(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ネットワークコネクタのための電気シールド部材
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6581 20110101AFI20230530BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R43/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019025483
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518405522
【氏名又は名称】アプティブ・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・ドロエスベケ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ルートヴィヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クルピエラ
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァサン・マノハラン
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152308(JP,A)
【文献】特開平10-223317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56 - 13/72
H01R 43/00 - 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークコネクタ(10)のための電気シールド部材(100)であって、該電気シールド部材(100)は、曲げられおよび切断されたシート金属から形成されており、
シールドケーブル(300)のケーブル端部を受容するための受容部(110)であって、前記ケーブル(300)のシールド(330)と接触するように構成された、受容部(110)と、
該受容部(110)から延びた少なくとも1つの端子梁(120;140)と、を備え、該端子梁(120;140)は、
前記電気シールド部材(100)を、相手側のネットワークコネクタの相手側のシールド部材(600)に電気的に接続するための第1接触点(127;147)と、
前記端子梁(120;140)の遠位端(126;146)に設けられた連結部(125;145)であって、該連結部(125;145)は、ネットワークコネクタ筐体(200)の対応した連結部(225;245)に連結されるように構成された、連結部(125;145)と、を備え、
前記端子梁(120;140)は可撓性の端子梁(120;140)であり、前記電気シールド部材(100)が組み立てられていない状態にある場合に、前記受容部(110)に対して外向きに傾斜されて配置され、前記端子梁(120;140)の連結部(125;145)が、前記ネットワークコネクタ筐体(200)の前記対応した連結部(225;245)に連結された場合に、前記端子梁(120;140)の少なくとも遠位端(126;146)は、内向きに曲げられるように構成されている、電気シールド部材(100)。
【請求項2】
前記受容部(110)は受容継手であり、前記端子梁(120;140)の前記連結部(125;145)が、ネットワークコネクタ筐体(200)の対応した連結部(225;245)に連結された場合に、前記端子梁(120;140)は、前記受容継手(110)の長手軸(112)に略平行に
延びている、請求項1に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項3】
前記連結部(125;145)は連結突起であり、前記
端子梁(120;140)の遠位端(126;146)の幅よりも小さい幅を
有する、請求項1または2に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項4】
前記端子梁(120;140)は、第2接触点(128;148)および
第3接触点(129;149)を備え、前記第2接触点および/または第3接触点は、前記受容部(110)と前記第1接触点(127;147)との間に設けられており、
各接触点(127、128、129;147、148、149)は、前記端子梁(120;140)に
配置されて、自身のスライド軌跡を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項5】
前記端子梁(120;140)は、
前記受容部(110)から延びた第1セクション(121;141)であって、前記受容部(110)に対して外向きに傾斜されて配置された、第1セクション(121;141)と;
該第1セクション(121;141)から延びて、ネットワークコネクタの嵌合方向(A)に略平行に配置された第2セクション(122;142)と;
該第2セクション(122;142)から延びた第3セクション(123;143)であって、前記電気シールド部材が組み立てられた状態において、前記第2セクション(122;142)に対して内向きに傾斜されて配置された、第3セクション(123;143)と;
をさらに備え、
前記第1接触点(127;147)は、前記第2セクションと前記第3セクションとの間に
設けられ、
前記第2接触点および/または第3接触点(128、129;148、149)は、前記第1セクションと前記第2セクションとの間に
設けられている、請求項
4に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項6】
前記端子梁(120;140)は、長手方向の切り抜き部(124;144)を備え、
該長手方向の切り抜き部は、前記第1セクション(121;141)および/または前記第2セクション(122;142)内に
延びており、
前記第2接触点(128;148)および前記第3接触点(129;149)は、前記長手方向の切り抜き部(124;144)の両側且つ前記端子梁(120;140)の同一の面に
設けられている、請求項
5に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項7】
前記端子梁(120;140)の前記第1接触点(127;147)と前記第2接触点および/または第3接触点(128、129;148、149)との間の長手方向距離は、少なくとも3mm
である、請求項4
から6のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項8】
前記電気シールド部材(100)は、2つの端子梁(120;140)を備えている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの端子梁(120;140)の長さは、6mmから14mmの範囲内
であり、且つ/または
前記少なくとも1つの端子梁(120;140)の幅は、1.5mmから3mmの範囲内
である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの端子梁(120;140)および前記受容部(110)は、一体的に形成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)。
【請求項11】
少なくとも毎秒100Mbitおよび/または少なくとも毎秒1Gbitのデータ速度において
通信可能なネットワークコネクタ(10)であって、
少なくとも1つの電気接触端子(410;420)と、
ネットワークコネクタ筐体(200)と、
請求項1から10のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)と、
を備え、
前記電気シールド部材(100)は、前記ネットワークコネクタ筐体(200)内に少なくとも部分的に受容されている、ネットワークコネクタ(10)。
【請求項12】
前記ネットワークコネクタ筐体(200)は、少なくとも1つの対応した連結部(225;245)を備え、前記対応した連結部(225;245)は、前記電気シールド部材(100)の端子梁の前記連結部(125;145)と連結するように構成されている、請求項11に記載のネットワークコネクタ(10)。
【請求項13】
前記対応した連結部(225;245)は連結凹部であり、前記対応した連結部(225;245)は、少なくとも四側において前記端子梁の連結部(125;145)を取り囲むように
構成されている、請求項12に記載のネットワークコネクタ(10)。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載のネットワークコネクタ(10)と、
対応した相手側のコネクタであって、前記ネットワークコネクタ(10)の端子梁(120;140)の少なくとも1つの接触点に電気的に接続されるように形成された、相手側のシールド部材(600)が設けられた、対応した相手側のコネクタと、
を備えたネットワークコネクタシステムであって、
前記相手側のシールド部材(600)および前記ネットワークコネクタ(10)の端子梁(120;140)は、嵌合の際に、前記ネットワークコネクタ(10)の電気接触端子が、前記対応した相手側のコネクタの任意の部分と接触する前に、前記相手側のシールド部材および前記端子梁が接触するように配置されており、
前記ネットワークコネクタシステムは、イーサネット(登録商標)ネットワークシステムであり、少なくとも毎秒100Mbit
の速度においてデータ送信するように構成されている、ネットワークコネクタシステム。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載のネットワークコネクタ(10)を組み立てる方法であって、
ネットワークコネクタ筐体(200)を提供するステップと、
請求項1から10のいずれか一項に記載の電気シールド部材(100)を提供するステップと、
前記端子梁(120;140)を内向きに曲げるステップと、
前記端子梁の連結部(125;145)を、前記ネットワークコネクタ筐体(200)の対応した連結部(225;245)と連結するステップと、
を含んでいる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークコネクタ、ネットワークコネクタおよびネットワークコネクタシステムのための電気シールド部材に関し、同様にネットワークコネクタを組み立てる方法であって、少なくとも毎秒100Mbit、および/または毎秒1Gbitのデータ速度におけるネットワーク通信を好適に可能にしたネットワークコネクタを組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークコネクタは、少なくとも毎秒100Mbitおよび/または毎秒1Gbitのデータ速度におけるネットワーク通信を可能にしており、自動車のような自動車用アプリケーション内で使用され得る。近年、自動車には数々の車載電子機器が備わっている。これらの車載電子機器は、センサ、制御機能といった、広範囲の機能性を提供している。これらの車載電子機器は、標準的な民生電子機器機能、ナビゲーション制御、および/または安全機構に加えて、例えば自立駆動のためのフィードバック制御を提供している。単一の車載電子機器部品間のデータ通信のために、データネットワークが自動車内に確立されている。これらのデータネットワークは、高いデータ速度で通信し、安全且つ高信頼性の通信を可能にしている。標準的に、データネットワークはイーサネット(登録商標)ネットワークに基づいており、最高で毎秒100Mbitおよび/または毎秒1Gbitのデータ速度において作動している。
【0003】
新種の車載電子機器の提供に伴い、より高いデータ速度の需要が増大している。しかしながら、データ速度が高くなればなるほど、ネットワークの単一ブランチ間のクロストークレベルが高くなり、特にこれらのブランチのコネクタおよび/またはケーブルが、互いに隣接して且つ略平行に配置された場合に高くなる。ケーブルハーネスが自動車の配線のために使用された場合に、このことは標準的である。
【0004】
さらに、増大したデータ速度に伴い、コネクタのEMC特性(電磁両立性)が減少する。したがって、異なったコネクタが、100Mbitネットワークのために、および1Gbitネットワークのために提供されている。最大で1Gbitのデータ速度におけるクロストークレベルの増大の克服およびEMC特性の減少のために、シールド部材が、ネットワークコネクタまたはネットワークコネクタシステムの筐体内に標準的に設けられ、放射物のコネクタ筐体への進入および/または筐体からの放出を防止している。このシールド部材は、標準的にコネクタ筐体を全体的に取り囲み、それにより良好なシールド性能を提供している。しかしながら、そのようなシールド部材は、追加の製造コストの原因となる。
【0005】
シールド性能のさらなる改良のために、既知のシールド部材は、標準的に雄コネクタの個別のシールド部材および/または雌コネクタのさらなる個別のシールド部材に電気的に接続される。したがって、連続的なシールドが、コネクタの全長にわたって達成されることが可能である。個別のシールド部材の接触界面は、いわゆる接触点を利用して標準的に達成される。技術的に、接触点は任意の適切な形状を有すると知られている。接触点の形状は、数学的な点へと減少されるのではなく、任意の適切な形状または面積を有することが可能である。例えば、接触点は線接触または面接触を提供することが可能である。接触界面および特に接触点は、減少された導電性を提供し、シールドの連続的な要素に受けられている。したがって、技術的に接触点の数を減らす必要がある。
【0006】
さらに、これらの接触点は、コネクタおよび/またはシールド部材から突出した、いわゆる端子梁に標準的に設けられている。既知の端子梁は、保管、輸送、および/または嵌合の際に、座屈または損傷する傾向がある。自動車用コネクタは、標準的に自動的に嵌合されるので、このことは望ましくない。したがって、損傷したコネクタは、組み立てラインにおいて望ましくない保守作業を導き、および/または損傷したコネクタの手動交換を必要とし得る。
【0007】
さらに、既知のシールド部材はケーブルに圧着され、続いてケーブルと共にコネクタ筐体内に挿入される。例えば自動車の配線作業により、ケーブルが軸方向に回転した場合、コネクタ筐体に関連して、シールド部材を移動させる危険性がある。回転移動が生じた場合、嵌合力は増大し、嵌合が不可能になり得、および/またはコネクタが嵌合の際に損傷し得る。
【0008】
したがって、ネットワークコネクタ、前述の欠点を克服したネットワークコネクタおよびネットワークコネクタシステムのための電気シールドを提供することが技術的に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的は、請求項1による電気シールド部材、請求項11によるネットワークコネクタ、請求項14によるネットワークコネクタシステム、および/または請求項15によるネットワークコネクタの組立方法により、少なくとも部分的に解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特に、前述の目的は、ネットワークコネクタのための電気シールド部材により解決され、この電気シールド部材は、曲げられおよび切断されたシート金属から形成されている。電気シールド部材は、シールドケーブルのケーブル端部を受容するための受容部を備え、この受容部は、ケーブルのシールドと接触するように構成されている。さらに、電気シールド部材は、受容部から延びた少なくとも1つの端子梁を備え、この端子梁は、電気シールド部材を、相手側のネットワークコネクタの相手側のシールド部材に電気的に接続するための第1接触点を備えている。さらに、少なくとも1つの端子梁は、端子梁の遠位端に設けられた連結部を備え、この連結部は、ネットワークコネクタ筐体の対応した連結部に連結されるように構成されている。端子梁は可撓性の端子梁であり、電気シールド部材が組み立てられていない状態にある場合に、受容部に対して外向きに傾斜されて配置され、端子梁の連結部が、ネットワークコネクタ筐体の対応した連結部に連結された場合に、端子梁の少なくとも遠位端は、内向きに曲げられるように構成されている。
【0011】
電気シールド部材は、ネットワークコネクタの少なくとも毎秒100Mbit、および好適に少なくとも毎秒1Gbitのデータ速度における通信を可能にしている。曲げられおよび切断されたシート金属からの電気シールド部材の形成は、コストを減少させて高いシールド性能を提供することを可能にしている。さらに、そのようなシールド部材は、ケーブル端部に容易に圧着されまたはその周囲に巻き付けられて、ケーブルのシールドと電気シールド部材との間の高信頼性の機械的および電気的接続を提供することが可能である。
【0012】
ケーブル端部が受容部内に受容された場合、受容部は全体的にケーブル端部を取り囲み得る。特に、受容部はケーブル端部を少なくとも300°、好適に少なくとも330°、最も好適に360°取り囲み、完全にシールドされたケーブル端部を提供し得る。受容部は、ケーブル端部の周囲に少なくとも部分的に巻き付き、そこに圧着されることが可能である。さらに、受容部は、受容部をケーブルのシールドとはんだ付けまたは溶接した、はんだ付け部および/または溶接部を代替的にまたは追加的に備え得る。
【0013】
ケーブルのシールドは、ストランドシールド、ブレードシールド、フォイルシールド、または任意の他のタイプのシールド形式において提供されることが可能である。
【0014】
受容部から延びた少なくとも1つの端子梁は、シールド部材を、相手側ネットワークコネクタの相手側シールド部材と電気的に接続することが可能である。したがって、個別のシールド部材がコネクタ筐体内に必要とされないため、個別のシールド部材の数は3つから2つへと減少されている。したがって、連続した接触界面の数は減少されることが可能であり、全体的なシールドの抵抗を減少させている。したがって、シールド性能は改善されることが可能である。
【0015】
端子梁の連結部は、端子梁の遠位端がコネクタ筐体と連結することを可能にしている。 したがって、端子梁は、遠位端において追加的に固定され、予備荷重を負荷されている。端子梁の連結部において測定された予備荷重は、0.1Nから0.5Nの範囲、好適に0.2Nから0.4Nの範囲、最も好適に0.25Nから0.3Nの範囲である。端子梁が、受容部からその近位端へと延びているので、シールド部材が組み立てられた状態において、端子梁は2つの端部において固定されている。したがって、端子梁は所定のバネ力により予備荷重をかけられることが可能であり、結果的に嵌合力を減少させる。さらに、嵌合工程の間に、嵌合力はほぼ一定に制御され且つ維持されることが可能であり、このことは、電気シールド部材を備えたネットワークコネクタの自動組み立てを容易にしている。またさらに、端子梁の連結部をコネクタ筐体に連結することにより、端子梁は、端子梁および/またはシールド部材の筐体に対する座屈または回転移動のような損傷が減少する傾向にある。
【0016】
さらに、受容部は受容継手であってよく、端子梁の連結部が、ネットワークコネクタ筐体の対応した連結部に連結された場合に、端子梁は、受容継手の長手軸に略平行に延びていてもよい。受容継手を設けることは、電気シールド部材とケーブル端部との間の安全な電気的および機械的接続を可能にしている。さらに、継手に略平行な端子梁の配置は、接触力および嵌合力の減少を可能にしている。受容部の継手形状は、ケーブル端部の完全なシールド(すなわち360°)をさらに可能にしている。
【0017】
端子梁の連結部は連結突起であってよく、連結梁の遠位端の幅よりも小さい幅を好適に有していてもよい。連結突起は、端子梁の遠位端から延びていてもよく、したがって、電気シールド部材が組み立てられた状態にある場合に、その遠位端において端子梁を固定することを可能にしている。端子梁の遠位端に比較して減少した幅を有する連結突起を設けることは、対応した連結部との連結を容易にすることを可能にしている。特に、連結突起は、相手側のコネクタ筐体の対応した連結部内への、連結突起の最大挿入深さを決定し得る。これにより、コネクタ筐体内へのシールド部材の挿入深さも制限されている。したがって、ネットワークコネクタ/ネットワークコネクタ筐体内の電気シールド部材の組み立ては、容易になる。
【0018】
さらに、端子梁は第2接触点を備え得る。さらに、端子梁は第3接触点を備えていてもよく、第2接触点および/または第3接触点は、相手側のネットワークコネクタの相手側の電気シールド部材に、電気シールド部材を電気的に接続するように構成されている。第2接触点および/または第3接触点は、電気シールド部材の第1接触点と受容部との間において、端子梁に設けられていてもよい。
【0019】
並列回路内に設けられた接触点の数の増大は、全体的な接触抵抗を減少させ、したがって、より高いシールド性能を導くので望ましい。さらに、1つの接触点が相手側のシールド部材と正確に接触していない場合、さらなる接触点が存在し、十分な電気的接続を提供することが可能であるので、シールドは損傷を低下させる傾向にある。したがって、電気シールド部材は、例えば油、埃、またはそれらに類似したものによる損傷および/または汚染を減少させる傾向にある。またさらに、複数の並列の接触点は、振動が発生した場合であっても、少なくとも1つの接触点が、正確な電気接続を提供することが可能であるので、耐震動の接続を可能にしている。振動は、不均一な路面により生じ得るか、または例えばモータの動作により、自動車内において内部的に発生する振動であり得る。
【0020】
さらに、各接触点は、端子梁が独自のスライド軌跡を有するように配置され得る。特に、少なくとも2つの接触点は、多様なスライド軌跡を有する端子梁に設けられ得る。スライド軌跡は、嵌合の際に接触点により追従される軌跡である。多様なスライド軌跡は、信頼性の高い電気接続を可能にし、これによりシールドの改良を可能にしている。
【0021】
端子梁の第1接触点と第2接触点との間および/または第1接触点と第3接触点との間の長手方向距離は、少なくとも3mm、好適に少なくとも4mm、最も好適に少なくとも4.5mmとし得る。特に、第1接触点と第2接触点との間および/または第1接触点と第3接触点との間の長手方向距離は、4mmから5mmの範囲内とし得る。この長手方向距離は、離間された接触点を備えた可撓性の端子梁を導き、例えば嵌合の際、または始動もしくは衝撃のような厳しい状況にある際に、対応したシールド部材と接触状態を維持することを可能にしている。
【0022】
端子梁は、受容部から延びた第1セクションであって、受容部に対して外向きに傾斜されて配置された、第1セクションと、第1セクションから延びて、ネットワークコネクタの嵌合方向「A」に略平行に配置された第2セクションと、第2セクションから延びた第3セクションであって、電気シールド部材が組み立てられた状態において、第2セクションに対して内向きに傾斜されて配置された、第3セクションと、をさらに備えてもよく、第1接触点は、第2セクションと第3セクションとの間に設けられ、第2接触点および/または第3接触点は、第1セクションと第2セクションとの間に設けられてもよい。
【0023】
端子梁のこの構造は、並列回路の形式において、端子梁に沿って長手方向に分配された複数の接触点を設けることを可能にしている。したがって、対応した相手側のシールド部材に接続される場合、電気シールド部材の界面抵抗が減少されることが可能である。さらに、端子梁のこの構造は、嵌合力または挿入力の減少を導き、座屈のような損傷を減少させる傾向があることが示されている。
【0024】
端子梁は、長手方向の切り抜き部を備え得る。長手方向の切り抜き部は、端子梁の第1セクションおよび/または第2セクション内に設けられ得る。長手方向の切り抜き部を設けることは、端子梁の可撓性を増大させることを可能にしている。それにより、接触力が適応可能であり、嵌合力または挿入力は減少されることが可能である。特に、長手方向の切り抜き部は、第1接触点および第3接触点が、切り抜き部の両側であるが、端子梁の同一の面に配置されるように設けられ得る。
【0025】
嵌合力または挿入力は1Nから5Nの範囲、好適に1.5Nから3Nの範囲、最も好適に2Nから3Nの範囲内とし得る。
【0026】
電気シールド部材は少なくとも2つの端子梁、好適に少なくとも3つの端子梁、最も好適に少なくとも4つの端子梁を備えてもよく、端子梁は、組み立てられた状態において、受容部の周囲に均等に分配され得る。端子梁の数の増大は、嵌合界面の抵抗の減少を導き、シールド特性を改善している。例えば、200MHzにおいて通信し且つ前述の電気シールド部材が設けられたコネクタは、少なくとも60dBの減衰、好適に少なくとも65dBの減衰、最も好適に70dBの減衰を達成することが可能である。
【0027】
さらに、端子梁の長さは6mmから14mmの範囲内、好適に7mmから12mmの範囲内、最も好適に8mmから10mmの範囲内とし得る。それらの長さを有する端子梁を設けることは、ESD機能の改善を導き得る。特に、電気シールド部材の端子梁は、組み立てられた状態において、嵌合の際にコネクタ/相手側のコネクタの電気信号端子が接触状態になる前に、対応した相手側のシールド部材と接触し得る。したがって、接地電気シールド部材は、ESD機能を改善することが可能である。
【0028】
さらに、端子梁の幅は1.5mmから3mmの範囲内、好適に1.8mmから2.8mmの範囲内、最も好適に1.9mmから2.3mmの範囲内とし得る。これらの寸法は、嵌合力または挿入力を減少させた、改善されたシールドを提供することを示している。幅広の端子梁は、より狭い幅を有する端子梁に与えられた特性よりも改善されたシールド特性を提供している。長手方向の切り抜き部を設けることにより、より幅広の端子梁の可撓性が、所望のレベルにおいて維持されている。切り抜き部は0.2mmから1.3mmの範囲、好適に0.3mmから1.0mmの範囲、最も好適に0.4mmから0.6mmの範囲の幅を有し得る。
【0029】
少なくとも1つの端子梁および受容部は、一体的に形成され得る。したがって、受容部と端子梁との間には接触界面が無く、したがって、電気シールド部材の抵抗率は減少され、シールド特性の改善を導くことが可能である。
【0030】
課題はネットワークコネクタによりさらに解決され、ネットワークコネクタは、少なくとも毎秒100Mbitおよび/または少なくとも毎秒1Gbitのデータ速度において通信可能である。ネットワークコネクタは、少なくとも1つの接触端子と、ネットワークコネクタ筐体と、前述の電気シールド部材と、を備え、電気シールド部材は、ネットワークコネクタ筐体内に少なくとも部分的に受容されている。これらのネットワークコネクタは、高いデータ速度において信頼性の高い通信を行うことが可能である。
【0031】
ネットワークコネクタ筐体は、少なくとも1つの対応した連結部を備え、対応した連結部は、電気シールド部材の端子梁の連結部と連結するように構成されている。シールド部材の端子梁の、コネクタ筐体の対応した連結部との連結により、端子梁は近位端においておよび遠位端において固定される。このことは、嵌合力または挿入力の減少を可能にし、より信頼性の高いネットワークコネクタを提供しており、そのことは、端子梁の座屈またはコネクタ筐体に対する電気シールド部材の回転移動のような損傷を減少させる傾向にある。
【0032】
対応した連結部は、連結凹部またはあぶみ状に形成された連結部であってもよく、対応した連結部は、少なくとも四側において端子梁の連結部を取り囲むように構成され得る。したがって、端子梁の遠位端の連結部は、対応した連結部内に堅固に保持され、電気シールド部材は、例えば回転移動に対して固定されることが可能である。
【0033】
前述の課題は、前述のネットワークコネクタと対応した相手側のコネクタとを備えたネットワークコネクタシステムであって、対応した相手側のコネクタには、ネットワークコネクタの端子梁の少なくとも1つの接触点に電気的に接続されるように形成された、相手側のシールド部材が設けられた、ネットワークコネクタシステムによりさらに解決され、ネットワークコネクタシステムは、イーサネット(登録商標)ネットワークシステムであり、少なくとも毎秒100Mbitおよび/または好適に少なくとも毎秒1Gbit速度においてデータ送信するように構成されている。ネットワークコネクタシステムは、例えば自動車内において、信頼性の高い安全な通信を可能にしている。
【0034】
さらに、前述の課題は、前述のようなネットワークコネクタの組立方法と共に解決される。この方法は、ネットワークコネクタ筐体を提供するステップと、前述の電気シールド部材を提供するステップと、電気シールド部材の端子梁を内向きに曲げるステップと、端子梁の連結部を、ネットワークコネクタ筐体の対応した連結部と連結するステップと、を含んでいる。それに伴い、端子梁の予備荷重が提供され、このことは、嵌合力または挿入力の減少、ならびに筐体内における電気シールド部材の追加の固定を可能にしており、これにより、シールド部材は回転移動する傾向を減少させている。
【0035】
以下において、本発明は添付図に関連して記載されているが、保護の範囲を制限していない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】電気シールド部材を概略的に示した図である。
【
図2】その内部に組み込まれた
図1の電気シールド部材を備えた、ネットワークコネクタを概略的に示した断面図である。
【
図3】ネットワークコネクタを概略的に示した側面図である。
【
図4A】ネットワークコネクタ筐体を概略的に示した分解図である。
【
図4B】組み立てられた状態にある、
図4Aのネットワークコネクタ筐体を概略的に示した図である。
【
図5A】電気シールド部材のアセンブリを概略的に示した図である。
【
図5B】電気コネクタ筐体を概略的に示した分解図である。
【
図5C】組み立てられた状態にある、ネットワークコネクタを概略的に示した図である。
【
図6】ネットワークコネクタシステムを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
特に
図1は、受容部110と、相手側ネットワークコネクタの相手側シールド部材600に電気シールド部材100を電気的に接続するための2つの端子梁120、140と、を備えた電気シールド部材100を示している。端子梁は受容部110から延びており、端子梁120、140は可撓性端子梁であり、受容部110に対して外向きに傾斜されて配置されている。
【0038】
端子梁120、140の第1セクション121、141は、受容部から延び、受容部110に対して外向きに傾斜されて配置されている。第2セクション122、142は第1セクション121、141から延び、電気シールド部材が組み立てられた状態にある場合、すなわち電気ネットワークコネクタの筐体内に装着された場合に、ネットワークコネクタの嵌合方向Aに略平行に配置されている。さらに、第3セクション123、143が設けられ、第2セクション122、142から延びている。第3セクション123、143は、第2セクション122、142に対して内向きに傾斜されて配置されている。第3セクション123、143はさらに、遠位端を設けている。端子梁120、140の連結部125、145は、この遠位端から延びている。
【0039】
第1接触点127、147は、第2セクション122、142と第3セクション123、143との間の交点に設けられている。第1セクション121、141と第2セクション122、142との間の交点において、第2接触点128、148および第3接触点129、149が設けられている。接触点127から129および147から149は、線接触点として設けられている。他の端子形状とすることも、可能である。
【0040】
さらにまた、切り抜き部124、144が、各端子梁に設けられている。切り抜き部は、少なくとも部分的に、端子梁120、140の第1セクションおよび/または第2セクションに沿って延びている。第3接触点および第2接触点128、129;148、149は、切り抜き部124、144の対向した側に設けられている。切り抜き部は、嵌合力または挿入力を減少させることを可能にしている。細長く延びた端子梁120、140および細長い切り抜き部124、144のために、可撓性の高い端子梁120、140が提供され、減少された嵌合力または挿入力、および所望の接触力を提供している。
【0041】
さらに、並列回路方式において複数の接触点を提供することにより、減少された挿入抵抗、したがって改良されたシールド特性が達成され得る。
図1の電気シールド部材100は6つの接触点を備え、各端子梁は3つの接触点を担持している。連結部125、145は、ネットワークコネクタ筐体の対応した連結部225、245と連結するように構成されており、それは
図2に示されている。
【0042】
図2は、電気ネットワークコネクタ10の概略的な断面を示しており、コネクタは2つの接触端子410、420、および
図1に示された電気シールド部材100を備えている。接触端子410、420および電気シールド部材100は、筐体200内に収容されており、この筐体は二部品の筐体であり、少なくとも第1筐体部210および第2筐体部220を備えている。第2筐体部220には、電気シールド部材100が図示されたような組み立てられた状態の場合に、端子梁120、140の連結部125、145に連結する位置において、対応した連結部225、245が設けられている。端子梁120、140は上部110から延びて、連結部125、145において、すなわち端子梁の遠位端において筐体に固定されている。端子梁120、140は2つの端部において固定され、したがって損傷するまたは回転移動する傾向がより少なくなっている。
【0043】
受容部110はケーブル300を受容し、且つケーブル300のシールド330に電気的に接続されている。ケーブル300は、例えばUTPケーブル、STPケーブル、またはFDPケーブル等のツイストペアケーブルである。UTPケーブルは非シールド型ツイストペアケーブルであり、ケーブルの単一ワイヤは、個別にシールドされていない。STPおよびFDPケーブルはシールド型ケーブルであり、ブレードシールドまたはフォイルシールドを備えている。
【0044】
図3は、組み立てられた状態の電気ネットワークコネクタ10を示している。図示されたように、電気端子410、420は、第1筐体部210および第2筐体部220を備えた筐体200により完全に収容されている。電気シールド部材100の端子梁120は、筐体200から外向きに延びて、遠位端において連結部125および対応した連結部225により固定されている。対応した連結部225は、端子梁120の連結突起125として形成された連結部を受容する、連結凹部として形成され得る。連結突起125は、筐体200の連結凹部225により、少なくとも四側において取り囲まれ得る。これにより、電気シールド部材100は、回転移動に対して固定されている。
【0045】
図4Aは、第1筐体部210および第2筐体部220を備えたネットワークコネクタ筐体200の分解図を示している。第2筐体部220には、端子梁120、140の連結部を受容するための、対応した連結部225、245が設けられている。さらに、第2筐体部220には、第1ロック要素222および第2ロック要素224が設けられている。第1筐体部210には、対応したロック要素212、214が設けられ、コネクタ筐体200が組み立てられた場合に、第1ロック要素222および第2ロック要素224、ならびに対応した第1ロック要素212および第2ロック要素214は、互いにラッチ係合する。第1ロック要素222および第2ロック要素224、ならびに対応した第1ロック要素212および第2ロック要素214は、第1筐体部210が第2筐体部220から分離されることを防止している。
【0046】
さらに、筐体200および特に第2筐体部220には、停止部材228が設けられることが可能である。停止部材228は筐体部220の中間部に配置され、第1電気接触端子受容チャネルと第2電気接触端子受容チャネルとの間に挟まれ得る。第1および第2電気接触端子受容チャネルの各々は、コネクタ10の組み立てられた状態において、第1電気接触端子410および第2電気接触端子420を個々に受容するように構成されている。停止部材228は、ケーブルの交点に突き当たるように構成され、ケーブルの交点は、第1および第2ワイヤがケーブル絶縁スリーブから離れる位置である。したがって、停止部材228は、ケーブル300および/または電気シールド部材100の筐体200内への挿入深さを制限することが可能である。特に、停止部材228は、端子梁120、140の連結部125、145が、対応した連結部125、145の端面に突き当たる前に、停止部材がケーブルの交点と突き当たるように配置されることが可能である。したがって、組立の際の端子梁120、140への損傷が、防止されることが可能である。
図5Aから
図5Cは、ネットワークコネクタ10の組み立て順を示している。電気シールド部材100は、ケーブル300の周りに巻き付けられている。電気シールド部材100は圧着され、はんだ付けされ、もしくは溶接され、またはそれらを組み合わせて、ケーブル300のシールド330に電気的に接触している。端子梁120、140は、電気シールド部材100の受容部110から延びて、受容部に対して外向きに傾斜されて配置されている。筐体200内に電気シールド部材100を装着するために、端子梁120、140は内向きに曲げられ、端子梁120、140の連結部125、145は、筐体200の対応した相手側の連結部225、245内に挿入される。対応した相手側の連結部225、245は、連結凹部として形成されている。
【0047】
電気シールド部材100とケーブル300とを組み立てた後に、
図5Bに示されたように、第1筐体部210は第2筐体部220にラッチ係合されることが可能である。
図5Cは、組み立てられたコネクタ10の概略的な平面図を示している。
【0048】
図6は、先の
図5Aから
図5Cに関連して記載されたネットワークコネクタ10、および対応した相手側の電気シールド部材600を備えた、対応した相手側のコネクタを含んだネットワークコネクタシステムの断面を概略的に示した図である。図示されたように、端子梁120、140の第1、第2、および第3接触点127、128、129;147、148、149は、相手側のシールド部材600と接触し、コネクタシステムのための連続的なシールドを提供している。
【符号の説明】
【0049】
10 ・・・ネットワークコネクタ
100 ・・・電気シールド部材
110 ・・・受容部
112 ・・・長手軸
120 ・・・端子梁
121 ・・・端子梁の第1セクション
122 ・・・端子梁の第2セクション
123 ・・・端子梁の第3セクション
124 ・・・細長い切り抜き部
125 ・・・連結部
126 ・・・端子梁の遠位端
127 ・・・第1接触点
128 ・・・第2接触点
129 ・・・第3接触点
140 ・・・端子梁
141 ・・・端子梁の第1セクション
142 ・・・端子梁の第2セクション
143 ・・・端子梁の第3セクション
144 ・・・細長い切り抜き部
145 ・・・連結部
146 ・・・端子梁の遠位端
147 ・・・第1接触点
148 ・・・第2接触点
149 ・・・第3接触点
200 ・・・ネットワークコネクタ筐体
210 ・・・第1筐体部
212 ・・・対応した第1ロック要素
214 ・・・対応した第2ロック要素
220 ・・・第2筐体部
222 ・・・第1ロック要素
224 ・・・第2ロック要素
225 ・・・対応した連結部
228 ・・・停止部材
245 ・・・対応した連結部
300 ・・・シールドネットワークケーブル
310 ・・・ワイヤ
320 ・・・ワイヤ
330 ・・・シールド
410 ・・・電気端子
420 ・・・電気端子
600 ・・・対応したシールド部材
A ・・・嵌合方向