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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】飴
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20230530BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23G3/48
A61K36/185
A61K36/61
A61K36/53
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021205237
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2019520252の分割
【原出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2022037146
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017101767
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将平
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅
(72)【発明者】
【氏名】山下 美保
(72)【発明者】
【氏名】湊 孝文
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-523181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0273887(US,A1)
【文献】特表2012-521192(JP,A)
【文献】特開2009-153414(JP,A)
【文献】特開2005-162697(JP,A)
【文献】特表2001-514870(JP,A)
【文献】特開2006-104071(JP,A)
【文献】特表2009-506081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
CAplis/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルからなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに
(ii)エルダーベリー抽出物、グァバ、及びトゥルシー抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種
を含む飴。
【請求項2】
成分(i)がエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルを含む、請求項1に記載の飴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飴に関し、これは、食品、医薬部外品、又は医薬品分野において利用されうる。
【背景技術】
【0002】
飴のカテゴリーに属する製品において、メントールなどで感じる「清涼感」や酸味で感じる「爽快感」など、喉を含めた口腔内に与える官能的要素が重要視されている。
「清涼感」の付与にあたり、ペパーミント精油、ハッカ精油の主要な構成成分であるl-メントールは清涼感を与える物質として知られている。しかし、l-メントールは揮発性が高く清涼感が持続しない点や飲食物に添加した場合苦味を感じる点などの欠点を持っている。
【0003】
歯磨組成物にメントール、ペパーミント油、ハッカ油などを配合し、清涼感を付与することは広く行われており、これら成分が配合された市販製品は多数存在する。また、清涼感を強化もしくは清涼感を持続させる検討は数多く行われており、メントール類と各種冷感剤とを含有する毛髪及び身体洗浄剤組成物が優れた清涼効果及びその持続性を有すること、メントール類と各種冷感剤とを組み合わせて冷感効果を有する香料組成物が口腔用組成物に配合されることが知られている(特許文献1及び2)。しかし、いずれの技術も清涼感の持続性は十分でなく、口腔用組成物におけるメントールの苦味の抑制も満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-8535号公報
【文献】特開2007-2005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、清涼感の持続性と良好な風味を兼ね備えた飴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、冷涼成分であるエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルからなる群から選ばれる少なくとも1種に、緑茶抽出物、ペパーミント抽出物、エルダーベリー抽出物、セージ、グァバ、及びトゥルシー抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種を組み合わせることにより、清涼感の持続性と良好な風味を兼ね備えた飴が調製できることを見出した。
【0007】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)(i)エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルからなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに
(ii)緑茶抽出物、ペパーミント抽出物、エルダーベリー抽出物、セージ、グァバ、及びトゥルシー抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種
を含む飴。
(2)成分(ii)が緑茶抽出物及びペパーミント抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の飴。
(3)成分(i)がエチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルを含む、(1)又は(2)に記載の飴。
(4)成分(ii)が緑茶抽出物及びペパーミント抽出物を含む、(2)又は(3)に記載の飴。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、清涼感の持続性と良好な風味を兼ね備えた飴を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート」とは別名WS-5とも呼ばれ、例えば、Penta Manufacturing社等より市販品を購入することができる冷涼感に優れた化合物の一種であり、通常、香料として菓子類や清涼飲料等の添加剤として使用される。
エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートの含有量は、本発明の飴全量に対して通常0.00001~0.1W/W%であるが、本発明の効果の面から、0.0001~0.1W/W%が好ましく、0.001~0.1W/W%がより好ましく、異味・異臭を付与しないという点も含めた総合的観点からより好ましい含有量は、0.0001~0.01W/W%である。0.1W/W%を超える量を添加すると、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテートに起因する不快な刺激味により、服用感が著しく低下するため、好ましくない。
【0010】
本発明において、「コハク酸モノメンチル」とは、例えば、東京化成工業等より市販品を購入することができる冷涼感に優れた化合物の一種であり、通常、香料として菓子類や清涼飲料等の添加剤として使用される。
コハク酸モノメンチルの配合量は、本発明の飴全量に対して0.0001~1W/W%であり、好ましくは0.004~0.5W/W%であり、より好ましくは0.01~0.5W/W%である。配合量が0.0001W/W%未満では、清涼感の持続性が十分に得られず、1W/W%を超えるとむしろ清涼感が抑えられ、香味発現が阻害されて使用上好ましくない。
【0011】
本発明において、「緑茶抽出物」とは、例えばCamellia属(例えばC.sinensis及びC.assamica)の例えばやぶきた種又はそれらの雑種から得られる茶葉から、例えば40~140℃で0.1分~120時間加熱処理した緑茶葉抽出液の濃縮物を溶剤抽出あるいは吸着剤等を用いて精製したものを使用できる。市販品として、例えば、商品名「ピュアフェノン」(小川香料(株)製)、商品名「ポリフェノン」(東京フードテクノ(株)製)、商品名「テアフラン」(伊藤園(株)製)、商品名「サンフェノン」(太陽化学(株)製)等を利用してもよい。
緑茶抽出物の配合量は、本発明の飴全量に対して0.0001~10W/W%であり、好ましくは0.01~5W/W%である。配合量が10W/W%以上では、苦味が強く発現し、使用上好ましくない。
【0012】
本発明において、「ペパーミント抽出物」とは、例えばシソ科属のペパーミント(Mentha pipertia L.別名はセイヨウハッカ)の葉または全草から、水、二酸化炭素若しくはエタノール等の有機溶剤により抽出するか、又は水蒸気蒸留により得られたペパーミント抽出液の濃縮物を溶剤抽出あるいは吸着剤等を用いて精製したものを使用できる。市販品として、例えば、商品名「ペパーミント抽出液BG」(丸善製薬(株))、商品名「ミントポリフェノール」(小川香料(株))等を利用してもよい。
ペパーミント抽出物の配合量は、本発明の飴全量に対して0.0001~10W/W%であり、好ましくは0.001~5W/W%であり、より好ましくは0.01~5W/W%である。配合量が10W/W%以上では、苦味・渋みが強く使用上好ましくない。
【0013】
本発明において、「エルダーベリー抽出物」とは、ニワトコ属の植物であるセイヨウニワトコの果実から抽出・精製されたエキス又は粉末であり、例えば、市販品の「エルダーベリー果実色素」(トレードピア(株))、「エルダーベリーエキス末」((株)ライフヘルスケア)等を利用してもよい。
【0014】
本発明において、「セージ」とは、シソ科の植物であるセージの葉または花穂を粉砕或いは抽出・精製することにより得られた粉末又はエキスであり、例えば、市販品の「セージパウダー」(エスビー食品(株))、「セージ乾燥エキス」(アスク薬品(株))等を利用してもよい。
【0015】
本発明において、「グァバ」とは、フトモモ科に属する植物グァバの葉を粉砕或いは抽出・精製することにより得られた粉末又はエキスであり、例えば、「グァバフェノン」(備前化成(株))、「グァバの葉(粉末)」((株)ピーアットライフ)等を利用してもよい。
【0016】
本発明において、「トゥルシー抽出物」とは、シソ科に属する植物トゥルシーの葉を抽出・精製することにより得られたエキス又は粉末であり、例えば「トゥルシー抽出物」、「トゥルシーSCFE」((株)サビンサジャパンコーポレーション)、「ホーリーバジルエキス」(バイオアクティブズジャパン(株))等を利用してもよい。
エルダーベリー抽出物、セージ、グァバ、トゥルシー抽出物の各配合量は、本発明の飴全量に対して0.0001~10W/W%であり、好ましくは0.001~5W/W%である。配合量が10W/W%以上では、苦味・渋みが強く使用上好ましくない。
【0017】
本発明の飴の一実施態様では、緑茶抽出物及びペパーミント抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、緑茶抽出物及びペパーミント抽出物を含むことが特に好ましい。
本発明の飴の別の実施態様では、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート及びコハク酸モノメンチルを含むことが好ましい。
本発明の飴の更なる実施態様では、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート、コハク酸モノメンチル、緑茶抽出物を含むことが好ましい。
【0018】
本発明の「飴」とは、糖、糖アルコール、水あめなどを主原料とする口腔内で溶解および咀嚼して服用する固形物であり、例えば、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、トローチ、錠菓、フィルム剤が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また、その製造方法、形状および容器等の包装形態も限定されるものではない。また、飴には、上述した成分以外にもその他の成分として、糖類や糖アルコール類(砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖、還元水あめ、マルチトール、ソルビトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖など)、塩類(食塩など)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アドバンテーム、ネオテーム、プシコースなど)、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸、リン酸など)、香料、着色料、保存料、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリー、食物繊維等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【実施例
【0019】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0020】
砂糖167gと水あめ167gに水60gを添加し、常法にて加熱溶解して煮詰め、飴生地300gを調製した。その後、表1~6記載の組成となるように各成分を飴生地に添加し、成形、冷却固化させることでハードキャンディ(1個あたり2.3g、1処方あたり40個)を得た。得られたサンプル1個について試食し、舐め終わってから10分後の清涼感を実施例1~9および比較例1~4はパネル4名にて、また、実施例10~13および比較例5~10はパネル3名にてVAS(Visual Analog Scale)法を用いて評価した。すなわち、横に引かれた直線の左端を「清涼感を感じない」、右端を「清涼感を非常に感じる」とし、清涼感の程度を左端からの距離を測定して点数とした。各サンプル毎に平均値を算出した上で、各コントロール(実施例1、2については比較例1;実施例3~5については比較例2;実施例6~8、10~13、比較例5~8については比較例3;実施例9については比較例4;比較例10については比較例9)の清涼感を1とした場合の値を算出した。なお、実施例のペパーミント抽出物は小川香料(株)の「ミントポリフェノール」を、緑茶抽出物は小川香料(株)の「ピュアフェノン」を、エルダーベリー抽出物はトレードピア(株)の「エルダーベリー果実色素」を、セージ粉末はエスビー食品(株)の「セージパウダー」を、グァバ粉末は(株)ピーアットライフの「グァバの葉(粉末)」を、トゥルシー抽出物は(株)サビンサジャパンコーポレーションの「トゥルシーSCFE」を使用した。また、比較例のカシス抽出物は(株)明治フードマテリアの「明治カシスポリフェノール(AC10)」を、はちみつは日新蜂蜜(株)の「純粋ハンガリー産アカシアはちみつ」を、エルダーフラワー抽出物は(株)生活の木の「有機エルダーフラワー」より熱水抽出したものを、プロポリス抽出物は(株)FAPジャパンの「超臨界抽出プロポリスエキス末」を使用した。また、表中の「香料※」には、エチル-3-p-メンタン-3-カルボキサミドアセテート(WS-5)、N,2,3-トリメチル-2-(1-メチルエチル)ブタンアミド(WS-23)およびコハク酸モノメンチルのいずれも含まれていない。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
比較例1に対し、実施例1および実施例2の10分後の清涼感が強いことが認められた。
比較例2に対し、実施例3および実施例4の10分後の清涼感が強く、実施例5では、さらに清涼感が強いことが認められた。
比較例3に対し、実施例6、10~13の10分後の清涼感が強く、実施例7および実施例8はさらに清涼感が強いことが認められた。
比較例4に対し、実施例9の10分後の清涼感が強いことが認められた。
実施例1~13では、コントロールである比較例1~4に比べて、舐め終わってから10分後の清涼感の持続性の向上効果が認められた。また、比較例5~8の素材、比較例10の冷涼成分では、舐め終わってから10分後の清涼感の持続性の向上効果がないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、清涼感の持続性と良好な風味を兼ね備えた飴を提供することが可能となった。よって、本発明を医薬品、医薬部外品及び食品として提供することにより、これらの産業の発達が期待される。
【0029】
本出願は、日本で2017年5月23日に出願された特願2017-101767号を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。