(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】荷役車両の操作支援装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230530BHJP
B66F 9/075 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/075 J
(21)【出願番号】P 2019182116
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】井上 順治
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086959(JP,A)
【文献】特開2019-077529(JP,A)
【文献】特開2003-034496(JP,A)
【文献】特開2003-212489(JP,A)
【文献】特開2019-156641(JP,A)
【文献】特開2018-203397(JP,A)
【文献】特開2016-153335(JP,A)
【文献】特開2006-327433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0119084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動する荷役部を備えた荷役車両の操作支援装置であって、
前記荷役部の前方を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像したカメラ画像を表示する表示部と、
荷取り位置又は荷置き位置を目標位置として取得するとともに、前記表示部において前記カメラ画像に対し前記目標位置の下方に位置する床面にガイドを重畳して表示させるガイド重畳部と、を備え、
前記ガイドは、前記荷取り位置の中心又は前記荷置き位置の中心を通る垂直平面と床面との交線であることを特徴とす
る荷役車両の操作支援装置。
【請求項2】
上下動する荷役部を備えた荷役車両の操作支援装置であって、
前記荷役部の前方を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像したカメラ画像を表示する表示部と、
荷取り位置又は荷置き位置を目標位置として取得するとともに、前記表示部において前記カメラ画像に対し前記目標位置の下方に位置する床面にガイドを重畳して表示させるガイド重畳部と、を備え、
前記目標位置は、マップ情報から取得することを特徴とす
る荷役車両の操作支援装置。
【請求項3】
上下動する荷役部を備えた荷役車両の操作支援装置であって、
前記荷役部の前方を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像したカメラ画像を表示する表示部と、
荷取り位置又は荷置き位置を目標位置として取得するとともに、前記表示部において前記カメラ画像に対し前記目標位置の下方に位置する床面にガイドを重畳して表示させるガイド重畳部と、を備え、
前記目標位置は、前記カメラ画像から画像認識により取得することを特徴とす
る荷役車両の操作支援装置。
【請求項4】
前記目標位置は、操作者の指示により取得することを特徴とする請求項
1に記載の荷役車両の操作支援装置。
【請求項5】
前記カメラは機台に対して可動であり、
前記ガイド重畳部は、前記カメラの位置に応じて前記カメラ画像における前記ガイドの重畳位置を求めることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の荷役車両の操作支援装置。
【請求項6】
前記荷役車両の操作支援装置は、荷役車両用遠隔操作システムに用いられるものであって、
前記荷役車両用遠隔操作システムは、前記荷役車両と、遠隔操作装置とを備え、
前記荷役車両は、機台に荷役装置を備えるとともに車両通信部を有し、
前記遠隔操作装置は、前記車両通信部と無線通信を行う操作装置通信部を有し、前記荷役車両の走行及び前記荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の荷役車両の操作支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両の操作支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のロケーション指示装置、ロケーション管理システムにおいては、搬出入作業の目標ロケーションを速やかに且つ正確に把握できるようにすべく、カメラで撮影した移動体から視認可能な映像内に地図データから取得した目標位置を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ラック(特に高い段の棚)に対する荷取り作業や荷置き作業を行う際において、荷取り位置や荷置き位置はラックに車両が近づくにつれてカメラ画像から外れてしまい目標の荷取り位置や荷置き位置が見えなくなり、車両を目標の荷取り位置や荷置き位置に合わせて近づくこと(アプローチすること)が困難になる。
【0005】
本発明の目的は、車両が目標位置に近づいたときに目標位置をガイドすることができる荷役車両の操作支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための荷役車両の操作支援装置は、上下動する荷役部を備えた荷役車両の操作支援装置であって、前記荷役部の前方を撮像するカメラと、前記カメラにより撮像したカメラ画像を表示する表示部と、荷取り位置又は荷置き位置を目標位置として取得するとともに、前記表示部において前記カメラ画像に対し前記目標位置の下方に位置する床面にガイドを重畳して表示させるガイド重畳部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、ガイド重畳部により、表示部においてカメラ画像に対し目標位置の下方に位置する床面にガイドが重畳して表示されるので、車両が目標位置に近づいたときに目標位置をガイドすることができる。
【0008】
また、荷役車両の操作支援装置において、前記ガイドは、前記荷取り位置の中心又は前記荷置き位置の中心を通る垂直平面と床面との交線であるとよい。
また、荷役車両の操作支援装置において、前記目標位置は、マップ情報から取得するとよい。
【0009】
また、荷役車両の操作支援装置において、前記目標位置は、前記カメラ画像から画像認識により取得するとよい。
また、荷役車両の操作支援装置において、前記目標位置は、操作者の指示により取得するとよい。
【0010】
また、荷役車両の操作支援装置において、前記カメラは機台に対して可動であり、前記ガイド重畳部は、前記カメラの位置に応じて前記カメラ画像における前記ガイドの重畳位置を求めるとよい。
【0011】
また、荷役車両の操作支援装置において、前記荷役車両の操作支援装置は、荷役車両用遠隔操作システムに用いられるものであって、前記荷役車両用遠隔操作システムは、前記荷役車両と、遠隔操作装置とを備え、前記荷役車両は、機台に荷役装置を備えるとともに車両通信部を有し、前記遠隔操作装置は、前記車両通信部と無線通信を行う操作装置通信部を有し、前記荷役車両の走行及び前記荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両が目標位置に近づいたときに目標位置をガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フォークリフト用遠隔操作システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図3】フォークリフトの一部を破断して示す概略斜視図。
【
図5】作業場での棚及びフォークリフトを示す概略平面図。
【
図8】(a)はガイド線を説明するための棚、パレット等の平面図、(b)はガイド線を説明するための棚、パレット等の正面図、(c)はガイド線を説明するための棚、パレット等の右側面図。
【
図9】(a)は別例におけるガイド線を説明するための棚、パレット等の平面図、(b)は別例におけるガイド線を説明するための棚、パレット等の正面図、(c)は別例におけるガイド線を説明するための棚、パレット等の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態では、荷役車両の操作支援装置は、荷役車両用遠隔操作システムとしてのフォークリフト用遠隔操作システムに用いられるものである。フォークリフト用遠隔操作システムでは、作業管理システム用コントローラにおいて、マップ情報(地図情報)を用いて目標位置と車両の相対位置を検知しながら作業の管理が行われる。
【0015】
図1に示すように、フォークリフト用遠隔操作システム10は、荷役車両としてのリーチ式のフォークリフト20と、フォークリフト20の走行及び荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置40と、を備えている。フォークリフト20は作業場に配置される。そして、遠隔操作装置40を用いて操作室から作業場のフォークリフト20を遠隔操作することができるようになっている、
作業場においてラック等から離れた場所にフォークリフト20が位置している。この状態から、操作者はフォークリフト20を遠隔操作して、フォークリフト20をラック等に近づけてラックの棚に載ったパレットの穴にフォークを差し込む動作等を行わせる。このようなパレットによる荷取りや荷置きを行うことができる。
【0016】
図2、
図3に示すように、フォークリフト20は機台21を備える。機台21の前側には左右一対のリーチレグ22a,22bが配置され、リーチレグ22a,22bは前方に向かって延びている。詳しくは、リーチレグ22aは進行方向右側に設けられ、リーチレグ22bは進行方向左側に設けられている。リーチレグ22a,22bの前部には前輪23a,23bが配設されている。詳しくは、右前輪23aは進行方向右側のリーチレグ22aに設けられ、左前輪23bは進行方向左側のリーチレグ22bに設けられている。このように、機台21の前側に左右一対の前輪23a,23bが設けられている。
【0017】
機台21の後部には、後輪24とキャスタホイール(補助輪)25が配設されている。後輪24は機台21の左方に設けられており、キャスタホイール25は機台21の右方に設けられている。後輪24は、駆動輪及び操舵輪である。
【0018】
図2に示すように、フォークリフト20は、2つの前輪23a,23b、及び、1つの後輪24の3つの車輪で走行する。機台21には、フォークリフト20の駆動源となる走行モータ26と、走行モータ26の電力源となるバッテリ27が搭載されている。そして、後輪24が走行モータ26により回転駆動される。
【0019】
フォークリフト20は、機台21の前方に、荷役装置28を備える。荷役装置28は、リーチシリンダ(図示せず)の駆動により、各リーチレグ22a,22bに沿って前後動作するマスト29を備える。マスト29の前方には、左右一対のフォーク30a,30bがリフトブラケット31を介して設けられている。フォーク30a,30bは、前方、詳しくはティルト角が0の時に水平方向に延びる爪(以下、フォーク爪という)Nfを有する。フォーク30a,30bは、マスト29に沿って昇降する。即ち、フォークリフト20は、上下動する荷役部としてのフォーク爪Nfを備える。
【0020】
本実施形態のフォークリフト20は、運転者が着座して操作することが可能に構成されている。なお、運転席の無い無人フォークリフトであってもよい。
図3に示すように、フォークリフト20は、立席タイプの運転室32を機台21の後部に備える。運転室32の前方及び左方には、ステアリングテーブル33a,33bが設けられている。運転室32の前方に位置するステアリングテーブル33aには、フォークリフト20を走行動作させるディレクションレバー34、荷役装置28を動作させる複数の荷役レバー35が設けられている。ディレクションレバー34は、後輪24を回転駆動させて車両を走行させるべく操作される。運転室32の左方に位置するステアリングテーブル33bには、後輪24の操舵を行うハンドル36が設けられている。また、運転室32の床面にはブレーキペダル37が備えられている。
【0021】
機台21は2本のピラー38とヘッドガード39を有する。運転室32は、機台21において立設された2本のピラー38と、ピラー38の上端に固定されたヘッドガード39とにより囲まれている。ヘッドガード39は、水平方向に拡がる板状をなし、平面視において四角形をなしている。
【0022】
図1に示すように、フォークリフト20は、フォークリフト搭載機器50として、コントローラ51と、車両通信部としての無線ユニット52と、画像処理部53と、車両通信部としての無線機54と、2台のカメラ71,72を有する。
【0023】
遠隔操作装置40は、コントローラ61と、操作部62と、表示部(モニタ)63と、操作装置通信部としての無線機64,65を有する。遠隔操作装置40において、操作室側機器60として、コントローラ61と操作部62と表示部(モニタ)63を備える。
【0024】
遠隔操作装置40の無線機64は作業場に配置されている。また、遠隔操作装置40の無線機65は作業場に配置されている。操作室に配置されるコントローラ61は有線L1により作業場に配置した無線機64と接続されている。コントローラ61は有線L2により作業場に配置した無線機65と接続されている。また、コントローラ61は、有線L3により、作業管理システム全体を司る作業管理システム用コントローラ90と接続されている。
【0025】
作業場において、遠隔操作装置40の無線機64とフォークリフト搭載機器50の無線ユニット52とは双方向に無線通信できる。また、作業場において、フォークリフト搭載機器50の無線機54から遠隔操作装置40の無線機65に無線で通信できる。
【0026】
このようにして、フォークリフト20は無線ユニット52及び無線機54を有し、遠隔操作装置40は、無線ユニット52及び無線機54と無線通信を行う無線機64,65を有する。
【0027】
遠隔操作装置40のコントローラ61は操作部62及び表示部(モニタ)63と接続されている。操作部62は、操作者によりフォークリフト20を遠隔操作するためのものであり、操作者によるフォークリフト20の操作内容(リフト、リーチ、ティルトの操作指令値、及び、速度、加速度、操舵角の操作指令値等)がコントローラ61に送られる。コントローラ61は、リフト、リーチ、ティルトの操作指令値、及び、速度、加速度、操舵角の操作指令値等の車両制御信号を、無線機64を介してフォークリフト搭載機器50の無線ユニット52に無線送信する。
【0028】
フォークリフト搭載機器50において、コントローラ51と無線ユニット52と画像処理部53とは、それぞれ相互に通信(例えばCAN通信)可能に接続されている。コントローラ51は遠隔操作装置40側からの指示により走行系アクチュエータ(走行モータ26、図示しない操舵モータ等)及び荷役系アクチュエータ(図示しないリフトシリンダ、リーチシリンダ、ティルトシリンダ等)を駆動することができる。
【0029】
無線ユニット52は、フォークリフト20の車速等の車両情報、異常情報(障害物検知情報等)を、無線機64を介してコントローラ61に無線送信する。
図1において、コントローラ61は、無線機64、無線ユニット52及びコントローラ51を介してフォークリフト20の走行及び荷役装置28による荷役を遠隔操作することができるようになっている。つまり、
図3での操作部(ディレクションレバー34、荷役レバー35、ハンドル36、ブレーキペダル37等)に代わり遠隔操作装置40の操作部62により遠隔操作することができるようになっている。
【0030】
そして、遠隔操作装置40において、操作部62を用いて操作者が所望の操作を行うとコントローラ61により操作内容が無線機64を介してフォークリフト20側に送られる。フォークリフト20において、無線ユニット52で遠隔操作装置40からの操作内容が受信され、コントローラ51によりアクチュエータ部が駆動されて所望の動作が実行される。
【0031】
図2及び
図4に示すように、フォークリフト20においてリフトブラケット31の中央部にはカメラ71が設けられている。カメラ71は、荷役部としてのフォーク爪Nfの前方を撮像するためのものであり、前方下方を向くように取り付けられている。カメラ71は、走行中においてフォークリフト20の進行方向前方の床面を含む領域を撮像する。また、左のリーチレグ22bの上面にはカメラ72が前方を向くように取り付けられており、カメラ72は、フォークリフト20の左前方を撮像する。即ち、カメラ72は、レグ先の障害物を監視するためのカメラである。
【0032】
図1に示すように、フォークリフト20において、カメラ71,72により撮像された画像はコントローラ51により画像処理部53及び無線機54を介して遠隔操作装置40側に送られる。遠隔操作装置40において、無線機65でフォークリフト20からのカメラ画像が受信される。そして、コントローラ61は、カメラ71,72にて撮像されたカメラ画像を、遠隔操作装置40に設けられる表示部63に表示する。表示部63は、例えばディスクトップ型ディスプレイである。操作者は表示部63におけるカメラ画像を見ながら操作することになる。
【0033】
コントローラ61は作業管理システム用コントローラ90との通信により、作業管理システムのマップ情報から、荷物がある棚の位置情報、あるいは、荷物を置く棚の位置情報を得る。即ち、荷取り位置又は荷置き位置を目標位置としてマップ情報から取得する。荷取り位置は、棚の荷が置かれた区画の位置であり、荷置き位置は、棚の荷を置く区画の位置である。また、カメラ71は機台に対して可動な可動部であるリフトブラケット31に設けられているので、コントローラ61は、カメラ71の位置を特定するための情報としてリフト位置、リーチ位置を車両側から得る。
【0034】
図8(a),(b),(c)は、床の上に配したラックRa1、ラックRa1の棚Sh4に載せたパレットPa1、パレットPa1に載っている荷W1を平面、正面、右側面から見た図である。ガイド重畳部としてのコントローラ61は、
図8(a),(b),(c)に示すように、表示部63においてカメラ画像に対し荷役対象物としてのパレットPa1(荷W1)の位置、すなわち目標位置の下方に位置する床面80に、その上方に目標位置があることを示すガイドとしてのガイド線Lg1を重畳して表示させることができるようになっている。つまり、高さをもった目標位置に対応する床面80上に真っ直ぐに降ろした状態での位置を表すガイドをカメラ画像に重畳することができる。
【0035】
具体的には、作業管理システムは、どのラックのどの棚(何段目の棚)に何の荷物があるかをマップ情報として保持している。また、作業管理システムは、図示しない検出部によりフォークリフト20の位置を取得している。作業管理システムから特定の荷物を取りに行く指示が出された場合、コントローラ61は、作業管理システムからフォークリフト20の位置(自己位置)情報と荷物の位置(目標位置)情報を得る。また、カメラ71が可動部に有る場合、カメラ位置を特定するための情報(リフト位置、リーチ位置)を車両側から得る。そして、カメラ画像内の床面80に目標位置を示すガイド線Lg1を重畳する座標を算出してカメラ画像に重畳することができる。
【0036】
コントローラ61は、カメラ71の位置に応じてカメラ画像におけるガイド線Lg1の重畳位置を求める。そして、機台21に対し可動なカメラ71の実際の位置に応じてガイド線Lg1をカメラ画像に映し出された床面に正しく重畳させる。つまり、コントローラ61は、リフト位置、リーチ位置等の情報からカメラ画像内の床面に目標位置がその上方にあることを示すガイド線Lg1を重畳する座標を検出してカメラ画像にガイド線Lg1を重畳する。
【0037】
図8(a),(b),(c)に示すように、ガイド線Lg1は、荷取り位置の中心を通る垂直平面と床面との交線である。そして、コントローラ61は、荷物が置かれている区画の中心を通る垂直平面と床面(高さ0の水平面)との交線を求めて、ガイド線Lg1として画面上に描画する。
【0038】
次に、作用について説明する。
以下、表示部63の表示内容として、カメラ71,72のうちのカメラ71によるカメラ画像を用いて説明する。
【0039】
図5に示すように、作業場の平面視において通路の両側にラックRa1,Ra2が配置され、左右のラックRa1,Ra2に挟まれた通路は真っ直ぐに延びている。
図6に示すように、ラックRa1は多段構造をなし、1段目の棚Sh1、2段目の棚Sh2、3段目の棚Sh3、4段目の棚Sh4を有する。ラックRa1における高い段である4段目の棚Sh4において、パレットPa1上に荷W1が載っている。このパレットPa1(荷W1)が目標位置の荷役対象物となる。即ち、搬送対象の荷となる。
【0040】
荷取り位置から車両が遠い時には、
図6に示すように、表示部63において表示画面には荷取り位置でのパレットPa1及び荷W1は表示されている。
図6において仮想線(二点鎖線)にて荷取り位置の中心であるパレットPa1の前面での中心部から真下に垂下した線を示す。
【0041】
荷取り位置はラックRa1に車両が近づくにつれてカメラ画像から外れてしまいパレットPa1及び荷W1が見えなくなる。ここで、車両がラックRa1に対し所定距離(例えば5m)まで接近すると、コントローラ61により、
図7に示すように、目標位置の下方に位置する床面80にガイド線Lg1が、表示部63に表示されたカメラ画像に重畳表示される。
【0042】
ガイド線Lg1は、荷取り位置の中心であるラックRa1の前端から、通路の延びる方向に対し直交する方向、即ち、幅方向に延びている。フォークリフト20を、ガイド線Lg1上においてガイド線Lg1に沿う向きに旋回させればフォークリフト20をパレットPa1に正対させることができ、フォーク30a,30bの高さをパレットPa1の高さに合わせれば荷取り可能となる。
【0043】
操作者は
図7に示す表示画面を見ながらフォークリフト20を床面80に重畳表示されたガイド線Lg1上まで走行させた後にその場旋回させてフォークリフト20をパレットPa1に正対させる。その後、フォーク30a,30bを上動させてフォーク30a,30bの高さを調整した後にフォーク30a,30bを前方に移動させ、パレットPa1の穴H1a,H1b(
図8(b)参照)に差し込む。差し込みが終わったらパレットPa1及び荷W1を持ち上げる。さらに、車両を後方に移動させるとともに車両をパレットPa1及び荷W1と共に所望の場所に移動させる。
【0044】
このように、目標となるパレットPa1がカメラ画像内から外れて見えなくなっても、操作者は床面のガイド線Lg1を頼りに目標のパレットPa1に近づくこと(アプローチすること)ができる。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上下動する荷役部としてのフォーク爪Nfを備えた荷役車両の操作支援装置の構成として、荷役部としてのフォーク爪Nfの前方を撮像するカメラ71と、カメラ71により撮像したカメラ画像を表示する表示部63を備える。さらに、荷取り位置を目標位置として取得するとともに、表示部63においてカメラ画像に対し目標位置の下方に位置する床面80にガイドとしてのガイド線Lg1を重畳して表示させるガイド重畳部としてのコントローラ61を備える。
【0046】
これによれば、ラックRa1(特に高い段の棚Sh4)に対する荷取り作業を行う際において、荷取り位置はラックRa1に車両が近づくにつれてカメラ画像から外れてしまい目標の荷取り位置が見えなくなる。ガイド表示重畳部としてのコントローラ61により、表示部63においてカメラ画像に対し目標位置の下方に位置する床面にガイド線Lg1が重畳して表示される。よって、目標に合わせて対象物としてのパレットPa1に近づくこと(アプローチすること)ができる。このように、車両が目標位置に近づいたときに目標位置をガイドすることができる。
【0047】
つまり、目標の位置(パレットPa1の位置)が高くカメラ画像で見えなくなっても床面でのガイド線で位置を示すことにより操作者は床面に示された目標位置を頼りに対象物に近づくこと(アプローチすること)ができる。
【0048】
(2)ガイドとしてのガイド線Lg1は、荷取り位置の中心を通る垂直平面と床面との交線であるので、分かりやすい。
(3)目標位置としてのパレットPa1(荷W1)の位置は、マップ情報から取得するので、実用的である。
【0049】
(4)カメラ71は機台21に対して可動であり、ガイド重畳部としてのコントローラ61は、カメラ71の位置に応じてカメラ画像におけるガイドとしてのガイド線Lg1の重畳位置を求めるので、カメラ71が動いてもガイド表示することができる。
【0050】
(5)荷役車両の操作支援装置は、荷役車両用遠隔操作システムとしてのフォークリフト用遠隔操作システム10に用いられるものであって、フォークリフト用遠隔操作システム10は、荷役車両としてのフォークリフト20と、遠隔操作装置40とを備える。フォークリフト20は、機台21に荷役装置28を備えるとともに車両通信部としての無線ユニット52及び無線機54を有する。また、遠隔操作装置40は、無線ユニット52及び無線機54と無線通信を行う操作装置通信部としての無線機64,65を有し、フォークリフト20の走行及び荷役装置28による荷役を遠隔操作するのに用いられる。よって、カメラの画像のみにしたがって遠隔操作する際に、車両が目標位置に近づいたときに目標位置をガイドすることができる。
【0051】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 目標位置は、カメラ画像から画像認識により取得するようにしてもよい。つまり、目標の位置は、目標位置の認識(パレット認識など)、計測から得られた情報でもよい。より詳しくは、複数のパレットを認識した場合にはその中から目標を特定する。画像認識は、
図1においてコントローラ61が行っても画像処理部53が行ってもよい。
【0052】
パレットの画像認識から目標位置を得る場合、認識したパレットの座標からその中心を通る垂直平面と床面との交線を求めて、ガイド線として描画するようにしてもよい。
また、ガイドとしてのガイド線Lg1は、荷取り位置の中心であったが、これに限るものではなく、例えば、
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)に示すガイド線Lg10,Lg11,Lg12,Lg13であってもよい。
【0053】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)において、ガイドとしてのガイド線Lg10,Lg11,Lg12,Lg13はパレットPa1の穴(パレット穴H1a,H1b)の左右の端に対応するものである。詳しくは、ガイド線Lg10はパレット穴H1aの右端に対応し、ガイド線Lg11はパレット穴H1aの左端に対応し、ガイド線Lg12はパレット穴H1bの右端に対応し、ガイド線Lg13はパレット穴H1bの左端に対応している。そして、目標位置の下方に位置する床面80にガイド線Lg10,Lg11,Lg12,Lg13が表示部63に表示されたカメラ画像に重畳表示される。
【0054】
なお、
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)においてパレット穴H1a,H1bの中心をガイドとしてもよい。
荷取り位置は棚の荷が置かれた区画の位置であったが、画像認識を用いる場合は、荷取り位置はパレット又は荷物の位置である。
【0055】
○ 目標位置は、操作者(作業者)の指示により取得するようにしてもよい。つまり、床面の表示が表示部63において見えている段階で、カメラ画像上の床面に操作者が入力部100(
図1において仮想線で示す)を用いてマーキングした場所でもよい。
【0056】
荷取り位置は棚の荷が置かれた区画の位置であったが、作業者が指定する場合は、荷取り位置はパレット又は荷物の位置である。
○ カメラの設置場所、台数は問わない。
【0057】
○ 荷取り作業を行う場合について説明したが、荷置き作業を行う場合でも同様であり、荷置き作業の場合は荷を置く位置(荷置き位置)が目標位置となる。
ガイド重畳部としてのコントローラ61は、荷取り位置又は荷置き位置を目標位置として取得するものであればよい。
【0058】
荷置き作業を行う場合には、ガイドは、荷置き位置の中心を通る垂直平面と床面との交線であると、分かりやすい。
なお、
図4においてはカメラ71は荷取りを考慮してリフトブラケット31の中央部に設けたが、荷置き作業を行う場合、車両前方を撮像しにくくなるようであればリフトブラケット31の左右方向の端部にカメラを設けてもよい。
【0059】
○ ガイド線の重畳は車両と目標との距離が所定値になったときに行ったが、これに限らない。例えば、ガイド線の重畳は車両と目標との距離に無関係に常に行ってもよい。
○ ガイドは直線でなくてもよい。例えば、図形(円、三角形など)でもよい。
【0060】
○ 荷役車両の操作支援装置はフォークリフト用遠隔操作システムに用いられるものであったが、これに限るものではない。例えば、有人フォークリフトに用いてもよい。つまり、カメラを搭載した無人フォークリフトと、表示部を有する遠隔操作装置とを備えるではなく、例えば、カメラと表示部を搭載した有人フォークリフトに適用してもよい。
【0061】
○ フォークリフトは、カウンタ式フォークリフトでもよい。
○ 荷役車両はフォークリフトであったが、フォークリフト以外の上下動する荷役部を備えた荷役車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…フォークリフト用遠隔操作システム、20…フォークリフト、21…機台、28…荷役装置、40…遠隔操作装置、52…無線ユニット、54…無線機、61…コントローラ、63…表示部、64,65…無線機、71…カメラ、80…床面、Lg1…ガイド線、Lg10,Lg11,Lg12,Lg13…ガイド線、Nf…フォーク爪。