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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】水質測定装置、および水質測定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 43/00 20060101AFI20230530BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230530BHJP
   C02F 1/00 20230101ALN20230530BHJP
【FI】
B01D43/00 Z
G01N33/18 A
G01N33/18 B
C02F1/00 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018234211
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093230
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早水 庸隆
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
(72)【発明者】
【氏名】大江 太郎
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526479(JP,A)
【文献】特開2009-113035(JP,A)
【文献】特開2010-284644(JP,A)
【文献】特開2004-042012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0096327(US,A1)
【文献】国際公開第2017/168054(WO,A1)
【文献】特開平5-146608(JP,A)
【文献】特開2011-5463(JP,A)
【文献】特開2009-128341(JP,A)
【文献】特開2004-202336(JP,A)
【文献】特表2013-521001(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104001349(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 43/00
G01N 33/18
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、
凝集剤と被処理水とを混和する混和手段と、
混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成手段、および形成されたフロックを含む濃縮液と処理液とに分離するための分離手段を有する固液分離装置
前記処理液の液質を測定する処理液質測定手段と、
を備え、
前記分離手段は、前記混和液の入口と、矩形状の流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、前記処理液の出口と、前記濃縮液の出口とを有する曲がりチャネルであり、前記流路の内壁面の一部がスリップ壁面であり、
前記処理液質測定手段は、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する手段であることを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固液分離装置であって、
前記渦巻き状チャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む前記流路を有し、前記上壁面または前記下壁面の少なくとも一部がスリップ壁面であることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固液分離装置であって、
前記スリップ壁面上での壁面流速は、0より大きいことを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固液分離装置であって、
前記スリップ壁面は、撥水加工処理が施された壁面、または撥水素材が使用された壁面であることを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加工程と、
凝集剤と被処理水とを混和する混和工程と、
混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程、および形成されたフロックを含む濃縮液と処理液とに分離する分離工程と、
前記処理液の液質を測定する処理液質測定工程と、
を含み、
前記分離工程は、前記混和液の入口と、矩形状の流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、前記処理液の出口と、前記濃縮液の出口とを有する曲がりチャネルを用いて行い、前記流路の内壁面の一部がスリップ壁面であり、
前記処理液質測定工程において、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定することを特徴とする水質測定方法。
【請求項6】
請求項に記載の固液分離方法であって、
前記渦巻き状チャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む前記流路を有し、前記上壁面または前記下壁面の少なくとも一部がスリップ壁面であることを特徴とする固液分離方法。
【請求項7】
請求項またはに記載の固液分離方法であって、
前記スリップ壁面上での壁面流速は、0より大きいことを特徴とする固液分離方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の固液分離方法であって、
前記スリップ壁面は、撥水加工処理が施された壁面、または撥水素材が使用された壁面であることを特徴とする固液分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体と液体を分離する固液分離装置、固液分離方法、およびその固液分離装置または固液分離方法を用いた水質測定装置、水質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体と液体を分離する固液分離装置として、流体から流体と同じ密度を有する中立浮力粒子を分離するシステムであって、遠心力を導入して中立浮力粒子がチャネルの中心からチャネルの渦巻きの中心側の方へずれた管状帯を流体中に形成するように適合された湾曲したチャネル形状を有する渦巻き状チャネルと、管状帯が流れる流体のための第1の出口と、残りの流体のための第2の出口と、を有し、管状帯が渦巻き状チャネル内で遠心力、壁揚力とサフマン慣性揚力、マグヌス力との平衡と、ディーン渦流の発生に基づき非対称的に流れ、流体が、液体であるシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のシステムでは、上記各力の平衡が不安定であったり、ディーン渦流の発達が不十分である場合、粒子の分離性能が著しく低下する。また、特許文献1のシステムは、流体から流体と同じ密度を有する中立浮力粒子を分離するシステムではあるが、流体と異なる密度であるが流体に近い密度を有する粒子の分離性能が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5731096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、流体に近い密度を有する粒子の流体からの分離性能に優れる固液分離装置および固液分離方法、ならびにその固液分離装置または固液分離方法を用いた水質測定装置および水質測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、凝集剤と被処理水とを混和する混和手段と、混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成手段、および形成されたフロックを含む濃縮液と処理液とに分離するための分離手段を有する固液分離装置前記処理液の液質を測定する処理液質測定手段と、を備え、前記分離手段は、前記混和液の入口と、矩形状の流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、前記処理液の出口と、前記濃縮液の出口とを有する曲がりチャネルであり、前記流路の内壁面の一部がスリップ壁面であり、前記処理液質測定手段は、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する手段である、水質測定装置である。
【0007】
前記固液分離装置において、前記渦巻き状チャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む前記流路を有し、前記上壁面または前記下壁面の少なくとも一部がスリップ壁面であることが好ましい。
【0008】
前記固液分離装置において、前記スリップ壁面上での壁面流速は、0より大きいことが好ましい。
【0009】
前記固液分離装置において、前記スリップ壁面は、撥水加工処理が施された壁面、または撥水素材が使用された壁面であることが好ましい。
【0011】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加工程と、凝集剤と被処理水とを混和する混和工程と、混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程、および形成されたフロックを含む濃縮液と処理液とに分離する分離工程と、前記処理液の液質を測定する処理液質測定工程と、を含み、前記分離工程は、前記混和液の入口と、矩形状の流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、前記処理液の出口と、前記濃縮液の出口とを有する曲がりチャネルを用いて行い、前記流路の内壁面の一部がスリップ壁面であり、前記処理液質測定工程において、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する、水質測定方法である。
【0012】
前記固液分離方法において、前記渦巻き状チャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む前記流路を有し、前記上壁面または前記下壁面の少なくとも一部がスリップ壁面であることが好ましい。
【0013】
前記固液分離方法において、前記スリップ壁面上での壁面流速は、0より大きいことが好ましい。
【0014】
前記固液分離方法において、前記スリップ壁面は、撥水加工処理が施された壁面、または撥水素材が使用された壁面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、流体に近い密度を有する粒子の流体からの分離性能に優れる固液分離装置および固液分離方法、ならびにその固液分離装置または固液分離方法を用いた水質測定装置および水質測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る固液分離装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る固液分離装置における曲がりチャネルの流路断面の一例を示す概略図である。
図3】(a)ノンスリップ面における流速分布を示す概略図であり、(b)スリップ面における流速分布を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る凝集分離装置の一例を示す概略構成図である。
図5】従来のジャーテストによる凝集条件決定方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る固液分離装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0020】
本実施形態に係る固液分離装置1は、固体粒子を含む被処理液から固体粒子を含む濃縮液と処理液とに分離するための分離手段として、曲がりチャネル10を有する。曲がりチャネル10は、曲率を有する壁面を含む流路を有し、流路の内壁面の一部がスリップ壁面である。固液分離装置1は、固体粒子が濃縮された濃縮液を曲がりチャネル10から取り出す出口ライン14と、処理液を曲がりチャネル10から取り出す処理液ライン16と、を有してもよい。
【0021】
図1に示す固液分離装置1において、曲がりチャネル10の被処理液入口には、被処理液ライン12が接続されている。曲がりチャネル10の濃縮液出口には、出口ライン14が接続され、処理液出口には、処理液ライン16が接続されている。
【0022】
本実施形態に係る固液分離方法および固液分離装置1の動作について説明する。
【0023】
図1の固液分離装置1において、固体粒子を含む被処理液は、被処理液ライン12を通して、曲がりチャネル10へ送液される。
【0024】
被処理液は、曲がりチャネル10の被処理液入口から渦巻き状チャネルの流路に導入され、流路を流れていくと、固体粒子と液体との密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば外周側の処理液と流路の例えば内周側の濃縮液とに分離される(分離工程)。濃縮液は、出口ライン14を通して排出され、処理液は、処理液ライン16を通して排出される(分離工程)。
【0025】
曲がりチャネル10は、被処理液を流入するための被処理液入口と、流体が流れるための例えば矩形状の流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、処理液を排出するための、流路の例えば外周側から分かれた処理液出口と、濃縮液を排出するための、流路の例えば内周側から分かれた濃縮液出口と、を有する。図2に曲がりチャネル10の流路の断面を示すが、固体粒子を含む被処理液が被処理液入口から渦巻き状チャネルに導入されると、矩形状の流路の断面には二次流れ(ディーン渦)が生じる。これは遠心力による外向きの流れと、直進しようとする流れが外壁により強制的に曲げられることによる内向きへの圧力によるものである。
【0026】
固体粒子はこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、固体粒子が外周側に集まる場合もある。この場合には、曲がりチャネル10は、流路の内周側から分かれた処理液出口と、流路の外周側から分かれた濃縮液出口と、を有していてもよい。曲がりチャネル10は、曲がりチャネル10における固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、固体粒子と液体との密度差と、重力と、流体力学的作用とによって、被処理液から固体粒子を分離することができる。
【0027】
本実施形態に係る固液分離装置1では、曲がりチャネル10の流路の内壁面の一部がスリップ壁面である。例えば、曲がりチャネル10の流路の上下内壁面のうちいずれか一方は、スリップ面であり、残りの内壁面は、ノンスリップ面である。粘性流体を通水した場合、例えば未処理の壁面では流体摩擦抵抗によって、壁面流速は0となる。これをノンスリップ面という(図3(a)参照)。一方、例えば撥水性の壁面では流体摩擦抵抗の軽減効果が得られるため、壁面流速は0とならない。これをスリップ面という(図3(b)参照)。例えば、流路の断面が図2に示すように矩形状の場合、曲がりチャネル10の流路の下内壁面はスリップ面であり、残りの3内壁面(上内壁面および両側内壁面)はノンスリップ面である。例えば、流路の断面が円状や楕円状の場合、曲がりチャネル10の流路の下内壁面はスリップ面であり、残りの内壁面はノンスリップ面である。なお、流路の断面が円状や楕円状の場合の下内壁面とは、流路の下半分のことを指す。また、下内壁面とは、固液分離装置1を使用する際に下側(重力方向)に位置する面のことを言う。
【0028】
曲がりチャネル10の流路の内壁面の一部がスリップ壁面であることにより、従来の曲がりチャネルに比べて、流路下部のディーン渦流における、流路内側への戻り流れが弱まり、流路外側下部へ固体粒子が集まりやすくなり、固液分離精度が向上する。したがって、流体に近い密度を有する粒子の流体からの分離性能に優れる。
【0029】
曲がりチャネル10の流路のスリップ壁面上での壁面流速は、0より大きければよい。
【0030】
流路の内壁面をスリップ壁面とする方法としては、例えば、フッ素樹脂、シリコン系樹脂等による撥水加工処理や、フッ素樹脂、シリコン系樹脂等の撥水素材の使用等が挙げられる。
【0031】
曲がりチャネル10は、曲率を有する壁面を含む流路を有するものであればよく、特に制限はない。曲がりチャネル10は、例えば、曲率を有する壁面を含む流路を有する配管が渦巻き状に形成されたものである。曲がりチャネル10の流路の断面形状は、矩形状、円状、楕円状等が挙げられ、ディーン渦の形成のためには、流路の断面形状が矩形状であることが望ましい。すなわち、曲がりチャネル10は、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む流路を有し、上壁面または下壁面の少なくとも一部がスリップ壁面であることが好ましい。
【0032】
曲がりチャネル10は、固体粒子の分離の目的に応じて決められた所定の曲率、長さ、および幅を有することが好ましい。
【0033】
固体粒子の分離に最適となる曲がりチャネルの仕様は、固体粒子の性状(密度、粒子径等)によって変化するため、流動解析ソフトを用いて決定することが望ましい。流動解析ソフトとしては、例えば、「ANSYS Fluent」(ANSYS社)等が挙げられる。
【0034】
上記の通り、曲がりチャネル10における固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、固体粒子の分離を行うことができる。
【0035】
本実施形態に係る固液分離方法および固液分離装置における処理対象は、固体粒子を含む液体であればよく、特に制限はない。例えば、凝集分離処理における固液分離、センチメートルからマイクロメートルサイズの配管やチャネルにおける固体粒子の選択的な制御や分離等において用いることができる。
【0036】
本実施形態に係る固液分離方法および固液分離装置を用いて、凝集分離処理を行ってもよいし、凝集分離処理における水質測定を行ってもよい。以下にその一例を示す。
【0037】
本発明の実施形態に係る水質測定装置は、上記固液分離装置と、処理液の液質を測定する処理液質測定手段と、を備え、処理液質測定手段は、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する手段である。水質測定装置は、例えば、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、凝集剤が添加されて形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備える凝集分離装置と;処理水の水質を測定する処理水質測定手段と;を備え、分離手段が上記固液分離装置である。凝集分離装置は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、をさらに備えてもよい。上記固液分離装置を、混和手段や、フロック形成手段として用いてもよい。
【0038】
本発明の実施形態に係る水質測定方法は、上記固液分離方法と、処理水の水質を測定する処理水質測定工程と、を含み、処理水質測定工程において、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する方法である。水質測定方法は、例えば、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、凝集剤が添加されて形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含む凝集分離方法と;処理水の水質を測定する処理水質測定工程と;を含み、分離工程において上記固液分離装置(上記固液分離方法)を用いる。凝集分離方法は、被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、をさらに含んでもよい。混和工程や、フロック形成工程において、上記固液分離装置を用いてもよい。
【0039】
本実施形態に係る水質測定装置の一例の概略を図4に示し、その構成について説明する。
【0040】
図4に示す水質測定装置3は、例えば、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段として凝集剤添加配管30と、凝集剤と被処理水とを混和する混和手段としてラインミキサ18と、混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成手段、および形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離手段として、上記固液分離装置1と、処理水の水質を測定する処理水質測定手段として処理水質測定装置20と、を備える。
【0041】
図4の水質測定装置3において、ラインミキサ18の入口に被処理水配管22が接続されている。ラインミキサ18の出口と曲がりチャネル10の混和液入口とは、混和液配管24により接続されている。曲がりチャネル10の濃縮水出口には、濃縮水配管26が接続され、処理水出口には、処理水配管28が接続されている。被処理水配管22には、凝集剤添加配管30が接続されている。処理水配管28には、処理水質測定装置20が設置されている。
【0042】
本実施形態に係る水質測定方法、および固液分離装置1を備える水質測定装置3の動作について説明する。
【0043】
図4の水質測定装置3において、懸濁物質等を含む被処理水は、被処理水配管22を通して、ラインミキサ18へ送液される。ここで、被処理水配管22において、凝集剤添加配管30を通して被処理水に凝集剤が添加され(凝集剤添加工程)、ラインミキサ18において、凝集剤と被処理水とが撹拌されて混和される(混和工程)。凝集剤と被処理水とが混和された混和液は、混和液配管24を通して、曲がりチャネル10へ送液される。
【0044】
混和液は、曲がりチャネル10の混和液入口から渦巻き状チャネルの流路に導入され、流路における流体力学的作用により撹拌が行われ、凝集剤と被処理水との混和、凝集により形成された微細なフロック同士が衝突して、フロックの粒子径が成長する(フロック形成工程)。流路を流れていくと、水とフロックとの密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば外周側の処理水と流路の例えば内周側の濃縮水とに分離される(分離工程)。濃縮水は、濃縮水配管26を通して排出され、処理水は、処理水配管28を通して排出される(以上が、凝集分離工程)。
【0045】
次に、処理水配管28において、処理水質測定装置20によって、処理水の水質が測定される(処理水質測定工程)。
【0046】
図5に、回転数を制御できる複数の撹拌翼を備えるジャーテスタと呼ばれる試験装置を用い、凝集、固液分離に最適な凝集剤の添加量等を決定する、従来のジャーテストによる凝集条件決定方法の一例の概略を示す。評価用水質測定装置100は、評価用混和手段として評価用混和槽102と、評価用フロック形成手段として評価用フロック形成槽104と、評価用分離手段として評価用固液分離装置106と、を備える評価用凝集分離装置110と;処理水質測定手段として処理水質測定装置108と;を備える。例えば、評価用混和槽102において、被処理水に凝集剤が添加されて混和され、評価用フロック形成槽104においてフロックが形成され、評価用固液分離装置106において重力による沈降分離、ろ過等により固液分離が行われ、濃縮水と処理水とに分離される。処理水の水質は、処理水質測定装置108により測定される。
【0047】
従来のオートジャーテスタは部品点数が多く、メンテナンス性が悪い、高価になるという課題がある。また、ジャーテスタは、同時に4条件~6条件の試験が可能であるが、1回の試験には、従来のジャーテストでは、例えば、混和に3分、フロック形成に10分、固液分離に10分、処理水質の測定に10分、合計33分以上要する。実際の凝集分離処理において、被処理水の処理水質に応じて従来のジャーテストで凝集条件を決める場合、急激な被処理水の水質変動があった場合に、合計30分以上要するジャーテストでは時間遅れが生じてしまい、急激な被処理水の水質変動に追従できず、処理水質が悪化する場合がある。
【0048】
本実施形態に係る固液分離装置1により、高速で凝集分離を行うことができる。この固液分離装置1を備える水質測定装置3を、例えば、凝集、固液分離に最適な凝集剤の添加量等を決定する試験を行うジャーテスタまたはオートジャーテスタとして用いることにより、ジャーテストの高速化が可能となり、処理水質測定装置20によって測定された処理水の水質に基づいて迅速に凝集分離処理の凝集条件等を決定することができる。そのため、被処理水の水質変動があっても、特に被処理水の急激な水質変動があっても、最適な凝集条件を追従させることができるため、処理水質の悪化が抑制される。ジャーテストをインラインで行うことができ、連続的に最適な凝集分離処理条件を決定することができる。
【0049】
図4の水質測定装置3において、凝集剤と被処理水との混和(混和工程)は、ラインミキサ18を用いて行われているが、ラインミキサ18の代わりに、撹拌羽根等を有する撹拌装置を備える撹拌槽を混和手段として用いてもよいし、フロック形成手段および分離手段と同じ曲がりチャネル10、またはフロック形成手段および分離手段とは別の曲がりチャネルを混和手段として用いてもよい。
【0050】
図4の水質測定装置3において、フロック形成手段および分離手段は曲がりチャネルであるが、混和手段、フロック形成手段および分離手段が曲がりチャネルであってもよい。すなわち、フロック形成工程および分離工程を、曲がりチャネルを用いて行うが、混和工程、フロック形成工程および分離工程を、曲がりチャネルを用いて行ってもよい。
【0051】
図4の水質測定装置3において、凝集剤と被処理水とを混和する混和工程に要する時間は、例えば、1秒~60秒程度、好ましくは5秒~30秒程度であり、凝集剤を含む被処理水中にフロックを形成するフロック形成工程に要する時間は、例えば、10秒~10分程度、好ましくは1分~5分程度であり、濃縮水と処理水とに分離する分離工程に要する時間は、例えば、1秒~5分程度、好ましくは1秒~10秒程度であり、処理水の水質を測定する処理水質測定工程に要する時間は、例えば、1秒~30秒程度である。したがって、混和工程から処理水質測定工程に要する時間は、10秒~3分程度、好ましくは10秒~60秒程度である。
【0052】
上記の通り、曲がりチャネル10における粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、フロックの形成および分離を行うことができ、さらには、凝集剤と被処理水との混和、フロックの形成および分離を行うことができる。例えば、曲がりチャネル10において、分離に最適な曲率に向けて、小さい曲率から漸近させることによってフロックの形成および分離を連続した曲がりチャネルで行うことができる。流路の断面積を最適な値に向けて漸近させてもよい。狭い流路では流束が高く撹拌がなされ、断面積が分離に最適である流路では分離がなされる。
【0053】
図4の水質測定装置3をそのまま凝集分離装置として用いてもよいし、図4の水質測定装置3において、例えば、処理水質測定装置20を除いたものを凝集分離装置として用いてもよい。例えば、凝集分離装置は、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、凝集剤が添加されて形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離するための分離手段と、を備え、分離手段が上記固液分離装置である。凝集分離装置は、被処理水と凝集剤とを混和するための混和手段と、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段と、をさらに備えてもよい。上記固液分離装置を、混和手段や、フロック形成手段として用いてもよい。また、凝集分離方法は、被処理水に凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、凝集剤が添加されて形成されたフロックを含む濃縮水と処理水とに分離する分離工程と、を含み、分離工程において上記固液分離装置(固液分離方法)を用いる。凝集分離方法は、被処理水と凝集剤とを混和する混和工程と、混和された混和液中にフロックを形成するフロック形成工程と、をさらに含んでもよい。混和工程や、フロック形成工程において、上記固液分離装置を用いてもよい。
【0054】
凝集剤としては、無機凝集剤および高分子凝集剤のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0055】
無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。
【0056】
無機凝集剤の添加量は、例えば、1~100mg/Lの範囲である。
【0057】
高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤またはカチオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム、キトサン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびポリアミジン等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
高分子凝集剤の添加量は、例えば、0.1~2mg/Lの範囲である。
【0059】
混和工程において、必要に応じて、pH調整を行ってもよい(pH調整工程)。pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリである。pHは、例えば、4~11の範囲に調整すればよい。
【0060】
処理水質測定装置20は、処理水の水質を測定することができるものであればよく、特に制限はないが、濁度、色度、有機物濃度、粒子径、および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する装置であることが好ましく、画像解析によって粒子径および粒子径分布のうちの少なくとも1つを測定する手段であることがより好ましい。
【0061】
凝集分離処理(混和工程、フロック形成工程、分離工程)における液温度は、特に制限はなく、例えば、15~35℃の範囲である。粘性等によって分離性が変わるため、液温度はできるだけ一定になるように調整することが望ましい。
【0062】
水質測定装置および凝集分離装置における処理対象である被処理水は、例えば、懸濁物質等を含む水であり、例えば、河川水、工業用水、排水等が挙げられる。
【0063】
本実施形態に係る凝集分離方法および凝集分離装置、または水質測定方法および水質測定装置により、例えば、懸濁物質濃度1~10mg/Lの被処理水を、90%~99%の割合で除去することができる。
【0064】
本実施形態に係る凝集分離方法および凝集分離装置、または水質測定方法および水質測定装置において、混和工程、フロック形成工程、分離工程を、それぞれ曲がりチャネルを用いて行ってもよい。
【0065】
本実施形態に係る凝集分離方法および凝集分離装置、または水質測定方法および水質測定装置において、被処理水が、実機の凝集分離処理装置の入口水からサンプリングしたものであり、凝集分離装置の処理水質の測定結果に基づいて、実機の凝集分離処理装置の凝集条件を制御してもよい。例えば、処理水質測定装置によって測定された評価用処理水の水質に基づいて、実機の凝集分離処理装置において添加される凝集剤の量が制御されればよい。
【実施例
【0066】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<実施例1および比較例1>
曲がりチャネルの流路の下内壁面の壁面流速が0より大きく(下内壁面がスリップ面である)、残りの内壁面の壁面流速が0である(残りの内壁面がノンスリップ面である)効果を確認する実験を行った。実施例1では、矩形状の流路の断面方向において下内壁面をスリップ面、他の3内壁面をノンスリップ面とした。比較例1では、矩形状の流路の断面方向の内壁面全てをノンスリップ面(壁面流速が0)とした。流体の密度は、998kg/m、粒子の密度は、1005kg/mである。粒子の分離度は、実施例1が0.95、比較例1が<0.05であった。
【0068】
実施例1では、曲がりチャネルの流路の下内壁面がスリップ面であることによって、中心方向への流れが抑制され、外側下部に滞留しやすくなっていることがわかる。これによって、分離性が向上したと考えられる。
【0069】
このように、実施例の固液分離装置は、流体に近い密度を有する粒子の流体からの分離性能に優れていた。
【符号の説明】
【0070】
1 固液分離装置、3 水質測定装置、10 曲がりチャネル、12 被処理液ライン、14 出口ライン、16 処理液ライン、18 ラインミキサ、20,108 処理水質測定装置、22 被処理水配管、24 混和液配管、26 濃縮水配管、28 処理水配管、30 凝集剤添加配管、100 評価用水質測定装置、102 評価用混和槽、104 評価用フロック形成槽、106 評価用固液分離装置、110 評価用凝集分離装置。
図1
図2
図3
図4
図5