(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】森林資源計測システムおよび森林資源算出方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
G01C15/00 104Z
(21)【出願番号】P 2023028819
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-02-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、農林水産省、農林水産分野の先端技術展開事業のうち研究開発委託事業(3Dスキャナ等搭載ドローンと深層学習を活用した帰還困難区域等の森林資源利用システムの開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521082190
【氏名又は名称】株式会社大和田測量設計
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391041062
【氏名又は名称】福島県
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】塚野 大介
(72)【発明者】
【氏名】皆川 昇
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】大槻 晃太
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】熊田 淳
(72)【発明者】
【氏名】溝口 知広
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-096752(JP,A)
【文献】特開2022-179840(JP,A)
【文献】特開2022-020396(JP,A)
【文献】特開2019-185449(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114279323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103486991(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体搭載のレーザースキャナーと、
該レーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測装置とを有し、
前記森林資源計測装置は、
前記レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得された前記3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化するセグメント処理部と、
前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理部と、
前記フィルタリング処理部で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する樹幹直径算出部と、
を備え、
前記樹幹直径算出部は、前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にして前記フィルタリング処理部で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索して樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求めて、その円錐形の式に基づき任意の高さの樹幹の直径を算出する、
ことを特徴とする森林資源計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の森林資源計測システムにおいて、
前記フィルタリング処理部は、前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから、樹木毎に樹冠部分の閾値および下草部分の閾値を設定して樹冠部分および下草部分に該当する範囲に存在する3次元点群データをノイズとして除去し、
さらに前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木毎に樹頂点に該当する1点の3次元点群データを求め、該点群データを円錐形の頂点として地表に向かって円錐形を想定し、該円錐形の閾値を設定して該円錐形の外側に存在する3次元点群データをノイズとして除去することを特徴とする森林資源計測システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の森林資源計測システムにおいて、
前記森林資源計測装置は、
前記データ取得部で取得された前記3次元点群データについて、地表面を水平に変換して地表面からの実質の高さに換算する正規化処理部を備え、
前記セグメント処理部は、前記正規化処理部で換算された3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化することを特徴とする森林資源計測システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の森林資源計測システムにおいて、
前記森林資源計測装置は、
前記樹幹直径算出部で算出された樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径と樹高とに基づいて樹木毎の材積を算出する材積算出部を備えたことを特徴とする森林資源計測システム。
【請求項5】
飛行体搭載のレーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する方法であって、
前記レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得された前記3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化するセグメント処理ステップと、
前記セグメント処理ステップでセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理ステップと、
前記フィルタリング処理ステップで抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する樹幹直径算出ステップと、
を含み、
前記樹幹直径算出ステップは、前記セグメント処理ステップでセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にして前記フィルタリング処理ステップで抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索して樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求めて、その円錐形の式に基づき任意の高さの樹幹の直径を算出する、
ことを特徴とする森林資源算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、森林計測を行うための方法として、航空機にレーザー装置を搭載し、このレーザー装置を用いて地上にレーザーを照射し、その反射を測定することで、地面、建物、樹木等を含めた地上の三次元データを取得することが知られている。一方、上空からレーザー装置を用いて森林計測を行う場合に、森林上部の樹冠部分の3次元点群データを得ることはできるが、樹木の葉等によってレーザー光が遮られるため、樹幹部分の3次元点群データを取得することは困難な場合がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、森林計測により得られた3次元点群データから、樹冠点群、樹幹点群、および地表面点群に基づいて樹高および所定の高さにおける樹幹の直径を算出するシステムにおいて、樹高および所定の高さにおける樹幹の直径のデータセットを教師データとして用い、入力を樹高、出力を所定の高さにおける樹幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成し、この推定モデルを用いて、入力された樹高から所定の高さにおける樹幹の直径を推定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、機械学習により生成した推定モデルを用いて、推定モデルに入力された樹高から所定の高さにおける樹幹の直径を推定することになるため、実測したものと比べると計測精度が低くなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、森林計測において高精度に樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1発明に係る森林資源計測システムは、
飛行体搭載のレーザースキャナーと、
該レーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測装置とを有し、
前記森林資源計測装置は、
前記レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得された前記3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化するセグメント処理部と、
前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理部と、
前記フィルタリング処理部で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する樹幹直径算出部と、
を備え、
前記樹幹直径算出部は、前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にして前記フィルタリング処理部で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索して樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求めて、その円錐形の式に基づき任意の高さの樹幹の直径を算出する、
ことを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る森林資源計測システムは、第1発明において、
前記フィルタリング処理部は、前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから、樹木毎に樹冠部分の閾値および下草部分の閾値を設定して樹冠部分および下草部分に該当する範囲に存在する3次元点群データをノイズとして除去し、
さらに前記セグメント処理部でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木毎に樹頂点に該当する1点の3次元点群データを求め、該点群データを円錐形の頂点として地表に向かって円錐形を想定し、該円錐形の閾値を設定して該円錐形の外側に存在する3次元点群データをノイズとして除去することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る森林資源計測システムは、第1発明または第2発明において、
前記森林資源計測装置は、
前記データ取得部で取得された前記3次元点群データについて、地表面を水平に変換して地表面からの実質の高さに換算する正規化処理部を備え、
前記セグメント処理部は、前記正規化処理部で換算された3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る森林資源計測システムは、第1発明または第2発明において、
前記森林資源計測装置は、
前記樹幹直径算出部で算出された樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径と樹高とに基づいて樹木毎の材積を算出する材積算出部を備えたことを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る森林資源算出方法は、
飛行体搭載のレーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する方法であって、
前記レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得された前記3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化するセグメント処理ステップと、
前記セグメント処理ステップでセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理ステップと、
前記フィルタリング処理ステップで抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する樹幹直径算出ステップと、
を含み、
前記樹幹直径算出ステップは、前記セグメント処理ステップでセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にして前記フィルタリング処理ステップで抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索して樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求めて、その円錐形の式に基づき任意の高さの樹幹の直径を算出する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、森林計測において高精度に樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出して樹木毎の材積を算出することが可能になる。さらに森林計測作業のスピードアップや作業効率向上により森林計測業務全体の効率化につながることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムを説明するシステム構成図の一例を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおける森林資源計測装置の機能構成を示した機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、森林資源計測装置で実行される処理手順を示したフローチャート図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、フィルタリング処理手順の概略を示した模式図である。
【
図5A】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、樹幹直径算出処理における「(A)入力データ抽出」の手順を示した模式図である。
【
図5B】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、樹幹直径算出処理における「(B)樹幹直径算出」の手順1~手順3を示した模式図である。
【
図5C】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、樹幹直径算出処理における「(B)樹幹直径算出」の手順4~手順6を示した模式図である。
【
図5D】本発明の実施形態に係る森林資源計測システムにおいて、樹幹直径算出処理において「(C)補足」として「(1)制約式」と「(2)円錐形の式」を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施形態により限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る森林資源計測システムについて、システム構成図の一例を示したものである。
図1に示すように、森林資源計測システム1は、飛行体搭載のレーザースキャナー2と、レーザースキャナー2から森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測装置10とを有している。
【0016】
レーザースキャナー2では、計測対象の森林領域にレーザー光を照射して得られた、レーザー光の反射強度・反射信号から距離算出や地表面の判定を行っている。
【0017】
森林資源計測装置10は、レーザースキャナー2から森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データを取得して、樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する。3次元点群データには、樹木の頂点に対応する点群データと、樹木の樹冠部分に対応する点群データと、樹木の樹幹部分に対応する点群データと、下草部分に対応する点群データとを含んでいる。
【0018】
また森林資源計測装置10は、一般的なコンピュータ装置であり、インターネット等のネットワークを介してレーザースキャナー2から3次元点群データを取得できるように、通信制御を行う機能を有する構成としてもよい。
【0019】
次に、
図2に示す機能ブロック図を用いて森林資源計測装置10の機能構成について説明する。
図2に示すように、森林資源計測装置10は、データ取得部11、正規化処理部12、セグメント処理部13、フィルタリング処理部14、樹幹直径算出部15、材積算出部16、を備えている。
【0020】
データ取得部11は、レーザースキャナー2により森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得する。
【0021】
正規化処理部12は、データ取得部11で取得された前記3次元点群データについて、地表面を水平に変換して地表面からの実質の高さに換算する正規化処理を行う。この正規化処理を行うことにより、後続の処理における煩雑さを解消できるメリットがある。また、この正規化処理自体は必須の処理ではないため、森林資源計測装置10において、正規化処理部12を省略する機能構成とすることも可能である。
【0022】
セグメント処理部13は、データ取得部11で取得された前記3次元点群データ、または正規化処理部12で換算された3次元点群データについて、樹木毎の点群データをセグメント化する。ここで、3次元点群データをセグメント化する手法として、例えば樹冠部分の高さに応じて単木セグメントする手法がある。
【0023】
フィルタリング処理部14は、セグメント処理部13でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出する。この抽出方法として、例えば、次の2段階に分けて行うことができる。
【0024】
<第一段階>
セグメント処理部13でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから、樹木毎に樹冠部分の閾値および下草部分の閾値を設定して樹冠部分および下草部分に該当する範囲に存在する3次元点群データをノイズとして除去する。
【0025】
<第二段階>
セグメント処理部13でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木毎に樹頂点に該当する1点の3次元点群データを求め、該点群データを円錐形の頂点として地表に向かって円錐形を想定し、該円錐形の閾値を設定して該円錐形の外側に存在する3次元点群データをノイズとして除去する。
【0026】
上記の第一段階および第二段階の処理を行うことにより、セグメント処理部13でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出することができる。
【0027】
樹幹直径算出部15は、フィルタリング処理部14で抽出された樹幹に相当する3次元点点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する。
【0028】
例えば、樹幹直径算出部15は、セグメント処理部13でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にしてフィルタリング処理部14で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索して樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求めて、その円錐形の式に基づき任意の高さの樹幹の直径を算出する。なお、樹幹直径算出処理の具体例については後述する。
【0029】
材積算出部16は、樹幹直径算出部15で算出された樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径と樹高とに基づいて樹木毎の材積を算出する。
【0030】
次に、
図3に示すフローチャート図を用いて、本システムの実行するプロセスについて説明する。
図3は、森林資源計測装置10で実行される処理手順を示したフローチャート図である。
【0031】
<データ取得ステップS10>
レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データを取得する。
【0032】
<正規化処理ステップS20>
データ取得ステップS10で取得された前記3次元点群データについて、地表面を水平に変換して地表面からの実質の高さに換算する正規化処理を行う。この正規化処理を行うことにより、後続の処理における煩雑さを解消できるメリットがある。また、この正規化処理自体は必須の処理ではないため、この正規化処理ステップS20を省略することも可能である。
【0033】
<セグメント処理ステップS30>
正規化処理ステップS20で換算された前記3次元点群データについて、樹木毎の点群データをセグメント化する。なお、上記の正規化処理ステップS20を省略する場合には、データ取得ステップS10で取得された前記3次元点群データについて、樹木毎の点群データをセグメント化する。ここで、3次元点群データをセグメント化する手法として、例えば樹冠部分の高さに応じて単木セグメントする手法がある。
【0034】
<フィルタリング処理ステップS40>
セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理を行う。このフィルタリング処理の具体例については後述する。
【0035】
<樹幹直径算出ステップS50>
フィルタリング処理ステップS40で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出する。この樹幹直径算出処理の具体例については後述する。
【0036】
<材積算出部ステップS60>
樹幹直径算出ステップS50で算出された樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径と樹高とに基づいて樹木毎の材積を算出する。
【0037】
以上で説明したステップS10からステップS60を、例えばコンピュータプログラムで実行させるように構成することも可能である。これにより、森林計測において、高精度に樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出して樹木毎の材積を算出することが可能になるとともに、計測作業のスピードアップや作業効率向上により森林計測業務全体の効率化につながることが期待できる。
【0038】
次に、上記で説明したフィルタリング処理ステップS40におけるフィルタリング処理の具体例について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、フィルタリング処理手順の概略を示した模式図である。
【0039】
<フィルタリング処理の具体例>
フィルタリング処理ステップS40では、セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するにあたり、
図4に示すように、例えば、次の2段階に分けて行うことができる。
【0040】
<第一段階>
セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから、樹木毎に樹冠部分の閾値および下草部分の閾値を設定して樹冠部分および下草部分に該当する範囲に存在する3次元点群データをノイズとして除去する。
【0041】
<第二段階>
セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木毎に樹頂点に該当する1点の3次元点群データを求め、該点群データを円錐形の頂点として地表に向かって円錐形を想定し、該円錐形の閾値を設定して該円錐形の外側に存在する3次元点群データをノイズとして除去する。
【0042】
上記の第一段階および第二段階の処理を行うことにより、セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出することができる。
【0043】
次に、上記で説明した樹幹直径算出ステップS50における樹幹直径算出処理の具体例について、
図5A、
図5B、
図5C、
図5Dを参照しながら説明する。
図5Aは、樹幹直径算出処理における「(A)入力データ抽出」の手順を示した模式図である。
図5B、
図5Cは、樹幹直径算出処理における「(B)樹幹直径算出」の手順1~手順6を示した模式図である。
図5Dは、樹幹直径算出処理において「(C)補足」として「(1)制約式」と「(2)円錐形の式」を示した図である。
【0044】
<樹幹直径算出処理の具体例>
樹幹直径算出ステップS50では、フィルタリング処理ステップS40で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹幹の直径を算出するにあたり、
図5A、
図5B、
図5C、
図5Dに示すように、例えば、次の手順で行うことができる。
【0045】
・ 入力データ抽出
図5Aに示すように、樹幹直径算出処理の入力データとして、セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹木毎に樹頂点に該当する1点の3次元点群データを抽出し、さらにフィルタリング処理ステップS40で抽出された樹幹に相当する3次元点群データを抽出する。
【0046】
・ 樹木毎に任意の位置で樹幹直径算出
図5Bおよび
図5Cに示す手順1~手順6により樹幹直径算出処理を行う。
<手順1>
セグメント処理ステップS30でセグメント化された樹木毎の3次元点群データから、樹木の樹頂点に該当する1点の3次元点群データ位置を円錐形の頂点に設定し、該円錐形の頂点を基準にして3次元点群データから円錐形の形状を探索するための初期パラメタとする。
【0047】
<手順2>
フィルタリング処理ステップS40で抽出された樹幹に相当する3次元点群データにおける点群データ位置と円錐形表面上の位置との差分の合計値を計算する式を設定する。この式は、円錐形の頂点から底辺に向かって直線を初期設定し、円錐形の底辺半径を広げていく中で、3次元点群データ位置と円錐形の斜面との差分がどの程度かを示す式であり、
図5Dに示した「(C)補足」に記載の「(1)制約式」で与えられる。
【0048】
<手順3>
手順1で設定された円錐形の頂点を基準にして、フィルタリング処理ステップS40で抽出された樹幹に相当する3次元点群データから円錐形の形状を探索し、手順2で与えられた式(1)を用いて計算された差分の合計値の最小値が予め設定された閾値以下になるまで探索を繰り返し行うことにより、円錐形の形状に適合する最適点を探索する。
【0049】
<手順4>
手順3により樹頂点を円錐形の頂点として探索して得られた円錐形の形状に適合する最適点を基に、樹幹として最も円錐形の形状に適合した円錐形の式を求める。
【0050】
<手順5>
手順4により得られた円錐形の式から、円錐の斜面の傾き/円錐の回転角/円錐底辺の中心位置を取得する。
【0051】
<手順6>
手順4および手順5により得られた円錐形から、任意の高さの樹幹の直径を算出する。ここで円錐形の式は、
図5Dに示した「(C)補足」に記載の「(2)円錐形の式」で与えられる。
【0052】
上記手順1~手順6の処理を行うことにより、樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径を高精度に算出することができるようになる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、上記で算出された樹木毎の胸高直径を含む樹幹の直径と樹高とに基づいて樹木毎の材積を高精度に算出することが可能になり、さらに森林計測における計測作業のスピードアップや作業効率向上が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
1…森林資源計測システム
2…レーザースキャナー
10…森林資源計測装置
11…データ取得部
12…正規化処理部、
13…セグメント処理部
14…フィルタリング処理部
15…樹幹直径算出部
16…材積算出部
【要約】
【課題】森林計測において高精度に樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測システムを提供する。
【解決手段】
飛行体搭載のレーザースキャナー2と、
該レーザースキャナーから森林領域にレーザー光を照射して得られた3次元点群データに基づき樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する森林資源計測装置10とを有するシステムであって、森林資源計測装置10は、
前記レーザースキャナーにより森林領域を3次元計測して得られた3次元点群データに含まれる樹木毎の3次元点群データをセグメント化し、セグメント化された樹木毎の3次元点群データから樹幹に相当する部分のみを抽出するフィルタリング処理を行った後、樹幹に相当する3次元点群データから樹木毎の樹高と樹幹の直径を算出する。
【選択図】
図1