(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】後二輪車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20230530BHJP
B62K 5/027 20130101ALI20230530BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/027
(21)【出願番号】P 2022167511
(22)【出願日】2022-10-19
【審査請求日】2022-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304003837
【氏名又は名称】有限会社藤原ホイル
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久男
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4887829(US,A)
【文献】特開昭61-125973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0098225(US,A1)
【文献】米国特許第9193415(US,B1)
【文献】特表2022-503769(JP,A)
【文献】実開平4-50590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00- 5/10
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(1)に回転自在に支持されたハンドルポスト(3)の回転によって前輪(F)が左右へ操舵され、後輪(R)に車体幅方向に並列する2つの車輪(W,W)を備えた後二輪車両において、
前記フレーム(1)が後方に備える後輪支持部(7,9)と、前記後輪支持部(7,9)に接続されるリンク機構(10)と、前記リンク機構(10)に支持され前記2つの車輪(W,W)を別々に支持する対の車軸(B,B)と、前記リンク機構(10)又は前記後輪支持部(7,9)に支持され駆動力によって軸回り回転する補助車軸(B’)と、前記補助車軸(B’)の軸回り回転を前記対の車軸(B,B)に伝達する駆動力伝達機構(40)とを備
え、
前記駆動力伝達機構(40)は、前記補助車軸(B’)に一体に回転するように取り付けられた対の第1回転部材(41,41)と、前記対の車軸(B,B)にそれぞれ一体に回転するように取り付けられた対の第2回転部材(43,43)と、前記対の第1回転部材(41)と前記対の第2回転部材(43,43)とにそれぞれ巻回された対の無端状部材(42,42)とを備え、
前記対の無端状部材(42,42)は、車両の旋回によって前記補助車軸(B’)と前記対の車軸(B,B)とが平行状態を維持できない場合も前記対の第1回転部材(41,41)から前記対の第2回転部材(43,43)への駆動力の伝達状態を維持できるように変形する後二輪車両。
【請求項2】
前記リンク機構(10)は、車体幅方向に設けられた上部リンクバー(11)及び下部リンクバー(12)と、前記上部リンクバー(11)及び下部リンクバー(12)の両端間をそれぞれ結ぶ対の縦リンクバー(13,13)とを備え、
前記対の車軸(B,B)は前記下部リンクバー(12)に対して軸受ユニット(46)を介して軸回り回転自在に支持されている請求項1に記載の後二輪車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた後二輪車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
後輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた後二輪車両がある。例えば、特許文献1,2の後二輪車両は、車体の前後方向へ伸びるフレームと、フレームの前端に設けられた筒状のセンターポストと、センターポストに取り付けられた前輪用の操舵機構を備えている。操舵機構は、前輪を回転自在に支持するフロントフォーク部材と、センターポストに挿通されるハンドルポストと、操舵ハンドル等から構成されている。また、フレームの後端には、左右の後輪間の車軸を支持する後輪保持部が接続されている。運転者の踏力でクランクペダルを回転させると、チェーンを介して後輪が駆動される。
【0003】
また、電動補助自転車の後二輪車両は、フレームの中央付近に、運転者の踏力をアシストする踏力補助装置が設けられている。運転者の踏力が入力されるクランクペダルが踏力補助装置に接続され、シャフトやチェーンを介して、後輪の左右のタイヤホイールを結ぶ車軸に駆動力が伝達されるようになっている。また、近年は、エンジン等の原動機を備えたバイクにおいても、後二輪車両が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-264875号公報
【文献】特開平10-264872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の後二輪車両では、左右の後輪間の車軸を支持する後輪保持部と、車体のフレームとの間にスイング機構が備えられている。スイング機構を備えた後二輪車両では、交差点やカーブを通過する時に車体を傾斜させることで、左右の後輪が接地した状態を維持しつつ、スムーズな走行が可能である。しかし、後二輪車両では、後輪の2つの車輪はスイングせず、フレームのみがスイングする構成となっている。このため、旋回時の荷重移動が不充分であり、運転条件によっては安定した走りを確保できない場合がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、後輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた後二輪車両において、安定した走りを確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、フレームに回転自在に支持されたハンドルポストの回転によって前輪が左右へ操舵され、後輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた後二輪車両において、前記フレームが後方に備える後輪支持部と、前記後輪支持部に接続されるリンク機構と、前記リンク機構に支持され前記2つの車輪を別々に支持する対の車軸と、前記リンク機構又は前記後輪支持部に支持され駆動力によって軸回り回転する補助車軸と、前記補助車軸の軸回り回転を前記対の車軸に伝達する駆動力伝達機構とを備えた後二輪車両とした。
【0008】
ここで、前記リンク機構は、車体幅方向に設けられた上部リンクバー及び下部リンクバーと、前記上部リンクバー及び下部リンクバーの両端間をそれぞれ結ぶ対の縦リンクバーとを備え、前記対の車軸は前記下部リンクバーに対して軸受ユニットを介して軸回り回転自在に支持されている構成を採用できる。
【0009】
これらの各態様において、前記駆動力伝達機構は、前記補助車軸に一体に回転するように取り付けられた対の第1回転部材と、前記対の車軸にそれぞれ一体に回転するように取り付けられた対の第2回転部材と、前記対の第1回転部材と前記対の第2回転部材とにそれぞれ巻回された対の無端状部材とを備えている構成を採用できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、後輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた後二輪車両において、安定した走りを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2A】この発明の第一の実施形態を示し、直進状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図2B】第一の実施形態を示し、左操舵状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図3A】第一の実施形態を示し、直進状態の後輪を車体後方側から見た側面図
【
図3B】第一の実施形態を示し、左操舵状態の後輪を車体後方側から見た側面図
【
図6A】この発明の第二の実施形態を示し、直進状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図6B】第二の実施形態を示し、左操舵状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図9A】この発明の第三の実施形態を示し、直進状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図9B】第三の実施形態を示し、左操舵状態の後輪を車体前方側から見た側面図
【
図10】第三の実施形態の後輪を示す要部拡大底面図
【
図11】第三の実施形態の後輪を示す要部拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態からなる後二輪車両Cを、図面に基づいて説明する。
図1~
図5は第一の実施形態を、
図6A~
図8は第二の実施形態を、
図9A~
図11は第三の実施形態を示している。各実施形態では、前輪Fに1つの車輪Wを、後輪RL/RRとして車体の幅方向に並列する2つの車輪W,Wを備えた後二輪自転車を例に、この発明を説明している。後二輪自転車は、人力によるペダル操作に伴う駆動力のみで走行する後二輪自転車、あるいは、人力を補助する駆動力としてモータの駆動力を用いる電動補助後二輪自転車を想定しているが、駆動力として人力を用いない原動機付自転車(後二輪タイプの原動機付自転車)やその他のバイク(後二輪タイプのトライク(特定二輪車))等においても、この発明を適用できる。
【0013】
(第一の実施形態)
第一の実施形態の後二輪車両Cの基本構成は、
図1に示すように、車体の前後方向に延びるフレーム1と、フレーム(ダウンチューブ)1の前端に設けられた筒状のセンターポスト(ヘッドチューブ)4と、センターポスト4に取り付けられた前輪用の操舵機構を備えている。操舵機構は、前輪Fを構成する1つの車輪(タイヤホイール)Wを、車軸Aの軸回りに回転自在に支持するフロントフォーク部材5と、フロントフォーク部材5を支持するためにセンターポスト4に挿通されるハンドルポスト3とを備え、ハンドルポスト3の上端には、クランプ部材によって操舵用ハンドル2が接続されている。
【0014】
フレーム1から立ち上がるシートチューブ8の上部にはサドル8aが昇降自在に取り付けられている。サドル8aに座る運転者は、操舵用ハンドル2の両端のグリップ部2aを掴んで操作できるようになっている。また、操舵用ハンドル2の両端には前輪F及び後輪RR/RLに付与する制動力を調整するブレーキレバーが設けられている。運転者が操舵用ハンドル2を左右に回動させることにより、ハンドルポスト3が軸回り回転して前輪Fが左右に操舵される。なお、フロントフォーク部材5は、一般的な前後二輪の自転車と同様に、上方側が1本の軸で構成され、車輪W側は二股に分かれてその先端で車輪Wの車軸Aの両端を支持する構造となっている。
【0015】
また、フレーム1は、その後方にシートステー7とチェーンステー9を一体に備えている。シートステー7は、チェーンステー9の後端から上方へ立ち上がる第1部材7aと、上下方向に向く第1部材7aの途中から後方へ向かって突出する第2部材7bと、シートチューブ8の上端と第1部材7aの上端とを結ぶ第3部材7cとを有している。また、シートステー7は、第1部材7aの下端(チェーンステー9の後端)から後方へ突出する第4部材7dを有している。以下、シートステー7及びチェーンステー9を後輪支持部7,9と総称する。
【0016】
後輪支持部7,9にはリンク機構(スイング機構)10が接続されている。また、リンク機構10には、後輪RR/RLを構成する2つの車輪(タイヤホイール)W,Wを別々に支持する対の車軸B,Bが接続されている。対の車軸B,Bは、連続しない別々の軸で構成されている。さらに、リンク機構10又は後輪支持部7,9には、駆動力によって軸回り回転する補助車軸B’が軸回り回転自在に支持され、その補助車軸B’と対の車軸B,Bとの間には、補助車軸B’の軸回り回転を対の車軸B,Bに伝達する駆動力伝達機構40が設けられている。後輪支持部7,9に取り付けられるこれらの装置、すなわち、リンク機構10、車軸B,B、補助車軸B’、後輪RR/RLの2つの車輪W,W、駆動力伝達機構40等によって、後輪ユニットUを構成している。
【0017】
リンク機構10は、車体幅方向に設けられた上部リンクバー11及び下部リンクバー12と、上部リンクバー11及び下部リンクバー12の両端間をそれぞれ結ぶ対の縦リンクバー13,13とを備えている。下部リンクバー12は、上部リンクバー11よりも下方に設けられている。
【0018】
上部リンクバー11は、車体幅方向に向けて配置される長手状部材である。上部リンクバー11は、後輪支持部7,9に対して揺動軸15を介して、その揺動軸15の軸周りに揺動自在である。実施形態では、揺動軸15は、後輪支持部7の第2部材7bに固定され、上部リンクバー11の長手方向中央に貫通している。上部リンクバー11は、揺動軸15の軸回りに揺動自在である。ここで、フレーム(第2部材7b)に不動の揺動軸15と上部リンクバー11との間に軸受を配置してもよいし、揺動軸15と上部リンクバー11とを一体として、フレーム(第2部材7b)と揺動軸15との間に軸受を配置してもよい。
【0019】
下部リンクバー12は、車体幅方向に向けて配置される長手状部材である。下部リンクバー12は、後輪支持部7,9に対して揺動軸18を介して、その揺動軸18の軸周りに揺動自在である。実施形態では、揺動軸18は、後輪支持部7の第2部材7bの下端に固定され、下部リンクバー12の長手方向中央に貫通している。揺動軸18のフレーム(第2部材7b)への支持構造は、揺動軸15と同様とできる。
【0020】
対の縦リンクバー13,13は、その上下端がそれぞれ上部リンクバー11及び下部リンクバー12の両端にピン接続され、上部リンクバー11、下部リンクバー12及び対の縦リンクバー13,13とで、四節クランク機構を構成している。例えば、第2部材7bが鉛直方向に向いているとした場合、四節クランク機構は、上部リンクバー11の車体幅方向右端が上昇すれば車体幅方向左端が下降し、上部リンクバー11の車体幅方向右端が下降すれば車体幅方向左端が上昇するように変形する。このとき、下部リンクバー12は、上部リンクバー11との平行状態を維持しながら移動する。
【0021】
対の車軸B,Bは、リンク機構10に対して、それぞれ軸受ユニット46を介して軸回り回転自在に支持されている。また、軸受ユニット46は、
図4に示すように、ハウジングの内部に転がり軸受46aを2つ並列して備え、2つの車軸B,Bと一体に回転する回転軸47を軸回り回転自在に支持する構成となっている。この実施形態では、軸受ユニット46のハウジングは、リンク機構10の下部リンクバー12の両端に支持されているが、これを、縦リンクバー13の下端に支持させてもよい。
【0022】
補助車軸B’は、リンク機構10又は後輪支持部7,9に固定された補助車軸支持部44によって、軸回り回転自在に支持されている。この実施形態では、補助車軸支持部44は下部リンクバー12に固定されている(
図4の底面図及び
図5の側面図参照)が、これを縦リンクバー13の下端に固定してもよいし、後輪支持部7,9に固定してもよい。
【0023】
この実施形態の補助車軸支持部44は、
図5に示すように、下部リンクバー12から前方に突出して設けられた板状部材からなる第1支持部材44eと、その第1支持部材44eに対してボルト及びナット等からなる固定手段44aによって固定された断面L字状の第2支持部材44fとで構成されている。補助車軸B’と一体に回転する回転軸45は、第2支持部材44fにボルト及びナット等からなる固定手段44bによって固定された第3支持部材44cに対して、軸受48を介して軸回り回転自在に支持されている。
【0024】
なお、リンク機構10は、車輪W,Wからフレーム1への衝撃を緩和するサスペンションとしてばね機構を備えていてもよい。ばね機構として、例えば、上部リンクバー11と下部リンクバー12の両端間を結ぶ左右一対のコイルバネを採用できる。各コイルバネの両端を、上部リンクバー11と下部リンクバー12の両端にそれぞれピン接合して、左右のばね機構、上部リンクバー11及び下部リンクバー12で四節クランク機構を構成することができる。
【0025】
また、駆動力伝達機構40は、補助車軸B’に一体に回転するように取り付けられた対の第1回転部材41,41と、対の車軸B,Bにそれぞれ一体に回転するように取り付けられた対の第2回転部材43,43と、対の第1回転部材41の一方と対の第2回転部材43の一方、及び、対の第1回転部材41の他方と対の第2回転部材43の他方とにそれぞれ巻回された対の無端状部材42,42とを備えている。この実施形態では、無端状部材42としてベルトを採用し、第1回転部材41及び第2回転部材43としてプーリを採用しているが、無端状部材42は実施形態のようなベルトに限定されず、チェーン等の他の部材を採用してもよい。無端状部材42としてチェーンを採用する場合、第1回転部材41及び第2回転部材43にはスプロケットを採用できる。
【0026】
また、実施形態では、クランクペダル55が接続された前スプロケット51、及び、補助車軸B’に一体に回転するように取り付けられた後スプロケット52との間に、無端状のチェーン53が巻回されているが、このチェーン53を無端状のベルトとし、前スプロケット51及び後スプロケット52をプーリとしてもよい。
【0027】
運転者の踏力でクランクペダル55を回転させると、その駆動力によって、前スプロケット51、後スプロケット52及びチェーン53を介して補助車軸B’が回転する。前スプロケット51は、クランクペダル55の回転軸54と一体に回転し、後スプロケット52は、補助車軸B’と一体に回転する。また、補助車軸B’が回転すると、第1回転部材41,41、無端状部材42,42、第2回転部材43,43を介して対の車軸B,Bがそれぞれ回転して、後輪RL/RRの2つの車輪W,Wがそれぞれ回転する。これにより、後二輪車両Cが走行する。
図2A以降の各図中の符号62は、ブレーキディスクである(ブレーキパッド及びブレーキキャリパ等は図示せず)。ブレーキディスク62は、両方の車輪W,Wにそれぞれ設けられている。
【0028】
また、運転者が行う操舵用ハンドル2の操作により、ハンドルポスト3が軸回り回転すると、前輪Fの車輪Wが向きを変えて操舵が行われる。このとき、運転者の操舵方向への荷重移動(右操舵の場合は右方向への重心移動/左操舵の場合は左方向への重心移動)により、後輪RL/RRの車輪W,Wに対して、フレーム1及び後輪支持部7,9を左右へスイングさせることができる。
【0029】
図2A(後輪を車体前方側から見た図)及び
図3A(後輪を車体後方側から見た図)は後二輪車両Cが直進する中立状態、
図2B(後輪を車体前方側から見た図)及び
図3B(後輪を車体前方側から見た図)は左旋回状態を示している。
【0030】
例えば、運転者が操舵用ハンドル2を右へ操作した場合(右旋回しようとした場合)、フレーム1及び後輪支持部7,9の右側への傾斜に伴って、下部リンクバー12が左方向へ押し出され、逆に上部リンクバー11が右方向に押し出される方向にリンク機構10が変形する。これにより、フレーム1及び後輪支持部7,9を速やかに右方向へ傾斜させ、運転者の重心移動を促進して車両の右旋回をスムーズにする。このとき、後輪RL/RRの車輪W,Wも、その上端が下端よりも右方向になるように傾斜するので、運転者の重心移動がさらにスムーズである。
【0031】
また、例えば、運転者が操舵用ハンドル2を左へ操作した場合(左旋回しようとした場合)、
図2B及び
図3Bに示すように、フレーム1及び後輪支持部7,9の左側への傾斜に伴って、下部リンクバー12が右方向へ押し出され、逆に上部リンクバー11が左方向に押し出される方向にリンク機構10が変形する。これにより、フレーム1及び後輪支持部7,9を速やかに左方向へ傾斜させ、運転者の重心移動を促進して車両の左旋回をスムーズにする。このとき、後輪RL/RRの車輪W,Wも、その上端が下端よりも左方向になるように傾斜するので、運転者の重心移動がさらにスムーズである。このため、適切な車体の傾斜によって安定した走りを確保できるようになる。
【0032】
ここで、中立状態では、補助車軸B’の軸方向と対の車軸B,Bの各軸方向とが平行であるのに対し(
図2A及び
図3A参照)、旋回時には、補助車軸B’の軸方向と対の車軸B,Bの各軸方向とは、平行状態を維持できない(
図2B及び
図3B参照)。すなわち、第1回転部材41,41と第2回転部材43,43とは捩じれた状態となる。しかし、無端状部材42,42は、それぞれその捩じれに対応して適宜変形し、第1回転部材41,41から第2回転部材43,43への駆動力の伝達状態を維持できるので、後二輪車両Cの走行を継続できる。
【0033】
なお、この実施形態では、上部リンクバー11を、全長に亘って連続する一つの部材で構成しているが、これを左右に分割して、車体幅方向一方側(運転者から見て右側)に配置される第1上部リンクバーと、車体幅方向他方側(運転者から見て左側)に配置される第2上部リンクバーとに分割して構成してもよい。また、下部リンクバー12も、実施形態では全長に亘って連続する一つの部材で構成しているが、これを左右に分割して、車体幅方向一方側(運転者から見て右側)に配置される第1下部リンクバーと、車体幅方向他方側(運転者から見て左側)に配置される第2下部リンクバーとに分割して構成してもよい。これは、後述の各実施形態においても同様である。
【0034】
(第二の実施形態)
この発明の第二の実施形態を
図6A、
図6B、
図7及び
図8に基づいて説明する。後二輪車両Cの基本構成は第1の実施形態と同様であるので、以下、第一の実施形態との差異点である補助車軸B’の支持構造等を中心に説明する。
【0035】
この実施形態では、補助車軸B’は、後輪支持部7,9に固定された補助車軸支持部44によって、軸回り回転自在に支持されている(
図7及び
図8参照)。この実施形態では、補助車軸支持部44は、後輪支持部7,9の後端に揺動自在に支持されている。
【0036】
対の車軸B,Bは、リンク機構10に対して、それぞれ軸受ユニット46を介して軸回り回転自在に支持されている。また、軸受ユニット46は、
図7に示すように、ハウジングの内部に転がり軸受46aを2つ並列して備え、2つの車軸B,Bと一体に回転する回転軸47を軸回り回転自在に支持する構成となっている。この実施形態では、軸受ユニット46のハウジングは、リンク機構10の下部リンクバー12の両端に支持されているが、これを、縦リンクバー13の下端に支持させてもよい。
【0037】
この実施形態の補助車軸支持部44は、
図7及び
図8に示すように、板状部材からなる第1支持部材44eと、その第1支持部材44eに対して前方へ突出するように設けられた軸状の第2支持部材44fとで構成されている。第1支持部材44eは、車体の幅方向に沿って設けられ、下部リンクバー12に対して、上下方向に配置された対の連結部材44jによって支持されている(
図6A及び
図6B参照)。下部リンクバー12と連結部材44j、及び、第1支持部材44eと連結部材44jは、それぞれピン44h,44iを介して回動自在に接続されている。また、第1支持部材44eは、後輪支持部7,9を構成するシートステー7とチェーンステー9との接続部から下方へ向かって突出する第5部材7fに、軸受7gを介して揺動自在に支持されている。第5部材7fは、後方へ向かって突出する支持部7eを備え、その支持部7eに軸受7gを介して第1支持部材44eが嵌合し、車体後方側からねじ込まれたナット7hによって保持されている。補助車軸B’と一体に回転する回転軸45は、第2支持部材44fに対して、軸受48を介して軸回り回転自在に支持されている。
【0038】
この実施形態では、無端状部材42としてベルトを採用し、第1回転部材41及び第2回転部材43としてプーリを採用しているが、無端状部材42としてチェーン等の他の部材を、また、第1回転部材41及び第2回転部材43にスプロケットを採用できる点は、他の実施形態と同様である。
【0039】
(第三の実施形態)
この発明の第三の実施形態を
図9A、
図9B、
図10及び
図11に基づいて説明する。この実施形態においても、補助車軸B’は、同じく後輪支持部7,9に固定された補助車軸支持部44によって、軸回り回転自在に支持されている(
図10及び
図11参照)。軸受ユニット46の構成は、前述の各実施形態と同様である。
【0040】
この実施形態では、補助車軸支持部44は、後輪支持部7,9(チェーンステー9)の後端に対して、車体幅方向両側へ突出する第4支持部材44kと、その第4支持部材44kに対して下方へ突出するように固定された板状部材からなる第5支持部材44mとで構成されている。補助車軸B’と一体に回転する回転軸45は、第5支持部材44mに対して、軸受48(図示せず)を介して軸回り回転自在に支持されている。
【0041】
また、この実施形態では、無端状部材42としてチェーンを、また、第1回転部材41及び第2回転部材43にスプロケットを採用しているので、そのチェーンの弛みを調整するチェーンテンショナ49を備えている。
【0042】
チェーンテンショナ49は、
図11に示すように、第5支持部材44mに対して上下方向へ揺動自在に支持されたアーム49bと、そのアーム49bの揺動端に回転自在に設けられた小スプロケット49aと、アーム49bの揺動端を、無端状部材42側へ引き寄せるように付勢する弾性部材49cとを備えた構成となっている。このようなチェーンテンショナ49の設置は、省略することもできる。
【0043】
上記の各実施形態では、シートステー7及びチェーンステー9で後輪支持部7,9を構成したが、後輪支持部7,9の形態は、車両の仕様に応じて種々の態様を採用できる。
【0044】
また、上記の各実施形態では、後二輪自転車を例にこの発明の内容を説明したが、これ以外にも、例えば、運転者の踏力をモータの駆動力によって補助する踏力補助装置を備えた電動補助自転車(後二輪タイプの電動補助自転車)、原動機付自転車(後二輪タイプの原動機付自転車)、その他のバイク(後二輪タイプのトライク(特定二輪車))等、フレーム1が左右へスイング可能な各種の後二輪車両Cにおいても、この発明を適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 フレーム
2 操舵用ハンドル
3 ハンドルポスト
4 センターポスト
7,9 後輪支持部
10 リンク機構(スイング機構)
11 上部リンクバー
12 下部リンクバー
13 縦リンクバー
40 駆動力伝達機構
41 第1回転部材
42 無端状部材
43 第2回転部材
B 車軸
B’補助車軸
C 後二輪車両
【要約】
【課題】後二輪車両における停車時の転倒を防止し、安定した走りを確保する。
【解決手段】フレーム1に回転自在に支持されたハンドルポスト3の回転によって前輪Fが左右へ操舵され、後輪Rに車体幅方向に並列する2つの車輪W,Wを備えた後二輪車両において、フレーム1が後方に備える後輪支持部7,9と、後輪支持部7,9に接続されるリンク機構10と、リンク機構10又は後輪支持部7,9に支持され2つの車輪W,Wを別々に支持する対の車軸B,Bと、駆動力によって軸回り回転する補助車軸B’と、補助車軸B’の軸回り回転を対の車軸B,Bに伝達する駆動力伝達機構40とを備えた後二輪車両とした。
【選択図】
図1