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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】伝導型溶着
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B29C65/20
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020514514
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018074655
(87)【国際公開番号】W WO2019053086
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】1714799.2
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502402146
【氏名又は名称】フォッカー エアロストラクチャーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン インゲン, ヤープ ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ドルデルサム, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】テウニセン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オフリンガ, アーント
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/116567(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0018419(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102379034(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0044922(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0068662(US,A1)
【文献】国際公開第2013/122083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化熱可塑性樹脂系材料の為の溶着装置において、
前記溶着装置は、細長い可撓性熱伝導性ストリップと、
前記熱伝導性ストリップの周囲の少なくとも一部分付近に延びる細長いヒートシンクと、
を備え、
前記細長いヒートシンクは、複数のセグメントに分かれ、隣接したセグメントは、互いに移動可能である、溶着装置。
【請求項2】
前記細長い可撓性導電性ストリップは、細長い金属ストリップ形式である、請求項1に記載の溶着装置。
【請求項3】
前記細長いヒートシンクは、裏張り部分と、前記裏張り部分から伸びる一対の側部分とを備え、前記側部分および前記裏張り部分の間に空洞を画成する、請求項1または2に記載の溶着装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクは、前記裏張り部分を通って、前記側部分の遠位部分を備えた各側部分の長さの少なくとも一部分に沿って延びるスロットによって、複数のセグメントに分割される、請求項3に記載の溶着装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、前記裏張り部分を通って、各側部分の全長に沿って延びるスロットによって複数のセグメントに分割される、請求項3に記載の溶着装置。
【請求項6】
前記可撓性ヒート導電性ストリップは、複数のセグメントに分割される、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項7】
各側部分の遠位端部は、縁部を画成し、前記縁部は、前記ヒートシンクの長さに沿って延び、繊維強化樹脂系材料の表面に接触する為に使用されるように配置される、請求項3~6のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項8】
前記側部分の前記遠位端部間に画成された隙間が、前記細長い可撓性ストリップを受容する為に隙間を画成する、請求項3~7のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項9】
電気絶縁体が前記細長い可撓性ストリップと前記ヒートシンクの隣接した部分との間に配列される、請求項8に記載の溶着装置。
【請求項10】
前記ヒートシンクの前記側部分の前記遠位端部は、段状プロファイルを有し、前記細長い可撓性ストリップの表面が前記段状プロファイルの表面に位置合わせし、前記細長い可撓性ストリップの垂直側部が前記段状プロファイルの側部に位置合わせする、請求項8または9に記載の溶着装置。
【請求項11】
前記細長い可撓性ストリップの一部分は、前記裏張り部分から測定された前記ヒートシンクの最も遠位の限度を超えて伸びる、請求項7~10のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項12】
前記空洞には、細長い熱源が設けられ、前記熱源は、前記装置の長さの少なくとも一部分に沿って伸びる、請求項3~11のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項13】
前記熱源は、電気誘導コイルまたは電気抵抗加熱素子である、請求項12に記載の溶着装置。
【請求項14】
前記溶着装置は、導電体を更に備え、前記導電体は、前記導電体の第1側部に第1電気絶縁体と、対向する前記導電体の第2側部に第2電気絶縁体とを更に備える、請求項13に記載の溶着装置。
【請求項15】
前記導電体の前記第1側部は、前記細長い可撓性ストリップに面し、前記導電体の反対側の側部は、前記ヒートシンク内部の空洞に面し、前記空洞の内部で受容されるように配置される、請求項14に記載の溶着装置。
【請求項16】
前記細長いヒートシンク、細長い可撓性ストリップ、電気導体および電気絶縁体を受容するように配置されたブラインド窪みを備えたハウジングを更に備える、請求項15に記載の溶着装置。
【請求項17】
前記窪みは、膨張可能なホースを前記凹部の内部に更に備え、膨張の際に配置されて、前記ヒートシンクの裏張り部分に抗して力を加える、請求項16に記載の溶着装置。
【請求項18】
断熱材が、前記ヒートシンクの前記裏張り部分と前記膨張可能なホースとの間に配列される、請求項17に記載の溶着装置。
【請求項19】
加熱は、溶着温度を検出するように配置された一つ又は複数の温度センサに応じて制御される、請求項1~18のいずれか一項に記載の溶着装置。
【請求項20】
第1熱可塑性コンポーネントを第2熱可塑性コンポーネントに溶着する方法において、
前記溶着装置は、
細長い可撓性熱伝導性ストリップと、
前記熱伝導性ストリップの周囲の少なくとも一部分の付近に伸びる細長いヒートシンクと、
を備え、
前記細長いヒートシンクは、複数のセグメントに分割され、隣接したセグメントは、互いに移動可能であり、
前記方法は、
前記溶着装置を前記第1コンポーネントに接触させるステップと、
前記ヒートシンクおよび可撓性熱伝導性ストリップが変形し、前記ストリップおよびヒートシンクが前記第1コンポーネントの表面プロファイルに位置合わせするように力を加えるステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
熱可塑性ベース材料の為の溶着装置において、
前記溶着装置は、
可撓性の細長い熱伝導性ストリップと、
前記細長いストリップの最長縁部から横に伸びる関連したヒートシンクと、
を備え、
前記ヒートシンクは、前記ストリップの長さに沿って変形可能であり、使用時に、溶着される熱可塑性ベース材料の変形に位置合わせする、溶着装置。
【請求項22】
熱可塑性ベース材料の為の溶着装置であって、
前記溶着装置は、
可撓性の細長い熱伝導性ストリップと、
溶着される積層面に、第1方向で熱を向けるように配置された関連付けられた熱源と、
前記細長いストリップの最長縁部から横に伸び、前記積層面から熱を集め、反対の第2方向に熱を伝えるように配置されたヒートシンクと、
を備え、
前記ヒートシンクは、前記ストリップの長さに沿って変形可能であり、使用中、溶着される熱可塑性ベース材料の変形と位置合わせする、溶着装置。
【請求項23】
請求項1~19のいずれか一項に記載の溶着装置を備えたコンピュータ制御ロボットアームまたはシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のコンピュータ制御ロボットアームまたはシステムを操作する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
本発明は、複合積層体を接続し、具体的には、溶着するための改良された溶着装置および方法に関する。
【0002】
現在、複合積層体は、自動車および航空宇宙産業で広く使用されており、最小限の重量で強力な構造を与える。パネルや補強リブのような複合構造体は、リベット、ナット、ボルトのような慣例的カップリングを含む様々な方法で結合できる。
【0003】
これらの形式のカップリングの必要性を都合良く省き、複合部品を直接一緒に溶着することを含む代替方法が進化した。これらの溶着技術は、複合材料内の樹脂が軟化して溶着し始める温度まで、積層体材料の部分を加熱することを含む。次に、一定期間にわたって圧力が加えられ、それぞれのコンポーネントの樹脂が一緒に溶着する。熱と圧力を除去すると、コンポーネントが冷却され、樹脂がリセットされて、2つ(または、それ以上)のコンポーネントが一緒に固定される。
【0004】
多くの用途において、特定用途の要件を満たすには、単純な溶着プロセスで十分である。しかしながら、安全要件が厳しい用途では、慣例的な溶着技術は信頼できなくなる。具体的には、慣例的な技術では、剥離(複合構造体内部の層の分離)または空洞を含む可能性のある不均一な溶着が発生し得る。これらの欠陥は、コンポーネントの表面に表示されない場合があり、溶着領域上または溶着領域周囲に歪みがある場合がある。
【0005】
内部および表面欠陥は、複合コンポーネントが航空機の構造コンポーネントまたは空力コンポーネントを形成する航空宇宙産業などの用途で特に懸念される。その結果として、航空宇宙産業の厳しい要件により、これらの欠陥の為に積層体溶着の使用が制限される。
【0006】
本発明者らは、複合部品を確実に互いに溶着することを可能にする、慣例とは異なる溶着方法および装置を考案した。この技術と方法は、複雑なジオメトリの溶着を可能にし、さらに、局所的な厚さの変化と浅い傾斜路に適合できる。それにより、空洞および層間剥離のない溶着を達成することができ、それは、航空宇宙(および他の)用途において、溶着の美観および構造的完全性の両方に関して非常に望ましい。これは、特に航空宇宙産業の炭素繊維コンポーネントから形成された一次構造体の場合である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様は、添付された特許請求の範囲に記載されている。
【0008】
第1の態様から見ると、繊維強化熱可塑性樹脂ベースの材料のための溶着装置が提供されるが、溶着装置は、細長い可撓性熱伝導ストリップと、伝導性ストリップの周囲の少なくとも一部の周りに延びる細長いヒートシンクとを備え、細長いヒートシンクは、複数のセグメントに分割され、隣接するセグメントは、互いに移動することができる。
【0009】
したがって、本書で説明する発明によれば、伝導加熱に剛体を使用する慣例的アプローチを採用する代わりに、変形された可撓性ストリップが使用される。可撓性ストリップは、適切に加圧されていれば、局部的な厚さの変化や浅い傾斜路であっても追従することができ、均一な溶着圧力を生成し、空洞の無い溶着を実現できる。
【0010】
都合の良いことに、ヒートシンクは、溶着領域の隣りに加えられて積層体から熱を引き出す。ヒートシンクがあるため、加圧ゾーンの積層体は溶融温度未満のままである。これにより、層間剥離が回避され、空洞が発生しなくなる。
【0011】
本発明は、慣例的な溶着技術に勝る幾つかの驚くべき技術的および商業的利点を与える。たとえば、熱可塑性部品の溶着により、留め具の数を大幅に減らすことができ、これにより、接合されたコンポーネントの重量を減らし、また、組立コストを最大で30%節約できる。
【0012】
さらに、本書で説明する溶着アプローチは、他の技術的利点を与える。
【0013】
・柔軟な加熱工具を使用した熱可塑性複合部品の堅牢な溶着により、典型的な部品の厚さ公差と小さな隙間に適合できる。
【0014】
・金属製落雷メッシュで覆われた炭素複合積層体の堅牢な溶着も可能である。
【0015】
・狭い空間で溶着でき、ロボットのエンドエフェクタとして設置できる小さな溶着工具を使用した溶着。
【0016】
・片側からの加熱および加圧は、OML表面が滑らかで正確なままであることを意味する(OML側の剛性工具)。
【0017】
前述したように、可撓性熱伝導ストリップと併せて可撓性ヒートシンクを提供するという直観に反するアプローチは、外形および製造の不整合を溶着工具に適合させることを可能にする。これにより、溶着プロセス中にコンポーネント全体に熱が均一に伝導され、不均一な溶着、つまり層間剥離、空洞、または、その他の望ましくない影響を含み得る溶着形成が防止される。
【0018】
細長い可撓性導電性ストリップは、溶着される選択された材料中の樹脂を溶融するために必要な温度を伝達できる任意の適切な材料であってもよい。たとえば、ストリップは、インバー、ステンレス鋼、または別の適切な高温材料などの細長い金属製ストリップであってもよい。
【0019】
同様に、ヒートシンクは、任意の適切な材料で形成することができ、積層体から離れる方向に、即ち、導電性ストリップの目的とは反対に熱を伝達する機能を有する。
【0020】
ヒートシンクは、一般に、「U字」状セクションの形をしており、裏張り部分から離れて延びる2つの側部分がある。これにより、ヒートシンクの中央に空洞が生じ、その中に導電性ストリップと加熱手段(後述)を配置できる。
【0021】
可撓性、即ち、ヒートシンクがその長さに沿って湾曲する能力(図3を参照)は、ヒートシンクを部分的に又は完全にスライスすることで達成できる。したがって、スロットは、裏張り部分を貫通して、側部分に沿って形成されてもよい。この方法で、ヒートシンクをスライスすると、一連のセグメントを生じさせる。次に、ヒートシンクが曲面に対してロードされると、変形が凹状変形か凸状変形であるかに応じて、セグメントの角度が変化する。ヒートシンクは、スライスまたはスロットを各側部分の長さの部分的な長さに制限することにより、単一コンポーネントとして一緒に保持できる。
【0022】
偏向時に、隣接するセグメントは、積層体表面の変形の曲率半径に応じて、互いに対して偏向する。
【0023】
スロットを含むヒートシンク配置では、各スロットは、典型的に、部品表面の自然な厚さの変化に対応するために使用できる。したがって、必要な変形は非常に小さいため、スロットの最小幅は工具の製造要件によってのみ制限される。
【0024】
あるいは、スロット又はスライスは、複数の独立したセグメントを形成するように、ヒートシンクの深さ全体にわたって形成されてもよい。個別のセグメントとして、隣接するセグメントは、ラミネート表面の変形に応じて、互いに対して上下に移動する。
【0025】
完全にスライスされたヒートシンクを完全にスライスされた可撓性ストリップと組み合わせた配置(図9および図10は後述)では、スキンの傾斜路などの遙かに大きな厚さ変動に都合良く適合できる。
【0026】
都合良く、各セグメントは、隣接するセグメントから電気的に絶縁されてもよい。これにより、誘導コイルを発熱体とした配置において、各セグメントは、渦電流が発生することを防止できる。
【0027】
ヒートシンクの各側部分は、(U字状の基部から測定した)遠位縁部に沿って、積層体表面に接触するように配置される。これは、細長いストリップの縁部または周囲に沿って、特にストリップの長辺に沿って積層体と接触させることができる連続表面を形成する。実際には、熱伝導ストリップは、最長縁部に沿ってヒートシンクの2つのエッジの間に挟まれている。
【0028】
これらの縁部は、溶着プロセス中に積層体から熱を集め、溶着ゾーンのすぐ外側積層体から熱を都合良く奪うことができる。これにより、熱が横方向に移動することを防止する。
【0029】
ヒートシンクの集熱縁部の接触を維持しながらストリップのU字状の遠位端部の内部に配置するために、ヒートシンクは、ヒートシンクの開放端部の内部にストリップを着座させるように段部が付けられてもよい。
【0030】
都合の良いことに、段付きプロファイルは、可撓性ストリップの一部が集熱縁部の最も遠位部を超えて延びるようなものである。したがって、溶着プロセス中、ストリップは最初に積層体と接触し、樹脂を柔らかくし始める。ストリップは、ヒートシンクの縁部が積層体の表面に接して熱を集める前に、所定深さまで表面を貫通する。
【0031】
最適な深さの値は、特定の配置と製造される部品とによって異なる。一実施例では、0.1+/-0.1mmのターゲットを使用して、工具製造公差を考慮し、導電性ストリップがヒートシンクの下になるのを防止することができる。
【0032】
ヒートシンク内部の空洞には、細長い可撓性(および熱伝導性)ストリップに熱を伝達できる任意の適切な熱源を設けることができる。たとえば、電気誘導コイルは、装置の長さに沿って伸ばしてもよい。都合の良いことに、コイルは、積層体の表面プロファイルによって引き起こされる変形に都合良く追従できる。
【0033】
熱源としての電気抵抗加熱ロッドもまた、本発明と共に使用できる。
【0034】
電流がヒートシンクおよび/またはストリップに流れるのを防止するため、コイルは一つ又は複数の電気絶縁体で囲まれてもよい。たとえば、一対の絶縁体を設けることができ、導電体の第1の側は、細長い可撓性ストリップに面し、導電対の反対側は、ヒートシンク内部の空洞に面する。
【0035】
細長いヒートシンク、細長い可撓性ストリップ、導電体および電気絶縁体は、溶着装置のハウジングに形成されたブラインド凹部に都合良く受容されてもよい。後述するように、ブラインド凹部が提供するのは、以下の通りである。
【0036】
- 当該装置のサブコンポーネント用ハウジング
【0037】
- ヒートシンクのセグメントの動きを制限、即ち、制御する手段
【0038】
- 溶着圧力を発生できる表面
【0039】
- 受動的または能動的冷却手段でヒートシンクから熱を集める為の本体
【0040】
溶着圧力は、ヒートシンクの裏張り部分に加えられ、次に、前述の段付き部分を介して、可撓性ストリップに荷重を加える。したがって、ストリップおよびヒートシンクは、所定圧力を使用して積層体表面と接触させられる。この力は、たとえば、アクチュエータ、カムなどを使用して、様々な方法で加えることができる。
【0041】
しかしながら、本発明者らは、溶着を行うのに必要な荷重を加えるための便利な手段は、膨張式ホースまたはブラダーをブラインド凹部に設置し、これをヒートシンクの後ろに配置することを確立した。したがって、膨張の際、ホースが膨張し、ヒートシンク(および可撓性ストリップ)を積層体表面に向かって駆動するヒートシンクに対して力を作用させる。
【0042】
可撓性ホースをヒートシンクによって集められた熱から保護するために、断熱層をヒートシンクとホースとの間に都合良く導入させてもよい。
【0043】
溶着部の実際の温度を監視するために、一つ以上の適切な熱電対を使用してもよい。たとえば、溶着部の非加熱側にある小さな非接触高温計を使用して材料の熱を監視することができる。温度センサの使用は、所定の溶着温度に到達したことを都合良く保証することができる。
【0044】
さらに、これは「キスボンド」、即ち、あまりに低い温度で形成され、したがって、強度が不十分な溶着をも防止する。このような欠陥のある溶着は、非破壊検査(NDT)技術では、常に検出できるとは限らない。
【0045】
別の態様から見ると、第1の熱可塑性ベース材料コンポーネントを第2の繊維強化樹脂ベースコンポーネントに溶着する方法が提供されるが、溶着装置は、細長い可撓性熱伝導性ストリップと、伝導性ストリップの周囲の少なくとも一部分の周りに延びる細長いヒートシンクとを備え、細長いヒートシンクは、複数のセグメントに分割され、隣接したセグメントは、互いに対して移動でき、当該方法は、溶着装置を第1の繊維強化樹脂ベースコンポーネントと接触させるステップと、ヒートシンクおよび可撓性熱伝導性ストリップが変形するように力を加えて、ストリップおよびヒートシンクが第1の表面プロファイルと整列するようにするステップとを含む。
【0046】
溶着部が200℃未満に冷却されるまで、工具は製品に残る。これにより、図11を参照して本書で説明した冷却プロファイルが得られる。たとえば、樹脂の十分な結晶化度のために冷却速度が速すぎる場合、加熱手段設定点の制御された下降傾斜(ramp down)により、より遅く冷却速度を設置することが確立されている。
【0047】
さらに、別の態様から見ると、熱可塑性ベース材料のための溶着装置が提供されるが、この溶着装置は、可撓性の細長い熱伝導性ストリップと、細長いストリップの最長縁部から横に伸びる関連ヒートシンクとを備え、ヒートシンクは、ストリップの長さに沿って変形可能であり、使用時に溶着される熱可塑性材料の変形に位置合わせする。
【0048】
さらに、別の態様から見ると、熱可塑性材料の溶着装置が提供されているが、この溶着装置は、可撓性の細長い熱伝導性ストリップと、溶着される積層体表面に第1方向で熱を向けるように配置された関連熱源と、細長いストリップの最長縁部から横に延び、積層体表面から熱を集め、反対側の第2方向に熱を伝達するように配置されたヒートシンクとを備え、ヒートシンクは、ストリップの長さに沿って変形可能であり、使用時に溶着される熱可塑性材料の変形に位置合わせする。
【0049】
さらに、別の態様から見ると、ロボット制御アームまたは梁を用いて溶着装置および方法を適用して、コンピュータ制御の溶着プロセスを提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下、添付図面を参照して、実施例としてのみ、本発明の態様を説明する。
図1図1Aは、図1Bは、2つの積層体および積層体表面ジオメトリ間の変化を図示する。
図2A図2Aは、慣例の積層型溶着配置を示す。
図2B図2Bは、本発明による変形された溶着配置を示す。
図2C図2Cは、本発明による変形された溶着配置を示す。
図3図3は、ヒートシンク、導電性ストリップ、積層対の拡大された横断面を示す。
図4図4は、図2Bおよび図2Cに示されたヒートシンクを通る横断面を示す。
図5A図5Aは、慣例の溶接処理の溶接中の熱流路を示す。
図5B図5Bは、本技術の溶接中の熱流路を示す。
図6図6は、本願で説明された発明による溶接装置を通る横断面を示す。
図7図7は、図6に示された溶接装置の等角分解図を示す。
図8図8は、溶接が行われる段階の溶接装置を示す。
図9図9は、細分化されたヒートシンクと細分化された導電性ストリップとを備えた代替実施形態を示す。
図10図10は、図9に示された溶接装置の分解された等角図を示す。
図11図11は、UD PEKK材料の時間と温度の溶接グラフの例を示す。 本発明は、様々な変形および変更形態に影響されうるが、特定実施形態は、例として図面に示され、本書に詳細に説明される。しかしながら、本書に添付の図面および詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、本発明は、請求される発明の精神および範囲に含まれる全ての変形、均等物および代替物を網羅することを理解されたい。本書に説明されている本発明の態様の特徴は、任意の適切な組合せで都合良く、互換性良く使用できることが認識されよう。また、本発明は、個々の実施形態だけでなく、本書で検討された実施形態の組合せも網羅することが認識されるであろう。
【詳細な説明】
【0051】
図1Aおよび図1Bは、2つの積層体および積層体表面ジオメトリ間の変形例を図示する。最初に図1Bを参照すると、一緒に接合(溶着)されるべき2つの積層体(L1,L2)が示されている。
【0052】
この実施例において、積層体は、熱可塑性樹脂内部の炭素繊維から形成されている。これらは、炭素繊維強化熱可塑性(CFRP)として慣例的に知られている。本書で説明された装置および方法は、繊維を同伴する樹脂材料を使用して他の材料に等しく適用されてもよい。
【0053】
図1Bは、2つの積層体(L1,L2)を一緒に溶着する為の慣例的装置を図示する。簡単な処理では、2つの積層体を上部アンビル(AV1)と下部アンビル(AV2)との間に配置する。アンビルのうちの一方は、加熱され、2つのアンビルは、互いに付勢されて溶着圧力を生じさせる。熱は、アンビルを通って積層体に伝導され、積層体内部の樹脂を溶かす。付勢力により、樹脂が融合する。その後、アンビルは解放され、冷却されて、樹脂が再硬化または硬化し、溶着部が形成される。
【0054】
このような慣例的な溶着装置により、複合積層体を簡単かつ便利に接合(溶着)することができる。
【0055】
しかしながら、図1Aを参照すると、積層体が常に完全に均一かつ平坦であるとは限らないことが分かる。これは、積層体が形成される結果、即ち、複数の個別の層が形成され、それらが一緒に硬化される。その製造プロセスの結果は、図1Aに例示されているように、隙間または空洞をもたらす表面プロファイルの変動である。慣例的に、これらの空洞は、図1Bのアンビル間の力または付勢圧力を高めること及び/又は溶着の持続時間または温度を高めることによって適応可能である。そのため、空洞を除去することができる。
【0056】
しかしながら、これが、図1Aに図示される問題を解決することができる一方で、発明者らは、それが溶着および溶着を囲むコンポーネントの領域に他の有害な影響を引き起こすことを確認した。
【0057】
図2Aを参照すると、従来のヒータH1が見られるが、これは、対向するアンビルAV2に向かって付勢または押し付けられて、積層体L1およびL2を一緒に押し付ける。ヒータが作動し、2つの積層体L1およびL2を通って延びる樹脂WPの溶着プールが形成される。しかしながら、溶着を生じさせる為に加えられている溶着圧力と温度勾配との組合せにより、溶着P1の周囲で剥離が発生する可能性がある。
【0058】
剥離は、積層体が十分な圧力を有することなく、溶融温度以上に加熱される場合に発生する。これは、積層体の製造中に受け継がれる積層体の予荷重または圧縮形式によるものであり、それ自体は一般に高圧で行われる。さらに、適切な圧力をかけずに溶融温度以上に加熱すると、樹脂のガス放出により空洞が生じる場合がある。
【0059】
加熱の効力をなくし、溶着力が除去されると(200℃未満に冷却された後)、溶着プール内の樹脂がリセットされ、2つの積層体が溶着ラインに沿って一緒に溶着、即ち、加熱の効力がなくなると、溶着プール内部の樹脂が冷却され、リセットされて、2つの積層体が溶着ラインに沿って一緒に溶着される。溶着力は、200℃未満まで冷却した後に除去される。しかしながら、前述したように、溶着部を囲み、それに沿って延びる領域は、材料内の層間剥離および他の不連続性の影響を受ける可能性がある。そのような不連続性は、コンポーネントの構造的完全性および溶着に有害である可能性があり、これは、前述したように、第一次航空宇宙コンポーネント(primary aerospace components)に特に関連する。
【0060】
本発明を参照すると、図2Bは、改良された溶着装置を示す。
【0061】
溶着工具または装置1は、溶着ラインに対して工具の中央に置かれる可撓性の細長い金属製(又は他の熱伝導性)ストリップ2を備える。ストリップ2は、その長さ(図2に示さず)に沿って曲がるように比較的薄い。示されるように、ストリップ2は、それ自体が第2の層4に対して位置する第1積層体層3と接触させられ、その結果、2つは、以下に説明されるように、工具の起動時に接合、即ち、一緒に溶着される。
【0062】
工具は、ストリップを囲むように配置されたヒートシンク5を備える。ヒートシンク5は、U字状横断面を画成し、ヒートシンク内部に空洞または隙間8を形成し、ストリップ2によって下端が閉じられた、水平上部6および2つの側部セクション7a、7aの形態である。
【0063】
ヒートシンクの側部セクション7a、7bの各々は、図2Bに示されるように段状にストリップ2と協働する。具体的には、各側部セクション7a、7bは、ストリップの上部表面と係合する第1部分と、ストリップの側部を下って、第1の積層体3と接触するのに十分に長いセクション部分とを備える。実際には、ストリップ2は、ヒートシンク7の内部に置かれ、又は収容される。
【0064】
ストリップ2およびヒートシンク5は、積層体3,4の第1側部(図2Bにおいて上側)で動作する工具9Aの第1部分を画成する。工具9Bの反対側の部分は、積層体3,4の対向する側部に配置され、溶着力を加えることができる表面を与える。たとえば、工具9Bは、テーブルでもよく、工具9Aは、ロボットアーム上に装着された可動ヘッドでもよい。
【0065】
図2Cは、分離してヒートシンクを等角図、横断面で示し、ヒートシンクの側面図で示す。図2Cは、Z方向に延びるヒートシンクの長さを示す。示されるように、ヒートシンクは、上部表面6から、ストリップを受ける隙間に近い側部セクションの端部に向かって延びる複数のスリットまたはスロット10を備える。スリットまたはスロット10は、ヒートシンクを複数のセグメント11に分割する。セグメント11の全ては、スリットまたはスロットが終端するヒートシンク5の基部で一緒に接続される。実際には、各側部セクション7a、7bの端部で、ヒートシンクの一部分は、セグメントを互いに接続する根元部を形成する。各セグメント11は、図2Bに示されるような横断面を有する。
【0066】
図2Cも、スリットの均一間隔を図示するヒートシンクの側面図を示す。しかしながら、スリットの正確な間隔(および)セグメントの大きさ)は、所望の溶着特性に依存する。
【0067】
図2Cは、図4を参照して、より詳細に説明される、溶着される積層体に接触するように(使用時に)長い部分が配置された、ヒートシンクの側部セクションの遠位端部の段状プロファイルを更に示す。
【0068】
図3は、ヒートシンク5,ストリップ2,積層体3の拡大断面図を誇張して示す。横断面は、ヒートシンク、ストリップ、積層体の曲率で誇張されており、セグメント11間のスリット11’がヒートシンクに凹凸表面または起伏表面に対応する方法をより詳細に明確に示している。
【0069】
領域Aに示されるように、ヒートシンクは、下にある積層体の凸型プロファイルの上に配置される。ここで、セグメントは、スリット11’が根元から離れるにつれて大きくなると共に、扇状に広がることができる。逆に、領域Bでは、ヒートシンクは、下にある積層体の凹型プロファイルの上に配置される。ここで、セグメントは、スリット11’が根元から離れるにつれて小さくなるように一緒に閉じることが可能である。これにより、スリットにより、ヒートシンクが、ストリップ2及び積層体3との接触を維持しながら、積層体表面プロファイルの変化に適応できるようになる。
【0070】
図3は、ヒートシンク、ストリップ、積層体の分解図である。使用時に、ヒートシンクと可撓性ストリップ2とが一緒に結合され(図2Bを参照して説明されるように)、その後、積層体表面と接触するようになることが認識されるであろう。示されるように、ヒートシンクおよびストリップの両方の可撓性により、それらは、積層体の輪郭に合わせることができる。
【0071】
図4は、図2Bのヒートシンク、ストリップ、絶縁体を、より詳細に示す。示されるように、ヒートシンク5は、2つの側部部分7a、7bを備え、これらが可撓性ストリップ2に向かって延びている。これらの部分7a、7bの端部は、導電性ストリップのプロファイルを受容する為に、図4に示されるように構成された段状の横断面を有する。
【0072】
段付きプロファイルは、任意のジオメトリであり得ることが認識されるが、このジオメトリは、導電性ストリップに対して相補的であり、ストリップの一部分と係合することができるので、溶着荷重をストリップに伝達し、結果として、積層体に伝達する。
【0073】
ヒートシンク5およびストリップ2は、導電性ストリップとヒートシンクとの間に置かれた断熱層12によって分離されている。これにより、ストリップ2からヒートシンク自体に熱が流れるのを防止する(ヒートシンク自体が加熱される)。
【0074】
任意の適切な材料を選択することができる。適切な実施例は、ガラス繊維、耐熱コーティング、セラミックなどの分離材料が含まれる。ヒートシンク自体は、アルミニウムまたはステンレス鋼などのような任意の適切な材料であり得る。可撓性ストリップは、同様に、例えば、銅、インバー、ステンレス鋼などの任意の適切な材料から選択されてもよい。より具体的かつ有利に、材料は少なくとも500℃まで耐熱性がなければならない。
【0075】
図4に戻ると、側面部7a、7bの端部分の段状横断面も遠位縁部13を含み、この遠位縁部13が、(図2Cに示されるように)ヒートシンクに沿って、ずっと延びている。図4に示されるように、遠位縁部13は、それが、ストリップ2の最下部表面を超えて延びないように都合よく配置されている。ストリップ2の最下部表面は、縁部13の最下部表面を超えて、距離Sdだけ延びている。
【0076】
使用中、(以下で更に説明するように加熱される)ストリップ2は、ヒートシンク5の縁部13の前に積層体表面と接触する。これにより、ヒートシンクが加熱プロセスを遅くすることなく、ストリップで積層体を加熱できる。最上部表面6に加えられる溶着圧力により、縁部13が積層体表面と接触するまで、ストリップ2は積層体表面を貫通する。
【0077】
縁部13と積層体の上部表面との間で接触が行われると、ヒートシンクは、積層体から熱を吸収し始め、それを側部分7a、7bを通してヒートシンクの本体および根元に伝達し始める。図5を参照して、これを更に説明する。
【0078】
図4に戻ると、装置の熱伝達特性は、深さ距離SおよびHSとSの比、すなわち縁部分13とストリップ2との面積の比に応じて選択することができる。
【0079】
この機械設備(tooling)配置の有利な熱効果は、図5Aおよび図5Bを参照して確かめることができる。
【0080】
図5Aは、慣例的な積層溶着アプローチであり、この方法において、加熱された部分14が積層体3に加えられる。矢印Xによって図示されるように、熱は、溶着ゾーンから外に伝導し、積層体の囲む領域を加熱する。この加熱は、(前述したように)剥離を引き起こすだけでなく、加熱された部分14に直接隣接する、図5Aの凸状部分によって図示されるように、表面の不規則性も引き起こす。
【0081】
逆に、本発明による溶着装置である図5Bには、異なる熱分布が見られる。見られるように、ストリップ2は、絶縁体12によってヒートシンク5から絶縁されている。ストリップは、溶着圧力Pを介して積層体3との接触がもたらされる。ヒートシンクの縁部分13は、溶着ゾーンに直接隣接する積層体表面と接触し、図示のように溶着ゾーンYはストリップ2の下に拘束されている。ここでは、過剰な熱が水平方向に伝導することを防止しているが、代わりに、ヒートシンクによって収集され、(矢印Hで図示されるように)積層体から離れる方向に向けられる。これにより、溶着ゾーン周辺の剥離や損傷を防ぐ。
【0082】
そのため、本発明の溶着装置のヒートシンク態様だけでも、改良された積層体溶着技術を提供する。
【0083】
以下、図6からXを参照して、工具の他の相乗的態様を説明する。
【0084】
図6は、前述した可撓性ヒートシンク配置を設置している溶着装置の横断面を示す。図6において、補強リブ3は、水平積層体表面4に付けられている。前述した同様のコンポーネント、すなわち、可撓性ストリップ2,絶縁体層12,ヒートシンク5が、図6の横断面に示されている。以下、溶着工具の残りの部分を説明する。
【0085】
前述したように、可撓性ストリップ2は、溶着をもたらす為に熱を積層体に伝える。熱は、図6に示す実施形態では、可撓性ストリップ2の最上部に形成された凹状の窪みに置かれる電動加熱要素によって供給される。次に、電動加熱要素の最上部に置かれ、要素が、下半分でストリップ2の凹状窪みによって、上半分で上部絶縁体16の凹状窪みによって、囲まれるようにする。上部絶縁体は、電気ヒータによって生成される熱からヒートシンクを絶縁する。したがって、ヒータ15,絶縁体16および可撓性ストリップは、ヒートシンクの中央領域内部に形成された空間内部に含まれる。
【0086】
都合の良いことに、電気要素15および上部絶縁体16は、図3を参照して前述されたように、積層体表面プロファイルの変化に適合する為に、ストリップ2およびヒートシンク5で曲がることができるように可撓性であってもよい。
【0087】
ヒートシンク5のすぐ上には、ヒートシンク5と、ゴム製の可撓性ストリップ17が見られるが、このゴム製ストリップ17は、ヒートシンク5と膨張可能なゴム製ホースまたはブラダーとの間に位置する。これらのコンポーネントは、全て、工具上部ハウジング20の空洞19内部に置かれる。
【0088】
膨張可能なホースは、ガスまたは空気供給部(図示せず)に接続され、空洞19内部の所定圧力まで選択的に膨張させることができる。膨張により、ブラダーが拡張し、ゴム製ストリップ17の上部表面に力を加える。これは、次に、それ自体が可撓性ストリップに結合されているヒートシンク5の上部表面6に力を加える。したがって、ホース18を膨張させると、ヒートシンクおよび可撓性ストリップ2に溶着力を選択的に加えることができることが分かる。
【0089】
ホース内の圧力は、特定の構成に応じて選択できる。都合の良いことに、適切な溶着圧力を加えるために、ホース内の圧力は、6バール+/-1バールの領域でもよい。
【0090】
図6を参照すると、前述した構成が含まれる溶着工具ハウスが示されている。ハウジングは、ホース18,ゴム製ストリップ17,ヒートシンク5,絶縁体16,電気ヒータ15,可撓性ストリップ2を含む上部ハウジング20を備える。上部ハウジングに対向するのが、溶着圧力/力を加えることができる表面として作用する第2下部ハウジング21である。下部ハウジングは、溶着中に積層体4が接触する耐熱性および絶縁性表面22を備える。
【0091】
下部ハウジング21は、上部ハウジングに結合された2つのアンビルの下半分の形態でもよく、2つを一緒にするか又は分離して、溶着の為に積層体をハウジング間に置くことができるようにする。
【0092】
別の配置において、下側ハウジングは、固定ベッドまたは治具の形態であってもよく、上側ハウジングは、それに対して、移動可能である。下側ハウジング/治具が溶着位置で積層体を支持できる場合、様々な配置が可能である。たとえば、上部ハウジングは、ロボットアームに位置し、下部ハウジングは固定されてもよい。次に、異なる位置で多数の溶着を行うことができる。
【0093】
動作中、溶着プロセスは、次のステップを含む。
【0094】
(a)積層体3,4は、上部および下部ハウジングに対して所定位置に置かれる。
【0095】
(b)ホース18が加圧されて、ヒートシンクと可撓性ストリップが上部積層体に押し付けられ、下部ハウジングが下部積層体に接触し、2つが密接に接触する。
【0096】
可撓性ストリップおよびヒートシンクの変形により、表面プロファイルの変化に適合する。
【0097】
(c)金属製ストリップ2を加熱する交流誘導電流が銅製コイル15に加えられる。
【0098】
(d)発生した熱は、伝導によって熱可塑性複合部品3および4に伝達される。
【0099】
(e)加熱されたストリップ2の隣りにあるヒートシンク5は、熱可塑性複合部品から熱を奪って、所望の領域に熱を含み、金属製ストリップが熱可塑性複合部品に深く沈み込むことを防止する。
【0100】
(f)所定の期間が経過すると、電気誘導コイルが非アクティブになり、積層体内の樹脂が固化し、2つの積層体が一緒に、固着、即ち、溶着される。
【0101】
(g)ホース圧が解放され、上部および下部ハウジングが離れる。
【0102】
前述したように、溶着装置は、溶着部が所定温度、たとえば、200℃未満に冷却されるまで、所定位置に残る。
【0103】
図7は、前述した装置のサブコンポーネントの分解等角図を示す。図7は、加熱要素15を受入れる為の凹部分を設置する可撓性ストリップ2の上部表面を明確に示す。
【0104】
図8は、補強リブ3を平坦な積層体構造4に溶着するための、元の位置にある機械設備の等角図を示す。図7の分解図で見られるスリットは、図8の上部ハウジングの後ろに隠れている。
【0105】
スリットの幅は可能な限り狭く選択され、選択された材料に使用できる機械工具(鋸刃)の最小幅によって駆動される。スリットが薄いほど、適合できる表面の欠陥または変形の「精細度(definition)」が高くなる。深さは、ヒートシンクの可撓性および耐久性のバランスである。スリットを深くすると、耐久性が低下すると同時に可撓性が向上する。
【0106】
さらに、熱伝導性ストリップも同様にセグメント化することができる。したがって、伝導性ストリップも部品表面と密接に位置合わせすることができる。
【0107】
図9は、ヒートシンクの代替構成を示す。図7に戻って参照すると、ヒートシンクは、ヒートシンクの上部表面から下に延びる複数のスリットを備える。図7に示されるように、スリットにより作成された個々のセグメントは全て結合される。
【0108】
図9は、セグメントが完全に分割された、即ち、スリットがヒートシンク全体に形成されている代替構成を示す。これは、隣接するセグメントから独立して、それぞれ移動できるヒートシンクを構成する独立したセグメントを形成する。
【0109】
この方法でヒートシンクを分割することには、幾つかの利点がある。
【0110】
たとえば、このようにヒートシンクを分割することは、互いに隣接するセグメントの、より大きな動きを可能にし、これは、積層体表面の表面プロファイルにける、より大きな際が溶着工具によって適合されることを可能にする。
【0111】
さらに、この方法でセグメントを分割することにより、隣接するコイルを通過する交流電流によって、ヒートシンクに渦電流が発生することを防止する。これにより、AC電源に対する渦電流によって抵抗が生成されることを防止する。
【0112】
電気絶縁体コーティングを都合良く使用することができる。このようなコーティングは、完全に分割されたヒートシンクでの過大な渦電流を防止するのに効果的である(したがって、ヒータの誘導電界によりヒートシンクが過度に加熱されることを防止することができる)。
【0113】
完全に分割されたヒートシンクでの過大な渦電流を防止する別の方法は、ヒートシンクとヒートシンクの角部との間の接触を制限することである。これは、他のヒートシンクと接触する角部を残しながら、ヒートシンクの小さな窪みをヒートシンク接触表面に機械加工することで行うことができる。角部は誘導コイルから遠く離れていることから、角部の電気的接触は、ヒータ内の誘導電界のためにヒートシンクをほとんど加熱しない。
【0114】
図9は、可撓性ヒートシンクおよびストリップ2が、溶着される積層体の厚さの、より大きな変化に適合できる方法を示している。図9に示すように、積層体構造は、第1の厚さtから第2の厚さtまで傾斜する傾斜路23を備える。ヒートシンク5も見られ、ヒートシンクと積層体の連続的な接触が分かる。同様に(見えないが)、可撓性ストリップ2も積層体傾斜路23の外形に従う。
【0115】
図10は、図9に示される配置の分解図である。ヒートシンク5の個々のセグメントが見られる。同様に、傾斜路23によって引き起こされた積層体の厚さの変化に対応して、コイルの屈曲も見られる。
【0116】
図11は、時間と温度の伝導溶着グラフを示し、溶着プロセス中の積層体の温度を図示する。
【0117】
具体的には、グラフは、UDポリエーテルケトン(PEKK)などの実施例材料を溶着するための条件を示す。「UD」という用語は、一方向を意味し、繊維(織られた)プリプレグ層とは対照的に、一方向のみの繊維で構成されるプリプレグ層を指す。一般に、UD材料の溶着は、(樹脂が少ないため)より困難である。UD材料は、主に航空機の主要構造物、即ち、飛行に重要な(flight critical)構造体の部品に使用される。
【0118】
このマトリックスシステムの材料の溶融温度は、約330℃であり、良好な溶着には、積層体のオートクレーブ硬結と同様に375℃が必要である。スタック、即ち、完全な積層体を形成する層の厚さにわたって温度勾配を得るために、加熱要素と接触する部品の表面温度はより高い。この温度は、PEKKシステムの劣化(degradation)温度によって制限され、490℃未満に保たれる。加熱要素と接触していない部品の表面温度は、好ましくは固体のままである必要があり、したがって、330℃未満である必要がある。したがって、ヒートシンクは、溶着ゾーンから熱を確実に除去し、この温度より周囲の積層体を低く維持するように構成されている。
【0119】
誘導コイル周波数は、加熱効率にとって重要でないことが分かり、最適な要約を達成するのに必要な正確な電力入力は、コイルの長さと特性に依存する。実施例として、300kHzと30kHzは、どちらも良質の溶着を生じさせることができる。
【0120】
溶着圧力を加えるための代替構成を採用することもでき、たとえば、圧力は、ロボットアームまたはバネ懸架式配置によって加えることができる。
【0121】
しかしながら、ホースシステムを使用することにより、空気圧システムの圧力をチェックすることにより、溶着圧力を簡単に保証できる。ゴム製ブロックまたはバネが使用されている場合、(局所的な)圧力量は、圧縮の量とバネの剛性に依存するため(キャリブレーションと経年劣化の問題の可能性があるため)、これはより困難である。さらに、ゴム製ブロックが使用されている場合、溶着プロセスを実行してゴム製ブロックを加熱すると、追加の膨張が作られ、均一な圧力分布が更に複雑になる。したがって、ホースの配置は、幾つかの技術的利点を与える。
【0122】
任意選択的に、ヒートシンクおよび/または可撓性ストリップには、コイルの印加される電流のリアルタイムのフィードバック制御を可能にする熱電対を設けることができる。これにより、たとえば、図11に示すように、目的の溶着条件に従って、溶着温度を正確に制御できる。
【0123】
本書に説明されている溶着装置および方法の用途には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
・硬化したスキンを作成するためのスキン補剛材
【0125】
・補剛された胴体外板パネルへのフレーム
【0126】
・トーションボックス用途におけるスキンパネルへのリブ
【0127】
・トーションボックス用途におけるスキンパネルへのスパー
【0128】
・他の部品への小さなブラケット
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11