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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】原子炉システム用の複合減速材
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20230530BHJP
   G21C 1/10 20060101ALI20230530BHJP
   G21C 1/12 20060101ALI20230530BHJP
   G21C 21/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C1/10
G21C1/12
G21C21/00 200
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020561578
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019014606
(87)【国際公開番号】W WO2019164617
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】62/619,925
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/254,019
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520271676
【氏名又は名称】ウルトラ セーフ ニュークリア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ULTRA SAFE NUCLEAR CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, パオロ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】スニード, ランス, ルイス
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269621(JP,A)
【文献】特開2017-096653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 5/00
G21C 1/00
G21C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料要素の配列;及び
2種以上の減速材で形成された複合減速材媒体
を含む原子炉炉心を備え、
前記2種以上の減速材が、低減速物質と高減速物質とを含み、
前記高減速物質が、前記低減速物質と比較して、より高い中性子減速能を有し、
前記低減速物質が、炭化ケイ素(SiC)又は酸化マグネシウム(MgO)の減速マトリックスを含み;
前記高減速物質が、前記減速マトリックス内に分散されており、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、又はそれらの化合物を含
前記高減速物質が前記低減速物質に封入されており、前記高減速物質が前記低減速物質の外部に露出しないようになっている、原子炉システム。
【請求項2】
前記高減速物質が、ホウ化ベリリウム(BeB、BeB、BeB、若しくはBeB)、炭化ベリリウム(BeC)、ジルコニウムベリライド(ZrBe13)、チタンベリライド(TiBe12)、酸化ベリリウム(BeO)、又は炭化ホウ素(BC)のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項3】
前記燃料要素のそれぞれが、前記複合減速材媒体及び核燃料で形成された燃料複合減速材ブロックを含み;
前記燃料複合減速材ブロックが燃料開口部を含み;
前記核燃料が、前記燃料開口部の内部に配置され、前記核燃料が前記複合減速材媒体によって囲まれるようになっている、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項4】
前記燃料複合減速材ブロックが、冷却剤ガス又は液体を流すための冷却剤通路を更に含む、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項5】
前記核燃料が、
炭化ケイ素マトリックスの内部に埋め込まれた三重等方性被覆(TRISO)燃料粒子;又は
黒鉛マトリックスの内部に埋め込まれた三重等方性被覆(TRISO)燃料粒子
で構成された燃料コンパクトを含む、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項6】
前記原子炉炉心が、前記複合減速材媒体で形成された反射体複合減速材ブロックを含む少なくとも1つの反射体領域を更に含む、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項7】
前記原子炉炉心が、内側反射体領域と外側反射体領域とを含み;
前記内側反射体領域が、内側反射体複合減速材ブロックを含み;
前記外側反射体領域が、外側反射体複合減速材ブロックを含み;
前記内側反射体複合減速材ブロックと前記外側反射体複合減速材ブロックが、前記複合減速材媒体で形成されている、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項8】
前記燃料要素の配列が前記内側反射体領域を取り囲んでおり;
前記外側反射体領域が前記燃料要素の配列を取り囲んでいる、
請求項に記載の原子炉システム。
【請求項9】
低減速物質と高減速物質とを含む2種以上の減速材を選択して、複合減速材媒体を形成するステップ;
前記低減速物質に基づいて、焼結助剤と、複合減速材混合物中の前記焼結助剤の重量パーセント(w/w%)とを選択するステップ;
前記2種以上の減速材を、前記選択した焼結助剤と前記選択した重量パーセント(w/w%)で混合して、前記複合減速材混合物を創出するステップ;及び
前記複合減速材混合物を放電プラズマ焼結して、前記複合減速材媒体で形成された複合減速材ブロックを作製するステップを含
前記高減速物質が前記低減速物質に封入されており、前記高減速物質が前記低減速物質の外部に露出しないようになっている、
方法。
【請求項10】
前記複合減速材混合物を放電プラズマ焼結する前記ステップが、
前記複合減速材混合物をマンドレルに注入するステップ;及び
ダイスを前記マンドレルに押し込んで、前記複合減速材混合物に処理温度と圧力を加え、前記複合減速材媒体で形成された前記複合減速材ブロックを作製するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記低減速物質が、炭化ケイ素(SiC)又は酸化マグネシウム(MgO)を含み;
前記高減速物質が、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、又はそれらの化合物を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記高減速物質が、ホウ化ベリリウム(BeB、BeB、BeB、若しくはBeB)、炭化ベリリウム(BeC)、ジルコニウムベリライド(ZrBe13)、チタンベリライド(TiBe12)、酸化ベリリウム(BeO)、又は炭化ホウ素(BC)のうちの少なくとも1種を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記低減速物質が、炭化ケイ素(SiC)を含み;
前記焼結助剤が、イットリア(Y)又はアルミナ(Al)を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
複合減速材混合物中の前記焼結助剤の選択した重量パーセント(w/w%)が、イットリア又はアルミナの4~10重量パーセント(w/w%)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記処理温度が、摂氏1,400度(℃)から摂氏1,800度(℃)の間の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記低減速物質が、酸化マグネシウム(MgO)を含み;
前記焼結助剤が、リチウムを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項17】
複合減速材混合物中の前記焼結助剤の選択した重量パーセント(w/w%)が、リチウムの3~10重量パーセント(w/w%)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理温度が、摂氏1,300度(℃)から摂氏1,600度(℃)の間の範囲である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
[0001]本願は、2018年1月22日出願、「Composite Moderators for Nuclear Power Systems」と題する米国特許仮特許出願第62/619,925号;及び2019年1月22日出願、「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」と題する米国実用特許出願第16/254,019号に対する優先権を主張し、それらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
[0002]本主題は、複合減速材を含む原子力システム及び原子炉システムの例に関する。本主題は複合減速材を作製する方法も包含する。
【0003】
[背景]
[0003]核分裂原子炉には、熱型又は高速型の原子炉が含まれる。現在、ほとんど全ての運転中の原子炉は熱型であり、そのため、核分裂が継続できるように、高速中性子を速度低下させるための減速材を必要とする。減速に使用される物質は、非常に特異的な一組の特性を有することが必要である。第1に、減速材は、それ自体中性子を吸収することができない。従来、これは、減速材が低中性子吸収断面積を有する必要があることを意味する。しかし、減速材は、中性子の速度を許容できる速度まで低下できなければならない。そのため、理想的な減速材においては、中性子散乱断面積が高い。この中性子散乱は、中性子が減速材の原子とどの程度相互作用するかを示す尺度である。中性子と核との衝突が弾性衝突である場合、原子核のサイズが中性子に近いほど、中性子がより遅くなることを意味する。この理由から、より軽い元素ほどより効率的な減速材となる傾向がある。
【0004】
[0004]一般に利用される減速材、例えば軽水(HO)、重水(DO)、及び黒鉛(C)は、低中性子吸収断面積を有するが、比較的大きな中性子散乱断面積を有する。軽水、重水、及び黒鉛の中性子散乱断面積(σ)はそれぞれ、49、10.6、及び4.7バーンである。軽水、重水、及び黒鉛の中性子吸収断面積(σ)はそれぞれ、0.66、0.0013、及び0.0035バーンである。減速材は、減速能力から見ても、コスト的にも違いがある。
【0005】
[0005]現在、運転中の熱原子炉は、中性子減速材としてモノリスである単一の減速材物質を利用している。モノリス減速材物質は、典型的には地面から掘り出される。原子炉炉心に最適なモノリス減速材物質を判定するため、エンジニアは、モノリス減速材物質の中性子特性が原子炉に適しているか、即ち、比較的長時間持続するか否かを分析し、次いで、最適化を遂行する。黒鉛は、原子炉で一般に利用されている中性子減速材の一種である。黒鉛は、天然に存在する、六角形構造に原子が配置された元素炭素の結晶形である。黒鉛は、標準的な条件で炭素の最も安定した形態である。
【0006】
[0006]しかし、単一のモノリス減速物質には制約があり、そのうちの1つは、減速材の寿命であり、それは、単一のモノリス減速物質が原子炉炉心の内部で核放射線を受けることによる、モノリス減速物質の結晶の物理的制約である。更に、高減速物質、例えば黒鉛は、核放射線下では不安定であり、それが、核燃料が燃料寿命限界に達する前に高減速物質が最終的に構造的に劣化する原因となる。
【0007】
[0007]原子炉用黒鉛は当初、シカゴパイル原子炉(即ち、世界初の原子炉)用の減速材として開発されたもので、最初に、そして間違いなく最も研究された核物質である。今日、多くのガス冷却システム(例えば、角柱状又はペブルベッド型)及び溶融塩冷却システムは、非常に大きな黒鉛原子炉炉心装填量を前提としている。黒鉛を単一の減速物質として処理する方法は継続的に改良がなされ、黒鉛のより純度が高くより良好な-より等方性の高い-形態が得られてきたが、黒鉛に関しては、厳しい減速材寿命限界が残っている。本質的に、放射線照射によって誘発される異方性結晶の膨張の物理特性は、黒鉛減速材物質の全体的寸法変化、微少亀裂、及び黒鉛減速材物質の完全性の喪失につながる。
【0008】
[0008]電気出力約200メガワット(MWe)の典型的な高温ガス冷却原子炉(HTGR)は、約600トンの関連する黒鉛装填量を有する。新たに期待される溶融塩冷却システムは、同様に大きな黒鉛廃棄物流を有することになる。残念ながら、汚染された黒鉛は、現在までに処分された約250,000トンの黒鉛廃棄物からも明らかなように、これらの原子炉システムにとって重大な廃棄物問題を引き起こしている。汚染のレベルは、原子炉システム、核燃料、及び核燃料品質によって異なるが、炭素14(14C)及びT汚染は、不可避である。この核廃棄物問題は、高出力(高中性子影響)システムでの黒鉛減速材の寿命のために、原子炉炉心の相当量を稼働中に交換する必要があるという事実によって更に悪化している。
【0009】
[概要]
[0009]本明細書に開示される様々な例は、原子炉システム用の複合減速材技術に関し、複合減速材を含む原子炉炉心及び複合減速材を作製する方法を含む。複合減速材を使用すると、個々の減速材物質、例えば黒鉛、水、及び溶融塩(例えば、フッ化リチウムとフッ化ベリリウムを組み合わせたFLiBE)に対していくつかの利点が達成される。第1に、複合減速材は、原子炉炉心からの交換を必要とすることなく、核燃料の燃料寿命に寄与することにより、個々の減速材物質と比較して核廃棄物を削減する。第2に、複合減速材は、寸法的照射安定性を有する(即ち、構造的劣化を受けにくい)。第3に、複合減速材は、現在の黒鉛の酸化問題を排除することにより、安全特性を向上させる。
【0010】
[0010]第1の例において、原子炉システムは、原子炉炉心を含む。原子炉炉心は、燃料要素の配列、及び2種以上の減速材で形成された複合減速材媒体を含む。2種以上の減速材は、低減速物質と高減速物質とを含む。高減速物質は、低減速物質と比較して、より高い中性子減速能を有する。
【0011】
[0011]第2の例において、方法は、低減速物質と高減速物質とを含む2種以上の減速材を選択して複合減速材媒体を形成するステップを含む。方法は、低減速物質に基づいて、焼結助剤と、複合減速材混合物中の焼結助剤の重量パーセント(w/w%)とを選択するステップを更に含む。方法は、2種以上の減速材を、選択した焼結助剤と選択した重量パーセント(w/w%)で混合して、複合減速材混合物を創出するステップを更に含む。方法は、複合減速材混合物を放電プラズマ焼結して、複合減速材媒体で形成された複合減速材ブロックを作製するステップを更に含む。
【0012】
[0012]これらの例の追加の目的、利点及び新規な特徴は、一部が以下に続く説明に記載され、一部が下記及び添付図面を検討すると、当業者には明らかとなるか、例の生成又は操作によって習得することができる。本主題の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される方法論、手段及び組合せによって実現し、達成することができる。
【0013】
[0013]図面は、限定としてではなく、一例としてのみ、本概念に従う1つ又は複数の実施を図示する。図中、同様の参照番号は、同一又は類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】原子炉炉心、制御棒、及び集合体の他の構成要素を表示する、原子炉システムの図である。
図2A図1の原子炉炉心で利用される核燃料の燃料粒子及び燃料コンパクトの図である。
図2B図1の原子炉炉心の燃料複合減速材ブロックの図であり、図2Aの核燃料を含み、複合減速材媒体で形成されている。
図2C図2Cは、燃料要素の配列と複合減速材媒体で形成された反射体複合減速材ブロックとを含む、原子炉炉心及び構成要素の断面図である。
図3】は、複合減速材媒体に囲まれた核燃料を図示する、図2Bの燃料複合減速材ブロックの一部の拡大平面図である。
図4】黒鉛減速材物質の原子炉炉心内にある間の経時的寸法変化を示すグラフである。
図5】複合減速材媒体の2種類の低減速物質及び複合減速材媒体の8種類の高減速物質と比較した、中性子減速能を含む黒鉛減速材物質の特性を示す表である。
図6】7つの異なるタイプの複合減速材媒体と比較した、図5の黒鉛減速材物質を含む原子炉炉心の経時的反応性を示すグラフである。
図7】複合減速材媒体の複合減速材ブロックを作製するために実施することができる方法のフローチャートである。
図8A】複合減速材ブロックを作製するために放電プラズマ焼結(SPS)が利用される、図7の方法の処理写真である。
図8B図7の方法の放電プラズマ焼結中の経時的処理温度及び圧力(ダイス変位)を示すグラフである。
図8C】高減速物質を封入する低減速物質を示す、複合減速材媒体のミクロンレベル写真である。
【0015】
部品一覧
100 原子炉システム
101 原子炉炉心
102A~N 燃料要素
103 複合減速材媒体
104 低減速物質
105 高減速物質
110 格納構造
115A~N 制御棒
120 蒸気発生器
125 蒸気ライン
130 蒸気タービン
135 発電機
140 電気
145 凝縮器
150 スプレー
155 水蒸気
160 冷却塔
200 核燃料
201A~N 核燃料棒
205 燃料コンパクト
206A~N 燃料粒子
207 炭化ケイ素マトリックス
208 黒鉛マトリックス
220 複合減速材ブロック
225 燃料複合減速材ブロック
226A~N 燃料開口部
227A-B 冷却剤通路
228 冷却剤
230 反射体領域
235A~N 反射体複合減速材ブロック
240 内側反射体領域
245A~N 内側反射体複合減速材ブロック
250 外側反射体領域
255A~N 外側反射体複合減速材ブロック
260 バレル
265 恒久的外側反射体
270A~N 運転用制御棒
275A~N 起動用制御棒
280A~N 予備遮断チャネル
【0016】
[詳細な説明]
[0026]下記の詳細な説明において、関連する教示の完全な理解を実現するため、多数の具体的詳細が例として記載されている。しかし、当業者には明らかとなることであるが、本教示は、そうした詳細が無くても実践できる。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、及び/又は回路が、本教示の態様を不必要に曖昧にすることを回避するため、詳細を含むことなく比較的高レベルで記載されている。
【0017】
[0027]核放射線に対処するため、単一の減速材物質よりも合計でより長時間持続する方向に変化する数種の減速物質を含む複合減速材媒体(例えば、固体物質)が設計される。複合減速材媒体によって、原子炉炉心は減速材物質を交換することなく寿命を延ばすことができ、例えば、黒鉛減速材物質と比較して、より小型にすることができる。加えて、複合減速材媒体は、様々な原子炉システムの実施、例えば発電用の陸上原子炉又は高温核熱推進(NTP)システム(例えば、小型宇宙原子炉)に展開することができる。
【0018】
[0028]ここで、添付図面に示され、以下に検討する例を詳細に参照する。
【0019】
[0029]図1は、原子炉炉心101、制御棒115A~N、及び集合体の他の構成要素を図示する、原子炉システム100の図である。この例において、原子炉システム100は、制御された核連鎖反応が起こる原子炉101を含み、エネルギーが放出される。本例において、原子炉システム100は、陸上用途の原子力発電所である。しかし、原子炉及び複合減速材の技術は、宇宙環境、例えば核熱推進(NTP)システムに利用することができる。こうしたNTPシステムでは、発生させた推力が、原子炉炉心101を収容する、原子炉炉心101と一体形成された、原子炉炉心101に接続する、又は原子炉炉心101に取り付けられる輸送手段、例えばロケット、ドローン、無人飛行体(UAV)、航空機、宇宙船、ミサイルなどを推進する。加えて、NTPシステムは、潜水艦又は船舶の推進に使用することができる。
【0020】
[0030]原子炉炉心101は、燃料要素102A~Nの配列と、複合減速材媒体103とを含む。原子炉炉心101は、数メガワット以上の熱出力(MWt)を発生させるための核燃料を含む核分裂原子炉炉心である。複数の環状制御棒115A~Nが、燃料要素102A~Nの配列を取り囲んでいて、制御棒115A~Nを回転させることにより原子炉炉心101の反応性を変化させることができる。格納構造110が原子炉炉心101、制御棒115A~N、及び蒸気発生器120を収容している。制御棒115A~Nは、原子炉炉心101の反応性を変化させることにより運転中に中性子集団及び原子炉出力レベルを調整するため、原子炉炉心101の反射体領域240、250(図2C)の区域に位置していてもよい。
【0021】
[0031]制御棒115A~Nは、それ自体が核分裂せずに多くの中性子を吸収できる化学元素、例えばホウ素、銀、インジウム、及びカドミウムで構成されている。原子炉炉心101は、熱エネルギーを創出し、それは熱として放出される。原子炉システム100の他の構成要素は、熱エネルギーをエネルギーの有用な形態、例えば電気140に変換する。この例において、原子炉炉心101は、熱エネルギーを蒸気発生器120に供給し、蒸気発生器120は熱エネルギーを蒸気ライン125へと抽出し、それが蒸気タービン130を回す。蒸気タービン130は発電機135を駆動し、発電機135は次いで熱エネルギーを電気140へと変換する。その後、熱膨張サイクルが繰り返される。
【0022】
[0032]例示的原子炉システム100において、凝縮器145は、原子炉炉心101に給送し、原子炉システム100の構成要素を冷却するための冷却剤、例えば高圧液体又はガスを生成する。例えば、膨張サイクル中、冷却塔160に貯蔵された冷却剤を原子炉炉心101を通して引き出し、原子炉炉心101を冷却することができる。冷却剤からの熱は、スプレー150として冷却塔160へと抽出し、冷却塔160から水蒸気155として放出してもよい。注目すべきこととして、冷却剤の一部を還流させてもよく、例えば、蒸気タービン130を回すためにバイパスを介して原子炉炉心101から抜き出してもよい。いくつかの例において、原子炉システム100は、溶融塩ループ用途に使用することができる。
【0023】
[0033]原子炉炉心101における中性子連鎖反応は、臨界状態-各核分裂核からの単一の中性子が別の核の核分裂を引き起こす-であり、連鎖反応は、制御しなければならない。複合減速材媒体103は、2種以上の減速材で形成され、臨界を効果的に調整し、減速材寿命の延長を実現して核燃料寿命に匹敵し得るものとする。2種以上の減速材は、低減速物質104と高減速物質105とを含む。高減速物質105は、低減速物質104と比較して、より高い中性子減速能を有し、それは、中性子吸収断面積及び中性子散乱断面積と相関する可能性がある。原子炉炉心101内の複合減速材媒体103は、高速中性子(ウラン235のような核分裂性化合物中の原子を分裂させることによって生成される)を速度低下させ、核分裂連鎖反応においてより効果的なものとする。この中性子の速度低下又は減速により、中性子は核分裂性核種によってより容易に吸収されるようになり、より多くの核分裂事象が創出される。2種以上の減速材は、原子炉炉心101の実施環境(例えば、発電又はNTP)に応じて、非常に特異的な一組の特性に適応させることができる。
【0024】
[0034]図5~6において更に説明するように、低減速物質104は、炭化ケイ素(SiC)104A又は酸化マグネシウム(MgO)104Bの減速マトリックスを含む。高減速物質105は、減速マトリックス内に分散されており、ベリリウム(Be)105H、ホウ素(B)、又はそれらの化合物を含む。より具体的には、高減速物質105は、ホウ化ベリリウム(BeB 105A、BeB 105B、BeB、若しくはBeB)、炭化ベリリウム(BeC 105C)、ジルコニウムベリライド(ZrBe13 105D)、チタンベリライド(TiBe12 105E)、酸化ベリリウム(BeO 105F)、又は炭化ホウ素(11C 105G)のうちの少なくとも1種を含む。高減速物質105は、低減速物質104に封入され、高減速物質105が低減速物質104の外に露出しないようになっている。
【0025】
[0035]図2Aは、図1の原子炉炉心101に利用される核燃料200の燃料粒子206A~Nと燃料コンパクト205(例えば、燃料ペレット)の図である。一例において、核燃料200は、炭化ケイ素マトリックス207の内部に埋め込まれた三重等方性被覆(TRISO)燃料粒子206A~Nで構成された燃料コンパクト205を含む。別の例において、核燃料200は、燃料ペレットを創出するために黒鉛マトリックス208の内部に埋め込まれた三重等方性被覆(TRISO)燃料粒子206A~Nを含む。TRISO燃料粒子206A~Nは、1又は複数種の等方性物質を取り囲む1つ又は複数の層でコーティングされた、UC又は酸炭化ウラン(UCO)で構成された燃料核を中心に含む。図2Aに示すように、TRISO燃料粒子206A~Nは、3種の等方性物質の4層を含む。その例では、4層は、(1)炭素でできた多孔質緩衝層、それに続く(2)熱分解炭素(PyC)の高密度内側層、それに続く(3)高温で核分裂生成物を保持し、TRISO燃料粒子206Aに強力な構造的完全性を与えるためのSiCのセラミック層、それに続く(4)PyCの高密度外側層である。
【0026】
[0036]TRISO燃料粒子206A~Nは、1,600℃を超える温度での応力又は核分裂ガス圧が原因で亀裂が生じないように設計されており、したがって、最悪の事故シナリオで燃料を封じ込めることができる。TRISO燃料粒子206A~Nは、LWRの温度よりも遙かに高い温度で運転されることになる、図2Cに示す原子炉炉心101の例示的断面のような高温ガス冷却原子炉(HTGR)での使用のために設計された。燃料コンパクト205は、燃料ピン又は棒に装填し、金属被覆し、燃料要素102A~Nの多数のカラム内部に積み重ねることができる。TRISO燃料粒子206A~N用の可能なマトリックス207、208の物質のうち、炭化ケイ素(SiC)は、良好な照射挙動と加工性をもたらす。SiCは、高温で空気に暴露されると、高密度で粘着性の二酸化ケイ素(SiO)表面スケールが急速に形成されるため、優れた酸化耐性を有し、更なる酸化を防止する。
【0027】
[0037]燃料粒子206内の正味の重金属密度は、コーティング厚さが増加するにつれて急速に低下するため、被覆燃料粒子206A~Nの使用は、核燃料200における高重金属密度の達成をより困難にする。この事実は、核分裂生成物の障壁としての有用性を維持しつつ、燃料核直径に対するコーティング厚さの比をできるだけ小さく保つことを要求する。しかし、LWRにおける分散型燃料の使用が、より高い濃縮度とより低い電力密度を要求することは明らかである。複合核燃料用の最も可能性が高い核分裂性粒子のタイプは、高い溶融温度と高いアクチニド密度との組合せにより、炭化ウラン/プルトニウム(UC又はPuC)及び窒化ウラン/プルトニウム(UN又はPuN)である。ケイ化ウランは、核分裂性ウランの更に高い密度を実現する可能性があるが、予想される作製及び運転条件下では、不安定な場合がある。TRISO粒子の燃料核を取り囲む1又は複数種の可燃性中性子毒、例えば酸化エルビウムを含む、QUADRISO燃料などの他のタイプの燃料粒子206A~Nを利用して、過剰な反応性をより良好に管理することができ、CerMet燃料(例えば、金属マトリックスに埋め込まれたセラミック燃料粒子206A~N、例えば酸化ウラン)も同様である。
【0028】
[0038]核燃料200のいくつかの例において、二酸化ウラン(UO)粉末を圧縮成形して円筒形の燃料コンパクト205を創出し、高温で焼結することにより、高密度で良好に規定された物理的特性及び化学的組成を有するセラミック核燃料ペレットが生成される。研削プロセスを使用して、許容誤差の小さい均一な円筒形状が実現される。
【0029】
[0039]図2Bは、図1の原子炉炉心101の燃料複合減速材ブロック225の図であり、図2Aの核燃料200を含み、複合減速材媒体103で形成されている。燃料要素102A~Nのそれぞれは、(図2Cに示すように)複合減速材媒体103で形成された燃料複合減速材ブロック22と核燃料200とを含む。燃料複合減速材ブロック225は、燃料開口部226A~Nを含む。核燃料200は、燃料開口部226A~Nの内部に配置され、核燃料200が複合減速材媒体103によって囲まれるようになっている。燃料複合減速材ブロック225は、冷却剤228、例えばガス又は液体を流すための冷却剤通路227A~Bを更に含む。
【0030】
[0040]多くのこうした燃料コンパクト205は、(図2Aに示すように)積み重ねられ、図示する核燃料棒201A~N(例えば、密閉管)に充填される。被覆は核燃料棒201A~Nの外層であり、放射性核分裂片が核燃料200から冷却剤228へと漏れ出し、冷却剤228を汚染するのを防止する。核燃料棒201A~Nの被覆に使用される金属は、原子炉炉心101の設計によって異なるが、ステンレス鋼、アルミニウムを含むマグネシウム、又はジルコニウム合金を挙げることができ、これらは、高度に耐食性であることに加えて、低い中性子吸収性を有する。完成した核燃料棒201A~Nは、図2Cに記載するように、原子炉炉心101を構築するために使用される燃料集合体にグループ化される。
【0031】
[0041]図2Cは、燃料要素102A~Nの配列及び複合減速材媒体103で形成された様々な反射体複合減速材ブロック245A~N、255A~Nを含む、原子炉炉心101と構成要素の断面図である。典型的には、原子炉炉心101は、複合減速材媒体103で形成された反射体複合減速材ブロック235A~Nを含む、少なくとも1つの反射体領域230(内側反射体領域240及び外側反射体領域250として示されている)を含む。図2Cの例示的配置構成において、原子炉炉心101は、内側反射体領域240と外側反射体領域250とを含む。内側反射体領域240は、内側反射体複合減速材ブロック245A~Nを含む。外側反射体領域250は、外側反射体複合減速材ブロック255A~Nを含む。内側反射体複合減速材ブロック245A~Nと外側反射体複合減速材ブロック255A~Nは、複合減速材媒体103で形成されている。燃料要素102A~Nの配列は、六角形の燃料ブロック領域を形成しており、内側反射体領域240を取り囲んでいる。外側反射体領域250は、燃料要素102A~Nの配列を取り囲んでいる。したがって、燃料要素102A~Nは、内側反射体領域240と外側反射体領域250との間に散在している。
【0032】
[0042]図2Cにおいて、原子炉炉心101は、角柱状高温ガス原子炉炉心101である。当然ながら、複合減速材技術は、ガスベースではないいずれの原子炉炉心101内でも利用することができる。例示的ガス原子炉炉心101において、複合減速材ブロック220は、複合減速材媒体103のブロックであり、低減速物質104と高減速物質105の両方で形成された固体物質である。複合減速材ブロック220は、角柱形状(例えば、六角形状)であってもよく、穿孔した様々な開口部(穴)、例えば冷却剤228を流すための冷却剤通路227A~B及び核燃料200を入れるための燃料開口部226A~Nを含んでもよい。核燃料200の多くの核燃料棒201A~Nは、各複合減速材ブロック220の中に落とされ、各燃料複合減速材ブロック225(例えば、燃料束)を創出する。燃料複合減速材ブロック225A~N(例えば、燃料束)は次いで、原子炉炉心101に装填される。
【0033】
[0043]多くの複合減速材ブロック220に燃料が供給されており、それらは燃料複合減速材ブロック225A~Nとして示されている。複合減速材ブロック220の大多数は、燃料が供給されず(即ち、核燃料200が存在しない)、そのため、燃料開口部226A~Nを含まない。これらの反射体複合減速材ブロック235A~N(内側反射体複合減速材ブロック245A~N及び外側反射体複合減速材ブロック255A~Nとして示されている)は、冷却剤228を流すための冷却剤通路227A~Bを含む。
【0034】
[0044]燃料要素102A~Nの配列は、数百の六角形状の燃料複合減速材ブロック225A~Nを含み、この例ではそのうちの102個の燃料カラムがあり、各燃料カラムは、10個の燃料複合減速材ブロック225A~Jの高さである。原子炉炉心101の断面は、幅約6メートルであり、各複合減速材ブロック220は、幅約30cmである。原子炉炉心101の断面の中央には、内側反射体複合減速材ブロック245A~Nがあり、カラム1つ当たり10個が積み重ねられた内側反射体複合減速材ブロック245Aの多くのカラムを含む。原子炉炉心101の断面の外側には、外側反射体複合減速材ブロック255A~Nがあり、カラム1つ当たり10個が積み重ねられた外側反射体複合減速材ブロックの255A~Nの多くのカラムを含む。典型的には、制御棒115A~N、燃料複合減速材ブロック225A~Nのカラム、内側反射体複合減速材ブロック245A~N、及び外側反射体複合減速材ブロック255A~Nは、同じ長さである;ただし、理解すべきことであるが、実施によって長さは異なる可能性がある。
【0035】
[0045]制御棒115A~Nには、図1に示すように、運転用制御棒270A~Nと、起動用制御棒275A~Nの両方が含まれ、これらは、原子炉炉心101の頂部より挿入され、複合減速材ブロック220の小集団を貫通する。36本の運転用制御棒270A~Nが外側反射体複合減速材ブロック255A~Nの小集団を貫通する。12本の起動用制御棒275A~Nが、燃料複合減速材ブロック225A~Nの小集団を貫通する。制御棒270A~N、275A~Nは、中性子を吸収する。バレル260、例えば鋼で形成された金属炉心支持体が、原子炉炉心101の周囲で、原子炉炉心101の燃料要素102A~Nの配列、内側反射体領域240、及び外側反射体領域250の束ねられた集合物を取り囲んでいる。複合減速材媒体103で形成することができる恒久的外側反射体265が、外側反射体領域250とバレル260との間に配置されている。恒久的外側反射体265は、原子炉炉心101を構成する外側反射体領域250の外周を取り囲む部分的に六角形状の充填要素を含む。18個の予備遮断チャネル280A~Nが、燃料要素102A~Nの配列内の区域に位置している。
【0036】
[0046]一般に、燃料複合減速材ブロック225A~N、内側反射体複合減速材ブロック245A~N、及び外側反射体複合減速材ブロック255A~Nに利用される複合減速材ブロック220A~Nは全て、同じ複合減速材媒体103で形成されており、同じ輪郭形状(例えば、らせん状)を有し、冷却剤228を流すための冷却剤通路227A~Bを有する。しかし、内側反射体複合減速材ブロック245A~N及び外側反射体複合減速材ブロック255A~N用の複合減速材ブロック220は、穿孔した燃料開口部226A~Nを含まない。したがって、100フィート離れると、原子炉炉心101は、ほとんど同じに見える多くの大きな六角形の複合減速材ブロック22A~Nを有するように見えるが、燃料要素102A~Nの配列を格納している燃料ブロック領域(例えば、原子炉炉心101の中心の六角形状の部分)は、複合減速材ブロック220A~Nの内部に配置された核燃料200を含むことがある。
【0037】
[0047]図3は、複合減速材媒体103に囲まれた核燃料200を図示する、図2Bの燃料複合減速材ブロック225の一部の拡大平面図である。2本の核燃料棒201A~Bの核分裂性物質のブロックの間で、単一の制御棒115Aが、中性子を強力に吸収303する。核燃料棒201A~Bの核分裂性物質の間に制御棒115Aが深く挿入されるほど、核分裂301から発生する中性子の衝突がより困難となり、連鎖反応がより制限され、熱エネルギー生産が減少する。示されるように、複合減速材媒体103は、燃料棒201A~B間の空隙を満たしており、中性子を速度低下(減速302)することにより中性子エネルギーを低減する。複合減速材媒体103がなければ、中性子は速く移動しすぎ、そのため、235Uの核分裂301を引き起こす確率が非常に低くなり、その結果、これらの中性子は、吸収されて核分裂を誘発する前に非常に多くの原子核のそばを通過するであろう。
【0038】
[0048]図4は、黒鉛減速材物質505の原子炉炉心101内にある間の経時的寸法変化を示すグラフ400である。グラフ400において、原子当たりの変位(dpa)401が、原子炉炉心における寿命に亘りx軸に示されており、デルタΔV/V(%)402は、黒鉛減速材物質505の寸法変化である。中性子照射のため、原子炉用黒鉛減速材物質505には大きな寸法変化が発生し、10~20dpa(原子当たりの変位)の範囲で寿命が暗示される。典型的には、高出力高温ガス冷却原子炉(HTGR)は、発電所の寿命期間中に原子炉炉心黒鉛を1又は2回交換する必要がある。
【0039】
[0049]4つの異なるタイプの黒鉛減速材物質505が摂氏750度(℃)及び摂氏900度(℃)の両方でグラフ400にプロットされている。原子炉炉心内の黒鉛減速材物質505の温度は、位置の関数であり、ばらつきが大きい。黒鉛減速材物質505は、原子炉炉心の底部又はその付近では摂氏750度(℃)に、原子炉炉心の頂部又はその付近では摂氏900度(℃)になる可能性がある。したがって、黒鉛減速材物質505は、原子炉炉心内の特定の位置又は配置に応じて異なる寿命を有する。
【0040】
[0050]グラフ400に示すように、原子炉炉心内にある間、黒鉛減速材物質は、大きな寸法変化を受け、次いで崩壊し、これが「減速材寿命」と呼ばれている。この膨張メカニズムは、原子炉用黒鉛の本来の多孔性(本質的に原子炉用黒鉛材料は全て約18%多孔性である)によってある程度補われるが、減速材寿命は、黒鉛が元の無膨張値に戻る点、又は、一連の4種のプロットしたタイプの原子炉用黒鉛減速材物質505の場合は、図4のグラフに挿入された2つの軌跡のゼロ点と関連している。したがって、黒鉛減速材物質505の問題は、原子炉炉心における運転期間中の放射線損傷による非常に限られた明確な減速材寿命である。
【0041】
[0051]図5は、複合減速材媒体103の2種類の低減速物質104A~B及び複合減速材媒体103の8種類の高減速物質105A~Hと比較した、中性子減速能を含む黒鉛減速材物質505の特性を示す表500である。見てわかるように、目標は、放熱性能が劣る高減速物質105A~Hを放熱性能が良好な低減速物質104A~Bの内部に配置(例えば、封入)することであり、その結果、黒鉛減速材物質505と比較して、複合減速材媒体103の減速材寿命が大幅に延長される。表500に見られるように、低減速物質104A~Bの減速能510は、高減速物質105A~Hよりも比較的低い。表500に含まれる他の比較特性は、溶融温度(Tmelt)515、密度520、化学反応性525、結晶530、照射性能535、及び熱伝導率540である。
【0042】
[0052]複合減速材媒体103は、交換の必要なしに、実質的により低い寸法変化を有する。複合減速材媒体103は、原子炉炉心101の燃料寿命を持続させることができる物質である。これは、優れた減速マトリックス物質、例えばSiC 104A又はMgO 104Bを低減速物質104に使用することにより照射安定性を高めながら、二相構造により中性子減速を適合させることによって達成される。
【0043】
[0053]図5の表500の精査によって理解されるように、低減速物質104の減速マトリックス相における封入又は同伴相のための第2の高減速物質105の選択は、減速を強化する必要性によって推進される。減速の単純な計量は、平均対数減少ξとその相互作用が発生する確率(巨視的断面積Σ)との積であり、減速能510として公知である。したがって、複合減速材媒体103は、低減速物質104A~B(例えば、高減速物質105A~Hを同伴するための減速マトリックス)の内部に捕捉された高減速物質105A~Hを含む。低減速物質104A~Bは、実際には放射線下で比較的安定している。表中の第1の例示的低減速物質は炭化ケイ素(SiC)104Aであり、例えば、化学蒸着(CVD)SiCとすることができる。
【0044】
[0054]高減速物質105A~Hは、低減速物質104A~Bの減速マトリックスの内部に入れられる。低減速物質104A~Bの減速材マトリックスは、弱減速(炭化ケイ素又は酸化マグネシウム)であるが、高減速物質105A~Hは、大きな減速能力を有する。高減速物質105A~Hは全て、減速能510が黒鉛よりも良好であり、低減速物質104A~Bは全て、減速能510が黒鉛減速材物質505ほど良好ではない。目標は、平均して低減速物質104A~Bと高減速物質105A~Hの減速能力(減速能510)が足し合わされ、黒鉛減速材物質505よりも放射線下で安定しており、原子炉炉心101内部で長く持続する複合減速材媒体103を生成することである。複合減速材媒体103のいくつかの例において、低減速物質104A~Bの減速マトリックスは、ベリリウム(Be)又はホウ素(B)化合物である高減速物質105A~Hと組み合わされる。
【0045】
[0055]原子炉用黒鉛減速材物質505の代替に成功するには、複合減速媒体103は、同様の減速能力を有し、原子炉用黒鉛減速材物質505よりも長い減速材寿命を達成する。複合減速材媒体103は、二相以上の構造(例えば、構成要素)、繊維状構造、又は合金であると考えてもよい。低減速物質104Aとしての炭化ケイ素(SiC)は、図4に示すような黒鉛減速材物質505とは異なり、わずかな「飽和」体積変化で100を超える原子当たりの変位(dpa)まで持ちこたえることが実証されている。本明細書に提示するこうした構造の一例は、図7及び8A~Cに記載するような放電プラズマ焼結(SPS)処理によってSiCホスト減速マトリックスに取り込まれた45%の体積分率の高減速物質105A~Hである。第2のホスト減速マトリックスは酸化マグネシウム(MgO)であり、同様に処理される。この迅速で高度な製造SPS技術によって設計された複合減速材媒体103の製造は、経済的な作製を示唆する。同様の作製技術は、熱間プレスと焼結である可能性がある。
【0046】
[0056]図6は、7つの異なるタイプの複合減速材媒体103A~Gと比較した、図5の黒鉛減速材物質505を含む原子炉炉心の経時的反応性を示すグラフ600である。グラフ600は、時間-X軸に示す年601-の関数としての反応性係数-Y軸に示すKeff602-によって測定すると、複合減速材媒体103A~Gのうちのいくつかは最初からより良好であり、いくつかはより劣っていることを実証している。複合減速材媒体103A~Gは、低減速物質104A~B及び高減速物質105A~Hの選択に応じて、黒鉛505よりも良好な結果又は劣った成績を示す可能性がある。寿命には、(1)燃料寿命-核燃料200が劣化して燃え尽き、原子炉が停止する;及び(2)減速材寿命-減速材が崩壊し、原子炉が危険すぎて停止する必要があると原子炉規制当局が判断する、という2つのバージョンがある。
【0047】
[0057]Keff602が1を下回ると、核燃料200の初期装填量は、燃料寿命に到達している。グラフ600は、複合減速材媒体103A~Gの減速材寿命を示しておらず、むしろ、グラフ600は、燃料寿命を示し、複合減速材媒体103A~Gは、黒鉛減速材物質505と同じ程度に効果的であることを示している。グラフ600はまた、選択した複合減速媒体103A~Gに基づいて減速を調節(即ち、増加又は減少)できることを示している。
【0048】
[0058]図6には示していないが、全ての複合減速材媒体103A~Gの場合の減速材寿命は、黒鉛減速材物質505よりも大幅に延長され、例えば、交換することなく燃料寿命に匹敵するものとなる。黒鉛減速材物質505の問題は、黒鉛減速材物質を交換するために原子炉炉心101を開放する極めて高額な費用であり、およそ1億ドルになる可能性がある。複合減速材媒体103A~Gは、より大きな先行投資となり得るが、将来原子炉炉心101の黒鉛減速材物質505を交換するために必要な出費を抑えることとなる。最初により高価であったとしても、複合減速材媒体103A~Gは、黒鉛減速材物質505が必要とする減速材要素の交換を必要としないことで、将来的にはより安価となる。典型的には、低体積の恒久的外側反射体265(図2C参照)を除き、黒鉛減速材物質505を含む原子炉炉心は全て、黒鉛減速材物質505が損傷を受けると交換される。こうした交換は、黒鉛減速材物質505をより高性能の複合減速材媒体103で代替しない限り不可避である。
【0049】
[0059]グラフ600は、代表的な原子炉タイプ、35V%SiCマトリックス燃料(FCM(登録商標)核燃料)を含む小型モジュール式角柱状高温ガス冷却原子炉(HTGR)についての代表的計算を提示する。グラフ600において、黒鉛減速材物質505は、9%濃縮UOTRISO FCM(登録商標)核燃料を燃料とする黒鉛減速原子炉に実装されている。示されるように、炭化ケイ素(SiC)の吸収がより大きいため、角柱状HTGR原子炉炉心に実装されたいくつかのBeSiCタイプの複合減速材媒体103A、103Dは、原子炉炉心の寿命に許容できないほど大きな影響を与えることがある。一方、SiCの減速マトリックスの割合を低下させるか、複合減速媒体103B~Cの多孔率を上げる、又はTRISO燃料粒子の濃縮度を上げると、角柱状HTGRにおいて黒鉛減速材物質505に匹敵する寿命が得られる。更に、MgO系複合減速材媒体103E~Gは、非常に良好な中性子性能を有することがわかる。
【0050】
[0060]グラフ600は、典型的な小型モジュール式高温ガス冷却原子炉(HTGR)において複合減速材を利用することの中性子への影響を提示する。具体的には、Keff602が炉心反応性の尺度であり、年601の関数として予測され、標準的な原子炉用黒鉛減速材物質505と比較される。多数のケースに低減速物質104の減速マトリックスのタイプの変数(100%高密度SiC、100%高密度MgO及び20%多孔質SiC)と、核燃料200の可変ウラン濃縮度が示されている。図6の例において、核燃料200は、炭化ケイ素マトリックス207の内部に埋め込まれた三重等方性被覆(TRISO)燃料粒子206A~Nの燃料コンパクト205で構成されている。減速マトリックスとベリリウム相の体積分率も変数である。過度に寄生的な減速材、減速性過剰で核分裂性物質に変換可能な燃料を含む溶体(反応性過剰)、及び原子炉用黒鉛減速材物質505と同等の一組のオプションの場合の曲線が示されている。
【0051】
[0061]図7は、複合減速材媒体103の複合減速材ブロック220を作製するために実施できる方法のフローチャートである。ステップ700で開始され、方法は、低減速物質104と高減速物質105を含む2種以上の減速材を選択して複合減速材媒体103を形成するステップを含む。これは、低減速物質104及び高減速物質105用の粉末を選択することを含む。一般に、低減速物質104は、炭化ケイ素(SiC)104A又は酸化マグネシウム(MgO)104Bを含む。高減速物質105は、ベリリウム(Be 105H)、ホウ素(B)、又はそれらの化合物を含む。より具体的には、高減速物質105は、ホウ化ベリリウム(BeB 105A、BeB 105B、BeB、若しくはBeB)、炭化ベリリウム(BeC 105C)、ジルコニウムベリライド(ZrBe13 105D)、チタンベリライド(TiBe12 105E)、酸化ベリリウム(BeO 105F)、又は炭化ホウ素(11C 105G)うちの少なくとも1種を含む。
【0052】
[0062]ステップ710に続き、方法は、低減速物質104に基づいて、焼結助剤と、複合減速材混合物中の焼結助剤の重量パーセント(w/w%若しくはwt%)又は重量分率とを選択するステップを更に含む。これは、低減速物質104及び高減速物質105用の粉末の組合せに応じて、1つ又は複数の適切な焼結助剤と、重量パーセント又は分率を選択することを含む。焼結助剤は、共晶粉末であり、例えば、炭化ケイ素の場合は酸化物(例えば、イットリア及びアルミナ)であり、酸化マグネシウムの場合はリチウムである。重量パーセント又は重量分率に代えて質量パーセント又は質量分率を使用して複合減速材混合物の混合比を表すことができる。
【0053】
[0063]焼結助剤は、例えば、低減速物質104に応じて異なる。焼結助剤には、様々な酸化物、例えば酸化イットリウムとして公知のイットリア(Y)、又は酸化アルミニウムとして公知のアルミナ(Al);及びリチウムが含まれる。低減速物質104が炭化ケイ素(SiC)104Aを含む第1の例において、焼結助剤は、イットリア(Y)又はアルミナ(Al)を含む。この第1の例において、複合減速材混合物中の焼結助剤の選択される重量パーセント(w/w%)は、イットリア又はアルミナの3~10重量パーセント(w/w%)、より好ましくは4~10w/w%である。低減速物質104が酸化マグネシウム(MgO)104Bを含む第2の例において、焼結助剤は、リチウムを含む。この第2の例において、複合減速材混合物中の焼結助剤の選択される重量パーセント(w/w%)は、リチウムの3~10重量パーセント(w/w%)である。
【0054】
[0064]ステップ720に進むと、方法は、2種以上の減速材を、選択した焼結助剤と選択した重量パーセント(w/w%)で混合して、複合減速材混合物を創出するステップを更に含む。ステップ730が終了すると、方法は、複合減速材混合物を放電プラズマ焼結(SP)して、複合減速材媒体103で形成された複合減速材ブロック220を作製するステップを更に含む。SPSは、添加剤(例えば、焼結助剤)を使用して焼結温度を抑制し、それによってプロセスの実行に必要な処理温度と圧力を低下させる。焼結助剤は、プロセスを実行するための温度と時間を低減し、複合減速材媒体103の高減速物質105(例えば、ベリリウム及びホウ素化合物)の蒸発損失を有利に最小化する。
【0055】
[0065]複合減速材混合物を放電プラズマ焼結するステップは、複合減速材混合物をマンドレルに注入するステップ;及びダイスをマンドレルに押し込んで、複合減速材混合物に処理温度と圧力を加え、複合減速材媒体103で形成された複合減速材ブロック220を作製するステップを含む。ダイスは、複合減速材混合物に処理温度と圧力を加えるピストンのようなものである。処理温度は、例えば、低減速物質104に応じて異なる。
【0056】
[0066]低減速物質104が炭化ケイ素(SiC)104Aを含む、及び/又は焼結助剤がイットリア(Y)若しくはアルミナ(Al)を含む第1の例に戻ると、処理温度は、摂氏1,400度(℃)から摂氏1,800度(℃)の間の範囲である。炭化ケイ素低減速マトリックス104AのSPS処理の最後に、イットリア又はアルミナは部分的に気化する。したがって、イットリア又はアルミナが複合減速材ブロック220中に部分的に存在することがあり、複合減速材媒体103におけるSPS加工後に、微量で検知可能な場合がある。
【0057】
[0067]低減速物質104が酸化マグネシウム(MgO)104Bを含む、及び/又は焼結助剤がリチウムを含む第2の例に戻ると、処理温度は、摂氏1,300度(℃)から摂氏1,600度(℃)の間の範囲である。リチウム焼結助剤は、酸化マグネシウム低減速物質104BのSPS処理の最後に完全に気化する。したがって、リチウムは、複合減速材ブロック220中に存在せず、典型的には検知不能である(即ち、リチウムは、一過性添加剤のように消滅する)。
【0058】
[0068]電場支援焼結技術(FAST)又はパルス通電焼結(PECS)としても公知の放電プラズマ焼結(SPS)は、焼結技術である。SPSの主な特性は、パルス又は非パルスDC又はAC電流が黒鉛ダイス、及び導電性サンプルの場合、圧粉体を直接通過することである。ジュール加熱は、圧粉体の高密度化において主要な役割を果たすことがわかっており、そのため、従来の焼結技術と比較して、より低い焼結温度でほぼ理論密度が達成される。外部発熱体によって熱が供給される従来の熱間プレスとは対照的に、発熱は内部で起こる。これによって非常に高い加熱又は冷却速度(最大毎分1,000ケルビン)が促進されるため、焼結プロセスは非常に迅速(数分以内)である。SPSプロセスの一般的な速度は、SPSプロセスが、標準的な高密度化経路に伴う粗大化を回避しながら、ナノサイズ又はナノ構造の粉末を高密度化する可能性を有することを保証する。SPSは、磁気的、磁気電気的、圧電的、熱電気的、光学的、又は生物医学的特性が強化されたナノ粒子に基づくセラミックを調製するための良好な方法である。
【0059】
[0069]図8Aは、放電プラズマ焼結(SPS)を利用して複合減速材ブロック220を作製する図7の方法の処理写真800である。SPS処理写真800は、材料を放電プラズマ焼結(SPS)して複合減速材ブロック220を生成する際に直流焼結(DCS)ウィンドウを通して見たSPS手順を示す。この場合、粉末を収容する黒鉛ダイス内の黒鉛パンチ(白熱光を放っている)が図8AのDCSウィンドウを通して示されている。SPSは、遙かに低い処理温度での作製を可能にして複合減速材ブロック220を迅速に生成する高度な製造技術である。低減速物質104の粉末と高減速物質105の粉末を混合し、焼結助剤を添加する。SPSは、粉末の迅速な加熱を可能にする。高減速物質105を封入するため、SPS中、高減速物質105(例えば、ベリリウム化合物)が蒸発しないうちに低減速物質104を固化させて、複合減速材媒体103の複合減速材ブロック220を形成する。
【0060】
[0070]複合減速材媒体103の処理は、比較的純粋なSiC粉末の高真空直流焼結(Sinterland LABOX 3010KF)を用いて実行することができる。高密度に固められる現在の粉末には、35~100ナノメートル(nm)の範囲のナノSiC粉末と、0.2~2ミクロン(μm)の範囲のアチソン法によるSiC粉末とが含まれる。材料は全て、速度論的に安定しており、完全な不純物のない分散を確実にし、放電プラズマ焼結装置で冷間プレス焼結される。
【0061】
[0071]図8Bは、図7の方法の放電プラズマ焼結(SPS)中の時間825に亘る処理温度815と圧力(ダイス変位)820を示すグラフ810である。グラフ810は、SPSで処理を実行して複合減速材ブロック220を作製するための温度815、圧力820(例えば、ダイス変位)、及び時間825を示す。グラフ810は、SPS手順の相対時間-温度軌跡を与え、低減速物質104AとしてのSiCの場合の1,500℃までの範囲の処理温度を示している。低減速物質104BとしてのMgOの場合の処理温度は、1,300~1,600℃の範囲とすることができる。低減速物質104、例えば炭化ケイ素(SiC)のミル処理の実行は、炉が複合減速材ブロック220を作製するための2,000℃を遙かに超える必要な温度を達成するのに数時間かかることもある。SPS処理では、処理温度1,600℃~1,800℃で、10分で複合減速材媒体103の複合減速材ブロック220の作製が可能である。
【0062】
[0072]焼結添加剤の吸湿傾向を最小限とするため、ジルコニウム又はジルコニアを添加してもよい。低減速物質104AとしてのSiCの場合の処理温度は、高密度化を強化するためアルミナ又はイットリアの焼結添加剤を添加した状態で、1,400~1,800℃の範囲とすることができる。
【0063】
[0073]図8Cは、高減速物質105C(BeC)を封入する低減速物質104A(SiC)を示す、複合減速材媒体103の研磨断面のミクロンレベル写真830である。ミクロンレベル写真830は、生成された複合減速材ブロック220の複合減速材媒体103の顕微鏡像であり、高減速物質105Cの界面付近の低減速物質104Aの結晶微細構造を示している。低減速物質104Aの炭化ケイ素減速マトリックスは、高減速物質105C(BeC)のベリリウム材料の多孔質炭素コーティングを完全に封入(被覆)している。ベリリウムは毒性があるため、毒性のない炭化ケイ素低減速物質104Aでのベリリウムの封入は、毒性のある高減速物質105Cへの曝露が排除されるため、有利である。多孔質炭素中間層は、高減速物質105Cのベリリウムにコーティングされており、したがって、炭化ケイ素低減速物質104Aとの間に位置している。低減速物質104Aの炭化ケイ素減速マトリックス(SiC)は、高減速物質105Cの周囲で完全に高密度化されている。
【0064】
[0074]図8Cのミクロンレベル写真830は、二相SiCマトリックス複合体(減速材の第2の相の体積分率およそ35%)の画像を提示する。図8Bに図示するように、1500℃を超える焼結が保持時間約10分で適用され、比較的小さい(直径8mm)部分について、ほぼ完全密度のSiC減速マトリックス密度が達成された。
【0065】
[0075]改良型核分裂原子炉での用途を含む、原子炉で使用するための様々な複合減速材を開示してきた。複合減速材は、例えば、低減速物質104(例えば、SiC又はMgOの連続体又は放射線安定マトリックス相)に含有された高減速物質105(例えば、ベリリウム含有相)である。低減速物質104の使用によってもたらされる多数の安全、経済、及び廃棄物削減上の利点を実現しつつ、高減速物質105の使用により、原子炉用黒鉛減速材物質505と同様の中性子減速を実現することができる。したがって、複合減速材は、原子炉用黒鉛減速物質505を代替することができ、優れた減速材寿命を有し、安全性及び廃棄物処理特性が向上している。例示的作製処理は、低減速物質104(例えば、炭化ケイ素と酸化マグネシウム放射線安定マトリックス)と高減速物質105の放電プラズマ焼結(SPS)中の共晶粉末の使用を含む。
【0066】
[0076]上記のように、原子炉炉心101用の、複合減速材媒体103で形成された複合減速材(例えば、複合減速材ブロック220)を作製する方法が開示される。方法は、低減速物質104(例えば、第1のマトリックス相)の連続体の中に高減速物質105(例えば、第2の捕捉相)を含む複合減速材媒体103(二相複合減速材)を生成することを含む。低減速物質104は、SiC又はMgOのいずれかである。高減速物質105は、ベリリウム含有化合物、例えばBe2C、BeO、又はBe2C若しくはBeOのシェルを持つベリリウム金属のいずれかである。低減速物質104と高減速物質105の間の中間相は、n-アルファ反応によって生成されるヘリウムを吸収できる多孔質の柔軟構造である。複合減速材媒体103は、原子炉炉心101の寿命成分である。
【0067】
[0077]理解されることであるが、本明細書で使用される用語及び表現は、特定の意味が本明細書において別段に示されている場合を除き、対応するそれぞれの調査及び研究の領域に関してこうした用語及び表現に与えられるような通常の意味を有する。関係語、例えば第1及び第2などは、ある実体又は作用を別のものと区別するためだけに使用されることがあり、こうした実体又は作用間に、何らかの実際のこうした関係又は順序を必ずしも必要とするものでも、含意するものでもない。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」という用語、又はこれらの他の変形はいずれも、非排他的な包含を網羅することを意図しており、したがって、要素又はステップの列挙を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素又はステップのみを含むのではなく、明示的に列挙されていない、又はこうしたプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有ではない他の要素又はステップを含んでもよい。「1つの(a)」又は「1つの(an)」が前置される要素は、さらなる制約を受けることなく、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置にさらなる同一要素が存在することを妨げるものではない。
【0068】
[0078]特に明記しない限り、以下の特許請求の範囲を含む本明細書に記載されている測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、及びその他の仕様はいずれも、近似であり、正確なものではない。そうした量は、それらが関連する機能及びそれらが関係する技術において慣例的なものと整合する合理的な範囲を有することが意図されている。例えば、特に別段に明記しない限り、パラメータ値などは、記載された量から±10%程度変動する可能性がある。
【0069】
[0079]加えて、前述の詳細な説明では、開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な例にまとめられていることがわかる。この開示方法は、請求された例が各請求項で明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈すべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、保護されるべき主題は、いずれかの単一の開示された例の全ての特徴に満たない中に存在する。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、個別に請求される主題としてそれ自体で成立する。
【0070】
[0080]上記は、最良の形態及び/又は他の例と考えられるものを説明してきたが、そこに様々な修正が行われてもよく、本明細書において開示される主題が様々な形態及び例で実施されてもよく、それらは多数の用途に適用されてもよく、その一部のみが本明細書に記載されていることが理解される。下記の特許請求の範囲によって、本概念の真の範囲内に含まれる、あらゆる修正及び変形について請求することが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C