陸部20,30,40は、タイヤ周方向に沿って連続的に延在するリブであっても良く、或いは、タイヤ周方向に配列された複数個のブロックからなるブロック列であっても良い。
【0024】
センター陸部20は、タイヤ周方向に分断されることなく連続するリブである。ミドル陸部30の各々には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ31が形成されている。また、一対のミドル陸部30の一方には、タイヤ周方向に沿って延びていてジグザグ形状を有する周方向細溝32が形成されている。
【0025】
ショルダー陸部40の各々には、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝41が形成されている。これらラグ溝41はショルダー主溝12に対して非連通となっている。また、一対のショルダー陸部40の一方には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ42が形成されている。このようなサイプ42は一対の陸部40の他方にも形成することができる。両者が混在する場合、ラグ溝41及びサイプ42はタイヤ周方向に沿って交互に配置されていると良い。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)とする。
【0027】
ここで、荷重W40,W75,W100及びコーナリングパワーCP40,CP75,CP100は、0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足する。
【0028】
また、上記空気入りタイヤにおいて、
図2に示すように、トレッド部1に、2本のショルダー主溝12,12の内側に区画されるセンター領域Xcと、2本のショルダー主溝12,12の外側に区画されるショルダー領域Xsとを定義したとき、
図3に示すように、タイヤ子午線断面において、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLc(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出している。センター領域Xcの基準プロファイルラインPLcは、センター主溝11の両端点とショルダー主溝12の幅方向内側端点を通る曲線(単一の円弧)である。陸部20,30,40がセンター主溝11又はショルダー主溝12に沿って面取り部を有する場合、センター主溝11及びショルダー主溝12の端点は踏面上に形成される端点とする。
【0029】
上述した空気入りタイヤでは、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLcよりもタイヤ径方向外側に突出していることにより、トレッド部1のセンター領域Xcでの剛性を確保してセンター偏摩耗を抑制することができる。また、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の接地長が増加するため、低荷重域から高いコーナリングパワーを確保することができる。
【0030】
しかも、荷重W40,W75,W100及びコーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足することにより、高荷重域のコーナリングパワーの過度の増大を抑制することができる。これにより、ハンドル操舵初期から遅延なくタイヤが動き、荷重の増大に伴って適度なコーナリングパワーが発揮されるので、操縦安定性のリニアリティを改善することができる。即ち、一定の旋回操舵を入力した後、数秒後に遅れて急激にヨーが立ち上がることがないタイヤを提供することができる。特に、上記関係式は(R×D/2A)2の値により補正されているので、偏平比が低く、断面幅の呼びに対する外径の比が小さいタイヤほど高荷重側のコーナリングパワーの寄与を低下させる。そのため、タイヤサイズに応じて適度なコーナリングパワーを発揮することができる。
【0031】
ここで、(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]が0.05よりも小さいと低荷重域でのコーナリングパワーが過剰となり、逆に0.50よりも大きいと高荷重域でのコーナリングパワーが過剰となり、いずれの場合も、操縦安定性のリニアリティが損なわれることになる。特に、0.10≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.40の関係を満足することが望ましい。
【0032】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、センター領域Xcの基準プロファイルラインPLcに対するセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcは0.2mm≦Hc≦1.5mmの範囲にあると良い。センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の突出量Hcを上記範囲に設定することにより、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の接地長を適正化することができる。ここで、突出量Hcが0.2mmよりも小さいと接地長の増大効果が不十分になり、逆に1.5mmを超えると陸部20,30のエッジにおける接地長が短くなってしまう。なお、突出量Hcはセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLcから陸部20,30のプロファイルラインまでの最大寸法である。
【0033】
上記空気入りタイヤにおいて、センター領域Xcの基準プロファイルラインPLcに対するセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの平均値Hcaveは0.2mm≦Hcave≦0.8mmの範囲にあると良い。センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の突出量Hcの平均値Hcaveを上記範囲に設定することにより、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の接地長を適正化することができる。ここで、突出量Hcの平均値Hcaveが0.2mmよりも小さいと接地長の増大効果が不十分になり、逆に0.8mmを超えると陸部20,30のエッジにおける接地長が短くなってしまう。
【0034】
また、複数本の主溝10が少なくとも2本のセンター主溝11,11を含む場合、センター領域Xcにおいて、タイヤ赤道に最も近い陸部をセンター陸部20とし、それ以外の陸部をミドル陸部30としたとき、センター領域Xcの基準プロファイルラインPLcに対するセンター陸部20のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hccとセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLcに対するミドル陸部30のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量HcmとはHcc>Hcmの関係を満足すると良い。このようにタイヤ赤道に最も近いセンター陸部20の突出量Hccを最も大きくすることにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大し、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。ここで、0.2mm≦Hcc-Hcm≦0.6mmの関係を満足すると良い。両者の差を適正化することにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大することができる。
【0035】
図4はトレッド部の輪郭の変形例を示すものである。
図4において、トレッド部1には、タイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝12,12と、これらショルダー主溝12,12の間に位置する1本のセンター主溝11とを含む3本の主溝10が形成されている。このような3本主溝のトレッドパターンを採用することも可能である。
【0036】
図5はトレッド部の輪郭の他の変形例を示すものである。
図5では、タイヤ子午線断面において、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLc(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出していることに加えて、トレッド部1のショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLs(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出している。ショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsは、ショルダー主溝12の両端点とショルダー基準点Pを通る曲線(単一の円弧)である。ショルダー基準点Pはトレッド部1の展開幅TDWに対して0.88×TDWとなる位置(タイヤ中心位置CLから0.44TDWの位置)に設定される基準点である。展開幅TDWはトレッド部1を平坦に展開したときのタイヤ幅方向の寸法である。陸部30,40がショルダー主溝12に沿って面取り部を有する場合、ショルダー主溝12の端点は踏面上に形成される端点とする。このようにショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsよりもタイヤ径方向外側に突出する構造を採用した場合、低荷重域でのコーナリングパワーを増大することができる。
【0037】
図5において、センター領域Xcの基準プロファイルラインに対するセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hc
maxとショルダー領域Xsの基準プロファイルラインに対するショルダー領域Xsに含まれる各陸部40のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値Hs
maxはHc
max≧Hs
maxの関係を満足すると良い。このようにセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30の突出量Hcの最大値Hc
maxをショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の突出量Hsの最大値Hs
maxよりも大きくすることにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大し、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。ここで、0.2mm≦Hc
max-Hs
max≦0.6mmの関係を満足すると良い。両者の差を適正化することにより、低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大することができる。
【0038】
上述した種々の空気入りタイヤにおいて、センター領域Xcに含まれる陸部20,30はタイヤ周方向に実質的に連続するリブ構造を有することが好ましい。タイヤ周方向に実質的に連続するリブ構造とは、陸部20,30を横断するラグ溝及びサイプが形成されていない構造又は陸部20,30を横断するサイプのみが形成された構造である。これにより、トレッド部1のセンター領域Xcでの剛性を確保して低荷重域でのコーナリングパワーを効果的に増大すると共に、センター偏摩耗を抑制することができる。ここで、センター領域Xcに含まれる陸部20,30がタイヤ幅方向に延びる溝幅1.0mm超のラグ溝によってタイヤ周方向に分断されていると、センター領域Xcに含まれる陸部20,30の剛性を増大させる効果が低下する。
【0039】
図6~
図8はそれぞれ
図1の空気入りタイヤの接地形状(40%荷重、75%荷重、100%荷重)を示すものである。上記空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1(mm)とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1(mm)とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2(mm)とする。
【0040】
つまり、
図6に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の40%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLA1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWA1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLA2とする。外部接地長LA2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0041】
また、
図7に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の75%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLB1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWB1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WB1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLB2とする。外部接地長LB2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0042】
更に、
図8に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWC1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLC2とする。外部接地長LC2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0043】
上記空気入りタイヤにおいて、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2は以下の関係を満足すると良い。
1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25
1.00≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20
0.75≦LB2/LB1≦1.00
【0044】
このように接地形状の荷重依存性をコントロールすることにより、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。つまり、LA2/LA1は40%荷重時の矩形率を意味し、LB2/LB1は75%荷重時の矩形率を意味し、LC2/LC1は100%荷重時の矩形率を意味するものであるが、低荷重域の接地形状をコントロールするための指標として(LB2/LB1)/(LA2/LA1)の値を規定し、高荷重域の接地形状をコントロールするための指標として(LC2/LC1)/(LB2/LB1)の値を規定することにより、操縦安定性のリニアリティをより緻密に改善することができる。
【0045】
ここで、(LB2/LB1)/(LA2/LA1)又は(LC2/LC1)/(LB2/LB1)が上記範囲から外れると操縦安定性のリニアリティの改善効果が低下する。特に、1.03≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.15、1.02≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.10の関係を満足することが望ましい。
【0046】
また、摩耗寿命を延長するために、一般常用荷重とみなされる75%の荷重条件において、LB2/LB1を上記範囲に設定することが望ましい。LB2/LB1が0.75よりも小さいと摩耗寿命が短くなり、逆に1.00よりも大きいと操縦安定性のリニアリティのチューニングが難しくなる。特に、0.80≦LB2/LB1≦0.95の関係を満足することが望ましい。
【0047】
上述した空気入りタイヤにおいて、トレッド部1に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードCを含み、層間でベルトコードCが互いに交差する複数層のベルト層7が埋設される場合、
図9に示すように、ベルト層7のセンター部BcにおけるベルトコードCのタイヤ周方向に対する傾斜角度αは21°≦α≦30°の関係を満足すると良い。ベルト層7のセンター部BcにおけるベルトコードCの傾斜角度αを極度に低角度化しないことにより、ベルト層7に起因するトレッド部1の剛性の増大を抑えてコーナリングパワーの荷重依存性をコントロールし、操縦安定性のリニアリティを更に改善することができる。ここで、傾斜角度αが21°よりも小さいとベルト層7の剛性の増大により操縦安定性のリニアリティをコントロールすることが難しくなり、逆に30°よりも大きいとコーナリング特性等が低下するため実用的ではない。なお、ベルト層7のセンター部Bcは、タイヤ中心位置CLを中心とし、その幅Lcがベルト層7の全幅Lの1/2以上となる領域である。また、ベルト層7のセンター部Bcより外側のショルダー部BsにおけるベルトコードCのタイヤ周方向に対する傾斜角度βは特に限定されるものではないが、α>βの関係を満足すると良い。
【0048】
上述した空気入りタイヤは偏平比0.65以下の乗用車用タイヤとして好適である。操縦安定性のリニアリティが厳しく要求される乗用車用タイヤにおいて、耐偏摩耗性と操縦安定性とを両立することが可能になる。
【実施例】
【0049】
タイヤサイズ205/55R16 91Vで、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層のタイヤ径方向外側に2層のベルト層が埋設され、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインと一致させた従来例及び比較例1と、センター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出させた比較例2及び実施例1~4と、センター領域及びショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出させた実施例5~10のタイヤを製作した。
【0050】
従来例、比較例1,2及び実施例1~10において、ベルト層のセンター部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度α、ベルト層のショルダー部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度β、センター領域に含まれる各陸部の突出量Hcの平均値Hcave、センター陸部の突出量Hcc、ミドル陸部の突出量Hcm、Hcc-Hcm、ショルダー陸部の突出量Hs、Hcmax-Hsmax、センター領域におけるラグ溝の有無、低荷重域CP変動係数X=[(CP75-CP40)/(W75-W40)]、高荷重域CP変動係数Y=[(CP100-CP75)/(W100-W75)]、(R×D/2A)2×(Y/X)、(LB2/LB1)/(LA2/LA1)、(LC2/LC1)/(LB2/LB1)、LB2/LB1(矩形比)を表1のように設定した。
【0051】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐偏摩耗性(センター領域)、操縦安定性のリニアリティを評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0052】
耐偏摩耗性(センター領域):
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて摩擦エネルギー測定試験機に装着し、空気圧230kPa、負荷荷重4.5kNの条件下にて、トレッド部のセンター領域での平均摩擦エネルギーを測定した。測定値は、各領域で10mm間隔となるタイヤ幅方向2箇所×タイヤ周方向2箇所の計4点における摩擦エネルギーを測定し、これらを平均したものである。評価結果は、測定値の逆数を用い、各領域について従来例を100とする指数にて示した。指数値が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0053】
操縦安定性のリニアリティ:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて排気量2リットルの前輪駆動車に装着し、当該車両の指定空気圧を充填し、舗装路からなるテストコースにてパネラーによる走行試験を実施し、操縦安定性のリニアリティについて官能評価を行った。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。指数値が大きいほど操縦安定性のリニアリティが良好であることを意味する。
【0054】
【0055】
この表1から判るように、実施例1~10のタイヤは、従来例との対比において、良好な耐偏摩耗性を備えると同時に、操縦安定性のリニアリティが優れていた。比較例1,2のタイヤは、耐偏摩耗性及び操縦安定性のリニアリティの改善効果が必ずしも十分ではなかった。
【符号の説明】
【0056】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 センター主溝
12 ショルダー主溝
20,30,40 陸部
31 サイプ
32 周方向細溝
41 ラグ溝
42 サイプ