(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】紙袋の持ち手または米袋の持ち手用の織紐およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 15/65 20210101AFI20230530BHJP
B65D 33/12 20060101ALI20230530BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230530BHJP
D03D 5/00 20060101ALI20230530BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20230530BHJP
D03D 15/217 20210101ALI20230530BHJP
D03D 15/587 20210101ALI20230530BHJP
【FI】
D03D15/65 ZAB
B65D33/12
D03D1/00 C
D03D5/00 Z
D03D15/20 200
D03D15/217
D03D15/587
(21)【出願番号】P 2019065942
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518392358
【氏名又は名称】一ツ山産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】一ツ山 繁
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-060473(JP,A)
【文献】実公昭10-015023(JP,Y1)
【文献】特開平11-100746(JP,A)
【文献】実開平01-078186(JP,U)
【文献】特開2012-188793(JP,A)
【文献】国際公開第2010/102324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D30/00-33/38
61/00-63/18
D03D1/00-27/18
D04C1/00-7/00
D04G1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐を複数本用いて経糸とし、該経糸を
綿糸である緯糸により
平織で織ってな
り、一方の長辺において前記緯糸を折り返してループ状になったループ部を互いに編み込む処理(よこ絡み処理)をした耳が形成されていることを特徴とする
紙袋の持ち手または米袋の持ち手用の織紐。
【請求項2】
洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐である複数本の経糸を、綿糸である緯糸により、織機を用いて平織で織り、一方の長辺において前記緯糸を折り返してループ状になったループ部を互いに編み込む処理(よこ絡み処理)をした耳を形成することを特徴とする紙袋の持ち手または米袋の持ち手用の織紐の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織紐に関するものであり、特に紙袋や米袋の持ち手としての用途に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特開平10-245044号公報(特許文献1)に示されるように、上方を開口した有底筒状に組立てた紙製の袋本体に任意の材質の紐状部材を持ち手として取り付けた手提げ式の紙袋が、例えば消費者が購入した商品を運搬する用途として、デパートや衣料品店などの小売業を中心に広く使用されている。
【0003】
このような小売店で用いられる紙袋は、重量のある商品や嵩のある商品を入れても容易に破損する心配のない耐久性と、購入した消費者のみならず周囲の消費者への訴求力を有する見た目の美しさや高級感を発揮するデザイン性、更には素材が安価で製造が容易である生産容易性のみならず、環境への配慮の面から、使用後の処分のし易さや再利用可能であるリサイクル性などの要素が同時に求められる。
【0004】
前述したように紙袋は主に袋本体と持ち手の二つの部品から構成され、大部分の面積は袋本体が占めるが、持ち手も紙袋と一体になって上記各要素を満たすための重要な役割を果たし、特に持ち手は消費者が直接握る部分であるため紙袋の使用感を左右する重要な要素である。
【0005】
例えば、持ち手として長尺な紙を幅方向に折り畳んだ紙平紐や、長尺な紙を撚って1本にした紙丸紐を用いる場合は、容易に開いたり撚りが戻ったりして耐久性が損なわれやすく、見た目の高級感も共に損なわれてしまう。合成樹脂性の持ち手を用いる場合は、耐久性はあるものの無機質さが強調されてしまい見た目の美しさや高級感に欠け、手に食い込んで使用感が悪く、また持ち手と袋本体との材質が異なるため再利用のためには持ち手と袋本体とを分別する必要があり不便であった。
【0006】
また、紙紐を平行に並べて接着剤により一体化した所謂紙バンドを用いた場合は、PVAなどを主成分とする接着剤を用いているために紙袋とともに古紙として再利用することができず、また接着剤による硬さなどにより使用感も悪いという問題があった。
【0007】
更に、紙バンドは紙紐を繰り出す工程、紙紐に接着剤を塗布する工程、紙紐同士を密に並べて乾燥させる工程があり、接着剤の塗布工程で使用する糊釜や乾燥工程で紙バンドを巻き付けて乾燥させるドライヤーは、いずれも高温にするための火力・電力などの熱源を要し、特にドライヤーは平均温度120~140度、平均分速120~150rpm程度で回転するため、作業者のケガなどの危険性もあり、大掛かりな製造設備のみならず安全確保のための配慮も必要とされ、小ロットの生産には適さないという問題があり、少量で多種類のデザインといった要望にも対応しづらい。
【0008】
また、米を封入して販売される米袋およびそれに使用される紐状部材として、例えば特開2017-137089号公報(特許文献2)や特開2017-154741号公報(特許文献3)に示されるものが知られている。
【0009】
このような米袋は1kgや3kgなど比較的小容量のものから、10kgや30kgなど大容量のものまで同様の構造をしており、開口部の下方に中心を固定された、紙紐を平行に並べて接着剤により一体化した紙バンドなどの紐状部材を用い、米を入れた米袋の開口部を数度折り返して封をし、前記紐状部材の両端を結ぶことによって持ち手を形成するものである。
【0010】
前記特許文献2および特許文献3に記載されているように、米袋の持ち手として用いられる紐状部材は結束に耐えられる強度および柔軟性と、携行時に手指に痛みを感じさせないことが求められる。
【0011】
前記特許文献2および特許文献3に記載の発明は強度および柔軟性については一定の効果があるものと思われるが、従来の紙バンドと同様に接着剤を用いて接着することで平紐状にした紐状部材を形成するものであるため、紙製の米袋とともに古紙として再利用することができず、また接着剤による硬さがあるため柔軟性にも欠け、結束し難いという欠点がある。
【0012】
そこで、紙袋の持ち手や米袋の持ち手として求められる前提条件である耐久性を備えるとともに、柔軟性、デザイン性、生産容易性、リサイクル性も含めた各要素を満たすことが可能である、汎用性に富んだ紐状部材が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平10-245044号公報
【文献】特開2017-137089号公報
【文献】特開2017-154741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耐久性に富む紐であることは勿論、柔軟性をも有するため握りやすく、また結束し易く解けにくく、安価な素材で生産でき、高熱による危険作業を伴なう必要もなく、小ロットの生産にも適し、デザイン性にも優れ、利用する紙袋や米袋等と分別する必要なく古紙として再利用可能であるリサイクル性を有するなどの全ての要素を兼ね備えた紐状部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明である織紐は、洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐を複数本用いて経糸とし、該経糸を緯糸により織ってなることを特徴とする。
【0016】
本発明の織紐によれば、洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐を複数本用いて経糸とし、該経糸を緯糸により織ってなることで、安価な材料かつ接着剤を用いずに従来の紙バンドなどの紐状部材と同等以上の強度および耐久性を発揮し、かつ織構造であることから斜め方向へのよじれにも追従しやすいため柔軟性に富んだ汎用性のある紐状部材を提供することが可能であって、紙袋や米袋の持ち手としての使用に好適であり、特に重量のある米袋の持ち手として用いた際には手指への負担を大幅に軽減することができる。
【0017】
また、前記洋紙がクラフト紙である場合、素材が安価で製造が容易である点に加えて、クラフト紙が適度の張りと強度を有していることから、例えば本発明の織紐を紙袋の持ち手として紙袋本体に取り付けた際には、その張りによって上方に向けて自立する非常に掴みやすい持ち手とすることができ、本発明の織紐を米袋の持ち手として米袋本体に取り付けた際には、その強度によってしっかりと開口部を締結しつつも内容物である米の重量に負けることなく持ち手としての機能を果たすことができる。
【0018】
更に、緯糸が綿糸である場合、織紐全体の幅や厚みを大きく増大させることなく強度を発揮することができるため特に紙袋や米袋の持ち手として用いた際に手の小さい消費者でも使用感が良く、見た目も良好であって、また例えば化学繊維の糸と比較して入手性やコストの面で優位であって、且つ織紐あるいは織紐を取り付けた紙袋や米袋の全体をそのまま古紙として再利用可能であるリサイクル性も備えることができる。
【0019】
または、緯糸が水溶性または水解性を有する糸である場合、緯糸が綿糸である場合と同様にそのまま古紙として再利用可能であるリサイクル性を備えることができる。
【0020】
または、緯糸が生分解性を有する糸である場合、例えば屋外の土木工事や農作業用の紐などの用途に適し、紙紐を含めて使用後に自然界の微生物によって分解されることでゴミを生ずることなく使用することができる。
【0021】
または、緯糸が熱接着性を有する糸とした場合、織紐を織った後に熱を加えることによって並列に並んだ紙紐同士を接着して固定することが可能であるため、全体が一体となった紐として使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の織紐によれば、洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐を複数本用いて経糸とし、該経糸を緯糸により織ってなることで、例えば従来紙袋や米袋用の持ち手等に用いられる紙平紐,紙丸紐,紙バンドまたは合成樹脂などの紐状部材に比べ、織構造による柔軟性と接着剤を用いないことによる柔軟性とにより手に食い込みにくいなど優れた使用感を呈し、耐久性,危険作業を伴わない生産容易性,小ロット生産への適応性,更には使用後に紙袋等と持ち手部分を分解して分別廃棄する必要が無く、全体をそのまま古紙として再利用可能で、消費者にとって便利であるとともに環境への配慮の面からも優れたリサイクル性などの各要素をすべて兼ね備えた汎用性のある紐状部材を提供することができる。
【0023】
特に、本発明の織紐を紙バンドと比較した場合には、織構造による柔軟性と接着剤を用いないことによる柔軟性とにより優れた使用感を発揮する点が明確になるほか、紙バンドは摩擦や折り曲げにより表面に塗布されている接着剤のカスが生じる問題や、裂け・割れに弱い問題があるが、本発明の織紐は前記問題も生じない優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1に示した織紐10Aを示す(a)長辺11側から見た図、および(b)長辺12側から見た図。
【
図3】本発明における紙紐の製造工程の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、長尺の洋紙を撚り加工してなる紙紐10を複数本使用し、織機を用いて各紙紐10を経糸として平行に並べ、綿糸20を緯糸として織ってなる織紐であって、6本の紙紐10を使用した織紐1Aおよび12本の紙紐10を使用した織紐1Bを示す。
【0027】
経糸である紙紐10の本数によって出来上がる織紐の幅が定まるため、幅広の織紐を製造する場合は紙紐10の本数を増加させ、反対に幅狭の織紐を製造する場合は紙紐10の本数を減少させる。
【0028】
本実施の形態においては、緯糸として1本の綿糸20を用いており、綿糸20が並行に並んだ複数の紙紐10の両縁にあたる長辺11,12においてそれぞれ折り返されており、更に一方の長辺11において綿糸20を折り返してループ状になったループ部21が互いに編まれる様な処理(よこ絡み処理)がされて耳22が形成されていることで、織紐の長さ方向における緯糸20の間隔を適度に開けることができる利点や、ほつれづらくなる利点があるほか、見た目のアクセントにもなる利点なども挙げられる(
図2参照)。
【0029】
なお、綿糸20は両縁にあたる長辺11,12においてそれぞれ単純に折り返したものとしてもよい。
【0030】
織紐は経糸と緯糸とを織機によって長尺に織ったのち保管し、使用する際には使用目的に応じた所定の長さに切断して用いることができる。
【0031】
また、製造する長さも任意に設定可能であり、織機単独で製造が可能であって、従来の紙バンドのような大掛かりな製造設備や準備が不要であるため、小ロット生産も容易に対応することができるほか、熱源も使用しないため作業員が危険に晒されるリスクを回避することができる。
【0032】
本実施の形態である織紐1Aおよび1Bは、紙袋の持ち手として使用した際に、各紙紐10同士が接着されておらずに綿糸20によって留められていることで、クッション性があり手に加えられる重量が分散されて手に食い込みづらい織紐特有の利点がある。
【0033】
加えて、織紐1Aおよび1Bは、米袋の持ち手として使用する際には結び目を形成するが、その時にも平行に並んだ各紙紐10同士が接着されておらずに綿糸20によって留められていることで、立体的に折り曲げる際に内周側と外周側の紙紐10の長さの微調整が可能であって、結び目も解けにくくなる織紐特有の利点がある。
【0034】
紙紐10は材質およびコーティングの有無を含めて任意の紙紐を使用することができるが、本発明の実施の形態においては長尺のクラフト紙2を撚り加工して1本の丸紐状の紙紐にしたものを使用している(
図3参照)。
【0035】
本実施の形態の織紐は紙製の紙紐および綿製の綿糸のみからなることで、例えば本実施の形態の織紐を持ち手として使用した紙袋または米袋が不要になった際も、そのまま紙袋または米袋の全体をそのまま古紙としてリサイクルへ出すことが可能である。
【0036】
特に、本実施の形態のようにクラフト紙を撚ってなる紙紐を経糸として使用することで、織紐としたときに適度の張りが発揮され、例えば本実施の形態の織紐を紙袋の持ち手として袋本体に取り付けた際、その張りによって上方に向けて自立する非常に掴みやすい持ち手とすることができる。
【0037】
前記
図1に示した実施の形態では、織り方は平織を用いているが、綾織、繻子織などその他の織り方を用いてもよく、また、使用する経糸や緯糸の本数についても、提示した本数に限られないことは勿論である。
【0038】
本実施の形態においては、使用する緯糸は綿糸20を用いていることで、綿糸20は細く柔軟であって織紐全体の幅や厚みを大きく増大させることなく強度を発揮することができるため、特に紙袋や米袋の持ち手として用いた際に手の小さい消費者でも使用感が良いのみならず、素材の入手性やコスト面でも優れており、且つ古紙回収にそのまま出すことが可能であって、リサイクル性も高い織紐とすることができる。
【0039】
また、デザイン性についても、最も一般的な色彩であるベージュ色(茶色)のクラフト紙を撚り加工した紙紐である、ある程度太さのある経糸に、例えばそれに比較して細く、白など様々な色彩の綿糸を緯糸として組み合わせることにより、紙紐を平行に並べて接着剤により一体化した紙バンドと比較して、容易に色柄模様を表現することができ、更に糸の色や織り方を変えるだけでデザインを様々に変化させることもでき、小ロット生産によって少量で多種類のデザインの織紐を提供することもできることから、紙袋や米袋等の持ち手としてデザイン性に富んだ織紐とすることができる。
【0040】
また、使用する緯糸を例えば水溶性または水解性を有する糸とした場合は、綿糸20を用いた本実施の形態の織紐と同様に、古紙回収にそのまま出すことが可能であって、リサイクル性の高い紐状部材とすることができる利点を有する。
【0041】
また、使用する緯糸を例えば生分解性を有する糸とした場合は、この織紐を例えば屋外の土木工事や農作業などに用いた場合、紙紐10を含めて使用後に自然界の微生物によって分解されることでゴミを生ずることのない紐状部材として使用することができる利点を有する。
【0042】
また、使用する緯糸を例えば熱接着性を有する糸とした場合は、織紐を織った後に熱を加えることによって並列に並んだ紙紐10同士を接着して固定することが可能であるため、この織紐を例えば段ボール締結用のPPバンド(ポリプロピレン製バンド)の代用品として使用可能であって、プラスチックの使用量を削減した環境配慮型の紐状部材として使用することができる利点を有する。
【0043】
以上のように、本発明の織紐によれば、洋紙を撚り加工して1本の丸紐状にした紙紐を複数本用いて経糸とし、該経糸を緯糸により織ってなることで、例えば従来紙袋や米袋用の持ち手等に用いられる紙平紐,紙丸紐,紙バンドまたは合成樹脂などの紐状部材に比べ、織構造による柔軟性と接着剤を用いないことによる柔軟性とにより手に食い込みにくいなど優れた使用感を呈し、耐久性,危険作業を伴わない生産容易性,小ロット生産への適応性,更には使用後に紙袋等と持ち手部分を分解して分別廃棄する必要が無く、全体をそのまま古紙として再利用可能で、消費者にとって便利であるとともに環境への配慮の面からも優れたリサイクル性などの各要素をすべて兼ね備えた汎用性のある紐状部材を提供することができる。
【0044】
特に、本発明の織紐を紙バンドと比較した場合には、織構造による柔軟性と接着剤を用いないことによる柔軟性とにより優れた使用感を発揮する点が明確になるほか、紙バンドは摩擦や折り曲げにより表面に塗布されている接着剤のカスが生じる問題や、裂け・割れに弱い問題があるが、本発明の織紐は前記問題も生じない優れた発明である。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 織紐、2 クラフト紙、10 紙紐、11,12 長辺、20 綿糸、21 ループ部、22 耳