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  • 特許-情報取得及び分析機能付きの卵充填装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】情報取得及び分析機能付きの卵充填装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 43/00 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A01K43/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019214885
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021083370
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 邦男
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142625(JP,A)
【文献】特開2004-229546(JP,A)
【文献】特開2000-065607(JP,A)
【文献】特開2002-209468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0227743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 43/00
B07C 5/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農場で産卵された卵を容器に充填する充填部と、
充填された卵に関連する鶏群の情報を自動または手動で取得する鶏群情報取得部と、
卵が前記充填部の上流側で撮影された画像データで卵の情報を取得する画像取得部と、
取得された鶏群の情報及び画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報を分析して、充填部に到る以前の段階で発生した異常を判定する判定部とを備える、情報取得及び分析機能付きの卵充填装置。
【請求項2】
前記判定部で異常を判定した場合に報知を行う報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記判定部での判定結果に基づいて報知を行うとともに、前記充填部は、判定部での判定結果により充填の続行または中止を行う、請求項1記載の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置。
【請求項3】
前記判定部で異常と判定された卵を前記容器に充填することなく所定場所に排出する異常監視部を有する、請求項1または2記載の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置。
【請求項4】
少なくとも前記画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報、または、前記鶏群情報取得部から得られる個々の卵の鶏群の情報、または、個々の卵の重量情報のいずれかを利用して、複数の充填部にそれぞれ振り分ける際に用いる閾値を変更する調整部をさらに備える、請求項1、2または3記載の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農場で産卵された卵を容器に充填する卵充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農場で産卵された卵を容器(トレイ)に充填する卵充填装置(ファームパッカー)の一例として、下記特許文献1のようなものが挙げられる。卵充填装置は、選別包装機(グレーダー)で卵が選別される前に、農場で生産された卵を容器に一時的に集めるための装置である。卵充填装置は、鶏舎で産卵された鶏卵を搬送して集める集卵コンベヤの終端部に接続される。鶏舎で産卵された鶏卵は、集卵コンベヤで集められるとともに、機械の汚れや故障の予防のために、作業員によって極大卵あるいは極小卵、卵殻形状が異常である粗悪卵殻卵などの規格外卵が取り除かれる。その後、卵充填装置によって、輸送用のアメリカントレイなどの容器に充填がなされてGPセンターに出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-185008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充填される前の規格外卵の除去作業は、熟練の作業者による勘と経験に委ねられている。さらに、除去された規格外卵の状態から、鶏舎の状況の予測や今後とるべき対策の検討を行うことも、現在は、勘と経験に頼って行われている状況である。そのため、卵充填装置において、勘と経験によらずに、農場側で発生した何らかの異常を自動で検出、判定するシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置は、充填部と、鶏群情報取得部と、画像取得部と、判定部とを備える。充填部は、農場で産卵された卵を容器に充填する。鶏群情報取得部は、充填された卵に関連する鶏群の情報を自動または手動で取得する。画像取得部は、卵が充填部の上流側で撮影された画像データで卵の情報を取得する。判定部は、取得された鶏群の情報及び画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報を分析して、充填部に到る以前の段階で発生した異常を判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、充填部に到る以前の段階で発生した異常を検出できる情報取得及び分析機能付きの卵充填装置を提供できる。
【0007】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態にかかる情報取得及び分析機能付きの卵充填装置を説明する図である。
図2】本発明の第二実施形態にかかる情報取得及び分析機能付きの卵充填装置を説明する図である。
図3】本発明の第三実施形態にかかる情報取得及び分析機能付きの卵充填装置を説明する図である。
図4】卵充填装置の一例を示す概略斜視図である。
図5】卵充填装置の他の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第一実施形態について、図1を用いて説明する。
【0010】
本実施形態の卵充填装置10は、集卵コンベヤ(搬送部C)を介して鶏舎(農場F)に接続される。卵充填装置10は、情報取得機能と分析機能を有する。具体的には、卵充填装置10は、充填部1と、鶏群情報取得部2と、画像取得部3と、判定部4と、報知部5とを備える。本実施形態では、親鳥の情報を取得する鶏群情報取得部2と卵の情報を画像で取得する画像取得部3が情報取得機能を実現し、判定部4が分析機能を実現する。
【0011】
充填部1は、鶏舎で産卵された卵を容器に充填する。容器は、例えば、アメリカントレイと呼ばれる輸送用仮容器であるが、これ以外の包装容器、販売用容器であってもよい。充填部1は、判定部4での判定結果により充填の続行または中止を行う。
【0012】
鶏群情報取得部2は、充填された卵に関連する鶏群の情報を取得する。鶏群の情報は、その卵が産卵された農場Fに関する情報、その卵を産卵した親鳥(鶏種)に関する情報、その卵を産卵した親鳥の日齢に関する情報、その卵を産卵した親鳥に接種したワクチンに関する情報、その卵を産卵した親鳥に与えている飼料(例えば、飼料添加物の投与など)に関する情報などである。鶏群情報取得部2は、鶏群の情報が手動で入力される鶏群情報入力部22から情報を取得してもよいし、鶏舎から自動で鶏群の情報を取得してもよい。
【0013】
画像取得部3は、卵が充填部1の上流側で撮影された画像データを取得する。画像取得部3は、撮像部6から画像データを取得する。撮像部6は、卵を撮影する。画像データは、反射光画像でもよいし、透過光画像でもよい。画像データは、カラー画像でもモノクロ画像でもよい。画像データは、物理的性状情報として、個々のまたは複数個の卵が被写体となった画像である。取得した画像は、記憶部7に記録される。なお、充填部1の上流側とは、卵充填装置10上であってもよいし、卵充填装置10の前工程であってもよい。言い換えれば、撮像部6は、卵充填装置10の一部である卵を集めて整列させる搬送路上、または、農場Fから卵充填装置10への搬送途上のコンベヤ(例えば、搬送部C)に設けられてもよい。異常を早期に発見するためには、農場Fから卵充填装置10への搬送途上のなるべく上流で卵が撮影されることが望ましい。
【0014】
判定部4は、取得された鶏群の情報及び画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報を分析する。物理的性状情報は、卵の属性に関するもので、例えば、画像から計測、検査される卵の大きさ、卵の形状、卵殻上のヒビの有無、卵殻上の汚れの有無などである。判別部4は、物理的性状情報の分析に基づいて、農場Fから卵充填装置10の充填部1に到るまでの段階で発生した何らかの異常を検出、判定する。何らかの異常とは、あらかじめ許容された情報を逸脱したもので、親鳥自体のトラブル、親鳥の生存領域におけるトラブル、機械的なトラブルの少なくともいずれかである。言い換えれば、親鳥の状態、親鳥の生育環境、設備の状態などに関するものである。
【0015】
画像データからは、例えば、卵殻に付着した汚れの種類や程度から類推される産卵鶏の健康状態、栄養状態、病気発生の有無や、農場環境の不具合の発生の有無、搬送部C上または搬送部C間の接続箇所の不具合の発生の有無などを含めた多くの情報を得ることができる。具体的な例を挙げれば以下のようなものがある。水様性便付着汚卵は、鶏舎内温度の上昇による飲水量の増加、または、卵をケージ内に滞留させてしまうようなケージ床網の状況が原因の場合がある。また、盲腸便付着汚卵は、卵の転出時に盲腸便が付きやすいケージ床網の状況が原因の場合がある。また、卵内容物付着汚卵は、バーコンベヤ上で卵殻が脆弱な卵を事前に除去しない集卵システムや複雑に折れ曲がった集卵システムが原因の場合がある。血卵付着汚卵は、若齢鶏では発生しやすく、また、農場で発生する寄生虫の一種であるワクモが原因の場合がある。付着物の形状や性状によっては、農場内に発生したハエなど虫の糞が原因の場合がある。点状の突起やざらつきのある卵、または、いびつな形の奇形卵は、ストレスが原因の場合がある。半透明のすじ、点斑卵、ガラス卵殻、破損卵は、ケージ内の収容羽数の増加、飼料中のマンガン含量の不適量、鶏舎内の換気不良、飼料中のカルシウムの不足、産卵時間帯に安静状態でないことが原因の場合がある。さらに、疾病の発症などにより、種々の規格外卵が発生する。
【0016】
報知部5は、判定部4で異常と判定した場合に報知を行う。
【0017】
本実施形態の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置10は、さらに、卵重情報を取得する計量器8を備えてもよい。卵重情報は、卵重取得部9を経て記憶部7に記録された後、鶏群の情報、物理的性状情報とともに、判定部4が充填部1に到る以前の段階で発生した何らかの異常を判定する際に用いられてもよい。
【0018】
以上説明したように、本実施形態にかかる情報取得及び分析機能付きの卵充填装置10は、充填部1と、鶏群情報取得部2と、画像取得部3と、判定部4とを備える。充填部1は、農場Fで産卵された卵を容器に充填する。鶏群情報取得部2は、充填された卵に関連する鶏群の情報を自動または手動で取得する。画像取得部3は、卵が充填部1の上流側で撮影された画像データで卵の情報を取得する。判定部4は、取得された鶏群の情報及び画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報を分析して、充填部1に到る以前の段階で発生した異常を判定する。そのため、勘と経験によらずに、農場F側で発生した何らかの異常を自動で検出、判定することができる。特に、鶏群別に産卵状況を管理することができ、また、養鶏場から卵を購入するGPセンターにとっても卵の購入時点における卵の状態を把握することができるので安心して卵の取引を行うことができる。
【0019】
情報取得及び分析機能付きの卵充填装置10は、判定部4で異常と判定した場合に報知を行う報知部5をさらに備える。報知部5は、判定部4での判定結果に基づいて報知を行い、一方、判定部4での判定結果にかかわらず充填部1は充填を続ける。または、充填部1は、判定部4での判定結果により充填の中止を行ってもよい。
【0020】
次に、本発明の第二実施形態について図2を参照して説明する。本実施形態では、第一実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0021】
本実施形態の卵充填装置10は、さらに、異常監視部を備える。卵充填装置10は、充填部1と、鶏群情報取得部2と、画像取得部3と、判定部4と、報知部5に加えて、分配部11を備える。本実施形態では、分配部11が異常監視部を実現する。
【0022】
分配部11は、判定部4で異常と判定された卵を、容器に充填することなく所定場所12に排出する。分配部11は、判定部4での判定結果により分配を行う。判定部4での判定結果により所定場所12に排出されなかった卵は、充填部1にて容器に充填する。なお、充填部1の容器(異常なしと判定された卵を収容した容器)と区別できる状態であれば、判定部4で異常ありと判定された卵を所定場所12において容器に充填してもよい。
【0023】
このような分配部11を備えるものであるため、普段は通常の充填装置として機能し、監視し続ける中で異常が検出された場合に当該卵を取り分けることができる。
【0024】
次に、本発明の第三実施形態について図3を参照して説明する。本実施形態では、第一実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0025】
本実施形態の卵充填装置10は、さらに、調整部21を備える。卵充填装置10は、充填部1と、鶏群情報取得部2と、画像取得部3と、判定部4と、報知部5と、分配部11に加えて、調整部21を備える。
【0026】
調整部21は、複数の充填部1にそれぞれ振り分ける際に用いる閾値を変更する。なお、充填部1は、3つには限られず、前述した所定場所12であってもよい。調整部21は、閾値を変更する際に、少なくとも、個々の卵の物理的性状情報、または、個々の卵の鶏群の情報、または、個々の卵の重量情報のいずれかを利用する。物理的性状情報は、画像データから得られる。鶏群の情報は、鶏群情報取得部2から得られる。重量情報は、計量器8から得られる。
【0027】
すなわち、本実施形態の情報取得及び分析機能付きの卵充填装置10は、調整部21をさらに備え、調整部21が、少なくとも画像データから得られる個々の卵の物理的性状情報、または、鶏群情報取得部2から得られる個々の卵の鶏群の情報、または、個々の卵の重量情報のいずれかを利用するので、集卵される現状の卵の状態に合わせて調整しながら分配できる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0029】
卵は、鶏、アヒル、うずらなどの種々の鳥類の卵を含む。鶏以外の卵の場合、本発明の「鶏群」はその卵を産卵する親鳥の群と読み替える。
【0030】
判定部4は、鶏群の情報及び画像データに加えて、卵殻を叩いた際の打音を組み合わせた物理的性状情報を分析して、充填部に到る以前の段階で発生した何らかの異常を検出、判定してもよい。
【0031】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、農場で産卵された卵を輸送用仮容器に充填する充填部を備えたいわゆるファームパッカーに利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…情報取得及び分析機能付きの卵充填装置
1…充填部
2…鶏群情報取得部
3…画像取得部
4…判定部
5…報知部
12…所定場所
21…調整部
F…農場
図1
図2
図3
図4
図5