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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20230530BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20230530BHJP
   E05F 15/72 20150101ALI20230530BHJP
【FI】
B65G1/00 511Z
E05F15/73
E05F15/72
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020212814
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099062
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2022-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】稲留 慶太
(72)【発明者】
【氏名】森下 良治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137967(JP,A)
【文献】特開2019-198640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0032991(US,A1)
【文献】国際公開第2008/072344(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/20
E05F 15/00-15/79
A62C 2/06
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記防火扉が前記閉状態から前記開状態となるまでに要する時間に応じた時間を規定所要時間とし、複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始してから前記規定所要時間が経過した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる、物品搬送設備。
【請求項2】
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記防火扉が前記開状態となったことを検知する扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始した後、当該対象扉が前記開状態となったことを前記扉検知部が検知した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる、物品搬送設備。
【請求項3】
前記全扉開放制御では、前記対象扉が設けられた階の下方に隣接する隣接下階に設けられた前記防火扉が既に前記開状態である場合には、当該隣接下階のさらに下方に隣接する階に設けられた前記防火扉を次の開放の対象となる次対象扉の候補とする、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記昇降経路の周囲を複数階に亘って囲む周壁部と、
各階に設けられ、作業者が前記周壁部の内部へ出入りするための作業者用扉と、
前記作業者用扉が閉じていることを検知する作業者用扉検知部と、を備え、
前記制御部は、前記作業者用扉検知部により、全ての前記作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、前記全扉開放制御を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記昇降経路の周囲を複数階に亘って囲む周壁部と、
各階に設けられ、作業者が前記周壁部の内部へ出入りするための作業者用扉と、
前記作業者用扉が閉じていることを検知する作業者用扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記制御部は、前記作業者用扉検知部により、全ての前記作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、前記全扉開放制御を実行する、物品搬送設備。
【請求項6】
前記全扉開放制御の指令を受け付ける全扉開放スイッチと、各階の前記防火扉の開放の指令を受け付ける各扉開放スイッチとが、前記防火扉が設けられた各階に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記全扉開放スイッチは、前記防火扉が設けられた各階に加えて、前記防火扉が設けられていない最下階にも設けられている、請求項6に記載の物品搬送設備。
【請求項8】
前記防火扉の前記閉状態において、当該防火扉の上に存在する異物を検知する異物検知部を備え、
前記制御部は、前記異物検知部により、全ての前記防火扉の上に異物が検知されていないことを条件として、前記全扉開放制御を実行する、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各階の床部に防火扉が備えられた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような設備の一例が、特許第6304057号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された物品搬送設備は、最下階を除く各階の床部(F)に形成された開口(f)を通って各階に亘って物品(1)を搬送可能な昇降式搬送装置(2)を備えている。各階の床部(F)に形成された開口(f)には、防火扉(36)が設けられている。火災検知時には、防火扉(36)は、自動で閉状態となり、対応する開口(f)を塞ぐように構成されている。これにより、特許文献1に開示された物品搬送設備では、火災時において、隣接階への延焼の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6304057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような物品搬送設備では、復旧時には、防火扉を開放させる必要がある。この防火扉の開放は、人手により行うのが一般的である。しかしながら、各階に設けられた全ての防火扉の開放を人手により行う場合、その開放作業を行う作業者の負担が大きくなる。人手による作業の負担を軽減するため、防火扉の開放についても自動で行うことが考えられるが、各防火扉を開放させるタイミングについては検討の余地がある。
【0006】
上記実状に鑑みて、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切なタイミングで開放させることが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る物品搬送設備は、
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記防火扉が前記閉状態から前記開状態となるまでに要する時間に応じた時間を規定所要時間とし、複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始してから前記規定所要時間が経過した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる。
【0008】
本構成によれば、制御部が扉駆動部を制御することによって、防火扉を人手によらず開放させることができる。そして、制御部は、最下階を除く各階に設けられた全ての防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、この全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の防火扉を開放させる。これにより、例えば、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合などに比べて、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。具体的には、上記のように、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合には、開放動作中の防火扉からの落差は、最大で、最上階の防火扉から最下階の床面までの距離に相当することになる。しかし、本構成によれば、この落差を、対象扉から閉鎖扉までの上下方向の距離とすることができる。従って、万が一、防火扉の開放動作中に当該防火扉からの落下物があった場合でも、当該落下による衝撃を小さく抑えることが可能となる。以上のように、本構成によれば、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切なタイミングで開放させることができる。また、本構成によれば、このような全扉開放制御を、対象扉が開放に要する時間に応じた規定所要時間に基づいて行っているため、制御の簡略化を図り易い。
【0009】
また、本開示に係る物品搬送設備は、
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記防火扉が前記開状態となったことを検知する扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始した後、当該対象扉が前記開状態となったことを前記扉検知部が検知した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる。
【0010】
本構成によれば、上記と同様に、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切なタイミングで開放させることができる。また、本構成によれば、全扉開放制御で、対象扉が開状態となったことを扉検知部が検知した際に、当該対象扉の下方に隣接する閉鎖扉の開放を開始させているため、対象扉の開放動作中に当該対象扉の下方に隣接する閉鎖扉が開放動作を開始することがない。従って、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。
【0011】
また、本開示に係る物品搬送設備は、
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記昇降経路の周囲を複数階に亘って囲む周壁部と、
各階に設けられ、作業者が前記周壁部の内部へ出入りするための作業者用扉と、
前記作業者用扉が閉じていることを検知する作業者用扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記制御部は、前記作業者用扉検知部により、全ての前記作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、前記全扉開放制御を実行する。
【0012】
本構成によれば、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切な順番で開放させることができる。そして、例えば、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合などに比べて、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。また、本構成によれば、作業者用扉検知部により、全ての作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、全扉開放制御を実行する。ここで、作業者が周壁部の内部で作業を行う際に作業者用扉を閉じない運用としている場合には、全ての作業者用扉が閉じていることは、周壁部の内部に作業者がいないことを表す指標となる。従って、全ての作業者用扉が閉じていることを条件として全扉開放制御を実行することにより、周壁部の内部、詳細には、開口部の周りに作業者がいない状態で、全扉開放制御を実行することができる。
【0013】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】物品搬送設備の斜視図
図2】物品搬送設備を模式的に示す側面図
図3】平面視における物品搬送設備の要部断面図
図4】防火扉及びその周辺構造を示す断面図
図5】操作部および開閉状態表示部を示す図
図6】物品搬送設備の制御構成の一部を示すブロック図
図7】扉制御部が行う制御手順を示すフローチャート
図8】全扉開放制御を実行する場合の制御手順を示すフローチャート
図9】次対象扉決定処理を実行する場合の制御手順を示すフローチャート
図10】全扉開放制御を実行する場合の各階の防火扉の動作を示す模式図
図11】全扉開放制御を実行する場合の各階の防火扉の動作を示す模式図
図12】第2実施形態において、全扉開放制御を実行する場合の制御手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
物品搬送設備は、例えば、原材料、中間製品、或いは完成品等の搬送や保管を行う設備である。以下では、物品搬送設備がクリーン環境下において原材料の処理等を行うクリーンルームに設置される場合を例示して、物品搬送設備の第1実施形態および第2実施形態について説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1及び図2に示すように、物品搬送設備100は、複数階(本例では1階~5階)のそれぞれに設けられた床部3を備えている。また、物品搬送設備100は、最下階(1階)を除く各階の床部3に形成された開口部30と、各階の開口部30を通り、複数階に亘って設定された昇降経路P1と、昇降経路P1に沿って昇降する昇降体13により物品Wを搬送する昇降搬送装置1と、を備えている(図3も参照)。昇降搬送装置1は、上下方向に沿って複数階に亘って物品Wを搬送する。
【0017】
図1に示す例では、物品搬送設備100は、天井搬送装置99、及び床面搬送装置98を備えている。天井搬送装置99は、各階において天井近くを走行して物品Wを搬送する。床面搬送装置98は、各階の床面上を走行して物品Wを搬送する。昇降搬送装置1は、上下方向に沿って複数階に亘って物品Wを搬送する。これらの各搬送装置による搬送対象となる物品Wとしては、例えば半導体基板やレチクル基板等を収容する収容容器(FOUP(Front Opening Unified Pod)やレチクルポッド等)を例示することができる。
【0018】
本実施形態では、物品搬送設備100は、昇降経路P1の周囲を複数階に亘って囲む周壁部4と、各階に設けられ、作業者が周壁部4の内部へ出入りするための作業者用扉40と、を備えている。周壁部4は、筒状に形成されている。昇降搬送装置1は、周壁部4の内部に設けられている。一方、天井搬送装置99及び床面搬送装置98は、周壁部4の外部に設けられている。作業者は、作業者用扉40から周壁部4の内部に入ることで、昇降搬送装置1のメンテナンス等を行うことができる。本例では、各階における周壁部4の外側に、制御盤5が設けられている。制御盤5には、物品搬送設備100に備えられた各装置を制御するための制御機器が収容されている。
【0019】
図1図3に示すように、物品搬送設備100は、各階に設置されて周壁部4の内部に物品Wを搬入し又は周壁部4の内部から物品Wを搬出する入出搬送装置97を備えている。入出搬送装置97は、周壁部4を水平方向に貫通する状態で、周壁部4の内部と外部とに亘って設けられている。入出搬送装置97は、周壁部4の外部に位置する側の端部(外部側端部97a)と周壁部4の内部に位置する側の端部(内部側端部97b)との間で物品Wを搬送する。入出搬送装置97は、例えばベルトコンベヤやローラコンベヤ等のコンベヤを用いて構成される。
【0020】
図3に示すように、周壁部4の内部には、物品Wを保持する保持部8が複数設けられている。図示の例では、保持部8は、物品Wを下方から支持可能な支持体80を備えている。保持部8は、支持体80により物品Wを支持することで当該物品Wを保持するように構成されている。
【0021】
天井搬送装置99、床面搬送装置98、或いは作業者等により、入出搬送装置97の外部側端部97aに物品Wが載せられると、当該物品Wは、入出搬送装置97によって周壁部4の内部の内部側端部97bに搬送される。その後、物品Wは、昇降搬送装置1によって内部側端部97bから同一階又は他の階にある保持部8に搬送されて、その保持部8に保持される。また、保持部8に保持されている物品Wは、昇降搬送装置1によって保持部8から同一階又は他の階にある入出搬送装置97の内部側端部97bに搬送され、その後、入出搬送装置97によって外部側端部97aに搬送される。外部側端部97aに搬送された物品Wは、天井搬送装置99、床面搬送装置98、或いは作業者等により、外部側端部97aから他の場所へ搬送される。また、昇降搬送装置1により、内部側端部97bから別の入出搬送装置97の内部側端部97bに物品Wを搬送する場合や、保持部8から別の保持部8に物品Wを搬送する場合もある。
【0022】
図2及び図3に示すように、昇降搬送装置1は、上下方向に沿って複数階に亘って配置された案内レール11と、案内レール11に沿って昇降する昇降体13と、昇降体13に支持されて物品Wの保持及び移載を行う移載部14と、を備えている。
【0023】
本実施形態では、移載部14は、物品Wを保持可能な移載保持部140と、移載保持部140を水平方向に出退させる機構部及び移載保持部140を上下方向に沿う軸心周りに旋回させる機構部と、を備えている。例えば、移載部14は、水平多関節アーム(いわゆるSCARA;Selective Compliance Assembly Robot Arm)を用いて構成されている。
【0024】
案内レール11は、最下階を除く各階の床部に形成された開口部30を貫通するように配置されている。昇降体13の昇降経路P1は、案内レール11に沿って設定されている。すなわち上述したように、昇降体13の昇降経路P1は、各階の開口部30を通り、複数階に亘って設定されている。
【0025】
昇降体13は、搬送駆動部M1(昇降モータ)により駆動されるベルトに連結されており、ベルトの駆動により昇降するように構成されている。また、昇降体13に電力を供給する給電部12が、案内レール11の延在方向に沿って設けられている。昇降体13は、給電部12から電力の供給を受けて、各機構部を動作させる。
【0026】
図2図4に示すように、物品搬送設備100は、各階の開口部30に設けられた防火扉2を備えている。防火扉2は、開状態と閉状態との間で状態変更可能に構成されている。また、物品搬送設備100は、火災を検知する火災検知部SeF(図6参照)を備えている。防火扉2は、通常時は開状態であり、対応する開口部30は昇降体13が通過可能な状態とされる。防火扉2は、火災検知部SeFが火災を検知した場合に、閉状態となり、対応する開口部30を塞ぐ。これにより、開口部30を通じた隣接階への延焼を抑制することができる。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、防火扉2は、扉支持フレーム20に支持されている。扉支持フレーム20には、防火扉2を開閉方向に沿って案内する扉ガイド溝21が形成されている。防火扉2は、開閉方向に直交する幅方向の両端部が扉ガイド溝21に支持された状態で、開閉方向に沿ってスライドするように構成されている。
【0028】
物品搬送設備100は、防火扉2を駆動する扉駆動部M2を備えている。扉駆動部M2は、各階の防火扉2に設けられており、対応する防火扉2を駆動する。扉駆動部M2は、対応する防火扉2を開状態から閉状態に閉鎖駆動する。また、扉駆動部M2は、対応する防火扉2を閉状態から開状態に開放駆動する。
【0029】
本実施形態では、扉駆動部M2は、駆動モータM2aとスプリングM2bとを備えている。スプリングM2bは、防火扉2が閉状態となる方向(閉方向)に当該防火扉2を付勢している。防火扉2は、通常時は、不図示の固定手段により固定され、スプリングM2bの付勢力に抗って開状態に維持される。上記固定手段としては、例えば、電磁石を用いることができる。固定手段として電磁石を用いる場合、火災検知部SeFが火災を検知することで電磁石への電力が遮断され、防火扉2は、スプリングM2bの付勢力によって閉方向にスライドする。すなわち、防火扉2は、火災検知部SeFにより火災が検知された場合に、扉駆動部M2(スプリングM2b)によって閉鎖駆動され、開口部30を塞ぐ閉状態となる。
【0030】
詳細な図示は省略するが、防火扉2は、回転体(例えばプーリ)に巻回された無端体(例えばベルト)に連結されている。駆動モータM2aは、回転体を回転駆動することにより、防火扉2を開方向にスライドさせるように構成されている。すなわち、防火扉2は、扉駆動部M2(駆動モータM2a)によって開放駆動されて開状態となる。後述するように本実施形態では、防火扉2は、扉制御部H2から開放指令がなされた場合に、扉駆動部M2(駆動モータM2a)によって開放駆動される。
【0031】
本実施形態では、物品搬送設備100は、防火扉2の閉状態において、当該防火扉2の上に存在する異物を検知する異物検知部SeDを備えている。本例では、異物検知部SeDは、検知光を投光する投光部SeD1と、投光部SeD1から投光された検知光を受光する受光部SeD2と、を備えた光センサ(例えばライトカーテン)として構成されている。図4に示す例では、異物検知部SeDは、防火扉2を支持する扉支持フレーム20に設けられて、防火扉2の上方の領域に存在する異物を検知可能に構成されている。異物検知部SeDの検知対象としては、例えば、防火扉2の上でメンテンナンス等の作業を行っている作業者や、防火扉2の上に載置された道具や機器などである。これらの異物が異物検知部SeDの検知領域に存在している場合、投光部SeD1によって投光された検知光の少なくとも一部が、当該異物によって遮断されて受光部SeD2によって適切に受光されなくなる。本例では、異物検知部SeDは、受光部SeD2によって検知光が受光されない場合に、防火扉2の上に存在する異物を検知する。
【0032】
本実施形態では、物品搬送設備100は、防火扉2が開状態となったことを検知する扉検知部Se2を備えている。本例では、扉検知部Se2は、開状態の防火扉2の位置を検知するように構成されている。ここでは、扉検知部Se2は、光軸の遮断により防火扉2を検知する光センサとして構成されている。扉検知部Se2としての光センサは、閉状態の防火扉2の存在領域以外の領域であって、開状態の防火扉2の存在領域に向けて光を投光するように構成されている。これにより、扉検知部Se2は、閉状態の防火扉2は検知することなく、開状態の防火扉2を検知することが可能となっている。しかし、上記のような構成に限定されることなく、扉検知部Se2は、例えば、開状態の防火扉2の一部に接触して防火扉2の開状態を検知するスイッチなどにより構成されていても良い。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、物品搬送設備100は、作業者用扉40が閉じていることを検知する作業者用扉検知部Se40を備えている。本例では、作業者用扉検知部Se40は、閉じた作業者用扉40に接触する接触式センサとして構成されている。但し、このような構成に限定されることなく、作業者用扉検知部Se40は、非接触式のセンサにより構成されていても良い。
【0034】
本実施形態では、物品搬送設備100は、防火扉2を操作するための操作部6を備えている。操作部6は、周壁部4の外部に設けられている。本例では、操作部6は、各階の制御盤5に設けられている。
【0035】
図5に示すように、本実施形態では、各階全ての防火扉2を開放する全扉開放制御の指令を受け付ける全扉開放スイッチ61と、各階の防火扉2の開放の指令を受け付ける各扉開放スイッチ62とが、防火扉2が設けられた各階に設けられている。詳細は後述するが、全扉開放スイッチ61が操作される(押される)ことにより、各階全ての防火扉2が開放される。また、各扉開放スイッチ62が操作される(押される)ことにより、当該各扉開放スイッチ62が設けられた階の防火扉2が開放される。
【0036】
本実施形態では、上述の操作部6が、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とを備えている。操作部6は、制御盤5の内部に収容されている。すなわち、操作部6(全扉開放スイッチ61及び各扉開放スイッチ62)は、各階に設けられている。作業者は、制御盤5の蓋を開けることで、その中の操作部6を操作できるようになっている。図示の例では、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とのそれぞれは、カバー61C,62Cにより覆われている。作業者は、カバー61C,62Cを開けなければ、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とのそれぞれを操作することができないようになっている。これにより、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とのそれぞれが、必要の無い場合に誤って操作されることがないようにできる。さらに本例では、操作部6は、全扉開放スイッチ61の操作をロックするためのロックキー60を備えている。全扉開放スイッチ61は、ロックキー60を解除しなければ操作できないようになっている。図示の例では、ロックキー60は、全扉開放スイッチ61の操作をロックするロック状態と、全扉開放スイッチ61の操作を許容するアンロック状態とに、切り替え可能に構成されている。この切り替えは、専用のキーを鍵穴に差し込むことにより行うことができる。これにより、全扉開放スイッチ61が、誤って操作される可能性を更に低減することができる。
【0037】
本実施形態では、全扉開放スイッチ61は、防火扉2が設けられた各階に加えて、防火扉2が設けられていない最下階にも設けられている。これにより、作業者は、全ての階において、全扉開放スイッチ61を操作することが可能となっている。なお、最下階には、開口部30及びそれを塞ぐ防火扉2は設けられていない。そのため本例では、最下階には、開放の対象となる防火扉2が存在せず、各扉開放スイッチ62は設けられていない。
【0038】
本実施形態では、物品搬送設備100は、防火扉2の開閉状態を表示する開閉状態表示部7を備えている。開閉状態表示部7は、周壁部4の外部に設けられている。開閉状態表示部7は、操作部6の周辺に設けられていると好適である。これにより、操作部6を操作する作業者の目に留まり易い位置に開閉状態表示部7を配置することができる。本例では、開閉状態表示部7は、操作部6と共に、制御盤5に設けられている。すなわち、開閉状態表示部7は、各階に設けられている。図5に示す例では、開閉状態表示部7は、防火扉2が開状態であることを表示する開状態表示部71と、防火扉2が閉状態であることを表示する閉状態表示部72と、を備えている。本実施形態では、開状態表示部71及び閉状態表示部72は、表示灯として構成されている。開状態表示部71は、全ての階の防火扉2が開状態である場合に点灯する。また、閉状態表示部72は、全ての階の防火扉2が閉状態である場合に点灯する。
【0039】
次に、図6を参照して、物品搬送設備100の制御構成について説明する。図6は、物品搬送設備100の制御構成の一部を示している。
【0040】
図6に示すように、物品搬送設備100は、搬送駆動部M1を制御する搬送制御部H1と、複数の扉駆動部M2を制御する扉制御部H2と、を備えている。搬送制御部H1は、搬送駆動部M1を制御することにより、昇降搬送装置1の動作を制御する。扉制御部H2は、複数の扉駆動部M2のそれぞれを制御することにより、複数の防火扉2それぞれの動作を制御する。本実施形態では、扉制御部H2が「制御部」に相当する。
【0041】
また、物品搬送設備100は、設備内における複数の物品Wの保管や移動等を統括的に管理する統括制御装置Htを備えている。統括制御装置Htは、搬送制御部H1及び扉制御部H2との間で、有線又は無線により通信可能に構成されている。統括制御装置Htは、搬送制御部H1に対して、指定の場所に物品Wを搬送するための搬送指令や各動作を停止させるための停止指令等を行う。統括制御装置Ht、搬送制御部H1、及び扉制御部H2は、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0042】
本実施形態では、統括制御装置Htは、火災検知部SeF、扉検知部Se2、作業者用扉検知部Se40、及び異物検知部SeDによる検知結果を取得可能に構成されている。なお、扉検知部Se2、作業者用扉検知部Se40、及び異物検知部SeDのそれぞれは、各階に設けられている。
【0043】
統括制御装置Htは、火災検知部SeFにより火災が検知された場合に、搬送制御部H1に対して、昇降搬送装置1を停止させるための停止指令を行う。停止指令を受けた搬送制御部H1は、防火扉2と干渉しない位置に昇降搬送装置1を停止させる。ここで、「干渉しない位置」とは、昇降搬送装置1が防火扉2の移動軌跡と重複しない位置である。また、統括制御装置Htは、火災検知部SeFにより火災が検知された場合に、扉制御部H2に対して、各階の防火扉2を閉鎖させる閉鎖指令を行う。閉鎖指令を受けた扉制御部H2は、各階の防火扉2を閉鎖させる。本例では、扉制御部H2は、防火扉2の開放状態を維持している電磁石への電力を遮断する。これにより、防火扉2を閉方向に付勢しているスプリングM2b(扉駆動部M2:図4参照)が、防火扉2を閉方向にスライドさせて閉状態とする。このような防火扉2の閉鎖は、火災検知部SeFにより火災が検知された場合の他にも、防火扉2の保守や点検の際にも行われる。すなわち、火災時に防火扉2が適切に作動することを確認するために、火災時でなくても、防火扉2を閉鎖させることがある。このような保守や点検は定期的に行われる。
【0044】
防火扉2を閉鎖させた後の復旧時には、扉制御部H2は、各階の防火扉2を開放することが可能となっている。本開示に係る物品搬送設備100では、各階の防火扉2の開放が、人手によらず扉駆動部M2の駆動力によりで行われる。上述したように、防火扉2の開放は、扉制御部H2が扉駆動部M2(駆動モータM2a:図4参照)を制御することにより行われる。扉駆動部M2(駆動モータM2a)は、ベルトが巻回された回転体を回転駆動することで、当該ベルトに連結された防火扉2を開方向にスライドさせる。これにより、防火扉2の開放を自動で行うことができ、復旧時の作業者の作業負担を軽減することが可能となっている。以下、詳細に説明する。
【0045】
扉制御部H2は、複数の防火扉2のうちから選択された防火扉2を開放する各扉開放制御を実行可能である。各扉開放制御では、扉制御部H2は、選択された防火扉2に対応する扉駆動部M2を制御して、当該防火扉2を開放する。本実施形態では、扉駆動部M2は、複数階のうち何れかの階の各扉開放スイッチ62が操作された場合に、当該階の防火扉2を開放する。
【0046】
また、扉制御部H2は、複数の扉駆動部M2(駆動モータM2a:図4参照)を制御して、全ての防火扉2を開放する全扉開放制御を実行可能である。本実施形態では、扉駆動部M2は、各階の全扉開放スイッチ61が操作された場合に、全扉開放制御を実行する。すなわち、扉制御部H2は、複数階に設けられた全扉開放スイッチ61のうち何れかが操作された場合に、全扉開放制御を実行する。
【0047】
ここで、全ての防火扉2を開放させる構成において、例えば、各階の防火扉2を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉2を開放させる場合には、開放動作中の防火扉2からの落差は、最大で、最上階の防火扉2から最下階の床部3の面までの距離に相当することになる。そこで、本開示に係る物品搬送設備100において、全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の防火扉2を開放させる。これにより、万が一、開放動作中の防火扉2から落下物があった場合にも、上記の例のように、各階の防火扉2を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉2を開放させる場合などに比べて、その落下距離を小さく抑えることができる。すなわち本構成によれば、図10に示すように、開放動作中の防火扉2からの落差Lを、当該防火扉2の下方に隣接する階までの距離とすることができる。従って、上記の落差Lを小さく抑えることができる。
【0048】
ここでは、防火扉2が閉状態から開状態となるまでに要する時間に応じた時間を規定所要時間Trとし、複数の防火扉2のうち開放の対象となる防火扉2を対象扉2Tとし、閉状態の防火扉2を閉鎖扉2Cとする。そして、全扉開放制御では、対象扉2Tが開放を開始してから規定所要時間Trが経過した際に、当該対象扉2Tの下方に隣接する閉鎖扉2Cの開放を開始させる。規定所要時間Trは、防火扉2が閉状態から開状態となるまでに要する時間(すなわち開放動作時間)と同じ時間に設定されていても良いし、開放を終了するまでの時間に規定の余裕時間を加えた時間であっても良い。ここで、開放動作時間は、防火扉2ごと、或いは、防火扉2の開放動作ごとにばらつきがある場合には、それらの平均値とし、或いは、それらの中の最大値とすると好適である。また、余裕時間は、開放動作時間を平均値とした場合には、最大値と平均値との差以上の値に設定されると好適である。例えば、開放動作時間の平均値が60秒であり、最大値が62秒である場合において、余裕時間を3秒として、規定所要時間Trを63秒に設定することができる。
【0049】
本実施形態では、全扉開放制御には、対象扉2Tの次に開放の対象となる次対象扉2Tnを決定する次対象扉決定処理が含まれる。対象扉2Tが開放を終えると、次対象扉2Tnが対象扉2Tとされて開放を開始する。全扉開放制御では、全ての防火扉2が開放を終えるまでこの処理を繰り返す。ここで、本実施形態では、全扉開放制御(次対象扉決定処理)では、対象扉2Tが設けられた階の下方に隣接する隣接下階に設けられた防火扉2が既に開状態である場合には、当該隣接下階のさらに下方に隣接する階に設けられた防火扉2を次の開放の対象となる次対象扉2Tnの候補とする。図11に示す例では、(a)に示すように全扉開放制御を実行する以前の状態で、4階に設けられた防火扉2が開放状態となっており、それ以外の階に設けられた防火扉2が閉状態となっている。この場合、全扉開放制御の初期段階では、まず最上階(5階)の防火扉2が対象扉2Tとされ、開放状態である4階の防火扉2を除外して、閉状態である3階の防火扉2(閉鎖扉2C)が、最上階の防火扉2の次に開放される対象となる次対象扉2Tnとされる。
【0050】
次に、図7図9のフローチャートを参照して、扉制御部H2が行う制御の手順について説明する。
【0051】
図7は、扉制御部H2が全開放制御を実行するに至るまでの制御の手順を主に示している。図7に示すように、扉制御部H2は、全扉開放スイッチ61が操作されたか否か(押されたか否か)を判断する(ステップ#1)。扉制御部H2は、全扉開放スイッチ61が操作されたと判断した場合には(ステップ#1:Yes)、全ての作業者用扉40が閉じているか否かを判断する(ステップ#2)。この判断は、作業者用扉検知部Se40による検知結果に基づいて行われる。本例では、図6に示すように、各階全ての作業者用扉検知部Se40による検知結果が、統括制御装置Htを介して扉制御部H2に送信される。このように本実施形態では、扉制御部H2は、作業者用扉検知部Se40により、全ての作業者用扉40が閉じていることが検知されていることを条件として、全扉開放制御を実行する。
【0052】
図7に示すように、扉制御部H2は、全ての作業者用扉40が閉じていないと判断した場合、具体的には、全ての作業者用扉40のうち何れか1つでも開いていると判断した場合には(ステップ#2:No)、異常を報知して(ステップ#3)、ルーチンを終了する。
【0053】
扉制御部H2は、全ての作業者用扉40が閉じていると判断した場合には(ステップ#2:Yes)、全ての防火扉2に異物が無いか否かを判断する(ステップ#4)。この判断は、異物検知部SeDによる検知結果に基づいて行われる。本例では、図6に示すように、各階全ての異物検知部SeDによる検知結果が、統括制御装置Htを介して扉制御部H2に送信される。このように本実施形態では、扉制御部H2は、異物検知部SeDにより、全ての防火扉2の上に異物が検知されていないことを条件として、全扉開放制御を実行する。
【0054】
図7に示すように、扉制御部H2は、全ての防火扉2のうち何れか1つにでも異物が有ると判断した場合には(ステップ#4:No)、異常を報知して(ステップ#5)、ルーチンを終了する。扉制御部H2は、全ての防火扉2に異物が無いと判断した場合には(ステップ#4:Yes)、全扉開放制御を実行する(ステップ#6)。
【0055】
図8は、扉制御部H2が全扉開放制御を実行する場合の制御の手順を示している。図8に示すように、全扉開放制御では、まず扉制御部H2は、各階の閉鎖扉2Cのうち最上位置にある閉鎖扉2Cを対象扉2Tとして選択し(ステップ#61)、選択した対象扉2Tの開放を開始する(ステップ#62)。図10に示す例では、(a)に示す状態で、5階の閉鎖扉2Cが、対象扉2Tとされて開放を開始している。
【0056】
その後、扉制御部H2は、次対象扉決定処理を実行する(ステップ#63)。この次対象扉決定処理については、後に図9を用いて説明する。次対象扉決定処理により、次対象扉2Tnがないと判断された場合(ステップ#64:No)、すなわち、対象扉2Tの下方に閉じた防火扉2がない場合には、全扉開放制御を終了し、全てのルーチンを終了する(図7参照)。次対象扉決定処理により次対象扉2Tnが決定された場合(ステップ#64:Yes)、扉制御部H2は、対象扉2Tの開放開始から規定所要時間Trが経過したか否かを判断し(ステップ#65)、規定所要時間Trが経過したと判断した場合には(ステップ#65:Yes)、次対象扉決定処理により決定された次対象扉2Tnを対象扉2Tとして選択する(ステップ#66)。そして、処理はステップ#62へ戻る。このようにして、扉制御部H2は、全ての階の防火扉2が開放されるまで、ステップ#62~ステップ#66の処理を繰り返し行う。
【0057】
図9は、扉制御部H2が次対象扉決定処理(ステップ#63)を実行する場合の制御の手順を示している。上述のように、次対象扉決定処理は、全扉開放制御に含まれる処理である。図9に示すように、次対象扉決定処理では、まず、扉制御部H2は、対象扉2Tが設けられた階の下方に隣接する隣接下階が最下階でないか否かを判断する(ステップ#631)。隣接下階が最下階でない場合には(ステップ#631:Yes)、扉制御部H2は、対象扉2Tが設けられた階の下方に隣接する隣接下階を対象とする(ステップ#632)。その後、扉制御部H2は、対象とした隣接下階において防火扉2が閉じているか否かを判断する(ステップ#633)。扉制御部H2は、隣接下階の防火扉2が閉じていると判断した場合には(ステップ#633:Yes)、当該防火扉2を次対象扉2Tnとして決定する(ステップ#634)。一方、隣接下階が最下階である場合には(ステップ#631:No)、扉制御部H2は、次対象扉2Tnがないと判断する(ステップ#635)。
【0058】
また、扉制御部H2は、対象とした隣接下階において防火扉2が閉じていない、すなわち開いていると判断した場合には(ステップ#633:No)、隣接下階のさらに下方に隣接する階が最下階であるか否かを判断する(ステップ#636)。扉制御部H2は、隣接下階のさらに下方に隣接する階が最下階である場合には(ステップ#636:Yes)、次対象扉2Tnがないと判断する(ステップ#635)。扉制御部H2は、隣接下階のさらに下方に隣接する階が最下階でないと判断した場合には(ステップ#636:No)、当該階を対象として(#637)、ステップ#633の処理に戻る。以上のようにして、扉制御部H2は、次対象扉決定処理を実行する。
【0059】
次に、図10及び図11を参照して、扉制御部H2が全扉開放制御を実行する場合の、各階の防火扉2の動作について説明する。図10は、2階から5階の各階に設けられた防火扉2を全扉開放制御によって開放する場合の各防火扉2の動作を模式的に示している。図10に示す例では、全扉開放制御を実行する以前の状態で、2階から5階の全ての階の防火扉2が閉鎖扉2Cとなっている。
【0060】
図10の(a)に示す状態では、複数の閉鎖扉2Cのうち最上位置にある閉鎖扉2C、すなわち5階にある閉鎖扉2Cが対象扉2Tとして選択される。そして、5階にある防火扉2が開放を開始する。また、4階の防火扉2(閉鎖扉2C)が次の開放の対象となる次対象扉2Tnとされる。
【0061】
そして、5階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr(本例では60秒)経過後に、図10の(b)に示すように、5階の防火扉2は開放状態となる。なお、4階の防火扉2が閉鎖扉2Cであるため、開放動作中である5階の防火扉2からの落差Lは、4階の防火扉2までの距離である1階分の距離となる。また、5階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後、4階の防火扉2が対象扉2Tとされ開放を開始する。これにより、3階の防火扉2(閉鎖扉2C)が次対象扉2Tnとされる。
【0062】
そして、4階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後には、図10の(c)に示すように、4階の防火扉2は開放状態となる。なお、開放動作中である4階の防火扉2からの落差Lは、3階の防火扉2までの距離である1階分の距離となる。また、4階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後、3階の防火扉2が対象扉2Tとされ開放を開始する。これにより、2階の防火扉2(閉鎖扉2C)が次対象扉2Tnとされる。
【0063】
そして、3階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後には、図10の(d)に示すように、3階の防火扉2は開放状態となる。なお、開放動作中である3階の防火扉2からの落差Lは、2階の防火扉2までの距離である1階分の距離となる。また、3階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後、2階の防火扉2が対象扉2Tとされ開放を開始する。なお、最下階である1階には、防火扉2は設けられていない。そのため、2階の防火扉2が、全扉開放制御による開放の対象とされる最後の防火扉2となる。
【0064】
そして、2階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後には、図10の(e)に示すように、2階の防火扉2は開放状態となる。なお、開放動作中である2階の防火扉2からの落差Lは、最下階の床部3の上面までの距離である1階分の距離となる。2階の防火扉2が開放状態となることで、2階から5階の各階に設けられた全ての防火扉2が開放状態となり、全扉開放制御が完了する。
【0065】
次に、図11を参照して、各階の防火扉2のうち何れかが、全扉開放制御の実行以前において既に開放状態となっている場合の各防火扉2の動作について説明する。図11に示す例では、全扉開放制御を実行する以前の状態で、4階の防火扉2が既に開放状態となっている。
【0066】
図11の(a)に示す状態では、複数の閉鎖扉2Cのうち最上位置にある閉鎖扉2C、すなわち5階にある閉鎖扉2Cが対象扉2Tとして選択される。そして、5階にある防火扉2が開放を開始する。ここで、上述のように、4階の防火扉2は既に開放状態となっている。そのため、開放中である5階の防火扉2(対象扉2T)の下方に隣接する閉鎖扉2C、ここでは、3階の防火扉2が、5階の防火扉2の次に開放の対象となる次対象扉2Tnとされる。
【0067】
そして、5階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後には、図11の(b)に示すように、5階の防火扉2は開放状態となる。なお、4階の防火扉2が開放状態であると共に3階の防火扉2が閉鎖扉2Cであるため、開放動作中である5階の防火扉2からの落差Lは、3階の防火扉2までの距離である2階分の距離となる。また、5階の防火扉2が開放を開始してから規定所要時間Tr経過後、3階の防火扉2が対象扉2Tとされ開放を開始する。これにより、2階の防火扉2(閉鎖扉2C)が次対象扉2Tnとされる。これ以降の図11(c)~図11(d)に示す防火扉2の動作は、上記で説明した図10(d)~図10(e)に示す防火扉2の動作と同じであるため、説明を省略する。
【0068】
以上説明した物品搬送設備100によれば、全扉開放制御の実行により、各階の床部3に設けられた防火扉2を、人手によらず適切なタイミングで開放させることができる。また、このような全扉開放制御を、対象扉2Tが開放に要する時間に応じた規定所要時間Trに基づいて行っているため、制御の簡略化を図ることができる。
【0069】
〔第2実施形態〕
次に、物品搬送設備100の第2実施形態について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。特に説明しない点については、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
上記の第1実施形態では、全扉開放制御は、対象扉2Tが開放を開始してから規定所要時間Trが経過した際に、当該対象扉2Tの下方に隣接する閉鎖扉2Cの開放を開始させるものであった(図8図10図11参照)。一方、本実施形態では、図4及び図6に示す扉検知部Se2を利用して、全扉開放制御を実行する。上述のように、扉検知部Se2は、防火扉2が開状態となったことを検知するように構成されている。
【0071】
図12に示すように、本実施形態では、扉制御部H2は、次対象扉決定処理を実行した後(ステップ#630)、次対象扉決定処理により次対象扉2Tnが決定された場合(ステップ#640:Yes)、開放中である対象扉2Tが開状態となったか否かを判断する(ステップ#650)。本実施形態では、この判断が、扉検知部Se2による検知結果に基づいて行われる。そして、扉制御部H2は、対象扉2Tが開状態になったと判断した場合には(ステップ#650:Yes)、次対象扉2Tnを対象扉2Tとして選択し(ステップ#660)、処理はステップ#620へ戻る。このように、本実施形態に係る全扉開放制御では、対象扉2Tが開放を開始した後、当該対象扉2Tが開状態となったことを扉検知部Se2が検知した際に、当該対象扉2Tの下方に隣接する閉鎖扉2C(次対象扉2Tn)の開放を開始させる。この構成によれば、全扉開放制御で、対象扉2Tが開状態となったことを扉検知部Se2が検知した際に、当該対象扉2Tの下方に隣接する閉鎖扉2Cの開放を開始させているため、対象扉2Tの開放動作中に当該対象扉2Tの下方に隣接する閉鎖扉2Cが開放動作を開始することがない。従って、万が一、開放動作中の防火扉2から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。
【0072】
なお、図12におけるステップ#640以前の処理(ステップ#610~#640)は、図8におけるステップ#64以前の処理(ステップ#61~#64)と同様であるため、説明を省略する。また、図12におけるステップ#660は、図8におけるステップ#66の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0074】
(1)上記の第1実施形態では、対象扉2Tが開放を開始してから規定所要時間Tr経過後に、次対象扉2Tnの開放を開始させる例について説明した。また、上記の第2実施形態では、対象扉2Tが開放を開始した後、当該対象扉2Tが開状態となったことを扉検知部Se2が検知した際に、次対象扉2Tnの開放を開始させる例について説明した。しかし、これらのような例に限定されることなく、上記以外の条件に基づいて、次対象扉2Tnの開放を開始させても良い。例えば、作業者が指定した任意のタイミングで、対象扉2Tの次に次対象扉2Tnを開放させても良い。
【0075】
(2)上記の各実施形態では、物品搬送設備100が、防火扉2の閉状態において、当該防火扉2の上に存在する異物を検知する異物検知部SeDを備えている例について説明した。しかし、異物検知部SeDは、必須の構成ではない。そして、上記の各実施形態では、扉制御部H2は、異物検知部SeDにより、全ての防火扉2の上に異物が検知されていないことを条件として、全扉開放制御を実行する例について説明した。しかし、物品搬送設備100が異物検知部SeDを備えない場合、或いは備えていたとしても、全ての防火扉2の上に異物が検知されていないことは、全扉開放制御の実行の条件とされなくても良い。
【0076】
(3)上記の各実施形態では、物品搬送設備100が、作業者用扉40が閉じていることを検知する作業者用扉検知部Se40を備えている例について説明した。しかし、作業者用扉検知部Se40は、必須の構成ではない。そして、上記の各実施形態では、扉制御部H2は、作業者用扉検知部Se40により、全ての作業者用扉40が閉じていることが検知されていることを条件として、全扉開放制御を実行する例について説明した。しかし、物品搬送設備100が作業者用扉検知部Se40を備えない場合、或いは備えていたとしても、全ての作業者用扉40が閉じていることが検知されていることは、全扉開放制御の実行の条件とされなくても良い。
【0077】
(4)上記の各実施形態では、物品搬送設備100が、防火扉2が開状態となったことを検知する扉検知部Se2を備えている例について説明した。しかし、扉検知部Se2は、必須の構成ではない。
【0078】
(5)上記の各実施形態では、物品搬送設備100が、昇降経路P1の周囲を複数階に亘って囲む周壁部4を備えている例について説明した。しかし、周壁部4は、必須の構成ではない。
【0079】
(6)上記の各実施形態では、全扉開放制御の指令を受け付ける全扉開放スイッチ61と、各階の防火扉2の開放の指令を受け付ける各扉開放スイッチ62とが、防火扉2が設けられた各階に設けられている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、全扉開放スイッチ61は、複数階のうち何れかの階に設けられていれば良い。また、各扉開放スイッチ62についても、複数階のうち何れかの階に設けられていれば良い。なお、各扉開放スイッチ62が複数階のうち何れか1つの階に設けられている場合には、当該階に設けられた各扉開放スイッチ62によって、各階に設けられた防火扉2を選択して開放できるように構成されていてもと良い。
【0080】
(7)上記の各実施形態では、全扉開放スイッチ61は、防火扉2が設けられた各階に加えて、防火扉2が設けられていない最下階にも設けられている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、全扉開放スイッチ61は、最下階には設けられていなくても良い。
【0081】
(8)上記の各実施形態では、操作部6が、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とを備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、操作部6は、全扉開放スイッチ61と各扉開放スイッチ62とを備えず、例えば、扉制御部H2への指令を入力可能なタッチパネルやキーボード等の入力装置として構成されていても良い。
【0082】
(9)上記の各実施形態では、防火扉2が、開閉方向に沿ってスライドするように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、防火扉2は、例えば、支持軸まわりに回動することで、開状態と閉状態と間で状態変更するように構成されていても良い。
【0083】
(10)上記の各実施形態では、物品搬送設備100が、防火扉2の開閉状態を表示する開閉状態表示部7を備えている例について説明した。しかし、開閉状態表示部7は、必須の構成ではない。物品搬送設備100は、例えば、開閉状態表示部7に代えて、或いは開閉状態表示部7に加えて、防火扉2の開閉状態を音により報知する開閉状態報知部を備えていても良い。
【0084】
(11)上記の実施形態では、物品搬送設備100が、昇降搬送装置1以外の搬送装置として、天井搬送装置99、及び床面搬送装置98を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、物品搬送設備100は、天井搬送装置99や床面搬送装置98を備えていなくても良い。或いは、物品搬送設備100は、天井搬送装置99や床面搬送装置98以外の搬送装置を備えていても良い。
【0085】
(12)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0086】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0087】
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記防火扉が前記閉状態から前記開状態となるまでに要する時間に応じた時間を規定所要時間とし、複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始してから前記規定所要時間が経過した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる。
【0088】
本構成によれば、制御部が扉駆動部を制御することによって、防火扉を人手によらず開放させることができる。そして、制御部は、最下階を除く各階に設けられた全ての防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、この全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の防火扉を開放させる。これにより、例えば、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合などに比べて、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。具体的には、上記のように、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合には、開放動作中の防火扉からの落差は、最大で、最上階の防火扉から最下階の床面までの距離に相当することになる。しかし、本構成によれば、この落差を、対象扉から閉鎖扉までの上下方向の距離とすることができる。従って、万が一、防火扉の開放動作中に当該防火扉からの落下物があった場合でも、当該落下による衝撃を小さく抑えることが可能となる。以上のように、本構成によれば、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切なタイミングで開放させることができる。また、本構成によれば、このような全扉開放制御を、対象扉が開放に要する時間に応じた規定所要時間に基づいて行っているため、制御の簡略化を図り易い。
【0089】
他の構成に係る物品搬送設備として、
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記防火扉が前記開状態となったことを検知する扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
複数の前記防火扉のうち開放の対象となる前記防火扉を対象扉とし、前記閉状態の前記防火扉を閉鎖扉として、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が開放を開始した後、当該対象扉が前記開状態となったことを前記扉検知部が検知した際に、当該対象扉の下方に隣接する前記閉鎖扉の開放を開始させる。
【0090】
本構成によれば、上記と同様に、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切なタイミングで開放させることができる。また、本構成によれば、全扉開放制御で、対象扉が開状態となったことを扉検知部が検知した際に、当該対象扉の下方に隣接する閉鎖扉の開放を開始させているため、対象扉の開放動作中に当該対象扉の下方に隣接する閉鎖扉が開放動作を開始することがない。従って、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。
【0091】
ここで、
前記全扉開放制御では、前記対象扉が設けられた階の下方に隣接する隣接下階に設けられた前記防火扉が既に前記開状態である場合には、当該隣接下階のさらに下方に隣接する階に設けられた前記防火扉を次の開放の対象となる次対象扉の候補とする、と好適である。
【0092】
本構成によれば、全扉開放制御において最上階から下階に向かって順番に各階の防火扉を開放させる場合に、対象扉を順次適切に設定することができる。
【0093】
また、
前記昇降経路の周囲を複数階に亘って囲む周壁部と、
各階に設けられ、作業者が前記周壁部の内部へ出入りするための作業者用扉と、
前記作業者用扉が閉じていることを検知する作業者用扉検知部と、を備え、
前記制御部は、前記作業者用扉検知部により、全ての前記作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、前記全扉開放制御を実行する、と好適である。
【0094】
本構成によれば、作業者用扉検知部の検知結果に基づいて、全ての作業者用扉が閉じていることを条件として、全扉開放制御を実行する。ここで、作業者が周壁部の内部で作業を行う際に作業者用扉を閉じない運用としている場合には、全ての作業者用扉が閉じていることは、周壁部の内部に作業者がいないことを表す指標となる。従って、全ての作業者用扉が閉じていることを条件として全扉開放制御を実行することにより、周壁部の内部、詳細には、開口部の周りに作業者がいない状態で、全扉開放制御を実行することができる。
【0095】
他の構成に係る物品搬送設備として、
複数階のそれぞれに設けられた床部と、
最下階を除く各階の前記床部に形成された開口部と、
各階の前記開口部に設けられた防火扉と、
各階の前記開口部を通り、複数階に亘って設定された昇降経路と、
前記昇降経路に沿って昇降する昇降体により物品を搬送する昇降搬送装置と、を備えた物品搬送設備であって、
各階の前記防火扉に設けられ、対応する前記防火扉を閉状態から開状態に開放駆動する扉駆動部と、
複数の前記扉駆動部を制御する制御部と、
前記昇降経路の周囲を複数階に亘って囲む周壁部と、
各階に設けられ、作業者が前記周壁部の内部へ出入りするための作業者用扉と、
前記作業者用扉が閉じていることを検知する作業者用扉検知部と、を更に備え、
前記制御部は、複数の前記扉駆動部を制御して、全ての前記防火扉を開放する全扉開放制御を実行可能であり、
前記全扉開放制御では、最上階から下階に向かって順番に、各階の前記防火扉を開放させ、
前記制御部は、前記作業者用扉検知部の検知結果に基づいて、全ての前記作業者用扉が閉じていることを条件として、前記全扉開放制御を実行する。
【0096】
本構成によれば、各階の床部に設けられた防火扉を、人手によらず適切な順番で開放させることができる。そして、例えば、各階の防火扉を同時に開放させる場合、或いは、下階から上階に向かって順番に防火扉を開放させる場合などに比べて、万が一、開放動作中の防火扉から落下物があった場合にも、その落下距離を小さく抑えることができる。また、本構成によれば、作業者用扉検知部により、全ての作業者用扉が閉じていることが検知されていることを条件として、全扉開放制御を実行する。ここで、作業者が周壁部の内部で作業を行う際に作業者用扉を閉じない運用としている場合には、全ての作業者用扉が閉じていることは、周壁部の内部に作業者がいないことを表す指標となる。従って、全ての作業者用扉が閉じていることを条件として全扉開放制御を実行することにより、周壁部の内部、詳細には、開口部の周りに作業者がいない状態で、全扉開放制御を実行することができる。
【0097】
また、
前記全扉開放制御の指令を受け付ける全扉開放スイッチと、各階の前記防火扉の開放の指令を受け付ける各扉開放スイッチとが、前記防火扉が設けられた各階に設けられている、と好適である。
【0098】
本構成によれば、防火扉が設けられた各階において、全扉開放スイッチを操作することにより、制御部に全扉開放制御を実行させることができる。また、各扉開放スイッチを操作することにより、この操作された各扉開放スイッチが設けられた階の防火扉の開放を、制御部に行わせることができる。
【0099】
また、前記全扉開放スイッチと前記各扉開放スイッチとが設けられた構成において、
前記全扉開放スイッチは、前記防火扉が設けられた各階に加えて、前記防火扉が設けられていない最下階にも設けられている、と好適である。
【0100】
最下階の床部には、開口部が設けられておらず、それを塞ぐ防火扉も設けられていない。しかしながら、本構成によれば、最下階にも全扉開放スイッチが設けられているため、防火扉が設けられていない最下階においても、全扉開放スイッチを操作することにより、制御部に全扉開放制御を実行させることができる。
【0101】
また、
前記防火扉の前記閉状態において、当該防火扉の上に存在する異物を検知する異物検知部を備え、
前記制御部は、前記異物検知部により、全ての前記防火扉の上に異物が検知されていないことを条件として、前記全扉開放制御を実行する、と好適である。
【0102】
防火扉の上に異物が存在している状態で当該防火扉が開放されると、この異物が落下物となり得る。本構成によれば、異物検知部により、全ての防火扉の上に異物が検知されていないことを条件として、全扉開放制御を実行する。そのため、本構成によれば、全扉開放制御の実行中に上記のような落下物が発生することを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示に係る技術は、各階の床部に防火扉が備えられた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
100 :物品搬送設備
1 :昇降搬送装置
13 :昇降体
2 :防火扉
2C :閉鎖扉
2T :対象扉
2Tn :次対象扉
3 :床部
30 :開口部
4 :周壁部
40 :作業者用扉
61 :全扉開放スイッチ
62 :扉開放スイッチ
62 :各扉開放スイッチ
H2 :扉制御部(制御部)
M2 :扉駆動部
P1 :昇降経路
Se2 :扉検知部
Se40 :作業者用扉検知部
SeD :異物検知部
SeD40 :作業者用扉検知部
Tr :規定所要時間
W :物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12