(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】車両検知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/486 20200101AFI20230530BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20230530BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20230530BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20230530BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G01S7/486
G01S17/10
B61L25/02 G
B61L23/00 Z
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2019173934
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】桂 正士
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071256(JP,A)
【文献】特開2012-046123(JP,A)
【文献】特開2017-056931(JP,A)
【文献】特開2014-196963(JP,A)
【文献】特開2017-219502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
G01B 11/00 - 11/30
B61B 1/02
B61L 23/00
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する列車の車両を検知する車両検知装置であって、
前記車両の通過位置に向けて、複数の投光方向にレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光し、受光した各反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光部と、
前記投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が、各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、
前記経過時間に比例させて算出した前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値を、予め取得された前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に置換する置換部と、
を備える車両検知装置。
【請求項2】
前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に対応する前記経過時間から所定時間後まで設定されている、請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記置換部は、前記投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が、各投光方向に応じて設定された前記所定範囲に入らなかった場合に、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値をなしとする、請求項1又は2に記載の車両検知装置。
【請求項4】
軌道を走行する列車の車両を検知する車両検知装置であって、
前記車両の通過位置に向けて、複数の投光方向にレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光し、受光した各反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光部と、
前記投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間に比例させて算出した各投光方向における前記車両までの距離が、前記各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、
前記経過時間に比例させて算出した前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値を、予め取得された前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に置換する置換部と、
を備える車両検知装置。
【請求項5】
前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両までの距離の真値から所定距離先まで設定されている、請求項4に記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記置換部は、前記受光部により出力された前記電気信号に基づいて算出した各投光方向における前記車両までの距離が、各投光方向に応じて設定された前記所定範囲に入らなかった場合に、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値をなしとする、請求項4又は5に記載の車両検知装置。
【請求項7】
前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両への前記レーザ光の入射角が大きいほど広く設定されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両検知装置。
【請求項8】
前記車両検知装置と前記軌道との位置関係、及び前記車両の形状寸法に基づいて、前記各投光方向における前記車両までの距離の前記真値を設定する真値設定部を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の車両検知装置。
【請求項9】
前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、前記列車の先頭が所定の停止位置に停止した状態での前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に等しいとみなせる状態が、所定時間を超えて継続した場合に、前記列車の先頭が前記停止位置に停止したと判定する判定部を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の車両検知装置。
【請求項10】
前記車両検知装置は、駅のホームに設置されており、
前記ホームには、各ドア部を有するホームドア装置が設置されており、
前記判定部により前記列車の先頭が前記停止位置に停止したと判定されたことを条件として、前記ホームドア装置により前記各ドア部を開かせるドア制御部を備える、請求項9に記載の車両検知装置。
【請求項11】
前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、所定の入線位置に対応する入線距離よりも短い距離を含まない状態から含む状態に変わった時に、前記列車が前記入線位置を越えたことを検知する入線検知部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の車両検知装置。
【請求項12】
前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、所定の出線位置に対応する出線距離よりも短い距離を含む状態から含まない状態に変わった時に、前記列車が前記出線位置を越えたことを検知する出線検知部を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の車両検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道を走行する列車の車両を検知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホームに停車する列車の各車両の前端及び後端に対応する位置にそれぞれ測距センサを配置し、測距センサにより検出された車両の前端の位置及び後端の位置に基づいて車両の長さを算出する装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の装置では、各車両の前端及び後端に対応する位置にそれぞれ測距センサを必要とする。これに対して、1つの測距センサがレーザ光を投光する範囲、すなわち1つの測距センサの検出範囲を広くすることにより、測距センサの数を減らすことが考えられる。しかし、その場合、車両へのレーザ光の入射角によっては入射方向へ戻る反射光の割合が小さくなり、反射光に基づいて車両までの距離を算出する精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、軌道を走行する列車の車両を検知する車両検知装置において、レーザ光の入射角によって車両までの距離を算出する精度が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
軌道を走行する列車の車両を検知する車両検知装置であって、
前記車両の通過位置に向けて、複数の投光方向にレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光し、受光した各反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光部と、
前記投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が、各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値を、予め取得された前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に置換する置換部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、車両検知装置は、軌道を走行する列車の車両を検知する。投光部は、車両の通過位置に向けて、複数の投光方向にレーザ光を投光する。受光部は、投光部により投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光し、受光した各反射光の強度に応じた電気信号を出力する。
【0008】
ここで、車両の表面とレーザ光とがなす角度が小さいほど、すなわち車両へのレーザ光の入射角(入射方向と境界面の法線とがなす角度)が大きいほど、入射方向へ戻る反射光の割合が小さくなる。このため、車両へのレーザ光の入射角が大きいほど、反射光の強度に応じた電気信号の大きさが小さくなる。その場合、電気信号に基づいて車両までの距離を算出する精度が低下するおそれがある。
【0009】
一方、車両検知装置と軌道との位置関係、及び車両の形状寸法は予め決まっている。このため、列車が軌道上に存在する場合、各投光方向において車両検知装置から車両までの距離の真値は予め決まっている。したがって、各投光方向における車両までの距離の実測値が真値から所定距離内である場合は、車両までの正しい距離は真値であると推定することができる。
【0010】
この点、置換部は、投光部によりレーザ光が投光されてから、受光部により出力された電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が、各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、各投光方向における車両までの距離の算出値を、予め取得された各投光方向における車両までの距離の真値に置換する。投光部によりレーザ光が投光されてから、受光部により出力された電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間は、車両検知装置から車両までの距離に対応している。このため、上記経過時間が各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、車両までの距離の実測値を真値に置換することにより、車両までの正しい距離を算出することができる。したがって、レーザ光の入射角によって車両までの距離を算出する精度が低下することを抑制することができる。
【0011】
車両へのレーザ光の入射角が大きいほど、反射光の強度に応じた電気信号が減衰する。その場合、受光部により出力された電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間は、電気信号の減衰がない場合の経過時間よりも長くなる。
【0012】
この点、第2の手段では、前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に対応する前記経過時間から所定時間後まで設定されている。したがって、各投光方向における車両までの距離の実測値が、真値から所定距離内でない場合に、車両までの距離の実測値を真値に誤って置換することを抑制することができる。
【0013】
各投光方向における車両までの距離の実測値が真値から所定距離内でない場合は、車両以外の物体までの距離が測定されている可能性が高い。また、投光部によりレーザ光が投光されてから、受光部により出力された電気信号の強度が閾値を超えなかった場合は、レーザ光の投光方向に車両が存在していない可能性が高い。
【0014】
この点、第3の手段では、前記置換部は、前記投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が、各投光方向に応じて設定された前記所定範囲に入らなかった場合に、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値をなしとする。したがって、車両検知装置により車両以外の物体までの距離が算出された場合や、レーザ光の投光方向に車両が存在しない場合に、車両までの距離が誤って算出されることを抑制することができる。
【0015】
第4の手段は、軌道を走行する列車の車両を検知する車両検知装置であって、
前記車両の通過位置に向けて、複数の投光方向にレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光し、受光した各反射光の強度に応じた電気信号を出力する受光部と、
前記受光部により出力された前記電気信号に基づいて算出した各投光方向における前記車両までの距離が、前記各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値を、予め取得された前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に置換する置換部と、
を備える。
【0016】
上記構成によれば、第1の手段における投光部により前記レーザ光が投光されてから、前記受光部により出力された前記電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間に代えて、受光部により出力された前記電気信号に基づいて算出した各投光方向における前記車両までの距離を用いている。そして、算出した各投光方向における前記車両までの距離が、前記各投光方向に応じて設定された所定範囲に入ったことを条件として、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値を、予め取得された前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に置換している。したがって、第1の手段に準じた作用効果を奏することができる。
【0017】
第5の手段では、前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両までの距離の真値から所定距離先まで設定されている。したがって、第2の手段に準じた作用効果を奏することができる。
【0018】
第6の手段では、前記置換部は、前記受光部により出力された前記電気信号に基づいて算出した各投光方向における前記車両までの距離が、各投光方向に応じて設定された前記所定範囲に入らなかった場合に、前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値をなしとする。したがって、第3の手段に準じた作用効果を奏することができる。
【0019】
車両へのレーザ光の入射角が大きいほど、反射光の強度に応じた電気信号の大きさが小さくなり、電気信号の強度が閾値を超えるまでの経過時間が長くなる。
【0020】
この点、第7の手段では、前記各投光方向に応じて設定された前記所定範囲は、前記各投光方向における前記車両への前記レーザ光の入射角が大きいほど広く設定されている。したがって、各投光方向における車両までの距離の実測値が、真値から所定距離内であることを正確に推定することができる。
【0021】
第8の手段では、前記車両検知装置と前記軌道との位置関係、及び前記車両の形状寸法に基づいて、前記各投光方向における前記車両までの距離の前記真値を設定する真値設定部を備える。こうした構成によれば、各投光方向における車両までの距離の真値を、ユーザがメジャー等を用いて実測する手間を省くことができるとともに、車両までの距離の真値を正確に設定することができる。
【0022】
駅のホームでは、軌道を走行する列車が所定の停止位置に停止したか否か判定する必要がある。
【0023】
この点、第9の手段では、前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、前記列車の先頭が所定の停止位置に停止した状態での前記各投光方向における前記車両までの距離の真値に等しいとみなせる状態が、所定時間を超えて継続した場合に、前記列車の先頭が前記停止位置に停止したと判定する判定部を備える。
【0024】
上記構成によれば、列車の先頭が所定の停止位置に停止した時に、置換部による置換後の各投光方向における車両までの距離の算出値が、列車の先頭が所定の停止位置に停止した状態での各投光方向における車両までの距離の真値に等しくなる(略等しくなる)ため、列車が停止位置に停止したことを判定することができる。さらに、車両検知装置は、レーザ光の入射角によって車両までの距離を算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車が停止位置に停止したことを正確に判定することができる。
【0025】
第10の手段では、前記車両検知装置は、駅のホームに設置されており、前記ホームには、各ドア部を有するホームドア装置が設置されており、前記判定部により前記列車の先頭が前記停止位置に停止したと判定されたことを条件として、前記ホームドア装置により前記各ドア部を開かせるドア制御部を備える。
【0026】
上記構成によれば、ドア制御部は、判定部により列車の先頭が停止位置に停止したと判定されたことを条件として、ホームドア装置により各ドア部を開かせる。このため、車両検知装置により列車の先頭が停止位置に停止したと判定された場合に、ホームドア装置の各ドア部が開かれる。また、車両検知装置により列車の先頭が停止位置に停止したと判定されていない場合には、ホームドア装置の各ドア部が開かれない。したがって、ホームドア装置の各ドア部を自動的に開閉させることができ、ホームの駅員の負担を軽減することができる。
【0027】
駅のホームでは、軌道を走行する列車が所定の入線位置を越えてホームに入ったことを検知する必要がある。そして、列車の先頭が入線位置を越えた時に、列車が入線位置を越えたこと(列車の入線)を検知することが望ましい。
【0028】
この点、第11の手段では、前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、所定の入線位置に対応する入線距離よりも短い距離を含まない状態から含む状態に変わった時に、前記列車が前記入線位置を越えたことを検知する入線検知部を備える。
【0029】
上記構成によれば、列車の先頭が所定の入線位置を越えた時に、列車の先頭に対応する投光方向における車両までの距離が入線距離よりも短くなるため、列車の先頭が入線位置を越えた時に、列車が入線位置を越えたことを検知することができる。さらに、車両検知装置は、レーザ光の入射角によって車両までの距離を算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車の入線を正確に判定することができる。
【0030】
駅のホームでは、軌道を走行する列車が所定の出線位置を越えてホームから出たことを検知する必要がある。そして、列車の後尾が出線位置を越えた時に、列車が出線位置を越えたこと(列車の出線)を検知することが望ましい。
【0031】
この点、第12の手段では、前記置換部による置換後の前記各投光方向における前記車両までの距離の算出値が、所定の出線位置に対応する出線距離よりも短い距離を含む状態から含まない状態に変わった時に、前記列車が前記出線位置を越えたことを検知する出線検知部を備える。
【0032】
上記構成によれば、列車の後尾が所定の出線位置を越えた時に、列車の後尾に対応する投光方向における車両までの距離が出線距離よりも長くなるため、列車の後尾が出線位置を越えた時に、列車が出線位置を越えたことを検知することができる。さらに、車両検知装置は、レーザ光の入射角によって車両までの距離を算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車の出線を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ホーム、軌道、列車、及び車両検知装置を示す模式図。
【
図3】各投光方向における各電気信号と検知閾値を示すグラフ。
【
図5】スロット設定及び列車の停止判定の手順を示すフローチャート。
【
図6】各投光方向における距離の真値と検知閾値を示すグラフ。
【
図7】各投光方向における距離の真値とスロットを示すグラフ。
【
図8】距離の実測値を真値に置換する態様を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、駅のホームにおいて列車の車両を検知する車両検知装置として具現化している。
【0035】
図1に示すように、列車60は複数の車両60a,60bを備えており、軌道50を走行する。軌道50は、2本のレール51等を備えている。列車60(物体)は、2本のレール51の上を走行する。
【0036】
矢印で示す列車60の進行方向を前方として、軌道50の右側方にはホーム71が設けられている。なお、進行方向と反対方向を後方とする。
【0037】
ホーム71には、ホーム71の縁に沿ってホームドア装置30が設けられている。ホームドア装置30は、本体部31とドア部32とを備えている。本体部31は、ドア部32を収納可能であり、ドア部32が出入する。ドア部32の位置は、ホーム71に停止した車両60a,60bの扉61,62の位置に対応している。すなわち、列車60の先頭65が所定の停止位置Lsに停止した状態で、各車両60a,60bの扉61,62に対向する位置に各ドア部32が設けられている。本体部31には、ドア部32を駆動する図示しない駆動部が収納されている。なお、停止位置Lsは、所定の幅を有する直線、すなわち所定の範囲であってもよい。
【0038】
ホームドア装置30の本体部31には、車両検知装置20が取り付けられている。車両検知装置20は、列車60の進行方向に対して垂直な方向が前方となるように、本体部31に取り付けられている。列車60の先頭65が所定の停止位置Lsに停止した状態で、列車60の進行方向において車両60aの中央に対向する位置に車両検知装置20が取り付けられている。なお、車両検知装置20は、ホーム71に設置されていてもよい。
【0039】
図2は、車両検知装置20によるレーザ光の投光態様を示す模式図である。
【0040】
車両検知装置20は、列車60の通過位置に向けて複数の投光方向(例えば角度θ1~θ5)にレーザ光を投光し、投光された各レーザ光が物体で反射された各反射光を受光する。角度θ1~θ5は、車両60aの側面(表面)とレーザ光とがなす角度であり、例えばθ1=90°,θ2=30°,θ3=20°,θ4=10°,θ5=5°である。そして、車両検知装置20は、受光した各反射光の強度に応じて出力した電気信号Sに基づいて、各投光方向における車両60aまでの距離D1~D5を算出する。なお、投光方向の数は、車両60aの長さ等に応じて任意に変更することができる。
【0041】
ここで、車両60aの側面とレーザ光とがなす角度が小さいほど、すなわち車両60aへのレーザ光の入射角θi(入射方向と側面の法線とがなす角度)が大きいほど、入射方向へ戻る反射光の割合が小さくなる。すなわち、車両60aへのレーザ光の入射角θiが大きいほど、レーザ光は車両60aの側面で鏡面反射し易くなる。このため、車両60aへのレーザ光の入射角θiが大きいほど、反射光の強度に応じて出力する電気信号Sの大きさが小さくなる。
【0042】
図3は、各投光方向(角度θ1~θ5)における各電気信号S1~S5と検知閾値Vtを示すグラフである。破線のグラフは、入射角θiが大きくなることによる減衰がない場合の電気信号Sを表している。
【0043】
角度θ1では、入射角θi=0°であるため、電気信号S1は減衰していない。レーザ光を投光してから経過時間t1において、電気信号S1の電圧が検知閾値Vtを超えている。車両検知装置20は、レーザ光を投光してから電気信号Snの電圧が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tに比例させて、車両検知装置20から物体までの距離Dmnを算出する。このため、電気信号Snの電圧が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tは、車両検知装置20から物体までの距離Dmnに対応している。
【0044】
角度θnが小さくなるほど(入射角θiが大きくなるほど)、電気信号Snは減衰している。このため、例えば角度θ4では、経過時間tr4において、減衰がない場合の電気信号Sr4の電圧が検知閾値Vtを超えている。これに対して、経過時間t4において、電気信号S4の電圧が検知閾値Vtを超えている。すなわち、経過時間t4は、経過時間tr4よりも時間Δtだけ長くなっている。したがって、角度θ4では、車両検知装置20から物体までの距離Dmnが、経過時間tr4に対応した真値よりも長く算出される。その結果、電気信号Snに基づいて車両60aまでの距離Dmnを算出する精度が低下する。
【0045】
図4は、車両検知装置20のブロック図である。車両検知装置20は、レーザダイオード21、フォトダイオード22、ミラー回転用モータ23、制御CPU24、アンプ26、比較部27、置換部28等を備えている。
【0046】
レーザダイオード21は、半導体に電流を流してレーザ発振させることで、レーザ光を発光する。レーザダイオード21により発光されたレーザ光は、図示しないミラーにより反射される。ミラーがミラー回転用モータ23により回転させられることで、レーザ光が複数の投光方向に投光される。ミラー回転用モータ23は、制御CPU24からの回転指令により制御され、制御CPU24へ回転角度(ひいては角度θn)を出力する。なお、レーザダイオード21、ミラー、及びミラー回転用モータ23により、投光部が構成されている。
【0047】
投光部は、前方の略190°の検出範囲をレーザ光で所定面に沿って、例えば33ms周期(所定周期)で走査することが可能である。本実施形態では、所定面は水平面である。レーザ光には、例えば赤外線や、可視光、紫外線等を利用することができる。投光部は、ミラーの所定点を中心として、例えば0.25°(所定角度)間隔でパルス状のレーザ光を投光することが可能である。本実施形態では、車両60aの通過位置に向けて、複数の投光方向(例えば上記角度θ1~θ5、-θ2~-θ5)にレーザ光を投光する。
【0048】
フォトダイオード22(受光部)は、レーザ光が物体で反射された反射光を受光し、受光した反射光の強度に応じた電気信号S(電圧信号)を出力する。フォトダイオード22は、例えばアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオード22は、投光部によりレーザ光が投光される度に、受光した反射光の強度に応じた電気信号Snを出力する。
【0049】
アンプ26(補正部)は、所定のゲインGnにより各電気信号Snを増幅(補正)して出力する。各電気信号SnがゲインGnにより増幅された信号が、各電気信号Srn(補正された電気信号)である。例えばゲインGnは、投光方向にかかわらず同一の一定値、すなわち複数の投光方向において同一の一定値である。
【0050】
比較部27は、各電気信号Srnと上記検知閾値Vtとを比較し、レーザ光を投光してから電気信号Srnの電圧が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnを出力する。置換部28は、経過時間tnを、車両検知装置20から物体までの距離Dmnに変換する。また、置換部28は、経過時間tnが所定範囲内であること(電気信号Srnが所定状態であること)を条件として、距離Dmn(距離の実測値)を距離Dn(距離の真値)に置換する。詳しくは、置換部28は、距離Dmnが経過時間tnに比例するように、経過時間tnを距離Dmnに変換する。置換部28が距離Dmnを距離Dnに置換する手順については後述する。置換部28は、距離Dmnを制御CPU24へ出力する。
【0051】
制御CPU24は、車両検知装置20と軌道50との位置関係、及び車両60aの形状寸法に基づいて、各投光方向(角度θn)における車両60aまでの距離Dn(距離の真値)を設定する真値設定部24aの機能を実現する。真値設定部24aは、距離Dnを置換部28へ出力する。制御CPU24は、置換部28により置換された各投光方向における車両60aまでの距離Dmnが、列車60の先頭65が所定の停止位置Lsに停止した状態での各投光方向における車両60aまでの距離の真値に等しいとみなせる状態が、所定時間を超えて継続した場合に、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定する判定部24bの機能を実現する。制御CPU24は、判定部24bにより列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定されたことを条件として、ホームドア装置30により各ドア部32を開かせるドア制御部24cの機能を実現する。これらの機能の詳細については後述する。
【0052】
図5は、スロットSLn設定及び列車60の停止判定の手順を示すフローチャートである。この一連の処理、車両検知装置20により実行される。
【0053】
まず、投光方向を表す角度θnの添字nをn=1とする(S11)。n=1のときにθnはθ1となり、n=kのときにθnはθkとなる。
【0054】
続いて、角度θnの距離の真値(距離Dn)を設定する(S12)。具体的には、
図2に示すように、車両検知装置20と軌道50との位置関係、及び車両60aの形状寸法は予め決まっている。このため、列車60がレール51(軌道50)上に存在する場合、各投光方向(角度θ1~θ5)において車両検知装置20から車両60aまでの距離の真値(距離Dn)は予め決まっている。そこで、車両検知装置20と軌道50との位置関係、及び車両60aの形状寸法を表す図面データ(データ)を入力する。入力した図面データに基づいて、角度θnにおける車両60aまでの距離Dnを算出する。そして、
図6に示すように、経過時間tと、距離と、信号電圧との関係を表す座標軸に、算出した距離Dnを設定する。
【0055】
続いて、nを1増加させ(S13)、nが最終番号を超えたか否か判定する(S14)。この判定において、nが最終番号を超えていないと判定した場合(S14:NO)、S12の処理から再度実行する。一方、nが最終番号を超えたと判定した場合(S14:YES)、S15の処理へ進む。
【0056】
S15の処理では、n=1とする。続いて、角度θnのスロットSLnを設定する(S16)。車両60aへのレーザ光の入射角θiが大きいほど、入射方向へ戻る反射光の割合が小さくなる度合、ひいては反射光の強度に応じた電気信号Sn(電気信号Srn)の大きさが小さくなる度合を、所定の計算式により算出することができる。そこで、所定の計算式に基づいて、
図3の経過時間tn(例えば経過時間t4)を含むように、
図7のスロットSLn(例えばSL4)を設定する。スロットSLn(所定範囲)は、角度θnにおける車両60aまでの距離の真値(距離Dn)に対応する経過時間trn(例えば経過時間tr4)から所定時間後まで設定する。スロットSLnは、角度θnにおける車両60aへのレーザ光の入射角θiが大きいほど広く設定する。なお、経過時間tnを算出する誤差を見込んで、スロットSLnを設定してもよい。
【0057】
続いて、nを1増加させ(S17)、nが最終番号を超えたか否か判定する(S18)。この判定において、nが最終番号を超えていないと判定した場合(S18:NO)、S16の処理から再度実行する。一方、nが最終番号を超えたと判定した場合(S18:YES)、S19の処理へ進む。
【0058】
S19の処理では、n=1とする。続いて、車両検知装置20により車両60aを検知する状態において、角度θnにレーザ光を投光して、受光した反射光に基づいて角度θnにおける車両60aまでの距離Dmnを算出する(S20)。具体的には、投光部は、角度θnにレーザ光を投光し、フォトダイオード22は反射光を受光して電気信号Snを出力する。アンプ26は、ゲインGnにより電気信号Snを増幅して、電気信号Srnを出力する。比較部27は、レーザ光を投光してから電気信号Srnの電圧が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnを出力する。置換部28は、経過時間tnを、車両検知装置20から車両60aまでの距離Dmnに変換する。
【0059】
続いて、経過時間tnがスロットSLn内である(スロットSLnに入った)か否か判定する(S21)。投光部により投光された各レーザ光が車両60aに照射される状態では、
図8に示すように、各経過時間tnが各スロットSLnに入る。一方、投光部により投光された各レーザ光が車両60aに照射されない状態では、各経過時間tnは各スロットSLnに入らない。
【0060】
S21の判定において、経過時間tnがスロットSLn内であると判定した場合(S21:YES)、
図8に示すように、距離Dmn(距離の実測値)を距離Dn(距離の真値)に置換する(S22)。一方、経過時間tnがスロットSLn内でないと判定した場合(S21:NO)、距離Dmnをなし(不算出)とする(S23)。
【0061】
続いて、nを1増加させ(S24)、nが最終番号を超えたか否か判定する(S25)。この判定において、nが最終番号を超えていないと判定した場合(S25:NO)、S20の処理から再度実行する。一方、nが最終番号を超えたと判定した場合(S25:YES)、S26の処理へ進む。
【0062】
S26の処理では、算出された各角度θnにおける車両60aまでの距離Dmnが、列車60の先頭65が所定の停止位置Lsに停止した状態での各角度θnにおける車両60aまでの距離Dnに等しいとみなせる状態(適正停止状態)が、所定時間を超えて継続した場合に、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定する。そして、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定したことを条件として、ホームドア装置30により各ドア部32を開かせる。一方、適正停止状態になっていない場合、及び適正停止状態が所定時間を超えて継続していない場合は、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止していないと判定する。そして、ホームドア装置30により各ドア部32を開かせない。
【0063】
続いて、停止判定を終了するか否か判定する(S27)。例えば、列車60の営業運転時間においては停止判定を継続し、営業運転時間が終了した場合に停止判定を終了する。この判定において、停止判定を終了しないと判定した場合(S27:NO)、S19の処理から再度実行する。一方、この判定において、停止判定を終了すると判定した場合(S27:YES)、この一連の処理を終了する(END)。
【0064】
なお、S11~S14の処理が真値設定部24aとしての処理に相当し、S19~S25の処理が置換部としての処理に相当し、S19~S26の処理が判定部24bとしての処理に相当し、S26の処理がドア制御部24cとしての処理に相当する。
【0065】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0066】
・置換部28は、投光部によりレーザ光が投光されてから、フォトダイオード22により出力された電気信号Snの強度が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnが、各投光方向に応じて設定されたスロットSLnに入ったことを条件として、各投光方向における車両60aまでの距離の算出値を、予め取得された各投光方向における車両60aまでの距離の真値(距離Dn)に置換する。投光部によりレーザ光が投光されてから、フォトダイオード22により出力された電気信号Snの強度が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnは、車両検知装置20から車両60aまでの距離に対応している。このため、上記経過時間tnが各投光方向に応じて設定されたスロットSLnに入ったことを条件として、車両60aまでの距離の実測値(距離Dmn)を真値に置換することにより、車両60aまでの正しい距離を算出することができる。したがって、レーザ光の入射角θiによって車両60aまでの距離Dmnを算出する精度が低下することを抑制することができる。
【0067】
・各投光方向に応じて設定されたスロットSLnは、各投光方向における車両60aまでの距離の真値に対応する経過時間trnから所定時間後まで設定されている。したがって、各投光方向における車両60aまでの距離の実測値が、真値から所定距離内でない場合に、車両60aまでの距離の実測値を真値に誤って置換することを抑制することができる。
【0068】
・各投光方向に応じて設定されたスロットSLnは、各投光方向における車両60aへのレーザ光の入射角θiが大きいほど広く設定されている。したがって、各投光方向における車両60aまでの距離の実測値が、真値から所定距離内であることを正確に推定することができる。
【0069】
・置換部28は、投光部によりレーザ光が投光されてから、フォトダイオード22により出力された電気信号Snの強度が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnが、各投光方向に応じて設定されたスロットSLnに入らなかった場合に、各投光方向における車両60aまでの距離Dmnの算出値をなしとする。したがって、車両検知装置20により車両60a以外の物体までの距離が算出された場合や、レーザ光の投光方向に車両60aが存在しない場合に、車両60aまでの距離Dmnが誤って算出されることを抑制することができる。
【0070】
・制御CPU24(真値設定部24a)は、車両検知装置20と軌道50との位置関係、及び車両60aの形状寸法に基づいて、各投光方向における車両60aまでの距離の真値を設定する。こうした構成によれば、各投光方向における車両60aまでの距離の真値を、ユーザがメジャー等を用いて実測する手間を省くことができるとともに、車両60aまでの距離の真値を正確に設定することができる。
【0071】
・制御CPU24(判定部24b)は、置換部28による置換後の各投光方向における車両60aまでの距離Dmnが、列車60の先頭65が所定の停止位置Lsに停止した状態での各投光方向における車両60aまでの距離の真値に等しいとみなせる状態が、所定時間を超えて継続した場合に、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定する。上記構成によれば、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止した時に、置換部28による置換後の各投光方向における車両60aまでの距離Dmnが、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止した状態での各投光方向における車両60aまでの距離の真値に等しくなるため、列車60が停止位置Lsに停止したことを判定することができる。さらに、車両検知装置20は、レーザ光の入射角θiによって車両60aまでの距離Dmnを算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車60が停止位置Lsに停止したことを正確に判定することができる。
【0072】
・制御CPU24(ドア制御部24c)は、列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定されたことを条件として、ホームドア装置30により各ドア部32を開かせる。このため、車両検知装置20により列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定された場合に、ホームドア装置30の各ドア部32が開かれる。また、車両検知装置20により列車60の先頭65が停止位置Lsに停止したと判定されていない場合には、ホームドア装置30の各ドア部32が開かれない。したがって、ホームドア装置30の各ドア部32を自動的に開閉させることができ、ホーム71の駅員の負担を軽減することができる。
【0073】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0074】
・
図9に示すように、駅のホーム71では、軌道50を走行する列車60が所定の入線位置Liを越えてホーム71に入ったことを検知する必要がある。そして、列車60の先頭65が入線位置Liを越えた時に、列車60が入線位置Liを越えたこと(列車60の入線)を検知することが望ましい。
【0075】
この点、車両検知装置20は、ホーム71において列車60の進行方向と反対方向の端部に設置されている。制御CPU24(入線検知部24d)は、置換部28による置換後の各投光方向における車両60aまでの距離Dmnが、所定の入線位置Liに対応する入線距離Diよりも短い距離Dmnを含まない状態から含む状態に変わった時に、列車60が入線位置Liを越えたことを検知する。入線距離Diは、入線位置Liにおける車両60aまでの距離の真値である。
【0076】
上記構成によれば、列車60の先頭65が入線位置Liを越えた時に、列車60の先頭65に対応する投光方向における車両60aまでの距離Dmnが入線距離Diよりも短くなるため、列車60の先頭65が入線位置Liを越えた時に、列車60が入線位置Liを越えたことを検知することができる。さらに、車両検知装置20は、レーザ光の入射角θiによって車両60aまでの距離Dmnを算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車60の入線を正確に判定することができる。
【0077】
・
図10に示すように、駅のホーム71では、軌道50を走行する列車60が所定の出線位置Loを越えてホーム71から出たことを検知する必要がある。そして、列車60の後尾66が出線位置Loを越えた時に、列車60が出線位置Loを越えたこと(列車60の出線)を検知することが望ましい。
【0078】
この点、車両検知装置20は、ホーム71において列車60の進行方向の端部に設置されている。制御CPU24(出線検知部24e)は、置換部28による置換後の各投光方向における車両60eまでの距離Dmnが、所定の出線位置Loに対応する出線距離Doよりも短い距離Dmnを含む状態から含まない状態に変わった時に、列車60が出線位置Loを越えたことを検知する。出線距離Doは、出線位置Loにおける車両60aまでの距離の真値である。
【0079】
上記構成によれば、列車60の後尾66が出線位置Loを越えた時に、列車60の後尾66に対応する投光方向における車両60eまでの距離Dmnが出線距離Doよりも長くなるため、列車60の後尾66が出線位置Loを越えた時に、列車60が出線位置Loを越えたことを検知することができる。さらに、車両検知装置20は、レーザ光の入射角θiによって車両60eまでの距離Dmnを算出する精度が低下することを抑制することができるため、列車60の出線を正確に判定することができる。
【0080】
・各投光方向(角度θn)において、レーザ光を投光してから電気信号Srnの電圧が検知閾値Vtを超えるまでの経過時間tnを実測し、実測した経過時間tnに誤差分を付加して各スロットSLn(所定範囲)を設定することもできる。なお、各スロットSLnは、車両60a以外の物体を誤検出することを抑制するために、必要最小限の範囲とすることが望ましい。
【0081】
・置換部28は、フォトダイオード22(受光部)により出力された電気信号Snに基づいて算出した各投光方向における車両60aまでの距離が、各投光方向に応じて設定されたスロットSLn(所定範囲)に入ったことを条件として、各投光方向における車両60aまでの距離の算出値(距離Dmn)を、予め取得された各投光方向における車両60aまでの距離の真値(距離Dn)に置換してもよい。こうした構成によっても、上記実施形態及びその変更例に準じた作用効果を奏することができる。
【0082】
その場合、各投光方向に応じたスロットSLnを、各投光方向における車両60aまでの距離の真値から所定距離先まで設定すればよい。また、置換部28は、フォトダイオード22により出力された電気信号Snに基づいて算出した各投光方向における車両60aまでの距離Dmnが、各投光方向に応じて設定されたスロットSLnに入らなかった場合に、各投光方向における車両60aまでの距離の算出値をなしとすればよい。
【0083】
・各投光方向(各角度θn)における車両60aまでの距離の真値(距離Dn)を、ユーザがメジャー等を用いて実測することもできる。
【0084】
・ホーム71に複数種類の列車60が入る場合は、列車60の種類に応じて各投光方向における車両60aまでの距離の真値を設定すればよい。
【符号の説明】
【0085】
20…車両検知装置、21…レーザダイオード、22…フォトダイオード(受光部)、24…制御CPU、24a…真値設定部、24b…判定部、24c…ドア制御部、24d…入線検知部、24e…出線検知部、27…比較部、28…置換部、30…ホームドア装置、32…ドア部、50…軌道、60…列車、60a…車両、60b…車両、60e…車両、71…ホーム。