(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】歯間研削用のヤスリ及びそれを備える歯間研削装置
(51)【国際特許分類】
A61C 3/06 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A61C3/06
(21)【出願番号】P 2018240397
(22)【出願日】2018-12-22
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520173222
【氏名又は名称】株式会社西尾
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 秀俊
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08439678(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0244494(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058963(US,A1)
【文献】特開2016-016172(JP,A)
【文献】独国実用新案第202004019490(DE,U1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0007922(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯間に所要のスペースを形成するための歯間研削用のヤスリであって、
前記ヤスリは、平板状の帯状に形成された基材の表裏面に、研削用の硬質微粒子を付着させた研削面と、前記硬質微粒子を付着させていない非研削面とが設けられており、
前記非研削面として、前記基材の長手方向の略中央において幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面を有する中央スリット部を備え
、
前記非研削面として、さらに、長手方向における前記中央スリット部の側部に一本又は複数本が形成された非研削面を有する側部スリット部を備え、
前記側部スリット部が備える複数本の非研削面は、前記基材の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれて次第にその湾曲度(曲率)が小さくなる湾曲線状であり、かつ、前記基材の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれてそれらの幅寸法が次第に小さくなっていることを特徴とする歯間研削用のヤスリ。
【請求項2】
前記側部スリット部が備える複数本の非研削面それぞれの間の前記研磨面は、前記基材の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれてそれらの幅寸法が次第に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の歯間研削用のヤスリ。
【請求項3】
歯間に所要のスペースを形成するための歯間研削用のヤスリであって、
前記ヤスリは、平板状の帯状に形成された基材の表裏面に、研削用の硬質微粒子を付着させた研削面と、前記硬質微粒子を付着させていない非研削面とが設けられており、
前記非研削面として、前記基材の長手方向の略中央において幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面を有する中央スリット部を備え、
前記非研削面として、さらに、長手方向における前記中央スリット部の側部に一本又は複数本が形成された非研削面を有する側部スリット部を備え、
前記側部スリット部が備える複数本の非研削面それぞれの間の前記研磨面は、前記基材の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれてそれらの幅寸法が次第に大きくなっていることを特徴とする歯間研削用のヤスリ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歯間研削用のヤスリを備える歯間研削装置であって、
少なくとも振動発生器と、該振動発生器からの駆動信号を受信して振動する振動子と、
該振動子に連結されたホルダを内蔵したハンドピースと、
前記ホルダに着脱可能に取り付けられて前記ヤスリが保持された研削チップと、
前記振動発生器に電力を供給する電源装置と、
を含んで構成されることを特徴とする歯間研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間に挿し込んで移動させることによって隣接する歯の間に所要のスペース(隙間)を形成する歯間研削用のヤスリ(ストリップス)、及び当該ヤスリを備える歯間研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯並びなどを矯正する矯正治療においては、隣接する2つの歯の間に目的に合ったスペース(隙間)を形成するためのIPR (Interproximal Enamel Reduction) と呼ばれるスペースメイキングが行われている。このスペースメイキングは、従来、例えば特許文献1に示すように、細長い薄板状のヤスリ(ストリップス)を歯間に挿し込んでこれを前後に小刻みに動かすことによって行われている。
【0003】
ここで、歯間研削用のヤスリは、ポリエステルなどの合成樹脂製の箔やステンレスなど金属製の箔などからなる帯状のシート材である基材の表裏面にアルミナやダイヤモンドなどの硬質微粒子(砥粒)を付着させた研削面が形成されたものである。そして、従来の歯間研削用のヤスリは、基材の表裏面の全体に研削面が形成されていた。そのため、ヤスリを歯間に挿し込む作業が行い難いという問題があった。特に、複数の歯間にスペースメイキングを施す場合、各歯間に対してヤスリを挿し込む作業が行い難いことで、治療の効率が低下するという問題があった。また、基材の表裏面の全体に研削面が形成されていることで、歯間に挿入したヤスリを動かして歯の研磨を行う際の抵抗が大きく、それによる作業負担が大きいという問題もあった。すなわち、歯間にヤスリを挿し込んだ直後には、まだ両側の歯が削られていないために十分なスペースが無く、ヤスリを小刻みに動かすには非常に大きな力が必要となっていた。さらに、ヤスリで歯間を削ると歯の削りカスが出るが、基材の表裏面の全体に研削面が形成されていると、削りカスが歯間からスムーズに排出されないため、それによってもヤスリを動かすために必要な力が大きくなってしまう、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、歯間に簡単かつ確実に挿し込むことができ、かつ、より小さな力でヤスリを動かすことが可能となることで、歯間に所要のスペースを効率良く短時間で形成することができる歯間研削用のヤスリ及びそれを備える歯間研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかる歯間研削用のヤスリは、歯(T)間に所要のスペース(δ)を形成するための歯間研削用のヤスリ(1)であって、前記ヤスリ(1)は、平板状の帯状に形成された基材(2)の表裏面(2A,2B)に、研削用の硬質微粒子を付着させた研削面(3)と、前記硬質微粒子を付着させていない非研削面(5(51~59))とが設けられており、前記非研削面として、前記基材(2)の長手方向の略中央において幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面(51)を有する中央スリット部(6)を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる歯間研削用のヤスリによれば、研削用の硬質微粒子を付着させていない非研削面として、前記基材の長手方向の略中央において幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面を有する中央スリット部を備えることで、この中央スリット部の部分を隣接する2つの歯の間に挿し込むようにすれば、ヤスリを簡単かつ確実に研削対象の歯間に挿し込むことができる。したがって、2つの歯の間に所望のスペースを効率良く短時間で形成することができ、歯科治療の際の作業負担を効果的に軽減することができる。
【0008】
また、この歯間研削用のヤスリでは、前記非研削面(5(51~59))として、前記中央スリット部(6)に加えて、さらに、長手方向における前記中央スリット部(6)の側部(左側又は右側)に一本又は複数本が形成された非研削面(52~55,56~59)を有する側部スリット部(左スリット部又は右スリット部)(7又は8)を備えていてよい。
【0009】
この構成によれば、側部スリット部(左スリット部又は右スリット部)が設けられていることで、ヤスリの研削面で歯を研削する際の抵抗が低減されると共に、研削された歯から出た削りカスが歯とヤスリの間に挟まらずにスムーズに排出されるようになる。
【0010】
また、この歯間研削用のヤスリでは、前記側部スリット部(7又は8)が備える複数本の非研削面(52~55,56~59)は、前記基材(2)の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれて次第にその湾曲度(曲率)が小さくなる湾曲線状であり、かつ、前記基材(2)の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれてそれらの幅寸法(W52~W55,W56~W59)が次第に小さくなっていてよい。
【0011】
この構成によれば、側部スリット部を構成する複数本の非研削面は、中央から外側に行くにつれて次第に湾曲度(曲率)が小さくなり、かつ、それらの幅寸法が次第に小さくなっていることで、中央(中央スリット部)に近いほどヤスリを動かす際の抵抗が小さくて済む。したがって、ヤスリを動かし始める際(歯間の隙間がまだ小さい状態)の抵抗を効果的に低減できる。これにより、歯間を研削する際にヤスリを動かす力の均一化(開始から終了までの間での均一化)を図ることができる。
【0012】
また、この歯間研削用のヤスリでは、前記側部スリット部(7又は8)が備える複数本の非研削面(52~55,56~59)それぞれの間の前記研磨面(3)は、前記基材(2)の長手方向に沿って中央から外側に行くにつれてその幅寸法(L1~L5)が次第に大きくなっていてもよい。
【0013】
この構成によれば、研磨面は、中央から外側に行くにつれてその幅寸法が次第に大きくなっていることで、この構成によっても、中央(中央スリット部)に近いほどヤスリを動かす際の抵抗が小さくて済む。したがって、ヤスリを動かし始める際(歯間の隙間がまだ小さい状態)の抵抗を効果的に低減できる。これにより、歯間を研削する際にヤスリを動かす力の均一化(開始から終了までの間での均一化)を図ることができる。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかの構成を有する歯間研削用のヤスリ(1~1-4)を備える歯間研削装置(100)であって、少なくとも振動発生器(106)と、該振動発生器(106)からの駆動信号を受信して振動する振動子(107)と、該振動子(107)に連結されたホルダ(108)を内蔵したハンドピース(102)と、前記ホルダ(108)に着脱可能に取り付けられて前記ヤスリ(1~1-4)が保持された研削チップ(110)と、前記振動発生器(106)に電力を供給する電源装置(104)と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0015】
上記のような振動発生器でヤスリに振動を付与するタイプの歯間研削装置においても、本発明のヤスリを備えることで、ヤスリを簡単かつ確実に研削対象の歯間に挿し込むことができ、また歯間を研削する際にヤスリをスムーズに動かすことができる。したがって、2つの歯の間に所望のスペースを効率良く短時間で形成することができ、歯科治療の際の作業負担を効果的に軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる歯間研削用のヤスリ及びそれを備えた歯間研削装置によれば、ヤスリを簡単かつ確実に歯間に挿し込むことができ、また歯間を研削する際にヤスリをスムーズに動かすことができるので、隣接する歯間に所要のスペースを効率良く短時間で形成することができ、患者と治療者の肉体的負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる歯間研削用のヤスリを示す図で、(a)は、正面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【
図2】歯間研削用のヤスリの他の例を示す図である。
【
図3】歯間研削用のヤスリの他の例を示す図である。
【
図4】歯間研削用のヤスリの他の例を示す図である。
【
図5】(a)は、スペースメイキング前の歯列を示す部分正面図、(b)は、スペースメイキング後の歯列を示す部分正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかる歯間研削装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
〔第一実施形態:歯間研削用のヤスリ〕
図1は、本発明の一実施形態にかかる歯間研削用のヤスリを示す図で、(a)は、正面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。
図1に示すヤスリ1は、歯科治療において患者の隣接する2本の歯間を削ることで、当該歯間に矯正に必要なスペース(隙間)を形成するための歯間研削用のヤスリであって、ポリエステルなどの合成樹脂製の箔やステンレスなど金属製の箔などからなるシート材(薄板材)である基材2の表裏面2A,2Bにアルミナやダイヤモンドなどの硬質微粒子(砥粒)を付着させた研削面3が形成されている。基材2は、その外径が細長い帯状に形成されている。基材2の表裏面2A,2Bには、硬質微粒子(砥粒)を付着させた研削面3の部分と、硬質微粒子(砥粒)を付着させていない非研削面5(51~59)の部分とが設けられている。なお、
図1(a)では、ヤスリ1における基材2の表裏面2A,2Bの一方(表面2A)のみが示されているが、ヤスリ1は、表面2A及び裏面2Bが同形状(対照)に形成されている。したがって、以下の説明では表面2Aについてのみ述べるが、裏面2Bについても同様である。
【0019】
図1に示すヤスリ1(基材2)の表面2Aには、長手方向の略中央において幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面である中央スリット部6と、長手方向における該中央スリット部6の両側(左右両側)それぞれに複数本ずつが形成された非研削面を有する左スリット部(側部スリット部)7及び右スリット部(側部スリット部)8とが設けられている。ヤスリ1(基材2)の表面2Aにおける中央スリット部6と左右スリット部7,8を除いた部分は、硬質微粒子(砥粒)を付着させた研削面3となっている。
【0020】
中央スリット部6を構成する非研削面51は、その左右の端辺が湾曲する湾曲線状になっており、上下方向の中央が括れて上下端(基材2の長手方向に対する幅方向の両側)が拡大した括れ形状となっている。また、左スリット部7と右スリット部8は、ヤスリ1の長手方向で互いに対称な形状であり、ヤスリ1の幅方向に貫通する湾曲線状の複数本のスリット状の非研削面52~55と非研削面56~59をそれぞれ有している。複数本の非研削面52~55,56~59は、中央から外側(左右)に行くにつれて次第にその湾曲度(曲率)が小さくなり、かつ、それらの幅寸法W52~W55,W56~W59が次第に小さくなっている。(W52>W53>W54>W55,W56>W57>W58>W59)また、左スリット部7と右スリット部8を構成する複数本の非研削面52~55,56~59の間に形成された研削面3の幅(ヤスリ1の長手方向の幅)L1~L5は、ヤスリ1の長手方向における中央(中央スリット部6の部分)から左右(外側)に行くにつれて次第に大きな寸法となっている。(L1<L2<L3<L4<L5)
【0021】
図1に示すヤスリ1は、手(指)で持って歯間に挿し込んで動かすことで歯間の研削を行うために用いられる。すなわち、ヤスリ1の長手方向の両側を手で持って左右に軽く引っ張ることで、中間部分をピンと張る。その状態で中央スリット部6を研削対象の歯間に挿し込むことでヤスリ1を当該歯間にセットする。このとき、中央スリット部6は硬質微粒子(砥粒)を付着させていない非研削面であることで、ヤスリ1が歯間に引っ掛かることなくスムーズに挿し込まれるようになる。
【0022】
その後、ヤスリ1を長手方向の左右いずれかに動かすことで、歯間がヤスリ1の中央スリット部6から長手方向の左側又は右側に向かって移動する。これにより、ヤスリ1(基材2)の表面2Aに形成された研削面3で両側の歯の研削が行われる。この際、左スリット部7又は右スリット部8が設けられていることで、研削面3で歯を研削する際の抵抗が低減されると共に、研削された歯から出た削りカスが歯とヤスリ1の間に挟まらずにスムーズに排出されるようになる。さらに、左スリット部7又は右スリット部8を構成する複数本の非研削面52~55,56~59は、中央から外側(左右)に行くにつれて次第に湾曲度(曲率)が小さくなり、かつ、その幅寸法W52~W55,W56~W59が次第に小さくなっていることで、中央(中央スリット部6)に近いほどヤスリ1を動かす際の抵抗が小さくて済む。したがって、ヤスリ1を動かし始める際(歯間の隙間がまだ小さい状態)の抵抗を効果的に低減できる。これにより、歯間を研削する際にヤスリ1を動かす力の均一化(開始から終了までの間での均一化)を図ることができる。
【0023】
図2は、歯間研削用のヤスリの他の例を示す正面図である。同図に示すヤスリ1-2は、基材2の長手方向の中央で幅方向に貫通する直線状の中央スリット部6と、中央スリット部6の左右両側(ヤスリ1の長手方向の両側)それぞれに一本ずつの非研削面62、63が形成された左スリット部7及び右スリット部8とを備えている。左スリット部7の非研削面62及び右スリット部8の非研削面63もヤスリ1-2の幅方向(図の上下方向)に貫通する直線状であり、それらの幅寸法(図の左右方向の寸法)W62,W63は、中央スリット部6の非研削面61の幅寸法W61よりも小さな寸法となっている(W62<W61,W63<W61)。なお、この場合もヤスリ1-2(基材2)の表面2Aにおける中央スリット部6及び左右スリット部7,8以外の部分は、硬質微粒子を付着させた研削面3となっている。
【0024】
図3は、歯間研削用のヤスリのさらに他の例を示す正面図である。同図に示すヤスリ1-3は、帯状の基材2の長手方向の中央で幅方向に貫通する直線帯状の非研削面61からなる中央スリット部6のみを備えている。
【0025】
図4は、歯間研削用のヤスリのさらに他の例を示す正面図である。同図に示すヤスリ1-4は、帯状の基材2の長手方向の中央で幅方向に貫通する直線帯状の非研削面61からなる中央スリット部6のみを備えている。そして、中央スリット部6の非研削面61は、その一方の端部(ヤスリ1-4の幅方向の一方(図の下方)の端部)の幅寸法が他の部分の幅寸法よりも大きな拡幅部61aとなっている。
【0026】
図4に示すヤスリ1-4は、中央スリット部6の非研削面61を研削対象の歯間に挿し込む際に、非研削面61の拡幅部(図の下側の部分)61aから歯間に挿し込むようにする。これにより、非研削面61の挿込部分の幅が広いことで、ヤスリ1-4を歯間に挿し込む作業がより行い易くなる。
【0027】
図5(a)は、スペースメイキング前の歯列を示す部分正面図、(b)は、スペースメイキング後の歯列を示す部分正面図である。上記構成のヤスリ1(1-2~1-4)を用いて歯間Tの研削を行うことで、研削前は
図5(a)に示すように互いに接触した状態で整然と並んでいた歯Tの間には、
図5(b)に示すように、所望の大きさのスペース(隙間)δが効率良く短時間で形成される。
【0028】
〔第二実施形態:歯間研削装置〕
図6は、本発明の一実施形態に係る歯間研削装置の全体構成図、
図7は、
図6のA-A線断面図である。図示の歯間研削装置100は、ハンドピース102と、該ハンドピース102の先端に着脱可能に取り付けられた研削チップ110と、ハンドピース102に電力を供給する電源装置104とを含んで構成されている。
【0029】
ハンドピース102は、略円筒状の把持部102Aと、該把持部102Aの先端から略直角に屈曲する略円筒状の先端部102Bとで構成されており、
図6に示すように、把持部102Aの内部には振動発生器106が収容されている。また、先端部102Bの内部には、
図7に示すように、振動発生器106からの駆動信号を受信して振動する振動子107と、該振動子107に連結されたホルダ108が収容されている。振動発生器106で発生する振動は、音波振動、超音波振動など各種の振動数(周波数)とすることができる。
【0030】
ここで、振動発生器106は、例えば、不図示の回路基板に実装された不図示のトランジスタ、コンデンサ、チョークコイルなどによって構成されている。また、振動子107は、例えば、圧電素子や磁歪素子などによって構成されている。
【0031】
また、研削チップ110は、
図7に示すように、コの字状に屈曲する支持部(柄)111と、該支持部111にその両端が支持された研削工具としてのヤスリ1(1-2~1-4)とで構成されている。ここで、ヤスリ1(1-2~1-4)は、
図1~
図4のいずれかに示す構成のものでよく、ヤスリ1(1-2~1-4)の表面(表裏面)2A,2Bの形状(研削面3と非研削面5のパターン形状)は、
図1~
図4に示すものであってよい。
【0032】
上記のように構成されたヤスリ1(1-2~1-4)を保持する研削チップ110は、ハンドビース102に内蔵されたホルダ108(
図7参照)に着脱可能に取り付けて使用される。
【0033】
図6に示す電源装置104は、例えば、商用電源(AC100、50/60Hz)からの電力を例えばDC12V程度の安全な電圧に変換するとともに、整流して電源コード109によってハンドピース102内の振動発生器106に供給する機能を果たすものである。そして、この電源装置104には、電源スイッチ104aとペダルスイッチ104bが設けられており、電源スイッチ104aを投入(ON)した状態でペダルスイッチ104bを足で踏むと、電源装置104からハンドピース102内の振動発生器106に電力が供給される。すると、振動発生器106から振動子107に駆動信号が発信されて該振動子107が振動する。当該振動は音波振動、超音波振動などであってよい。
【0034】
本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態に示すヤスリ1では、基材2の長手方向の略中央に設けた中央スリット部6に加えて、側部スリット部として、基材2の長手方向における中央スリット部6の両側(左右両側)それぞれに設けた左スリット部7及び右スリット部8を備える場合を示したが、これ以外にも、左スリット部7と右スリット部8のいずれか一方のみを備えた構成とすることも可能である。また、図示は省略するが、中央スリット部6に代えて、ヤスリ1の長手方向の端部(左端又は右端)に幅方向に貫通する縦長の帯状に形成された非研削面を設け、この非研削面の部分を歯間に挿し込むように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1(1-2~1-4) ヤスリ
2 基材
3 研削面
5(51~59) 非研削面
6 中央スリット部
7 左スリット部(側部スリット部)
8 右スリット部(側部スリット部)
100 歯間研削装置
102 ハンドピース
102A 把持部
102B 先端部
110 研削チップ
111 支持部(柄)
104 電源装置
104a 電源スイッチ
104b ペダルスイッチ
106 振動発生器
107 振動子
108 ホルダ
109 電源コード
T 歯(歯牙)
δ スペース(隙間)