(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/04 20060101AFI20230530BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20230530BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230530BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230530BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B60W40/04
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
G08G1/09 V
(21)【出願番号】P 2021563489
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048284
(87)【国際公開番号】W WO2021117132
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】武田 文紀
(72)【発明者】
【氏名】草冨 義也
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126360(JP,A)
【文献】特開2014-203235(JP,A)
【文献】特開2019-107996(JP,A)
【文献】特開平11-250396(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車線を走行する自車両の車速及び操舵を自動運転モードで制御する運転制御装置のプロセッサを用いて、前記自車両を前記第1車線に隣接する第2車線に自律的に車線変更させる車線変更制御を実行する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記自車両に搭載されたセンサから前記第2車線を走行する他車両の検出結果を取得し、
前記検出結果に基づいて、所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたか否かを判断し、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記車線変更制御の実行が可能であると判断し、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されていないと判断した場合には、前記車線変更制御の実行は不可であると判断し、
前記車線変更制御の実行が可能であると判断した場合は、前記自車両が前記他車両の前方で車線変更を実行するように前記運転制御装置に前記車線変更制御の実行の指令を出力する運転制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記検出結果に基づいて、前記所定の検出ゾーン内かつ前記自車両の後方側において前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記車線変更制御の実行が可能であると判断する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記他車両の車速を検出し、
前記自車両の車速が前記他車両の車速以上である場合に、前記車線変更制御が実行可能であると判断し、
前記自車両の車速が前記他車両の車速未満である場合は、前記自車両の車速が前記他車両の車速以上となるように、前記運転制御装置に車速を制御する指令を出力する、請求項1又は2に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記自車両の車速及び前記他車両の車速を検出し、
前記他車両の車速が前記自車両の車速よりも高く、かつ、前記他車両の車速と前記自車両の車速との差が所定速度差以上である場合は、前記他車両が検出されたという判断を取り消す、請求項1~3のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記他車両の前記自車両に対する相対的な位置を検出し、
前記他車両が前記自車両の前方側を走行しており、かつ、前記自車両の進行方向における前記自車両と前記他車両との間隔が所定距離以上である場合は、前記他車両が検出されたという判断を取り消す、請求項1~4のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記他車両が二輪車である場合は、前記他車両が検出されたという判断を取り消す、請求項1~5のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記車線変更制御が実行可能であると判断した場合は、前記車線変更制御を実行することを提案する車線変更情報を出力装置に出力し、
前記車線変更情報に基づいて、前記車線変更制御の実行の指示が入力装置に入力された場合は、前記運転制御装置に前記車線変更制御を実行する指令を出力する、請求項1~6のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されていないと判断した場合は、前記運転制御装置に前記車線変更制御の実行を禁止する指令を出力する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項9】
前記プロセッサは、運転モードを、ドライバの目視による前記自車両の周囲状況の監視が必要とされる第1モードと、前記プロセッサによる前記自車両の周囲状況の監視が実行される前記自動運転モードである第2モードとの間で切り替え可能であり、
前記プロセッサは、前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記第2モードによる前記車線変更制御の実行が可能であると判断し、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されていないと判断した場合に、前記第2モードによる前記車線変更制御の実行は可能ではないと判断するとともに、前記運転モードを前記第1モードに設定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項10】
前記第1モードは、前記自車両のドライバがステアリングホイールを持っていない場合は前記プロセッサによる操舵制御が作動しないハンズオンモードであり、
前記第2モードは、前記ドライバがステアリングホイールから手を離しても前記プロセッサによる操舵制御が作動するハンズオフモードである、請求項
9に記載の運転制御方法。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記第2車線に前記自車両が車線変更を行うために必要なスペースがあるか否かを判断し、
前記スペースが無いと判断した場合は、前記運転制御装置に前記車線変更制御の実行を禁止する指令を出力する、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項12】
前記プロセッサは、運転モードを、第1モードと、前記第1モードよりも運転支援レベルが高い第2モードとの間で切り替え可能であり、
前記プロセッサは、前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記第2モードによる前記車線変更制御の実行が可能であると判断し、前記第2モードによる前記車線変更制御を実行することを提案する車線変更情報を出力装置に出力し、
前記車線変更情報に基づいて、前記車線変更制御の実行の指示が入力装置に入力された場合は、前記運転制御装置に前記第2モードによる前記車線変更制御を実行する指令を出力する、請求項1~11のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項13】
第1車線を走行する自車両の車速及び操舵を自動運転モードで制御し、前記自車両を前記第1車線に隣接する第2車線に自律的に車線変更させる車線変更制御を実行するプロセッサと、
前記第2車線を走行する他車両を検出する他車両検出部とを備え、
前記プロセッサは、
前記他車両検出部の検出結果に基づいて、所定の検出ゾーン内に前記第2車線を走行する他車両が検出されたか否かを判断し、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されたと判断した場合に、前記車線変更制御の実行が可能であると判断し、
前記所定の検出ゾーン内に前記他車両が検出されていないと判断した場合には、前記車線変更制御の実行は不可であると判断し、
前記車線変更制御の実行が可能であると判断した場合は、前記自車両が前記他車両の前方で車線変更を実行するように前記車線変更制御の実行の指令を出力する運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転操作に係る制御権が自動運転機能から運転者に移譲される可能性を運転者に通知する報知制御装置が記載されている。この報知制御装置では、車線変更(LC)が予定されているゾーンの混雑度が低い場合に、制御権が運転者に移譲される可能性を相対的に低く判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、車線変更が予定されているゾーンの混雑度が低く、交通の流れが円滑である場合に、他車両が高速でゾーンに接近して自車両の近くに急に現れる可能性が考慮されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自車両が車線変更を予定しているゾーンに他車両が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況で、自車両を自律的に車線変更させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転制御方法及び運転制御装置は、所定の検出ゾーン内に自車両の車線変更先の車線を走行する他車両が検出されたと判断した場合に、自車両を自律的に車線変更させる車線変更制御の実行が可能であると判断し、自車両が他車両の前方で車線変更を実行するように運転制御装置に車線変更制御の実行の指令を出力することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車線変更先の車線を走行する他車両の検出結果に応じて車線変更制御の実行可否を判断するので、自車両が車線変更を予定しているゾーンに他車両が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況で、自律的に自車両を車線変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示す運転制御方法における、第1車線を走行する自車両と第2車線を走行する他車両との位置関係の例を示す図である。
【
図4】
図2に示す運転制御方法における、第1車線を走行する自車両と第2車線を走行する他車両との位置関係の別例を示す図である。
【
図5】
図2に示す運転制御方法の手順の別例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
第1実施形態について、
図1~4に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る運転制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の運転制御装置1は、本発明に係る運転制御方法を実施する一実施の形態でもある。
図1に示すように、本実施形態に係る車両の運転制御装置1は、他車両検出部11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、出力装置15と、入力装置16と、駆動制御装置17と、プロセッサ18とを備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0010】
他車両検出部11は、自車両の周囲を走行する他車両を検出するためのセンサ11aを備える。センサ11aは、複数の各種センサから構成されたセンサ群であってもよい。センサ11aは、自車両に搭載されている。他車両検出部11は、センサ11aを用いて、自車両の周囲を走行する他車両を検出する。他車両検出部11は、検出結果をプロセッサ18に送出する。他車両検出部11がセンサ11aを用いて検出できる他車両は、自車両の走行車線と同一の車線を走行する先行車、後続車、自車両の走行車線に隣接する車線を走行する他車両又は自車両の対向車等である。他車両検出部11は、センサ11aとして、前方カメラ、側方カメラ、後方カメラ、前方レーダ、側方レーダ、後方レーダのうち少なくとも一つを有する。これにより、他車両検出部11は、センサ11aによって、自車両が走行する走行車線である第1車線と異なる第2車線を走行する他車両を検出する。また、他車両検出部11のセンサ11aは、車車間通信システムを有し、他車両との車車間通信により、他車両の位置情報や車速情報を取得することができる。さらに、他車両検出部11は、路側装置を含む車外の交通管理システムとの路車間通信システムを有し、センサ11aは、車外の交通管理システムとの通信により、他車両の位置情報や車速情報を取得することができる。交通管理システムは、日本国のITS :Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)を含む。
なお、本実施形態における第2車線は、自車両が走行する第1車線に隣り合う隣接車線のみならず、この隣接車線に隣り合う隣隣接車線をも含む。また、第2車線の範囲はこれに限定されず、第1車線に隣り合い、走行方向が同一方向の車線を含む。他車両検出部11は、自車両が走行する道路の車線の数、自車両の走行に影響を与える車線の数、自車両が走行することが可能な車線の数に応じて、他車両を検出する車線の範囲を設定する。
【0011】
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得する。自車位置検出装置12は、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔でプロセッサ18に出力される。
【0012】
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、プロセッサ18からアクセス可能なように構成されたメモリである。地図データベース13には、高精度のデジタル地図情報(高精度地図、ダイナミックマップ)が格納されている。本例において、格納された高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された、高さ情報を含む道路形状に基づく三次元地図情報である。高精度地図情報は、道路が有する複数のレーンの識別情報を含む。地図データベース13の地図情報には、道路及び/又はレーンカーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、車線数の減少位置についての三次元位置情報が含まれる。高精度地図情報には、サービスエリア/パーキングエリアなどの施設に関する情報も含まれる。
【0013】
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、乗員により操作されることで動作する。車載機器14は、ステアリングホイール14aを含む。また、その他の車載機器14としては、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14が乗員により操作された場合に、その情報がプロセッサ18に出力される。プロセッサ18は、操作情報に基づく制御命令を駆動制御装置17に出力する。駆動制御装置17は、制御命令に従って車両の駆動装置を駆動させる。
なお、車載機器14を操作する乗員は、主にドライバであるが、ドライバ以外の乗員が車載機器14を操作してもよい。
【0014】
出力装置15は、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカ、および振動体が埋設された座席シート装置などの装置である。出力装置15は、プロセッサ18の制御に従って、後述する提示情報および車線変更情報をドライバや他の乗員に報知する。
【0015】
入力装置16は、たとえば、乗員の手動操作による指示入力が可能なボタンスイッチが表示されるタッチパネル式のディスプレイ、又は乗員の音声による指示入力が可能なマイクなどの装置である。なお、タッチパネル式のディスプレイは、出力装置15として機能するとともに、入力装置16としても機能する。
また、入力装置16に指示を入力する乗員は、主にドライバであるが、ドライバ以外の乗員が入力装置16に指示を入力してもよい。
【0016】
駆動制御装置17は、自車両の運転を制御する。たとえば、駆動制御装置17は、自律速度制御機能により、加減速度および車速を調整するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)及びブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置17は、自律操舵制御機能により、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。例えば、駆動制御装置17は、自車両が走行する車線のレーンマーカを検出し、自車両が走行する車線内の中央を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置(横位置)を制御する。また、駆動制御装置17は、自車両の先行車追い越しや走行方向の変更などを制御する。さらに、駆動制御装置17は、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う。また、駆動制御装置17による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
【0017】
プロセッサ18は、自車両の運転を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0018】
プロセッサ18は、自車両の走行状況に関する走行情報を取得する。たとえば、プロセッサ18は、前方カメラ及び後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダ、後方レーダ、及び側方レーダによる検出結果を、走行情報として取得する。また、プロセッサ18は、車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバの顔の画像情報も走行情報として取得する。
【0019】
また、プロセッサ18は、自車両の現在位置の情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、プロセッサ18は、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、プロセッサ18は、乗員による車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。また、プロセッサ18は、他車両検出部11から自車両の周囲に存在する他車両の検出結果を取得する。
【0020】
さらに、プロセッサ18は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することで、自律走行制御機能により、自車両の車速及び操舵を自律制御する。プロセッサ18は、自律走行制御機能に基づく制御指示を駆動制御装置17に伝達する。
【0021】
なお、プロセッサ18は、運転支援レベルに応じた運転モードを設定することができ、設定された運転モードに応じて自車両の走行を支援することができる。運転支援レベルとは、運転制御装置1が自律走行制御機能によって車両の運転を支援する程度を示すレベルである。運転支援レベルが高くなるほど、車両の運転に対するドライバの寄与度は低くなる。具体的には、運転支援レベルは、米国自動車技術会(SAE:Society of Automotive Engineers)のSAE J3016に基づく定義等を用いて設定することができる。運転支援レベル0では、自車両の運転操作は、全て、ドライバの手動によって行われる。運転支援レベル1では、自車両の運転操作はドライバの手動運転が主体となるが、駆動制御装置17は、自動ブレーキ、追従、レーンキープ等のいずれかの機能によってドライバの手動運転を適宜、支援する。運転支援レベル2では、自車両の運転操作はドライバの手動運転が主体であるが、特定の条件の下で、駆動制御装置17が、自動ブレーキ、追従、レーンキープ等の機能のうち複数の機能を組み合わせて運転支援を実行することが可能である。運転支援レベル3では、駆動制御装置17が全ての運転タスクを実行するが、ドライバは、運転制御装置1から要請があった場合に、制御を取り戻し、手動により運転する準備をする必要がある。運転支援レベル4では、ドライバによる手動運転は必要とされず、プロセッサ18は、駆動制御装置17に、特定の条件の下で、全ての運転タスクを実行させ、自車両の周囲状況を監視することができる。運転支援レベル5では、プロセッサ18は、駆動制御装置17に、全ての条件下において、全ての運転タスクを実行させることができる。
なお、運転支援レベルの分類は、米国自動車技術会の定義に則った分類に限定されず、運転支援レベルは、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)のISO/TC204に基づいて定義されてもよい。また、運転支援レベルの分類は、その他の基準によって定義されているものであってもよい。
【0022】
なお、運転支援レベル0~1での運転モードを「手動運転モード」とする。また、運転支援レベル2~5での運転モードを「自動運転モード」とする。プロセッサ18は、ドライバの指示又は自車両の走行状況に応じて、手動運転モードと自動運転モードとを切り替えることができる。
【0023】
また、特に限定されないが、本実施形態の運転制御装置1は、ハンズオンモードとハンズオフモードとの自動運転モードの切替可能な自律運転機能を駆動制御装置17に実行させる。ハンズオンモード/ハンズオフモードの切り替えが有効に活用されるのは、自律運転機能のうち自律操舵制御機能である。自律操舵制御機能は、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで自車両の操舵制御を実行し、ドライバのハンドル操作を支援する機能である。この自律操舵制御機能は、例えば、車線中央付近を走行するようにステアリングを制御する車線中央維持機能、同一車線を走行するように横位置を制御するレーンキープ機能、走行中の車線から他の車線へ移動する車線変更支援機能、前方の他車両の横(隣接車線)を通過して前方へ移動する追い越し支援機能、及び目的地に至るルートを辿るために自律的に車線を変更するルート走行支援機能などを含む。
特に限定されないが、本実施形態の運転制御装置1は、以下の条件の何れか一つ以上又は全部を充足する場合に、上記の自律操舵制御機能をハンズオフモードで、駆動制御装置17に実行させる。言い換えると、下記の条件の一部又は全部を充足する場合には、第2モードのハンズオフモードで、つまり、ドライバがハンドルから手を離しても、運転制御装置1は駆動制御装置17に自律操舵機能を実行させることができる。
【0024】
一例ではあるが、以下に、車線中央維持機能におけるハンズオフモードへの遷移条件を示す。
・自車両が自動車専用道路を走行している。
・対向車線と構造的に分離された道路を走行している。
・高精度地図が整備され、高精度地図情報の利用が有効な道路を走行している。
・制限速度以下の車速で走行している。
・制限速度が所定速度(例えば60Km/h)以上の道路を走行している。
・全球測位衛星システム:GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号が有効である。
・ドライバモニタリングカメラがドライバを認識し、ドライバが前方を視認していることが検出されている。
・ドライバが前を向いている。
・現在位置の近傍(例えば、前方約800m以内)に料金所、自動車専用道路の出口、合流、交差点、車線数減少地点が無いことが確認された。
・現在位置の近傍(例えば、前方約500m以内)に100R以下の急カーブがない。
・アクセルペダルが踏まれていない。
・レーダ、ソナー、車両周囲監視カメラ、及びドライバモニタリングカメラのすべてにおいて異常が検出されていない。
【0025】
ハンズオフモードを用いた車線中央維持機能の実行中に、上記条件のうちの何れか一つ以上が非充足となった場合には、ハンズオンモードによる車線中央維持機能への切り替えが実行される。
第2モードであるハンズオフモードが許可される条件は、自律運転機能(レーンキープ機能、車線変更支援機能、追い越し支援機能、又はルート走行支援機能)ごとに定義することができる。もちろん、各自律運転機能が起動できる条件を充足することが前提となる。
【0026】
次に、運転制御装置1のプロセッサ18による運転制御方法の手順について、
図2~4に基づいて説明する。なお、
図3及び4には、第1車線31を走行する自車両10と、第1車線31に隣接する第2車線32を走行する他車両21と、第2車線32上かつ他車両21の後方側を走行する別の他車両である後続他車両22とが記載されている。自車両10の車速を車速V0、他車両21の車速を車速V1、後続他車両22の車速を車速V2とする。また、
図3及び4の例において、自車両10に対する他車両21の相対的な位置は、所定の検出ゾーンZ1内にあるものとする。所定の検出ゾーンZ1とは、運転制御装置1のプロセッサ18が他車両検出部11のカメラ又はレーダ等の光学センサを介して他車両21の挙動を監視することが可能な領域である。検出ゾーンZ1の範囲は、自車両10の性能等によって可変であり、実験に基づいて設定される。また、
図3及び4には、自車両10が車線変更を行う予定の領域である車線変更予定ゾーンZ2が図示されている。具体的には、車線変更予定ゾーンZ2は、第2車線32上において、相対的に自車両10よりも前方側寄りの位置に設定される。一方、後続他車両22は、自車両10の他車両検出部11が検出することができない程度、自車両10から離れた状態で、自車両10及び他車両21の後方側を走行しているものとする。
【0027】
また、以下の説明において、車線変更制御とは、第1車線31を走行する自車両10を、第1車線31と異なる第2車線32に自律的に移動させる制御、すなわち、自動運転モードで自車両10を車線変更させる制御である。
また、以下に説明する制御での処理及び判断は、運転制御装置1のプロセッサ18が各駆動装置に実行させる。
【0028】
図2に示すように、運転制御装置1が備えるプロセッサ18は、ステップS1において、車線変更の要求があるか否かを判断する。プロセッサ18は、車線変更の要求があるか否かを、例えば、ドライバによるウィンカーレバーの操作の有無に基づいて判断する。また、プロセッサ18は、車線変更の要求があるか否かを、ディスプレイに表示された画面上のスイッチにドライバの指が触れたか否かに基づいて判断してもよい。さらに、プロセッサ18は、目的地に至る予め算出された走行経路に基づいて、車線変更の要求があるか否かを判断してもよい。また、走行経路に存在する所定領域を回避する必要がある場合には、車線変更の要求があると判断してもよい。回避すべき所定領域は、工事領域、障害物の存在領域、駐車車両の存在領域、進入禁止領域、及び事故領域の内の何れか一つ以上の領域である。車線変更の要求が無い場合は、制御は終了する。
【0029】
ステップS1で、車線変更の要求があったことが判断されると、制御はステップS2に進む。ステップS2で、プロセッサ18は、自車両10に設けられた各種のカメラ又はレーダによって第2車線32に自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがあるか否かを判断する。例えば、工事等によって、第2車線32の道幅が狭くなっている場合は、自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがないと判断される。また、第2車線32に複数の他車両が走行しており、自車両10が割り込めるスペースがない場合も、自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがないと判断される。
【0030】
第2車線32に、自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがないと判断された場合に、プロセッサ18は、制御を終了させる。すなわち、プロセッサ18は、第2車線32に自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがない場合は、車線変更制御の実行を禁止する指令を運転制御装置1の駆動制御装置17に出力する。
なお、ステップS1で、車線変更の要求があったことが判断された場合、
図2の破線で示すように、制御は、ステップS2をスキップして、後述するステップS3に進んでもよい。すなわち、地図データベース13の情報や予め取得した交通情報等から、第2車線32に、車線変更を行うために必要なスペースが存在することが明らかである場合等は、ステップS2の処理は、スキップしてもよい。
【0031】
ステップS2で、第2車線32に、自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがあると判断された場合は、制御は、ステップS3に移り、プロセッサ18は、他車両検出部11が検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21の存在を検出したか否かを判断する。すなわち、プロセッサ18は、他車両検出部11のセンサ11aから取得した検出結果に基づいて、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されたか否かを判断する。具体的には、他車両検出部11のセンサ11aが、車車間通信又は路車間通信を介して他車両の存在を検出した場合であっても、プロセッサ18は、第2車線32の検出ゾーンZ1内に他車両21が検出された場合にのみ、「他車両21が検出された」と判断する。なお、他車両21は、
図3に示すように、自車両10の後方側を走行しているものであってもよく、
図4に示すように、自車両10の前方側を走行しているものであってもよい。図示はしないが、自車両10の側方を走行しているものでもよい。
【0032】
ステップS3で、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されていないと判断された場合、制御は、ステップS21に移り、プロセッサ18は、車線変更制御の実行は不可であると判断する。次に、制御は、ステップS22に移り、プロセッサ18は、出力装置15を介して、車線変更時の運転モードを、自動的に手動運転モードに設定することを通知する。すなわち、プロセッサ18は、ステップS22における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「車線変更制御の実行は不可である」という情報)を、出力装置15に出力する。よって、自車両10が自動運転モードで走行している場合は、出力装置15は、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに自動で切り替えることを、ドライバ等の乗員に通知する。また、自車両10が手動運転モードで走行している場合は、出力装置15は、車線変更時の運転モードを手動運転モードに維持することを、ドライバ等の乗員に通知する。出力装置15による通知は、ディスプレイの画面上のテキスト表示やスピーカから発せられる音声案内等によって行われる。
【0033】
そして次に、制御は、ステップS8に移り、プロセッサ18は、自車両10の車線変更のタイミングの前に、運転モードを手動運転モードに設定する。すなわち、自車両10が自動運転モードで走行している場合は、プロセッサ18は、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替える。また、自車両10が手動運転モードで走行している場合は、プロセッサ18は、運転モードを手動運転モードにそのまま維持する。これにより、ドライバの手動運転操作によって、自車両10の車線変更が実行される。すなわち、プロセッサ18は、他車両検出部11が検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21を検出していないと判断した場合は、自動運転モードでの車線変更制御の実行を禁止する指令を運転制御装置1の駆動制御装置17に出力する。
【0034】
なお、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されていないと判断された場合であって、自車両10が手動運転モードで走行している場合は、
図2の破線に示すように、制御は、ステップS22をスキップし、ステップS8に進んでもよい。すなわち、自車両10が手動運転モードで走行している場合は、プロセッサ18は、車線変更時の運転モードの設定を乗員に通知することなく、車線変更時の運転モードをそのまま手動運転モードに維持することができる。なお、この場合も、プロセッサ18は、ステップS21における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「車線変更制御の実行が不可である」という情報を含む指令)を、駆動制御装置17に出力している。この指令に基づき、駆動制御装置17は、車線変更制御を実行せず、自車両10の運転モードは手動運転モードに維持される。
【0035】
一方、ステップS3で、他車両検出部11が検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21を検出した場合、すなわち、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出されたと判断された場合は、制御は、ステップS4に移る。ステップS4で、プロセッサ18は、車線変更制御の実行が可能であると判断する。具体的には、
図3又は
図4に示す後続他車両22の車速V2が他車両21の車速V1よりも高い場合であっても、後続他車両22は他車両21に接近するにつれ減速すると予測される。従って、結果的には、後続他車両22の車速V2は、他車両21の車速V1とほぼ同一の速さになることが予測される。これにより、プロセッサ18は、第2車線32に他車両21の存在が検出されたと判断することにより、後続他車両22が後方側から、他車両21よりも速い車速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が低いと判断する。すなわち、プロセッサ18は、車線変更先の第2車線32上を後続他車両22が高速で自車両10に近づいてくる可能性が低い状況を選択し、後続他車両22が自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に急に入り込む可能性が低いと判断される状況で、車線変更制御の実行が可能であると判断する。
ここで、「車線変更先の第2車線32上を後続他車両22が後方側から高速で自車両10に近づいてくる」とは、自車両10が第2車線32に車線変更を行う際の車速V0よりも、後方側から近づいてくる後続他車両22の車速V2の方が高いことをいう。なお、通常は、自車両10が第2車線32に車線変更を行う際は、自車両10の車速V0は、他車両21の車速V1とほぼ同一、または近似した範囲(予め設定された所定値域)の速度である。
【0036】
そして、次に、ステップS5で、プロセッサ18は、出力装置15に、車線変更制御の実行の提案を含む車線変更情報を出力する。すなわち、プロセッサ18は、ステップS4における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「車線変更制御の実行が可能である」という情報を含む提案)を、出力装置15に出力する。具体的には、出力装置15のディスプレイの画面上に、車線変更制御の実行を提案するテキスト(例えば、「自動運転モードで車線変更しますか?」等)が表示される。また、出力装置15のスピーカから、車線変更制御の実行を提案する音声が出力されてもよい。
【0037】
次に、ステップS6で、プロセッサ18は、車線変更情報に基づいて、ドライバ等の乗員により自動車線変更の実行の指示が入力されたか否かを判断する。具体的には、出力装置15及び入力装置16として機能するディスプレイの画面に、車線変更制御の実行を提案するテキストとともに車線変更制御の実行の承認ボタンが表示され、乗員がこの承認ボタンにタッチすることで、車線変更制御実行の指示が入力される。また、出力装置15としてのスピーカから車線変更を提案する音声が出力された場合に、乗員が応答した発話の音声を入力装置16としてのマイクが検出することによって、車線変更制御の実行の指示が入力されてもよい。また、乗員がウィンカーの操作、ジャスチャー、瞼の動き、視線の動き等で、車線変更制御の実行の指示を入力装置16に入力してもよい。
【0038】
ステップS6で車線変更制御の実行の指示が入力されなかった場合は、制御はステップS8に移り、プロセッサ18は、自車両10の運転モードを手動運転モードに設定する。なお、プロセッサ18は、ステップS6とステップS8との間で、ステップS22のように、運転モードを手動運転モードに設定する旨を乗員に事前に通知してもよい。
【0039】
ステップS6で、車線変更情報に基づいて車線変更制御の実行の指示が入力された場合は、制御はステップS7に移り、プロセッサ18は、運転制御装置1の駆動制御装置17に指令を出力し、車線変更制御を実行する。具体的には、プロセッサ18は、自車両10の車速及び操舵を自動運転モードで制御し、自車両10を第1車線31に隣接する第2車線32に車線変更させる車線変更制御を実行する。なお、他車両21が自車両10の後方側を走行している場合は、
図3に示すように、自車両10は、他車両21の前方側の車線変更予定ゾーンZ2に向かって車線変更を行う。また、
図4に示すように、他車両21が自車両10の前方側を走行している場合は、自車両10は、他車両21の後方側の車線変更予定ゾーンZ2に向かって車線変更を行う。
【0040】
なお、「後方側」及び「前方側」とは、
図3及び
図4に示す第1車線31及び第2車線32の延長方向、すなわち、自車両10の進行方向である縦方向Xにおける後方の位置及び前方の位置を示す。また、「他車両21が自車両10の後方側を走行している」とは、
図3に示すように、自車両10の後端部10bよりも他車両21の前端部21aが後方側に位置している状態をいう。「他車両21が自車両10の前方側を走行している」とは、
図4に示すように、自車両10の前端部10aよりも他車両21の後端部21bが前方側に位置している状態をいう。
【0041】
また、他車両21が自車両10の側方を横並びに走行している場合は、他車両21の車速V1が自車両10の車速V0よりも速ければ、プロセッサ18は、
図4のように、他車両21の位置が自車両10の前方側となるのを待って、車線変更制御を実行する。また、同様に、他車両21が自車両10の側方を走行している場合に、他車両21の車速V1が自車両10の車速V0よりも遅ければ、プロセッサ18は、
図3のように、他車両21の位置が自車両10の後方側となるのを待って、車線変更制御を実行する。また、プロセッサ18は、自車両10の車速V0を制御して、他車両21に対する自車両10の相対的な位置を、他車両21の前方側又は後方側になるように調整してから、車線変更制御を実行してもよい。
なお、「他車両21が自車両10の側方を走行している」とは、縦方向Xにおいて、自車両10の前端部10aから後端部10bまでの車長の範囲と、他車両21の前端部21aから後端部21bまでの車長の範囲とが、少なくとも一部重なり合う状態をいう。
【0042】
なお、プロセッサ18は、ステップS4で、車線変更制御の実行が可能であると判断した場合は、ステップS5,S6の処理をスキップして、制御をステップS7に移し、自動運転モードによる車線変更制御を実行してもよい。すなわち、プロセッサ18は、車線変更制御の実行が可能であると判断した場合には、ドライバに対して車線変更制御の実行を提案したり、乗員から車線変更制御の実行の指示を受け付けたりする処理をスキップして、即座に車線変更制御を実行することができる。なお、この場合も、プロセッサ18は、ステップS4における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「車線変更制御の実行が可能である」という情報を含む指令)を、運転制御装置1の駆動制御装置17に出力している。この指令に基づき、駆動制御装置17は、車線変更制御を実行する。
【0043】
以上より、本実施形態に係る運転制御装置1及び運転制御方法では、他車両検出部11のセンサ11aから取得した検出結果に基づいて、所定の検出ゾーンZ1内に第2車線32を走行する他車両21が検出されたと判断された場合に、車線変更制御の実行が可能であると判断する。
図3及び4に示すように、他車両21の後方に、さらに別の後続他車両22が走行している場合は、後続他車両22の車速V2が他車両21の車速V1よりも高い場合であっても、後続他車両22は他車両21に接近するにつれ減速すると予測される。従って、結果的には、後続他車両22の車速V2は、他車両21の車速V1とほぼ同一の速さになるであろうと予測される。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、第2車線32を走行する他車両21が検出されたことにより、後続他車両22が、他車両21よりも速い車速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に入り込んでくる可能性が低いと判断する。すなわち、運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更先の第2車線32に予め他車両21の存在/不存在を判断して、車線変更制御の実行の可否を判断する。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、第2車線32上を後続他車両22が後方から高速で近づいてくる可能性が低い状況、すなわち、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況で、自車両10を自律的に車線変更させることができる。特に、運転制御装置1のプロセッサ18は、後続他車両22が検出されていない場合であっても、後続他車両22が後方から高速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が低い状況を把握した上で、車線変更制御が実行可能であると判断することができる。一方、運転制御装置1のプロセッサ18は、所定の検出ゾーンZ1内に第2車線32を走行する他車両21が検出されてないと判断した場合には、車線変更制御の実行が不可であると判断する。これにより、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況以外の場面における車線変更制御の実行が抑制される。また、運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更制御の実行の可否についての判断に基づいて、車線変更制御の実行の可否情報を出力対象に出力する。この出力対象は、出力装置15でもよく、駆動制御装置17でもよく、出力装置15及び駆動制御装置17でもよい。すなわち、この出力対象は、運転制御装置1の出力装置15及び/又は駆動制御装置17である。また、車線変更制御の実行の可否情報は、出力装置15に出力される「提案」、「通知」及び駆動制御装置17に出力される「指令」のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0044】
運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更制御の実行が可能であると判断した場合は、出力装置15に車線変更制御を実行することを提案する車線変更情報を出力する。そして、車線変更情報に基づいて、ドライバ等の乗員により、車線変更制御の実行の指示が入力装置16に入力された場合は、運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更制御を実行する。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、ドライバ等の乗員の意思に応じて、車線変更制御を実行することができる。
【0045】
一方、運転制御装置1のプロセッサ18は、
図2の破線で示すように、ステップS4で車線変更制御の実行が可能であると判断した場合に、ステップS5及びS6をスキップして、ステップS7で車線変更制御を実行することもできる。すなわち、運転制御装置1のプロセッサ18は、ステップS4における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「車線変更制御の実行が可能である」という情報を含む指令)を、駆動制御装置17に出力する。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更情報を出力装置15に出力する処理や、入力装置16への車線変更制御の実行の指示の入力を受け付ける処理を経ずに、後続他車両22が急に車線変更予定ゾーンZ2に入り込んでくる可能性が低い状況で、迅速に車線変更制御を実行することができる。
【0046】
運転制御装置1のプロセッサ18は、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出されなかったと判断した場合は、車線変更制御の実行は不可であると判断し、自動運転モードによる車線変更制御の実行を禁止する指令を運転制御装置1の駆動制御装置17に出力して、運転モードを手動運転モードに設定する。これにより、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低いと判断される状況以外の場面で、プロセッサ18が車線変更制御を実行することが抑制される。すなわち、運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況に限定して(又は選択して)、車線変更制御を実行することができる。また、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低いと判断される状況以外の場面では、ドライバが自車両10の走行状況を目視で確認しつつ、手動運転によって自車両10を第2車線32に車線変更させることができる。
【0047】
運転制御装置1のプロセッサ18は、第2車線32に自車両10が車線変更を行うために必要なスペースがないと判断した場合は、車線変更制御の実行を禁止する指令を運転制御装置1の駆動制御装置17に出力する。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10が車線変更を行うために必要な条件が整った場合にのみ、車線変更制御を実行することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、プロセッサ18は、
図5に示すように、
図2のステップS3に替えてステップS23の処理を実行し、検出ゾーンZ1内かつ自車両10の後方側において第2車線32を走行する他車両21が検出されたか否かを判断することができる。すなわち、
図5に示す例では、プロセッサ18は、センサ11aの検出結果に基づいて、
図3に示すように、検出ゾーンZ1内かつ自車両10の後方側において他車両21が検出されたと判断した場合にのみ、ステップS4において、車線変更制御の実行が可能であると判断する処理を行う。ここで、後続他車両22が、自車両10の後方側の他車両21を追い越して他車両21の前方側に現れる可能性は低い。そのため、自車両10が第2車線32に車線変更を行うタイミングにおいて、後続他車両22が自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に急に入り込む可能性も低い。従って、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21の検出範囲を自車両10の後方側に限定することにより、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が特に低い状況で、車線変更制御を実行することができる。
【0049】
《第2実施形態》
第2実施形態に係る運転制御装置1のプロセッサ18による運転制御方法の手順について、
図6に基づいて説明する。なお、
図1~5に記載の符号と同一の符号は、同一又は同様の構成要素又は制御ステップを示すため、重複する説明は省略し、第1実施形態における説明を援用する。
【0050】
図6に示すように、プロセッサ18は、ステップS3で、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されたと判断した場合は、ステップS11で、他車両検出部11により検出された他車両21がバイク等の二輪車か否かを判断する。他車両21が二輪車か否かは、他車両検出部11のセンサ11aの一つであるカメラの撮像画像等に基づいて、パターンマッチング手法等を用いて判断される。他車両21が二輪車である場合、制御はステップS24に進み、プロセッサ18は、他車両21を検出対象から外す。すなわち、ステップS24において、プロセッサ18は、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す。そして、制御はステップS3に戻り、プロセッサ18は、再び、他車両検出部11が、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する別の他車両の存在を検出したか否かを判断する。
【0051】
ステップS11で、他車両21が二輪車でないと判断された場合は、制御はステップS12に移り、プロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上の速さか否かを判断する。なお、プロセッサ18は、車速センサによって検出された自車両10の車速V0と、自車両10に対する他車両21の相対的な位置とに基づいて他車両21の車速V1を検出する。また、運転制御装置1の他車両検出部11は、車車間通信により取得した他車両21の車速情報に基づいて、他車両21の車速V1を検出してもよい。自車両10の車速V0が他車両21の車速V1よりも低い、すなわち、他車両21の車速V1が自車両10の車速V0よりも高いと判断された場合は、制御はステップS13に移る。
【0052】
ステップS13で、プロセッサ18は、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV以上であるか否かを判断する。自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV以上である場合は、制御はステップS24に進み、プロセッサ18は、他車両21を検出対象から外す。すなわち、ステップS24において、プロセッサ18は、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消し、制御はステップS3に戻る。ステップS3において、プロセッサ18は、再び、他車両検出部11が、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両を検出したか否かを判断する。この場合、他車両検出部11が検出する他車両は、他車両21とは別の車両であってもよい。また、他車両21が減速して、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV未満になった場合は、他車両21を再びステップS3での検出対象としてもよい。
【0053】
一方、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV未満である場合は、制御は、ステップS14に移り、プロセッサ18は、運転制御装置1の駆動制御装置17に指令を出力し、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上になるように、自車両10を加速させる。すなわち、プロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上になるように、自車両10の車速V0を制御する。その後、制御は再びステップS12に戻り、プロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上の速さか否かを再度判断する。
なお、所定速度差dVとは、自車両10が加速しつつ、他車両21と一定の間隔を維持した状態で車線変更を行うことが可能な程度の速度差の上限値である。所定速度差dVは、自車両10の性能及び実験によって定められる。
【0054】
一方、ステップS12で、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上の速さであると判断された場合、制御は、ステップS4に移り、プロセッサ18は、自動運転モードによる車線変更制御の実行が可能であると判断する。
【0055】
以上より、本実施形態に係る運転制御装置1及び運転制御方法では、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上である場合に、車線変更制御の実行が可能であると判断する。そして、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1未満である場合は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1以上となるように、自車両10の車速V0を制御する指令を運転制御装置1の駆動制御装置17に出力する。これにより、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1と同じ速度か、他車両21の車速V1よりも高い状態で、スムーズに自車両10を車線変更させることができる。また、他車両21の車速V1が自車両10の車速V0以下である場合、車線変更制御の実行のタイミングで、後続他車両22が自車両10よりも速い車速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が、より低くなる。
なお、運転制御装置1による自車両10の車速V0の制御は、加速に限定されない。例えば、他車両21が急に減速した場合に、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21との車間距離を維持するために、自車両10の車速V0を減速させてもよく、また、自車両10の車速V0を変化させずに一定の速度に維持する制御を行ってもよい。
【0056】
また、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21の車速V1が自車両10の車速V0よりも高く、かつ、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV以上である場合は、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す。他車両21の車速V1が自車両10の車速V0に比べて速すぎる場合は、運転制御装置1の車線変更制御の実行のタイミングで、後続他車両22も、自車両10よりも速い車速で車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が高くなるためである。従って、本実施形態における運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況に限定して(又は選択して)、自車両10を車線変更させることができる。また、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV以上である場合には、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10の車速V0を他車両21の車速V1に合わせる必要がないため、車線変更制御の実行の際の自車両10の急加速を防止することができる。
【0057】
また、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21が二輪車である場合も、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す。他車両21が二輪車である場合は、他車両21が乗用車や大型トラックである場合と比べて、後続他車両22のドライバが受ける心理的圧迫感が小さいため、後続他車両22が他車両21に接近する際に減速を行わない可能性があるためである。すなわち、他車両21が二輪車である場合は、他車両21が乗用車や大型トラックである場合と比べて、後続他車両22が後方側から高速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が高くなると推測される。従って、本実施形態における運転制御装置1のプロセッサ18は、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が特に低い状況に限定して(又は選択して)、自車両10を車線変更させることができる。
【0058】
なお、本実施形態において、
図6のステップS12で、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1未満であると判断された場合は、
図6の破線で示すように、制御は、ステップS13をスキップして、ステップS14に進んでもよい。すなわち、プロセッサ18は、自車両10の車速V0が他車両21の車速V1未満であると判断された場合は、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差に関わらず、自車両10の車速V1を制御して、自車両10を加速させてもよい。
【0059】
また、
図6のステップS3で、第2車線32の検出ゾーンZ1に他車両21が検出された場合は、制御は、ステップS11をスキップして、ステップS12に進んでもよい。すなわち、プロセッサ18は、他車両21が二輪車であるか否かを判断しなくてもよい。
また、第1実施形態と同様に、
図6のステップS2はスキップされてもよい。また、第1実施形態と同様に、
図6のステップS5,S6もスキップされてもよい。
このように、ステップS2,S5,S6及びS11のいずれがスキップされても、プロセッサ18は、前述のように、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況で、車両変更制御を実行することができる。
【0060】
《第3実施形態》
第3実施形態に係る運転制御装置1のプロセッサ18による運転制御方法の手順について、
図7に基づいて説明する。なお、
図1~6に記載の符号と同一の符号は、同一又は同様の構成要素又は制御ステップを示すため、重複する説明は省略し、第1実施形態及び第2実施形態における説明を援用する。
【0061】
図7に示すように、ステップS11で、他車両21が二輪車でないと判断された場合は、制御はステップS15に移り、プロセッサ18は、他車両検出部11のカメラ又はレーダを用いて、他車両21が自車両10の後方側を走行しているか否かを判断する。他車両21が自車両10の後方側を走行していない、すなわち、他車両21が自車両10の側方又は前方側を走行していると判断された場合は、制御はステップS16に移る。
【0062】
ステップS16で、プロセッサ18は、他車両21が自車両10よりも所定距離D0以上、前方側を走行しているか否かを判断する。すなわち、プロセッサ18は、他車両21が自車両10よりも前方側を走行しており、かつ、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dが所定距離D0以上であるか否かを判断する。なお、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dとは、
図4に示すように、縦方向X(自車両10の進行方向)における自車両10の前端部10aと他車両21の後端部21bとの間隔である。また、他車両検出部11は、他車両21の自車両10に対する相対的な位置を、レーダ等を用いて検出する。また、他車両検出部11は、車車間通信により取得した他車両21の位置情報に基づいて、他車両21の自車両10に対する相対的な位置を検出してもよい。
【0063】
ステップS16で、他車両21が自車両10よりも所定距離D0以上、前方側を走行していると判断された場合は、制御はステップS24に進み、プロセッサ18は、他車両21を検出対象から外す。すなわち、ステップS24において、プロセッサ18は、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両を検出した」という判断を取り消し、制御はステップS3に戻る。ステップS3において、プロセッサ18は、再び、他車両検出部11が第2車線32を走行する他車両の存在を検出したか否かを判断する。この場合、他車両検出部11が検出する他車両は、他車両21とは別の車両であってもよく、他車両21が減速して、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dが所定距離D0未満となった場合は、他車両21を再びステップS3での検出対象としてもよい。
【0064】
一方、ステップS16で、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dが所定距離D0未満であると判断された場合は、制御は、ステップS14に移り、プロセッサ18は、走行中の他車両21の位置が自車両10の後方側となるまで、自車両10を加速させる。すなわち、プロセッサ18は、走行中の他車両21の位置が自車両10の位置の後方側となるように、自車両10の車速V0を制御する。その後、制御は再びステップS15に戻り、プロセッサ18は、他車両21が自車両10の後方側を走行しているか否かを再度判断する。
なお、所定距離D0は、検出ゾーンZ1内の他車両21と自車両10との縦方向間隔Dの最大距離以下の距離であり、自車両10の性能及び実験によって定められる。より具体的には、所定距離D0は、他車両21が加速した直後に、他車両検出部11の光学センサでは検出不可能なほど、他車両21が自車両10から前方側に離れてしまうと予測される程度の距離である。
【0065】
一方、ステップS15で、他車両21が自車両10の後方側を走行していると判断された場合、制御は、ステップS4に移り、プロセッサ18は、車線変更制御の実行が可能であると判断する。
【0066】
以上より、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21が自車両10の前方側を走行しており、かつ、自車両10と他車両21との縦方向間隔D(自車両10の進行方向における間隔)が所定距離D0以上である場合は、ステップS3における「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す。自車両10と他車両21との縦方向間隔Dが開きすぎている場合は、後続他車両22は自車両10を追い越してから減速する可能性があり、後続他車両22が自車両10よりも速い車速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が高くなるためである。従って、本実施形態における運転制御装置1のプロセッサ18は、第2車線32上を後続他車両22が突然現れる可能性が低い状況に限定して(又は、選択して)、自車両10を車線変更させることができる。また、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21が自車両10の前方側に所定距離D0以上離れた場合は、自車両10を加速させる必要がないため、車線変更制御の実行の際の自車両10の急加速を防止することができる。また、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dが所定距離D0未満である場合にのみ自車両10を加速させるため、他車両検出部11の光学センサによって常に他車両21を検出している状態で、車線変更制御を実行することができる。
【0067】
本実施形態において、
図7のステップS15で、他車両21が自車両10の後方側を走行していないと判断された場合は、
図7の破線で示すように、制御は、ステップS16をスキップして、ステップS14に進んでもよい。すなわち、プロセッサ18は、他車両21が自車両10の後方側を走行していないと判断した場合は、自車両10と他車両21との縦方向間隔Dに関わらず、自車両10の車速V1を制御して、自車両10を加速させてもよい。
【0068】
また、第1実施形態と同様に、
図7のステップS2はスキップされてもよい。また、第1実施形態と同様に、
図7のステップS5,S6もスキップされてもよい。
また、第2実施形態と同様に、
図7のステップS11はスキップされてもよい。
このように、ステップS2,S5,S6及びステップS11のいずれがスキップされても、プロセッサ18は、前述のように、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低い状況で、車両変更制御を実行することができる。
【0069】
《第4実施形態》
第4実施形態に係る運転制御装置1について
図1を参照して説明するとともに、運転制御装置1のプロセッサ18による運転制御方法の手順について、
図8に基づいて説明する。なお、既に説明した
図1~7に記載の符号と同一の符号は、同一又は同様の構成要素又は制御ステップを示すため、重複する説明は省略し、第1~3実施形態における説明を援用する。
【0070】
本実施形態において、
図1に示す運転制御装置1のプロセッサ18は、運転モードを第1モード又は第2モードに設定することができる。すなわち、プロセッサ18は、運転モードを第1モードと第2モードとの間で切り替え可能である。第2モードの運転支援レベルは、第1モードの運転支援レベルよりも高い。具体的には、プロセッサ18は、運転モードとして、運転支援レベル2に対応する第1モードと、運転支援レベル3に対応する第2モードとを設定することができる。なお、この運転支援レベルは、前述の米国自動車技術会の定義に則った分類によって定められるものであるが、これに限定されない。
【0071】
運転モードが第1モードに設定されている場合、ドライバは目視によって自車両の周囲状況を監視する必要がある。また、第1モードはハンズオンモードである。ハンズオンモードとは、ドライバがステアリングホイール14aを持っていない場合は、運転制御装置1による自律操舵制御が作動しないモードである。なお、ドライバがステアリングホイール14aを持っているか否かは、ステアリングホイール14aに設けられたタッチセンサ又はEPSの操舵トルクセンサによって検出される。
なお、「ドライバがステアリングホイール14aを持っていること」には、ドライバがステアリングホイール14aをしっかりと握っている状態のみならず、ドライバがステアリングホイール14aに軽く手を添えている状態も含まれる。
【0072】
一方、運転モードが第2モードに設定されている場合、運転制御装置1の他車両検出部11がカメラ,レーダ等を用いて自車両の周囲状況を監視する。すなわち、自動運転モードが第2モードに設定されている場合、自車両の周囲の走行環境は、運転制御装置1によって自動的に監視されている。また、第2モードはハンズオフモードである。ハンズオフモードとは、ドライバがステアリングホイール14aから手を離してもプロセッサ18による操舵制御が作動するモードである。第2モードは、自動運転モードである。
【0073】
なお、プロセッサ18は、第1モード及び第2モード以外にも、運転支援レベルの違いに応じた他の運転モードを設定することができる。本実施形態において、第1モードよりも低い運転支援レベルの運転モードを設けることは可能であり、第2モードよりも高い運転支援レベルのモードを設けることも可能である。第1モードと第2モードとの間に、第1モードよりも運転支援レベルが高く、第2モードよりも運転支援レベルが低い一又は複数の運転モードを設定してもよい。
【0074】
次に、運転制御装置1による運転制御方法の手順について、
図8に基づいて説明する。
図8に示すように、プロセッサ18は、ステップS3で、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21を検出した場合に、ステップS17で、第2モードによる車線変更制御の実行が可能であると判断する。そして次に、プロセッサ18は、ステップS18で、運転モードを自動運転モードである第2モードに設定する。次に、プロセッサ18は、ステップS19で、第2モードによる車線変更制御を実行する。すなわち、プロセッサ18は、ステップS17における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「第2モードによる車線変更制御の実行が可能である」という情報を含む指令)を、運転制御装置1の駆動制御装置17に出力する。
【0075】
また、プロセッサ18は、ステップS3で、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21を検出しなかった場合に、ステップS30で、第2モードによる車線変更制御の実行は不可であると判断する。そして次に、プロセッサ18は、ステップS31で、運転モードを第1モードに設定する。次に、プロセッサ18は、ステップS32で、第1モードによる車線変更制御を実行する。すなわち、プロセッサ18は、ステップS30における判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報(「第2モードによる車線変更制御の実行が不可である」という情報を含む指令)を、駆動制御装置17に出力する。
【0076】
なお、本実施形態において、第1モードは自動運転モードであるが、これに限定されず、第1モードは手動運転モードであってもよい。第1モードが手動運転モードである場合には、ステップS31の後は、ドライバが手動運転で車線変更を行うため、
図8に示すステップS32はスキップされる。
【0077】
以上より、本実施形態における運転制御装置1のプロセッサ18は、センサ11aから取得した検出結果に基づいて、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されたと判断した場合に、第2モードによる車線変更制御の実行が可能であると判断する。また、運転制御装置1のプロセッサ18は、検出ゾーンZ1内において第2車線32を走行する他車両21が検出されていないと判断した場合に、第2モードによる車線変更制御の実行は不可であると判断する。なお、運転制御装置1のプロセッサ18は、運転モードを、ドライバの目視による自車両の周囲状況の監視が必要とされる第1モードと、運転制御装置1による自車両の周囲状況の監視が実行される自動運転モードである第2モードとの間で切り替え可能である。すなわち、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出され、後続他車両22が、他車両21よりも速い車速で自車両10の車線変更予定ゾーンZ2に近づいてくる可能性が低いと判断される場合は、運転制御装置1のプロセッサ18は、自車両10の周囲状況の監視を実行しつつ、第2モードでの車線変更制御の実行が可能であると判断する。一方、運転制御装置1のプロセッサ18は、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出されていない場合は、運転モードを第1モードに設定する。これにより、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出されていない場合には、ドライバの目視によって自車両10の周囲状況が監視されている状態で自車両10の車線変更が行われる。従って、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性が低いと判断された場合に、運転制御装置1のプロセッサ18は、より高い運転支援レベルで車線変更制御を実行できる。よって、運転制御装置1のプロセッサ18は、検出ゾーンZ1内に他車両21が検出されたと判断した場合は、第2モードで車線変更制御を実行し、ドライバの負担を軽減することができる。
【0078】
また、運転制御装置1が設定する自動運転モードのうち、第1モードは、ドライバがステアリングホイール14aを持っていない場合は運転制御装置1による操舵制御が作動しないハンズオンモードである。一方、第2モードは、ドライバがステアリングホイール14aから手を離しても運転制御装置1による操舵制御が作動するハンズオフモードである。従って、運転制御装置1のプロセッサ18は、他車両21が検出されたと判断した場合は、車線変更予定ゾーンZ2に後続他車両22が後方から急に入り込んでくる可能性は低いと判断して、ハンズオフモードで車線変更制御を実行し、ドライバの負担を軽減することができる。一方、第1モードはハンズオンモードであるため、他車両21が検出されていないと判断された場合は、予期しない状況にドライバが手動運転操作で対応することが可能な状態において、車線変更が行われる。
【0079】
なお、本実施形態において、第1実施形態と同様に、
図8のステップS2はスキップされてもよい。
また、プロセッサ18は、ステップS17とステップS18との間において、第2モードによる車線変更制御を実行することを提案する車線変更情報を出力装置15に出力してもよく、入力装置16を介して、第2モードによる車線変更制御の実行の指示の入力を受け付ける処理を行ってもよい。
【0080】
また、第1~4実施形態のいずれにおいても、プロセッサ18は、自車両10の車速V0と他車両21の車速V1との差が所定速度差dV以上である場合には、ステップS3の「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す処理を行ってもよい。また、同様に、第1~4実施形態のいずれにおいても、プロセッサ18は、他車両21が自車両10の前方側に所定距離D0以上離れた場合には、ステップS3の「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す処理を行ってもよい。さらにまた、第1~4実施形態のいずれにおいても、プロセッサ18は、他車両21が二輪車である場合には、ステップS3の「第2車線32を走行する他車両が検出された」という判断を取り消す処理を行ってもよい。
【0081】
なお、自車両10が隣隣接車線に車線変更を行う場合は、プロセッサ18は、隣接車線及び隣隣接車線の両方について、所定の検出ゾーン内に他車両が検出されたか否かを判断する。プロセッサ18は、隣接車線及び隣隣接車線の少なくもいずれか一方の所定の検出ゾーン内に他車両が検出されたと判断した場合に、隣隣接車線への車線変更制御の実行が可能であると判断する。一方、プロセッサ18は、隣接車線及び隣隣接車線のいずれの所定の検出ゾーン内にも他車両が検出されていないと判断した場合には、隣隣接車線への車線変更制御の実行は不可であると判断する。プロセッサ18は、これらの判断に基づく車線変更制御の実行の可否情報を出力装置15及び/又は駆動制御装置17に出力する。これにより、プロセッサ18は、隣隣接車線の車線変更予定ゾーンに後続他車両が後方から急に入り込んでくる可能性が低く、かつ、隣接車線を高速で走行する後続他車両が自車両10の車線変更中に急に接近してくる可能性が低い状況で、車線変更制御を実行することができる。
【0082】
1…運転制御装置
10…自車両
11…他車両検出部
11a…センサ
14a…ステアリングホイール
15…出力装置
16…入力装置
18…プロセッサ
21…他車両
31…第1車線
32…第2車線
V1…他車両の車速
V0…自車両の車速
Z1…検出ゾーン