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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】フィールド機器
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20230530BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20230530BHJP
   G08C 25/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G05B19/05 N
G08C19/02 A
G08C25/00 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020178884
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069929
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 史弘
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-208805(JP,A)
【文献】特開2010-003043(JP,A)
【文献】特開平06-060287(JP,A)
【文献】特開2017-084256(JP,A)
【文献】特開2008-253480(JP,A)
【文献】特許第5719942(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
G08C 19/02
G08C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、
前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部と、
前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号を、前記電流出力部に出力する異常通知部と、
前記第1電源電圧が、予め規定された第1電圧範囲外となった場合に、前記第1電源電圧の異常を示す第1異常信号を出力する第1電源監視部と、
前記第2電源電圧が、予め規定された第2電圧範囲外となった場合に、前記第2電源電圧の異常を示す第2異常信号を出力する第2電源監視部と、
を備え
前記電流制御部は、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力し、
前記異常通知部は、前記第1異常信号が入力され、且つ前記第2異常信号が入力されない場合に、前記第1信号を前記電流出力部に出力する、
ィールド機器。
【請求項2】
第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、
前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部と、
前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号を、前記電流出力部に出力する異常通知部と、
前記第1電源電圧が、予め規定された第1電圧範囲外となった場合に、前記第1電源電圧の異常を示す第1異常信号を出力する第1電源監視部と、
前記第2電源電圧が、予め規定された第2電圧範囲外となった場合に、前記第2電源電圧の異常を示す第2異常信号を出力する第2電源監視部と、
を備え、
前記電流制御部は、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力し、
前記異常通知部は、前記第1異常信号が入力されず、且つ前記第2異常信号が入力された場合に、前記第2信号を前記電流出力部に出力する、
フィールド機器。
【請求項3】
第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、
前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部と、
前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号を、前記電流出力部に出力する異常通知部と、
前記第1電源電圧が、予め規定された第1電圧範囲外となった場合に、前記第1電源電圧の異常を示す第1異常信号を出力する第1電源監視部と、
前記第2電源電圧が、予め規定された第2電圧範囲外となった場合に、前記第2電源電圧の異常を示す第2異常信号を出力する第2電源監視部と、
を備え、
前記電流制御部は、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力し、
前記異常通知部は、前記第1異常信号が入力され、且つ前記第2異常信号が入力された場合に、起動に必要になる電流である起動電流を前記電流出力部に出力させる第3信号を、前記電流出力部に出力する、
フィールド機器。
【請求項4】
第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、
前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部と、
前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号を、前記電流出力部に出力する異常通知部と、
前記第1電源電圧が、予め規定された第1電圧範囲外となった場合に、前記第1電源電圧の異常を示す第1異常信号を出力する第1電源監視部と、
前記第2電源電圧が、予め規定された第2電圧範囲外となった場合に、前記第2電源電圧の異常を示す第2異常信号を出力する第2電源監視部と、
前記異常通知部に対する前記第2異常信号の入力を一定時間遅延させる起動回路と、
を備え、
前記電流制御部は、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力する、
フィールド機器。
【請求項5】
前記異常通知部に対する前記第2異常信号の入力を一定時間遅延させる起動回路を更に備える、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項6】
第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、
前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部と、
前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号を、前記電流出力部に出力する異常通知部と、
前記第1電源電圧及び前記第2電源電圧とは異なる第3電源電圧によって動作し、センサの測定結果を示すセンサ値を出力するセンサモジュールと、
を備え、
前記電流制御部は、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力し、
前記電流制御部は、前記センサモジュールから出力されたセンサ値に応じたパルス幅を有するPWM信号を前記制御信号として出力し、
前記電流出力部は、前記PWM信号のパルス幅に応じた電流を前記伝送線に出力する、
フィールド機器。
【請求項7】
前記第1電源電圧及び前記第2電源電圧とは異なる第3電源電圧によって動作し、センサの測定結果を示すセンサ値を出力するセンサモジュールを更に備えており、
前記電流制御部は、前記センサモジュールから出力されたセンサ値に応じたパルス幅を有するPWM信号を前記制御信号として出力し、
前記電流出力部は、前記PWM信号のパルス幅に応じた電流を前記伝送線に出力する、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項8】
前記第1信号及び前記第2信号は、前記センサモジュールから出力されたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有する信号である、請求項6又は請求項7記載のフィールド機器。
【請求項9】
前記センサモジュールと前記電流制御部との間の通信を行う通信部と、
前記第3電源電圧に異常があった場合に、前記通信部の動作を停止させる第3電源監視部と、
を備え、
前記電流制御部は、前記通信部が動作を停止した場合に前記第2信号を出力する、
請求項6から請求項8の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項10】
前記第1電源電圧又は前記第2電源電圧に異常があった場合に、少なくとも前記センサモジュールに対する前記第3電源電圧の供給を遮断する電源遮断部を更に備える、請求項6から請求項9の何れか一項に記載のフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや工場等においては、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されており、高度な自動操業が実現されている。この分散制御システムは、フィールド機器と呼ばれる現場機器(例えば、測定器、操作器)と、これらの制御を行う制御装置とが通信手段を介して接続されたシステムである。このようなシステムで用いられるフィールド機器の一種に、測定したプロセス値(例えば、圧力、流量、温度等)に応じたアナログ信号を、2線式の伝送線を介して制御装置に伝送する2線式伝送器がある。
【0003】
以下の特許文献1には、従来の2線式伝送器が開示されている。この2線式伝送器は、伝送線に出力すべき電流を制御する電流制御部(ディジタル回路)と、電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を伝送線に出力する電流出力部(アナログ回路)とを備える。尚、電流出力部からは、通常時には、例えば、4~20mAの範囲内の電流が出力され、異常時(例えば、電源異常時)には、例えば、3.6mA以下の電流又は21.6mA以上の電流が出力される(バーンアウト出力)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-81883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示された2線式伝送器は、電流制御部を動作させる第1電源電圧を生成する第1電源回路と、電流出力部を動作させる第2電源電圧を生成する第2電源回路とを備える。ここで、第2電源回路の異常により第2電源電圧が低下した場合には、電流制御部からバーンアウト出力を実施するための制御信号が出力され、電流出力部によってバーンアウト出力がなされる。これにより、フィールド機器で異常が生じた旨が、2線式伝送器に接続された制御装置に通知される。
【0006】
しかしながら、第1電源回路に異常が生じた場合には、第1電源電圧が電流制御部の動作可能な電圧範囲を超えてしまい、電流制御部が正常に動作しないことがある。このような場合には、フィールド機器で異常が生じた旨を、2線式伝送器に接続された制御装置に通知することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、伝送線に出力すべき電流を制御する電流制御部に供給される電源電圧に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置に通知することができるフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によるフィールド機器(1~4)は、第1電源電圧(V1)によって動作し、伝送線(L1、L2)に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部(240、240C)と、前記第1電源電圧とは異なる第2電源電圧(V2)によって動作し、前記電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を前記伝送線に出力可能な電流出力部(260)と、前記第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第1信号(P)を、前記電流出力部に出力する異常通知部(250)と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記電流制御部が、前記第2電源電圧に異常があった場合に、前記バーンアウト電流を前記電流出力部に出力させる第2信号を、前記制御信号として出力する。
【0010】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記第1電源電圧が、予め規定された第1電圧範囲外となった場合に、前記第1電源電圧の異常を示す第1異常信号を出力する第1電源監視部(220)と、前記第2電源電圧が、予め規定された第2電圧範囲外となった場合に、前記第2電源電圧の異常を示す第2異常信号を出力する第2電源監視部(221)と、を更に備える。
【0011】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記異常通知部が、前記第1異常信号が入力され、且つ前記第2異常信号が入力されない場合に、前記第1信号を前記電流出力部に出力する。
【0012】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記異常通知部が、前記第1異常信号が入力されず、且つ前記第2異常信号が入力された場合に、前記第2信号を前記電流出力部に出力する。
【0013】
或いは、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記異常通知部が、前記第1異常信号が入力され、且つ前記第2異常信号が入力された場合に、前記フィールド機器の起動に必要になる電流である起動電流を前記電流出力部に出力させる第3信号を、前記電流出力部に出力する。
【0014】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記異常通知部に対する前記第2異常信号の入力を一定時間遅延させる起動回路(300)を更に備える。
【0015】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記第1電源電圧及び前記第2電源電圧とは異なる第3電源電圧によって動作し、センサ(S)の測定結果を示すセンサ値を出力するセンサモジュール(100)を更に備えており、前記電流制御部が、前記センサモジュールから出力されたセンサ値に応じたパルス幅を有するPWM信号を前記制御信号として出力し、前記電流出力部が、前記PWM信号のパルス幅に応じた電流を前記伝送線に出力する。
【0016】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記第1信号及び前記第2信号は、前記センサモジュールから出力されたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有する信号である。
【0017】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記センサモジュールと前記電流制御部との間の通信を行う通信部(230)と、前記第3電源電圧に異常があった場合に、前記通信部の動作を停止させる第3電源監視部(500)と、を備え、前記電流制御部が、前記通信部が動作を停止した場合に前記第2信号を出力する。
【0018】
また、本発明の一態様によるフィールド機器は、前記第1電源電圧又は前記第2電源電圧に異常があった場合に、少なくとも前記センサモジュールに対する前記第3電源電圧の供給を遮断する電源遮断部(400)を更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、伝送線に出力すべき電流を制御する電流制御部に供給される電源電圧に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置に通知することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態によるフィールド機器の各種信号のタイミングチャートである。
図3】本発明の第1実施形態によるフィールド機器の各種信号の状態を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態によるフィールド機器に設けられる起動回路の一例を示す回路図である。
図6】本発明の第3実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第4実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるフィールド機器について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0022】
〔概要〕
フィールド機器の一種である2線式伝送器には、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を伝送線に出力する電流出力部とを備えるものがある。このような2線式伝送器では、センサの測定結果を示すセンサ値に応じたパルス幅を有するPWM信号が、電流制御部から制御信号として出力され、このPWM信号のパルス幅に応じた電流(例えば、4~20mAの範囲内の電流)が電流出力部から伝送線に出力される。
【0023】
また、このような2線式伝送器は、電源異常等の異常が生じた場合に、異常が生じた旨を示す電流(例えば、3.6mA以下の電流又は21.6mA以上の電流)を出力することが可能である(バーンアウト出力)。バーンアウト出力がなされる場合には、電流制御部から電流出力部に対して、上述したセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有する信号が出力される。
【0024】
ここで、電流制御部はディジタル回路であり、第1電源電圧で動作する。これに対し、電流出力部はアナログ回路であり、第1電源電圧とは異なる第2電源電圧で動作する。第2電源電圧が低下した場合には、電流制御部からバーンアウト出力を実施するための制御信号が出力され、電流出力部によってバーンアウト出力がなされる。これにより、フィールド機器で異常が生じた旨が、2線式伝送器に接続された制御装置に通知される。しかしながら、第1電源電圧が低下した場合には、電流制御部が正常に動作しないことがある。このような場合には、フィールド機器で異常が生じた旨を、2線式伝送器に接続された制御装置に通知することができない。
【0025】
また、従来の2線式伝送器では、第1電源電圧及び第2電源電圧の低下のみを検出しており、第1電源電圧及び第2電源電圧の上昇を検出していない。このため、第1電源電圧が規定値よりも上昇した場合や、第2電源電圧が規定値よりも上昇した場合には、異常として検出されないため、2線式伝送器に接続された制御装置に異常が生じた旨が通知されない。
【0026】
加えて、従来の2線式伝送器では、起動時に多くの電流が必要となることから、起動に必要になる電流である起動電流を電流出力部に出力させる制御が行われている。例えば、4~20mAの範囲の電流の50%の電流(12mA)を起動電流として電流出力部に出力させる制御が行われている。このような制御は、2線式伝送器を確実に起動させるために必要であることから、2線式伝送器を改良する場合においても維持される必要がある。
【0027】
本発明の一実施形態では、第1電源電圧によって動作し、伝送線に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部と、第1電源電圧とは異なる第2電源電圧によって動作し、電流制御部から出力される制御信号に応じた大きさの電流を伝送線に出力可能な電流出力部と、第1電源電圧に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を電流出力部に出力させる第1信号を、記電流出力部に出力する異常通知部と、を備えるようにしている。これにより、伝送線に出力すべき電流を制御する電流制御部に供給される電源電圧に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置に通知することができる。
【0028】
〔第1実施形態〕
〈フィールド機器〉
図1は、本発明の第1実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態のフィールド機器1は、センサモジュール100及び伝送部200を備えており、2本の伝送線L1,L2を介して外部装置Cに接続されている。尚、外部装置Cは、例えば、分散制御システムの核をなす制御装置である。このようなフィールド機器1は、外部装置Cから2本の伝送線L1,L2を介して電流が供給されることで動作し、2本の伝送線L1,L2を流れる電流を制御することでセンサSの測定結果を示すセンサ値を外部装置Cに出力する。
【0029】
センサモジュール100は、電源回路110、電源監視部120、及び演算部130を備えており、センサSの測定結果を示すセンサ値を得る。電源回路110は、伝送部200から供給される電力からセンサモジュール100の動作電源である電源電圧Vsを生成する。電源電圧Vsは、センサモジュール100を構成する電源監視部120及び演算部130等の各部に供給される。電源監視部120は、電源回路110で生成される電源電圧Vsを監視する。演算部130は、センサSの測定結果(例えば、温度、圧力、流量等の測定結果)を取得し、取得した測定結果をA/D変換(アナログ/ディジタル変換)してセンサ値を得る。
【0030】
伝送部200は、電源回路210~214、電源監視部220~222、通信部230、電流制御部240、異常通知部250、及び電流出力部260を備える。このような伝送部200は、センサモジュール100で得られたセンサ値に応じて、2本の伝送線L1,L2を流れる電流を制御することでセンサ値を外部装置Cに出力する。また、伝送部200は、電源回路(例えば、電源回路210,211)の異常が生じた場合に、その旨を外部装置Cに出力する。
【0031】
伝送部200は、センサ値を外部装置Cに出力する場合には、例えば、2本の伝送線L1,L2に流れる電流が、4~20mAの範囲内に収まるように制御する。また、伝送部200は、電源回路の異常が生じた旨を外部装置Cに出力する場合には、例えば、3.6mA以下の電流又は21.6mA以上の電流(バーンアウト電流)を出力する。
【0032】
電源回路210は、電流制御部240の動作電圧となる電源電圧V1(第1電源電圧)を生成する。具体的に、電源回路210は、電源回路211が生成した電源電圧である電源電圧V2(第2電源電圧)を降圧することにより電源電圧V1を生成する。例えば、電源電圧V2が5.5Vであるとすると、電源回路210は、3.0Vなる電源電圧V1を生成する。電源回路211は、外部装置Cから伝送線L1,L2を介して供給された電力から、電流出力部260の動作電圧となる電源電圧V2を生成する。
【0033】
電源回路212は、異常通知部250の動作電圧となる電源電圧V3を生成する。具体的、電源回路212は、電源回路211が生成した電源電圧V2を降圧することにより電源電圧V3を生成する。例えば、電源回路212は、2.5Vなる電源電圧V3を生成する。電源回路213は、フィールド機器1に設けられた不図示の表示器等の動作電圧となる電源電圧V4を生成する。具体的に、電源回路213は、電源回路211が生成した電源電圧V2を降圧することにより電源電圧V4を生成する。例えば、電源回路213は、5.0Vなる電源電圧V4を生成する。
【0034】
電源回路214は、センサモジュール100の動作電圧となる電源電圧V5(第3電源電圧)を生成する。電源回路214は、電源回路213が生成した電源電圧V4を降圧することにより電源電圧V5を生成する。例えば、電源回路214は、3.2Vなる電源電圧V5を生成する。電源回路214は、例えば、絶縁トランスを有しており、一次側が電源回路213に接続され、二次側がセンサモジュール100の電源回路110に接続されている。従って、電源回路214から電源回路110に電源電圧V5が供給されることで、電源電圧Vsが生成される。
【0035】
電源監視部220(第1電源監視部)は、電源電圧V1を監視しており、電源電圧V1の異常の有無を示す信号M1を異常通知部250に出力する。電源監視部220は、電源電圧V1が第1電圧範囲外となった場合に、電源電圧V1の異常を示す信号(第1異常信号)を異常通知部250に出力する。電源電圧V1の異常とは、電源電圧V1が過電圧又は低電圧の場合である。尚、上記の電源電圧V1の異常を示す信号は、Lowレベルの信号であるとする。
【0036】
ここで、上記の第1電圧範囲とは、上限閾値Vth11と下限閾値Vth12との間の範囲である。電源監視部220は、電源電圧V1が上限閾値Vth11を超えた場合には、電源電圧V1が過電圧であるとしてLowレベルの信号M1を出力する。また、電源監視部220は、電源電圧V1が下限閾値Vth12未満である場合には、電源電圧V1が低電圧であるとしてLowレベルの信号M1を出力する。一方、電源監視部220は、電源電圧V1が第2電圧範囲内である場合には電源電圧V1に異常が発生していないとして、電源電圧V1が正常であることを示すHighレベルの信号M1を出力する。
【0037】
電源監視部221(第2電源監視部)は、電源電圧V2を監視しており、電源電圧V2の異常の有無を示す信号M2を電流制御部240及び異常通知部250に出力する。電源監視部221は、電源電圧V2が第2電圧範囲外となった場合には電源電圧V2の異常を示す信号(第2異常信号)を電流制御部240及び異常通知部250に出力する。電源電圧V2の異常とは、電源電圧V2が過電圧又は低電圧の場合である。尚、上記の電源電圧V2の異常を示す信号は、Lowレベルの信号であるとする。
【0038】
ここで、上記の第2電圧範囲とは、上限閾値Vth21と下限閾値Vth22との間の範囲である。電源監視部221は、電源電圧V2が上限閾値Vth21を超えた場合には、電源電圧V2が過電圧であるとしてLowレベルの信号M2を出力する。また、電源監視部221は、電源電圧V2が下限閾値Vth22未満である場合には、電源電圧V2が低電圧であるとしてLowレベルの信号M2を出力する。一方、電源監視部221は、電源電圧V2が第2電圧範囲内である場合には電源電圧V2に異常が発生していないとして、電源電圧V2が正常であることを示すHighレベルの信号M2を出力する。
【0039】
電源監視部222は、電源電圧V4を監視しており、電源電圧V4の異常の有無を示す信号を電流制御部240及び異常通知部250に出力する。電源監視部222は、電源電圧V4が第3電圧範囲外となった場合には電源電圧V4の異常を示す信号を電流制御部240及び異常通知部250に出力する。電源電圧V4の異常とは、第4電源電圧v4が過電圧又は低電圧の場合である。尚、上記の電源電圧V4の異常を示す信号は、Lowレベルの信号であるとする。
【0040】
ここで、第3電圧範囲とは、上限閾値Vth31と下限閾値Vth32との間の範囲である。電源監視部222は、電源電圧V4が上限閾値Vth31を超えた場合には、電源電圧V4が過電圧であるとしてLowレベルの信号を出力する。また、電源監視部222は、電源電圧V4が下限閾値Vth32未満である場合には、電源電圧V4が低電圧であるとしてLowレベルの信号を出力する。一方、電源監視部222は、電源電圧V4が第2電圧範囲内である場合には電源電圧V4に異常が発生していないとして、電源電圧V4が正常であることを示すHighレベルの信号を出力する。尚、上述した電源監視部220~222は、例えば、ウィンドウコンパレータである。
【0041】
通信部230は、センサモジュール100の演算部130で得られたセンサ値を電流制御部240に送信する。通信部230は、演算部130と電流制御部240との間を絶縁しながら、演算部130から電流制御部240への通信を可能にする。
【0042】
電流制御部240は、電源電圧V1によって動作し、電源監視部221から出力される信号M2に応じたパルス幅を有するPWM信号(制御信号)を異常通知部250に出力する。具体的に、電流制御部240は、電源監視部221から出力される信号M2がHighレベルである場合には、通信部230を介して演算部130から得られたセンサ値に応じたパルス幅を有するPWM信号を出力する。このPWM信号は、例えば、4~20mAの範囲内の電流を電流出力部260から2本の伝送線L1,L2に出力させるようにするためのものである。
【0043】
これに対し、電流制御部240は、電源監視部221から出力される信号M2がLowレベルの場合(第2異常信号の場合)には、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するPWM信号(第2信号)を出力する。このPWM信号は、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流又は21.6mA以上の電流)を電流出力部260から2本の伝送線L1,L2に出力させるようにするためのものである。
【0044】
電流制御部240は、ディジタル回路であり、プロセッサ及び不揮発性又は揮発性の半導体メモリを備えていても良い。上記のプロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等が挙げられる。上記の半導体メモリとしては、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等が挙げられる。尚、電流制御部240は、MCU(Micro Control Unit)等のマイクロコントローラであってもよい。
【0045】
異常通知部250は、クロック信号生成部251、パルス信号生成部252、及び信号選択部253を備えており、電源監視部220から出力される信号M1及び電源監視部221から出力される信号M2に応じて、電流出力部260に出力する信号を切り替える。具体的に、異常通知部250は、信号M1,M2に応じて、クロック信号生成部251から出力されるクロック信号CLK、パルス信号生成部252から出力されるパルス信号P、又は電流制御部240から出力されるPWM信号を電流出力部260に出力する。
【0046】
クロック信号生成部251は、電流制御部240の動作に必要となるクロック信号CLK(第3信号)を生成する。このクロック信号CLKのパルス幅は、デューティ比が、例えば50%となるように設定されている。つまり、クロック信号CLKのパルス幅は、クロック信号CLKが電流出力部260に供給されたならば、例えば、4~20mAの範囲内の中間電流(12mA)が流れるように設定されている。尚、この中間電流は、フィールド機器1の起動に必要になる電流(起動電流)である。クロック信号生成部251は、生成したクロック信号CLKを信号選択部253及び電流制御部240に出力する。
【0047】
パルス信号生成部252は、例えば、発振回路を備えており、クロック信号CLKとは異なるパルス幅(デューティ比)を有するパルス信号P(第1信号)を生成する。例えば、パルス信号生成部252は、前述したバーンアウト電流を電流出力部260から2本の伝送線L1,L2に出力させるために、電流制御部240から出力されるPWM信号のパルス幅と同じパルス幅を有するパルス信号Pを生成する。つまり、パルス信号生成部252は、電流制御部240において、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するパルス信号Pを出力する。パルス信号生成部252は、生成したパルス信号Pを信号選択部253に出力する。
【0048】
信号選択部253は、信号M1,M2に応じて、クロック信号CLK、パルス信号P、及びPWM信号(電流制御部240から出力されるPWM信号)の中から電流出力部260に出力する信号を選択する。具体的に、信号選択部253は、信号M1がHighレベルである場合にはPWM信号を選択する。信号選択部253は、信号M1がLowレベルであって、信号M2がHighレベルである場合にはパルス信号Pを選択する。信号選択部253は、信号M1,M2が共にLowレベルである場合にはクロック信号CLKを選択する。
【0049】
具体的に、信号選択部253は、ORゲート254、第1セレクタ255、及び第2セレクタ256を備える。ORゲート254は、電源監視部220から出力される信号M1と電源監視部221から出力される信号M2との論理和を演算する。第1セレクタ255は、ORゲート254の演算結果(以下、「選択信号SL1」という)に基づいて、クロック信号CLKとパルス信号Pとの何れか一方を選択する。具体的に、第1セレクタ255は、選択信号SL1がHighレベルである場合にはパルス信号Pを選択し、選択信号SL1がLowレベルである場合にはクロック信号CLKを選択する。
【0050】
第2セレクタ256は、電源監視部220から出力される信号M1(以下、第2セレクタ256に入力される信号M1を「選択信号SL2」という)に基づいて、第1セレクタ255で選択された信号と電流制御部240からのPWM信号との何れか一方を選択する。第2セレクタ256は、選択信号SL2がHighレベルである場合にはPWM信号を選択し、選択信号SL2がLowレベルである場合には、第1セレクタ255で選択された信号を選択する。第2セレクタ256で選択された信号が、電流出力部260に入力される。
【0051】
電流出力部260は、第2セレクタ256で選択された信号に応じた大きさの電流(以下、電流信号Ioutという)を2本の伝送線L1,L2に出力する。具体的に、電流出力部260は、第2セレクタ256で選択された信号のパルス幅(デューティ比)に応じた大きさの電流信号Ioutを出力する。例えば、第2セレクタ256で選択された信号が、電流制御部240から出力されたPWM信号であって、演算部130から得られたセンサ値に応じたパルス幅を有するものである場合には、電流出力部260は、例えば、4~20mAの範囲の電流信号Ioutを出力する。
【0052】
また、例えば、第2セレクタ256で選択された信号が、電流制御部240から出力されたPWM信号であって、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するものである場合には、電流出力部260は、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流又は21.6mA以上の電流)を電流信号Ioutとして出力する。同様に、第2セレクタ256で選択された信号が、パルス信号Pである場合にも、電流出力部260は、バーンアウト電流を電流信号Ioutとして出力する。また、第2セレクタ256で選択された信号が、クロック信号CLKである場合には、電流出力部260は、4~20mAの範囲内の中間電流(12mA)を電流信号Ioutとして出力する。
【0053】
〈フィールド機器の動作〉
次に、本発明の第1実施形態によるフィールド機器1の動作について説明する。以下では、フィールド機器1の起動時の際の動作(起動時の動作)、電源電圧V1及び電源電圧V2が正常である際の動作(定常動作)、電源電圧V1に異常が発生した際の動作(電源電圧V1の異常時動作)、及び電源電圧V2に異常が発生した際の動作(電源電圧V2の異常時動作)について順に説明する。図2は、本発明の第1実施形態によるフィールド機器の各種信号のタイミングチャートである。図3は、本発明の第1実施形態によるフィールド機器の各種信号の状態を示す図である。
【0054】
《起動時の動作》
図2に示す期間T1は、フィールド機器1の起動時の動作が行われる期間である。図2に示す通り、フィールド機器1の電源投入直後において、電源電圧V1,V2は共に低電圧である。このため、図3に示す通り、信号M1,M2は共にLowレベルの信号となり、選択信号SL1,LS2も共にLowレベルの信号となる。これにより、第1セレクタ255は、クロック信号CLKを選択して第2セレクタ256に出力する。また、第2セレクタ256は、選択信号SL2がLowレベルであるため、第1セレクタ255から出力されるクロック信号CLKを選択して電流出力部260に出力する。その結果、電流出力部260からは、フィールド機器1の起動電流(例えば、12mA)が出力される。言い換えると、外部装置Cから2本の伝送線L1,L2を介して、フィールド機器1の起動に必要な起動電流が供給される。尚、電源電圧V1が前述した下限閾値Vth12(例えば、2.7V)を上回ると、フィールド機器1の起動が完了する。
【0055】
《定常動作》
図2に示す期間T2は、フィールド機器1の定常動作が行われる期間である。フィールド機器1の起動が完了すると、電源電圧V1が第1電圧範囲内となり、且つ、電源電圧V2が第2電圧範囲内となる。このため、図3に示す通り、信号M1,M2は共にHighレベルの信号となり、選択信号SL1,SL2もHighレベルの信号となる。ここで、選択信号SL2がHighレベルの信号である場合には、第1セレクタ255の出力に拘わらず、第2セレクタ256は、PWM信号を出力する。その結果、電流出力部260からは、PWMのパルス幅に応じて、例えば、4~20mAの範囲内の電流が出力される。これにより、外部装置Cに対してセンサ値を伝送することができる。
【0056】
《電源電圧V1の異常時動作》
図2に示す期間T3は、電源電圧V1の異常時動作が行われる期間である。電源回路210に異常が発生して、電源電圧V1が下限閾値Vth12を下回った場合には、電源監視部220から出力される信号M1はLowレベルとなる。但し、電源回路211は正常に動作しているため、信号M2はHighレベルのままである。そのため、図3に示す通り、選択信号SL1がHighレベルの信号となり、選択信号SL2がLowレベルの信号となる。従って、第1セレクタ255は、パルス信号Pを選択して第2セレクタ256に出力する。また、第2セレクタ256は、選択信号SL2がLowレベルであるため、パルス信号Pを選択して電流出力部260に出力する。その結果、電流出力部260からは、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。これにより、フィールド機器1で生じた電源電圧の異常を外部装置Cに通知することができる。尚、この電源電圧V1の異常時動作は、電源電圧V1が下限閾値Vth12を下回った場合だけでなく、電源電圧V1が上限閾値Vth11を上回った場合も同様に行われる。
【0057】
《電源電圧V2の異常時動作》
図2に示す期間T4は、電源電圧V2の異常時動作が行われる期間である。電源回路211に異常が発生して、電源電圧V2が下限閾値Vth22を下回った場合には、電源監視部221から出力される信号M2はLowレベルとなる。但し、電源回路210は正常に動作しているため、信号M1はHighレベルのままである。そのため、図3に示す通り、選択信号SL1,SL2は共にHighレベルの信号となる。ここで、選択信号SL2がHighレベルの信号である場合には、第1セレクタ255の出力に拘わらず、第2セレクタ256は、PWM信号を電流出力部260に出力する。また、電源監視部221から出力される信号M2がLowレベルのため、電流制御部240からは、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するPWM信号が出力される。その結果、電流出力部260からは、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。これにより、フィールド機器1で生じた電源電圧の異常を外部装置Cに通知することができる。尚、この電源電圧V2の異常時動作は、電源電圧V2が下限閾値Vth22を下回った場合だけでなく、電源電圧V2が上限閾値Vth21を上回った場合も同様に行われる。
【0058】
以上の通り、本実施形態のフィールド機器1は、電源電圧V1によって動作し、2本の伝送線L1,L2に出力すべき電流を制御する制御信号を出力する電流制御部240と、電源電圧V2によって動作し、電流制御部240から出力される制御信号に応じた大きさの電流を2本の伝送線L1,L2に出力する電流出力部260と、電源電圧V1に異常があった場合に、異常が生じた旨を示すバーンアウト電流を電流出力部260に出力させるパルス信号Pを、電流出力部260に出力する異常通知部250と、を備えている。これにより、電流制御部240に供給される電源電圧V1に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。
【0059】
また、本実施形態では、電源監視部220によって電源電圧V1の過電圧及び低電圧を電源電圧V1の異常として監視し、電源監視部221によって電源電圧V2の過電圧及び低電圧を電源電圧V2の異常として監視している。これにより、電源電圧V1,V2が低電圧になった場合のみならず、電源電圧V1,V2が過電圧になった場合にも、フィールド機器1で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。
【0060】
〔第2実施形態〕
〈フィールド機器〉
図4は、本発明の第2実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、図4においては、図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付してある。図4に示す通り、本実施形態のフィールド機器2は、図1に示すフィールド機器1の伝送部200を伝送部200Aに変えた構成である。このようなフィールド機器2は、電源回路210の短絡等により、電源電圧V1の低下に伴って電源電圧V2が低下した場合であっても、フィールド機器1で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができるようにするものである。
【0061】
ここで、前述した第1実施形態のフィールド機器1では、電源電圧V1,V2が低電圧であって、信号M1,M2が共にLowレベルの信号である場合には、電流出力部260から起動電流が出力される。このため、電源回路210の短絡等により、電源電圧V1の低下に伴って電源電圧V2が低下してしまうと、電源異常が生じているにも拘わらず、電流出力部260からは起動電流が出力され、バーンアウト電流は出力されない。本実施形態のフィールド機器2は、フィールド機器1の伝送部200に代えて伝送部200Aを設けることで、電源回路210の短絡等により、電源電圧V1の低下に伴って電源電圧V2が低下した場合には、バーンアウト電流が出力されるようにしたものである。
【0062】
伝送部200Aは、図1に示す伝送部200に起動回路300を追加し、起動回路300の出力を、ORゲート254の一方の入力端(信号M2が入力されていた入力端)に接続したものである。起動回路300は、電源回路211で生成された電源電圧V2を入力するヒステリシスを有する回路である。起動回路300は、電源電圧V2が上限閾値Vth41を上回った場合には、Highレベルの信号を生成し、電源電圧V2が上限閾値Vth42を下回った場合にはLowレベルの信号を生成する。この起動回路300は、例えば、ヒステリシスコンパレータやシュミットトリガ等である。尚、電源監視部221で生成された信号M2は、電流制御部240に出力される。
【0063】
図5は、本発明の第2実施形態によるフィールド機器に設けられる起動回路の一例を示す回路図である。図5に例示する起動回路300は、非反転式のヒステリシスコンパレータである。図5に示す起動回路300は、コンパレータ310及び抵抗R1~R3を備える。コンパレータ310の非反転入力端には抵抗R1が接続されており、コンパレータ310の非反転入力端とグランドとの間には抵抗R2が接続されており、コンパレータ310の非反転入力端と出力端との間には抵抗R3が接続されている。コンパレータ310の反転入力端には、基準電圧(例えば、2.5V)が入力され、コンパレータ310の非反転入力端には、抵抗R1を介した電源電圧V2が入力される。起動回路300のヒステリシス幅は、抵抗R1~R3の各抵抗値や基準電圧等によって規定される。
【0064】
〈フィールド機器の動作〉
コンパレータ310から出力される信号は、非反転入力端に入力される電源電圧V2が低下しても、直ちにはLowレベルとはならず、起動回路300のヒステリシス幅に応じた時間が経過した後にLowレベルとなる。よって、電源回路210の短絡等により、電源電圧V1の低下に伴って電源電圧V2が低下しても、起動回路300から出力される信号(ORゲート254の一方の入力端に入力される信号)は、一定時間はHighレベルが維持される。これにより、電流出力部260からバーンアウト電流を出力させることができる。
【0065】
尚、フィールド機器2の動作(起動時の動作、定常動作、電源電圧V1の異常時動作、電源電圧V2の異常時動作)は、基本的には、第1実施形態のフィールド機器1と同様である。このため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0066】
以上の通り、本実施形態のフィールド機器2は、第1実施形態のフィールド機器1に起動回路300を設けた点が異なるだけで、基本的な構成は、第1実施形態のフィールド機器1と同様である。このため、本実施形態においても、電流制御部240に供給される電源電圧V1に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。また、電源電圧V1,V2が低電圧になった場合のみならず、電源電圧V1,V2が過電圧になった場合にも、フィールド機器1で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。加えて、本実施形態では、電源回路210の短絡等により、電源電圧V1の低下に伴って電源電圧V2が低下しても、電流出力部260からバーンアウト電流を出力させることができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
〈フィールド機器〉
図6は、本発明の第3実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、図6においては、図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付してある。図6に示す通り、本実施形態のフィールド機器3は、図1に示すフィールド機器1の伝送部200を伝送部200Bに変えた構成である。このようなフィールド機器3は、バーンアウト電流を出力する際の消費電量を低減するようにするものである。
【0068】
ここで、前述した第1実施形態のフィールド機器1では、電源電圧V1,V2に異常があった場合には、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。バーンアウト電流が出力されている間は、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)に応じた電力でフィールド機器1が動作しなければならず、電力が不足することも考えられる。本実施形態のフィールド機器3は、フィールド機器1の伝送部200に代えて伝送部200Bを設けることで、フィールド機器3の消費電量を低減するようにしたものである。
【0069】
伝送部200Bは、図1に示す伝送部200に電源遮断部400を追加した構成である。電源遮断部400は、電源電圧V1,V2の何れかに異常があった場合に、バーンアウト信号の出力に不必要な電子部品(例えば、センサモジュール100)への電源供給を遮断する。図6に示す通り、電源遮断部400は、ANDゲート410及びスイッチ420を備える。
【0070】
ANDゲート410は、電源監視部220から出力される信号M1と、電流制御部240から出力される信号Hとの論理積を演算する。信号Hは、電源監視部221から出力される信号M2と同様に、電源電圧V2が正常である場合にはHighレベルであり、電源電圧V2に異常があった場合にはLowレベルとなる信号である。スイッチ420は、電源回路213と電源回路214との間に接続されており、ANDゲート410からの信号に応じて、オン状態又はオフ状態になる。具体的には、ANDゲート410からの信号がHighレベルである場合にはオン状態になり、Lowレベルである場合にはオフ状態になる。スイッチ420がオン状態である場合には、電源回路213と電源回路214との間が電気的に接続され、スイッチ420がオフ状態である場合には、電源回路213と電源回路214との間の電気的な接続が遮断される。
【0071】
〈フィールド機器の動作〉
電源回路210及び電源回路211が正常に動作している場合(例えば、定常動作が行われている場合)には、電源監視部220から出力される信号M1及び電源監視部221から出力される信号M2は共にHighレベルである。よって、ANDゲート410には、Highレベルの信号M1とHighレベルの信号Hが入力され、ANDゲート410からスイッチ420に対してHighレベルの信号が出力される。これにより、スイッチ420はオン状態になり、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が行われる。
【0072】
電源回路210に異常が発生し、電源回路211が正常に動作している場合(電源電圧V1の異常時動作が行われる場合)には、電源監視部220から出力される信号M1はLowレベルとなり、電源監視部221から出力される信号M2はHighレベルである。よって、ANDゲート410には、Lowレベルの信号M1とHighレベルの信号Hが入力され、ANDゲート410からスイッチ420に対してLowレベルの信号が出力される。これにより、スイッチ420はオフ状態になり、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が遮断される。
【0073】
この場合において、電源監視部220から出力される信号M1はLowレベルであり、電源監視部221から出力される信号M2はHighレベルであるから、パルス信号生成部252から出力されるパルス信号Pが電流出力部260に入力される(図3参照)。その結果、電流出力部260からは、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。このように、フィールド機器1で生じた電源電圧V1の異常が外部装置Cに通知される場合に、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が遮断されることにより、フィールド機器3の消費電力が抑制される。
【0074】
電源回路210が正常に動作しており、電源回路211に異常が発生した場合(電源電圧V2の異常時動作が行われる場合)には、電源監視部220から出力される信号M1はHighレベルであり、電源監視部221から出力される信号M2はLowレベルとなる。よって、ANDゲート410には、Lowレベルの信号M1とHighレベルの信号Hが入力され、ANDゲート410からスイッチ420に対してLowレベルの信号が出力される。これにより、スイッチ420はオフ状態になり、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が遮断される。
【0075】
この場合において、電源監視部220から出力される信号M1はHighレベルであり、電源監視部221から出力される信号M2はLowレベルであるから、電流制御部240からは、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するPWM信号が出力される(図3参照)。その結果、電流出力部260からは、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。このように、フィールド機器1で生じた電源電圧V1の異常が外部装置Cに通知される場合に、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が遮断されることにより、フィールド機器3の消費電力が抑制される。
【0076】
電源回路210及び電源回路211に異常が発生した場合(起動時の動作が行われる場合を含む)には、電源監視部220から出力される信号M1及び電源監視部221から出力される信号M2は共にLowレベルとなる。よって、ANDゲート410には、Lowレベルの信号M1とLowレベルの信号Hが入力され、ANDゲート410からスイッチ420に対してLowレベルの信号が出力される。これにより、スイッチ420はオフ状態になり、電源回路213から電源回路214への電源電圧V4の供給が遮断される。
【0077】
以上の通り、本実施形態のフィールド機器3は、第1実施形態のフィールド機器1に電源遮断部400を設けた点が異なるだけで、基本的な構成は、第1実施形態のフィールド機器1と同様である。このため、本実施形態においても、電流制御部240に供給される電源電圧V1に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。また、電源電圧V1,V2が低電圧になった場合のみならず、電源電圧V1,V2が過電圧になった場合にも、フィールド機器1で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。加えて、本実施形態では、バーンアウト電流が出力される場合におけるフィールド機器3の消費電量を低減することができる。
【0078】
〔第4実施形態〕
〈フィールド機器〉
図7は、本発明の第4実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、図7においては、図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付してある。図7に示す通り、本実施形態のフィールド機器4は、図1に示すフィールド機器1の伝送部200を、センサモジュール100から分離された伝送部200Cに変えた構成である。このようなフィールド機器4は、電源回路214の二次側における電源電圧の異常があった場合に、フィールド機器4で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができるようにするものである。
【0079】
図7に示す通り、フィールド機器4のセンサモジュール100と伝送部200Cとは分離されており、これらは、2本のケーブルL3を介して接続されている。伝送部200Cは、図1に示す伝送部200に電源監視部500を追加し、電流制御部240を電流制御部240Cに変えた構成である。電源監視部500(第3電源監視部)は、電源電圧V5を監視しており、電源電圧V5が第5電圧範囲外となった場合には通信部230の動作を停止させる。電源電圧V5の異常とは、電源電圧V5が過電圧又は低電圧の場合である。
【0080】
ここで、上記の第5電圧範囲とは、上限閾値Vth51と下限閾値Vth52との間の範囲である。電源監視部500は、電源電圧V5が上限閾値Vth51を超えた場合には、電源電圧V5が過電圧であるとして通信部230の動作を停止させる。また、電源監視部500は、電源電圧V5が下限閾値Vth52未満である場合には、電源電圧V5が低電圧であるとして通信部230の動作を停止させる。
【0081】
電流制御部240Cは、図1に示す電流制御部240に、通信部230の通信状態を検出する機能を設けたものである。例えば、電流制御部240Cは、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)機能を用いて通信部230が正常に動作しているか否かを確認する。電流制御部240Cは、通信部230の通信エラーを検出した場合には通信部230が正常に動作していないと判定する。電流制御部240Cは、通信部230が正常に動作していないと判定した場合には、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するPWM信号(第2信号)を出力する。
【0082】
〈フィールド機器の動作〉
フィールド機器4がプラントや工場等に設置される場合において、センサモジュール100は伝送部200Cとは異なる位置に配置される場合がある。この場合には、伝送部200Cとセンサモジュール100とは、ケーブルL3を介して接続される。ここで、電源電圧V5の異常が発生した場合には、電源監視部500は、通信部230を停止させる。すると、電流制御部240Cは、通信部230が正常していないと判定して、演算部130から得られたセンサ値に応じて取り得るパルス幅とは異なるパルス幅を有するPWM信号を出力する。その結果、電流出力部260からは、バーンアウト電流(例えば、3.6mA以下の電流)が出力される。このようにして、電源回路214の二次側における電源電圧の異常があった場合でも、フィールド機器4で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。
【0083】
ここで、電源電圧V5の異常が発生した場合には、センサモジュール100が通信部230を介して電流制御部240Cに異常の発生を通知してもよい。例えば、電源監視部500が電源電圧V5の異常を検知した場合には、センサモジュール100が通知してもよい。但し、この場合には、センサモジュール100は、ケーブルL3を介して電源監視部500から異常の有無を示す信号を受信しなければならず、ケーブルL3の長さによっては異常の発生から、電流制御部240Cへの異常の通知までに相当な時間を要す場合がある。また、ケーブルL3は、ノイズの侵入経路になりやすい。そのため、そのノイズによって電源監視部500からセンサモジュールへの異常の通知が正しく行われず、電源電圧V5の異常を外部装置Cに通知することができない場合がある。
【0084】
そこで、本実施形態のフィールド機器4は、センサモジュール100へ供給される電源電圧に異常が発生した場合には、通信部230の通信にアナログ的に割り込み、通信部230を停止させる等の通信エラーを発生させる。これにより、電源電圧V5の異常を確実に外部装置Cに通知することができる。
【0085】
以上の通り、本実施形態のフィールド機器4は、第1実施形態のフィールド機器1に電源監視部500を設け、電流制御部240を電流制御部240Cに変えただけで、基本的な構成は、第1実施形態のフィールド機器1と同様である。このため、本実施形態においても、電流制御部240に供給される電源電圧V1に異常が生じた場合であっても、異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。また、電源電圧V1,V2が低電圧になった場合のみならず、電源電圧V1,V2が過電圧になった場合にも、フィールド機器1で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。加えて、本実施形態では、電源回路214の二次側における電源電圧の異常があった場合でも、フィールド機器4で異常が生じた旨を外部装置Cに通知することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態によるフィールド機器について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1~第4実施形態を、適宜組み合わせ可能である。例えば、第3実施形態のフィールド機器3及び第4実施形態のフィールド機器4は、第2実施形態のフィールド機器2が有する起動回路300を備えていても良い。
【0087】
また、上述した実施形態では、電源電圧V1が第1電源電圧であり、電源電圧V2が第2電源電圧であるものとして説明した。しかしながら、第2電源電圧は、第1電源電圧と異なっていればよい。例えば、第2電源電圧は、第1電源電圧よりも高い電圧であってもよい。一例として、第2電源電圧は、電源電圧V4でもよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、フィールド機器1~4が、センサSとは別体であるものとして説明した。しかしながら、フィールド機器1~4は、センサSを有してもよい。例えば、フィールド機器1~4は、渦流量計、温度センサ、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントの現場に設置される機器であって良い。
【0089】
ここで、フィールド機器1~4が設置されるプラントとしては、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。尚、上記のプラントは、あくまでも例示であり、上記のプラントに制限される訳ではない点に注意されたい。
【符号の説明】
【0090】
1~4 フィールド機器
100 センサモジュール
220,221 電源監視部
230 通信部
240,240C 電流制御部
250 異常通知部
260 電流出力部
300 起動回路
400 電源遮断部
500 電源監視部
L1,L2 伝送線
V1,V2 電源電圧
P パルス信号
S センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7