(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックシートの製造方法およびエレクトロクロミック装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/15 20190101AFI20230530BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20230530BHJP
G02F 1/161 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G02F1/15 505
G02F1/15 507
G02F1/155
G02F1/161
(21)【出願番号】P 2022174669
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2023-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲史
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】松井 智紀
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-160442(JP,A)
【文献】特開昭57-13427(JP,A)
【文献】特開平5-127172(JP,A)
【文献】特開平10-228030(JP,A)
【文献】特開2009-38397(JP,A)
【文献】特開2003-161957(JP,A)
【文献】特開2004-279742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G02F 1/1339
G02F 1/1345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、
前記電解質層の少なくとも一方の面に設けられたエレクトロクロミック層と、
前記電解質層および前記エレクトロクロミック層の側面を覆うように設けられた封止部と、
前記封止部の厚み方向に貫通し、前記電解質層と電気的に接続する柱状導電部と、
を備えるエレクトロクロミックシートの製造方法であって、
基板上に前記電解質層または前記エレクトロクロミック層の少なくとも一方を配置する工程と、
平面視において、前記電解質層および/または前記エレクトロクロミック層と重ならない領域に導電性ペーストを当該基板上に塗布し、かつ、前記電解質層および/または前記エレクトロクロミック層の外周および当該導電性ペーストの外周を囲うように液状の封止材料を当該基板上に塗布する工程と、
前記封止材料を硬化させて前記封止部を形成する工程と、
前記導電性ペーストを硬化させて前記柱状導電部を形成する工程と、
を有する、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロニックシートは電極層をさらに備え、
前記基板上に前記電解質層を配置する前記工程において、
前記基板上に前記電極層を配置し、当該電極層上に前記電解質層を配置し、
当該電極層の面上の前記電解質層と重ならない領域に前記導電性ペーストを塗布することで、当該電極層を介して前記電解質層および前記柱状導電部が電気的に接続される、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記導電性ペーストは、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムおよびこれらの合金の金属粉、ならびに導電性カーボンフィラーの中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記封止材料はせん断速度10/sにおける粘度(25℃)が500Pa・s以下である、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートは一対の支持体により挟持されるものであって、
前記封止部を形成する前記工程は、
前記一対の支持体を貼り合わせることによって、前記封止材料を押し広げて前記電解質層および前記エレクトロクロミック層の側面を覆う前記封止部を形成する、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートの前記電解質層は、固体またはゲルである、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートは、前記電解質層の上下面に前記エレクトロクロミック層がそれぞれ設けられている、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記封止材料は、硬化性樹脂を含む、エレクトロクロミックシートの製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックシートの製造方法によって得られたエレクトロクロミックシートを加工する工程を有する、エレクトロクロミック装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミックシートの製造方法およびエレクトロクロミック装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック素子は、電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に透過率が変化する現象であるエレクトロクロミズムを利用した素子として知られる。例えば、エレクトロクロミック素子にプラス電圧を印加することで発色がえられ、マイナス電圧を印加することで消色して透明にすることができることから、プラス電圧とマイナス電圧との印加の切り替えを行うことが可能なスイッチを設けることで、エレクトロクロミック素子における発色と消色とを、任意のタイミングで行い得るようになる。
【0003】
このようなエレクトロクロミック素子は、大きく2つの種類の層構成に分けることができる。一つは、エレクトロクロミック材料および電解質材料が混合された層構成であり、二つは、エレクトロクロミック材料および電解質材料を各々の層とし形成した多層構成である。また、後者の多層構成のエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック材料が層状に固定化されているため、エレクトロクロミック材料中に注入された電荷は、外部回路を通して逆反応を行うこととなる。これにより、一度発色させると消色駆動を行うまで発色状態を保持することができ、消費電力を少なくできるというメリットがある。
【0004】
多層構成のエレクトロクロミック素子としては例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、エレクトロクロミック素子は、支持体と、電圧電流を印加するための電極と、電荷の授受に伴って酸化還元反応を起こし可逆的に透過率が変化するエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック層と、イオン電導のための電解質材料を含む電解質層と、前記支持体同士を接着しかつ素子外部の酸素および水分がエレクトロクロミック材料および電解質材料と接触するのを抑制するための封止樹脂層とを備えることが開示されている。
【0005】
エレクトロクロミック素子としては例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、電圧電流を印加するための電極と、エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック素子と、エレクトロクロミック素子の周辺を覆う封止シールとを備えることが開示されている。
また、エレクトロクロミック素子を利用した電子デバイスとして、電極層からの電圧電流を外部に取り出すための貫通構造の電極部に関する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、封止部を貫通するいわゆる貫通電極を有するエレクトロクロミックシートに着目したところ、従来の貫通構造の電極部と、それを覆う封止材との密着性において改善の余地があることを知見した。一方、特許文献1に開示される技術は、貫通電極を有するエレクトロクロミックシートに着目したものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エレクトロクロミックシートの封止部内を関する柱状電極と、封止部との密着性を向上させる点から検討を進めたところ、金属ペーストおよび液状の封止材料とを組み合わせて用いることで当該柱状電極と封止部との密着性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下のエレクトロクロミックシートの製造方法およびこれに関する技術が提供される。
【0010】
[1] 電解質層と、
前記電解質層の少なくとも一方の面に設けられたエレクトロクロミック層と、
前記電解質層および前記エレクトロクロミック層の側面を覆うように設けられた封止部と、
前記封止部の厚み方向に貫通し、前記電解質層と電気的に接続する柱状導電部と、
を備えるエレクトロクロミックシートの製造方法であって、
基板上に前記電解質層または前記エレクトロクロミック層の少なくとも一方を配置する工程と、
平面視において、前記電解質層および/または前記エレクトロクロミック層と重ならない領域に導電性ペーストを当該基板上に塗布し、かつ、前記電解質層および/または前記エレクトロクロミック層の外周および当該導電性ペーストの外周を囲うように液状の封止材料を当該基板上に塗布する工程と、
前記封止材料を硬化させて前記封止部を形成する工程と、
前記導電性ペーストを硬化させて前記柱状導電部を形成する工程と、
を有する、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[2] [1]に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロニックシートは電極層をさらに備え、
前記基板上に前記電解質層を配置する前記工程において、
前記基板上に前記電極層を配置し、当該電極層上に前記電解質層を配置し、
当該電極層の面上の前記電解質層と重ならない領域に前記導電性ペーストを塗布することで、当該電極層を介して前記電解質層および前記柱状導電部が電気的に接続される、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[3] [1]または[2]に記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記導電性ペーストは、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムおよびこれらの合金の金属粉、ならびに導電性カーボンフィラーの中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記封止材料はせん断速度10/sにおける粘度(25℃)が500Pa・s以下である、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートは一対の支持体により挟持されるものであって、
前記封止部を形成する前記工程は、
前記一対の支持体を貼り合わせることによって、前記封止材料を押し広げて前記電解質層および前記エレクトロクロミック層の側面を覆う前記封止部を形成する、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートの前記電解質層は、固体またはゲルである、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記エレクトロクロミックシートは、前記電解質層の上下面に前記エレクトロクロミック層がそれぞれ設けられている、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載のエレクトロニックシートの製造方法において、
前記封止材料は、硬化性樹脂を含む、エレクトロクロミックシートの製造方法。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートの製造方法によって得られたエレクトロクロミックシートを加工する工程を有する、エレクトロクロミック装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、密着性を向上できるエレクトロクロミックシートの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のエレクトロクロミックシートを模式的に示した断面図である。
【
図2】本実施形態の製造過程において、封止材料および導電性ペーストが塗布された第1の支持体層を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比等は、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0014】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値および上限値と任意に組み合わせられる。
【0015】
本明細書に例示する各成分および材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本実施形態において「覆う」とは連続的である場合に限られず、一部に非連続的な部分があってもよいことを意味する。
【0017】
<エレクトロクロミックシート>
図1は、エレクトロクロミックシート100の実施形態の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、エレクトロクロミックシート100は、電解質層4、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5が順に積層した積層体(以下、「エレクトロクロミック素子10」ともいう)と、エレクトロクロミック素子10の側面を覆う封止部8と、エレクトロクロミック素子10と封止部8の上下面を挟む一対の支持体層(第1の支持体層1、および第2の支持体層7)と、を備える。
換言すると、エレクトロクロミックシート100は、第1の支持体層1上に、順次積層された第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、および第2の支持体層7を備え、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4および第2のエレクトロクロミック層5の側面がそれぞれ封止部8により覆われている。
【0018】
本実施形態において、エレクトロクロミックシート100はさらに、第1の支持体層1と第1のエレクトロクロミック層3との間に第1の電極2を有し、第2の支持体層7と第2のエレクトロクロミック層5との間に第2の電極6を有している。
【0019】
さらに、エレクトロクロミックシート100は、封止部8の厚み方向に貫通する第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62を有する。第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62はいずれも電解質層4と電気的に接続している。
また、第1の柱状導電部22は、封止部8を貫通し、第1の電極2上に設けられた第1の補助電極層21から、第2の支持体層7まで到達している。同様に、第2の柱状導電部62は、封止部8を貫通し、第2の電極6上に設けられた第2の補助電極層61から、第1の支持体層1まで到達している。
【0020】
本実施形態において、エレクトロクロミックシート100は、電解質層4の両面に第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5が積層された例を挙げて説明するが、エレクトロクロミック層はいずれか一方のみであってもよい。
【0021】
以下、各構成について説明する。
【0022】
[電極]
第1の電極2および第2の電極6は、それぞれ第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5にプラス電圧またはマイナス電圧を印加した際に、第1の電極2と第2の電極6との間に電子を供給するか、または、第1の電極2と第2の電極6との間から電子を受け取る電極である。
第1の電極2は第1のエレクトロクロミック層3の電解質層4側とは反対側の面上に設けられている。第2の電極6は第2のエレクトロクロミック層5の電解質層4側とは反対側の面上に設けられている。
【0023】
これら第1の電極2および第2の電極6の構成材料としては、透明性を有する導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In2O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
第1の電極2および第2の電極6の各々の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、第1の電極2および第2の電極6の各々の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法等が挙げられる。
【0025】
第1の電極2および第2の電極6は、その平均厚さが、第1のエレクトロクロミック層3、および第2のエレクトロクロミック層5の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整され、例えば、第1の電極2および第2の電極6の構成材料としてITOを用いた場合には、それぞれ独立して、好ましくは50nm以上200nm以下程度、より好ましくは100nm以上150nm以下程度に設定される。
【0026】
[柱状導電部]
第1の柱状導電部22は、配線として、エレクトロクロミック素子10から延伸して設けられた第1の電極2に、平面視で重なり、封止部8を貫通して設けられている(
図1参照)。そして、第1の柱状導電部22は、第1の補助電極層21を介して、第1の電極2に、電気的に接続されている。
【0027】
第1の柱状導電部22は、エレクトロクロミックシート100を、例えばアイウエア用のレンズに適用するためエレクトロクロミックシート100の外形をレンズ形状となるように加工した際、レンズの端部に露出するものである。これにより、第1の柱状導電部22を介して、エレクトロクロミック素子10に外部から通電することができる。
第2の柱状導電部62も、第1の柱状導電部22と同様に、エレクトロクロミックシート100を、例えばアイウエア用のレンズに適用するためエレクトロクロミックシート100の外形をレンズ形状となるように加工した際、レンズの端部に露出するものである。これにより、第2の柱状導電部62を介して、エレクトロクロミック素子10に外部から通電することができる。
この場合、例えば、アイウエアのブリッジ側に第1の柱状導電部22が位置し、アイウエアのテンプル側(ブリッジ側とは反対側)に第2の柱状導電部62を位置することができる。
【0028】
また、第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは10μm以上100μm以下程度、より好ましくは20μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上70μm以下程度に設定される。
【0029】
第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62の構成材料としては、導電性を有する導電性ペーストであればよい。これにより、第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62と封止部8との密着性を高めることができる。
以下、導電性ペーストの詳細について説明する。
【0030】
(導電性ペースト)
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤を含むことができる。
導電性充填剤は、導電性ペーストに対して硬化処理が施されることにより、凝集して導電性粒子連結構造を形成するものである。これにより、導電性を発現し、電解質層4等に対する密着性が得られる。
【0031】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤として、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムおよびこれらの合金の金属粉、ならびに導電性カーボンフィラーの中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。なかでも、良好な導電性および取扱い容易性の観点から銀粉を用いることが好ましい。
【0032】
導電性充填剤の形状は、特に限定されないが、たとえば球状、フレーク状、および鱗片 状等を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の導電性ペーストは、硬化性樹脂を含むことができる。紫外線反応性官能基、および熱反応性官能基の少なくとも一方を有するものが好ましい。
本実施形態では封止材料と導電性ペーストを共に液状で塗布し、同時に硬化工程へと入っていくため、封止材料と導電性ペーストは同系統の硬化性樹脂を用いることが好ましい。
封止材料と導電性ペーストは充填剤が絶縁性と導電性で異なる以外は同様の樹脂、添加剤、製法を用いてよい。
【0034】
導電性ペーストの粘度は、良好な塗布性および密着性等の点から、1~1000Pa・sであることが好ましく、20~80Pa・sであることがより好ましい。
【0035】
[その他の電極]
第1の補助電極層21は、配線として、第1の電極2の第1の支持体層1とは反対側の表面において積層して設けられ、第1の柱状導電部22に、電気的に接続されている。
同様に、第2の補助電極層61は、配線として、第2電極14の第2の支持体層7とは反対側の表面において積層して設けられ、かつ、第2の柱状導電部62に、電気的に接続されている。
【0036】
第1の補助電極層21および第2の補助電極層61は、それぞれ、第1の電極2および第2電極14の抵抗値よりも、その抵抗値が低く設定されている。そのため、第1の電極2と第1の補助電極層21との積層体、および、第2電極14と第2の補助電極層61との積層体で、それぞれ、エレクトロクロミック素子10に電気的に接続された配線を構成することで、これら配線(積層体)に、より優れた電気導電性を付与することができる。
【0037】
第1の補助電極層21および第2の補助電極層61の構成材料としては、それぞれ、第1の電極2および第2電極14よりも抵抗値が低いものであれば、特に限定されないが、優れた導電性を備えるものが用いられ、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロムおよびモリブデン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、第1の補助電極層21および第2の補助電極層61は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは1nm以上100nm以下程度、より好ましくは5nm以上50nm以下程度に設定される。これにより、第1の補助電極層21および第2の補助電極層61に、補助電極としての機能を確実に付与することができる。
【0039】
なお、第1の電極2および第2の電極6との間における各層の間には、例えば、絶縁性多孔質層、保護層等の中間層が設けられていてもよい。
【0040】
[エレクトロクロミック層]
第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5は、電解質層4の上下面にそれぞれ設けられ、電解質層4を挟むように配置され、エレクトロクロミック材料を含む層である。
【0041】
上記エレクトロクロミック材料としては、無機エレクトロクロミック化合物及び有機エレクトロクロミック化合物のいずれであっても構わない。また、エレクトロクロミズムを示すことで知られる導電性ポリマーを用いてもよい。
第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5には、これらエレクトロクロミック材料から適宜選択することが可能であるが、一方が酸化発色性を有するエレクトロクロミック材料を用いた場合には、他方は還元発色性を有するエレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。
酸化発色性を有するエレクトロクロミック材料としては、ラジカル重合性化合物を含む酸化発色性エレクトロクロミック組成物を重合した重合物が好ましく、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有するエレクトロクロミック組成物が特に好ましい。
【0042】
(第1のエレクトロクロミック層)
第1のエレクトロクロミック層3は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0043】
第1のエレクトロクロミック層3の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上30μm以下程度であるのが好ましく、0.4μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。
【0044】
第1のエレクトロクロミック層3に、主材料として含まれる、酸化反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物、ビスアクリダン化合物、プルシアンブルー型錯体、および酸化ニッケルが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物としては、例えば、特開2022-25243号公報、特開2016-45464号公報、特開2020-138925号公報等に記載のものが挙げられる。
【0046】
また、プルシアンブルー型錯体としては、例えば、Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3からなる材料が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、定電圧で動作可能であり、繰返し耐久性に優れ、高コントラストなエレクトロクロミック素子が得られる点から、特に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物が好ましく用いられる。
【0048】
なお、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含み、かかる組成物を重合した重合物は、これらのラジカル重合性化合物が架橋した架橋物で構成されていてもよい。
【0049】
(第2のエレクトロクロミック層)
第2のエレクトロクロミック層5は、還元反応によって透明から着色を呈するエレクトロクロミック材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0050】
第2のエレクトロクロミック層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上5.0μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下程度であるのがより好ましい。前記平均厚さが、0.2μm未満であると、エレクトロクロミック材料の種類によっては、発色濃度が得にくくなるおそれがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大すると共に、エレクトロクロミック材料の種類によっては、着色によって視認性が低下するおそれがある。
【0051】
第2のエレクトロクロミック層5は、第1のエレクトロクロミック層3と同じ色調のレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。これにより、最大発色濃度の向上が図られ、その結果、コントラストを改善することできる。
【0052】
また、これに対して、異なる色調の材料を用いた場合には、混色が可能となる。また、第1の電極2および第2の電極6との両極側で、酸化反応と還元反応とにより着色させることで、エレクトロクロミック層3、電解質層4、および第2のエレクトロクロミック層5における駆動電圧を効果的に低減し得ることから、エレクトロクロミックシート100の繰返し耐久性の向上が図れる。
【0053】
第2のエレクトロクロミック層5に、主材料として含まれる、還元反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタン等が挙げられ、中でも、酸化タングステンが好ましい。酸化タングステンは、還元電位が低いことに基づいて、発消色電位が低く、さらに、無機材料であるため耐久性に優れることから、好ましく用いられる。
【0055】
また、有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物等が挙げられ、中でも、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。これらの化合物は、発消色電位が低く、良好な色値を示すことから好ましく、用いられる。
【0056】
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特開2022-025243号公報、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報等に記載のものが挙げられる。また、ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報等に記載のものが挙げられる。
【0057】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0058】
[電解質層]
電解質層4は、第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5との間に配置され、イオン電導性を有する電解質を含有するものである。
【0059】
電解質層4の平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上100μm以下程度、より好ましくは20μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上70μm以下程度に設定される。
【0060】
電解質層は、バインダー樹脂、および電解質を含む。
【0061】
前記バインダー樹脂は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合膜としての相分離温度、膜強度の点で、ウレタン樹脂ユニットを含むことが好ましい。またポリエチレンオキシド(PEO)鎖を含むことで、電解質との相溶性が向上し、相分離温度を高めることができる。また、ポリメチルメタリクレート(PMMA)鎖を含むことで、PEO鎖を含むのと同様に、電解質との相溶性が向上し、相分離温度を高めることができる。
【0062】
電解質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩等が挙げられ、具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
これらの他、電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。このイオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有していることから、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。
【0064】
有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF4
-、CF3SO3
-、PF4
-、(CF3SO2)2N-等が挙げられる。
【0065】
このような電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体であることが好ましい。
【0066】
イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、これらの材料に対する溶解性が悪い場合には、少量の溶媒に溶解させた溶液を得た後に、この溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかと混合することで溶解させてもよい。
【0067】
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0068】
電解質層4として充填される電解質は、固体、液体のいずれであってもよいが、電解質が低粘性の液体である場合の他、例えば、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。中でも、電解質は、ゲル状、固体状に形成することが好ましい。これによりエレクトロクロミック素子10の素子強度向上や、信頼性向上等を図ることができる。
【0069】
電解質層4を、固体状をなすものとする方法としては、例えば、電解質と溶媒とを含む液体をバインダー樹脂中に保持する方法が好ましい。これにより、電解質層4の高いイオン伝導度と固体強度との双方を得ることができる。また、ポリマー樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂であることが好ましい。これにより、熱重合や、溶媒の気化により固体状をなす電解質層4を得る場合と比較して、低温かつ短時間で、固体状をなす電解質層4を得ることができる。
【0070】
電解質層4がゲル状である場合、例えば、以下のようにして作製することができる。
まず、組成物溶液を作製し、作製した組成物溶液を型やフィルムに挟んで重合させるキャスト重合法等を用いた重合反応により製造することができる。前記組成物溶液は、前記イオン液体あるいは固体電解質を溶媒と混合した電解液と、重合性材料とウレタンアクリレートモノマー、及び必要に応じて、PEO鎖を有するアクリレートモノマー、及び必要に応じて、PMMA鎖を有するアクリレートモノマーを所望比率で混合し、必要に応じて、前記重合開始剤、及びその他の成分を混合することができる。
その他の作製方法としては、重合前の組成物溶液を、一方のエレクトロクロミック層上に塗布し、紫外線照射や加熱によって重合させる方法も用いることができる。また、前記エレクトロクロミック層を形成した前記支持体を5μm以上150μm以下のギャップを保持した状態で対向させ、組成物溶液を充填した後で紫外線照射や加熱によって重合させる方法も用いることができる。
【0071】
[支持体層]
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、第1の電極2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の電極6、および封止部8を支持する機能を有する。また、エレクトロクロミックシート100の最外層となる。
【0072】
また、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、エレクトロクロミックシート100の最外層を構成する。すなわち、少なくとも第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5は、外部に露出しないこととなる。そのため、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5を外部からの水分や酸素ガス、物理的な衝撃・摩擦等から保護することができる。
【0073】
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0074】
透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ノルボルネン系樹脂、シリコーン系樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0075】
これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1の支持体層1および第2の支持体層7における透明性や耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
【0076】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1の支持体層1および第2の支持体層7を得ることができる。
【0077】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0078】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、以下の式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0079】
【0080】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0081】
なお、式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
なかでもポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、さらに優れた強度を発揮する。
【0083】
・紫外線吸収剤
第1の支持体層1および第2の支持体層7はさらに、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これにより、エレクトロクロミックシート100の耐候性を向上しやすくなる。
この場合、紫外線吸収剤は、第1の支持体層1および第2の支持体層7を構成する樹脂材料とともに混合され、紫外線吸収剤入り樹脂材料を成形することで第1の支持体層1および第2の支持体層7を形成してもよく、または、第1の支持体層1および第2の支持体層7がそれぞれ紫外線吸収剤を含む層を有する多層構造としてもよい。多層構造とする場合、例えば、ポリカーボネートを基材としてこれに紫外線吸収剤を塗布して多層化し、第1の支持体層1を形成してもよい。
【0084】
・着色剤
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、光透過性を有していれば、さらに着色剤を含んでもよく、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0085】
これらの色の選択は、第1の支持体層1および第2の支持体層7に染料または顔料といった着色剤を含有させることにより可能になる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35等が挙げられる。
【0087】
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0088】
また、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
【0089】
さらに、第1の支持体層1および第2の支持体層7の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1の支持体層1および第2の支持体層7の屈折率n1を上記数値範囲とすることにより、エレクトロクロミックシート100の発消色機能が視認されやすくなる。
【0090】
第1の支持体層1および第2の支持体層7の平均厚さは、好ましくは0.1mm以上10.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下に設定される。
第1の支持体層1および第2の支持体層7の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックシート100の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックシート100に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0091】
第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ構成材料としてもよく、また、異なるものとしてもよい。また、いずれも延伸されたものであってもよいし、一方のみを未延伸のものとしてもよい。
【0092】
第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ屈折率としてもよく、また、異なるものとしてもよい。また、第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ厚みとしてもよく、また、異なるものとしてもよい。
【0093】
[封止部]
封止部8は、電解質層4の側面と、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の側面とを一体に覆い、外部からエレクトロクロミック素子10への水分や酸素ガスの侵入を防ぐとともに、第1の支持体層1および第2の支持体層7と接着しエレクトロクロミック素子10との剥離を防ぐために用いられる。また、対向する第1の電極2および第2の電極6の間に形成された第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の位置がずれると、動作時に発色品質が低下してしまうため、これを抑止するために用いられる。
【0094】
封止部8の平均厚さ(積層方向の長さ)は、エレクトロクロミック素子10の平均厚さに応じて調整されるが、例えば、好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。
【0095】
(封止材料)
本実施形態の封止材料は、液状であり、絶縁性材料であれば、特に限定されない。
封止材料としては、良好な塗布性を得つつ密着性を高める点から、せん断速度10/sにおける粘度(25℃)が500Pa・s以下であることが好ましく、せん断速度10/sにおける粘度(25℃)が10Pa・s以上であることがより好ましい。
【0096】
・硬化性樹脂
本実施形態の封止材料は、硬化性樹脂を含むことが好ましい。
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。紫外線反応性官能基、および熱反応性官能基の少なくとも一方を有するものが好ましく、(メタ)アクリロイル基および/またはエポキシ基を有するものがより好ましい。硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0097】
上記(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とから誘導されるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートと、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート等のイソシアネートと付加反応する反応性化合物との誘導体等が挙げられる。これらの誘導体はカプロラクトンやポリオール等で鎖延長させてもよい。
【0099】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とから誘導されたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0100】
その他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、およびグリセリンジメタクリレート等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0101】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N , N - ジグリシジルアニリン、N, N - ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/ またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/ またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0102】
また、硬化性樹脂として、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基とをそれぞれ少なくとも1つ以上有するエポキシ/(メタ)アクリル樹脂を用いてもよい。
【0103】
本実施形態の封止材料は、さらに無機粒子を含んでもよい。
【0104】
・無機粒子
無機粒子としては、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0105】
無機粒子は、表面を疎水処理したものであってもよい。例えば、エポキンシラン、アミノシラン、(メタ)アクリルシラン、ビニルシラン、メチルクロロシラン、ジメチルポリシロキサン等を用いて、無機粒子を公知の方法で表面処理できる。無機粒子としては、疎水処理をしたものと、そうでないものとを混合して用いてもよい。
【0106】
無機粒子の含有量は、封止材料全量に対して、1~80質量%であり、好ましくは3~70質量%であり、20~60質量%である。
【0107】
・その他
本実施形態の封止材料は、上記硬化性樹脂、無機粒子の他、有機粒子、重合開始剤、熱硬化剤等を含んでもよい。
【0108】
上記有機粒子としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子、シリコーン微粒子、コアシェル型ゴム微粒子等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0109】
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0110】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0111】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
【0112】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
【0113】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸またはルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0114】
上記重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部であり、より好ましくは1~10重量部である。
上記重合開始剤の含有量が上記下限値以上であることにより、封止材料が硬化性により優れるものとなる。一方、上記重合開始剤の含有量が上記上限値以下であることにより、封止材料が保存安定性により優れるものとなる。
【0115】
上記熱硬化剤は、加熱により上記硬化性樹脂中の熱反応官能基を反応させ、架橋させるためのものであり、硬化後の硬化性樹脂組成物の接着性、耐湿性を向上させる役割を有する。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0116】
上記熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部であり、より好ましくは1~30重量部である。
上記重合開始剤の含有量が上記下限値以上であることにより、封止材料が硬化性により優れるものとなる。一方、上記重合開始剤の含有量が上記上限値以下であることにより、封止材料の塗布性がより優れるものとなる。
【0117】
その他、必要に応じて、シランカップリング剤、遮光剤、反応性希釈剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0118】
(封止材料の製法)
本実施形態の封止材料を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、熱硬化性樹脂と、必要に応じて添加する、無機粒子と、重合開始剤および/または熱硬化剤やシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール、自転公転式ミキサー等が挙げられる。
【0119】
本実施形態のエレクトロクロミックシート100の総厚は、特に限定されないが、0.3mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。
エレクトロクロミックシート100の総厚を上記下限値以上とすることにより、強度を保持しつつ、層厚を上記上限値以下とすることで、エレクトロクロミックシート100を切断したり、湾曲させる等の加工性を良好にすることができる。
【0120】
なお、エレクトロクロミックシート100が備える各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換し、または他の層をさらに備えるものであってもよい。
【0121】
[作用効果]
エレクトロクロミックシート100は、上記のような構成を備えることで、例えば、第1の電極2と第2の電極6との間にプラス電圧を印加することにより、エレクトロクロミック素子10を所定の色に発色させることができ、一方で、第1の電極2と第2の電極6との間にマイナス電圧を印加することにより、エレクトロクロミック素子10を消色させ透明にすることができる。
【0122】
<エレクトロクロミックシートの製造方法>
本実施形態のエレクトロクロミックシートの製造方法は、エレクトロクロミック層が1つの場合に限られず、エレクトロクロミック層が複数の場合にも適用可能である。
以下、エレクトロクロミックシート100の製造方法について説明する。
【0123】
本実施形態のエレクトロクロミックシート100の製造方法は、以下の工程を有する。
第1の支持体層1上に第1の電極2を配置する工程と、
第1の電極2上に第1のエレクトロクロミック層3を配置する工程と、
平面視において、第1のエレクトロクロミック層3と重ならない領域に導電性ペーストを第1の電極2上に塗布し、かつ、第1のエレクトロクロミック層3の外周および当該導電性ペーストの外周を囲うように封止材料を第1の電極2上に塗布する工程と、
前記封止材料を硬化させて封止部8を形成する工程と、
前記導電性ペーストを硬化させて第1の柱状導電部22を形成する工程と、
を有する。
【0124】
本実施形態においては、さらに、
第2の支持体層7を準備し、第2の支持体層7上に第2の電極6を配置する工程と、
第2の電極6上に第2のエレクトロクロミック層5を配置する工程と、
電解質層4を準備し、電解質層4が介在するように第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5を対向させて、第1の支持体1および第2の支持体2を貼り合わせる工程と、
を備える。
【0125】
なお、本実施形態では、基板として第1の支持体層1を用い、第1のエレクトロクロミック層3と電解質層4と第2のエレクトロクロミック層5とがこの順に積層した例を挙げて説明するが、本発明の製造方法はこれに限られない。
また、電解質層4は、貼り合わせ工程の際に第1のエレクトロクロミック層3上に配置されるが、電解質層4は予め第1のエレクトロクロミック層3または第2のエレクトロクロミック層5上に配置されてもよい。
また第1の電極2、第2の電極6の平面視における配置は、電解質層4を通電できるように適宜設計される。
また、各工程の順序は、これに限られず、本発明の効果が損なわれない範囲において適宜変更することができる。
【0126】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0127】
-第1の電極2の配置工程-
まず、第1の支持体層1上に第1の電極2を配置する。配置方法は、特に限定されないが、例えば、スパッタ法を用いて導電性材料を製膜することで、第1の電極2を配置する方法が挙げられる。
【0128】
-第1のエレクトロクロミック層3の配置工程-
つぎに、第1の電極2上に第1のエレクトロクロミック層3を配置する。配置方法は、特に限定されないが、例えば、金属ナノ粒子含有ゾル溶液を第1の電極2上に塗布、乾燥し、その後、エレクトロクロミック材料を塗布して金属ナノ粒子にエレクトロクロミック材料を担持させることで第1のエレクトロクロミック層3を形成する方法が挙げられる。
なお、第1の電極2上には、第1のエレクトロクロミック層3の他、後述の封止部8、柱状導電部等が配置されるため、第1のエレクトロクロミック層3(のちのエレクトロミック素子10)は平面視において第1の電極2の一部の領域にのみ配置される。
【0129】
-封止材料および導電性ペーストの塗布工程-
図2は、封止材料81、導電性ペースト222および導電性ペースト666が塗布された第1の支持体層1を示す斜視図である。なお、
図2では第1の電極2は省略されている。
図2に示すように、第1の支持体層1上に、平面視において、第1のエレクトロクロミック層3と重ならない領域に導電性ペースト222および導電性ペースト666を塗布するとともに、第1のエレクトロクロミック層3の外周および導電性ペースト222、導電性ペースト666の外周をそれぞれ囲うように封止材料81を塗布する。
導電性ペースト222、導電性ペースト666および封止材料81の塗布の順序は特に限定されない。
第1のエレクトロクロミック層3の外周に封止材料81を塗布することで、後述の貼り合わせ工程で、封止材料81を押し広げ、電解質層4と第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5との側面を封止部8で覆うことができるようになる。
また、本実施形態においては、導電性ペースト222は後の第1の柱状導電部22、導電性ペースト666は後の第2の柱状導電部62となる。また、導電性ペースト222および導電性ペースト666の外周を囲うように封止材料81を塗布することで、後の封止部8を貫通する第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62とすることができる。
塗布方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。
【0130】
-第2の電極6の配置工程-
第1の電極2と同様にして、第2の支持体層7上に第2の電極6を配置する。配置方法は、特に限定されないが、例えば、スパッタ法を用いて導電性材料を製膜することで第2の電極6を配置する方法が挙げられる。
【0131】
-第2のエレクトロクロミック層5のエレクトロクロミック層3の配置工程-
第1のエレクトロクロミック層3と同様にして、第2の電極6上に第2のエレクトロクロミック層5を配置する。配置方法は、特に限定されないが、例えば、金属ナノ粒子含有ゾル溶液を第2の電極6上に塗布、乾燥し、その後、エレクトロクロミック材料を塗布して金属ナノ粒子にエレクトロクロミックを担持させることで第2のエレクトロクロミック層5を形成する方法が挙げられる。
【0132】
-電解質層4の準備工程-
電解質層4の形成方法は、上述した方法と同様の方法を用いることができる。
【0133】
-貼り合わせ工程-
電解質層4が介在するように第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5を対向させて、第1の支持体1および第2の支持体2を貼り合わせる。
この時、封止材料81を押し広げることによって、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4および第2のエレクトロクロミック層5の側面が封止材料81によって覆われることとなる。
【0134】
-封止部8の形成工程-
封止材料81を硬化させて封止部8を形成する。封止材料81の硬化は、公知の方法を用いることができ、例えば第1の支持体層1および第2の支持体層7を介して光照射と加熱の少なくとも一方を行うことで硬化することができる。
【0135】
-第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62の形成工程-
導電性ペースト222および導電性ペースト666を硬化させて第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62をそれぞれ形成する。導電性ペースト222および導電性ペースト666の硬化は、公知の方法を用いることができ、例えば第1の支持体層1および第2の支持体層7を介して光照射と加熱の少なくとも一方を行うことで硬化することができる。
封止材料と導電性ペースト222および導電性ペースト666として、同系統の硬化性樹脂を用いれば、同時に硬化させることができ、同系統の硬化性樹脂同士の相性も良いために封止部8と第1の柱状導電部22および第2の柱状導電部62との密着性をより高めることが出来る。
なお、同系統の硬化性樹脂とは、例えば、エポキシ樹脂等の主骨格が同じ樹脂を含む場合等を意図する。
【0136】
以上より、本実施形態のエレクトロクロミックシート100が得られる。
【0137】
<エレクトロクロミック装置>
本実施形態のエレクトロクロミック装置は、上記のエレクトロクロミックシート100を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
その他の手段としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、電源、固定手段、制御手段などが挙げられる。
エレクトロクロミック装置としては、例えば、アイウエア、調光眼鏡、双眼鏡、オペラグラス、自転車用ゴーグル、時計、電子ペーパー、電子アルバム、電子広告板などが挙げられる。
【0138】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0139】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0140】
(1)封止材料および導電材料の準備
(封止材料)
・液状封止材料1;エポキシアクリレート樹脂(「フォトレックS-WF17」積水マテリアルソリューションズ株式会社製)、せん断速度10/sにおける粘度(25℃)が150Pa・s
・固形封止材料2;両面粘着フィルム(「LA-50」日東電工社製)
エポキシアクリレート樹脂(「フォトレックS-WF17」積水マテリアルソリューションズ株式会社製)
(導電材料)
・導電性ペースト1;導電性ペースト(「ドータイトXA-910」藤倉化成社製)
・固形導電材2;導電性カーボン両面テープ(日新EM社製)
【0141】
(2)エレクトロクロミックシートの作製
<実施例1>
図1に示すようなエレクトロクロミックシートを以下の手順で作製した。
-第1の電極の形成-
第1の支持体として厚み0.5mmのポリカーボネート樹脂基板(ポリカエース、荷重たわみ温度140℃、住友ベークライト社製)を準備した。
前記第1の支持体上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第1の電極を形成した。
酸化チタン(石原産業株式会社製、ST-21)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬工業株式会社製、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gを、水5.5g、エタノール1.0gと共に12時間ビーズミル処理した。
得られた分散液にポリエチレングリコール(#20,000、日油株式会社製)1.2gを加えてペーストを作製した。
第1の電極上に、得られたペーストを、厚みが2μmになるようにスクリーン印刷法によって塗布し、80℃で乾燥させた後、UVオゾン処理90℃で20分間実施し、多孔質酸化チタン粒子膜からなる電子輸送層を形成した。
【0142】
-第1のエレクトロクロミック層の形成-
続いて、以下の化学式で示される還元発色性のエレクトロクロミック化合物Iを1.5質量%含む2,2,3,3-テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布した後、80℃で10分間アニール処理を行うことにより、上記の多孔質酸化チタン粒子膜に担持(吸着)させて、第1のエレクトロクロミック層を形成した。
【0143】
【0144】
-第2の電極の形成-
第2の支持体として上記の第1の支持体と同形状及び同厚みのポリカーボネート樹脂基板を準備した。第2の支持体上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第2の電極を形成した。
【0145】
-第2のエレクトロクロミック層の形成-
第2の電極であるITO膜上に、ポリエチレングリコールジアクリレート(日本化薬株式会社製、PEG400DA)と、光開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)
と、酸化発色性のエレクトロクロミック材料として、以下の式で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物IIと、2-ブタノンとを質量比(57:3:140:800)で混合した溶液を調製した。その後、調製した溶液をITOガラス基板上にスピンコート法により塗布した。
【0146】
【0147】
次に、窒素雰囲気下で、Cr層のパターンがついた石英基板を介して、UV硬化させて第2の電極上に上記のラジカル重合性化合物IIで表される化合物を含む厚み1.2μmのパターン化された第2のエレクトロクロミック層を選択形成した。
【0148】
-ゲル電解質の作製-
離型処理したPETフィルム(NP75C、パナック株式会社製)表面に、重合性材料(V3877、大同化成工業株式会社製)と、電解質(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIMTCB))とを質量比(20:80)で混合し、光重合開始剤(irgacure184、日本化薬株式会社製)を前記重合性材料に対して0.5質量%混合した溶液を塗布し、離型処理したPETフィルム(NP75A、パナック株式会社製)と貼り合わせて、紫外線(UV)硬化させてゲル電解質を作製した。
【0149】
作製したゲル電解質について、離型フィルムを剥離し、第1のエレクトロクロミック層の表面に貼合処理した。
【0150】
-封止材料および導電性ペーストの塗布工程-
次に、第1のエレクトロクロミック層が配置された第1の電極上であって、ゲル電解質および第1のエレクトロクロミック層の外周付近の2箇所に、導電性ペースト1(「ドータイトXA-910」藤倉化成社製)を塗布した。
続いて、液状封止材料1(「フォトレックS-WF17」積水マテリアルソリューションズ株式会社製)を、ゲル電解質および第1のエレクトロクロミック層の側面周辺を囲うように、かつ、上記導電性ペースト1を囲うように、ディスペンサ方式により塗布した。
【0151】
-貼合および硬化工程-
その後、第2の支持体の第2のエレクトロミック層とゲル電解質の表面とを合わせて貼合し、液状封止材料1および導電性ペースト1を押し広げることで、第1のエレクトロミック層および第2のエレクトロミック層の側面を液状封止材料1によって覆いつつ導電性ペースト1と液状封止材料1とを密着させた。さらに、紫外線を3J/cm2照射(仮硬化)し、100℃で1時間の熱硬化処理(本硬化)を行い、液状封止材料1および導電性ペースト1をともに硬化させて封止部および各柱状導電部を形成し、エレクトロクロミックシートを作製した。
【0152】
<比較例1>
実施例1の液状封止材料1の代わりに固形封止材料2を用い、以下のように製造工程の一部を変更した以外は、実施例1と同様の方法でエレクトロクロミックシートを作製した。
具体的には、実施例1の塗布工程において、液状封止材料1を塗布する代わりに柱状導電部となる部分に予め穴を開けた固形封止材料2を、第1のエレクトロクロミック層が配置された第1の電極上に貼付した。続いて、固形封止材料2の穴に、導電性ペースト1を充填した以外は、実施例1と同様に貼合及び硬化工程を経て、エレクトロクロミックシートを作製した。なお、固形封止材料2は常温で貼合した。
【0153】
<比較例2>
実施例1の液状封止材料1の代わりに固形封止材料2を用い、導電性ペースト1の代わりに固形導電材2を用い、以下のように製造工程の一部を変更した以外は、実施例1と同様の方法でエレクトロクロミックシートを作製した。
具体的には、実施例1の塗布工程において、液状封止材料1を塗布する代わりに柱状導電部となる部分に予め穴を開けた固形封止材料2を、第1のエレクトロクロミック層が配置された第1の電極上に貼付した。続いて、固形封止材料2の穴に、当該穴に充填できるように予め柱状に切り取った固形導電材2を貼付した。その後、第2の支持体の第2のエレクトロミック層とゲル電解質の表面とを合わせ、熱硬化処理を省略して固形封止材料2および固形導電材2を常温で貼合し、エレクトロクロミックシートを作製した。
【0154】
<比較例3>
実施例1の導電性ペースト1の代わりに固形導電材2を用い、以下のように製造工程の一部を変更した以外は、実施例1と同様の方法でエレクトロクロミックシートを作製した。
具体的には、実施例1の塗布工程において、予め柱状に切り取った固形導電材2を柱状導電部となる部分に貼付し、液状封止材料1を、ゲル電解質および第1のエレクトロクロミック層の側面周辺を囲うように、かつ、上記固形導電材2を囲うように、ディスペンサ方式により塗布した。その後、実施例1と同様に貼合及び硬化工程を経て、エレクトロクロミックシートを作製した。なお、固形導電材2は常温で貼合した。
【0155】
(3)評価
得られた各エレクトロクロミックシートの密着性について評価した。
・密着性
エレクトロクロミックシートの封止部と柱状導電部との界面し、密着性について評価した。結果を表1に示す。
【0156】
【符号の説明】
【0157】
1 第1の支持体層
2 第2の電極
3 第1のエレクトロクロミック層
4 電解質層
5 第2のエレクトロクロミック層
6 第2の電極
7 第2の支持体層
8 封止部
10 エレクトロクロミック素子
21 第1の補助電極層
22 第1の柱状導電部
61 第2の補助電極層
62 第2の柱状導電部
81 封止材料
222 導電性ペースト
666 導電性ペースト
100 エレクトロクロミックシート
【要約】 (修正有)
【課題】密着性が向上できるエレクトロクロミックシートの製造方法を提供する。
【解決手段】電解質層と、電解質層の一方の面に設けられた第1のエレクトロクロミック層と、電解質層および第1のエレクトロクロミック層の側面を覆うように設けられた封止部と、封止部の厚み方向に貫通し、電解質層と電気的に接続する第1の柱状導電部とを備えるエレクトロクロミックシートの製造方法であって、第1の支持体層上に第1のエレクトロクロミック層を配置する工程と、平面視において、第1のエレクトロクロミック層と重ならない領域に導電性ペーストを第1の支持体層上に塗布し、かつ、第1のエレクトロクロミック層の外周および当該導電性ペーストの外周を囲うように液状の封止材料を第1の支持体層上に塗布する工程と、前記封止材料を硬化させて封止部を形成する工程と、前記導電性ペーストを硬化させて第1の柱状導電部を形成する工程とを有する。
【選択図】
図1