(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ジイソシアナートの三量体および/またはオリゴマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 251/34 20060101AFI20230530BHJP
C08G 18/02 20060101ALI20230530BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
C07D251/34 K
C07D251/34 L
C08G18/02
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018090818
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ローメルダー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ナッケ
(72)【発明者】
【氏名】メラニー ザイツ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌイル スピロウ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ホッペ
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103450443(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102816293(CN,A)
【文献】米国特許第05258482(US,A)
【文献】特開平10-095824(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第01244416(GB,A)
【文献】特開平09-012660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 251/32
C07D 251/34
C08G 18/020
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I. 5~94.999質量%の
B) 250~350℃の沸点(常圧で)を有する少なくとも1つのジイソシアナートを、
II.94.999~5質量%の
C) 350℃を越える沸点(常圧で)を有する少なくとも1つのジイソシアナート
の存在下で、
III. 0.001~5質量%の量の少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のジイソシアナートB)に由来する部分の割合が、絶対的な基準としての全混合物B)+C)に対して20質量%以下であり、かつ相対的な基準としての、使用したジイソシアナートB)に対して40質量%以下であり、
少なくとも1つのジイソシアナートB)は、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ノルボルナンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートおよび2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる混合物(TMDI)、リジンジイソシアナトエチルエステル、および/またはm-キシリレンジイソシアナートから選択され、かつ少なくとも1つのジイソシアナートC)は、ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H
12MDI)および/またはオクタデカンジイソシアナートから選択されるが、ただし、前記ジイソシアナートB)としてヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が使用されている場合には、前記ジイソシアナートC)はジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H
12MDI)ではない、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項2】
B)の合計を基準として、使用した成分B)の少なくとも60質量%が、三量体および/またはオリゴマーに変換されている、請求項1記載のジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項3】
I. 5~94.999質量%の
B) イソホロンジイソシアナート(IPDI)を、
II. 94.999~5質量%の
C) ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H
12MDI)の存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のジイソシアナートB)に由来する部分の割合が、絶対的な基準としての全混合物B)+C)に対して、20質量%以下であり、かつ相対的な基準としての、使用したジイソシアナートB)に対して、40質量%以下である、
請求項
1または2記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項4】
三量化触媒III.として、第三級アミン、カルボン酸のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩、アミノシラン、第四級ヒドロキシアルキルアンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩を単独で、または混合した形で使用する、請求項1から
3までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項5】
第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩から選択される三量化触媒IIIを、単独で、または混合した形で使用する、請求項1から
4までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項6】
ハロゲン、水酸化物、アルコラート、または有機もしくは無機酸アニオンを対イオンとして有する、第四級テトラアルキルアンモニウム塩および/または第四級ホスホニウム塩から選択される三量化触媒IIIを、単独で、または混合した形で使用する、請求項1から
5までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項7】
三量化触媒III.として、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを使用する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物。
【請求項8】
I. 5~94.999質量%の
B) 250~350℃の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートを
II. 94.999~5質量%の
C) 350℃を越える沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートの存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のジイソシアナートB)に由来する部分の割合が、絶対的な基準としての全混合物B)+C)に対して、20質量%以下であり、かつ相対的な基準としての、使用したジイソシアナートB)に対して、40質量%以下であり、
少なくとも1つのジイソシアナートB)は、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ノルボルナンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートおよび2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる混合物(TMDI)、リジンジイソシアナトエチルエステル、および/またはm-キシリレンジイソシアナートから選択され、かつ少なくとも1つのジイソシアナートC)は、ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H
12MDI)および/またはオクタデカンジイソシアナートから選択されるが、ただし、前記ジイソシアナートB)としてヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が使用されている場合には、前記ジイソシアナートC)はジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H
12MDI)ではない、
請求項1から
7までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物の製造方法。
【請求項9】
前記反応を0~140℃の温度で行う、請求項
8記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から
7までのいずれか1項記載の、ジイソシアナートモノマーの三量体および/またはオリゴマーの組成物の、塗料、接着剤、シーラント、および/またはプラスチックにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリウレタンは、塗料工業、接着剤工業、シーラント工業、およびプラスチック工業用に有益な原料である。ポリウレタンは大抵、ポリイソシアナートとアルコール成分との反応から製造される。十分な耐久性を保証するために、2より大の官能価を有するポリイソシアナートを使用することが有利である。この目的では、ジイソシアナートの三量化およびオリゴマー化から得られるイソシアヌラートが特に頻繁に使用される。さらに、このような反応によって、易揮発性で、毒物学的に懸念のあるジイソシアナートの割合が低減される。しかしながら今までは、このような三量化工程により、過剰のジイソシアナートモノマーについて、手間のかかる蒸留分離を行う必要があった。
【0002】
混合型の三量化は既に記載されている。例えば、DE 1954093では、HDIおよびTDIを一緒に三量化し、かつ過剰のモノマーを分子蒸留または薄層蒸留を用いて分離した。この方法は、EP 0696606では、脂肪族NCO基の高い含有率により、芳香族残留モノマーの割合を蒸留しなくても0.5質量%未満に低減できるように改善することができた。しかしながら、これら両者は、一方ではUV安定性でない芳香族イソシアナートを使用すること、他方ではしかしながら低い沸点を有するイソシアナートモノマーの大部分が最終生成物中に残留することが共通する。全く同様のことが、中国特許出願公開第103450443号明細書(CN 103450443 A)(芳香族および脂肪族の混合型のイソシアヌラート硬化剤の製造方法(Preparation method of aromatic and aliphatic mixed isocyanurate curing agent))でも見られる。DE 19642324では、シクロヘキシルジイソシアナートと芳香族ジイソシアナートとの混合型の三量化が問題となる。ここでは、モノマーの蒸留分離は必要ないが、ここでも光安定性でない芳香族成分が最終生成物中に残留する。US 258482では、予めモノアルコールを添加した後にHDIとH12MDIとの混合物を三量化している。というのも、このモノアルコールは、必要な助触媒として機能するためである。三量化の後に、この三量化触媒を阻害剤で失活させなければならない。相応する最終生成物は、ジイソシアナートモノマーを蒸留分離することにより、相応する比較生成物よりも低い粘度を有する。アルコールの使用(低減された官能価およびNCO含有率)も、阻害剤を添加する必要性も、この教示の工業的な使用可能性を制限する。DE 19627825では、シクロヘキシルジイソシアナートと他のジイソシアナート(例えばHDI、IPDI)との混合物を混合型で三量化している。引き続き、残留モノマー含分を蒸留分離する。「HDI/IPDIハイブリッドイソシアヌラートの合成、およびそのポリウレタン被覆中での適用(Synthesis of HDI/IPDI hybrid isocyanurate and its application in polyurethane coating)」, Progress in Organic Coatings 78 (2015) 225-233では、この適用において、例えば比較的高いTGまたは比較的良好なDOIのような利点を達成するために、HDIおよびIPDIを混合型で三量化している。
【0003】
過去において、原料および配合物中の低沸点のジイソシアナートモノマーの割合を低減する努力に不足することはなかった。通常では、これは蒸留法を用いて行われるが、しかしながらこのことは、付加的な装置的手間も、また生成物の変化、例えば着色を引き起こしかねない温度負荷も意味する。
【0004】
イソシアナートは、低濃度でも既に、ヒトに急性および慢性の作用を示す。したがって、TRGS 900によるジイソシアナートについての作業所限界値は、0.02~0.05mg/m3である。材料特異的な毒物学的作用の他に、ジイソシアナートは、その蒸気圧または沸点が異なる。例えば、同じ出発前提条件であっても、蒸気圧または沸点に応じて、室内空気に様々な量のジイソシアナートが放出される。つまり許容可能な限界値は、早期に達成されるか、後になって達成されるか、または決して達成されない。その点で、作業所ガイドラインの主旨で、高い蒸気圧、または低い沸点を有するジイソシアナートをできる限り避けることが好ましいと思われる。以下では沸点について注意を喚起するのみとする。というのも、この沸点は、一方で蒸気圧と密接に関連し、他方で文献から、または計算により主に確実に導き出すことができるためである。
比較的簡単な考察のために、ジイソシアナートはその沸点に依存して3つのカテゴリーに分類されるべきである、というのも比較的高い沸点では液体であり、したがって危険性は低下するためである。250℃未満の沸点を有するジイソシアナートは、易揮発性というべきであり、250~350℃の沸点を有するジイソシアナートは、中揮発性ジイソシアナートというべきであり、かつ350℃を越える沸点を有するジイソシアナートは、難揮発性というべきである。
【0005】
できる限り完全な三量化/オリゴマー化によりジイソシアナートモノマー含有率が低いイソシアヌラートを製造しようとする場合、2つの望ましくない効果が観察される。一つは、反応(変換度)が進むと共に、粘度が急激に上昇することである(オリゴマー化度または平均分子量の増大)。もう一つは、NCO基に関して最小濃度での反応は次第に著しく低下するので、溶媒中でもさらなる変換を達成することはできない。したがって、反応後の最終生成物中に、モノマーのジイソシアナートの望ましくない一部が残留する。このモノマーは、最終生成物から蒸留により除去しなければならない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、蒸留分離の手間および負担のかかる工程を用いずに、易揮発性および/または中揮発性のジイソシアナートに関して低いモノマー含有率を有するイソシアヌラートを、易揮発性および/または中揮発性のジイソシアナートから得ることができるようにすることであった。
【0007】
意外にも、モノマーの易揮発性および/または中揮発性ジイソシアナートの蒸留分離を省くことができるように、易揮発性および/または中揮発性ジイソシアナートを三量化するために、350℃を越える沸点を有するジイソシアナート、例えばH12MDIを溶媒として使用できることが見出された。
【0008】
本発明の主題は、
I. 5~94.999質量%の
A) 250℃未満の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナート
および/または
B) 250~350℃の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートを
II. 94.999~5質量%の
C) 350℃を越える沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートの存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のモノマーのA)および/またはモノマーのB)の割合が、全混合物A)+B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下であり、かつ使用したジイソシアナートA)および/またはB)を基準として、相対的に40質量%以下である、
ジイソシアナートからなる三量体および/またはオリゴマー、ならびにモノマーのジイソシアナートの組成物である。
【0009】
これは、A)およびB)の合計を基準として、使用した成分A)および/またはB)の少なくとも60質量%が、三量体および/またはオリゴマーに変換されたことを意味する。
【0010】
本発明の主題は、
I. 5~94.999質量%の
A) 250℃未満の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナート
および/または
B) 250~350℃の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートを
II. 94.999~5質量%の
C) 350℃を越える沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートの存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のモノマーのA)および/またはモノマーのB)の割合が、全混合物A)+B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下であり、かつ使用したジイソシアナートA)および/またはB)を基準として、相対的に40質量%以下である、
ジイソシアナートからなる三量体および/またはオリゴマー、ならびにモノマーのジイソシアナートの組成物を製造する方法である。
【0011】
これは、A)およびB)の合計を基準として、使用した成分A)および/またはB)の少なくとも60質量%が、三量体および/またはオリゴマーに変換されたことを意味する。
【0012】
本発明の主題は、
I. 5~94.999質量%の
A) 250℃未満の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナート
および/または
B) 250~350℃の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートを
II. 94.999~5質量%の
C) 350℃を越える沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートの存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のモノマーのA)および/またはモノマーのB)の割合が、全混合物A)+B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下であり、かつ使用した易揮発性または中揮発性のジイソシアナートA)またはB)を基準として、相対的に40質量%以下である、
ジイソシアナートからなる三量体および/またはオリゴマー、ならびにモノマーのジイソシアナートの組成物の、塗料、接着剤、シーラント、および/またはプラスチックにおける使用でもある。
【0013】
ジイソシアナートの三量化は公知であり、かつ既に頻繁に記載されてきた。基本的にポリイソシアヌラートは、適切なジイソシアナートを触媒によって三量化することにより得られる。本発明による三量化の場合、純粋な三量体および/もしくはオリゴマーの三量体が得られるか、または混合型三量体もしくは混合型オリゴマーが得られる。
本発明の主旨で、適切なジイソシアナートA)およびB)は、易揮発性ジイソシアナートA)および/または中揮発性ジイソシアナートB)、好ましくは脂肪族ジイソシアナートおよび/または脂環式ジイソシアナートである。
【0014】
原則的に、三量化のために適したジイソシアナートは、多様な方法により製造することができる(Annalen der Chemie 562 (1949), p. 75ff.)。工業的には特に、有機ポリアミンをホスゲン化により相応するポリカルバミン酸クロリドにし、これを有機ポリイソシアナートと塩化水素とに熱分解することによる方法が好ましことが実証された。あるいは、ホスゲンを使用せずに、つまりホスゲンフリーの方法により有機ポリイソシアナートを製造することもできる。欧州特許出願公開第126299号明細書(EP-A-126 299(USP 4,596,678))、欧州特許出願公開第126300号明細書(EP-A-126 300(USP 4,596,679))、および欧州特許出願公開第355443号明細書(EP-A-355 443(USP 5,087,739))の記述によると、例えば、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、もしくはIPDI)のような(環式)脂肪族ジイソシアナートは、基礎となる(環式)脂肪族ジアミンを、尿素およびアルコールと反応させて(環式)脂肪族ビスカルバミン酸エステルにし、これを相応するジイソシアナートとアルコールとに熱分解することにより入手可能にすることができる。
【0015】
揮発性の定義のためにここに記載された全ての沸点(常圧(ND)=1013mbarで)は、文献から引用されているか、またはより低い圧力での沸点からの文献データから換算されている。このために、インターネットからのSigma-Aldrichの次の換算プログラムを使用した:http://www.sigmaaldrich.com/chemistry/solvents/learning-center/nomo-assets.html。
【0016】
文献データが公知でなかった場合には、この沸点を、2016年版のAdvanced Chem. Develop. Software V11.02を用いて見積もった。
【0017】
易揮発性ジイソシアナートA)は、例えばブチルジイソシアナート、沸点:228℃(ND)、19Torrで112~113℃(J. Polym. Sci., 1964, V2(8; Pt. A), P3387-404)から換算、およびエチルジイソシアナート、沸点:189℃(ND)、20Torrで81℃(Journal of Polymer Science 1964, V2(8; Pt. A), P3387-404)から換算である。
【0018】
中揮発性ジイソシアナートB)は、例えばイソホロンジイソシアナート(IPDI)、沸点:295℃(ND)、100Torrで217℃(National Institut for Occupational Safety and Health)から換算、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、沸点255℃(ND、Prog. in org. Coatings, 2010, V69(4), P426-341)、ノルボルナンジイソシアナート、沸点:313±15℃(ND、Advanced Chem. Develop. Software V11.02で算出)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートおよび2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる混合物(TMDI)、沸点:284℃(ND、Advanced Chem. Develop. Software V11.02で算出)、リジンジイソシアナトエチルエステル、沸点:305±37℃(ND、Advanced Chem. Develop. Software V11.02で算出)、およびm-キシリレンジイソシアナート、沸点:297℃(ND)、12Torrで159~162℃(Annalen der Chemie, 1949, V562, P75-136)から換算である。
【0019】
中揮発性ジイソシアナートB)として、IPDIが好ましい。
【0020】
難揮発性ジイソシアナートC)は、例えばジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H12MDI)、沸点:410℃(ND)、Annalen der Chemie, 1949, 562, P75-136からの0.1Torrで156~158℃から換算、およびオクタデカンジイソシアナート、沸点:435±18℃(ND、Advanced Chem. Develop. Software V11.02で算出)である。
【0021】
難揮発性ジイソシアナートC)として、H12MDIが好ましい。
【0022】
本発明の好ましい主題は、
I. 5~94.999質量%の
A) ブチルジイソシアナート、エチルジイソシアナートから選択される、250℃未満の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナート、
および/または
B) イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ノルボルナンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートおよび2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる混合物(TMDI)、リジンジイソシアナトエチルエステル、および/またはm-キシリレンジイソシアナートから選択される、250~350℃の沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートを、
II. 94.999~5質量%の
C) ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H12MDI)および/またはオクタデカンジイソシアナートから選択される、350℃を越える沸点を有する少なくとも1つのジイソシアナートの存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のモノマーのA)および/またはモノマーのB)の割合が、全混合物A)+B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下であり、かつ使用したジイソシアナートA)および/またはB)を基準として、相対的に40質量%以下である、
ジイソシアナートからなる三量体および/またはオリゴマー、ならびにモノマーのジイソシアナートの組成物である。
【0023】
本発明の全く特に好ましい主題は、
I. 5~94.999質量%の
B) イソホロンジイソシアナート(IPDI)を
II. 94.999~5質量%の
C) ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(H12MDI)の存在下で、
III. 0.001~5質量%の量での少なくとも1つの三量化触媒の存在下に、
反応させることにより得られ、
かつ、I.~III.の量は、総計が100質量%となり、
反応後の混合物中のモノマーのB)の割合が、全混合物B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下であり、かつ使用したジイソシアナートB)を基準として、相対的に40質量%以下である、
ジイソシアナートからなる三量体および/またはオリゴマー、ならびにモノマーのジイソシアナートの組成物である。
【0024】
三量化触媒として、例えば第三級アミン(US 3,996,223)、カルボン酸のアルカリ金属塩(CA 2113890; EP 56159)、第四級アンモニウム塩(EP 798299; EP 524501; US 4,186,255; US 5,258,482; US 4,503,226; US 5,221,743)、アミノシラン(EP 197864; US 4,697,014)および第四級ヒドロキシアルキルアンモニウム塩(EP 17998; US 4,324,879)および/または第四級ホスホニウム塩が適している。触媒に依存して、多様な助触媒、例えばOH官能化化合物または第二級アミンとアルデヒドまたはケトンからのマンニッヒ塩基の使用も可能である。
【0025】
反応のためには、触媒の存在下で、場合により溶媒および助剤の使用下に、所望の転化率が達成されるまでジイソシアナートを反応させることができる。その後で、触媒の失活によりこの反応を停止することができる。この失活は、触媒阻害剤の添加により行われる。工業的規模でのジイソシアナートの三量化の観点では、触媒として第四級ヒドロキシアルキルアンモニウムカルボキシラートの使用が特に好ましい。このタイプの触媒は熱的に不安定であり、かつ意図的な熱による失活が可能であるため、所望の転化率の達成時に、品質低下が考えられる阻害剤の供給により三量化を停止する必要がない。
【0026】
触媒として好ましくは、ハロゲン、水酸化物、アルコラート、または有機もしくは無機の酸アニオンを対イオンとして有する、第四級アンモニウム塩を単独で、または混合した形で、特に好ましくはテトラアルキルアンモニウム塩および/または第四級ホスホニウム塩を使用する。これについての例は次のものである:
テトラメチルアンモニウムホルマート、テトラメチルアンモニウムアセタート、テトラメチルアンモニウムプロピオナート、テトラメチルアンモニウムブチラート、テトラメチルアンモニウムベンゾアート、テトラエチルアンモニウムホルマート、テトラエチルアンモニウムアセタート、テトラエチルアンモニウムプロピオナート、テトラエチルアンモニウムブチラート、テトラエチルアンモニウムベンゾアート、テトラプロピルアンモニウムホルマート、テトラプロピルアンモニウムアセタート、テトラプロピルアンモニウムプロピオナート、テトラプロピルアンモニウムブチラート、テトラプロピルアンモニウムベンゾアート、テトラブチルアンモニウムホルマート、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルアンモニウムプロピオナート、テトラブチルアンモニウムブチラート、およびテトラブチルアンモニウムベンゾアート、およびテトラブチルホスホニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムホルマート、およびエチルトリフェニルホスホニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート、テトラフェニルホスホニウムフェノラート、およびトリヘキシルテトラデシルホスホニウムデカノアート、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクタデシルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルビニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムメタノラート、メチルトリエチルアンモニウムメタノラート、テトラメチルアンモニウムメタノラート、テトラエチルアンモニウムメタノラート、テトラプロピルアンモニウムメタノラート、テトラブチルアンモニウムメタノラート、テトラペンチルアンモニウムメタノラート、テトラヘキシルアンモニウムメタノラート、テトラオクチルアンモニウムメタノラート、テトラデシルアンモニウムメタノラート、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムメタノラート、テトラオクタデシルアンモニウムメタノラート、ベンジルトリメチルアンモニウムメタノラート、ベンジルトリエチルアンモニウムメタノラート、トリメチルフェニルアンモニウムメタノラート、トリエチルメチルアンモニウムメタノラート、トリメチルビニルアンモニウムメタノラート、メチルトリブチルアンモニウムエタノラート、メチルトリエチルアンモニウムエタノラート、テトラメチルアンモニウムエタノラート、テトラエチルアンモニウムエタノラート、テトラプロピルアンモニウムエタノラート、テトラブチルアンモニウムエタノラート、テトラペンチルアンモニウムエタノラート、テトラヘキシルアンモニウムエタノラート、テトラオクチルアンモニウムメタノラート、テトラデシルアンモニウムエタノラート、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムエタノラート、テトラオクタデシルアンモニウムエタノラート、ベンジルトリメチルアンモニウムエタノラート、ベンジルトリエチルアンモニウムエタノラート、トリメチルフェニルアンモニウムエタノラート、トリエチルメチルアンモニウムエタノラート、トリメチルビニルアンモニウムエタノラート、メチルトリブチルアンモニウムベンジラート、メチルトリエチルアンモニウムベンジラート、テトラメチルアンモニウムベンジラート、テトラエチルアンモニウムベンジラート、テトラプロピルアンモニウムベンジラート、テトラブチルアンモニウムベンジラート、テトラペンチルアンモニウムベンジラート、テトラヘキシルアンモニウムベンジラート、テトラオクチルアンモニウムベンジラート、テトラデシルアンモニウムベンジラート、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムベンジラート、テトラオクタデシルアンモニウムベンジラート、ベンジルトリメチルアンモニウムベンジラート、ベンジルトリエチルアンモニウムベンジラート、トリメチルフェニルアンモニウムベンジラート、トリエチルメチルアンモニウムベンジラート、トリメチルビニルアンモニウムベンジラート、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラオクチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、メチルトリブチルアンモニウムクロリド、メチルトリプロピルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリフェニルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリプロピルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、メチルトリブチルアンモニウムブロミド、メチルトリプロピルアンモニウムブロミド、メチルトリエチルアンモニウムブロミド、メチルトリフェニルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリプロピルアンモニウムヨージド、ベンジルトリブチルアンモニウムヨージド、メチルトリブチルアンモニウムヨージド、メチルトリプロピルアンモニウムヨージド、メチルトリエチルアンモニウムヨージド、メチルトリフェニルアンモニウムヨージド、およびフェニルトリメチルアンモニウムヨージド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクタデシルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルビニルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラオクチルアンモニウムフルオリド、およびベンジルトリメチルアンモニウムフルオリド。これらの触媒を、単独で、または混合して添加することもできる。好ましくは、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを使用する。
【0027】
本発明の場合、三量化をバッチ式または連続式で実施する。バッチ式の方法が好ましい。バッチ式の方法の場合、攪拌反応器中で、原則として周囲圧力(常圧1013mbar)で作業するが、それ以外の圧力も可能である。この場合、94.999~5質量%のC)と、5~94.999質量%の別の易揮発性ジイソシアナートA)および/または中揮発性ジイソシアナートB)とからなる混合物が存在する。まず、ジイソシアナートの混合物を、0~140℃、好ましくは55~90℃、特に好ましくは65~75℃の温度に予熱する。次いで触媒を0.001~5質量%の量で供給する。この三量化は発熱性である。触媒はまず、反応混合物の温度が明らかに5~15℃上昇することが確認可能な量で供給する。この触媒は反応の進行中に失活されるため、反応混合物の温度は反応の過程で再び低下するので、改めて触媒供給を行うことができる。この過程を、所望の転化率が達成されるまで繰り返す。この場合、触媒の失活および少量ずつの触媒後供給による三量化の再始動の連続によって「、転化率に関しても、反応の温度プロフィールに関しても、常に最適なプロセス制御が可能になる。
【0028】
触媒は、純粋な形で使用することができる。しかしながら、触媒の正確な計量供給および最適な混合のためには、触媒を適切な溶媒中に溶解させることが好ましい。原則として、触媒が良好な溶解度を有する溶媒、例えば水、低分子量のアルコール、例えばメタノールまたはエチレングリコール、または低分子量の有機酸、例えば酢酸またはヘキサン酸が適している。
【0029】
連続的な三量化は、槽カスケード中で実施することができる。槽カスケードと管状反応器との組合せも考えられる。
【0030】
所望の転化率に関して必要な触媒量を制限するために、本発明による方法の温度プロフィールを、反応溶液が95℃の温度をできる限り越えないように調整することが好ましい。三量化反応の後に、任意に触媒毒を添加することができるが、これは大抵は必要ない。
【0031】
得られた本発明による組成物は、残留モノマーの他に、使用したジイソシアナートA)および/またはB)およびC)の、まだ純粋な、および混合型の三量体およびオリゴマーを含む。この混合物は、そのままで、または混合した形で、塗料、接着剤、シーラント、またはプラスチック配合物中のNCO成分として使用することができる。
【0032】
この三量化は、反応後の混合物中のモノマーのA)および/またはモノマーのB)の割合が、全混合物A)+B)+C)を基準として、絶対的に20質量%以下となり、かつ使用した易揮発性または中揮発性ジイソシアナートA)もしくはB)を基準として、相対的に40質量%以下となるまで続けられる。
【0033】
10質量%未満の絶対値および20質量%未満の相対値が好ましい。特に3質量%未満の絶対値および6質量%未満の相対値が好ましい。
【0034】
実施例
一般的作業手法
VESTANAT H12MDI、C)ジシクロヘキシルメチレンジイソシアナート(沸点:410℃、Evonik Industries AG)70質量%と、VESTANAT IPDI、B)イソホロンジイソシアナート(IPDI)(沸点:295℃、Evonik Industries AG)30質量%との混合物を、攪拌された三口フラスコ内で所定の開始温度に加熱し、触媒(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH、Aldrich))を添加し、その後すぐに発熱反応が始まる。触媒の添加後に熱源を取り除くと、生成物の温度が発熱反応の数分後にゆっくりと低下する。冷却後に、触媒と当量のp-トルエンスルホン酸(Aldrich)を添加する。この場合、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド91gがp-トルエンスルホン酸172gに相当する。
【0035】
【0036】
IPDIに関する残留モノマー含有率は、全ての試験において20質量%未満である(遊離IPDI、左欄、絶対的)。使用したIPDIに関して、40質量%以下の相対的残留モノマー含有率が観察され(遊離IPDI、括弧内で右欄、相対的)、これは次のように計算される:(最終濃度IPDI/出発濃度IPDI)×100=相対残留モノマー含有率IPDI