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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】水耕栽培装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230530BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A01G31/00 604
A01G31/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019157662
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035337
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】509262965
【氏名又は名称】株式会社グリニッシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 愛一郎
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-085933(JP,A)
【文献】特開2014-060938(JP,A)
【文献】特開昭52-141326(JP,A)
【文献】特開2007-215485(JP,A)
【文献】特開2012-152174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 - 31/06
A01G 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅と長さを有し、水面に浮かべられるシート材と、
前記シート材を長さ方向に沿ってロール状に巻き取るシート巻取り装置と、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された紐体と、
前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁に配置され、前記一方の縁側に位置する前記シート材から他方の縁に対して延びる前記紐体を当該一方の縁に向かって折り返す折り返し装置と、
を備え、
前記シート材は、栽培対象物が配置される表面と、水面側に配置される裏面と、を有し、表面と裏面との間を貫通する複数の貫通部が形成されており、
前記シート巻取り装置は、前記シート材の表面に栽培対象物を配置した状態で前記一方の縁側に前記紐体が引っ張られることで、前記折り返し装置を介して前記シート材が前記他方の縁側に引っ張られて当該シート材がロール状から引き出されるよう当該ロール状の前記シート材の回転を許容し、これにより前記シート材が前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げられるよう構成され、
さらに、前記シート巻取り装置は、水面上に広げられて表面に栽培対象物が配置された状態の前記シート材を長さ方向の他端側からロール状に巻き取ることができるよう構成されている、
水耕栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水耕栽培装置であって、
前記シート材は、幅方向に沿って複数の棒状体が並行に配置され、当該棒状体間が長手方向に沿って連結されて構成されており、当該棒状体間で前記貫通部が形成されている、
水耕栽培装置。
【請求項3】
所定の幅と長さを有し、水面に浮かべられるシート材と、
前記シート材を長さ方向に沿ってロール状に巻き取るシート巻取り装置と、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された紐体と、を備え、
前記シート材が、栽培対象物が配置される表面と、水面側に配置される裏面と、を有し、表面と裏面との間を貫通する複数の貫通部が形成されて構成された水耕栽培装置を用いた水耕栽培方法であって、
前記シート巻取り装置にて前記シート材が長さ方向に沿ってロール状に巻き取られた状態とし、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された前記紐体を引っ張ることで、前記シート巻取り装置にてロール状の前記シート材の回転が許容され、前記シート材をロール状から引き出しつつ、前記シート巻取り装置の配置箇所付近で前記シート材の表面に前記栽培対象物を配置し、前記紐体を引っ張ることと前記栽培対象物を配置することとを繰り返すことで、前記栽培対象物が表面に配置された前記シート材を水面上に広げ、
その後、水面上に広げられて表面に栽培対象物が配置された状態の前記シート材を、前記シート巻取り装置にて長さ方向の他端側からロール状に巻き取りつつ、当該シート巻取り装置の配置箇所付近で前記シート材の表面に配置された栽培対象物を回収する、
水耕栽培方法。
【請求項4】
請求項に記載の水耕栽培方法であって、
前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁側に前記紐体を引っ張ることで、前記シート材をロール状から引き出し、当該シート材を前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げる、
水耕栽培方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の水耕栽培方法であって、
前記水耕栽培装置は、さらに、前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁に、前記一方の縁側に位置する前記シート材から前記他方の縁に対して延びる前記紐体を前記一方の縁に向かって折り返す折り返し装置を備え、
前記一方の縁側で当該一方の縁側に前記紐体を引っ張ることで、前記折り返し装置を介して前記シート材を前記他方の縁側に引っ張って前記シート材をロール状から引き出し、当該シート材を前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げる、
水耕栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するための装置及び方法にかかり、特に、植物を水耕栽培するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物等の植物を栽培する方法として、土を使わずに水と液体肥料(養液)で植物を栽培する水耕栽培といった方法がある。水耕栽培では、土を使わないことから、土壌管理が不要であり、養液を管理することで計画的な栽培が可能となる。そして、水耕栽培では、例えば、特許文献1に記載されているように、養液を収容する養液槽と、養液槽に浮かべられ植物を保持する植物保持具と、が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-10077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水耕栽培では、上述したように養液槽と植物保持具とが必要となるため、植物を栽培する規模が大きくなるにつれて、用意する養液槽と植物保持具との数が増加し、装置に多大な費用がかかる、という問題が生じる。
【0005】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、水耕栽培を行うために使用する装置に多大な費用がかかること、を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である水耕栽培装置は、
所定の幅と長さを有し、水面に浮かべられるシート材と、
前記シート材を長さ方向に沿ってロール状に巻き取るシート巻取り装置と、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された紐体と、を備え、
前記シート材は、栽培対象物が配置される表面と、水面側に配置される裏面と、を有し、表面と裏面との間を貫通する複数の貫通部が形成されており、
前記シート巻取り装置は、前記シート材の表面に栽培対象物を配置した状態で前記紐体が引っ張られることで、前記シート材がロール状から引き出されるよう当該ロール状の前記シート材の回転を許容し、これにより前記シート材が水面上に広げられるよう構成され、
さらに、前記シート巻取り装置は、水面上に広げられて表面に栽培対象物が配置された状態の前記シート材を長さ方向の他端側からロール状に巻き取ることができるよう構成されている。
【0007】
そして、上記水耕栽培装置では、
前記シート巻き取り装置は、当該シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁側に前記紐体が引っ張られることで、前記シート材がロール状から引き出されるよう当該ロール状の前記シート材の回転を許容し、これにより前記シート材が前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げられるよう構成される。
【0008】
また、上記水耕栽培装置では、
前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁に配置され、前記一方の縁側に位置する前記シート材から他方の縁に対して延びる前記紐体を当該一方の縁に向かって折り返す折り返し装置を備え、
前記シート巻取り装置は、前記シート材の表面に栽培対象物を配置した状態で前記一方の縁側に前記紐体が引っ張られることで、前記折り返し装置を介して前記シート材が前記他方の縁側に引っ張られて当該シート材がロール状から引き出されるよう当該ロール状の前記シート材の回転を許容し、これにより前記シート材が前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げられるよう構成される。
【0009】
また、上記水耕栽培装置では、
前記シート材は、幅方向に沿って複数の棒状体が並行に配置され、当該棒状体間が長手方向に沿って連結されて構成されており、当該棒状体間で前記貫通部が形成されている。
【0010】
また、本発明の他の形態である水耕栽培方法は、
所定の幅と長さを有し、水面に浮かべられるシート材と、
前記シート材を長さ方向に沿ってロール状に巻き取るシート巻取り装置と、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された紐体と、を備え、
前記シート材が、栽培対象物が配置される表面と、水面側に配置される裏面と、を有し、表面と裏面との間を貫通する複数の貫通部が形成されて構成された水耕栽培装置を用いた水耕栽培方法であって、
前記シート巻取り装置にて前記シート材が長さ方向に沿ってロール状に巻き取られた状態とし、
前記シート材の長さ方向の一端に連結された前記紐体を引っ張ることで、前記シート巻取り装置にてロール状の前記シート材の回転が許容され、前記シート材をロール状から引き出しつつ、前記シート巻取り装置の配置箇所付近で前記シート材の表面に前記栽培対象物を配置し、前記紐体を引っ張ることと前記栽培対象物を配置することとを繰り返すことで、前記栽培対象物が表面に配置された前記シート材を水面上に広げ、
その後、水面上に広げられて表面に栽培対象物が配置された状態の前記シート材を、前記シート巻取り装置にて長さ方向の他端側からロール状に巻き取りつつ、当該シート巻取り装置の配置箇所付近で前記シート材の表面に配置された栽培対象物を回収する、
という構成をとる。
【0011】
そして、上記水耕栽培方法では、
前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁側に前記紐体を引っ張ることで、前記シート材をロール状から引き出し、当該シート材を前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げる、
という構成をとる。
【0012】
また、上記水耕栽培方法では、
前記水耕栽培装置は、さらに、前記シート巻取り装置が配置される水面を囲う一方の縁とは当該水面を挟んで対岸に位置する他方の縁に、前記一方の縁側に位置する前記シート材から前記他方の縁に対して延びる前記紐体を前記一方の縁に向かって折り返す折り返し装置を備え、
前記一方の縁側で当該一方の縁側に前記紐体を引っ張ることで、前記折り返し装置を介して前記シート材を前記他方の縁側に引っ張って前記シート材をロール状から引き出し、当該シート材を前記一方の縁側から前記他方の縁側に向かって水面上に広げる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように構成されることにより、簡易な構成で水面上に栽培対象物を水面上に配置することができ、装置費用を抑制して水耕栽培を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における水耕栽培装置の構成及び使用方法を示す図であり、特に、栽培対象物の植え付け時の様子を示す図である。
図2】本発明における水耕栽培装置の構成及び使用方法を示す図であり、特に、栽培対象物の収穫時の様子を示す図である。
図3】本発明における水耕栽培装置を構成するシート巻取り装置及びシート材の構成及び使用方法を示す図であり、特に、栽培対象物の植え付け時の様子を示す図である。
図4】本発明における水耕栽培装置を構成するシート巻取り装置及びシート材の構成及び使用方法を示す図であり、特に、栽培対象物の植え付け時の様子を示す図である。
図5】本発明における水耕栽培装置を構成するシート巻取り装置及びシート材の構成及び使用方法を示す図であり、特に、栽培対象物の植え付け時の様子を示す図である。
図6】本発明における水耕栽培装置による水耕栽培方法の手順を示すフローチャートであり、特に、栽培対象物の植え付け時の手順を示す。
図7】本発明における水耕栽培装置による水耕栽培方法の手順を示すフローチャートであり、特に、栽培対象物の収穫時の手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図7を参照して説明する。図1乃至図5は、水耕栽培装置の構成及び使用方法を説明するための図であり、図6乃至図7は、水耕栽培方法の手順を説明するための図である。
【0016】
[構成]
本実施形態における水耕栽培装置は、図1に示すように水田Gで用いられる。つまり、本実施形態における水耕栽培装置は、水田Gに張られた水を用いて水耕栽培を行うための装置である。但し、本発明における水耕栽培装置は、必ずしも水田Gで用いられることに限定されず、プールやため池など、水が張られた領域であれば利用可能である。
【0017】
図1に示すように、水耕栽培装置は、水田Gの水面W上に広げられるシート材1と、当該シート材1をロール状に巻き取るシート巻取り装置10と、シート材1に連結された紐体2を折り返すための折り返し装置20と、を備える。そして、シート巻取り装置10は、水田Gの水面Wを囲う所定の縁(一方の縁)に配置され、当該シート巻取り装置10が配置される所定の縁とは水面Wを挟んで対岸に位置する他の縁(他方の縁)には、折り返し装置20が配置される。つまり、水田Gの水面Wを囲う相互に対向する一方と他方の縁に、それぞれシート巻取り装置10と折り返し装置20とが配置される。なお、水田Gの水面Wを囲う縁とは、例えば、畦であるが、水面Wを囲う領域であればいかなる場所であってもよい。
【0018】
ここで、シート材1及びシート巻取り装置10の構成について、図3乃至図5を参照して説明する。まず、シート材1は、所定の幅と長さを有する帯状体からなる部材である。例えば、シート材1は、竹や葦などを編んで構成された簾にて構成されている。つまり、シート材1は、幅方向に沿って竹や葦などの複数の棒状体が並行に配置され、これら複数の棒状体が長さ方向に沿って連結されて構成されている。このため、シート材1を構成する竹や葦などの複数の棒状体間には隙間が形成されており、シート材1自体の表面と裏面とを貫通する貫通部が形成されていることとなる。また、シート材1は、竹や葦などを編んで構成されていることから、その浮力にて水面Wに浮かべられるよう構成されている。
【0019】
また、シート材1は、裏面側を水面W側に向けて当該水面Wに浮かべることができ、かかる状態で表面側に栽培対象物Tを配置することで、当該栽培対象物Tは貫通部から水田G内の水を得ることができる。つまり、栽培対象物Tは、シート材1の貫通部から水田G内に根を伸ばすことで、水を得ることができる。なお、栽培対象物Tは、例えば、リーフレタス、ホウレンソウ、ミツバ、ミズナ、などの野菜類であってもよく、いかなる植物であってもよい。
【0020】
また、シート材1は、上述したように幅方向に沿って複数の棒状体が並行に配置されている構成であるため、長さ方向に沿ってロール状に巻き取られた状態とすることが可能である。このとき、シート材1は、シート巻取り装置10にて巻き取られてロール状に形成されるが、そのときの様子を図3乃至図4に示す。なお、図4では、シート材1である簾を構成する竹や葦などの棒状体を図示しているが、図3では、ロール状のシート材1の全体構成がわかりやすいよう、簾を構成する竹や葦などの棒状体を図示せずに簡略的に示している。また、図5においても、シート材1を簡略的に示している。
【0021】
そして、シート巻取り装置10は、本実施形態では、シート材1を巻き取る際に中心軸となる軸体を備えており、かかる軸体が地面から所定の高さ位置で回転可能なよう支持される構造となっている。これにより、シート巻取り装置10は、軸体にシート材1を巻き付けた状態で当該軸体を回転させることで、シート材1をロール状に巻き取ることができる。なお、シート巻取り装置10は、軸体を回転させるハンドルを備えていてもよく、かかるハンドルを回転させることでシート材1をロール状に巻き取ってもよい。但し、シート巻取り装置10は、いかなる方法でシート材1をロール状に巻き取るよう構成されていてもよく、例えば、手動ではなくモータなどのアクチュエータを用いて回転して、シート材1を巻き取るよう構成されていてもよい。
【0022】
また、図3に示すように、上記シート材1の長さ方向の一端、つまり、ロール状となっているときの最外周に位置する一端には、紐体2が連結されている。具体的に、紐体2は、シート材1の一端において、所定の間隔をあけて2本連結されており、かかる2本の紐体2はその先で1本に集約されている。そして、紐体2は、全体の長さが、水田Gの水面Wを挟んだ縁間を1往復する長さ以上に形成されている。つまり、紐体2は、水田Gの水面Wを挟んで相互に対岸に配置されたシート巻取り装置10と折り返し装置20との間の距離の2倍以上の長さに形成されている。
【0023】
また、上述したシート巻取り装置10とは水田Gの水面Wを挟んで対岸に配置された折り返し装置20は、例えば、滑車を備えて構成されている。折り返し装置20は、水田Gの一方の縁に位置するシート巻取り装置10にてロール状に巻き取られたシート材1の端部から他方の縁側に延びる紐体2を、滑車に巻き付けて再度一方の縁側に折り返させ、紐体2の先端をシート巻取り装置10の位置まで延ばして配置させる。これにより、紐体2の先端が、シート巻取り装置10の位置で一方の縁側に引っ張られることで、折り返し装置20の滑車にて円滑に紐体2の引っ張り方向が反転し、シート材1の端部を他方の端部側に引っ張ることができる。なお、折り返し装置20は、必ずしも滑車を備えていることに限定されず、いかなる構成であってもよい。
【0024】
[栽培手順]
次に、上述した構成の水耕栽培装置を用いた水耕栽培方法の手順について、図1乃至図7を参照して説明する。はじめに、主に図6のフローチャートを参照して、水田Gに栽培対象物Tを植え付ける手順を説明する。
【0025】
まず、作業者Uは、シート材1をシート巻取り装置10で巻き取ってロール状にし、水田Gの一方の縁に配置する。また、作業者Uは、シート巻取り装置10を配置した水田Gの一方の縁の対岸に位置する他方の縁に、折り返し装置20は配置する(図6のステップS1)。そして、作業者Uは、水田Gの一方の縁に位置するシート巻取り装置10にロール状に巻き付けられているシート材1の一端に連結された紐体2を、対岸である水田Gの他方の縁に位置する折り返し装置20の滑車に巻き付けて一方の縁側に折り返し、さらに紐体2の先端側を一方の縁に位置するシート巻取り装置10の場所に配置する(図6のステップS2)。これにより、作業者Uは、図1に示すように、水田Gの一方の縁側のシート巻取り装置10の位置にて、紐体20を把持した状態となる。
【0026】
続いて、作業者Uは、図1の矢印Y1に示すように、紐体2を一方の縁側に引っ張る。このとき、わずかな距離だけ紐体2を引っ張ることで、図3に示すように、ロール状のシート材1の先端が他方の縁側に引っ張られて、当該シート材1がロール状から引き出される(図6のステップS3)。これにより、シート材1が、シート巻取り装置10の上部にて面を形成するよう広がる。そして、作業者Uは、図3に示すように、シート巻取り装置10の上部にて広げられたシート材1の表面に、1つ又は複数の栽培対象物Tを配置する(図6のステップS4)。なお、このときに配置する栽培対象物Tは、水耕栽培されるリーフレタス、ホウレンソウ、ミツバ、ミズナ、などの野菜類といった植物の苗であるが、いかなる植物であってもよい。また、苗などの栽培対象物Tは、土がついたままの状態であってもよく、いかなる状態のものであってもよい。
【0027】
その後、作業者Uは、上述したように、紐体2をわずかな距離だけ引っ張る作業と(図6のステップS3)、シート巻取り装置10の上部に広げられたシート材1の表面に栽培対象物Tを配置する作業と(図6のステップS4)、を繰り返し行う。つまり、作業者Uは、紐体2を少しずつ引っ張りながら、ロール状からシート材1を少しずつ引き出し、新たに引き出されたシート材1のシート巻取り装置10の上部に広がる領域に、新たな栽培対象物Tを配置することを繰り返す。これにより、図5に示すように、シート材1の表面に栽培対象物Tが配置された状態で、水田Gの水面W上に徐々に広げられることとなる。
【0028】
そして、作業者Uは、図1の矢印Y2に示すように、シート材1がシート巻取り装置10が位置する水田Gの一方の縁側から対岸の他方の縁側まで引き出されると(図6のステップS5でYes)、上述したシート材1の引き出しと栽培対象物Tを配置する作業を停止する。これにより、シート材1が、可能な限り水田Gの水面Wに広げられ、その表面に配置された栽培対象物Tの水耕栽培用の植え付けが完了する(図6のステップS6)。
【0029】
上記のように植え付けられた栽培対象物Tは、シート材1が竹や葦などを編んで構成されていることから、図1に示すように水面Wに浮かべられた状態となる。また、栽培対象物Tは、シート材1の竹や葦などの隙間で形成された貫通部から、水田G内に根を伸ばして水を得ることができる。このようにして水耕栽培が実施される。
【0030】
次に、主に図7のフローチャートを参照して、水田で水耕栽培した栽培対象物Tを収穫する手順を説明する。作業者Uは、上述したように水田Gに植え付けられた栽培対象物Tである苗が栽培されて収穫可能な程度に成長した後に、以下の手順で収穫を行う。
【0031】
まず作業者Uは、シート巻取り装置10を操作して、水田Gの水面W上に広げられたシート材1を、長さ方向の他端側からロール状に巻き取る(図7のステップS11)。これにより、図2の矢印Y3に示すように、シート材1が水田Gの他方の縁側から一方の縁側に移動するよう巻き取られる。このとき、作業者Uは、シート巻取り装置10の上部付近に位置するシート材1の領域に水耕栽培された栽培対象物Tが位置するまで当該シート材1を巻き取り、かかる領域の栽培対象物Tを回収する(図7のステップS12)。
【0032】
その後、作業者Uは、シート材1を少しずつ巻き取る作業と(図7のステップS11)、シート巻取り装置10の上部に位置するシート材1の領域の栽培対象物Tを回収する作業と(図7のステップS12)、を繰り返し行う。つまり、作業者Uは、シート材1を少しずつ巻き取りながら、巻き取ったシート材1のシート巻取り装置10の上部に広がる領域に位置する栽培対象物Tを回収することを繰り返す。これにより、図2に示すように、水田Gの水面W上に広げられたシート材1の表面で栽培された栽培対象物Tが、次々と収穫されることとなる。
【0033】
そして、作業者Uは、シート材1上のすべての栽培対象物Tを回収し、シート材1をすべてシート巻取り装置10に巻き取ると(図7のステップS13でYes)、栽培対象物Tの収穫が完了する(図7のステップS14)。
【0034】
以上のように、本実施形態における植物栽培装置及び植物栽培方法によると、作業者Uは、ロール状に巻き取られたシート材1の紐体2を引っ張りつつ、その場で栽培対象物Tをシート材1の表面に配置することで、栽培対象物Tが配置されたシート材1を水田Gの水面W上に広げることができる。また、作業者Uは、シート巻取り装置10にてシート材1を巻き取ることで、巻き取った場所に位置するシート材1上の栽培対象物Tを収穫することができる。このため、水田Gといった広い領域であっても、簡易な構成の装置を用いて栽培対象物Tの水耕栽培を行うことができ、装置にかかる費用の低減を図ることができる。また、植え付け作業や収穫作業をシート巻取り装置10の配置箇所で行うことができるため、広い範囲であっても一人で水耕栽培を行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0035】
なお、上記では、シート材1の端部に連結された紐体2を、対岸の折り返し装置20を用いて折り返させて、シート巻取り装置10の配置箇所でシート材1の引き出し操作を行うこととしているが、紐体2は必ずしも対岸の折り返し装置20を用いて折り返すよう配置することに限定されない。例えば、シート巻取り装置10が配置された水田Gの一方の縁の対岸である他方の縁側に紐体2の先端を配置し、かかる紐体2を他方の縁側に位置する他の作業者が徐々に引っ張ってもよい。そして、水田Gの一方の縁側では、シート巻取り装置10の配置箇所にてもう一人の作業者Uが、少しずつ引き出されたシート材1の表面に栽培対象物Tを配置する作業を行ってもよい。これにより、栽培対象物Tが配置されたシート材1を、水田Gの一方の縁側から他方の縁側に向かって徐々に水面W上に広げることができる。
【0036】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 シート材
2 紐体
10 シート巻取り装置
20 折り返し装置
G 水田
W 水面
U 作業者
T 栽培対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7