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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】経口組成物及び飲食品のミネラル強化剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20230530BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20230530BHJP
   A23L 33/165 20160101ALI20230530BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 33/32 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L33/185
A23L33/165
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/34
A61K33/32
A61K31/555
A61P7/06
A61P25/28
A61P17/00
A61P1/00
A61P1/12
A61P7/00
A61P15/08
A61P19/08
A61P9/00
A61P25/00
A61P21/02
A61P37/00
A61P3/06
A61P3/08
A61K38/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020101987
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021193916
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-02-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月18日、株式会社あしたるんるんラボへ販売
(73)【特許権者】
【識別番号】512233880
【氏名又は名称】株式会社アンチエイジング・プロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 雄司
(72)【発明者】
【氏名】天野 弘毅
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537804(JP,A)
【文献】特開2000-125811(JP,A)
【文献】鉄の種類と特徴(ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄),奥平智之ブログ,2018年04月17日,[online],[2022年12月15日検索]<URL:http://mhealth.jugem.jp/?eid=558>
【文献】増田太郎,ダイズ加工食品における鉄成分 -その形態と食品加工への影響に関する研究-,大豆たん白研究,2015年,Vol.18,p.58-63
【文献】増田太郎、川端浩,鉄代謝のキープレイヤー・フェリチンの鉄給源としての可能性について,化学と生物,日本農芸化学会,2017年,第55巻、第8号,p.514-517
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄と、第2の栄養素として亜鉛、銅、マンガン、及び前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄からなる群から選ばれた1種又は2種以上と、を含有するミネラル吸収用組成物であって、
前記豆由来フェリチン鉄として、鉄含量3%質量以上である豆由来フェリチン鉄含有素材を含有し、
前記亜鉛、銅、及び/又はマンガンは、該栄養素を酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルの形態であり、
前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄は、水溶性ヘム鉄の形態であり、
前記第2の栄養素として亜鉛を含有する場合、その亜鉛の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記第2の栄養素として銅を含有する場合、その銅の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記第2の栄養素としてマンガンを含有する場合、そのマンガンの含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記第2の栄養素として前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄を含有する場合、その鉄の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である、
該ミネラル吸収用組成物
【請求項2】
前記第2の栄養素として亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上を含有する、請求項1記載のミネラル吸収用口組成物。
【請求項3】
前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、前記第2の栄養素として亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上の総含量が1質量部以上である、請求項1又は2記載のミネラル吸収用組成物。
【請求項4】
前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄を、その鉄の含量が2質量%以上10質量%以下となるように含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のミネラル吸収用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄、亜鉛等のミネラルを効率的に摂取できるようにした経口組成物及び飲食品のミネラル強化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄、亜鉛等のミネラルは、生体の生理機能にとって重要な役割をはたす必須微量元素であることが知られている。
【0003】
例えば、鉄は、ヘモグロビンや各種酵素の構成成分であり、成人の体内に3,500~5,000mg程度存在している。欠乏によって、貧血や、運動、認知機能の低下を招くことが知られている。
【0004】
また、亜鉛は、成人の体内におよそ2,000mg程度存在し、代謝調整作用を有する亜鉛含有酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アルコール脱水素酵素、カルボニックアンヒドラーゼ、アルカリフォスファターゼなど)などの構造成分である。亜鉛の欠乏症には、皮膚炎と味覚障害がよく知られており、その他に慢性下痢、低アルブミン血症、汎血球減少、成長障害、性腺発育障害などが知られている。
【0005】
また、銅は、成人の体内におよそ80mg程度存在するとみられており、筋肉や骨、肝臓に分布が多い。先天的な銅代謝異常を示すメンケス病では、知能低下や発育遅延、中枢神経障害がみられる。また、後天的な欠乏症では、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、骨異常、成長障害、心血管系や神経系の異常、毛髪の色素脱失、筋緊張低下、易感染性、コレステロールや糖代謝の異常などがある。
【0006】
また、マンガンは、生体内組織及び臓器にほぼ一様に分布しており、成人の体内に12~20mg程度存在するとみられている。マンガンはアルギニン分解酵素、乳酸脱炭酸酵素、マンガンスーパーオキシドジスムターゼの構成成分であり、また、多くの酵素の反応に関与していることが知られている。
【0007】
一般に、生理機能にとって重要な役割をはたす必須微量元素の吸収や排泄は、生体のホメオスタシス維持のために厳密に制御されていると考えられる。しかしながら、偏食、妊娠、老化、術後の機能低下など、さまざまな要因で、そのバランスが崩れる場合がある。また、鉄、亜鉛等と錯体を形成する薬剤の服用や、入院中の人工栄養食、輸液の施行等によっても、必須微量元素のバランスが崩れる場合がある。したがって、栄養補助食品(サプリメント)など、そのようなミネラル栄養成分を手軽に摂取することができる製品への要望も高い。また、鉄、亜鉛、銅などは、栄養機能性食品(食品表示基準)にかかるミネラル栄養成分にも掲げられている。
【0008】
生体へのミネラルの吸収性に関して、ミネラル成分同士の競合の問題がある。例えば、鉄を経口摂取した場合、鉄の種類によっては、鉄の吸収量が落ち、亜鉛、銅やマンガンの吸収も阻害し合ってしまうことがある。金属イオンのトランスポーターであるDMT1(Divalent Metal Transporter 1)が共通して使われることがあるためである(非特許文献1)。
【0009】
一方、特許文献1には、豆果由来のフェリチン鉄含有組成物を調製することについて記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】木村美恵子「微量元素と健康」生活衛生(Seikatsu Eisei)Vol.43 No.1 7-14(1999)
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2015-504888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、鉄、亜鉛等のミネラルを摂取する際、ミネラル成分同士の吸収性が競合するのを避けて、それぞれのミネラル栄養成分をより効率的に摂取できるようにした、経口組成物及び飲食品のミネラル強化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ね、豆由来フェリチン鉄を利用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、その第1の観点において、第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄と、第2の栄養素として亜鉛、銅、マンガン、及び前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄からなる群から選ばれた1種又は2種以上と、を含有することを特徴とする経口組成物を提供するものである。
【0015】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として亜鉛を含有し、その亜鉛の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0016】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として銅を含有し、その銅の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0017】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素としてマンガンを含有し、そのマンガンの含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0018】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄を含有し、その鉄の含量が、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0019】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上を含有することが好ましい。また、その場合、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、前記第2の栄養素として亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上の総含量が1質量部以上であることが好ましい。
【0020】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有し、その亜鉛、銅、及び/又はマンガンとして、該栄養素を酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルを含有することが好ましい。
【0021】
本発明による経口組成物においては、前記第2の栄養素として前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄を含有し、その鉄としてヘム鉄を含有することが好ましい。また、その場合、前記ヘム鉄として、水溶性ヘム鉄を含有することが好ましい。
【0022】
本発明による経口組成物においては、前記豆由来フェリチン鉄として、鉄含量3%質量以上である豆由来フェリチン鉄含有素材を含有することが好ましい。また、その場合、前記豆由来フェリチン鉄含有素材が、豆原料の水溶性抽出物に対し、塩析によりタンパク質画分を濃縮する処理を施すか、1種類又は複数種類のグリコシダーゼ酵素により糖質を分解する処理を施すか、もしくはそれらの両方の処理を施し、その後に分子量分画手段に供することにより得られたものであることが好ましい。なお、本発明においては豆由来素材に含まれるフェリチン鉄を利用できればよいが、一方で、上記のようにして得られる豆由来素材には豆由来フェリチン鉄以外にも他の成分を含み得る。そのように豆由来素材に任意に含まれる化学物質を逐一分析、特定することは、現実的ではなく、もしくは著しく過大な経済的支出や時間を要するためおよそ実際的ではない。
【0023】
本発明による経口組成物においては、前記第1の栄養素として豆由来フェリチン鉄を、その鉄の含量が2質量%以上10質量%以下となるように含有することが好ましい。
【0024】
一方、本発明は、その第2の観点において、豆由来フェリチン鉄を有効成分とする飲食品のミネラル強化剤を提供するものである。
【0025】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が、亜鉛、銅、マンガン、及び前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有する飲食品であることが好ましい。
【0026】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が亜鉛含有飲食品であって、その亜鉛の含量が、前記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下となるように使用されることが好ましい。
【0027】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が銅含有飲食品であって、その銅の含量が、前記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下となるように使用されることが好ましい。
【0028】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品がマンガン含有飲食品であって、そのマンガンの含量が、前記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下となるように使用されることが好ましい。
【0029】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄を含有する飲食品であって、その鉄の含量が、前記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下となるように使用されることが好ましい。
【0030】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上を含有することが好ましい。また、その場合、前記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、前記亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上の総含量が1質量部以上となるように使用されることが好ましい。
【0031】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が、亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有し、その亜鉛、銅、及び/又はマンガンとして、該栄養素を酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルを含有することが好ましい。
【0032】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記飲食品が、前記豆由来フェリチン鉄以外の鉄を含有し、その鉄としてヘム鉄を含有することが好ましい。また、その場合、前記ヘム鉄として、水溶性ヘム鉄を含有することが好ましい。
【0033】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記豆由来フェリチン鉄として、鉄含量3%質量以上である豆由来フェリチン鉄含有素材を用いることが好ましい。また、その場合、前記豆由来フェリチン鉄含有素材が、豆原料の水溶性抽出物に対し、塩析によりタンパク質画分を濃縮する処理を施すか、1種類又は複数種類のグリコシダーゼ酵素により糖質を分解する処理を施すか、もしくはそれらの両方の処理を施し、その後に分子量分画手段に供することにより得られたものであることが好ましい。なお、本発明においては豆由来素材に含まれるフェリチン鉄を利用できればよいが、一方で、上記のようにして得られる豆由来素材には豆由来フェリチン鉄以外にも他の成分を含み得る。そのように豆由来素材に任意に含まれる化学物質を逐一分析、特定することは、現実的ではなく、もしくは著しく過大な経済的支出や時間を要するためおよそ実際的ではない。
【0034】
本発明による飲食品のミネラル強化剤においては、前記豆由来フェリチン鉄は、その鉄の含量が前記飲食品中に2質量%以上10質量%以下となるように使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、豆由来フェリチン鉄を用いたので、鉄、亜鉛等のミネラル成分同士の吸収性が競合するのを避けて、それぞれのミネラル栄養成分の吸収性を良好に保つことができる。よって、これにより、生体の微量必須元素を効率的に摂取できるようにした、経口組成物及び飲食品のミネラル強化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】試験例1の結果を示す図表であり、図1(a)はラットに試料を1週間投与した後の鉄、亜鉛、又は銅の血中濃度の値を試験群ごとに示すグラフであり、図1(b)は投与した試料の組み合わせを示す表である。
図2】試験例2の結果を示す図表であり、図2(a)はラットに試料を1週間投与した後の鉄、亜鉛、銅、又はマンガンの血中濃度の値を試験群ごとに示すグラフであり、図2(b)は投与した試料の組み合わせを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明においては、生体にミネラルを吸収させるため、豆由来フェリチン鉄を利用する。すなわち、本明細書において、豆由来フェリチン鉄は、他のミネラル含有素材によるミネラルの吸収性を良好に保ちつつ、豆由来フェリチン鉄のそれ自体でも鉄を生体に吸収させるための鉄含有素材であることが明らかとされた。よって、これを飲食品とともに用いることで、その飲食品に含まれるミネラルを、吸収性の観点から、強化することができる。また、他のミネラル含有素材とともに経口組成物に含有せしめて、鉄、亜鉛等のミネラルを生体に吸収させるのに適した経口組成物を提供することができる。
【0038】
本発明に使用する豆由来フェリチン鉄としては、豆科植物を原料にしたものであればよい。例えば、特表2015-504888号公報には、豆果からフェリチン鉄を調製することが記載されているので、そのような公知の手段により調製したフェリチン鉄含有素材を用いることができる。豆科植物としては、例えば、大豆、レンズ豆、インゲン豆、ヒヨコ豆、ソラ豆、アズキ豆、エンドウ豆、落花生、花豆、緑豆、樹豆、ササゲ、ルーピン等が挙げられる。また、原料にする豆科植物の部位としては、豆果以外にも、葉、茎、蔓、鞘、根、種子、花等の豆果以外の部位を原料にしてもよく、それら部位の複数の組み合わせであってもよい。更に、スプラウトを原料にしてもよい。なお、大豆由来のフェリチン鉄含有素材として「まめ鉄」(SloIron社製)などが市販されているので、そのような市販品を利用してもよい。ただし、これらに限られず、豆科植物を原料にしたものであればよい。
【0039】
一般に、豆由来のフェリチン鉄含有素材には、副成分として豆由来のリン脂質やイソフラボン類化合物が含まれている場合がある。本発明に用いるには、鉄含量として、典型的に3質量%以上、より典型的に3.5質量%以上6.5質量%以下、更により典型的に4質量%以上6質量%以下含有しているものであればよい。その場合、脂質含量として、5質量%以下が典型的であり、0.5質量%以上3.5質量%以下がより典型的である。また、イソフラボン類化合物含量として、2質量%以下が典型的であり、0.5質量%以下がより典型的である。豆由来素材として上記組成のものを得るには、特に限定されないが、例えば、豆原料の水溶性抽出物に対し、塩析によりタンパク質画分を濃縮する処理を施したり、1種類又は複数種類のグリコシダーゼ酵素により糖質を分解する処理を施したりしたうえ、限外濾過等の分子量分画手段に供することによって調製することができる。その場合、豆原料の水溶性抽出物に対し、塩析処理と酵素処理の両方の処理を施してもよく、その処理順序は、塩析処理が先でも酵素処理が先でも、いずれでもかまわない。グリコシダーゼ酵素としては、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、グルクロニシダーゼ、アラビナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、ガラクタナーゼ、ペクチンリアーゼ等が挙げられる。
【0040】
上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルとしては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、銅、マンガン、豆由来フェリチン鉄以外の鉄等が挙げられる。
【0041】
経口用として適用可能な亜鉛含有素材として、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、パパイヤ抽出物、カキ肉抽出物、亜鉛含有乳酸菌、亜鉛含有酵母などが知られているので、それらを用いればよいが、なかでも亜鉛含有酵母が好ましい。亜鉛を栄養素として酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルは、亜鉛がタンパク質結合型であることなどが要因と考えられるが、生体への吸収性に優れている。
【0042】
経口用として適用可能な銅含有素材として、グルコン酸銅、銅含有乳酸菌、銅含有酵母などが知られているので、それらを用いればよいが、なかでも銅含有酵母が好ましい。銅を栄養素として酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルは、銅がタンパク質結合型であることなどが要因と考えられるが、生体への吸収性に優れている。
【0043】
経口として適用可能なマンガン含有素材として、マンガン含有乳酸菌、マンガン含有酵母などが知られているので、それらを用いればよいが、なかでもマンガン含有酵母が好ましい。マンガンを栄養素として酵母に取り込ませた酵母包含型ミネラルは、マンガンがタンパク質結合型であることなどが要因と考えられるが、生体への吸収性に優れている。
【0044】
経口として適用可能な鉄含有素材として、上記豆由来フェリチン鉄以外にも、豆由来以外のフェリチン鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、鉄含有乳酸菌、鉄含有酵母、ヘム鉄などが知られているので、それらを用いればよいが、なかでもヘム鉄が好ましい。ヘム鉄は、金属イオンのトランスポーターであるDMT1(Divalent Metal Transporter 1)を介した機構や、上記豆由来フェリチン鉄が利用するエンドサイトーシスを介した機構とは異なる、それ以外の機構により吸収されることなどが要因と考えられるが、上記豆由来フェリチン鉄の生体への吸収性を良好に保ったまま、ヘム鉄のそれ自体の鉄によって、鉄の吸収性を相加的に高めることができる。そのヘム鉄としては、例えば、特開平5-244899号公報には、水溶を向上したヘム鉄の製造方法が知られているので、吸収性の観点から、そのような水溶性ヘム鉄を用いることが好ましい。
【0045】
具体的に、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルが亜鉛である場合、飲食品等の経口組成物中に、その亜鉛の含量が、上記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であるようにすることが好ましく、1質量部以上3質量部以下であるようにすることがより好ましい。
【0046】
また、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルが銅である場合、飲食品等の経口組成物中に、その銅の含量が、上記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であるようにすることが好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下であるようにすることがより好ましい。
【0047】
また、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルがマンガンである場合、飲食品等の経口組成物中に、そのマンガンの含量が、上記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であるようにすることが好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下であるようにすることがより好ましい。
【0048】
また、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルが豆由来フェリチン鉄以外の鉄である場合、飲食品等の経口組成物中に、その鉄の含量が、上記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であるようにすることが好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下であるようにすることがより好ましい。
【0049】
また、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルは複数種類であってもよく、亜鉛、銅、マンガン、豆由来フェリチン鉄以外の鉄からなる群から選ばれた1種又は2種以上であってよい。より好ましい態様においては、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルは、亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上である。これらの場合、上記豆由来フェリチン鉄の量に対する、亜鉛、銅、マンガン、及び豆由来フェリチン鉄以外の鉄の量の好ましい範囲は、上記ミネラル種に個別に示した範囲と同様である。ただし、上記豆由来フェリチン鉄と組み合わせるミネラルが、亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上である場合、飲食品等の経口組成物中に、その亜鉛、銅、及びマンガンからなる群から選ばれた2種以上の総含量が、上記豆由来フェリチン鉄に含まれる鉄の含量の1質量部に対して、1質量部以上であるようにすることがより好ましく、2質量部以上であるようにすることが更により好ましい。
【0050】
本発明により提供される経口組成物の形態としては、特に制限はなく任意である。典型的に、例えば、錠剤状、顆粒状、液状、ゼリー状、トローチ状、粉末状、カプセル状、バー状、ペースト状等の各種の剤形上の形態であり得る。また、その際には、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、栄養強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤等の各種の素材を添加してもよい。これら各種の形態への調製や製造は、適宜、当業者に周知の手段で行い得る。
【0051】
本発明により提供される経口組成物は、例えば、健康食品、サプリメント、栄養補助食品、機能性食品、医薬品、医薬部外品、動物用健康食品、動物用サプリメント、動物用栄養補助食品、動物用機能性食品、動物用医薬品、等の各種の製品形態で、あるいはそれら製品と組み合わせて使用されることが可能である。また、一般の飲食品や動物用餌として、あるいは一般の飲食品や動物用餌と組み合わせて使用されることが可能である。
【0052】
一般の食品としては、例えば、チョコレート、ビスケット、ガム、キャンディー、クッキー、グミ、打錠菓子等の菓子類、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓、シリアル、プロテインバー、練り物、缶詰などが挙げられる。
【0053】
なお、本明細書において記載した、鉄、亜鉛、銅、もしくはマンガンの量は、周知の分析方法である、例えば、原子吸光光度法もしくはICP質量分析法の方法で測定することができる。また、脂質の量は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、酸分解法で測定することができる。また、イソフラボン類化合物の量は、特定濃度に調製されたイソフラボン類化合物の標準品を指標にしたHPLC分析法で測定することができる。
【実施例
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
[試験例1]
〔1-1.試料〕
以下に示す試料をラットに経口投与したときのミネラル(鉄、亜鉛、及び銅)の吸収性を検討した。
【0056】
・試料1-1:大豆由来フェリチン鉄(大豆抽出物:フェリチン鉄として10質量%含有、鉄として3質量%含有):SloIron Inc.
・試料1-2:クエン酸鉄:扶桑化学株式会社
・試料1-3:亜鉛含有酵母(亜鉛として10質量%含有):Angel Yeast Co., LTD.
・試料1-4:グルコン酸亜鉛:扶桑化学株式会社
・試料1-5:銅含有酵母(銅として5質量%含有):株式会社オムニカ
・試料1-6:グルコン酸銅:扶桑化学株式会社
【0057】
〔1-2.試験群〕
4週齢のWistar系雄ラットを6群に群分けして(各N数=4)、1日あたりの投与量を下記に示すとおりに設定した。
【0058】
(試験群1-1) ・試料1-1:(鉄として)1mg/日、・試料1-3:(亜鉛として)1mg/日
(試験群1-2) ・試料1-1:(鉄として)1mg/日、・試料1-4:(亜鉛として)1mg/日
(試験群1-3) ・試料1-1:(鉄として)1mg/日、・試料1-5:(銅として)0.5mg/日
(試験群1-4) ・試料1-1:(鉄として)1mg/日、・試料1-6:(銅として)0.5mg/日
(試験群1-5) ・試料1-2:(鉄として)1mg/日、・試料1-3:(亜鉛として)1mg/日
(試験群1-6) ・試料1-2:(鉄として)1mg/日、・試料1-4:(亜鉛として)1mg/日
(試験群1-7) ・試料1-2:(鉄として)1mg/日、・試料1-5:(銅として)0.5mg/日
(試験群1-8) ・試料1-2:(鉄として)1mg/日、・試料1-6:(銅として)0.5mg/日
【0059】
表1には、試験群ごとの投与試料と1日当たりのミネラル投与量をまとめて示す。
【0060】
【表1】
【0061】
〔1-3.動物試験〕
各試料が適当濃度となるように水に溶かした試料液を調製したうえ、ラットに1日1回、試験群ごとの投与量となるように、げっ歯類用経口ゾンデで強制経口投与した。投与期間は1週間とし、その強制投与以外は、ラットに混合餌と水を自由に摂食せるようにして飼育した。なお、ラットに自由摂食させるようにした混合餌の組成中にも、一定濃度のミネラルが含まれている(表2参照)。
【0062】
【表2】
【0063】
1週間後に採血し、測定キット「メタロアッセイ 鉄 測定 LS」(メタロジェニクス株式会社製)を使用して血清鉄の濃度値を測定し、測定キット「メタロアッセイ 銅 測定 LS」(メタロジェニクス株式会社製)を使用して血清銅の濃度値を測定した、また、血清亜鉛ならびに血清マンガンの濃度値を原子吸光分光光度法にて測定した。
【0064】
〔1-4.結果〕
結果を、試験群ごと4例で得られた測定値を平均して、表3及び図1に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群1-1~4では、鉄の血中濃度の値が少なくとも245μg/dLに達していたのに対して、クエン酸鉄を投与した試験群1-5~8では、鉄の血中濃度の値が多くとも132μg/dLにしか達しなかった。
(2)大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群1-1、2では、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が少なくとも142μg/dLに達していたのに対して、クエン酸鉄を投与した試験群1-5、6では、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が多くても103μg/dLにしか達しなかった。
(3)大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群1-3、4では、併用して投与した銅の血中濃度の値が少なくとも98μg/dLに達していたのに対して、クエン酸鉄を投与した試験群1-7、8では、併用して投与した銅の血中濃度の値が多くても67μg/dLにしか達しなかった。
(4)亜鉛や銅について、グルコン酸との塩の形態で行った試験群(試験群1-2、4、6、8)よりも、それらを含有する酵母の形態で行った試験群(試験群1-1、3、5、7)のほうが、血中濃度の値が高かった。
【0067】
以上のとおり、大豆由来フェリチン鉄は、クエン酸鉄に比べて、鉄に関して吸収性が良好であるとともに、併用する亜鉛や銅の吸収性を阻害せず、それらのミネラル栄養成分に関しても、クエン酸鉄に比べて吸収性が良好であった。
これは、クエン酸鉄が、亜鉛や銅と競合してそれらの吸収性を阻害するのに対して、大豆由来フェリチン鉄では、そのような競合が起こらないかその影響が少ないためと考えられた。
【0068】
[試験例2]
〔2-1.試料〕
以下に示す試料をラットに経口投与したときのミネラル(鉄、亜鉛、銅、及びマンガン)の吸収性を検討した。
【0069】
・試料2-1:大豆由来フェリチン鉄(大豆抽出物:フェリチン鉄として10質量%含有、鉄として3質量%含有):SloIron Inc.
・試料2-2:クエン酸鉄:扶桑化学株式会社
・試料2-3:ピロリン酸鉄:富田製薬株式会社
・試料2-4:ヘム鉄(鉄として2質量%含有、水溶性):ILS株式会社
・試料2-5:亜鉛含有酵母(亜鉛として10質量%含有):Angel Yeast Co., LTD.
・試料2-6:銅含有酵母(銅として5質量%含有):株式会社オムニカ
・試料2-7:マンガン含有酵母(マンガンとして5質量%含有):株式会社オムニカ
【0070】
〔2-2.試験群〕
4週齢のWistar系雄ラットを6群に群分けして(各N数=4)、1日あたりの投与量を下記に示すとおりに設定した。
【0071】
(試験群2-1) ・試料2-1:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5m/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
(試験群2-2) ・試料2-2:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5mg/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
(試験群2-3) ・試料2-3:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5mg/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
(試験群2-4) ・試料2-4:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5mg/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
(試験群2-5) ・試料2-1:(鉄として)1mg/日、・試料2-4:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5mg/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
(試験群2-6) ・試料2-1:(鉄として)1mg/日、・試料2-2:(鉄として)1mg/日、・試料2-5:(亜鉛として)1mg/日、・試料2-6:(銅として)0.5mg/日、・試料2-7:(マンガンとして)0.5mg/日
【0072】
表4には、試験群ごとの投与試料と1日当たりのミネラル投与量をまとめて示す。
【0073】
【表4】
【0074】
〔2-3.動物試験〕
試験例1と同様にして試験を行った。
【0075】
〔2-4.結果〕
結果を、試験群ごと4例で得られた測定値を平均して、表5及び図2に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1では、鉄の血中濃度の値が254μg/dLに達していたのに対して、クエン酸鉄を投与した試験群2-2では、鉄の血中濃度の値が118μg/dLにしか達せず、ピロリン酸鉄を投与した試験群2-3では、鉄の血中濃度の値が112μg/dLにしか達しなかった。
(2)大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1では、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が少なくとも137μg/dLに達し、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が少なくとも98μg/dLに達していたのに対して、クエン酸鉄を投与した試験群2-2では、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が98μg/dLにしか達せず、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が62μg/dLにしか達しなかった。また、ピロリン酸鉄を投与した試験群2-3では、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が95μg/dLにしか達せず、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が59μg/dLにしか達しなかった。
(3)ヘム鉄を投与した試験群2-4では、鉄の血中濃度の値が208μg/dLに達していたが、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べると、値は低かった。また、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が110μg/dLにしか達せず、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が72μg/dLにしか達せず、これらについても、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べると、値が低かった。
(4)大豆由来フェリチン鉄とヘム鉄を併用投与した試験群2-5では、鉄の血中濃度の値が299μg/dLに達しており、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べて、更に値が高くなった。しかしながら、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が105μg/dLにしか達せず、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が75μg/dLにしか達せず、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べると、値が低かった。
(5)大豆由来フェリチン鉄とクエン酸鉄を併用投与した試験群2-6では、鉄の血中濃度の値が115μg/dLにしか達せず、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べて、値が低くなった。また、併用して投与した亜鉛の血中濃度の値が97μg/dLにしか達せず、更に併用して投与した銅の血中濃度の値が60μg/dLにしか達せず、大豆由来フェリチン鉄を投与した試験群2-1に比べると、値が低かった。
(6)マンガンについて、試験群2-1で最も血中濃度の値が高かった。
【0078】
以上のとおり、大豆由来フェリチン鉄は、クエン酸鉄やピロリン酸鉄やヘム鉄に比べて、鉄に関して吸収性が良好であるとともに、併用する亜鉛や銅の吸収性を阻害せず、それらのミネラル栄養成分に関しても、クエン酸鉄に比べて吸収性が良好であった。
これは、試験例1で示されたクエン酸鉄についてと同様に、ピロリン酸鉄やヘム鉄についても、亜鉛や銅と競合してそれらの吸収性を阻害するのに対して、大豆由来フェリチン鉄では、そのような競合が起こらないかその影響が少ないためと考えられた。
また、クエン酸鉄は、亜鉛や銅の吸収性だけでなく大豆由来フェリチン鉄による鉄の吸収性とも競合して、これを阻害する作用があることが示された。
一方、ヘム鉄を併用すれば大豆由来フェリチン鉄による鉄の吸収性と競合せず、鉄の吸収性がより良好になった。
【0079】
(処方例1)
表6に示す原材料を混合し、常法に従い、造粒打錠して、250mg/粒の錠剤を作製した。
【0080】
【表6】
図1
図2