IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山本光学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図1
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図2
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図3
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図4
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図5
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図6
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図7
  • 特許-顔面装着具、及び顔面装着具用バックル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】顔面装着具、及び顔面装着具用バックル
(51)【国際特許分類】
   A63B 33/00 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A63B33/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019162677
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021040702
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000179926
【氏名又は名称】山本光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳
(72)【発明者】
【氏名】福山 智之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直哉
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-081614(JP,A)
【文献】特開2005-312825(JP,A)
【文献】特表2003-521959(JP,A)
【文献】特表2003-534067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面に装着される顔面装着具における装着具本体(1、1A)の両端に各々連結される一対のヘッドベルト(2、2)の一方に取付けられるプラグ(10)と、前記一対のヘッドベルト(2、2)の他方に取付けられるソケット(20)とを具備する顔面装着具用バックルであって、
前記プラグ(10)は、円形の凸部(11)が突設された係止片(12)と、前記係止片(12)に対し前記凸部(11)の突出方向(X1)と反対方向(X2)に配設される台板部(13)とを有し、
前記ソケット(20)は、前記プラグ(10)を枢支可能に前記凸部(11)と嵌合する円形の凹部(21)を有し、
前記プラグ(10)は、前記凸部(11)と前記凹部(21)とが嵌り合う嵌合状態に前記係止片(12)を前記台板部(13)に弾性支持する支持部(14)を更に有し、
前記係止片(12)は、前記支持部(14)に連結される第1基端部(12a)と、前記凸部(11)が形成される中間部(12b)と、第1先端部(12c)と、前記凸部(11)よりも前記第1先端部(12c)寄りに配設され、前記反対方向(X2)に前記係止片(12)を押圧する押圧操作であって、前記嵌合状態を解除するための押圧操作を受付ける受付部(15)とを有する、顔面装着具用バックル。
【請求項2】
前記ヘッドベルト(2)は、第2基端部(30)、及び第2先端部(40)を有し、
前記装着具本体(1、1A)は、両端に、前記第2先端部(40)が挿通可能であるベルト取付部(4)が設けられており、
前記ヘッドベルト(2)は、更に、
長手方向の中央よりも前記第2基端部(30)寄りに位置し、前記ベルト取付部(4)に連結されるループ部(50)と、
前記ループ部(50)よりも前記第2基端部(30)寄りの位置に形成されており、前記ベルト取付部(4)に挿通された前記第2先端部(40)が挿通される第1挿通孔(60)と、
前記第1挿通孔(60)よりも前記第2基端部(30)寄りの位置に形成されており、前記第1挿通孔(60)に挿通された前記第2先端部(40)が挿通される第2挿通孔(70)
とを有する、請求項1に記載の顔面装着具用バックル。
【請求項3】
前記ヘッドベルト(2)は、
前記ループ部(50)に突設され、前記ループ部(50)が前記ベルト取付部(4)を通り抜けることを防止可能に、前記ベルト取付部(4)に係合するストッパ部(80)を更に有する、請求項2に記載の顔面装着具用バックル。
【請求項4】
顔面に装着される顔面装着具であって、装着具本体(1、1A)と、前記装着具本体(1、1A)の両端に各々連結される一対のヘッドベルト(2、2)と、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の顔面装着具用バックルとを具備する顔面装着具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴーグル、眼鏡等の顔面装着具に関し、特に、使用者が容易に着脱でき、かつ脱落、ズレが発生しにくい顔面装着具、及び顔面装着具用バックルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴーグル、眼鏡等の顔面装着具として、特許文献1には、一対のアイカップを含むゴーグル本体と、ゴム製のヘッドベルトとを備えるスイミングゴーグルが記載されている。特許文献1に記載のゴーグルにおいては、ゴーグル本体の両端に一本のヘッドベルトが連結され、長さ調節機構によって、ヘッドベルトの長さが調節される。ヘッドベルトの長さは、ゴーグル本体が水中で外れない程度の弾性力が発揮されるように、ゴーグルの装着前に調節される。ゴーグルの装着は、ゴーグル本体を前側に、頭の上からゴーグルを被るようにして行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-90767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のゴーグルにおいては、装着の際にヘッドベルトの弾性力に打ち勝つだけの腕力が必要となり、力の弱い女性や子供、肩、腕が上がりにくい高齢者にとっては、ゴーグルの着脱が容易ではない。また、親が子供にゴーグルを装着するときにも、力の加減が分からず、装着し難いという難点がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着脱を容易にすることができるとともに、脱落、ズレを防止できる顔面装着具、及び顔面装着具用バックルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示する顔面装着具用バックルは、プラグ(10)と、ソケット(20)とを具備する。前記プラグ(10)は、一対のヘッドベルト(2、2)の一方に取付けられる。前記一対のヘッドベルト(2、2)は、顔面に装着される顔面装着具における装着具本体(1、1A)の両端に各々連結される。前記ソケット(20)は、前記一対のヘッドベルト(2、2)の他方に取付けられる。そして、前記プラグ(10)は、円形の凸部(11)が突設された係止片(12)を有し、前記ソケット(20)は、円形の凹部(21)を有する。前記凹部(21)は、前記プラグ(10)を枢支可能に前記凸部(11)と嵌合する。
【0007】
本願に開示する顔面装着具用バックルにおいて、前記プラグ(10)は、台板部(13)と、支持部(14)とを有する。前記台板部(13)は、前記係止片(12)に対し前記凸部(11)の突出方向(X1)と反対方向(X2)に配設される。前記支持部(14)は、前記凸部(11)と前記凹部(21)とが嵌合する嵌合状態に前記係止片(12)を前記台板部(13)に弾性支持する。そして、前記係止片(12)は、第1基端部(12a)と、中間部(12b)と、第1先端部(12c)と、受付部(15)とを有する。前記第1基端部(12a)は、前記支持部(14)に連結される。前記中間部(12b)は、前記凸部(11)が形成される。前記受付部(15)は、前記凸部(11)よりも前記第1先端部(12c)寄りに配設され、前記嵌合状態を解除するための押圧操作を受付ける。前記押圧操作は、前記反対方向(X2)に前記係止片(12)を押圧する操作である。
【0008】
本願に開示する顔面装着具用バックルにおいて、前記ヘッドベルト(2)は、第2基端部(30)、及び第2先端部(40)を有し、前記装着具本体(1、1A)は、両端に、ベルト取付部(4)が設けられている。前記ベルト取付部(4)は、前記ヘッドベルト(2)の前記第2先端部(40)が挿通可能である。そして、前記ヘッドベルト(2)は、更に、ループ部(50)と、第1挿通孔(60)と、第2挿通孔(70)とを有する。前記ループ部(50)は、前記ヘッドベルト(2)における長手方向の中央よりも前記第2基端部(30)寄りに位置し、前記ベルト取付部(4)に連結される。前記第1挿通孔(60)は、前記ループ部(50)よりも前記第2基端部(30)寄りの位置に形成されており、前記ベルト取付部(4)に挿通された前記第2先端部(40)が挿通される。前記第2挿通孔(70)は、前記第1挿通孔(60)よりも前記第2基端部(30)寄りの位置に形成されており、前記第1挿通孔(60)に挿通された前記第2先端部(40)が挿通される。
【0009】
また、本願に開示する顔面装着具用バックルにおいて、前記ヘッドベルト(2)は、ストッパ部(80)を更に有する。前記ストッパ部(80)は、前記ループ部(50)に突設され、前記ループ部(50)が前記ベルト取付部(4)を通り抜けることを防止可能に、前記ベルト取付部(4)に係合する。
【0010】
また、本願に開示する顔面装着具は、顔面に装着される顔面装着具であって、装着具本体(1、1A)と、前記装着具本体(1、1A)の両端に各々連結される一対のヘッドベルト(2、2)と、上記いずれかの顔面装着具用バックルとを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の顔面装着具、及び顔面装着具用バックルによれば、着脱を容易にすることができるとともに、脱落、ズレを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る顔面装着具を示す斜視図である。
図2図1の顔面装着具を示す上面図である。
図3】本発明の実施形態に係る顔面装着具用ヘッドベルトを示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る顔面装着具用バックルを示す斜視図である。
図5図4の顔面装着具用バックルを示す正面図である。
図6図4の顔面装着具用バックルを示す分解斜視図である。
図7図4の顔面装着具用バックルの動作を示す平面図であり、(a)は、プラグが中立位置に位置する顔面装着具用バックルを示し、(b)は、プラグが一方向に最大限回転している顔面装着具用バックルを示し、(c)は、プラグが反対方向に最大限回転している顔面装着具用バックルを示す。
図8】本発明の他の実施形態に係る顔面装着具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る顔面装着具、及び顔面装着具用バックルを図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0014】
〈実施形態〉
図1図2を参照して、本発明の実施形態に係る顔面装着具を説明する。図1は、実施形態に係る顔面装着具を示す斜視図である。図2は、図1の顔面装着具を示す上面図である。
【0015】
図1図2に示すように、実施形態に係る顔面装着具は、装着具本体1と、弾性素材から形成される一対のヘッドベルト2と、一対のヘッドベルト2を互いに連結するバックル3とを具備する。
【0016】
なお、実施形態の顔面装着具は、スイミングゴーグルであるが、本発明は、装着具本体の両端に、ヘッドベルトを挿通可能なベルト取付部が設けられていれば、各種顔面装着具に適用可能である。例えば、本発明は、スキーゴーグル、バイク用ゴーグル、防塵ゴーグル、安全保護ゴーグル、ヘッドマウント・ディスプレイ用ゴーグル、サングラス、防塵眼鏡、視力矯正用眼鏡等の各種顔面装着具に適用可能である。
【0017】
図1に示すように、実施形態において、装着具本体1は、一対のレンズ部1aと、一対のレンズフレーム部1bと、一対のガスケット部1cと、ノーズブリッジ1dとを有する。また、装着具本体1の両端には、ヘッドベルト2が挿通可能であるベルト取付部4が各々形成されている。2つのベルト取付部4には、一対のヘッドベルト2が各々取付けられ、一対のヘッドベルト2は、バックル3によって互いに連結される。バックル3は、プラグ10とソケット20とを備える。
【0018】
以下、図3を参照して、ヘッドベルト2を説明する。図3は、実施形態に係る顔面装着具用ヘッドベルトを示す斜視図である。
【0019】
図3に示すように、ヘッドベルト2は、ベルト基端部30と、ベルト先端部40とを備えるベルト状部材であり、ベルト基端部30とベルト先端部40との間に、ループ部50、第1挿通孔60、第2挿通孔70、ストッパ部80、厚板部90、重なり部100、及び被連結部110を具備する。ヘッドベルト2の素材には、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、合成ゴム等の各種弾性素材を使用できる。なお、ベルト基端部30は、請求の範囲における第2基端部に対応し、ベルト先端部40は、請求の範囲における第2先端部に対応している。
【0020】
ループ部50は、図3に示すように、ヘッドベルト2における長手方向の中央よりもベルト基端部30寄りに位置しており、図1図2に示すように、ベルト取付部4に係合し、ヘッドベルト2を装着具本体1に連結する。ヘッドベルト2をベルト取付部4に取付けるとき、ヘッドベルト2は、ベルト先端部40を先に、ループ部50に達するまで、ベルト取付部4に挿通される。また、ベルト先端部40は、装着具本体1の内側から外側に、ベルト取付部4に挿通される。
【0021】
第1挿通孔60は、図3に示すように、ループ部50よりもベルト基端部30寄りの位置に形成されている。第1挿通孔60には、ヘッドベルト2のベルト先端部40が挿通可能であり、図1図2に示すように、ベルト先端部40は、ベルト取付部4に挿通された後に第1挿通孔60に挿通される。ヘッドベルト2が、ループ部50の境界位置に達するまで第1挿通孔60に挿通されることによって、ループ部50がループ状に形成される。
【0022】
第2挿通孔70は、図3に示すように、第1挿通孔60よりもベルト基端部30寄りの位置に形成されている。第2挿通孔70には、ヘッドベルト2のベルト先端部40が挿通可能であり、図1図2に示すように、ベルト先端部40は、第1挿通孔60に挿通された後に第2挿通孔70に挿通される。また、ヘッドベルト2は、後述の重なり部100が、後述の厚板部90と密着状態に重なる位置まで第2挿通孔70に挿通される。
【0023】
ストッパ部80は、図3に示すように、ループ部50における例えば内側面50aに突設される。図2に示すように、ストッパ部80は、ループ部50がベルト取付部4を通り抜けることを防止可能にベルト取付部4に係合する。実施形態においては、ストッパ部80は、ヘッドベルト2の幅方向に長い突起状に形成されている。
【0024】
厚板部90は、図3に示すように、第1挿通孔60と第2挿通孔70との間に形成されており、周囲の部分よりも板厚が大きくなっている。
【0025】
重なり部100は、図3に示すように、ループ部50よりもベルト先端部40寄りに位置する。図2に示すように、重なり部100は、ヘッドベルト2における第1挿通孔60と第2挿通孔70との間の部分と重なり合う。また、実施形態においては、図3に示すように、重なり部100は、周囲の部分よりも幅広に形成されている。
【0026】
被連結部110は、ヘッドベルト2における長手方向の中央よりもベルト先端部40寄りに位置し、ヘッドベルト2の長さを調節可能に、バックル3に連結される。なお、ヘッドベルト2の長さ調節機構については後述する。また、被連結部110は、ヘッドベルト2における被連結部110以外の部分よりも全体的に幅広に形成されている。
【0027】
以上、図1図3を参照して説明したように、実施形態の顔面装着具によれば、ループ部50が、ヘッドベルト2を装着具本体1に連結することによって、装着具本体1の両端に、ヘッドベルト2が挿通可能なベルト取付部4を設けるだけで、ヘッドベルト2を装着具本体1に取付けることができ、本発明を各種顔面装着具に容易に適用できる。
【0028】
また、実施形態の顔面装着具によれば、ヘッドベルト2が、第1挿通孔60及び第2挿通孔70の2つの挿通孔を具備することによって、ループ部50近傍におけるヘッドベルト2の形状を直線的に伸びる形状に整えることが容易になり、顔面装着具の着脱を容易にできるとともに、装着感を向上させることができる。
【0029】
また、実施形態の顔面装着具によれば、ストッパ部80が、ループ部50に設けられることによって、ヘッドベルト2をベルト取付部4に取付ける際に、ヘッドベルト2が、ループ部50を超える位置までベルト取付部4に挿通されることを防止できる。従って、ヘッドベルト2における一定の位置でヘッドベルト2を装着具本体1に連結でき、ベルト取付部4に対するヘッドベルト2の取付けを容易にできる。
【0030】
また、実施形態の顔面装着具によれば、第1挿通孔60と第2挿通孔70との間に厚板部90が形成されることによって、ループ部50の近傍でヘッドベルト2が二重に重なる部分を直線的に伸びる形状に整えることが容易となり、顔面装着具の着脱を更に容易にできるとともに、装着感を更に向上させることができる。
【0031】
また、実施形態の顔面装着具によれば、重なり部100が、比較的に幅広に形成されることによって、ヘッドベルト2において、使用者のこめかみに当接する部分の面積を大きくでき、接触圧力を小さくし、装着感を更に向上できる。
【0032】
また、実施形態の顔面装着具によれば、被連結部110が、全体的に幅広に形成されていることによって、面同士の摩擦力によってヘッドベルト2をバックル3に連結するとき、より大きな摩擦力を発揮でき、十分な強度でヘッドベルト2をバックル3に連結できる。
【0033】
また、反対に、ヘッドベルト2における被連結部110以外の部分の幅を被連結部110よりも小さくすることによって、顔面装着具の着脱の際に、より小さな力でヘッドベルト2を伸縮でき、ヘッドベルト2が、顔面装着具の固定に必要十分な弾性力を発揮できる長さの範囲を広げることができ、ヘッドベルト2の長さ調節を容易にできる。従って、必要十分な弾性力で顔面装着具を使用者の頭部に固定することが容易となり、顔面装着具の着脱を更に容易にできる。
【0034】
次に、図4図7を参照して、バックル3を説明する。図4は、実施形態に係る顔面装着具用バックルを示す斜視図である。図5は、図4の顔面装着具用バックルを示す正面図である。図6は、図4の顔面装着具用バックルの分解斜視図である。図7は、図4の顔面装着具用バックルの動作を示す平面図である。
【0035】
図4図5に示すように、バックル3のプラグ10は、円形の凸部11が突設された係止片12と、台板部13と、支持部14と、受付部15と、第1連結部16と、回転規制部17とを有する。
【0036】
バックル3のソケット20は、円形の凹部21が形成されている被係止部22と、台板当接部23と、周壁部24と、第2連結部25と、被規制部26とを有する。凹部21は、実施形態においては、板状の被係止部22を貫通する貫通孔であり、プラグ10を枢支可能に、凸部11と嵌合する。すなわち、凸部11と凹部21とが嵌合することによって、プラグ10は、所定の角度範囲で回動可能に、ソケット20と連結される。
【0037】
実施形態においては、バックル3は、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエステル、及びABS樹脂等の硬質プラスチックから形成されている。バックル3が、硬質プラスチックから形成されることによって、プラグ10とソケット20とを連結するときに、音や感触によって、凸部11と凹部21とが嵌合したことを明瞭に感知でき、顔面装着具の着脱を更に容易にできる。
【0038】
プラグ10の凸部11は、突出方向X1からの平面視形状が円形である。図5に示すように、凸部11の突出方向X1は、ソケット20にプラグ10を差込むときの差込方向X3と交差する方向である。また、凸部11は、差込方向X3に向かって突出高さが小さくなるように、頂面が傾斜している。
【0039】
凸部11の頂面が、差込方向X3に向かって突出高さが小さくなるように傾斜していることによって、プラグ10をソケット20に差し込むとき、スムーズに凸部11と凹部21とを嵌合できる。反対に、凸部11は、プラグ10をソケット20から引き抜くときの引抜方向X4に向かって突出高さが大きくなっている。従って、凸部11と凹部21との嵌合によって、十分な強度でプラグ10をソケット20に係止できる。
【0040】
プラグ10の係止片12は、図5図6に示すように、平面視形状が卵形であり、第1基端部としての基端部12aと、中間部12bと、第1先端部としての先端部12cとを有する。基端部12aは、支持部14に連結される部分である。中間部12bは、基端部12aと先端部12cとの間の部分であり、凸部11が突設される。先端部12cは、係止片12の自由端部である。
【0041】
プラグ10の台板部13は、係止片12に対し凸部11の突出方向X1と反対方向X2に配設される。実施形態においては、台板部13は、係止片12との間に所定の隙間を空けて、係止片12に対し反対方向X2に配設される円形の板状部材である。
【0042】
プラグ10の支持部14は、図4図6に示すように、凸部11と凹部21とが嵌合する嵌合状態に、係止片12を台板部13に弾性支持する。すなわち、実施形態においては、係止片12は、基端部12aにおいて、支持部14によって片持ち支持される。
【0043】
プラグ10の受付部15は、係止片12において凸部11よりも先端部12c寄りの位置に形成されており、係止片12を反対方向X2に押圧する押圧操作であって、凸部11と凹部21との嵌合状態を解除するための押圧操作を受付ける。実施形態においては、係止片12の先端部12cにおける突出方向X1側の面に受付部15が形成されている。また、受付部15は、滑り止めのための複数の突条15aを有している。以上のとおり、実施形態のバックル3は、係止片12を突出方向X1の反対方向X2に押圧することによって嵌合状態が解除されるフロントリリース式である。
【0044】
プラグ10の第1連結部16は、図4図5に示すように、台板部13と一体的に形成されており、プラグ10にヘッドベルト2を連結する。また、第1連結部16は、ヘッドベルト2の長さ調節機構としての複数本のバー部材16a、16b、16cを有する。
【0045】
複数本のバー部材16a、16b、16cは、互いに平行に、所定の間隔を置いて第1連結部16に配設されており、ヘッドベルト2と摩擦係合可能である。すなわち、ヘッドベルト2のベルト先端部40が、例えば図5に矢印付きの曲線Aに示されている経路で複数本のバー部材16a、16b、16cの間を挿通されることによって、ヘッドベルト2の被連結部110と第1連結部16とが摩擦係合され、プラグ10とヘッドベルト2とが、ヘッドベルト2の長さを調節自在に連結される。
【0046】
プラグ10の回動規制部17は、図5図6に示すように、台板部13の両側部に突設されており、図7に示すように、プラグ10がソケット20に対し回動する回動範囲を規制可能に、ソケット20と当接する。実施形態においては、プラグ10は、円形の凸部11の中心を通る中心軸周りに回動し、回動規制部17によって、左右の最大回動位置L2、L3が規制される。
【0047】
実施形態においては、左右の最大回動位置L2、L3と、プラグ10の中立位置L1との間の最大回動角度α1、α2は、等しい角度である。また、最大回動角度α1、α2は、鋭角であればよいが、45°以下の角度であることが好ましく、20°以下の角度であることがより好ましく、5°から10°の角度であることが更に好ましい。
【0048】
ソケット20の被係止部22は、ソケット20にプラグ10が差込まれているとき、プラグ10の係止片12に当接する。ソケット20の台板当接部23は、ソケット20にプラグ10が差込まれているとき、プラグ10の台板部13に当接する。ソケット20の周壁部24は、ソケット20にプラグ10が差込まれているとき、プラグ10の支持部14を囲うように支持部14と対向する。
【0049】
ソケット20の第2連結部25は、ソケット20とヘッドベルト2とを連結するものであり、ヘッドベルト2の長さを調節する長さ調節機構を有している。また、図4図5に示すように、第2連結部25は、台板当接部23と一体形成されており、複数本のバー部材25a、25b、25cを有する。被規制部26は、プラグ10がソケット20に対し回動する回動範囲を規制可能に、回動規制部17に当接される。
【0050】
以上、図1図2と、図4図7とを参照して説明したように、本実施形態の顔面装着具及び顔面装着具用バックルによれば、円形の凸部11と円形の凹部12との嵌合によって、プラグ10とソケット20とが連結される。従って、プラグ10とソケット20との向きが一直線上ではなく、多少斜めであっても、プラグ10をソケット20に差し込むことができ、後頭部において、プラグ10とソケット20とを連結する連結作業が容易となる。
【0051】
また、本実施形態の顔面装着具及び顔面装着具用バックルによれば、係止片12が、凸部11よりも先端部12c寄りの位置に受付部15を有することによって、梃子の原理によって、より小さな力で凸部11と凹部21との嵌合状態を解除でき、顔面装着具の着脱を更に容易にできる。また、より小さな力で凸部11と凹部21との嵌合状態を解除できることによって、支持部14が係止片12を弾性支持する支持力を大きくしても、凸部11と凹部21との嵌合状態を容易に解除できる。従って、より大きな支持力を発揮するように支持部14を設計でき、プラグ10とソケット20との結合強度を更に大きくできる。
【0052】
また、凸部11と凹部21との嵌合状態は、例えば、凹部21を通して指で凸部11を押圧することによっても解除可能である。しかしながら、凹部21の径が小さければ、凹部21に指を通し、凸部11を押圧することはできない。実施形態によれば、係止片12が受付部15を有することによって、凹部21の径が小さく、凸部11を指で押圧できないときにも、受付部15に対し押圧操作し、凸部11と凹部21との嵌合状態を解除できる。従って、凹部21を小さな径に設計しても、不都合がなく、バックル3を容易に小型化できる。
【0053】
また、本実施形態の顔面装着具及び顔面装着具用バックルによれば、最大回動角度α1、α2が上記の範囲であることによって、顔面装着具の装着時におけるヘッドベルト2のずれを効果的に防止できる。例えば、水中への飛び込みや競泳のスタート時における顔面装着具の脱落、ずれ、並びに装着具本体1における水漏れを防ぐために、使用者の後頭部において、眼よりも上の位置にヘッドベルト2を掛けると、バックル3の両端に下向きの力が掛かる。一般的なフック式のバックルや、サイドリリース式のバックルであれば、プラグとソケットとが一直線上に並んだ状態で固定されるために、バックル3が下にずれやすくなる。実施形態のバックル3によれば、後頭部におけるバックル3の位置に応じて、プラグ10とソケット20との相対角度が変化することによって、バックル3のずれを効果的に防止でき、顔面装着具の脱落、ずれを効果的に防止できる。
【0054】
また、例えば、使用者が、顔面装着具を装着している状態で、装着具本体1を額まで移動するとき、プラグ10とソケット20との相対的な回動によって、装着具本体1を額までスムーズに移動できる。
【0055】
反対に、最大回動角度α1、α2が上記の範囲であることによって、プラグ10とソケット20との相対的な回動角度が大きくなり過ぎることを防止でき、凸部11と凹部21との嵌合状態が解除されやすくなることを防止でき、安定的に顔面装着具を頭部に固定できる。すなわち、凸部11の頂面が、X3に向かって突出高さが小さくなるように傾斜しているとき、プラグ10がソケット20に対し大きな角度で回動すると、凸部11と凹部21との嵌合状態は解除されやすくなる。最大回動角度α1、α2を上記の範囲に設定することによって、例えば装着具本体1を額まで移動するときにも、プラグ10とソケット20との相対角度が大きくなり過ぎることを防止でき、凸部11と凹部21との嵌合状態が解除されやすくなることを防止できる。
【0056】
次に、図8を参照して、他の実施形態に係る顔面装着具を説明する。図8は、本発明の他の実施形態に係る顔面装着具を示す斜視図である。
【0057】
図8に示すように、本実施形態に係る顔面装着具は、サングラスであり、装着具本体としてのグラス本体1Aを具備する。グラス本体1Aは、色付きである一対のレンズ部1aと、レンズフレーム部1bと、鼻パッド1eとを有する。実施形態においては、一対のレンズ部1aは、一体形成されており、湾曲した1枚の樹脂板又はガラス板から形成される。なお、一対のレンズ部1aは、別体に形成されていてもよく、図示しないノーズブリッジ等によって、互いに連結されていてもよい。
【0058】
また、グラス本体1Aは、両端に、ヘッドベルト2が挿通可能であるベルト取付部4を有する。使用者は、ベルト取付部4にヘッドベルト2を挿通し、ヘッドベルト2をグラス本体1Aに取り付ける。本実施形態におけるグラス本体1A以外の構成は、図1図7に示す実施形態の構成と同様である。
【0059】
以上、図8を参照して説明したように、本実施形態の顔面装着具は、サングラスであり、グラス本体1Aが、両端に、ヘッドベルト2が挿通可能であるベルト取付部4を有しており、本発明は、ゴーグルだけではなく、サングラスを含む眼鏡一般に適用可能である。
【0060】
以上、図面(図1図8)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1)~(2))。
【0061】
(1)図2図3を参照して説明したように、上記実施形態においては、ストッパ部80は、ループ部50における内側面50aに突設されているが、ベルト取付部4と係合し、ループ部50がベルト取付部4を通り抜けることを防止できれば、ストッパ部80は、ループ部50における外側面に設けられてもよい。
【0062】
(2)上記実施形態では、最大回動角度α1、α2は等しい角度であったが、最大回動角度α1、α2は、異なる角度であってもよく、合計値が同じであればよい。
【符号の説明】
【0063】
X1…突出方向
X2…反対方向
1…装着具本体
1A…グラス本体(装着具本体)
2…ヘッドベルト
3…バックル
4…ベルト取付部
10…プラグ
11…凸部
12…係止片
12a…基端部(第1基端部)
12b…中間部
12c…先端部(第1先端部)
13…台板部
14…支持部
15…受付部
20…ソケット
21…凹部
30…ベルト基端部(第2基端部)
40…ベルト先端部(第2先端部)
50…ループ部
60…第1挿通孔
70…第2挿通孔
80…ストッパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8