(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20230530BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230530BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20230530BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20230530BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230530BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230530BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230530BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/4745
A61K31/52
A61K31/505
A61K31/55
A61K31/7068
A61P35/00
A61P35/04
(21)【出願番号】P 2021546234
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020001753
(87)【国際公開番号】W WO2020162705
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0014756
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0014775
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520448511
【氏名又は名称】プロジェニア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROGENEER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヨン テク
(72)【発明者】
【氏名】シン、ホン シク
(72)【発明者】
【氏名】レン、ロン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02674170(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/102654(WO,A1)
【文献】特表2013-525450(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61P 35/00
A61P 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体であ
って、
前記結合体が、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位にコレステロールが結合した形態であ
り、
前記結合が、分離が可能な形態であり、
前記Toll-like受容体7または8アゴニストが、イミダゾキノリン系、ヒドロキシアデニン系、プテリドン系、アミノピリミジン系、ベンゾアゼピン系およびチアオキソグアノシン系よりなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記分離が可能な結合は、カルバメート、ジスルフィド、エステル、ペプチドおよびアジドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、結合体。
【請求項2】
前記結合体が、腫瘍微小環境、または細胞内のエンドソームおよびリソソームの酵素およびpHに反応して、結合部位の化学的結合が切断され、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位が露出して、4日内に動力学的に機能が回復することを特徴とする、請求項
1に記載の結合体。
【請求項3】
Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含む、ナノ粒子組成物であ
って、
前記結合体が、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位にコレステロールが結合した形態であり、
前記結合が、分離が可能な形態であり、
前記Toll-like受容体7または8アゴニストが、イミダゾキノリン系、ヒドロキシアデニン系、プテリドン系、アミノピリミジン系、ベンゾアゼピン系およびチアオキソグアノシン系よりなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記分離が可能な結合は、カルバメート、ジスルフィド、エステル、ペプチドおよびアジドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、ナノ粒子組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、ナノリポソーム、ナノエマルジョン、ナノミセル、固形ナノ粒子および高分子ナノ粒子よりなる群から選ばれたいずれか1つ以上である
、請求項
3に記載のナノ粒子組成物。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の結合体を有効成分として含む、免疫抗原補強剤(アジュバント)組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載の免疫抗原補強剤組成物および抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項7】
前記抗原が、タンパク質、組換えタンパク質、糖タンパク質、遺伝子、ペプチド、多糖類、脂質多糖類、ポリヌクレオチド、細胞、細胞溶解物(ライセート)、バクテリアおよびウイルスよりなる群から選ばれる1つ以上である
、請求項
6に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
請求項1
または2に記載の結合体を有効成分として含む、免疫機能制御用組成物。
【請求項9】
前記免疫機能制御用組成物が、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)およびT細胞よりなる群から選ばれたいずれか1つ以上の免疫細胞を活性化させることを特徴とする、請求項
8に記載の免疫機能制御用組成物。
【請求項10】
前記免疫機能制御用組成物が、Treg(制御性T細胞)、MDSC(ミエロイド由来サプレッサー細胞)、およびM2マクロファージよりなる群から選ばれたいずれか1つ以上の免疫細胞の機能を調節することを特徴とする、請求項
8に記載の免疫機能制御用組成物。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の結合体を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記薬学的組成物が、化学抗癌剤または免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む
、請求項
11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記薬学的組成物が、癌の増殖、転移、再発または抗癌治療療法に対する耐性を抑制することを特徴とする、請求項
11又は
12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1
または2に記載の結合体の
、癌の予防または治療に用いられる薬剤を生産するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体に関し、より詳しくは、コレステロールがToll-like受容体7または8アゴニストの活性部位と切断可能な部位で化学的に結合した結合体、その用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫反応は、活性化した免疫細胞が外来性および内因性物質、すなわち、抗原に対して起こす一連の反応であり、細菌、ウイルス等を含む微生物、生体の異物等が生体内に流入すると、免疫細胞がこれを認識し活性化して、サイトカイン等の因子を分泌して炎症反応を誘発する。最近では、感染初期に非特異的に作用する先天性免疫反応段階の機序に対する研究が活発に進められており、このうち、Toll-like受容体(Toll-like receptor;TLR)は、炎症初期の病原体を認識し得る遺伝子であり、病原体の原形質膜の構成成分、核酸の構成成分等を認識して免疫反応を誘導すると知られており、これを用いて、免疫細胞を活性化させるための様々なToll-like受容体リガンドに関する研究が活発に進められている。
【0003】
その中で、Toll-like受容体7または8アゴニスト基盤物質は、細胞性免疫反応を誘導する免疫補助剤として使用されており、イミキモド(Imiquimod)、レシキモド(Resiquimod)、ダクトリシブ(Dactolisib)、ガルジキモド(Gardiquimod)、スマニロール(Sumanirole)、モトリモド(Motolimod)、ベサトリモド(vesatolimod)、ロキソリビン(loxoribine)、SM360320、CL264、3M-003、IMDQ、Compound 54等が知られている(米国公開特許2012-0294885)。このようなToll-like受容体7または8アゴニストは、エンドソーム内のToll-like受容体7または8のアゴニストであり、体液性免疫だけでなく、細胞性免疫も、効果的に誘導すると知られている。しかし、このようなToll-like受容体7または8アゴニストは、その分子構造によって水溶液に分散するのに困難がある。また、DMSO、メタノール等のような特殊な有機溶媒にのみ溶解し、一般的に使用されている有機溶剤に溶解しないため、様々な剤形の免疫活性化物質を製造するのに限界点を有している。したがって、様々な界面活性剤を混合したクリーム形態の剤形(例えば、Aldara(登録商標)cream)で商用化されている。一部の研究では、このような問題点を克服するために、塩の形態で製造し、水溶液に溶解させることができるようにしたが、塩の形態で製造されたToll-like受容体7または8アゴニストは、体内で血管に吸収されて、血管内の免疫反応(全身性免疫応答)を誘導することによって、多くの副作用(例えば、サイトカインストーム、色々な非特異的過敏免疫反応等)を誘発するので、使用が容易でない。このような副作用の問題によって、実質的に治療に使用するためには、有効量より少ない濃度を処理しなければならないので、効能低下の要因となることがある。一部の製薬会社では、このような問題点を克服するために、親油性特性を示すリピッドを導入したり、巨大なサイズを有する高分子鎖に直接化学的に結合させることによって、血管に直接吸収されるのを防止するための試みも行われている。しかし、このような方法により製造されたToll-like受容体7または8アゴニストは、その活性部位が依然として外部に露出しているので、体内で非特異的免疫反応を誘導することによって、毒性を誘発できる可能性を依然として持っている。
【0004】
したがって、体内で血管に吸収されないながらも、非特異的免疫反応が抑制された、様々な剤形の形態で製造が可能なToll-like受容体7または8アゴニストが開発されれば、様々な免疫活性化製剤として低い副作用を有し、幅広く使用できるものと期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、Toll-like受容体7または8の免疫活性化機能が一時的に阻害され、それから、腫瘍微小環境またはターゲット細胞内で免疫活性が回復(recovery)するように設計された、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体、その用途等を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、Toll-like受容体7または8アゴニストが実際の臨床で効果的に使用されるために、様々な薬物学的剤形としての応用が可能であり、体内で非特異的免疫反応の誘導、サイトカインストーム等を最小化できる技術に関する。
【0007】
本発明は、免疫活性化機能が阻害され、それから、腫瘍微小環境およびターゲット免疫細胞で活性が回復して免疫活性化効果を示すことができる動力学的に活性制御が可能な(kinetically controlled activity)Toll-like受容体7または8アゴニストの構造体の設計に関する。
【0008】
また、本発明は、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソーム、ナノエマルジョン、ナノミセル、高分子ナノ粒子等に関する。
【0009】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体を含む免疫抗原補強剤(アジュバント)組成物等に関する。
【0010】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体を含む免疫抗原補強剤組成物;および抗原を含むワクチン組成物等に関する。
【0011】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体を含む免疫細胞活性化組成物等に関する。
【0012】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体を含む免疫抑制細胞の機能制御組成物等に関する。
【0013】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体を含む抗癌免疫治療組成物等に関する。
【0014】
また、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体;および抗癌剤、免疫チェックポイント阻害剤等をさらに含む抗癌治療用組成物等に関する。
【0015】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当該技術分野における通常の技術者が明らかに理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体であり、前記結合体は、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位にコレステロールが結合した形態である結合体を提供する。
【0017】
本発明の一具体例において、前記結合は、分離が可能な形態であり、好ましくは、カルバメート、ジスルフィド、エステル、ペプチド、アジド等の切断が可能な形態の化学的結合であるが、腫瘍微小環境、または細胞内のエンドソームおよびリソソームの酵素およびpHに反応して、結合部位の化学的結合が切断され得る形態の結合であれば、これらに制限されない。そして、前記結合が切断されることによって、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位が露出して、4日内に動力学的に機能が回復することを特徴とする。
【0018】
本発明の他の具体例において、前記Toll-like受容体7または8アゴニストは、好ましくは、イミダゾキノリン(imidazoquinoline)系、ヒドロキシアデニン(8-hydroxyadenine)系、プテリドン(pteridone)系、アミノピリミジン、(2-aminopyrimidine)系、ベンゾアゼピン(benzoazepine)系、チアオキソグアノシン(7-thia-8-oxoguanosine)系、それらの誘導体、それらの組合せ等からなり得、より好ましくは、イミキモド(Imiquimod)、レシキモド(Resiquimod)、ダクトリシブ(Dactolisib)、ガルジキモド(Gardiquimod)、スマニロール(Sumanirole)、モトリモド(Motolimod)、ベサトリモド(vesatolimod)、ロキソリビン(loxoribine)、SM360320、CL264、3M-003、IMDQ、Compound 54等であるが、活性部位にコレステロールが化学的に結合して不活性形態を示すことができるToll-like受容体7または8アゴニストであれば、これらに制限されない。
【0019】
また、本発明は、前記結合体を含むナノ粒子組成物を提供する。
【0020】
本発明の一具体例において、前記ナノ粒子は、免疫細胞活性化効果を増加させることを特徴とし、好ましくは、本発明の結合体を含んでいるナノリポソーム、ナノミセル、固形ナノ粒子、ナノエマルジョン、高分子ナノ粒子等であるが、これらに制限されない。前記含んでいるというのは、結合と関係なく、内包されている形態であってもよく、またはナノ粒子の表面に付着している形態であってもよく、またはナノ粒子構造の間に割り込んでいる形態であってもよいが、本発明の結合体を含んでいる形態であれば、これらに制限されない。
【0021】
また、本発明は、前記結合体を含む免疫抗原補強剤組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記免疫抗原補強剤組成物および抗原を含むワクチン組成物を提供する。
【0023】
本発明の一具体例において、前記抗原は、好ましくは、タンパク質、組換えタンパク質、糖タンパク質、遺伝子、ペプチド、多糖類、脂質多糖類、ポリヌクレオチド、細胞、細胞溶解物(ライセート)、バクテリア、ウイルス等であるが、一般的に知られている抗原であれば、これらに制限されない。
【0024】
また、本発明は、前記結合体を有効成分として含む免疫機能制御用組成物を提供する。
【0025】
本発明の一具体例において、前記免疫機能制御用組成物は、腫瘍微小環境で免疫細胞の活性化を誘導したり、免疫抑制細胞の機能を制御することができ、好ましくは、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ等)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞等の免疫活性化を誘導したり、免疫抑制作用をする免疫細胞(Treg;制御性T細胞)、MDSC(ミエロイド由来サプレッサー細胞)、M2マクロファージ等)の機能を調節することによって、体内の免疫機能を調節することができる。
【0026】
また、本発明は、前記結合体を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0027】
本発明の一具体例において、前記薬学的組成物は、一般的に癌の治療に使用されている物質をさらに含むことができ、好ましくは、化学抗癌剤、免疫チェックポイント阻害剤等をさらに含むことができる。前記薬学的組成物は、本発明の結合体を含むことによって、体内の免疫機能を効果的に活性化させることができるので、従来の化学抗癌剤、免疫チェックポイント阻害剤等の効能を増進させることができる。
【0028】
本発明の他の具体例において、前記薬学的組成物は、癌の増殖、転移、再発等を抑制したり、抗癌治療療法に対する耐性を抑制することを特徴とするが、一般的に使用される癌治療方法の一環であれば、これらに制限されない。
【0029】
本発明のさらに他の具体例において、癌は、好ましくは、乳癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、結腸癌、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、すい臓癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、子宮癌、胃癌、骨癌、血液癌等でありうるが、これらに制限されない。
【0030】
また、本発明は、前記結合体を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記結合体を有効成分として含む組成物の癌の予防または治療用途を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記結合体を有効成分として含む組成物の、感染性疾患の予防または治療用途を提供する。
【0033】
また、本発明は、前記結合体の癌の予防または治療に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0034】
また、本発明は、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位にコレステロールを切断可能なリンカーを用いて化学的に結合させる段階を含む、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体の製造方法を提供する。
【0035】
本発明の一具体例において、前記製造方法は、Toll-like受容体7または8アゴニスト、クロロギ酸コレステリル、およびピリジンをジクロロメタンに混合し、反応させる段階を含むことができる。
【0036】
本発明の他の具体例において、前記製造方法は、(a)2-ヒドロキシエチルジスルフィドをテトラヒドロフランに溶解させ、トルエン溶液に添加し、溶解させた後に、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびトリエチルアミンを添加し、溶解させて、ジスルフィドクロスリンク連結基を製造する段階と、(b)前記ジスルフィドクロスリンク連結基およびコレステロールを混合し、反応させて、ジスルフィド-コレステロールクロスリンク連結基を製造する段階と、(c)前記ジスルフィド-コレステロールクロスリンク連結基およびToll-like受容体7または8アゴニストを混合し、反応させる段階と、を含むことができる。
【0037】
本発明のさらに他の具体例において、前記(b)段階での混合は、ジスルフィドクロスリンク連結基とコレステロールを3:1~1:1の質量比で混合することができ、前記(c)段階での混合は、ジスルフィド-コレステロールクロスリンク連結基とToll-like受容体7または8アゴニストを4:1~1:1の質量比で混合することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によるコレステロールが化学的に結合したToll-like受容体7または8アゴニスト(コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体)は、親油性が増加して、血液内に浸透するのを防止できると共に、腫瘍微小環境または免疫細胞内のエンドソームと同じ環境以外の環境では、免疫活性化機能が阻害され、元のToll-like受容体7または8アゴニストの副作用および細胞毒性を顕著に減少させることができる。
【0039】
また、腫瘍微小環境および免疫細胞内に伝達された後に、コレステロールとToll-like受容体7または8アゴニストが徐々に分離して、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位が動力学的に調節(kinetic immune modulation)されることで、長時間持続的にToll-like受容体と反応するので、Toll-like受容体アゴニストを単独で使用する場合よりも、免疫細胞の免疫活性化の持続性を増加させて、治療効果を顕著に増加させることができる。
【0040】
また、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニスト結合体は、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ等)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞等の免疫活性化を誘導することもでき、腫瘍微小環境で免疫抑制作用をする免疫細胞(Treg;制御性T細胞)、MDSC(ミエロイド由来サプレッサー細胞)、M2マクロファージ等)の機能を調節できるので、単独でも抗癌効果を示すことができると共に、免疫チェックポイント阻害剤、化学抗癌剤等と併用投与して、シナジー効果により抗癌効果を顕著に増加させることもできる。
【0041】
それだけでなく、生体膜を構成する基本成分であるコレステロールを基にするので、様々な脂質との組合せを通じてナノエマルジョン、ナノリポソーム、ナノミセル等の様々な剤形で容易に製造することができ、これを通じて、細胞内への伝達力を高めることができるので、本発明は、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体は、様々な剤形で製造できると共に、様々な薬学的組成物に含ませて免疫活性化を誘導することによって、様々な疾患の治療効果を顕著に増加させることができるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体の構造および活性化/不活性化)作用メカニズムを図式化した図である。
【
図2】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストの構造を1H-NMRで検証した結果を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例によるコレステロールが結合したToll-like受容体7または8アゴニストの構造を1H-NMRで検証した結果を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストの構造を15N-HSQCで検証した結果を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例によるコレステロールが結合したToll-like受容体7または8アゴニストの構造を15N-HSQCで検証した結果を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例によるコレステロールが結合したToll-like受容体7または8アゴニストの構造を15N-HSQCで検証した結果を拡大して示す図である。
【
図7】本発明の一実施例によるコレステロールが結合したToll-like受容体7または8アゴニストが細胞内の生理的環境によってコレステロールとToll-like受容体7または8アゴニストに分離される機序を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例によるコレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたToll-like受容体7または8アゴニストが細胞内で生理的環境によってコレステロールから分離される機序を示す図である。
【
図9】コレステロールとToll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子形態を図式化した図である。
【
図10】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体が一定のpHで時間が経つにつれて動力学的に分離されることを確認した結果を示す図である。
【
図11】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体が酵素により時間が経つにつれて動力学的に分離されることを確認した結果を示す図である。
【
図12】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの細胞毒性を確認した結果を示す図である。
【
図13】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの免疫細胞活性化指標(IL-6)を確認した結果を示す図である。
【
図14】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの免疫細胞活性化指標(TNF-α)を確認した結果を示す図である。
【
図15】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体の結合部位で切断が起こるように合成されたChol-R848物質と切断が起こらないように合成されたC18-R848物質による、免疫細胞の活性化の差異を示す図である。
【
図16】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームとレシキモドを生体内に注入した後に、リンパ節に到達する量と滞留時間を確認した結果を示す図である。
【
図17】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの免疫細胞活性化効能および毒性の有無を確認した結果を示す図である。
【
図18】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの腫瘍成長抑制効果および生存率を確認した結果を示す図である。
【
図19】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの腫瘍部位での免疫細胞活性調節能力を確認した結果を示す図である。
【
図20】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームの脾臓での免疫細胞活性調節能力を確認した結果を示す図である。
【
図21】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームと免疫チェックポイント阻害剤との併用投与効果をB16-OVA動物モデルで確認した結果を示す図である。
【
図22】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームと免疫チェックポイント阻害剤との併用投与効果を4T1動物モデルで確認した結果を示す図である。
【
図23】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームと免疫チェックポイント阻害剤との併用投与効果をTC1動物モデルで確認した結果を示す図である。
【
図24】本発明の一実施例によるToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体を含むナノリポソームと化学抗癌剤との併用投与効果を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明においてToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体は、コレステロールグループがToll-like受容体7または8アゴニストの活性部位に切断可能な形態で結合して、免疫活性化機能が一時的に阻害されることを特徴とする(
図1)。前記阻害は、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位の機能が遅延して現れることを意味することもできる。
【0044】
本発明において前記結合体は、腫瘍微小環境および/または細胞内、特にエンドソームおよびリソソームの生理的環境(低pH、酵素、グルタチオン等)により切断が誘導される部位にクロスリンクしている形態であることを特徴とする(
図1)。特に、腫瘍微小環境下では、pH、温度、酸化還元電位、超音波、酵素、磁場、近赤外線等の特定の刺激により切断が起こるように調節できる結合形態を有することもできる。前記結合は、好ましくは、カルバメート、ジスルフィド、エステル、ペプチド、アジド等の結合を形成することができるが、切断可能な形態であれば、これらに制限されない。
【0045】
また、本発明において前記結合体は、腫瘍微小環境および細胞内に存在する様々な酵素、酸性ホスファターゼ、酸性フィロホスファターゼ(Acid phyrophosphatase)、ホスホジエステラーゼ、リン酸化タンパク質ホスファターゼ、ホスファチジンさんホスファターゼ、アリルスルファターゼ、プロテアーゼ、カテプシン、コラーゲナーゼ、アリルアミダーゼ、ペプチダーゼ、酸性リボヌクレアーゼ、酸性デオキシリボヌクレアーゼ、リパーゼ、トリグリセリドリパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、カルボキシエステラーゼ、クルコセレブロシダーゼ(Clucocerebrosidase)、ガラクトセレブロシダーゼ(Galactocerebrosidase)、スフィンゴミエリナーゼ、グリコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-マンノシダーゼ、α-ウコシダーゼ(alpha-ucosidase)、β-キシロシダーゼ、α-N-アセチルヘキソサミニダーゼ、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ、シアリダーゼ、リゾチーム、ヒアルロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ等によりコレステロールとToll-like受容体7または8アゴニストが分離されることもできる。
【0046】
本発明においてToll-like受容体7または8アゴニストは、コレステロールを化学的に結合させることによって、体内で血管に吸収されないように製造することによって、塩形態のToll-like受容体7または8アゴニストが有する短所を克服することを特徴とする。
【0047】
本発明において前記結合体は、様々な脂質性物質、サポニンなど様々な物質と容易に相互作用することによって、ナノリポソーム、ナノミセル、ナノエマルジョンなど様々な剤形で容易に製造されて、免疫細胞内への伝達効率を上げることを特徴とする。
【0048】
本明細書において、「コレステロール(cholesterol)」とは、脂質の一種であり、疎水性性質を有するステロイド系有機物質を総称し、前記コレステロールは、コレステロール構造をベースとする様々な誘導体、コレステロールの一部を化学的に変化させて獲得できる化合物を全部含むことができる。好ましくは、胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸)、ビタミンD、ステロイドホルモン(テストステロン、エストラジオール、コルチゾール、アルドステロン、プレドニゾロン、プレドニゾン)等を含むことができるが、これらに制限されない。また、前記コレステロールは、Toll-like受容体7または8アゴニストを様々な形態のナノ粒子の表面および内部に位置するように助ける物質であり、これと類似した機能をする脂質物質、例えば、リン脂質のような天然の脂質や合成脂質等に代替することもできる。
【0049】
本明細書において、「Toll-like受容体7または8アゴニスト物質(Toll-like receptor 7/8 agonist-based materials)」とは、Toll-like受容体7または8のアゴニストであり、イミダゾキノリン(imidazoquinoline)系、ヒドロキシアデニン(8-hydroxyadenine)系、プテリドン(pteridone)系、アミノピリミジン(2-aminopyrimidine)系、ベンゾアゼピン(benzoazepine)系、チアオキソグアノシン(7-thia-8-oxoguanosine)系よりなる群から選ばれ、前記イミダゾキノリン系化合物は、WO2018196823、WO2011049677、WO2011027022、WO2017102652、WO2019040491等で言及された類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。また、前記ヒドロキシアデニン系化合物は、WO2012080730、WO2013068438、WO2019036023、WO2019035969、WO2019035970、WO2019035971、WO2019035968、CN108948016、US20148846697、WO2016023511、WO2017133683、WO2017133686、WO2017133684、WO2017133687、WO2017076346、WO2018210298、WO2018095426、WO2018068593、WO2018078149、WO2018041763等で言及した類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。前記プテリドン系化合物は、US20100143301、WO2016007765、WO2016044182、WO2017035230、WO2017219931、WO2011057148、CN108794486等で言及した類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。前記アミノピリミジン系化合物は、WO2010133885、WO2012066335、WO2012066336、WO2012067268、WO2013172479、WO2012136834、WO2014053516、WO2014053595、US20180215720、WO2012156498、WO2014076221、WO2016141092、WO2018045144、WO2015014815、WO2018233648、WO2014207082、WO2014056593、WO2018002319、WO2013117615等で言及した類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。前記ベンゾアゼピン系化合物は、WO2007024612、WO2010014913、WO2010054215、WO2011022508、WO2011022509、WO2012097177、WO2012097173、WO2016096778、WO2016142250、WO2017202704、WO2017202703、WO2017216054、WO2017046112、WO2017197624等で言及した類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。前記チアオキソグアノシン系化合物は、WO2016180691、WO2016055553、WO2016180743、WO2016091698等で言及した類型の化合物または製薬学的に許容可能な塩を含み、これらに限定されない。その他にも、PCT/US2009/035563、PCT/US2015/028264、PCT/US2016/020499、WO2015023598、PCT/US2015/039776等で言及したToll-like受容体7または8化合物または製薬学的に許容可能な塩を含むことができ、これらに限定されず、当業者が容易に推測して使用できるToll-like受容体7または8アゴニストの場合を全部含む。
【0050】
本明細書において、「Toll-like受容体7または8アゴニスト」とは、細胞内に伝達されて、エンドソーム内部に受容体を有している「Toll-like受容体3アゴニスト」または「Toll-like受容体9アゴニスト」にも同一概念で適用して、コレステロールと結合体を形成することができ、これらに制限されない。
【0051】
本明細書において、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体は、免疫細胞の免疫機能を調節し、これは、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ等)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞等の免疫活性化を誘導したり、腫瘍微小環境で免疫抑制作用をする免疫細胞(Treg;制御性T細胞)、MDSC(ミエロイド由来サプレッサー細胞)、M2マクロファージ等)の機能を調節して免疫細胞の免疫機能を調節することができ、前記免疫抑制作用をする免疫細胞の機能を調節することは、Treg、MDSC等の作用を抑制したり、個体数を減少させる方法で調節することもでき、MDSCを抗癌免疫機能を誘導する抗原提示細胞に転換する方法で調節することもできる。または、M2マクロファージをM1マクロファージに転換することもできる。
【0052】
本明細書において、併用投与とは、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体と抗原、免疫チェックポイント阻害剤、免疫抗原補強剤、免疫活性化物質、化学抗癌剤など様々な物質と共に投与することであり、その種類および形態には制限がない。
【0053】
本明細書において、化学抗癌剤とは、当業者に知られている癌治療に使用されている化合物であれば、制限がなく、その一例としてパクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、アレンドロネート、ドキソルビシン、シンバスタチン、ヒドラジノクルクミン、アムホテリシンB、シプロフロキサシン、リファブチン、リファンピシン、エファビレンツ、シスプラチン、テオフィリン、シュードモナス外毒素A、ゾレドロン酸、トラベクテジン、シルツキシマブ、ダサチニブ、スニチニブ、アパチニブ、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、シリビニン、PF-04136309、トラベクテジン、カルルマブ、BLZ945、PLX3397、エマクツズマブ、AMG-820、IMC-CS4、GW3580、PLX6134、N-アセチル-l-システイン、ビタミンC、ボルテゾミブ、アスピリン、サリチル酸、インドールカルボキサミド誘導体、キナゾリンアナログ、サリドマイド、プロスタグランジン代謝物、2ME2、17-AAG、カンプトテシン、トポテカン、プレウロチン、1-メチルプロピル、2-イミダゾリルジスルフィド、タダラフィル、シルデナフィル、L-AME、ニトロアスピリン、セレコキシブ、NOHA、バルドキソロンメチル、D、L-1-メチル-トリプトファン、ゲムシタビン、アキシチニブ、ソラフェニブ、ククルビタシンB、JSI-124、抗IL-17抗体、抗グリカン抗体、抗VEGF抗体、ベバシズマブ、アントラサイクリン、タスキニモド、イマチニブ、シクロホスファミド等があるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書において、「免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)」とは、人体が持っている免疫細胞の免疫機能を活性化させて癌細胞と戦うようにする癌治療方法を総称し、その一例として、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4、抗KIR、抗LAG3、抗CD137、抗OX40、抗CD276、抗CD27、抗GITR、抗TIM3、抗41BB、抗CD226、抗CD40、抗CD70、抗ICOS、抗CD40L、抗BTLA、抗TCR、抗TIGIT等があるが、これらに制限されない。
【0055】
本明細書において、前記免疫活性化物質とは、免疫細胞を活性化させる物質を総称し、その一例として、Toll-like受容体アゴニスト、サポニン、抗ウイルス性ペプチド、インフラマソームインデューサー(inflammasome inducer)、NODリガンド、CDSリガンド(cytosolic DNA sensor ligand)、STING(stimulator of interferon genes)リガンド、エマルジョン、アラム(alum)等があるが、これらに制限されない。
【0056】
本明細書において、前記「抗原(antigen)」とは、体内で免疫反応を起こすすべての物質を総称し、好ましくは、病原菌(バクテリア、ウイルス等)、化学物質、花粉、癌細胞、エビ等またはこれらの一部ペプチドまたはタンパク質であり、より好ましくは、癌抗原ペプチドであるが、体内で免疫反応を起こすことができる物質であれば、これらに制限されない。前記抗原は、好ましくは、タンパク質、組換えタンパク質、糖タンパク質、遺伝子、ペプチド、多糖類、脂質多糖類、ポリヌクレオチド、細胞、細胞溶解物(ライセート)、バクテリア、ウイルス等であり得、より好ましくは、癌抗原ペプチドでありうる。前記タンパク質は、抗体、抗体の断片、構造タンパク質、調節タンパク質、転写因子、毒素タンパク質、ホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素の断片、輸送タンパク質、受容体、受容体の断片、生体防御誘導物質、貯蔵タンパク質、移動タンパク質(movement protein)、エクスプロイティブタンパク質(exploitive protein)、レポータータンパク質等でありうる。しかし、生体で抗原として作用して免疫反応を誘導できる物質であれば、これらに制限されない。
【0057】
本明細書において、「ワクチン(vaccine)」とは、生体に免疫反応を起こす抗原を含有する生物学的な製剤であり、感染症の予防のためにヒトや動物に注射したり経口投与することによって、生体に免疫ができるようにする免疫原をいう。前記動物は、ヒトまたは非ヒト動物であり、前記非ヒト動物は、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ヤギ、ヒツジ等を指すが、これらに制限されない。
【0058】
本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明による組成物の投与によって癌、免疫疾患、感染性疾患等の疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0059】
本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明による組成物の投与によって癌、免疫疾患、感染性疾患等の症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0060】
本明細書において、「個体(individual or subject)」とは、本発明の組成物が投与されることができる対象をいい、その対象には制限がない。
【0061】
本明細書において、「癌(cancer)」とは、浸潤によって局部的にそして転移を通じて体系的に拡張できる各種の血液癌、悪性固形腫瘍等を総称する。特にこれらに制限されるものではないが、癌の具体的な例としては、大腸癌、副腎癌、骨癌、脳癌、乳癌、気管支癌、結腸癌および/または直腸癌、胆のう癌、消化管癌、頭頸部癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、神経組織癌、すい臓癌、前立腺癌、副甲状腺癌、皮膚癌、胃癌、甲状腺癌等が含まれる。癌の他の例としては、腺癌、腺腫、基底細胞癌、子宮頸部異形成および上皮内癌、ユーイング肉腫、扁平上皮癌、粘液腺癌、悪性脳腫瘍、毛様性星細胞腫、腸の神経節細胞腫、過形成角膜神経癌、島細胞癌、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性癌様腫、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン様体型、髄様癌、転移性皮膚癌、粘膜神経腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、菌状息肉症、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性およびその他肉腫、卵巣癌、クロム親和性細胞腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、小細胞肺癌、潰瘍性および乳頭状扁平上皮癌、精上皮腫、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫瘍または腎細胞癌、細網肉腫、およびウィルムス腫瘍が含まれる。また、星細胞腫、消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor、GIST)、神経膠腫または神経膠芽腫、腎細胞癌(renal cell carcinoma、RCC)、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma、HCC)、すい臓神経内分泌癌等が含まれる。
【0062】
本明細書において、「感染性疾患(infected disease)」とは、細菌、ウイルス等の異種の生命体による感染によって誘導された病気を総称する。
【0063】
本明細書において、「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」または「ワクチン組成物(vaccine composition)」とは、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟こう剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学的組成物またはワクチン組成物は、ヒトを対象とすることを特徴とする。前記薬学的組成物またはワクチン組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液等の経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。本発明の薬学的組成物またはワクチン組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料等を使用でき、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤等を混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤等を使用することができる。本発明の薬学的組成物またはワクチン組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容可能な担体と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、 エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェハー等の形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投与アンプルまたは多数回投与形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性製剤などで剤形することができる。
【0064】
一方、製剤化に適合した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギン酸、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油等を使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤等をさらに含むことができる。
【0065】
本発明による薬学的組成物またはワクチン組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願に使用された用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学的組成物またはワクチン組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。
【0066】
本発明の薬学的組成物またはワクチン組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含む色々な要因によって多様に変わることができ、前記薬学的組成物の投与量は、患者の状態、体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者が適宜選択することができ、1日0.0001~500mg/kgまたは0.001~500mg/kgで投与することができる。投与は、一日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面においても、本発明の範囲を限定するものではない。本発明による薬学組成物またはワクチン組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤で剤形化することができる。
【0067】
また、本発明によるワクチン組成物は、追加的に、従来知られている「免疫抗原補強剤(アジュバント)」をさらに含むことができる。前記免疫抗原補強剤は、一般的に抗原に対する体液および/または細胞免疫反応を増加させる任意の物質を総称し、当該技術分野に知られているものなら、いずれのものでも制限なしに使用できるが、例えばフロイント完全補助剤または不完全補助剤をさらに含んで、その免疫性を増加させることができる。また、前記ワクチン組成物の場合には、必要に応じて初期用量に引き続いて任意に繰り返された抗原刺激を行うことができる。
【0068】
以下では、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
[実施例1:Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体の合成]
コレステロールが結合(conjugation)した様々なToll-like受容体7または8アゴニスト(イミダゾキノリン(imidazoquinoline)系、ヒドロキシアデニン(8-hydroxyadenine)系、プテリドン(pteridone)系、アミノピリミジン(2-aminopyrimidine)系、ベンゾアゼピン(benzoazepine)系、チアオキソグアノシン(7-thia-8-oxoguanosine)系等)は、反応式1または2のような化学反応により製造され、Toll-like受容体7または8アゴニストの活性部位であるアミン基(NH2)部位とカルバメート、ジスルフィド、エステル、ペプチド、アジド等との結合を形成できるコレステロール誘導体が反応して製造されることができる。前記誘導体は、Toll-like受容体7または8アゴニストの一部を化学的に変化させて得られる類似化合物を総称する。
【0070】
【0071】
前記Rは、脂肪族基または芳香族基を含む側鎖であり、-NH-、-CO-、-CONH-、-CSNH-、-COO-、-CSO-、-SO2NH-、-SO2-、-SO-、-O-等を含むことができる。
【0072】
【0073】
前記Rは、脂肪族基または芳香族基を含む側鎖であり、-NH-、-CO-、-CONH-、-CSNH-、-COO-、-CSO-、-SO2NH-、-SO2-、-SO-、-O-等を含むことができる。
【0074】
(1.1.カルバメート結合を有するレシキモド-コレステロール結合体の合成)
コレステロールが結合(conjugation)したレシキモド(Resquimod;R848)を合成するために、下記反応式3の方法を用いた。より詳しくは、31.4mgのレシキモドに100μLのピリジンを添加し、3mLのジクロロメタンに添加して溶解させた溶液に90.0mgのクロロギ酸コレステリルを1mLのジクロロメタンに添加し溶解させた溶液を1滴ずつゆっくり添加した。その後、4℃で16時間撹拌させて混合物を製造した。そして、前記混合物を常温の温度に合わせた後に、蒸留水を添加して水とジクロロメタン層を分離した後、分離したジクロロメタン層に硫酸ナトリウムを添加し、16時間反応させ、残っている水を除去した。そして、残った溶液は、シリカゲルカラムを用いて精製し、白色粉のコレステロールが結合したレシキモドを取得した。合成に使用されたレシキモドと獲得されたコレステロールが結合したレシキモドの構造は、1H-NMRおよび15N-HSQC(Heteronuclear single quantum coherence spectroscopy)を用いて検証した。レシキモドの構造は、
図2および
図4に示し、コレステロールが結合したレシキモドの構造は、
図3、
図5および
図6に示した。コレステロールが結合したレシキモドが細胞内で生理的環境によってコレステロールから分離されるメカニズムは、
図7に示した。
【0075】
【0076】
(1.2.カルバメート結合を有するイミキモド-コレステロール結合体の合成)
コレステロールが結合(conjugation)したイミキモド(Imiquimod;R837)を合成するために、下記反応式4の方法を用いた。より詳しくは、31.4mgのイミキモドに100μLのピリジンを添加し、3mLのジクロロメタンに添加して溶解させた溶液に90.0mgのクロロギ酸コレステリルを1mLのジクロロメタンに添加し溶解させた溶液を1滴ずつゆっくり添加した。その後、4℃で16時間撹拌させて混合物を製造した。そして、前記混合物を常温の温度に合わせた後に、蒸留水を添加して水とジクロロメタン層を分離した後、分離したジクロロメタン層に硫酸ナトリウムを添加し、16時間反応させ、残っている水を除去した。そして、残った溶液は、シリカゲルカラムを用いて精製し、白色粉のコレステロールが結合したイミキモドを取得した。
【0077】
【0078】
前記R1またはR2は、脂肪族基または芳香族基を含む側鎖であり、-NH-、-CO-、-CONH-、-CSNH-、-COO-、-CSO-、-SO2NH-、-SO2-、-SO-、-O-等を含むことができる。
【0079】
[実施例2:ジスルフィドでクロスリンクしたToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロール結合体の合成]
(2.1.ジスルフィドでクロスリンクしたレシキモドとコレステロール結合体の合成)
コレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたレシキモドを合成するために、下記反応式5の方法を用いた。より詳しくは、1.54gの2-ヒドロキシエチルジスルフィド(2-hydroxyethyl disulfide)を30mLのテトラヒドロフランに添加して溶解させた後に、ホスゲン溶液(15mL、15wt%、トルエン中)に1滴ずつゆっくり添加して、混合物を製造した。そして、前記混合物を25℃で10時間撹拌させた後に、真空状態で溶媒を蒸発させた。そして、2.3gのN-ヒドロキシスクシンイミドをテトラヒドロフランに添加して溶解させた後に、前記混合物と混合し、1.57mLのトリエチルアミンを添加した。そして、40℃で16時間反応させた後に、沈殿物を除去し、真空状態で溶媒を蒸発させた。そして、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した後に、冷ヘキサンで再結晶化し、真空状態で乾燥させて、白色固体の精製されたジスルフィドクロスリンク連結基を獲得した。そして、387mgのコレステロールを10mLのジクロロメタンに添加して溶解させた後に、523mgのジスルフィドクロスリンク連結基を添加し、常温で16時間撹拌させ、シリカゲルカラムを用いてコレステロールとジスルフィドが結合した白色粉のコレステロール-ジスルフィドを精製した。そして、31.4mgのレシキモドと80mgのコレステロール-ジスルフィドを5mLのジクロロメタンに添加し、常温で16時間撹拌させた。そして、撹拌した溶液に蒸留水を添加して水とジクロロメタン層を分離した後、分離されたジクロロメタン層に硫酸ナトリウムを添加し、16時間反応させ、残っている水を除去した。そして、残った溶液は、シリカゲルカラムを用いて精製し、白色粉のコレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたレシキモドを獲得した。
【0080】
【0081】
コレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたレシキモドが細胞内で生理的環境によってコレステロールから分離されるメカニズムは、
図8に示した。
【0082】
(2.2.ジスルフィドでクロスリンクされたイミキモドとコレステロール結合体の合成)
コレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたイミキモドを合成するために、下記反応式6の方法を用いた。より詳しくは、1.54gの2-ヒドロキシエチルジスルフィド(2-hydroxyethyl disulfide)を30mLのテトラヒドロフランに添加して溶解させた後に、ホスゲン溶液(15mL、15wt%、トルエン中)に1滴ずつゆっくり添加して、混合物を製造した。そして、前記混合物を25℃で10時間撹拌させた後に、真空状態で溶媒を蒸発させた。そして、2.3gのN-ヒドロキシスクシンイミドをテトラヒドロフランに添加して溶解させた後に、前記混合物と混合し、1.57mLのトリエチルアミンを添加した。そして、40℃で16時間反応させた後に、沈殿物を除去し、真空状態で溶媒を蒸発させた。そして、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した後に、冷ヘキサンで再結晶化し、真空状態で乾燥させて、白色固体の精製されたジスルフィドクロスリンク連結基を獲得した。そして、387mgのコレステロールを10mLのジクロロメタンに添加して溶解させた後に、523mgのジスルフィドクロスリンク連結基を添加し、常温で16時間撹拌させ、シリカゲルカラムを用いてコレステロールとジスルフィドが結合した白色粉のコレステロール-ジスルフィドを精製した。そして、31.4mgのイミキモドと80mgのコレステロール-ジスルフィドを5mLのジクロロメタンに添加し、常温で16時間撹拌させた。そして、撹拌させた溶液に蒸留水を添加して水とジクロロメタン層を分離した後、分離したジクロロメタン層に硫酸ナトリウムを添加し、16時間反応させ、残っている水を除去した。そして、残った溶液は、シリカゲルカラムを用いて精製し、白色粉のコレステロール-ジスルフィドがクロスリンクしたイミキモドを獲得した。
【0083】
【0084】
前記R1またはR2は、脂肪族基または芳香族基を含む側鎖であり、-NH-、-CO-、-CONH-、-CSNH-、-COO-、-CSO-、-SO2NH-、-SO2-、-SO-、-O-等を含むことができる。
【0085】
[実施例3:コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子の製造]
コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体は、免疫細胞との相互作用を最大化するために、様々なナノ粒子形態で製造されることができる(
図9)。
【0086】
(3.1.コレステロールが結合したレシキモドを含むナノリポソームの製造)
コレステロールが結合したレシキモドを含むアニオン性ナノリポソームを製造するために、1mLのクロロホルムに4mgのDOPC(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine、Avanti)、1.2mgのコレステロールが結合したレシキモド、および1mgのDPPG(1、2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-(1’-rac-glycerol)、Avanti)を添加した後、溶解させて、混合物を製造し、前記混合物をロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸発させて、薄いフィルム形態を製造し、薄いフィルムに2mLのリン酸塩緩衝溶液を添加し、45℃で30分間撹拌させ、チップ超音波破砕機(amplitude:20%、2分)を用いて均質化段階を経て、コレステロールが結合したレシキモドを含むアニオン性ナノリポソームを製造した。コレステロールが結合したレシキモドを含むカチオン性ナノリポソームを製造するために、1mLのクロロホルムに4mgのDOPC、1.2mgのコレステロールが結合したレシキモド、および2mgのジメチオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB;Dimethyldioctadecylammonium bromide)を添加した後、溶解させて、混合物を製造し、前記混合物をロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸発させて、薄いフィルム形態を製造し、薄いフィルムに2mLのリン酸塩緩衝溶液を添加し、45℃で30分間撹拌させ、チップ超音波破砕機(Amplitude:20%、2分)を用いて均質化段階を経て、コレステロールが結合したレシキモドを含むカチオン性ナノリポソームを製造した。
【0087】
(3.2.コレステロールが結合したレシキモドを含むナノエマルジョンの製造)
コレステロールが結合したレシキモドを含むナノエマルジョンを製造するために、1mLのクロロホルムに1mgのDOPC、240μgのコレステロール、240μgのコレステロールが結合したレシキモドを添加した後、溶解させて、混合物を製造した。そして、前記混合物を丸底フラスコに移して入れた後に、ロータリーエバポレーターを用いてクロロホルムを完全に蒸発させて、薄い脂質膜(薄膜)形態を製造した。そして、リン酸塩緩衝溶液2mLにスクアレン(5%v/v)、Tween 80(0.5%v/v)、およびSpan 85(0.5%v/v)を添加して溶解させた後に、前記溶液を脂質膜上に添加し、超音波分散機(Tip sonicator)を用いて1分間分散させ、回転装置(チューブリボルバー)を用いて約2時間撹拌させ、コレステロールが結合したレシキモドを含むナノエマルジョンを製造した後に、使用前まで4℃冷蔵庫に保管した。
【0088】
(3.3.コレステロールが結合したレシキモドおよびサポニンで構成されたナノミセルの製造)
コレステロールが結合したレシキモドおよびサポニンで構成されるナノミセルを製造するために、ホスファチジルコリン:サポニン:コレステロールが結合したレシキモドを5:3:2の重量比で混合した後に、14mg/mLの濃度になるようにエーテルに添加し、溶解させて、脂質を含むエーテル溶液を製造した。そして、サポニンは、1.5mg/mLの濃度で4mLの蒸留水に溶解させた後に、20mLのガラス瓶に入れ、ゴム栓でガラス瓶を塞いだ後に、55℃のウォータージャケットに保管した。そして、1mLの脂質を含むエーテル溶液を注射器ポンプを用いて0.2mL/minの速度でサポニンが含まれているガラス瓶に添加し、2時間撹拌させた。この際、注射器の針の先端は、サポニンを含む水溶液の表面より下方に位置するようにし、喚起のために、2番目の針は、ゴム栓にさしておいた。そして、常温にガラス瓶を移し、3日間撹拌させて安定化させる段階を経て、コレステロールが結合したレシキモドおよびサポニンで構成されたナノミセルを製造した。
【0089】
(3.4.コレステロールが結合したレシキモドで構成された高分子ナノ粒子の製造)
ラクチドとグリコリドの組成比が50:50であるPLGA高分子(Eudragit)60mgを1mLのクロロホルム溶媒に溶かした。5mgのコレステロールが結合したレシキモドを溶媒に添加し、超音波洗浄機(ultrasonic bath、Emerson Model CPX5800H-E)を用いてコレステロール-レシキモド結合体と高分子を溶解させた。そして、2.5%PVA水溶液10mLに前記溶解させた溶液を200μLずつ添加し、超音波分散機(Tip sonicator、Sonics&Materials Model VCX 750)を用いて1分間分散させた。この際、分散機の出力は750ワット、振動強度は20kHz、Amplitudeは20%に設定した。そして、PLGAが溶解した有機溶媒を完全に蒸発させるために、製造された水溶液を600rpmで室温で8時間以上撹拌した。反応しない高分子とコレステロール-レシキモド結合体を除去するために、遠心分離機(Centrifuge、Hanil、Combi-514R)を用いて12,000rpm、12分の条件で遠心分離を実施し、上澄み液を除去した後、超純水10mLを添加し、超音波分散機に30秒間分散させた。上記過程を3回繰り返した後、凍結乾燥方法を使用して乾燥させた後、-20℃で保管した。
【0090】
実施例4:コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子の特性解析および免疫細胞の免疫活性化効果の評価
本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子が細胞内に伝達された後に、細胞質内の酸性条件下でコレステロールとレシキモドが分離されるかを確認した。より詳しくは、実施例3.1と同じ方法でコレステロールが結合したレシキモドを含むナノリポソームを作製した後、作製されたナノリポソーム10μgを37℃のpH5または7のリン酸塩緩衝溶液(phosphate buffered saline;PBS)1mLにそれぞれ添加した。そして、0.5、1、1、5および2日にそれぞれ試料を採取して、分離されたレシキモドの濃度を紫外可視スペクトルを用いて測定した。その結果は、
図10に示した。
【0091】
図10に示されたように、pH7の条件では、レシキモドとコレステロールが分離されなかったが、pH5では、時間が経つにつれてレシキモドがコレステロールから分離されることを確認した。上記結果を通じて、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子は、体内で細胞質に伝達された後に、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールが分離されて、細胞質内で免疫活性化反応を誘導できることを確認することができた。
【0092】
また、pH以外に腫瘍微小環境で存在する特定の酵素により切断されるかを確認するために、実施例3.1と同じ方法でコレステロールが結合したレシキモドを含むナノリポソームを作製した後、30Unitのカルボキシエステラーゼを処理し、37℃で反応させた。そして、コレステロールの切断の有無を確認した。その結果は、
図11に示した。
【0093】
図11に示されたように、腫瘍微小環境の細胞内に存在する特定酵素によりコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体のコレステロールが切断されることを確認した。
【0094】
細胞毒性の有無を確認するために、500ng/mLおよび1,000ng/mLの濃度のリポソーム、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソーム、およびレシキモドをRaw264.7マクロファージ10
4個に100μLずつ処理し、24時間反応させた。そして、CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を用いて細胞生存率を測定した。陰性対照群(コントロール)としては、リン酸塩緩衝溶液を使用して実験を進めた。その結果は、
図12に示した。
【0095】
図12に示されたように、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームは、細胞毒性を示さないと共に、免疫細胞を活性化させて増殖を促進する効果を示すことを確認した。
【0096】
また、免疫細胞の活性化程度を確認するために、500ng/mLおよび1,000ng/mLの濃度のリポソーム、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソーム、およびレシキモドをそれぞれRaw264.7マクロファージ10
6個に1mLずつ処理し、24時間培養した後に、細胞培養液を獲得し、1,500rpmで10分間遠心分離して細胞が除去された上澄み液を獲得した後に、BD OptiEIATMキットを用いてELISA方式で上澄み液内に含まれているIL-6およびTNF-αの濃度を測定した。その結果は、
図13および
図14に示した。
【0097】
図13および
図14に示されたように、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームを処理した実験群においてレシキモドを単独で処理した場合より、IL-6およびTNF-αの分泌量が増加したことを確認し、これを通じて、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノリポソームを使用して、安定的に細胞内で所望の時点にToll-like受容体7または8アゴニストの免疫活性化を誘導することができると共に、免疫活性化程度を増進させることができることを確認した。
【0098】
コレステロールが特定の時点で切られない形態のコレステロール-レシキモドの結合体を対照群として用いて免疫細胞の活性化程度を確認した。より詳しくは、本発明のコレステロール-レシキモド結合体を含むリポソーム(Lipo(Chol-R848))、切断されないコレステロール-レシキモド結合体を含むリポソーム(Lipo(C18-R848))、リポソーム、およびレシキモドをそれぞれBMDC(Bone marrow-derived dendritic cell)とBMDM(Bone marrow-derived マクロファージ)2×10
5cells/mLに濃度別に処理し、24時間培養した。そして、培養液を獲得して490gで5分間遠心分離して上澄み液のみを獲得した後に、BD OptEIA
TMキットを使用してELISA解析を進めた。その結果は、
図15に示した。
【0099】
図15に示されたように、本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体は、細胞質内でコレステロールの切断が誘導されて、免疫細胞を効果的に活性化させるのに対し、コレステロールの切断が誘導されない結合体の場合には、レシキモドの活性部位が露出しないので、免疫細胞を活性化させないことを確認した。上記結果を通じて、本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体は、コレステロールが切断されなかった形態では不活性状態で存在するが、特定の条件でコレステロールが切断されることになると、以後に免疫細胞を効果的に活性化させることで、免疫反応を調節できることを確認することができた。
【0100】
[実施例5:コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体の生体内注入後、リンパ節での免疫活性化および血清での毒性影響度の評価]
コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体が生体内で及ぼす影響を確認するために、in vivo実験を進めた。より詳しくは、コレステロール-レシキモド結合体を含むリポソーム(liposome)またはレシキモド(free drug)を25μg/100μLの濃度でC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射した。そして、1、4、8日後に、マウスからリンパ節を分離し、冷凍セクション(cryosection)を進めた。そして、CD205抗体とCD169抗体を用いてそれぞれ樹状細胞とマクロファージを標識し、蛍光顕微鏡を用いて確認した。その結果は、
図16に示した。
【0101】
図16に示されたように、レシキモドを単独で処理したマウスの場合には、リンパ節で免疫細胞の活性化が誘導されなかったのに対し、コレステロール-レシキモド結合体を含むリポソームを処理したマウスの場合には、リンパノード内で免疫細胞が活性化したことを確認した。
【0102】
また、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体が長時間in vivoで及ぼす影響を確認するために、コレステロール-レシキモド結合体を含むリポソーム(Lipo(Chol-R848))、リポソーム(Liposome)またはレシキモド(R848)を25μg/100μLの濃度でC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射し、15日までそれぞれの処理時間に伴ってリンパ節を獲得した。そして、獲得されたリンパ節は、一次的にハサミを用いて物理的に粉砕した後に、1mg/mL濃度のコラーゲン分解酵素Dを処理し、1時間反応させて2次分解させた後に、70μmストレーナーを用いてろ過した後に、遠心分離機(490g、5分)を使用して細胞と上澄み液を分離した。そして、得られた細胞は、CD11c抗体とCD11b抗体を用いて標識し、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定した。そして、BD FACS Canto IIフローサイトメーターを使用して解析を進めた。そして、分離された上澄み液は、ELISAを用いてサイトカインIL-12の量を測定した。その結果は、
図17aに示した。
【0103】
図17aに示されたように、リポソームまたはレシキモドを単独で処理したマウスでは、免疫細胞の活性化が誘導されなかったのに対し、本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子を処理した実験群の場合には、リンパ節で免疫細胞の数が少しずつ増加すると共に、効果的に活性化して、長期間にわたって安定的にサイトカインが分泌されることを確認することができた。
【0104】
また、in vivoでの毒性を確認するために、コレステロール-レシキモド結合体を含むリポソーム(Lipo(Chol-R848))、リポソーム(Liposome)またはレシキモド(R848)を25μg/100μLの濃度でC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射し、マウスの体重を測定し、それぞれの時間に眼窩静脈から血液を採取した。そして、採取された血液は、遠心分離(4℃、13,000rpm、20分)して血清と血球を分離し、血清を用いてサイトカインの量をELISAで測定した。その結果は、
図17bに示した。
【0105】
図17bに示されたように、レシキモドを単独で処理した実験群では、初期に血清でサイトカインが急激に増加してサイトカインストームが誘導され、これによって、細胞毒性が誘導されて体重が急激に変化したのに対して、本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子の場合には、血清でサイトカインの量が変わらなく、体重の減少も観察されなくて、in vivoで毒性を示さないことを確認した。
【0106】
[実施例6:コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体の抗癌効果の検証]
(6.1.コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体と癌抗原の抗癌効果の検証)
コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体が抗癌効果を示すかを確認するために、B16-OVA黒色腫細胞株とOvalbumin(OVA)抗原を用いて実験を進めた。より詳しくは、B16-OVA細胞株5×10
5個をC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射方法で注入し、腫瘍のサイズが約50mm
3となったときを0日として、0、3、6、9日にリン酸塩緩衝溶液(control)、OVA抗原(OVA)、レシキモドおよびOVA抗原(R848+OVA)、およびコレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームおよびOVA抗原(Lipo(Chol-R848)+OVA)をそれぞれのマウスに腫瘍内注射方法で投与した。OVA抗原は10μg、レシキモドは25μg、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームは25μg(レシキモド基準)を投与した。そして、マウスの生存率および癌のサイズを測定した。その結果は、
図18に示した。
【0107】
図18に示されたように、OVA抗原のみを注射した実験群では、リン酸塩緩衝溶液を注射した対照群と同様に、癌のサイズが急激に増加し、3週以上生存したマウスがなく、レシキモドおよびOVA抗原を注射した実験群では、対照群と比較して癌のサイズが増加する速度が減少したが、依然として癌のサイズが増加することを確認した。その一方で、本発明のコレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子を注射した実験群では、癌がほとんど成長せず、60日後にも約60%以上の生存率を示すことを確認した。
【0108】
また、免疫細胞に及ぼす影響を確認するために、同一に0、3、6、9日にそれぞれPBS、OVA抗原およびナノリポソーム(liposome)、レシキモドおよびOVA抗原(R848)、およびコレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームおよびOVA抗原(Lipo(Chol-R848))を腫瘍内注射方法で投与し、最後の試料を投与して7日後にマウスから腫瘍組織と脾臓を分離した。そして、得られた瘍組織は、ハサミを用いて一次的に粉砕し、粉砕された組織に1mg/mLのコラーゲン分解酵素type Iを処理し、37℃で1時間反応させて、単一細胞で分離した。そして、分離された細胞は、70μmのストレーナーを用いてろ過し、リン酸塩緩衝溶液を用いて洗浄した。獲得された脾臓は、ハサミを用いて一次的に粉砕し、粉砕された組織に赤血球分解バッファーを処理し、37℃で10分間反応させて赤血球を分解した。そして、70μmのストレーナーを用いてろ過し、リン酸塩緩衝溶液を用いて洗浄した。洗浄された腫瘍細胞と脾臓細胞は、抗体を用いて標識した。T細胞は、抗CD4抗体および抗CD8抗体を用いて標識し、2型マクロファージ(M2 マクロファージ)は、抗CD11b抗体および抗CD206抗体を用いて標識し、骨髄由来免疫抑制細胞(ミエロイド由来サプレッサー細胞;MDSCs)は、抗CD11b抗体および抗Gr1抗体を用いて標識し、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、抗NK1.1抗体を用いて標識した。そして、蛍光フローサイトメーターを用いて解析した。その結果は、
図19および
図20に示した。
【0109】
図19および
図20に示されたように、コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体を含むナノ粒子を注入した実験群では、腫瘍組織で抗癌効果を示すCD4
+T細胞、CD8
+T細胞およびナチュラルキラー細胞の数は、有意に増加したのに対し、免疫抑制機能をするM2 マクロファージ、MDSC細胞の数は、有意に減少したことを確認した。
【0110】
(6.2.コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体と免疫チェックポイント阻害剤の併用投与抗癌効果の検証)
コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体と免疫チェックポイント阻害剤の併用投与時の抗癌効果を確認するために、B16-OVA黒色腫細胞株、TC-1肺癌細胞株、4T1乳癌細胞株を用いて実験を進めた。より詳しくは、B16-OVA細胞株、TC-1細胞株、および4T1細胞株を5×10
5個をそれぞれC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射方法で注入し、腫瘍のサイズが約50mm
3になったときを0日として、0、3、6、9日にリン酸塩緩衝溶液(PBS)、抗PD-1および癌抗原(α-PD-1)、抗PD-L1および癌抗原(α-PD-L1)、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームおよび癌抗原(Lipo(Chol-R848))、コレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソーム、抗PD-1および癌抗原(Lipo(Chol-R848)+α-PD-1)、およびコレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソーム、抗PD-L1および癌抗原(Lipo(Chol-R848)+α-PD-L1)を投与した。免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1および抗PD-L1は、0、3、6日に100μg/100μLの濃度で腹腔内注射方法で投与し、残りは、実施例5.1と同じ方法で腫瘍内注射方法で投与した。癌抗原は、B16-OVA動物モデルでは、OVA抗原を使用し、TC-1動物モデルでは、ペプチド基盤抗原を使用し、4T1動物モデルでは、腫瘍細胞のライセートを抗原として使用した。そして、マウスの生存率および癌のサイズを測定した。その結果は、
図21~23に示した。
【0111】
図21に示されたように、B16-OVA動物モデルでは、免疫チェックポイント阻害剤を共に投与した実験群では、腫瘍の成長が顕著に抑制され、10匹のマウスのうち6~7匹のマウスで腫瘍なし(tumor free)が観察されるほどに高い抗癌効果を示すことを確認した。
【0112】
図22に示されたように、TC1動物モデルでも、免疫チェックポイント阻害剤を共に投与した実験群において腫瘍の成長が顕著に抑制され、生存率が増加することを確認した。それだけでなく、肺への転移も抑制されたことを確認した。
【0113】
図23に示されたように、4T1動物モデルでも、免疫チェックポイント阻害剤を共に投与した実験群において腫瘍の成長が抑制され、生存率が増加することを確認した。
【0114】
(6.3.コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体と化学抗癌剤の併用投与抗癌効果の検証)
コレステロール-Toll-like受容体7または8アゴニストの結合体と化学抗癌剤の併用投与時の抗癌効果を確認するために、実施例6.2と同じ方法で4T1動物モデルを製造し、化学抗癌剤であるドキソルビシン(doxorubicin)またはパクリタクセル(paclitaxel)とコレステロール-レシキモドの結合体を含むナノリポソームを併用投与した。そして、2週後に癌のサイズを測定した。その結果は、
図24に示した。
【0115】
図24に示されたように、化学抗癌剤の単独投与群と比較して、併用投与した場合、効果的に癌の成長が抑制されると共に、腫瘍なし(tumor free)マウスの数も増加することを確認した。
【0116】
上記結果を通じて、Toll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体は、血液内に浸透するのを防止できるので、元のToll-like受容体7または8アゴニストの副作用を顕著に減少させることができ、細胞毒性を示さなく、細胞内への伝達力を高めることができると共に、細胞内でコレステロールと効果的に分離されて、Toll-like受容体7または8アゴニストを単独で使用するときより、免疫活性化程度を増加させることができることを確認することができた。また、コレステロールを基とするので、ナノエマルジョン、ナノリポソーム、ナノミセル等の形態で容易に製造できるので、Toll-like受容体7または8アゴニストを免疫活性化治療剤として幅広く使用できると共に、抗原と結合させて免疫抗原補強剤(adjuvant)として使用して前記抗原の免疫反応を増加させることができるものと期待される。また、本発明においてToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体は、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ等)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞等の免疫活性化を誘導すると共に、腫瘍微小環境で免疫抑制作用をする免疫細胞(Treg(制御性T細胞)、MDSC(ミエロイド由来サプレッサー細胞)、M2マクロファージ等)の機能を調節する特性を有していて、様々な抗癌治療のための組成物として活用が期待される。また、特に、免疫チェックポイント阻害剤、化学抗癌剤など従来の抗癌治療用物質と併用投与時に、シナジー効果によって抗癌効果を顕著に増進させることができるので、様々な抗癌治療剤の併用投与にも使用できるものと期待される。
【0117】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のToll-like受容体7または8アゴニストとコレステロールの結合体は、体内に投与時には、不活性状態であるが、以後に腫瘍微小環境および/または細胞内の特定の条件でコレステロールから分離されて活性化するので、非特異的過敏免疫反応等の副作用を低減することができると共に、コレステロールとの結合体であるから、様々な形態の剤形で製造が可能であり、血管への吸収が抑制されて、サイトカインストーム等の副作用も抑制することができる。また、免疫細胞を効果的に調節することによって、単独でも抗癌効果を示すだけでなく、様々な癌治療剤、免疫治療剤等と併用投与することによって、その効果を顕著に増加させることができるので、Toll-like受容体アゴニストを適用できる様々な疾患の治療に効果的に幅広く適用できるものと期待される。