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特許7287270研磨部材固定用粘着剤、および粘着シート
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  • 特許-研磨部材固定用粘着剤、および粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】研磨部材固定用粘着剤、および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20230530BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230530BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20230530BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20230530BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/02
C09J133/14
C09J175/04
C09J163/00
C09J11/08
C09J7/38
B24B37/30 B
B24B37/12 D
H01L21/304 622F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019236276
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105098
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中尾 龍也
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-359768(JP,A)
【文献】特開2014-019801(JP,A)
【文献】特開2017-008327(JP,A)
【文献】特開2010-065095(JP,A)
【文献】特開2015-117343(JP,A)
【文献】特開2017-105931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C09K 3/14
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
B32B 1/00 - 43/00
G02B 5/30
C08G 59/00 - 59/72
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー、硬化剤、および粘着付与樹脂を含む研磨部材固定用粘着剤であって、
前記アクリル系ポリマーは、下記モノマー(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中にモノマー(a-1)を63~90質量%、モノマー(a-2)を3~30質量%、モノマー(a-3)を2~6質量%、およびモノマー(a-4)を0.3~1質量%含み、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、110万~230万であり、
前記硬化剤は、イソシアネート化合物およびエポキシ化合物の少なくともいずれかを含み、
前記粘着付与樹脂は、軟化点が125℃以上であることを特徴とする研磨部材固定用粘着剤。

(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-3)カルボキシル基を有するモノマー
(a-4)水酸基を有するモノマー
【請求項2】
周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)が、3E+4Pa~2E+5Paであり、
かつ、周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)と、200℃での貯蔵弾性率(X2)の比[(X1)/(X2)]が、1~3であることを特徴とする請求項1記載の研磨部材固定用粘着剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の研磨部材固定用粘着剤により形成されてなる粘着剤層を備える粘着シート。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨部材を研磨機に固定する用途に好適に用いることができる研磨部材固定用の粘着剤および、粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ガラス、ハードディスク用基板、光学レンズ、シリコンウェハ、集積回路等の被研磨材は、研磨パッド等を用いて研磨されており、研磨パッドの固定には、例えば、研磨パッドに粘着シートを貼り合わせた後、粘着シート付きの研磨パッドを、研磨装置の定盤(研磨パッドを固定する治具)に貼り合せるなどして使用されている。研磨工程では粘着シートの粘着剤に対して強い剪断力がかかり、さらに研磨中の摩擦熱などにより高温となることがある。近年、研磨パッドの長寿命化に伴い研磨工程時間も伸びており、また硬度の高い被研磨材の研磨に対する要求も増していることから、当該粘着剤には剪断力に耐えうる高い凝集力と、高温に耐えうる耐熱性が同時に求められる(以下、耐熱保持力とも省略)。また、研磨工程において、酸性、またはアルカリ性を示すスラリーや酸化剤を含むスラリーを用いる場合に、耐酸性、耐アルカリ性、または耐酸化性等の薬液耐性が必要であり、さらに摩擦熱等に耐えるため、これらに対する薬品耐熱性も求められる。
この様に、研磨部材固定用粘着剤には多種の性能が求められている。
【0003】
特許文献1では、ガラス転移温度(Tg)が-10~20℃である特定の(メタ)アクリル酸エステル共重合体と架橋剤を含有する研磨部材固定用粘着剤が開示されている。
また、特許文献2にはアクリル酸モノマーの総量100重量部に対する水酸基含有モノマーの含有量が0.1重量部以上、0.3重量部以下であるアクリル共重合体を含み、ゲル分率が53重量%以上である粘着剤が開示されている。
しかしこれら従来の研磨部材固定用粘着剤では、上記の要求、特に酸化性スラリー耐性を満たすことはできていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-150494号公報
【文献】特開2017-8327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、研磨パッドまたはバックパッド(被研磨材を保持する部材)といった研磨部材に対し、従来より優れた粘着力および剪断力を発現することを可能とし、長期間の使用や高温環境下、いかなる研磨対象でもずれ、浮きおよび剥がれが生じることなく、さらに耐アルカリ性や耐酸化性にも優れた研磨部材固定用粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る研磨部材固定用粘着剤は、アクリル系ポリマー、硬化剤、および粘着付与樹脂を含む研磨部材固定用粘着剤であって、前記アクリル系ポリマーは、下記モノマー(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中にモノマー(a-1)を63~90質量%、モノマー(a-2)を3~30質量%、モノマー(a-3)を2~6質量%、およびモノマー(a-4)を0.3~1質量%含み、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、110万~230万であり、前記硬化剤は、イソシアネート化合物およびエポキシ化合物の少なくともいずれかを含み、前記粘着付与樹脂は、軟化点が125℃以上である。

(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-3)カルボキシル基を有するモノマー
(a-4)水酸基を有するモノマー
【発明の効果】
【0007】
本発明により、研磨パッドまたはバックパッドといった研磨部材を研磨装置へ固定する場合に、研磨部材および研磨装置に対する粘着力が良好で、耐熱性のみならず薬液耐性が優れた研磨部材固定用粘着剤および粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の研磨部材固定用粘着シートの使用例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0010】
また、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリル酸またはメタクリル酸」を表すものとする。また、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」とは、「アクリル酸エステルモノマー」と「メタクリル酸エステルモノマー」の総称を指す。モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体を意味する。
【0011】
なお、本明細書では(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(a-3)カルボキシル基を有するモノマー、および(a-4)水酸基を有するモノマーを、それぞれモノマー(a-1)、モノマー(a-2)、モノマー(a-3)、およびモノマー(a-4)と略記することがある。
【0012】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0013】
《研磨部材固定用粘着剤》
本発明において、研磨部材固定用粘着剤(単に「粘着剤」と略記することがある)とは、研磨部材に粘着シートを貼り合わせ一体化された、研磨部材積層体を研磨機の定盤に貼り合わせるために用いる粘着シートを形成することが出来る粘着剤のことである。
研磨部材とは、研磨パッドまたはバックパッド等である。
本発明の研磨部材固定用粘着剤は、下記アクリル系ポリマーと、イソシアネート化合物およびエポキシ化合物の少なくともいずれかを含む硬化剤と、軟化点が125℃以上の粘着付与樹脂を含む。
アクリル系ポリマーは、モノマー(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中にモノマー(a-1)を63~90質量%、モノマー(a-2)を3~30質量%、モノマー(a-3)を2~6質量%、およびモノマー(a-4)を0.3~1質量%含み、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、110万~230万である。
このような研磨部材固定用粘着剤であることにより、研磨部材を研磨装置へ固定する場合に、研磨部材および研磨装置に対する粘着力が良好で、耐熱性のみならず薬液耐性が優れた研磨積層部材を形成することができる。
(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-3)カルボキシル基を有するモノマー
(a-4)水酸基を有するモノマー
【0014】
[80℃での貯蔵弾性率]
粘着剤の周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)は、3E+4~2E+5Paであることが好ましく、5E+4~1.5E+5Paであることがより好ましい。粘着剤の80℃での貯蔵弾性率が、3E+4Pa~2E+5MPaであると、基材や研磨部材との密着性を向上させつつ薬液耐性や耐熱保持力を向上させることができる。また80℃での貯蔵弾性率が3E+4Pa未満であると、研磨部材への密着性は問題ないが、薬液耐性が低下する場合があり、2E+5Paより大きくなると薬液耐性は問題ないが、流動性が低くなるため研磨部材への密着性が不十分となる場合がある。
【0015】
[粘弾性比]
本発明の粘着剤は、周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)と200℃での貯蔵弾性率(X2)との比[(X1)/(X2)]が、1~3であることが好ましく、1.1~2.5であることが好ましく、1.1~2であることがより好ましい。粘着剤の貯蔵弾性率比[(X1)/(X2)]が、1~3であると、基材や研磨部材との密着性を向上させつつ薬液耐性や耐熱保持力をより向上させることができる。
【0016】
なかでも、周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)が、3E+4Pa~2E+5Paであり、かつ、周波数1Hz、80℃での貯蔵弾性率(X1)と、200℃での貯蔵弾性率(X2)の比[(X1)/(X2)]が、1~3である場合、薬液耐性と耐熱保持力の両立が可能となり、好ましい。
好ましくは[(X1)/(X2)]が、1~2.5である。
【0017】
<アクリル系ポリマー>
本明細書におけるアクリル系ポリマーは、モノマー(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中にモノマー(a-1)を63~90質量%、モノマー(a-2)を3~30質量%、モノマー(a-3)を2~6質量%、およびモノマー(a-4)を0.3~1質量%含み、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、110万~230万である。

(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-3)カルボキシル基を有するモノマー
(a-4)水酸基を有するモノマー
【0018】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、110万~230万であって、140万~230万であることが好ましく、150~230万であることがより好ましい。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が110万~230万であると基材や研磨部材との密着性を向上させつつ薬液耐性も向上させることができる。また重量平均分子量が110万以上であると薬液耐性が向上し、230万以下では流動性が高まり研磨部材への密着性が向上する。
【0019】
[モノマー(a-1)]
モノマー(a-1)は、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであり、アクリル系ポリマーに粘着力を付与するために用いられる。
モノマー(a-1)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に63~90質量%であり、65~85質量%が好ましく、70~80質量%がより好ましい。63質量%以上とすることで研磨部材への密着性が向上し、特に摩擦熱によって温度上昇したスラリー等の薬品耐熱性が向上する。90質量%以下とすることで研磨部材への粘着剤の耐熱保持力を好適にできる。
【0020】
モノマー(a-1)は、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、およびメタクリル酸t-ブチル等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチルが、研磨部材への密着性が向上し、特に薬品耐熱性評価における密着性の向上に良好である。
【0021】
[モノマー(a-2)]
モノマー(a-2)は、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであり、アクリル系ポリマーに凝集力を付与して粘着剤の貯蔵弾性率を上昇させ、耐熱保持力および薬液耐性を向上させる機能を有する。
モノマー(a-2)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に3~30質量%であり、10~26質量%が好ましく、14~26質量%がより好ましい。3~30質量%使用することで、を使用することで上記と同様に粘着剤の貯蔵弾性率を適度に高め耐熱保持力および薬液耐性を向上する。
【0022】
モノマー(a-2)は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましく、耐熱保持力および薬液耐性の両立が容易となる。
【0023】
[モノマー(a-3)]
モノマー(a-3)は、カルボキシル基を有するモノマーであり、粘着力の付与および硬化剤との架橋反応架橋点として機能する。
モノマー(a-3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に2~6質量%であり、3~5質量%がより好ましい。2質量%以上であることで、粘着力が向上する。一方6質量%以下とすることで、特にアルカリ性の薬液耐性が向上する。つまり、カルボキシル基は極性が高いために粘着力付与には欠くことはできないが、一方でアルカリ性薬液耐性に関してはカルボキシル基とアルカリイオン成分との反応のために粘着力が低下することがあるため、この配合率であることが重要である。
【0024】
モノマー(a-3)は、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p-カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(エチレンオキサイド付加モル数:(2~18)フタル酸アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β-カルボキシエチル、イタコン酸等が挙げられる。
これらの中でも、高分子量化のためには(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0025】
[モノマー(a-4)]
モノマー(a-4)は、水酸基を有するモノマーであり、粘着力の付与および硬化剤との架橋反応の架橋点として機能する。
モノマー(a-4)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に0.3~1質量%であり、0.3~0.7質量%がより好ましい。0.3~1質量%使用することで、所望の架橋密度が得やすく、研磨部材への密着性が向上する。
【0026】
モノマー(a-4)は、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性向上のためには(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。
【0027】
[その他モノマー]
本発明では、粘着剤の研磨部材への密着性や凝集力を損なわない範囲で、モノマー(a-1)、モノマー(a-2)、モノマー(a-3)、およびモノマー(a-4)以外の、その他モノマーを使用することもできる。
その他モノマーは、具体的には、例えばアミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、およびアミノ基を有するモノマー等の反応性官能基を有するモノマー、モノマー(a-1)、モノマー(a-2)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであるアルキル基の炭素数1、2および4以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、芳香環を有するモノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーおよびその他ビニルモノマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
アミド結合を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、およびアクリロイルモルホリン等の複素環含有化合物等が挙げられる。
【0029】
エポキシ基を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、および(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0030】
アミノ基を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0031】
アミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中、それぞれ0.1~1質量%であることが好ましい。
【0032】
モノマー(a-1)、モノマー(a-2)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、および(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が挙げられる。
【0033】
モノマー(a-1)、モノマー(a-2)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中に0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0034】
芳香環を有するモノマーは、例えばアクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、および(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール等が挙げられる。
【0035】
芳香環を有するモノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中、0~5質量%であることが好ましい。
【0036】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーは、例えばアクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0037】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中に0~5質量%であることが好ましい。
【0038】
その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0039】
その他ビニルモノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中に0~5質量%であることが好ましい。
【0040】
[アクリル系ポリマーの製造方法]
アクリル系ポリマーは、モノマー混合物に重合開始剤を加え、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択して行うことができる。これらの中でも、溶液重合が、アクリル系ポリマーの重量平均分子量および分子量分散度の調整が容易である点から好ましい。
【0041】
前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましく、溶剤は単独また2種類以上を併用でき、酢酸エチル、トルエン、アセトンの混合溶剤がより好ましい。
【0042】
前記溶液重合は、モノマー混合物100質量部に対し、重合開始剤を0.001~1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃~90℃程度の温度で6時間~20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用してアクリル系ポリマーの重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0043】
前記連鎖移動剤は、例えばn-ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、グリシジルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。
連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~1質量部程度を使用できる。
【0044】
前記重合開始剤は、アゾ系化合物および有機過酸化物が一般的である。
【0045】
アゾ系化合物は、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)等が挙げられる。
【0046】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
重合開始剤は単独または2種以上を併用できる。
【0047】
<硬化剤>
本発明において硬化剤は、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物の少なくともいずれかを使用することが重要であり、エポキシ化合物を単独、またはエポキシ化合物とイソシアネート化合物を併用することが好ましい。エポキシ化合物で硬化させることにより、耐熱保持力を向上させることができ、イソシアネート化合物で硬化させることにより、水酸基を有するモノマー(a-4)との反応によってウレタン結合を生成し極性が増大することで、研磨部材に対する粘着力が向上する。
エポキシ化合物とイソシアネート化合物を併用する場合、好ましい含有比率は、エポキシ化合物:イソシアネート化合物=0.01:1~0.1:1である。
【0048】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。中でも、窒素原子を分子内に有するエポキシ化合物が反応性の観点で好ましい。
エポキシ化合物は単独または2種以上を併用できる。
【0049】
エポキシ化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01~1質量部を含むことが好ましい。0.01~1質量部を含むと粘着剤の凝集力と研磨部材への密着性のバランスを取ることが容易になる。
【0050】
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
イソシアネート化合物は単独または2種以上を併用できる。
これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が粘着物性を容易に調整できるため好ましい。
【0051】
イソシアネート化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5~15質量部を含むことが好ましく、1~10質量部がより好ましい。0.5~15質量部であることで、粘着剤層の凝集力と研磨部材への密着性のバランスを取ることがより容易になる。
【0052】
<粘着付与樹脂>
本発明の粘着剤は、軟化点が125℃以上の粘着付与樹脂を含む。軟化点が125℃以上であることで、研磨部材への密着性に加えて、耐熱保持力を向上することができる。上記の観点から、軟化点は140℃以上がより好ましい。好ましくは、軟化点300℃以下である。
本願における軟化点の測定は、例えば示差走査熱量測定(DSC)装置を使用し、JIS K7121-1987に規定された方法で求めることができる。
昇温速度10℃/分の場合の、融解変極点の温度である。
【0053】
粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対し、5~40質量部である。上記範囲とすることで、研磨部材に対する密着性と凝集力のバランスが得られる。上記の観点から、10~30質量部がより好ましい。
【0054】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂などのロジン系樹脂;、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂などのテルペン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂、石油系樹脂またはその共重合体などが挙げられるが、これらに限定するものではなく、このような粘着付与樹脂は、求められる性能を損なわない範囲で必要に応じて使用することができ、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのなかでも、アクリル系ポリマーへの相溶性に優れ、粘着剤の凝集力低下を引き起こすことなく、熱ラミネートや熱プレスした際、研磨部材等への密着性がより向上させることができるため、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0055】
テルペンフェノール樹脂として具体的には、例えば、YSポリスターU130(ヤスハラケミカル社製、軟化点130±5℃)、YSポリスターT130(ヤスハラケミカル社製、軟化点130±5℃)、YSポリスターTH130(ヤスハラケミカル社製、軟化点130±5℃)、YSポリスターK140(ヤスハラケミカル社製、軟化点140±5℃)、YSポリスターT145(ヤスハラケミカル社製、軟化点145±5℃)、YSポリスターS145(ヤスハラケミカル社製、軟化点145±5℃)、YSポリスターT160(ヤスハラケミカル社製、軟化点160±5℃)、などを例示することができる。
【0056】
本発明の粘着剤は、本発明の課題解決ができる範囲で、任意成分として各種樹脂、硬化触媒、シランカップリング剤、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、充填剤、老化防止剤および帯電防止剤等を配合してもよい。
【0057】
《研磨部材固定用粘着シート》
本発明の研磨部材固定用粘着シートは、本発明の研磨部材固定用粘着剤から形成されてなる粘着剤層を備える。基材の少なくとも片面に本発明の研磨部材固定用粘着剤から形成されてなる粘着剤層を備える粘着シートの形態でもよく、基材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートの形態であってもよい。
好ましくは、基材を有する粘着シートの場合である。基材を有している粘着シートの方が、貼り合わせる材料に適した粘着剤を選択でき、また、粘着シートに剛性を付与させ、研磨部材積層体全体の剛性向上に寄与させることができるためである。
なお、粘着剤層の基材と接していない面は、通常、異物の付着防止のため使用する直前まで剥離性シートを貼り合せる。
【0058】
研磨部材とは、研磨パッドまたはバックパッド(被研磨材を保持する部材)等である。すなわち、本発明の研磨部材固定用粘着シートは、研磨パッドと、粘着シートの積層体である研磨部材積層体とし、粘着シートの粘着剤層を、研磨機定盤側、または研磨パッド側に貼り付けるために用いられる。また、本発明の研磨部材固定用粘着シートは、バックパッドと、粘着シートの積層体である研磨部材積層体とし、粘着シートの粘着剤層を、研磨機定盤側、またはバックパッド側に貼り付けるために用いられる。
基材の一方の面に本発明の粘着剤から形成されてなる粘着剤層を備える場合、他方の面の粘着剤層を形成する粘着剤は、従来公知の粘着剤を用いることができる。好ましくは、基材の両面の粘着剤層の形成に、本発明の粘着剤を用いた場合である。
【0059】
研磨パッドは、例えば、ウレタン系研磨パッド、不織布系研磨パッド、スウェード系研磨パッドや、さらに研磨用クッション材等を用いて複層構成化した積層体であってもよい。研磨用クッション材は、ウレタン系発泡体、オレフィン系発泡体、アクリル系発泡体等高分子樹脂を発泡させたシートや、不織布にポリウレタン樹脂等の高分子樹脂をクッション性有するように含浸させたシート等が挙げられ、研磨を目的とした研磨部材を構成するために使用されるものであれば、これらに限定されない。
また、本発明の研磨部材固定用粘着剤は、この研磨パッドと研磨用クッション材を積層するために用いることもできる。
バックパッドは、例えば、ウレタン系研磨パッド、不織布系研磨パッド、スウェード系研磨パッド等が挙げられ、被研磨材の保持を目的とした研磨部材を構成するために使用されるものであれば、これらに限定されない。
【0060】
研磨部材により、研磨される対象である被研磨材は、液晶ガラス、ハードディスク用基板、光学レンズ、シリコンウェハ、集積回路等が挙げられる。
【0061】
研磨部材固定用粘着シートは、基材または剥離性シートに、粘着剤を塗布して、粘着剤層を形成することができる。また、剥離性シートに粘着剤を塗布し粘着剤層を形成した後、粘着剤層と基材とを貼り合わせてもよい。
粘着剤の塗布は、例えばロールコーター法、コンマコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等の公知の方法が使用できる。塗布後は、熱風オーブン、赤外線ヒーター等で乾燥することができる。
【0062】
粘着剤層の厚みは、10~150μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。粘着剤層を上記範囲にすることで、研磨部材への粘着力と耐熱保持力に優れた粘着シートを得ることが出来る。
【0063】
基材としては、不織布、紙、プラスチックフィルム、合成紙等粘着剤の基材として使用できる部材が使用できる。粘着シートの基材(芯材)として使用する場合は、不織布およびプラスチックフィルムが好ましい。前記プラスチックフィルムは、例えばポリエチレンおよびポロプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ナイロン、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン、ポリイミドおよびポリアミド等をフィルムにしたものが挙げられる。また、基材は、粘着剤との密着性を高めるため易接着処理を施しても良い。前記易接着処理は、コロナ放電を行う乾式法およびアンカーコート剤と塗布する湿式法等の公知の方法を使用できる。また、基材は、帯電防止層を形成することができる。帯電防止剤は上段で説明した帯電防止剤の他に、導電性カーボン粒子、導電性金属粒子および導電性ポリマー等の少なくともいずれかを必要に応じて樹脂と配合した組成物が好ましい、または基材に金属蒸着または金属メッキを施すことで帯電防止層を形成できる。本発明で基材の厚さは特に制限されないが、5~300μmが好ましい。
【0064】
粘着シートを作製する際の剥離性シートには、紙、プラスチックフィルム、合成紙等に、剥離剤を塗布して形成した剥離層を有する。剥離剤は、例えばシリコーン、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、剥離性シートの厚さは特に制限はないが10~200μm程度である。
【実施例
【0065】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は質量%を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)および粘着付与樹脂の軟化点の測定方法は以下の通りである。
【0066】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、Mwの決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0067】
<粘着付与樹脂の軟化点の測定>
粘着付与樹脂の軟化点は下記の方法で測定した。
装置名 : セイコーインスツル製、DSC6220
昇温速度 : 10℃/分
【0068】
実施例で使用した材料を以下に示す。
《材料》
<モノマー>
[(a-1)アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー]
BA : アクリル酸ブチル
IBA : アクリル酸イソブチル
[(a-2)アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー]
MA : アクリル酸メチル
EA : アクリル酸エチル
MMA : メタクリル酸メチル
[(a-3)カルボキシル基を有するモノマー]
AA : アクリル酸
MAA : メタクリル酸
[(a-4)水酸基を有するモノマー]
HEA : アクリル酸2-ヒドロキシエチル
4HBA : アクリル酸4-ヒドロキシブチル
HEMA : メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0069】
<硬化剤>
[エポキシ化合物]
B1-1 : TETRAD X(N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、三菱ガス化学社製)
B1-2 : N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン
[イソシアネート化合物]
B2-1 : TDI/TMP(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)
B2-2 : XDI/TMP(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)
【0070】
<粘着付与樹脂>
C-1 : YSポリスターT160(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点160℃)
C-2 : YSポリスターT145(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点145℃)
C-3 : YSポリスターS145(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点145℃)
C-4 : YSポリスターT130(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点130℃)
CC-1 : YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点115℃)
【0071】
<アクリル系ポリマー>
[合成例1:アクリル系ポリマー(A-1)]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル90部、アクリル酸メチル5.5部、アクリル酸4部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.5部、アセトン100部、トルエン25部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記載する)0.01部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.01部を反応溶液に添加し2時間反応し、さらにAIBN 0.01部を反応溶液に添加し12時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル150部を加え、重量平均分子量130万のアクリル系ポリマー(A-1)溶液を得た。
【0072】
[合成例2~18:アクリル系ポリマー(A-2~10、AC-1~8)]
モノマーの種類及び配合量を表1、2の記載に従った以外は、合成例1と同様に行うことで合成例2~18のアクリル系ポリマー(A-2~10、AC-1~8)溶液を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例1)
アクリル系ポリマー(A-1)100部(不揮発分)に対して、エポキシ系硬化剤(B-1)N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンを0.07部、粘着付与樹脂(C-1)YSポリスターT160を20部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を15%に調整して粘着剤溶液を得た。
前記粘着剤溶液を、厚さ50μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)の剥離層上に、乾燥後の厚さが50μmになるようにコンマコーターで塗布を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製(以下、PETシートという))を貼り合せて「剥離性シート/粘着剤/PETシート」という構成とした。同様に、前記粘着剤溶液を、厚さ50μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるようにコンマコーターで塗布を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層と、前述した「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」のPETシートの露出面とを貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート/粘着剤層/剥離性シート」という構成の粘着シートを得た。
【0076】
(実施例2~10、比較例1~9)
表3、4記載の組成、および配合量とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10および比較例1~9の粘着シートをそれぞれ得た。
【0077】
得られた粘着剤を用いて貯蔵弾性率の測定を行い、また得られた粘着シートを用いて、粘着力および耐熱保持力の評価を行った。
【0078】
(1)貯蔵弾性率
実施例および比較例で得られた粘着剤溶液を用い、厚さ50μmの剥離性シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるようにコンマコーターで塗布を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層が重なるように積層を繰り返し、厚みが1mmの粘着剤層を得た。オートクレーブで気泡を除去した後、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成し、「剥離性シート/粘着剤層/剥離性シート」という構成の2枚の剥離性シートで挟まれた粘着剤層を作製した。次いで、片方の剥離性シートを剥がし、直径8mmの円柱形に型抜きして貯蔵弾性率測定用の試料とした。両側の剥離性シートを剥がし、この試料をねじり剪断法により、下記の条件で貯蔵弾性率を測定した。
【0079】
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA III」
周波数:1Hz
測定温度: -50℃から210℃まで測定し、80℃、および200℃での貯蔵弾性率を読み取った。
昇温速度: 10℃/分
【0080】
(2)粘着力測定
試料作製
実施例および比較例で得られた粘着シートにおける粘着剤層の非測定面に、PETシートを貼合せ、幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層をウレタン発泡体シート(日本発条社製 EXT)のウレタン発泡体側に貼り付け、加熱ロール(90℃)、圧力0.1MPa、速度1m/分にて圧着後、24時間放置した試料を作製した。
【0081】
(2-1)粘着力(dry)
作製した試料を引張試験機にて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験によって粘着力を測定した。(JIS Z1528:2000に準拠)
【0082】
(2-2)粘着力;耐アルカリ性(wet pH11)
作製した試料を水酸化カリウムでpH11に調整し65℃に加熱した水溶液に24時間浸漬し、蒸留水で洗浄後、23℃、50%恒温恒湿室内で3時間静置した。この親戚処理後の試料を引張試験機にて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験によって粘着力を測定した。(JIS Z1528:2000に準拠)
【0083】
(2-3)粘着力;耐酸化性(wet H
作製した試料を2.5%過酸化水素水を65℃に加熱した水溶液に24時間浸漬し、蒸留水で洗浄後、23℃、50%恒温恒湿室内で3時間静置した。この浸漬処理後の試料を引張試験機にて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験によって粘着力を測定した。(JIS Z1528:2000に準拠)
【0084】
評価結果
下記の評価基準に基づいて評価を行った。

◎:「dryおよび2種のwet粘着力が20N/25mm以上であり、非常に良好。」
○:「dryおよび2種のwet粘着力が16N/25mm以上20N/25mm未満であり、良好。」
×:「dryおよび2種のwet粘着力が16N/25mm未満であり、実用不可。」
【0085】
(3)耐熱保持力
実施例および比較例で得られた粘着シートにおける粘着剤層の非測定面にPETシートを貼合せ、幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シート1から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、研磨した幅30mm、長さ150mmのステンレス板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて圧着後、100℃雰囲気で粘着シートの下端部に2kgの荷重をかけ、3時間放置することで耐熱保持力を測定した(JIS Z0237:2000に準拠)。
評価は、粘着シートの貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定して下記の基準に基づいて行った。

◎:「ずれた長さが0.4mm以下であり、非常に良好。」
○:「ずれた長さが0.4mmを超え0.9mm未満であり、良好。」
×:「ずれた長さが0.9mm以上であり、実用不可。」
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
表3、4の実施例1~10に示すように本発明の粘着剤は、アクリル系ポリマーのモノマーの組み合わせのみでは成し得ない接着性能と耐熱保持力によって評価される剪断性能を、非常に大きな分子量として弾性率を向上させ、これにイソシアネート化合物およびエポキシ化合物の少なくともいずれかである硬化剤と、軟化点が125℃以上である粘着付与樹脂とを組み合わせて用いることで、研磨部材および研磨装置に対する粘着力が良好で、耐熱性のみならず薬液耐性が優れた粘着剤であることが確認できた。
これに対し、比較例1~9の粘着剤では、いずれかの項目が不良となっており、実用不可であることが判る。
【符号の説明】
【0089】
1 研磨部材
2 粘着シート
3 研磨機定盤
4 被研磨材
5 駆動軸

図1