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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】幹細胞の増殖促進剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20230530BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230530BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20230530BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20230530BHJP
   A61K 36/074 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20230530BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230530BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230530BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230530BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230530BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230530BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20230530BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20230530BHJP
【FI】
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/0789
C12N5/0797
A61K36/074
A61K8/9728
A61K35/545
A61K35/28
A61L27/38 300
A61Q19/00
A61Q7/00
A61Q19/08
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/14
A61P19/10
A61P19/08
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/00
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/16
A61P7/06
A61P35/02
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P1/02
A61P27/02
A61P27/06
A61P1/16
A61P3/10
A61Q11/00
A23L33/10
C12N5/0735
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019075551
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020171242
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大形 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤村 将大
(72)【発明者】
【氏名】宮地 克真
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴亮
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137244(JP,A)
【文献】特開2011-211956(JP,A)
【文献】Biotechnol. Prog.,2013年,Vol.29, No.3,pp.738-744
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/074
C12N 5/0775
C12N 5/0789
C12N 5/0797
C12N 5/0735
A61K 36/074
A61K 8/9728
A61K 35/545
A61K 35/28
A61L 27/38
A61K 8/98
A61Q 19/00
A61Q 7/00
A61Q 19/08
A61P 17/00
A61P 17/02
A61P 17/14
A61P 19/10
A61P 19/08
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 19/00
A61P 25/28
A61P 21/00
A61P 25/16
A61P 7/06
A61P 35/02
A61P 9/00
A61P 9/10
A61P 1/02
A61P 27/02
A61P 27/06
A61P 1/16
A61P 3/10
A61Q 11/00
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンネンタケ胞子の超臨界抽出物を有効成分として含有する幹細胞の増殖促進剤であって、前記幹細胞が、表皮幹細胞、真皮幹細胞、造血幹細胞、及び神経幹細胞から選択されるいずれかの幹細胞である、幹細胞の増殖促進剤
【請求項2】
幹細胞を、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法であって、前記幹細胞が、表皮幹細胞、真皮幹細胞、造血幹細胞、及び神経幹細胞から選択されるいずれかの幹細胞である、幹細胞の増殖促進方法
【請求項3】
幹細胞を、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法であって、前記幹細胞が、表皮幹細胞、真皮幹細胞、造血幹細胞、及び神経幹細胞から選択されるいずれかの幹細胞である、幹細胞の製造方法
【請求項4】
請求項1に記載の幹細胞の増殖促進剤を含む、表皮幹細胞、真皮幹細胞、造血幹細胞、及び神経幹細胞から選択されるいずれかの幹細胞増殖促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞の増殖促進剤及び幹細胞の増殖促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物(特に哺乳動物)の組織は、傷害若しくは疾患、又は加齢等に伴い細胞・臓器の損傷が起こった場合、再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとする。この作用に、当該組織に備わる幹細胞が大きな役割を果たしている。幹細胞は、骨髄、肝臓、膵臓、皮膚、脂肪、脳等、あらゆる臓器・組織に存在することが明らかにされ、各臓器・組織の再生及び恒常性維持を司っていることがわかってきた(非特許文献1~4参照)。
【0003】
近年、臓器・組織に存在する幹細胞が老化することが明らかになりつつある(非特許文献5参照)。具体的に幹細胞の老化とは、増殖能力や分化能力が低下することであり、臓器や組織の再生能力の低下の原因と考えられている。例えば、脳に存在する神経幹細胞や血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖能力は、加齢に伴い著しく低下することが報告されている(非特許文献6~7参照)。また、皮膚や皮下脂肪組織に存在する幹細胞は、加齢により数が減少し、分化能力が低下することが報告されている(非特許文献8~9参照)。
【0004】
以上の知見から、各臓器・組織に存在する幹細胞を増殖させる技術は、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生、各種疾患の予防・治療・改善等、抗加齢(抗老化)の用途に極めて有効であると考えられる。
【0005】
マンネンタケ(学名:Ganoderma lucidum)は、マンネンタケ科のキノコであり、霊芝(レイシ)、サルノコシカケとも呼ばれる。マンネンタケ(霊芝)は、β-グルカンやテルペノイド等を含み、免疫力向上作用、抗ガン作用、血圧低下作用、血糖値低下作用等の様々な作用を有し、主には煎じて健康茶として利用されている。マンネンタケの子実体、菌糸体又はその培養物の抽出物には幹細胞の未分化維持効果及び増殖促進効果があることが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-301726号公報
【文献】特開2011-211956号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Goodell M.A.ら, Nat. Med., 1997年, Vol. 3, pp. 1337-1345
【文献】Zulewski H.ら, Diabetes, 2001年, Vol. 50, pp. 521-533
【文献】Suzuki A.ら, Hepatology, 2000年, Vol. 32, pp. 1230-1239
【文献】Zuk P.A.ら, Tissue Engineering, 2001年, Vol. 7, pp. 211-228
【文献】Beane O.S.ら, PLoS One, 2014年, Vol. 9, 12号, e115963
【文献】Molofsky A.V.ら, Nature, 2006年, Vol. 443, 7110号, pp. 448-452
【文献】Geiger H.ら, Nat. Rev. Immunol., 2013年, Vol. 13, 5号, pp. 376-389
【文献】Akamatsu H.ら,J. Dermatol., 2016年,Vol. 43, pp. 311-313
【文献】Yamada T.ら,J. Dermatol. Sci., 2010年,Vol. 58, pp. 36-42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、幹細胞に対してより高い増殖促進活性を有する新たな物質を見出し、生体安全性に優れた幹細胞の増殖促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、マンネンタケ胞子の抽出物が、幹細胞に対する優れた増殖促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)マンネンタケ胞子の超臨界抽出物、又は、マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物を有効成分として含有する幹細胞の増殖促進剤。
(2)幹細胞を、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物、又は、マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法。
(3)幹細胞を、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物、又は、マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法。
(4)(1)に記載の幹細胞の増殖促進剤を含む、幹細胞増殖促進用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、幹細胞を効率的に増殖させることができる。従って、本発明は、再生医療、再生美容、抗加齢の分野において大きく貢献できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物、又は、マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物(以下、これらを総称して「マンネンタケ胞子の抽出物」と記載する場合がある)を有効成分として含有する。
【0013】
マンネンタケは、マンネンタケ科(Ganodermataceae)マンネンタケ属(Ganoderma)に属する担子菌で、生薬「霊芝」に用いられる。霊芝は、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」によると、赤霊芝(赤芝)、黒霊芝(黒芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。また、赤霊芝の一種として、鹿角霊芝も知られている。本発明に用いられる「マンネンタケ胞子」は、上記マンネンタケ科マンネンタケ属の霊芝の胞子であれば特に限定はされず、例えば、赤霊芝、黒霊芝、紫霊芝、青霊芝、黄霊芝、白霊芝の胞子が挙げられるが、赤霊芝(Ganoderma lucidum)、黒霊芝(Ganoderma sinense、Ganoderma japonicum、Ganoderma atrum)の胞子がより好ましい。
【0014】
マンネンタケ胞子は、霊芝が成熟する頃に菌傘に現れる褐色の粉末状の物質である。本発明において、マンネンタケ胞子には、胞子及び複数個の胞子が内生した胞子のうを包含するものとする。マンネンタケ胞子の抽出には、回収したマンネンタケ胞子をそのまま用いてもよいが、胞子の細胞壁を物理的な力によって崩壊させるための破壁処理を行うことが好ましい。破壁の処理方法は、特に限定されないが、例えば、微粒化処理、ロールプレス処理、磨砕処理、超高圧マイクロスチーム処理、及び通常工業的に用いられるその他の機械的方法で行うことができる。破壁胞子を用いる場合は、上記のいずれかの方法で得たものでも良いし、市販品を利用することもできる。
【0015】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の有効成分は、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物(マンネンタケ胞子油とも称する)であってもよく、マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物であってもよい。
【0016】
本発明において、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物を得るための抽出方法は、マンネンタケ胞子に超臨界状態にある流体(超臨界流体)を接触させる方法であれば特に限定はされないが、安全かつ容易に脱溶剤を行なうことができる点で、超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)による抽出方法が好ましい。超臨界二酸化炭素とは、温度が31℃以上、圧力が7MPa以上の条件下で流体状態になった二酸化炭素をいい、本発明において、超臨界状態にはその近傍の状態も含むものとする。
【0017】
超臨界状態にある二酸化炭素による抽出条件として、温度は31~100℃が好ましく、31~80℃がより好ましく、31~60℃がさらに好ましく、また、圧力は7~100MPaが好ましく、7~50MPaが好ましく、7~30MPaがさらに好ましい。なかでも、温度が31~80℃で、かつ圧力が7~50MPaであることが特に好ましく、温度が31~60℃で、かつ圧力が7~30MPaであることが最も好ましい。抽出の際の超臨界二酸化炭素の供給量としては、例えば、マンネンタケ(乾燥物換算)1重量部に対して、5~500重量部が好ましく、10~100重量部がより好ましい。また、抽出時間としては、30分~24時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。更に、共溶媒(エントレーナー)として有機溶媒を用いることもできる。共溶媒(エントレーナー)としては、エタノール、アセトン等が挙げられる。中でも、安全性の面からエタノールが好ましい。
【0018】
超臨界状態にある二酸化炭素による抽出は、例えば、上記抽出条件の二酸化炭素を連続的に吹き込むことにより行うことができる。次いで、マンネンタケ胞子の抽出物を含有する二酸化炭素流体を分離槽に導き、常用されている方法、例えば、圧力を下げる方法、温度を変化させる方法等で分離する。この際、分離槽には抽出された溶質を吸着できる吸着剤や、溶解や分散させることができる媒体(溶剤、基剤)等を充填しておくこともでき、抽出条件に応じた適当な分離手段を採用できる。分離された二酸化炭素は、液化槽に輸送して再利用することができる。
【0019】
マンネンタケ胞子の水及び/又は有機溶媒抽出物を得るための抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出方法であっても良いし、常温や冷温抽出方法であっても良い。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水若しくは熱水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等が挙げられる。これらの溶媒のなかでも、水若しくは熱水、低級アルコール、液状多価アルコール等が好ましい。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良い。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
【0020】
水及び/又は有機溶媒によりマンネンタケ胞子を抽出する場合、溶媒に対するマンネンタケ胞子の割合は、例えば1~50%(w/w)、好ましくは5~25%(w/w)が挙げられる。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10~100℃、好ましくは30~90℃で、30分~24時間、好ましくは1~10時間を例示することができる。例えば、マンネンタケ胞子の乾燥物に水を加え、95~100℃における熱水抽出を行うことで、マンネンタケ胞子の抽出物を得ることができる。あるいは、マンネンタケ胞子の乾燥物に低級アルコール(例えば、エタノール等)、液状多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)及び/又は炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等)を添加し、常温(例えば15~35℃)で抽出を行うことで、マンネンタケ胞子の抽出物を得ることができる。
【0021】
上記の抽出後、得られた溶媒相自体をマンネンタケ胞子の抽出物とすることができる。あるいは、必要に応じて、得られた溶媒相を、濃縮、希釈、濾過、乾燥等の処理及び活性炭等による脱色、脱臭処理等に供して、得られた生成物をマンネンタケ胞子の抽出物とすることができる。さらに、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理に供し、得られた乾燥物をマンネンタケ胞子の抽出物として用いても良い。
【0022】
このようにして得られたマンネンタケ胞子の抽出物を本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の有効成分とする。マンネンタケ胞子の抽出物は、生体レベルで又は培養レベルで幹細胞を効率的に増殖させる作用を有するので、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞を効率的に増殖させるための幹細胞培養用培地添加剤、研究用試薬、医療用試薬、細胞移植剤をはじめとして、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等への配合や応用が可能である。
【0023】
本発明の幹細胞の増殖促進剤におけるマンネンタケ胞子の抽出物の配合量は、特に限定されないが、例えば、当該薬剤全量に対し、乾燥物に換算して0.00001~10重量%であることが好ましく、0.0001~1重量%とすることがより好ましい。0.00001重量%未満であると効果が十分に発揮されにくい場合がある。
【0024】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を、ヒトを含めた哺乳動物の幹細胞に適用することで、幹細胞の増殖を促進することができる。本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を適用する幹細胞としては、本発明の目的に沿うものであれば特に限定されず、例えば骨髄、血液、皮膚(表皮、真皮、皮下組織)、脂肪、毛包、脳、神経、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する体性の幹細胞;胚性の幹細胞(ES細胞);遺伝子導入等により人工的に作製された幹細胞(人工多能性幹細胞:iPS細胞)が挙げられる。ES細胞としては、例えば、着床以前の初期胚を培養することによって樹立されたES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立されたES細胞、及びそれらのES細胞の染色体上の遺伝子を遺伝子工学の手法を用いて改変したES細胞が挙げられる。このようなES細胞は、例えば、自体公知の方法によって作製することができるが、所定の機関より入手でき、さらには市販品を購入することもできる。また、これらの幹細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞又は凍結細胞のいずれであってもよい。
【0025】
さらに、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞の分化の方向性及び分化の過程等について同等の特性を持っていれば、全ての哺乳動物由来の幹細胞に応用が可能である。例えば、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物の幹細胞に対して効果を発揮することができる。
【0026】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の幹細胞への適用は、生体外であっても生体内であってもよく、いずれの場合もその作用を発揮できる。従って、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、その有効量を添加した幹細胞培養用培地にて幹細胞を培養することによって、あるいは、ヒトを含む哺乳動物に投与することによって、幹細胞の増殖を促進することができる。
【0027】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、有効成分であるマンネンタケ胞子の抽出物が優れた幹細胞の増殖促進作用を有するので、皮膚、骨芽、軟骨、筋肉、神経、脂肪、肝臓などの生体内の組織又は臓器の幹細胞に作用して当該組織又は臓器の障害又は損傷を治療、改善、及び予防するのに有効である。また、幹細胞は、加齢などに伴い減少又は機能低下することから、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、上記生体内の組織又は臓器の幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患を治療、改善、及び予防するのに有効である。ここで、組織又は臓器の障害又は損傷、幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患としては、例えば、皮膚関連では、シワ、タルミ、シミ、くすみ、肌荒れ、皮膚の肥厚、毛穴のひらき、ニキビ痕、創傷、瘢痕、ケロイドなどが挙げられ、薄毛や脱毛などの頭皮や毛髪の損傷も含まれる。また、骨関連では、骨粗しょう症、骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折等)など、軟骨疾患では、変形性関節症、関節リウマチ、椎間板ヘルニアなど、神経関連では、脊髄損傷、顔面神経麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、加齢に伴う記憶低下など、血液関連では、再生不良性貧血、白血病など、心血管関連では心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症など、歯科関連では歯周病、歯槽膿漏による歯槽骨損傷など、眼科関連では、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、緑内障など、肝臓・膵臓関連では肝炎、肝硬変、糖尿病などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明はまた、幹細胞を、マンネンタケ胞子の抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法、幹細胞の増殖促進方法に関する。
【0029】
本発明に係る方法において、幹細胞を培養する培地、また同時に用いる添加剤としては、特に限定はされず、幹細胞の増殖のために一般的に使用されている培地及び添加剤を用いればよい。
【0030】
具体的には、幹細胞を培養する培地としては、幹細胞の生存及び増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン等)を含む基本培地、例えば、Dulbecco' s Modified Eagle Medium(D-MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(D-MEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、Hank's balanced salt solution(ハンクス液)等が挙げられる。また、培地に、増殖因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び/又は白血球遊走阻止因子(LIF)を添加してもよい。さらに、必要に応じて、培地は、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント、抗生物質等を含有してもよい。
【0031】
また、上記以外には、1~20%の含有率で血清が培地に含まれることが好ましい。しかしながら、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
【0032】
市販品の培地としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地や、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、Sigma社製のハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等を用いることができる。
【0033】
幹細胞の培養に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、シャーレ、ディッシュ、プレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトルなどが挙げられる。
【0034】
培養器は、細胞非接着性であっても接着性であってもよく、目的に応じて適宜選択される。細胞接着性の培養器は、細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス等による細胞支持用基質などで処理したものを用いてもよい。細胞支持用基質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、フィブロネクチンなどが挙げられる。
【0035】
幹細胞培養に使用される培地に対するマンネンタケ胞子の抽出物の添加濃度は、上述の本発明に係る幹細胞の増殖促進剤におけるマンネンタケ胞子の抽出物の配合量に準じて適宜決定することができるが、例えばマンネンタケ胞子の乾燥物に換算して、1~1000μg/mL、好ましくは10~400μg/mLの濃度が挙げられる。また、幹細胞の培養期間中、マンネンタケ胞子の抽出物を、定期的に培地に添加してもよい。
【0036】
幹細胞の培養条件は、幹細胞の培養に用いられる通常の条件に従えばよく、特別な制御は必要ではない。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30~40℃、好ましくは約36~37℃である。COガス濃度は、例えば約1~10%、好ましくは約2~5%である。なお、培地の交換は2~3日に1回行うことが好ましく、毎日行うことがより好ましい。前記培養条件は、幹細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
【0037】
幹細胞の増殖促進は、例えば、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の非存在下で培養した幹細胞と比較して、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の存在下で培養した該幹細胞の細胞数が有意に増加されているか否かで評価することができる。細胞数の測定は、例えば、MTT法やWST法などにより、市販の細胞数測定キットを用いて行うことができる。測定の結果、培養開始時の幹細胞の細胞数と本発明の幹細胞の増殖促進剤の存在下で所定時間培養後の幹細胞の細胞数との相対比が、本発明の幹細胞の増殖促進剤の非存在下で培養した場合の同相対比(コントロール)よりも大きい場合に幹細胞の増殖を促進できたと判定することができる。
【0038】
上記の本発明に係る方法により調製された幹細胞は移植材料(細胞移植剤)として用いることができる。
【0039】
上記の本発明に係る幹細胞の増殖促進剤あるいは本発明に係る方法に準じて、マンネンタケ胞子の抽出物を、単独で、あるいは培地と別々に又は培地と混合し、幹細胞の増殖促進のための試薬キットとして提供することもできる。当該キットは、必要に応じて取扱い説明書等を含むことができる。あるいは、マンネンタケ胞子の抽出物を培地と混合し、幹細胞の増殖促進用培地として提供することもできる。
【0040】
本発明に係る上記の幹細胞の増殖促進剤を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品等の各種組成物に配合して提供することができる。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
【0041】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二層系、又は水-油-粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、幹細胞の増殖促進剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。皮膚外用組成物の配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
【0042】
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤等が挙げられる。
【0043】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
【0044】
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0045】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を、前記皮膚関連の損傷や疾患を治療、改善、及び予防するための医薬品として用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤(パップ剤、プラスター剤)、フォーム剤、スプレー剤、噴霧剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
【0046】
本発明の医薬品は、上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。本発明の医薬品の有効成分は、天然物由来であるため、非常に安全性が高く副作用がないため、前述の疾患の治療、改善、及び予防用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的に又は非経口的に投与することができる。
【0047】
本発明の化粧品、医薬品、医薬部外品における幹細胞の増殖促進剤の含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、マンネンタケ胞子の抽出物の乾燥物に換算して、0.001~30重量%が好ましく、0.01~10重量%がより好ましい。上記の量があくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果などを考慮して適宜設定・調整すればよい。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【0048】
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、飲食品にも配合できる。また、本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。ここで、飲食品に付される特定の保健の効果や栄養成分の機能等の表示は、製品の容器、包装、説明書、添付文書などの表示物、製品のチラシやパンフレット、新聞や雑誌等の製品の広告などにすることができる。
【0049】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が好ましい。
【0050】
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0051】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生法上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
【0052】
本発明の飲食品が一般的な飲食品の場合は、その飲食品の通常の製造工程においてマンネンタケ胞子の抽出物を添加する工程を含めることによって製造することができる。また健康食品の場合は、前記の医薬品の製造方法に準じればよく、例えば、タブレット状のサプリメントでは、マンネンタケ胞子の抽出物に、賦形剤等の添加物を添加、混合し、打錠機等で圧力をかけて成形することにより製造することができる。また、必要に応じてその他の材料(例えば、ビタミンC、ビタミンB、ビタミンB等のビタミン類、カルシウムなどのミネラル類、食物繊維等)を添加することもできる。
【0053】
本発明の飲食品におけるマンネンタケ胞子の抽出物の配合量は、幹細胞の増殖促進効果を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
【実施例
【0054】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1] マンネンタケの抽出物の製造例
マンネンタケの抽出物を以下のとおり製造した。
【0056】
(製造例1)マンネンタケ胞子の熱水抽出物の製造
マンネンタケの胞子100gに、蒸留水1Lを加え、100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して、マンネンタケ胞子の熱水抽出物を11g得た。
【0057】
(製造例2)マンネンタケ胞子の超臨界抽出物の製造
内容積5Lの抽出槽にマンネンタケの胞子1kgを仕込み、これに超臨界二酸化炭素(温度60℃、圧力25MPa、二酸化炭素供給量15m)を約4.5時間供給し、抽出槽に接続した分離槽(温度40℃、圧力4MPa)に導いて炭酸ガスと抽出物を分離し、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物を15.9g得た。
【0058】
(比較製造例1)マンネンタケ子実体の熱水抽出物の製造
マンネンタケ子実体の粉砕物20gに蒸留水1Lを加え、100℃にて1時間抽出した。得られた抽出液を濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して、マンネンタケ子実体の熱水抽出物を1.4g得た。
【0059】
(比較製造例2)マンネンタケ子実体の超臨界抽出物の製造
内容積5Lの抽出槽にマンネンタケ子実体の粉砕物1kgを仕込み、これに超臨界二酸化炭素(温度60℃、圧力25MPa、二酸化炭素供給量15m)を約4.5時間供給し、抽出槽に接続した分離槽(温度40℃、圧力4MPa)に導いて炭酸ガスと抽出物を分離し、マンネンタケ子実体の超臨界抽出物を10.1g得た。
【0060】
[実施例2]マンネンタケの抽出物の幹細胞に対する増殖促進効果
以下に、実施例1において製造したマンネンタケの抽出物を用いた、幹細胞に対する増殖促進効果の実験例とその結果を示す。
【0061】
(実験例1)マンネンタケの抽出物の表皮幹細胞に対する増殖促進効果の評価
表皮由来細胞として市販の正常ヒト成人表皮角化細胞(クラボウ社製)を用い、特開2017-055721号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:GenBank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として表皮幹細胞を分離した。HuMedia-KG2培地(クラボウ社製)で維持した上記表皮幹細胞を、細胞数が5×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したマンネンタケの各抽出物)の最終濃度が100μg/mL となるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて3回洗浄し、細胞数をカウントした。被験物質未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0062】
(実験例2)マンネンタケの抽出物の真皮幹細胞に対する増殖促進効果
真皮由来細胞として市販のヒト皮膚線維芽細胞(東洋紡株式会社製)を用い、特開2017-093383号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:GenBank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として真皮幹細胞を分離した。1%FBS Minimum Essential Media alpha培地(Gibco社製)で維持した上記真皮幹細胞を、細胞数が5×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したマンネンタケの各抽出物)の最終濃度が100μg/mL となるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて3回洗浄し、細胞数をカウントした。被験物質未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0063】
(実験例3)マンネンタケの抽出物の造血幹細胞に対する増殖促進効果
造血幹細胞としてA6細胞(RIKEN BRC Cell Bank)を用いた。20%FBS DMEM/F12 (10μg/mL bovine insulin, 10μg/mL bovine Transferrin, 10ng/mL bFGF)培地(Gibco社製)で維持した上記造血幹細胞を、細胞数が2×104個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したマンネンタケの各抽出物)の最終濃度が100μg/mlとなるように添加し、36時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて3回洗浄し、細胞数をカウントした。被験物質未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0064】
(実験例4)マンネンタケの抽出物の神経幹細胞に対する増殖促進効果
神経幹細胞としてMEB5細胞(JCRB細胞バンク)を使用した。Dulbecco's Modified Eagle's Medium-high glucose(5μg/mL insulin, 10ng/mL EGF, 50μg/mL holo-transferrin, 10ng/mL biotin, 30nM Na-selenite)培地(Sigma社製)で維持した上記神経幹細胞を、細胞数が1×104個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したマンネンタケの各抽出物)の最終濃度が100μg/ml となるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて3回洗浄し、細胞数をカウントした。被験物質未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0065】
上記実験例1~4で得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0066】
表1に示すように、マンネンタケ胞子の抽出物(製造例1、2)には、幹細胞(表皮幹細胞、真皮幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞)に対していずれも優れた増殖促進効果が認められ、その効果はマンネンタケ子実体の抽出物(比較製造例1、2)よりも高く、特に
マンネンタケの超臨界抽出物の効果が顕著であった(製造例2)。なお、本実験例で用いた幹細胞以外に、胚性の幹細胞(ES細胞)についても同様な試験を行ったところ、顕著な幹細胞増殖促進効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞増殖を促進できるので、当該薬剤は、再生医療、再生美容、抗加齢等の組織再生や恒常性維持の分野において有用である。