(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230530BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230530BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230530BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230530BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/78 655A
(21)【出願番号】P 2020571083
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2020002095
(87)【国際公開番号】W WO2020162175
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2019017745
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健良
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
【審査官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-060859(JP,A)
【文献】特開2017-011031(JP,A)
【文献】特開2018-082058(JP,A)
【文献】特開2019-121797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
p型不純物を含む第1不純物領域と、
前記第1不純物領域上に設けられ、かつn型不純物を含む第2不純物領域と、
前記第2不純物領域上に設けられ、かつp型不純物を含む第3不純物領域と、
前記第2不純物領域から隔てられるように前記第3不純物領域上に設けられ、かつn型不純物を含む第4不純物領域と、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域の各々に接し、かつn型不純物を含む第5不純物領域とを有し、
前記第1主面には、前記第2不純物領域、前記第3不純物領域および前記第4不純物領域の各々に接する側面と、前記側面に連なりかつ前記第2不純物領域に接する底面とを有するゲートトレンチが設けられており、
前記第1不純物領域および前記第3不純物領域の各々を通り、かつ前記第1主面から前記第2主面に向かう方向において、p型不純物の濃度プロファイルは、第1極大値と、前記第1極大値を示す位置よりも前記第1主面側に位置する第3極大値とを有し、
前記第2不純物領域および前記第4不純物領域の各々を通り、かつ前記第1主面から前記第2主面に向かう方向において、n型不純物の濃度プロファイルは、第2極大値と、前記第2極大値を示す位置よりも前記第1主面側に位置する第4極大値とを有し、
前記第4極大値は前記第3極大値よりも大きく、前記第3極大値は前記第2極大値よりも大きく、かつ前記第2極大値は前記第1極大値よりも大きい、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1不純物領域の厚みと、前記第2不純物領域の厚みと、前記第3不純物領域の厚みと、前記第4不純物領域の厚みとの合計は、1.5μm以下である、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1不純物領域の厚みは、0.5μm以下である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2不純物領域の厚みは、0.5μm以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1極大値は、5×10
16cm
-3よりも大きい、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2極大値は、1×10
17cm
-3よりも大きい、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第3極大値は、1×10
18cm
-3よりも大きい、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第4極大値は、1×10
19cm
-3よりも大きい、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第2主面に対して垂直な方向から見て、前記第1不純物領域の少なくとも一部は、前記底面と重なるように配置されている、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第2主面に対して垂直な方向から見て、前記底面は、前記第2主面に平行な第1方向に沿って延在し、かつ前記第1不純物領域は、前記第2主面に平行でかつ前記第1方向に垂直な第2方向に沿って延在している、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記第2主面に対して垂直な方向から見て、前記第1不純物領域は、前記第2主面に平行な第1方向に沿って延在し、かつ前記底面は、前記第1方向に沿って延在している、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記第2主面に対して垂直な方向から見て、前記第1不純物領域は、前記底面と重ならないように配置されている、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記第2主面に対して垂直な方向から見て、前記第1不純物領域は、前記第2主面に平行な第1方向に沿って延在し、かつ前記底面は、前記第1方向に沿って延在している、請求項12に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。本出願は、2019年2月4日に出願した日本特許出願である特願2019-017745号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2014-041990号公報(特許文献1)には、トレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備えている。炭化珪素基板は、p型不純物を含む第1不純物領域と、第1不純物領域上に設けられ、かつn型不純物を含む第2不純物領域と、第2不純物領域上に設けられ、かつp型不純物を含む第3不純物領域と、第2不純物領域から隔てられるように第3不純物領域上に設けられ、かつn型不純物を含む第4不純物領域と、第1不純物領域および第2不純物領域の各々に接し、かつn型不純物を含む第5不純物領域とを有している。第1主面には、第2不純物領域、第3不純物領域および第4不純物領域の各々に接する側面と、側面に連なりかつ第2不純物領域に接する底面とを有するゲートトレンチが設けられている。第1不純物領域および第3不純物領域の各々を通り、かつ第1主面から第2主面に向かう方向において、p型不純物の濃度プロファイルは、第1極大値と、第1極大値を示す位置よりも第1主面側に位置する第3極大値とを有している。第2不純物領域および第4不純物領域の各々を通り、かつ第1主面から第2主面に向かう方向において、n型不純物の濃度プロファイルは、第2極大値と、第2極大値を示す位置よりも第1主面側に位置する第4極大値とを有している。第4極大値は第3極大値よりも大きく、第3極大値は第2極大値よりも大きく、かつ第2極大値は第1極大値よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構造を示す縦断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った横断面模式図である。
【
図3】
図3は、炭化珪素基板の厚み方向における第1p型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図4】
図4は、炭化珪素基板の厚み方向における第2p型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図5】
図5は、炭化珪素基板の厚み方向におけるp型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図6】
図6は、炭化珪素基板の厚み方向における第1n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図7】
図7は、炭化珪素基板の厚み方向における第2n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図8】
図8は、炭化珪素基板の厚み方向における第3n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図9】
図9は、炭化珪素基板の厚み方向におけるn型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
【
図10】
図10は、炭化珪素基板の厚み方向におけるキャリア濃度のプロファイルを示す模式図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を示す縦断面模式図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を示す縦断面模式図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第3工程を示す縦断面模式図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第4工程を示す縦断面模式図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構造を示す縦断面模式図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構造を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、耐圧のばらつきを低減可能な炭化珪素半導体装置を提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、耐圧のばらつきを低減可能な炭化珪素半導体装置を提供することができる。
[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”-”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0007】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置200は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する炭化珪素基板100を備えている。炭化珪素基板100は、p型不純物を含む第1不純物領域10と、第1不純物領域10上に設けられ、かつn型不純物を含む第2不純物領域20と、第2不純物領域20上に設けられ、かつp型不純物を含む第3不純物領域30と、第2不純物領域20から隔てられるように第3不純物領域30上に設けられ、かつn型不純物を含む第4不純物領域40と、第1不純物領域10および第2不純物領域20の各々に接し、かつn型不純物を含む第5不純物領域50とを有している。第1主面1には、第2不純物領域20、第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に接する側面5と、側面5に連なりかつ第2不純物領域20に接する底面6とを有するゲートトレンチ7が設けられている。第1不純物領域10および第3不純物領域30の各々を通り、かつ第1主面1から第2主面2に向かう方向において、p型不純物の濃度プロファイルは、第1極大値N1と、第1極大値N1を示す位置よりも第1主面側に位置する第3極大値N3とを有している。第2不純物領域10および第4不純物領域40の各々を通り、かつ第1主面1から第2主面2に向かう方向において、n型不純物の濃度プロファイルは、第2極大値N2と、第2極大値N2を示す位置よりも第1主面側に位置する第4極大値N4とを有している。第4極大値N4は第3極大値N3よりも大きく、第3極大値N3は第2極大値N2よりも大きく、かつ第2極大値N2は第1極大値N1よりも大きい。
【0008】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置200において、第1不純物領域10の厚みと、第2不純物領域20の厚みと、第3不純物領域30の厚みと、第4不純物領域40の厚みとの合計は、1.5μm以下であってもよい。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置200において、第1不純物領域10の厚みは、0.5μm以下であってもよい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第2不純物領域20の厚みは、0.5μm以下であってもよい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第1極大値N1は、5×1016cm-3よりも大きくてもよい。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第2極大値N2は、1×1017cm-3よりも大きくてもよい。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第3極大値N3は、1×1018cm-3よりも大きくてもよい。
【0014】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第4極大値N4は、1×1019cm-3よりも大きくてもよい。
【0015】
(9)上記(1)~(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10の少なくとも一部は、底面6と重なるように配置されていてもよい。
【0016】
(10)上記(9)に係る炭化珪素半導体装置200において、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10は、第2主面2に平行な第1方向101に沿って延在し、かつ底面6は、第2主面2に平行であってかつ第1方向101に垂直な第2方向102に沿って延在していてもよい。
【0017】
(11)上記(9)に係る炭化珪素半導体装置200において、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10は、第2主面2に平行な第1方向101に沿って延在し、かつ底面6は、第1方向101に沿って延在していてもよい。
【0018】
(12)上記(1)~(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置200において、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10は、底面6と重ならないように配置されていてもよい。
【0019】
(13)上記(12)に係る炭化珪素半導体装置200において、第2主面2に対して垂直な方向から見て、底面6は、第2主面2に平行な第1方向101に沿って延在し、かつ第1不純物領域10は、第2主面2に平行でかつ第1方向101に垂直な第2方向102に沿って延在している。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200としてのMOSFETの構成について説明する。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置200は、炭化珪素基板100と、ゲート電極64と、ゲート絶縁膜71と、層間絶縁膜72と、ソース電極60と、ドレイン電極63とを主に有している。炭化珪素基板100は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有している。炭化珪素基板100は、炭化珪素単結晶基板4と、炭化珪素単結晶基板4上に設けられた炭化珪素エピタキシャル層3とを含んでいる。炭化珪素単結晶基板4は、第2主面2を構成している。炭化珪素エピタキシャル層3は、第1主面1を構成している。
【0022】
炭化珪素単結晶基板4は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素基板100の第1主面1の最大径は、たとえば150mmであり、好ましくは150mm以上である。第1主面1は、たとえば{0001}面または{0001}面に対して8°以下オフした面である。具体的には、第1主面1は、たとえば(0001)面または(0001)面に対して8°以下オフした面である。第1主面1は、たとえば(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下オフした面であってもよい。炭化珪素単結晶基板4の厚みは、たとえば350μm500μm以下である。
【0023】
炭化珪素エピタキシャル層3は、第1不純物領域10と、第2不純物領域20と、第3不純物領域30と、第4不純物領域40と、第5不純物領域50と、コンタクト領域8とを主に有している。第1不純物領域10は、たとえば電界緩和領域である。第2不純物領域20は、たとえば電流拡散領域である。第3不純物領域30は、たとえばチャネル層(ボディ領域)である。第4不純物領域40は、たとえばソース領域である。第5不純物領域50は、たとえばドリフト領域である。
【0024】
第1不純物領域10は、p型不純物(第1p型不純物)を含んでいる。第1p型不純物は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型を付与可能なp型不純物である。第1不純物領域10は、p型領域である。第1不純物領域10の厚み(第1厚みT1)は、たとえば0.35μmである。第1厚みT1は、たとえば0.5μm以下であってもよいし、0.4μm以下であってもよい。第1厚みT1の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上であってもよい。
【0025】
第2不純物領域20は、n型不純物(第1n型不純物)を含んでいる。第2不純物領域20は、第1不純物領域10上に設けられている。第1n型不純物は、たとえばN(窒素)またはP(リン)などのn型を付与可能なn型不純物である。第2不純物領域20は、n型領域である。第2不純物領域20の厚み(第2厚みT2)は、たとえば0.3μmである。第2厚みT2は、たとえば0.5μm以下であってもよいし、0.4μm以下であってもよい。第2厚みT2の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上であってもよい。第2厚みT2は、第1厚みT1よりも小さくてもよい。
【0026】
第3不純物領域30は、p型不純物(第2p型不純物)を含んでいる。第3不純物領域30は、第2不純物領域20上に設けられている。第2p型不純物は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型を付与可能なp型不純物である。第3不純物領域30は、p型領域である。第3不純物領域30の厚み(第3厚みT3)は、たとえば0.2μmである。第3厚みT3は、たとえば0.3μm以下であってもよいし、0.25μm以下であってもよい。第3厚みT3の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上であってもよい。第3厚みT3は、第2厚みT2よりも小さくてもよい。
【0027】
第4不純物領域40は、n型不純物(第2n型不純物)を含んでいる。第4不純物領域40は、第2不純物領域20から隔てられるように第3不純物領域30上に設けられている。第2n型不純物は、たとえばN(窒素)またはP(リン)などのn型を付与可能なn型不純物である。第4不純物領域40は、n型領域である。第4不純物領域40の厚み(第4厚みT4)は、たとえば0.25μmである。第4厚みT4は、たとえば0.35μm以下であってもよいし、0.3μm以下であってもよい。第4厚みT4の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上であってもよい。第4厚みT4は、第3厚みT3よりも大きくてもよい。
【0028】
第5不純物領域50は、n型不純物(第3n型不純物)を含んでいる。第5不純物領域50は、第1不純物領域10および第2不純物領域20の各々に接している。第3n型不純物は、たとえばN(窒素)などのn型を付与可能なn型不純物である。第5不純物領域50は、n型領域である。第5不純物領域50の厚み(第5厚みT5)は、第1不純物領域10の厚み(第1厚みT1)よりも大きい。第5不純物領域50の厚み(第5厚みT5)は、たとえば0.5μmよりも大きくてもよい。
【0029】
コンタクト領域8は、第3p型不純物を含んでいる。コンタクト領域8は、たとえば第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に接している。第3p型不純物は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型を付与可能なp型不純物である。コンタクト領域8は、p型領域である。コンタクト領域8の厚みは、第4不純物領域40の厚み(第4厚みT4)よりも大きくてもよい。
【0030】
第1p型不純物は、第2p型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1p型不純物がアルミニウムであり、かつ第2p型不純物がアルミニウムであってもよい。第1p型不純物がアルミニウムであり、かつ第2p型不純物がホウ素であってもよい。同様に、第1p型不純物は、第3p型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、第2p型不純物は、第3p型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
第1n型不純物は、第2n型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1n型不純物が窒素であり、かつ第2n型不純物が窒素であってもよい。第1n型不純物が窒素であり、かつ第2n型不純物がリンであってもよい。同様に、第1n型不純物は、第3n型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、第2n型不純物は、第3n型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
第1不純物領域10の厚み(第1厚みT1)と、第2不純物領域20の厚み(第2厚みT2)と、第3不純物領域30の厚み(第3厚みT3)と、第4不純物領域40の厚み(第4厚みT4)との合計は、たとえば1.5μm以下である。第1厚みT1と、第2厚みT2と、第3厚みT3と、第4厚みT4との合計は、たとえば1.35μm以下であってもよいし、1.1μm以下であってもよい。第1厚みT1と、第2厚みT2と、第3厚みT3と、第4厚みT4との合計の下限は、特に限定されないが、たとえば0.5μm以上である。
【0033】
第1主面1には、ゲートトレンチ7が設けられている。ゲートトレンチ7は、側面5と、底面6とを有している。底面6は、側面5に連なっている。側面5は、第1主面1に連なっている。側面5は、第1主面1に対してほぼ垂直な方向に沿って延在している。底面6は、第1主面1とほぼ平行である。側面5と底面6との境界は曲率を有するように形成されていてもよい。ゲートトレンチ7の深さは、たとえば0.5μm以上1.5μm以下である。側面5は、第2不純物領域20、第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に接している。底面6は、第2不純物領域20に接している。底面6は、第3不純物領域30から離間している。底面6は、第1不純物領域10から離間していてもよいし、第1不純物領域10に接していてもよい。
【0034】
ゲート絶縁膜71は、たとえば二酸化珪素から構成されている。ゲート絶縁膜71は、ゲートトレンチ7の側面5と、底面6とに接するように設けられている。ゲート絶縁膜は、側面5において、第2不純物領域20、第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に接している。ゲート絶縁膜は、底面6において、第2不純物領域20に接している。ゲート絶縁膜71に接する第3不純物領域30には、チャネルが形成可能に構成されている。ゲート絶縁膜71の厚みは、たとえば40nm以上150nm以下である。
【0035】
ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71上に設けられている。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜71に接触して配置されている。ゲート電極は、ゲート絶縁膜71により形成される溝を埋めるように設けられている。ゲート電極64は、たとえば不純物がドーピングされたポリシリコンなどの導電体から構成されている。
【0036】
ソース電極60は、電極層61と、ソース配線62とを有している。電極層61は、たとえばNi合金により構成されている。ソース電極60は、第4不純物領域40に接している。ソース電極60は、コンタクト領域8に接していてもよい。電極層61は、たとえばTiとAlとSiを含む材料から構成されている。ソース配線62は、たとえばAlSiCuを含む材料から構成されている。
【0037】
層間絶縁膜72は、ゲート電極64を覆うように設けられている。層間絶縁膜72は、ゲート電極64およびゲート絶縁膜71の各々に接している。層間絶縁膜72は、たとえばNSG(None-doped Silicate Glass)膜またはPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜などにより構成されている。層間絶縁膜72は、ゲート電極64とソース電極60とを電気的に絶縁している。
【0038】
ドレイン電極63は、炭化珪素基板100の第2主面2に接して設けられている。ドレイン電極63は、第2主面2側において、第5不純物領域50と電気的に接続されている。ドレイン電極63は、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)など、n型の炭化珪素単結晶基板4とオーミック接合可能な材料から構成されている。ドレイン電極63は、炭化珪素単結晶基板4と電気的に接続されている。
【0039】
図2は、
図1のII-II線に沿った横断面模式図である。
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7は、第1方向101に沿って延在している。第1方向101は、ゲートトレンチ7の長手方向である。第2方向102は、ゲートトレンチ7の短手方向である。第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7は、実質的に長方形状である。
【0040】
第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。第1方向101は、たとえば<11-20>方向を第1主面1に投影した方向であってもよい。第2方向102は、たとえば<1-100>方向を第1主面1に投影した方向であってもよい。第1方向101および第2方向102の各々は、第2主面2に平行である。
【0041】
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10の少なくとも一部は、ゲートトレンチ7の底面6と重なるように配置されていてもよい。好ましくは、第2主面2に対して垂直な方向から見て、底面6の全面は、第1不純物領域10と重なるように配置されている。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10は、第1方向101に沿って延在している。別の観点から言えば、第1不純物領域10の長手方向は第1方向101であり、第1不純物領域10の短手方向は第2方向102である。第1方向101における第1不純物領域10の幅は、第2方向102における第1不純物領域10の幅(第1幅W1)よりも長い。第1幅W1は、たとえば0.5μm以上2.0μm以下である。第1幅W1は、第1厚みT1よりも大きくてもよい。
【0042】
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7の底面6は、第1方向101に沿って延在している。別の観点から言えば、底面6の長手方向は第1方向101であり、底面6の短手方向は第2方向102である。第1方向101における底面6の幅は、第2方向102における底面6の幅(第2幅W2)よりも長い。第2幅W2は、たとえば0.1μm以上1.5μm以下である。第2幅W2は、第1幅W1よりも小さくてもよい。ゲートトレンチ7は、第2方向102において、周期的に設けられていてもよい。同様に、第1不純物領域10は、第2方向102において、周期的に設けられていてもよい。隣り合う2つの第1不純物領域10の間隔W3は、たとえば0.5μm以上5.0μm以下である。
【0043】
図3は、炭化珪素基板の厚み方向における第1p型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図3の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図3の縦軸は、第1p型不純物濃度を示している。第1p型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
【0044】
図3に示されるように、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第1p型不純物の濃度プロファイル(第1濃度プロファイル11)は、第1極大値N1を有する。第1p型不純物の濃度プロファイルは、第1位置A1において、第1極大値N1を示す。第1位置A1から第1主面1に向かうにつれて、第1p型不純物の濃度は、単調に減少する。同様に、第1位置A1から第2主面2に向かうにつれて、第1p型不純物の濃度は、単調に減少する。第1極大値N1は、第1不純物領域10における第1p型不純物の濃度の最大値である。第1極大値N1は、たとえば5×10
16cm
-3よりも大きい。第1極大値N1は、たとえば1×10
17cm
-3よりも大きくてもよいし、1×10
18cm
-3よりも大きくてもよい。第1極大値N1の上限は、特に限定されないが、たとえば5×10
18cm
-3以下であってもよい。
【0045】
図4は、炭化珪素基板の厚み方向における第2p型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図4の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図4の縦軸は、第2p型不純物濃度を示している。第2p型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
【0046】
図4に示されるように、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第2p型不純物の濃度プロファイル(第3濃度プロファイル13)は、第3極大値N3を有する。第2p型不純物の濃度プロファイルは、第3位置A3において、第3極大値N3を示す。第3位置A3から第1主面1に向かうにつれて、第2p型不純物の濃度は、単調に減少する。同様に、第3位置A3から第2主面2に向かうにつれて、第2p型不純物の濃度は、単調に減少する。第3極大値N3は、第3不純物領域30における第2p型不純物の濃度の最大値である。第3極大値N3は、第1極大値N1よりも大きい。第3極大値N3は、たとえば1×10
18cm
-3よりも大きい。第3極大値N3は、たとえば2×10
18cm
-3よりも大きくてもよいし、5×10
18cm
-3よりも大きくてもよい。第3極大値N3の上限は、特に限定されないが、たとえば1×10
19cm
-3以下であってもよい。
図4に示されるように、第2p型不純物の濃度プロファイルは、第1主面1に達していてもよい。第1主面1における第2p型不純物の濃度(第2濃度N6)は、第3極大値N3よりも小さい。
【0047】
図5は、炭化珪素基板の厚み方向におけるp型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図5の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図5の縦軸は、p型不純物濃度を示している。p型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
図5に示される濃度プロファイルは、
図3に示される濃度プロファイルと、
図4に示される濃度プロファイルとが重ね合わされて形成されている。
図5に示されるように、第1不純物領域10および第3不純物領域30の各々を通り、かつ第1主面1から第2主面2に向かう方向において、p型不純物の濃度プロファイルは、第1極大値N1と、第1極大値N1を示す位置(第1位置A1)よりも第1主面側に位置(第3位置A3)する第3極大値N3とを有している。
【0048】
図5に示されるように、p型不純物の濃度プロファイルは、第1極小値N7を有する。p型不純物の濃度プロファイルは、第5位置A5において、第1極小値N7を有する。第5位置A5は、第1位置A1と、第3位置A3との間に位置している。第1極小値N7は、第1極大値N1よりも小さい。
【0049】
図6は、炭化珪素基板の厚み方向における第1n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図6の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図6の縦軸は、第1n型不純物濃度を示している。第1n型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
【0050】
図6に示されるように、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第1n型不純物の濃度プロファイル(第2濃度プロファイル12)は、第2極大値N2を有する。第1n型不純物の濃度プロファイルは、第2位置A2において、第2極大値N2を示す。第2位置A2から第1主面1に向かうにつれて、第1n型不純物の濃度は、単調に減少する。同様に、第2位置A2から第2主面2に向かうにつれて、第1n型不純物の濃度は、単調に減少する。第2極大値N2は、第2不純物領域20における第1n型不純物の濃度の最大値である。第2極大値N2は、第1極大値N1よりも大きい。第2極大値N2は、たとえば1×10
17cm
-3よりも大きい。第2極大値N2は、たとえば2×10
17cm
-3よりも大きくてもよいし、5×10
17cm
-3よりも大きくてもよい。第2極大値N2の上限は、特に限定されないが、たとえば1×10
18cm
-3以下であってもよい。
【0051】
図7は、炭化珪素基板の厚み方向における第2n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図7の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図7の縦軸は、第2n型不純物濃度を示している。第2n型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
【0052】
図7に示されるように、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第2n型不純物の濃度プロファイル(第4濃度プロファイル14)は、第4極大値N4を有する。第2n型不純物の濃度プロファイルは、第4位置A4において、第4極大値N4を示す。第4位置A4から第1主面1に向かうにつれて、第2n型不純物の濃度は、単調に減少する。同様に、第4位置A4から第2主面2に向かうにつれて、第2n型不純物の濃度は、単調に減少する。第4極大値N4は、第4不純物領域40における第2n型不純物の濃度の最大値である。
【0053】
第4極大値N4は、第3極大値N3よりも大きい。第3極大値N3は、第2極大値N2よりも大きい。第4極大値N4は、たとえば1×10
19cm
-3よりも大きい。第4極大値N4は、たとえば2×10
19cm
-3よりも大きくてもよいし、5×10
19cm
-3よりも大きくてもよい。第4極大値N4の上限は、特に限定されないが、たとえば1×10
20cm
-3以下であってもよい。
図7に示されるように、第2n型不純物の濃度プロファイルは、第1主面1に達していてもよい。第1主面1における第2n型不純物の濃度(第4濃度N8)は、第4極大値N4よりも小さい。第4濃度N8は、第2濃度N6(
図4参照)よりも大きい。
【0054】
図8は、炭化珪素基板の厚み方向における第3n型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図8の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図8の縦軸は、第3n型不純物濃度を示している。第3n型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
【0055】
後述するように、炭化珪素エピタキシャル層は、1回のエピタキシャル成長によって形成される。
図8に示されるように、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第3n型不純物の濃度は、ほぼ一定(第1濃度N5)である。別の観点から言えば、第1主面1と第2主面2との間において、第3n型不純物の濃度プロファイル(第5濃度プロファイル15)は、ほぼフラットである。第1主面1と第2主面2との間において、第5濃度プロファイル15は、連続的である。言い換えれば、第1主面1と第2主面2との間において、第5濃度プロファイル15は、非連続な部分を有していない。第1濃度N5は、第1極大値N1よりも小さい。第1濃度N5は、たとえば5×10
16cm
-3よりも小さい。
【0056】
図9は、炭化珪素基板の厚み方向におけるn型不純物の濃度プロファイルを示す模式図である。
図9の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図9の縦軸は、n型不純物濃度を示している。n型不純物濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。
図9に示される濃度プロファイルは、
図6に示される濃度プロファイルと、
図7に示される濃度プロファイルと、
図8に示される濃度プロファイルとが重ね合わされて形成されている。
図9に示されるように、第2不純物領域20および第4不純物領域40の各々を通り、かつ第1主面1から第2主面2に向かう方向において、n型不純物の濃度プロファイルは、第2極大値N2と、第2極大値N2を示す位置(第4位置A4)よりも第1主面側に位置(第2位置A2)する第4極大値N4とを有している。
【0057】
図9に示されるように、n型不純物の濃度プロファイルは、第2極小値N9を有する。n型不純物の濃度プロファイルは、第6位置A6において、第2極小値N9を有する。第6位置A6は、第2位置A2と、第4位置A4との間に位置している。第2極小値N9は、第2極大値N2よりも小さい。第2極小値N9は、第1濃度N5よりも大きくてもよい。
【0058】
図10は、炭化珪素基板の厚み方向におけるキャリア濃度のプロファイルを示す模式図である。
図10の横軸は、厚み方向の位置を示している。
図10の縦軸は、キャリア濃度を示している。キャリア濃度は、n型不純物濃度とp型不純物濃度との差の絶対値である。キャリア濃度は、たとえば
図1の矢印103に沿った方向に測定されたものである。キャリア濃度プロファイルは、実線で示されている。
【0059】
図10に示されるように、第1不純物領域の第1位置A1において、キャリア濃度プロファイルは、第5極大値n1を示す。同様に、第2不純物領域20の第2位置A2において、キャリア濃度プロファイルは、第6極大値n2を示す。同様に、第3不純物領域30の第3位置A3において、キャリア濃度プロファイルは、第7極大値n3を示す。同様に、第4不純物領域40の第4位置A4において、キャリア濃度プロファイルは、第8極大値n4を示す。第8極大値n4は、第7極大値n3よりも大きい。第7極大値n3は、第6極大値n2よりも大きい。第6極大値n2は、第5極大値n1よりも大きい。第5極大値n1は、第5不純物領域50のキャリア濃度(第3濃度n5)よりも大きい。
【0060】
第2主面2に対して垂直な方向において、第4位置A4は、第3位置A3と第1主面1との間に位置している。同様に、第2主面2に対して垂直な方向において、第3位置A3は、第4位置A4と第2位置A2との間に位置している。同様に、第2主面2に対して垂直な方向において、第2位置A2は、第3位置A3と第1位置A1との間に位置している。同様に、第2主面2に対して垂直な方向において、第1位置A1は、第2位置A2と第2主面2との間に位置している。
【0061】
第1不純物領域10と第5不純物領域50との境界において、キャリア濃度プロファイルは極小値を有する。第1不純物領域10と第2不純物領域20との境界において、キャリア濃度プロファイルは極小値を有する。第2不純物領域20と第3不純物領域30との境界において、キャリア濃度プロファイルは極小値を有する。第3不純物領域30と第4不純物領域40との境界において、キャリア濃度プロファイルは極小値を有する。
【0062】
図10に示されるように、第1不純物領域10においては、第1濃度プロファイル11と、第2濃度プロファイル12と、第5濃度プロファイル15とが重なっていてもよい。別の観点から言えば、第1不純物領域10は、第1n型不純物と、第1p型不純物と、第3n型不純物とを有していてもよい。第2不純物領域20においては、第1濃度プロファイル11と、第2濃度プロファイル12と、第3濃度プロファイル13と、第5濃度プロファイル15とが重なっていてもよい。別の観点から言えば、第2不純物領域20は、第1n型不純物と、第1p型不純物と、第2n型不純物と、第3n型不純物とを有していてもよい。第3不純物領域30においては、第1濃度プロファイル11と、第2濃度プロファイル12と、第3濃度プロファイル13と、第4濃度プロファイル14と、第5濃度プロファイル15とが重なっていてもよい。別の観点から言えば、第3不純物領域30は、第1n型不純物と、第1p型不純物と、第2n型不純物と、第2p型不純物と、第3n型不純物とを有していてもよい。
【0063】
第4不純物領域40においては、第2濃度プロファイル12と、第3濃度プロファイル13と、第4濃度プロファイル14と、第5濃度プロファイル15とが重なっていてもよい。別の観点から言えば、第4不純物領域40は、第1p型不純物と、第2n型不純物と、第2p型不純物と、第3n型不純物とを有していてもよい。第5不純物領域50においては、第1濃度プロファイル11と、第5濃度プロファイル15とが重なっていてもよい。別の観点から言えば、第5不純物領域50は、第1n型不純物と、第3n型不純物とを有していてもよい。
【0064】
次に、各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度の測定方法について説明する。
【0065】
各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて測定することができる。測定装置は、たとえばCameca製の二次イオン質量分析装置である。測定ピッチは、たとえば0.01μmである。検出するn型不純物が窒素の場合、一次イオンビーム(primary ion beam)は、セシウム(Cs)である。一次イオンエネルギーは、14.5keVである。二次イオンの極性(secondary ion polarity)は、負(negative)である。検出するp型不純物がアルミニウムまたはホウ素の場合、一次イオンビーム(primary ion beam)は、酸素(O2)である。一次イオンエネルギーは、8keVである。二次イオンの極性(secondary ion polarity)は、正(positive)である。p型不純物の濃度およびn型不純物の濃度の測定位置は、炭化珪素エピタキシャル基板の中央である。
【0066】
次に、各不純物領域の厚みの測定方法について説明する。
p型領域とn型領域との判別方法には、SCM(Scanning Capacitance Microscope)が用いられる。測定装置は、たとえばブルカー・エイエックスエス社製のNanoScope IVである。SCMは、半導体中のキャリア濃度分布を可視化する方法である。具体的には、金属コートされたシリコン探針を用いて、試料の表面上が走査される。その際、試料に高周波電圧が印加される。多数キャリアを励振して系の静電容量に変調が加えられる。試料に印可される高周波電圧の周波数は、100kHzであり、電圧は4.0Vである。各不純物領域の厚みは、SCMにより測定される。
【0067】
次に、本実施形態に係るMOSFET200の動作について説明する。ゲート電極64に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、ソース電極60とドレイン電極63との間に電圧が印加されても、第3不純物領域30と第2不純物領域20との間のpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極64に閾値電圧以上の電圧が印加されると、第3不純物領域30のゲート絶縁膜71と接触する付近であるチャネル領域において反転層が形成される。その結果、第4不純物領域40と第2不純物領域20とが電気的に接続され、ソース電極60とドレイン電極63との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET200は動作する。
【0068】
次に、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素基板100を準備する工程が実施される。たとえば改良レーリー法により成長させた炭化珪素単結晶インゴットをスライスして基板を切り出し、基板の表面に対して鏡面研磨を行うことにより、炭化珪素単結晶基板4が準備される。炭化珪素単結晶基板4は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素である。炭化珪素単結晶基板4の直径は、たとえば150mmである。
【0069】
次に、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程が実施される。たとえば、炭化珪素単結晶基板4上に、水素を含むキャリアガスと、シラン、プロパンを含む原料ガスと、窒素を含むドーパントガスが供給され、100mbar(10kPa)の圧力下、炭化珪素単結晶基板4が、たとえば1550℃程度に加熱される。これにより、n型を有する炭化珪素エピタキシャル層3が炭化珪素単結晶基板4上に形成される(
図11参照)。炭化珪素エピタキシャル層3にはn型不純物としての窒素がドーピングされている。n型不純物の濃度は、たとえば8.0×10
15cm
-3である。以上により、炭化珪素単結晶基板4と、炭化珪素単結晶基板上に設けられた炭化珪素エピタキシャル層3とを有する炭化珪素基板100が準備される。炭化珪素基板100は、第1主面1と、第2主面2とを有する。第1主面1は、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。
【0070】
次に、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入が実施される。まず、第1主面1上に第1イオン注入マスク(図示せず)が設けられる。次に、第1p型不純物が、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、p型を有する第1不純物領域10が形成される。第1p型不純物は、たとえばアルミニウムである。イオン注入エネルギーは、たとえば900keV以下である。次に、第1主面1上から第1イオン注入マスク(図示せず)が除去される。
【0071】
次に、第1主面1上に第2イオン注入マスク(図示せず)が設けられる。第2イオン注入マスクは、たとえばガードリング領域(図示せず)を覆っている。次に、第1n型不純物が、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、n型を有する第2不純物領域20が形成される。第2不純物領域20は、第1不純物領域10に接するように形成される。第1n型不純物は、たとえば窒素である。イオン注入エネルギーは、たとえば900keV以下である。
【0072】
次に、第2p型不純物が、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、p型を有する第3不純物領域30が形成される。第3不純物領域30は、第2不純物領域20に接するように形成される。第2p型不純物は、たとえばアルミニウムである。イオン注入エネルギーは、たとえば900keV以下である。
【0073】
次に、第2n型不純物が、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、n型を有する第4不純物領域40が形成される。第4不純物領域40は、第3不純物領域30に接するように形成される。第2n型不純物は、たとえばリンである。イオン注入エネルギーは、たとえば900keV以下である。次に、第1主面1上から第2イオン注入マスク(図示せず)が除去される。
【0074】
次に、第1主面1上に第3イオン注入マスク(図示せず)が設けられる。次に、第3p型不純物が、炭化珪素エピタキシャル層3に対してイオン注入される。これにより、p型を有するコンタクト領域8が形成される。コンタクト領域8は、第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に接するように形成される。第3p型不純物は、たとえばアルミニウムである。イオン注入エネルギーは、たとえば900keV以下である。次に、第1主面1上から第3イオン注入マスク(図示せず)が除去される。炭化珪素エピタキシャル層3において、イオン注入されなかった部分が第5不純物領域50である。以上により、第1不純物領域10と、第2不純物領域20と、第3不純物領域30と、第4不純物領域40と、第5不純物領域50と、コンタクト領域8とを有する炭化珪素基板100が準備される(
図12参照)。
【0075】
次に、第1主面1上にエッチングマスク(図示せず)が形成される。エッチングマスクは、たとえば堆積酸化膜を含む材料から構成されている。エッチングマスクは、ゲートトレンチ7が形成される領域上に開口が形成されている。次に、エッチングマスクを用いて、炭化珪素基板100に対してエッチングが行われる。たとえば、SF
6およびO
2雰囲気下において、第4不純物領域40と第3不純物領域30と第2不純物領域20とに対して異方性エッチングが行われる。異方性エッチングは、たとえばECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチングである。これにより、第1主面1にゲートトレンチ7が形成される(
図13参照)。ゲートトレンチ7は、側面5と、底面6とを有している。側面5は、第2不純物領域20と、第3不純物領域30と、第4不純物領域40に接している。底面6は、第2不純物領域20に接している。
【0076】
次に、ゲート絶縁膜71が形成される。具体的には、第1主面1と、側面5と、底面6とに接するゲート絶縁膜71が形成される。ゲート絶縁膜71は、側面5において、第4不純物領域40と、第3不純物領域30と、第2不純物領域20とに接している。ゲート絶縁膜71は、底面6において、第2不純物領域20と接している。ゲート絶縁膜71は、第1主面1において、第4不純物領域40に接している。ゲート絶縁膜71の厚みは、たとえば40nm以上150nm以下である。
【0077】
次に、NOアニール工程が実施される。具体的には、窒素を含む雰囲気中において、ゲート絶縁膜71が形成された炭化珪素基板100が、たとえば1100℃以上1300℃以下の温度で熱処理される。窒素を含む気体とは、たとえば窒素で10%希釈された一酸化窒素などである。炭化珪素基板100が、窒素を含む気体中において、たとえば30分以上360分以下の間アニールされる。
【0078】
次に、ゲート電極64が形成される。具体的には、ゲート絶縁膜71により形成された溝を埋めるようにゲート絶縁膜71上にゲート電極64が形成される。ゲート電極64は、たとえば不純物を含むポリシリコンを含む材料から構成される。次に、ゲート電極64を覆うように層間絶縁膜72が形成される。層間絶縁膜72は、たとえばNSG膜およびPSG膜の少なくともいずれかを含んでいる。
【0079】
次に、ソース電極60が形成される。具体的には、ソース電極60が形成される予定の領域において層間絶縁膜72およびゲート絶縁膜71が除去される。これにより、第4不純物領域40の一部およびコンタクト領域8が、層間絶縁膜72およびゲート絶縁膜71から露出する(
図14参照)。次に、電極層61が、第1主面1において、第4不純物領域40およびコンタクト領域8の双方と接するように形成される。電極層61は、たとえばスパッタリングにより形成される。電極層61は、たとえばTiAlSiを含む材料から構成されている。
【0080】
次に、電極層61が形成された炭化珪素基板100に対して、たとえば900℃以上1100℃以下のRTA(Rapid Thermal Anneal)が2分程度実施される。これにより、電極層61の少なくとも一部が、炭化珪素基板100が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、電極層61が第4不純物領域40とオーミック接合する。好ましくは、電極層61は、第4不純物領域40およびコンタクト領域8の各々とオーミック接合する。
【0081】
次に、電極層61に接し、かつ層間絶縁膜72を覆うようにソース配線62が形成される。ソース配線62は、好ましくはAlを含む材料からなり、たとえばAlSiCuを含む材料からなる。次に、炭化珪素単結晶基板4に対して裏面研磨が行われる。これにより、炭化珪素単結晶基板4の厚みが低減される。次に、ドレイン電極63が形成される。ドレイン電極63は、炭化珪素基板100の第2主面2に接して形成される。ドレイン電極63は、たとえばNiSiを含む材料により構成されている。ドレイン電極63は、たとえばTiAlSiなどであってもよい。
【0082】
ドレイン電極63の形成は、好ましくはスパッタリング法により実施されるが、蒸着により実施されても構わない。ドレイン電極63が形成された後、ドレイン電極63がたとえばレーザーアニールにより加熱される。これにより、ドレイン電極63の少なくとも一部がシリサイド化する。以上のように、
図1に示すMOSFET200が製造される。
【0083】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の構成について説明する。第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200は、主に第1不純物領域10がコンタクト領域8に対向している構成において、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と異なる構成を中心に説明する。
【0084】
図15に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第1不純物領域10がコンタクト領域8に対向している。別の観点から言えば、第1不純物領域10は、コンタクト領域8と第2主面2との間に位置している。別の観点から言えば、第1不純物領域10は、ゲートトレンチ7の底面6に対向しないように配置されている。第1不純物領域10は、第3不純物領域30および第4不純物領域40の各々に対向している。第1不純物領域10は、電極層61に対向している。
【0085】
図16は、
図15のXVI-XVI線に沿った横断面模式図である。
図16に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10およびゲートトレンチ7の各々は、第1方向101に沿って延在している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1不純物領域10は、ゲートトレンチ7に重ならないように配置されている。第2方向102において、ゲートトレンチ7と、第1不純物領域10とは、交互に配置されている。第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7は、隣り合う2つの第1不純物領域10の間に位置している。
【0086】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の構成について説明する。第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置200は、主に第1不純物領域10の延在方向がゲートトレンチ7の延在方向と直交している構成において、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置200と異なる構成を中心に説明する。
【0087】
図17に示されるように、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置200においては、第1不純物領域10は、ゲートトレンチ7の底面6と、第3不純物領域30と、コンタクト領域8と、電極層61とに対向している。別の観点から言えば、第1不純物領域10は、ゲートトレンチ7の底面6、第3不純物領域30、コンタクト領域8および電極層61の各々と、第2主面2との間に位置している。
【0088】
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に沿った横断面模式図である。
図18に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7の底面6は、第2主面2に平行な第1方向101に沿って延在し、かつ第1不純物領域10は、第2主面2に平行でかつ第1方向101に垂直な第2方向102に沿って延在している。別の観点から言えば、第1不純物領域10の延在方向は、ゲートトレンチ7の延在方向と直交している。第1不純物領域10の長手方向は、ゲートレンチの短手方向である。同様に、第1不純物領域10の短手方向は、ゲートレンチの長手方向である。
【0089】
第1不純物領域10は、第1方向101に沿って、周期的に設けられていてもよい。隣り合う2つの第1不純物領域10の間には、第5不純物領域50が配置されている。第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ7の底面6は、第1不純物領域10と重なっている部分(第1部分)と、第1不純物領域10と重なっていない部分(第2部分)とを有している。第5電流は、第5不純物領域50を通ってドレイン電極63に流れる。
【0090】
なお上記においては、ゲートトレンチ7を有するMOSFETを例示して、本開示に係る炭化珪素半導体装置200を説明したが、本開示に係る炭化珪素半導体装置200はこれに限定されない。本開示に係る炭化珪素半導体装置200は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0091】
次に、上記実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の作用効果について説明する。
第1不純物領域10(埋込p型領域)、第2不純物領域20(n型電流拡散領域)および第3不純物領域30(p型チャネル領域)の各々がイオン注入によって形成された炭化珪素半導体装置200においては、第2不純物領域20における第1n型不純物の濃度プロファイルは、第1不純物領域10における第1p型不純物の濃度プロファイルと、第3不純物領域30における第2p型不純物の濃度プロファイルと挟まれている。そのため、第2不純物領域20には、第1p型不純物の濃度プロファイルのテール部分における第1p型不純物と、第2p型不純物の濃度プロファイルのテール部分における第2p型不純物とが入り混んでいる。
【0092】
第1不純物領域10と第3不純物領域30との間隔が小さい場合(言い換えれば、第2不純物領域20の厚みが小さい場合)には、第2不純物領域20における第1n型不純物は、第1不純物領域10における第1p型不純物の濃度プロファイルのテールの部分との重なりと、第3不純物領域30における第2p型不純物の濃度プロファイルのテールの部分との重なりにより打ち消される。この場合、第2不純物領域20がn型にならず、炭化珪素半導体装置200として機能しない。第2不純物領域20をn型にするためには、第2不純物領域20の厚みを大きくする必要がある。第2不純物領域20の厚みを大きくすると、炭化珪素エピタキシャル層3の厚みが大きくなる。そのため、炭化珪素エピタキシャル層3は、通常2回に分けたエピタキシャル成長により形成される。
【0093】
具体的には、まず、第1炭化珪素層がエピタキシャル成長により形成される。次に、第1炭化珪素層に対してイオン注入が行われるより、第1不純物領域10が形成される。次に、第1炭化珪素層上に第2炭化珪素層がエピタキシャル成長により形成される。次に、第2炭化珪素層に対してイオン注入が行われることにより、第2不純物領域20、第3不純物領域30および第4不純物領域40が形成される。次に、第2炭化珪素層にゲートトレンチ7が形成される。
【0094】
第1回目のエピタキシャル成長により形成された第1炭化珪素層は、第1の厚みばらつきを有している。第1炭化珪素層の厚みは、ドリフト層(第5不純物領域50)の厚みに対応する。ドリフト層の厚みが大きいと、炭化珪素半導体装置200の耐圧は高くなる。反対に、ドリフト層の厚みが小さいと、炭化珪素半導体装置200の耐圧は低くなる。つまり、第1炭化珪素層の厚みのばらつきが大きくなると、炭化珪素半導体装置200の耐圧のばらつきも大きくなる。
【0095】
第2回目のエピタキシャル成長により形成された第2炭化珪素層は、第2の厚みばらつきを有している。第2炭化珪素層の厚みが大きくなると、ゲートトレンチ7の底面6と第4不純物領域40との距離が長くなる。当該距離が長くなると、炭化珪素半導体装置200の耐圧は低くなる。反対に、第2炭化珪素層の厚みが小さくなると、ゲートトレンチ7の底面6と第4不純物領域40との距離が短くなる。当該距離が短くなると、炭化珪素半導体装置200の耐圧は高くなる。つまり、第2炭化珪素層の厚みのばらつきが大きくなると、炭化珪素半導体装置200の耐圧のばらつきも大きくなる。
【0096】
一方、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置200によれば、第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第1p型不純物の濃度プロファイルは、第1極大値N1を有する。第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第1n型不純物の濃度プロファイルは、第2極大値N2を有する。第1主面1から第2主面2に向かう方向において、第2p型不純物の濃度プロファイルは、第3極大値N3を有する。第3極大値N3は第2極大値N2よりも大きく、かつ第2極大値N2は第1極大値N1よりも大きい。
【0097】
第2極大値N2が第1極大値N1よりも小さい場合と比較して、第2極大値N2が第1極大値N1よりも大きい場合には、第2不純物領域20の第1n型不純物が第1不純物領域10の第1p型不純物によって打ち消されづらくなる。そのため、第2極大値N2が第1極大値N1よりも小さい場合と比較して、第2極大値N2が第1極大値N1よりも大きい場合には、第2不純物領域20の厚みを小さくすることができる。結果として、炭化珪素エピタキシャル層を1回のエピタキシャル成長により形成することができる。従って、炭化珪素エピタキシャル層を2回のエピタキシャル成長により形成する場合と比較して、炭化珪素エピタキシャル層の厚みのばらつきを低減することができる。結果として、炭化珪素半導体装置200の耐圧のばらつきを低減することができる。
【0098】
また炭化珪素エピタキシャル層を2回のエピタキシャル成長により形成する場合と比較して、炭化珪素エピタキシャル層を形成するためのリードタイムを短縮することができる。結果として、炭化珪素半導体装置200のコストを低減することができる。
【0099】
さらに第2回目のエピタキシャル成長後の炭化珪素基板100は、第1回目のエピタキシャル成長後の炭化珪素基板100に対して変形している場合がある。炭化珪素エピタキシャル層を2回のエピタキシャル成長により形成する場合には、炭化珪素基板100の変形の影響により露光不良が発生する場合がある。炭化珪素エピタキシャル層を1回のエピタキシャル成長により形成することにより、上記露光不良の発生を抑制することができる。
【0100】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 第1主面、2 第2主面、3 炭化珪素エピタキシャル層、4 炭化珪素単結晶基板、5 側面、6 底面、7 ゲートトレンチ、8 コンタクト領域、10 第1不純物領域、11 第1濃度プロファイル、12 第2濃度プロファイル、13 第3濃度プロファイル、14 第4濃度プロファイル、15 第5濃度プロファイル、20 第2不純物領域、30 第3不純物領域、40 第4不純物領域、50 第5不純物領域、60 ソース電極、61 電極層、62 ソース配線、63 ドレイン電極、64 ゲート電極、71 ゲート絶縁膜、72 層間絶縁膜、100 炭化珪素基板、101 第1方向、102 第2方向、103 矢印、200 MOSFET(炭化珪素半導体装置)、A1 第1位置、A2 第2位置、A3 第3位置、A4 第4位置、A5 第5位置、A6 第6位置、N1 第1極大値、N2 第2極大値、N3 第3極大値、N4 第4極大値、N5 第1濃度、N6 第2濃度、N7 第1極小値、N8 第4濃度、N9 第2極小値、T1 第1厚み、T2 第2厚み、T3 第3厚み、T4 第4厚み、T5 第5厚み、W1 第1幅、W2 第2幅、W3 間隔、n1 第5極大値、n2 第6極大値、n3 第7極大値、n4 第8極大値、n5 第3濃度。