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▶ トルンプフ レーザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】分散調節ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20230530BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20230530BHJP
   G02F 1/11 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G02F1/03
G02F1/11
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2018565311
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2017064228
(87)【国際公開番号】W WO2017216083
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】102016110947.9
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504035571
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser GmbH
【住所又は居所原語表記】Aichhalder Strasse 39, D-78713 Schramberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ブッドニッキー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル セル
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06320191(US,B1)
【文献】特表2002-502061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0122484(US,A1)
【文献】特開2000-187167(JP,A)
【文献】特開2010-171194(JP,A)
【文献】特開昭63-103214(JP,A)
【文献】特開平10-073851(JP,A)
【文献】特表2008-518488(JP,A)
【文献】特開2007-267927(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104391416(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0242646(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010018967(DE,A1)
【文献】特開平08-171104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0295378(US,A1)
【文献】米国特許第07822347(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
H01S 3/04 -3/0959
H01S 3/10 -3/102
H01S 3/105-3/131
H01S 3/136-3/213
H01S 3/23 -4/00
G02F 1/00 -1/125
G02F 1/21 -7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル幅を有する電磁放射のための分散調節ユニットであって、
少なくとも1つの分散素子であって、前記電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる角分散領域内に角分散を生成する少なくとも1つの分散素子と、
前記角分散領域内に配置され、電磁放射を透過する平行平面な光学板であって互いに対して平行に配置される平面入射面と平面出射面とを有する光学板を有する光学ユニットと、を備え、
前記角分散領域内では、前記電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む複数の光路に夫々関連付けられており、
前記光学板は、前記光学板の前後で、前記個々のスペクトル成分の伝播に対して、前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角に依存した平行オフセットを発生させ、
前記光学板は、前記平面入射面に対するスペクトル成分の入射角に依存する前記光学板内の伝播方向を与え、
前記光学板内のスペクトル成分の前記伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方は、レーザパルスを圧縮または伸長するために設定される、分散調節ユニット。
【請求項2】
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するように構成された調節デバイス、をさらに備える、
請求項1に記載の分散調節ユニット。
【請求項3】
スペクトル幅を有する電磁放射のための分散調節ユニットであって、
少なくとも1つの分散素子であって、前記電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる角分散領域内に角分散を生成する少なくとも1つの分散素子と、
前記角分散領域内に配置され、前記電磁放射を透過する光学素子を有する光学ユニットと、を備え、
前記角分散領域内では、前記電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む光路に関連付けられており、
前記光学素子は、前記個々のスペクトル成分の伝播に対して、前記光学素子の前後で、前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角に依存した平行オフセットを発生し、
前記光学素子は、スペクトル成分の入射角に依存する前記光学素子内の伝播方向を与え、
前記光学素子内のスペクトル成分の前記伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方は、レーザパルスを圧縮または伸長するために設定され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記角分散領域内の前記光学素子の空間向きを変更するように構成された調節デバイスを更に備え、
前記調節デバイスは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記光学素子の角度を変更するように構成され、
前記光学ユニットは、互いに平行に配置される平面入射面および出射面を有する、分散調節ユニット。
【請求項4】
スペクトル幅を有する電磁放射のための分散調節ユニットであって、
少なくとも1つの分散素子であって、前記電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる角分散領域内に角分散を生成する少なくとも1つの分散素子と、
前記角分散領域内に配置され、前記電磁放射を透過する光学素子を有する光学ユニットと、を備え、
前記角分散領域内では、前記電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む光路に関連付けられており、
前記光学素子は、前記個々のスペクトル成分の伝播に対して、前記光学素子の前後で、前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角に依存した平行オフセットを発生し、
前記光学素子は、スペクトル成分の入射角に依存する前記光学素子内の伝播方向を与え、
前記光学素子内のスペクトル成分の前記伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方は、レーザパルスを圧縮または伸長するために設定され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記角分散領域内の前記光学素子の空間向きを変更するように構成された調節デバイスを更に備え、
前記調節デバイスは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記光学素子の角度を変更するように構成され、
前記光学素子は、複数のウェッジ、又は、2重ウェッジ構造として構成され、
前記調節デバイスは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記光学素子の厚さを変更するように構成される、分散調節ユニット。
【請求項5】
スペクトル幅を有する電磁放射のための分散調節ユニットであって、
少なくとも1つの分散素子であって、前記電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる角分散領域内に角分散を生成する少なくとも1つの分散素子と、
前記角分散領域内に配置され、前記電磁放射を透過する光学素子を有する光学ユニットと、を備え、
前記角分散領域内では、前記電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む光路に関連付けられており、
前記光学素子は、前記個々のスペクトル成分の伝播に対して、前記光学素子の前後で、前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角に依存した平行オフセットを発生し、
前記光学素子は、スペクトル成分の入射角に依存する前記光学素子内の伝播方向を与え、
前記光学素子内のスペクトル成分の前記伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方は、レーザパルスを圧縮または伸長するために設定され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記角分散領域内の前記光学素子の空間向きを変更するように構成された調節デバイスを更に備え、
前記調節デバイスは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記光学素子の角度を変更するように構成され、
前記光学素子は電気光学変調器として構成され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために電気光学変調器として形成された前記光学素子の屈折率を変更するように構成された調節デバイスを更に備える、分散調節ユニット。
【請求項6】
スペクトル幅を有する電磁放射のための分散調節ユニットであって、
少なくとも1つの分散素子であって、前記電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる角分散領域内に角分散を生成する少なくとも1つの分散素子と、
前記角分散領域内に配置され、前記電磁放射を透過する光学素子を有する光学ユニットと、を備え、
前記角分散領域内では、前記電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む光路に関連付けられており、
前記光学素子は、前記個々のスペクトル成分の伝播に対して、前記光学素子の前後で、前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角に依存した平行オフセットを発生し、
前記光学素子は、スペクトル成分の入射角に依存する前記光学素子内の伝播方向を与え、
前記光学素子内のスペクトル成分の前記伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方は、レーザパルスを圧縮または伸長するために設定され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記角分散領域内の前記光学素子の空間向きを変更するように構成された調節デバイスを更に備え、
前記調節デバイスは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために前記光学素子の角度を変更するように構成され、
前記光学素子は1対の音響光学変調器として形成され、
前記光学ユニットは、前記個々のスペクトル成分の前記平行オフセットを変更するために1対の音響光学変調器として形成された前記光学素子の回折パラメータを変更するように構成された調節デバイスを更に備える、分散調節ユニット。
【請求項7】
前記光学素子は、互いに実質的に平行に延び、互いからある距離に配置される入射面および出射面を有し、及び/又は、
前記光学素子は、前記少なくとも1つの分散素子に対するビーム経路内における位置及び向きの少なくとも一方において、前記少なくとも1つの分散素子とは無関係に調節可能である、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項8】
前記光学板は、前記少なくとも1つの分散素子に対するビーム経路内における位置及び向きの少なくとも一方において、前記少なくとも1つの分散素子とは無関係に調節可能である、
請求項1に記載の分散調節ユニット。
【請求項9】
前記電磁放射の前記個々のスペクトル成分について前記入射面および前記出射面が実質的に平行であることによって、個々のスペクトル成分の前記光路の入射角および出射角は同一である、
請求項またはに記載の分散調節ユニット。
【請求項10】
前記光学素子は、前記光学素子の角度位置を調節するためにビーム経路に対して回転可能に取り付けられ、その結果、前記光路の入射角および出射角が、前記光学素子の入射面および出射面に対して調節可能である、又は
前記光学素子は、ファンアウト平面に対して実質的に直交する回転軸の周りに回転可能に取り付けられる、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項11】
前記光学板は、前記光学板の角度位置を調節するためにビーム経路に対して回転可能に取り付けられ、その結果、前記光路の入射角および出射角が、前記光学板の入射面および出射面に対して調節可能である、又は
前記光学板は、ファンアウト平面に対して実質的に直交する回転軸の周りに回転可能に取り付けられる、
請求項1に記載の分散調節ユニット。
【請求項12】
前記光学素子は、互いに対して平行に、かつ互いに対してある角度で延びる光路によって広げられるファンアウト平面に対して垂直に配置される平面入射面および平面出射面を有する、又は、
前記光学素子の入射面及び出射面の少なくとも一方は、反射防止被覆される、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項13】
前記平面入射面および前記平面出射面は、互いに対してある角度で延びる光路によって広げられるファンアウト平面に対して垂直に配置され、
前記平面入射面および前記平面出射面の少なくとも一方は、反射防止被覆される、
請求項1に記載の分散調節ユニット。
【請求項14】
前記光学素子は、少なくとも1つの平行平面板、又は、1対の反対方向に変位可能なウェッジを備える、又は、
前記光学素子の材料は、水晶、YAG、サファイア、またはSF10であり、及び/又は、少なくとも0.1mmの厚さ、又は、約0.5mmから約10mmまでの範囲内の厚さを有する、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項15】
前記光学素子の回転、前記光学素子の厚さの変更、屈折率の変更、及び、回折パラメータの変更の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの分散素子の一定の位置を有する前記分散調節ユニットによって生み出される分散の変化を引き起こす、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項16】
前記調節デバイスは、前記分散調節ユニットの前、及び、後の少なくとも一方で、光ビーム経路の自己位相変調分散寄与を特に割り当てるために、パルス持続時間に依存する測定信号、パルス出力パラメータ、ピークパルス出力パラメータ、及び、パルスエネルギーパラメータの少なくとも1つに依存して前記分散調節ユニットの分散寄与を設定するように構成される、
請求項2又は3に記載の分散調節ユニット。
【請求項17】
(a)少なくとも1つの集束素子、又は、前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域間に光学望遠鏡構成を形成する2つの集束素子、及び、
(b)一方向での平行変位を伴う前記光路の後方反射のため、前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域の間に配置される反射素子、ルーフエッジミラー、または偏向プリズ
の少なくとも一方を更に備え、
前記光学素子は、前記集束素子のうちの1つと、これに隣接する、前記少なくとも1つの分散素子の相互作用領域との間のビーム経路区間内に配置される、
請求項に記載の分散調節ユニット。
【請求項18】
(a)少なくとも1つの集束素子、又は、前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域間に光学望遠鏡構成を形成する2つの集束素子、及び、
(b)一方向での平行変位を伴う前記光路の後方反射のため、前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域の間に配置される反射素子、ルーフエッジミラー、または偏向プリズ
の少なくとも一方を更に備え、
前記光学板は、前記集束素子のうちの1つと、これに隣接する、前記少なくとも1つの分散素子の相互作用領域との間のビーム経路区間内に配置される、
請求項1に記載の分散調節ユニット。
【請求項19】
前記光学ユニットは、前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域間のビーム経路中に回転可能に取り付けられる複数の光透過板を備え、
前記光透過板は、前記ビーム経路中に同一方向または逆方向にねじれて配置される、
請求項2又は3に記載の分散調節ユニット。
【請求項20】
(a)前記少なくとも1つの分散素子の前記相互作用領域および前記光学ユニットのビーム経路を逆に導く光学折返し素子、偏向プリズム、又は、偏向ミラーユニット、及び、
(b)少なくとも1つの別の分散素子の第2の対の相互作用領域、
の少なくとも一方をさらに備え、及び/又は、
前記少なくとも1つの分散素子は、1つまたは複数の光格子、1対の光格子、1つまたは複数のプリズム、1対のプリズム、1つまたは複数のグリズム、及び/又は、1対のグリズムを備える、
請求項1または3に記載の分散調節ユニット。
【請求項21】
スペクトル的に広いレーザパルスを生成するためのレーザパルス源と、
パルス圧縮、パルス伸長、及び/又は、パルス最適化、を行う、請求項1から20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの分散調節ユニットと、
を備えるレーザシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの分散調節ユニットの光学ユニットの、角度位置、屈折率、厚さ、及び/又は、回折パラメータを設定するように構成された前記少なくとも1つの分散調節ユニットの調節デバイスを設定するための制御ユニット、をさらに備え、
パラメータセットが前記制御ユニット内に記憶され、前記制御ユニットと共に、前記調節デバイスが、適用のために与えられるパラメータを設定するために作動される、
請求項21に記載のレーザシステム。
【請求項23】
(a)前記調節デバイスを設定するための前記制御ユニットにパルス持続時間に依存する測定信号を出力するためのパルス持続時間測定デバイス、及び、
(b)前記調節デバイスを駆動するために前記制御ユニットに対する自己位相変調分散寄与を供給するためのパルスエネルギーパラメータ出力デバイス、
の少なくとも一方をさらに備える、
請求項22に記載のレーザシステム。
【請求項24】
増幅器ユニットをさらに備え、
前記分散調節ユニットは、パルス伸長のために前記増幅器ユニットの上流側に配置される、又は、パルス圧縮のために前記増幅器ユニットの下流側に配置される、
請求項21から23のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項25】
レーザパルスのための分散調節の方法であって、
角分散領域内のパルスレーザビームをスペクトル的にファンアウトし、組み合わせることによって角分散部分を提供するステップと、
前記角分散領域内に光学素子を設けるステップであって、前記光学素子が、前記光学素子の入射面に対するスペクトル成分の入射角に依存する前記光学素子内の伝播方向を与えるステップと、
前記光学素子を回転することによって前記光学素子内の伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を変更し、それによって、前記角分散部分に影響を及ぼすステップと、を含み、
伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を変更する前記ステップは、前記角分散部分内で生み出される前記分散を変更するために、前記光学素子の厚さを変更することによってさらに影響を受ける、方法。
【請求項26】
伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を変更する前記ステップは、個々のスペクトル成分の伝播に対して、電磁放射の前記個々のスペクトル成分の入射角依存平行オフセットを生み出す、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
分散調節後に前記レーザパルスのパルス持続時間を測定するステップ、及び、
分散を適合させるため、前記レーザパルスを圧縮または伸長するために、測定したパルス持続時間の関数として、前記光学素子内の伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を設定するステップ、
をさらに含む、
請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
自己位相変調分散寄与パラメータを与えるステップ、及び、
自己位相変調によって引き起こされるレーザパルスの伸長を補償するために、前記自己位相変調分散寄与パラメータの関数として、伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を変更するステップ、
をさらに含む、
請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス圧縮器ユニットおよび/またはパルスストレッチャユニットを備えるパルスレーザシステム内の分散調節のためのユニットに関する。さらに、本発明は、そのような分散調節ユニット内の分散を微同調するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザパルスは、レーザパルスの達成可能な最小持続時間を決定するスペクトル幅を有する。基礎となる周波数スペクトルが広いほど、レーザパルスのパルス持続時間が短くなり得る。しかしながら、一般には、通過する材料の分散(本明細書では材料分散と呼ぶ)と、恐らくは高ピーク出力での自己位相変調とにより、スペクトル成分が分散する。したがって、特にps以下のパルス持続時間を有する短レーザパルスおよび超短レーザパルスでは、通常は、レーザパルスの発散を防止または逆転すべきである場合、光路の分散調節が実施される。パルス持続時間の分散性拡大を打ち消す光学機構は、パルス圧縮器ユニットと呼ばれる。そのような分散調節ユニットの例には、例えば、本明細書では角分散と呼ぶ、レーザパルスのスペクトル成分のファニングアウトを使用して様々な光路長を生成する格子対ベースまたはプリズム対ベースの圧縮器ユニット(略して格子圧縮器またはプリズム圧縮器)が含まれる。
【0003】
さらに、特に、増幅後のパルスが、例えば増幅器のレーザ媒体で、自己集束などの非線形効果を引き起こし得る程度に高い強度となり得る。そのような非線形光学的効果は、ビーム品質およびパルス品質、したがって増幅プロセス全体に対する悪影響を有し得る。したがって、増幅器構成は、能動的に伸長されたレーザパルスが増幅され、または増幅プロセス中にパルス伸長が行われるように設計される。本明細書では、レーザパルスのパルス持続時間の分散性拡大を引き起こす、そのような分散調節ユニットの光学機構をパルス伸長ユニットと呼ぶ。例えば、そのような分散調節ユニットの例には、例えば、その後で使用されるパルス圧縮器ユニットとは反対の角分散を使用する一体型レンズシステムを有する、格子対ベースまたはプリズム対ベースの伸長ユニット(略して格子ストレッチャまたはプリズムストレッチャ)が含まれる。さらに、レーザパルスは、例えば、パルス幅拡大のための対応する分散特性を有する材料を通じて、例えば、恐らくは一体型(チャープ)ファイバブラッグ格子を有する光ファイバを通じて誘導され得る。
【0004】
格子またはプリズム圧縮器、および、格子またはプリズムストレッチャについての基本パラメータは、スペクトルファニングアウトの範囲である。これは、例えば、使用される格子の格子定数、または使用されるプリズムの屈折率に依存する。一般には、分散は、角分散によって引き起こされる経路長の差を決定する、格子間またはプリズム間の距離によって調節され得る。格子圧縮器または格子ストレッチャの場合には、例えば回折によって蓄積される位相が、分散に寄与する。一般には、分散をより良好に補償することができるほど、パルス持続時間がスペクトル的に達成可能なパルス持続時間により近づくことができる。パルス持続時間が短いほど、より多くの分散の次数を圧縮のために考慮に入れなければならない。また、微調整のためにビーム経路中に配置された薄いガラス板を使用することができる。つまり、ビーム経路の分散特性を材料分散によって調節することができる。
【0005】
一般には、上記のパルス伸長およびパルス圧縮の概念は、いわゆるCPA(チャープパルス増幅)が高パルスエネルギーを有する超短パルスを生成するために使用される。例えば、ファイバレーザシステムで(超)短パルスを生成するために、ファイバレーザの入力レーザパルスは通常、(例えば、ファイバベースのストレッチャまたは格子ストレッチャで)一時的に伸長され、ファイバ増幅器ユニットで増幅され、次いで(例えば、格子圧縮器で)一時的に圧縮される。(超)短パルスを生成するための類似の機構は、例えば工作機械内のディスクレーザシステムに基づき得る。通常、スペクトル成分の分散を逆転させるために、非常に精密で技術的に精巧な圧縮が必要とされる。
【0006】
現況技術では、例えば格子圧縮器での、精密な分散制御のための様々な手法が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、パルス持続時間の変化がストレッチャまたは圧縮器の格子間隔を介して制御され、さらに「チャープ」FBG(ファイバブラッグ格子)を使用して微同調される概念を開示している。別の手法が特許文献3及び特許文献4から知られている。さらに、特許文献5は、1つまたは2つのガラス板がビーム経路中に配置される、材料分散に基づく分散補償を伴うOPOシステムを開示している。さらに、特許文献6は、SLMを備えるパルス波形器を開示しており、特許文献7は、パルスレーザビームの光ファイバベースの誘導でのストレッチャ-圧縮器機構の使用を開示しており、特許文献8は、レーザシステム用のパルス波形器を開示しており、特許文献9は格子圧縮器を備えるパルスレーザシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/117128A1号明細書
【文献】米国特許第7822347B1号明細書
【文献】米国特許第7729045B2号明細書
【文献】米国特許第8780440B2号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2010 018967A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0304127A1号明細書
【文献】米国特許第6272156B1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0255563A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0159137A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の一態様は、例えば格子対ベースおよびプリズム対ベースの分散調節ユニットについての拡張された分散調節を提供するための目的に基づく。本発明の別の態様は、分散調節ユニットの後のビーム品質およびビーム経路に可能な限り少ない影響を有する、そのような分散調節ユニットのための分散調節を使用可能にする目的に基づき、具体的には、光学構成要素の容易に制御可能な設定に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
目的のうちの少なくとも1つは、請求項1に記載の分散調節ユニット、請求項2に記載の分散調節ユニット、請求項18に記載のレーザシステム、および請求項22に記載の分散調節のための方法によって達成される。別の実施形態が従属請求項で与えられる。
【0010】
一態様では、スペクトル幅を有する電磁放射に対する、特にレーザパルスに対する分散調節ユニットが、少なくとも1つの分散素子を有する電磁放射の2つの相互作用領域によって境界が定められる、角分散領域内で角分散を生成するための少なくとも1つの分散素子を有する構成を備え、角分散領域内で、電磁放射の個々のスペクトル成分が、互いに対してある角度で進む光路に関連付けられる。さらに、分散調節ユニットは、角分散領域内に配置され、電磁放射を透過する光学素子を有する光学ユニットを備える。光学素子は、光学ユニットの前後で、個々のスペクトル成分の伝播に対して、電磁放射の個々のスペクトル成分の入射角依存平行オフセットを生み出す。
【0011】
別の態様では、スペクトル幅を有する電磁放射に対する、特にレーザパルスに対する分散調節ユニットが、角分散を生成するための少なくとも1対の分散素子を備える。分散素子の対は、分散素子の対の分散素子の間で、個々のスペクトル成分が互いに対してある角度で進む光路に関連付けられるように配置される。分散調節ユニットは、分散素子間のビーム経路中に配設され、ビーム経路に対して光学素子の角度位置を調節するために回転可能に支持される光学素子をさらに備える。
【0012】
別の態様では、レーザシステムは、スペクトル的に広いレーザパルスと、前述のような少なくとも1つの分散調節ユニットと共に、パルス伸長もしくはパルス圧縮またはその両方とを生成するためのレーザパルス源を含む。
【0013】
さらに、レーザシステムは、制御ユニットと、制御ユニットにパルス持続時間依存測定信号を出力するためのパルス持続時間測定デバイスとを備え得る。それによって、制御ユニットは、例えば、パルス持続時間依存測定信号に応じて、ビーム経路に対する光学素子の角度位置を設定するために構成される。
【0014】
別の態様では、レーザパルス用の分散調節のための方法が、角分散領域内のパルスレーザビームをスペクトル的にファンアウトし、組み合わせることによって角分散部分を提供するステップと、角分散領域内に光学素子を設けるステップであって、光学素子が光学素子の入射面に対するスペクトル成分の入射角に依存する光学素子内の伝播方向を与えるステップと、光学素子内の伝播方向、及び、伝播長の少なくとも一方を変更し、それによって、具体的にはスペクトル成分の伝播方向を維持しながら、角分散部分に影響を及ぼすステップとを含む。
【0015】
例えば、少なくとも1つの分散素子の機構のスペクトル的にファンアウトした領域内への(電磁放射を透過する光学素子の一例としての)回転可能なガラス板の導入の結果、関連する分散調節ユニットの分散設定の追加のパラメータが生じる。ガラス板に対するスペクトル依存入射角により、異なるスペクトル成分についてガラス板内の経路が異なる長さとなり、ガラス板後のビーム経路が異なるものとなる。具体的には、個々のスペクトル成分の入射角依存平行オフセットが形成される。それによって、屈折率のスペクトル依存、したがって材料分散の変更のスペクトル依存が、変更される平行オフセットのために、分散の変化と比較して本質的に無視できる。
【0016】
回転可能なガラス板を用いて、(例えば、格子/プリズム/グリズム)圧縮器内のレーザパルスの一時的圧縮が修正され得る。
【0017】
分散を調節するために、ガラス板が、例えば制御ユニットを介して回転可能に取り付けられる。そのような構成は、ビーム品質にほとんど、または全く影響を及ぼすことなく実装され得る。一般には、回転によって与えられる分散修正の調節範囲または感度を選択するために、ガラス板(一般には分散調節の光学素子)の厚さが使用され得る。
【0018】
分散適合中の個々のスペクトル成分の光路に対する同様の効果が、2重ウェッジ(wedge)構造、電気光学変調器、及び、2つの音響光学変調器の少なくとも1つを含む光学素子を使用しても達成され得る。
【0019】
角分散の波長/入射角依存修正についての必要条件は一般に、屈折率変更が光学ユニットで実現されることである。空気/窒素での実装では、入射角に依存する屈折を実現するために、光学素子の屈折率は1に等しくないものとする。
【0020】
例えば、二重光路を有する折返し型の格子圧縮器の場合には、平行平面板が、ビーム品質に対する影響を最小限に抑える利点を有する。しかしながら、折り返しの無い格子圧縮器では、例えば伸長または圧縮が小さく、したがって非対称的ビーム経路中のビーム品質に対する効果が低いままである場合、光学素子を備える光学ユニットが、一方の側に設けられ得るだけである。
【0021】
優先的に、光学素子は、非垂直入射を仮定して、入射(単色)ビームの方向に平行に変位する幾何形状を有する。それによって、光学素子の前後の、スペクトル的に発散する領域内の個々のスペクトル成分の伝播方向が同じままとなり、その結果、個々のスペクトル成分のビーム経路間の角度関係が維持されるが、ファニングアウトの度合いが変更され得る。
【0022】
光学素子は、使用されるスペクトル範囲内で透過的であり、一般には、平行平面入射面および出射面を有する。例えば、平行平面入射面および出射面を与えるのは、平行平面水晶板または光学素子系である。例えば、入射面および出射面は、出力損失および干渉を回避するために反射防止コーティングされ得る。
【0023】
さらに、光学ユニットは、互いに反対に回転され得る(光学素子としての)2つのガラス板を有し得、例えば、その結果、ガラス板が適切に位置合せされる場合、ビームオフセットのないゼロ位置が実装され得、ゼロ位置では、本質的にガラス板の材料分散だけが分散調節ユニットの分散特性に寄与する。さらに、光学ユニットは、分散特性の微同調用の薄板、および粗調整用の厚板を含み得る。
【0024】
本明細書で開示される概念および実施形態は、以下の利点を有し得る。パルス持続時間が、分散素子のうちの1つの移動(例えば、距離調節のための格子圧縮器内の第2の格子の変位)とは無関係に、またはそれに加えて設定され得る。例えば、格子圧縮器の場合には、ビーム品質が、格子構造の向きに非常に敏感である。したがって、パルス持続時間の調節には、非常に複雑な格子ホルダが必要となり、格子ホルダには、格子構造の向きに影響を及ぼすことなく非常に精密に移動することが要求される。さらに、分散調節の感度、したがって、光学素子の材料厚さ、例えば数ミリメートルまたは数センチメートルの平行平面板を介する、板の回転に対する、レーザパルスのパルス持続時間の微調整を選択することができる。例えば、材料厚さは、圧縮器機構が可能な限り安定するように選択され得る。また/或いは、パルス持続時間が、モータまたは圧電素子を使用して光学素子を回転することによって能動的に調節または変更され得る。一般には、材料厚さは所望の調節範囲に従って選択され、それによって、小さい角度変化が、薄い光学素子よりも厚い光学素子について大きい効果を有する。さらに、例えば、2重ウェッジ構成が、光学素子の初期厚さを調節可能にし得る。2重ウェッジ構成では、ウェッジのうちの少なくとも1つはまた、圧縮器またはストレッチャの格子/プリズム/グリズムなどの分散素子とは無関係に移動され得る。
【0025】
一般には、本明細書で提案される概念は、分散調節ユニットのために必要とされる設置スペースを削減することを可能にする。さらに、分散はまた、分散素子(例えば、格子、プリズム、またはグリズム)の並進運動なしに調節され得、その結果、具体的には、分散を調節するとき、ビーム経路に及ぶ影響は、それがある場合でもわずかだけである。
【0026】
本明細書では、従来技術の態様を少なくとも部分的に改善することを可能にする概念が開示される。具体的には、追加の特徴およびその有用性は、図面に基づく実施形態の以下の説明の結果から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】パルス持続時間圧縮のための回転可能なガラス板に基づく分散調節ユニット(圧縮器)を備えるレーザシステムの概略図である。
図2A-2B】回転角依存分散寄与の例示的計算を示す図である。
図3A-3D】小さい格子定数についての回転角依存分散次数の例示的計算を示す図である。
図4A-4B】分散調節を示すための輝度曲線の例示的計算を示す図である。
図5A-5D】大きい格子定数についての回転角依存分散次数の例示的計算を示す図である。
図6】パルス整形を示すための輝度曲線の例示的計算を示す図である。
図7】パルス持続時間伸長のための回転可能なガラス板に基づく分散調節ユニット(ストレッチャ)の概略図である。
図8A-8C】分散調節ユニットのためのいくつかの回転可能な光学素子を備える光学ユニットの例示的設計を示す図である。
図9】分散調節のための方法の例示的流れ図である。
図10】分散調節ユニットのための2重ウェッジ構造に基づく別の光学ユニットの概略図である。
図11】パルス持続時間圧縮のための電気光学変調器に基づく分散調節ユニットを備えるレーザシステムの概略図である。
図12】パルス持続時間圧縮のための単一の分散素子に基づく分散調節ユニットを備えるレーザシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で説明する態様は、部分的には、例えば格子、プリズム、またはグリズム(grism)圧縮器(またはストレッチャ)の角度分散性ファンアウト伝播区間に介在することによって分散特性に影響を及ぼすための追加の可能性があるという理解に基づく。それによって、入射角に依存する個々のスペクトル成分の平行オフセットによって角分散が修正され得ることがさらに理解された。
【0029】
以下では、図1を参照すると、(通常は分散調節を適用するレーザシステムについて例示的な)超短パルスシステムのための分散調節についての概念が、回転可能なガラス板に基づくパルス持続時間圧縮のための分散調節ユニットを使用して説明される。
【0030】
図1では、超短パルスシステム1が、スペクトル的に広いレーザパルスを生成するためのレーザパルス源3と、パルス持続時間圧縮のための分散調節ユニット5とを備え、分散調節ユニット5は、以下で説明する光学ユニット4を備える。レーザパルス源3は、例えば、レーザ発振器、またはレーザ発振器-増幅器の組合せとして構成され得る。さらに、類似の分散調節ユニット(例えば、図7参照)が、パルス伸長の観点から、レーザパルス源3内に一体化され得る。
【0031】
超短パルスシステム1では、例えば1nm以上のスペクトル幅、および例えば0.1μJ以上のパルスエネルギーを有するレーザパルスが、入力ビーム6として分散調節ユニット5に供給される。レーザパルスのスペクトル幅は、ターゲット位置で、所望のパルス持続時間、例えば最短の可能なパルス持続時間、または処理方法に適合されたパルス持続時間を有するレーザパルスの一定のパルス形状(強度曲線)を実現するために、ビーム経路の分散調節を必要とする。
【0032】
分散調節ユニット5は例示的に折返し格子圧縮器として構成される。格子圧縮器は、第1の格子7Aおよび第2の格子7Bとして実施された1対の分散素子を備え、この1対の格子7A及び7Bは、レーザ放射と格子の2つの相互作用領域を与える。スペクトル依存回折条件によって、第1の格子7Aの後に角分散が生成される。すなわち、分散素子(格子7Aおよび7B)の間の角分散領域8では、個々のスペクトル成分についての光路が、ファンアウト平面内で互いに対してある角度で進む。
【0033】
図1は、中心波長λ0ならびにより長い(λ>λ0)および短い(λ<λ0)波長についての、ビーム経路の3つの光路8A、8B、8Cを示す。異なる波長の光路8A、8B、8Cは、ファンアウトエリア8内で互いに対してある角度で進む。第2の格子7Bは、折返しを引き起こす反射器要素9に向かう光路8A、8B、8Cの位置合せ/平行化を引き起こす。反射器要素9は、例えば、偏向プリズムまたはルーフミラーであり、その結果、帰り道は、同一の光学的条件を受けるが、例えばピックアップミラー10Aでの入力ビーム6からの出力ビーム10の圧縮レーザパルスの分離を可能にするために、高さが変位する。図1では、分散素子7A、7Bは、透過型回折格子として例示的に構成される。あるいは、反射回折格子、プリズム、またはグリズムが使用され得る。
【0034】
本明細書で開示される概念によれば、分散調節ユニット5は光学ユニット4を備え、光学ユニット4は、分散を調節するための追加のパラメータを与える。図1に示される実施形態では、光学ユニット4は、例えば透過型平行平面板11を光学素子として備える。光学素子、すなわち板11は、例えば水晶、YAG、サファイア、またはSF10から作製される。光学素子は、第1の格子7Aと第2の格子7Bとの間のファンアウトエリア8内に配置される。図1は、光路がどのように延びるかをより明確に示すことができるために、過大の板11を示す。スペクトルファニングのために、個々の波長は、板11の入射面11A上に異なる角度で降下し、異なる光路上で板11を通過し、互いに異なる距離で出射面11Bから出射し、それによって、波長間の角度関係が平行平面板について維持される。したがって、板11は、板11の前後で、個々のスペクトル成分の伝播に対する、レーザ放射の個々のスペクトル成分の入射角依存平行オフセットを引き起こす。図1では、光路8A、8B、8Cの方向が、互いに平行に配置された格子7A、7Bに対応して設定される。
【0035】
光学ユニット4はまた、回転軸17A周りの板11の角度位置を調節するための角度調節デバイス17をも含み得る。レーザシステム1は、角度調節デバイス17を制御するための制御ユニット13およびパルス持続時間測定デバイス15をさらに備え得る。
【0036】
板11の回転が、板11の中の光路と、出射面11Bでの波長間の距離とを変更することがわかる。したがって、回転は分散調節ユニット5の分散特性に影響を及ぼし、その結果、板11を回転することによって、出力ビーム10内のレーザパルスのパルス持続時間が設定され得る。
【0037】
本明細書で説明する概念とは対照的に、前述のDE第10 2010 018967A1号で開示される機構は、格子間に配置されないガラス板に基づく。したがって、その機構は、比較すると、著しく低い材料分散寄与だけを示し、本明細書で開示される機構の場合のようにパルス持続時間をさらに変更する、格子間に配置された光学素子の幾何学的効果を示さない。
【0038】
図1に関連して説明する分散調節ユニット5を使用すると、ビームまたはパルス品質を著しく低下させることなく、約1.5mmの厚さの平行平面ガラス板で、パルス持続時間が200fsから1psの間で変更され得る。この調節は、圧縮器格子7A、7B間の距離を調節することによる従来の調節方法よりも再現性が高く、また、より便利である。パルス持続時間は、200fsから1psの範囲に限定されないのは明らかであるが、パルス持続時間は(回転角δの所与の調節範囲において)とりわけガラス板の厚さおよび材料によって選択され得る。
【0039】
以下では、機能原理が、一般的にではあるが、図1に示される構成を参照しながら例示的に要約される。当業者は、類推によって、本開示の枠組み内の、以下で説明する代替構成に機能原理を移転し得る。第1の格子7Aでの回折により、異なるスペクトル成分が、板11上に異なる角度の下で降下する。それによって、板11を回転するとき、スペクトル成分間の位相差が、いくつかの効果によって変化する。
【0040】
1.異なるスペクトル成分について、光学ユニット(例えば、板11)内の経路は異なる。これにより、異なる光路長となり(波長に対する屈折率の依存は、ほとんどの構成では無視できる)、したがって位相差となる。板11の場合には、位相差は、例えば、ビーム経路中の板11の向きに依存し、すなわち、位相差は一般に、例えば中心波長の板11に対する入射角に依存する。
【0041】
2.異なる入射角のために、スペクトル成分は、板11を出射するとき、異なる大きさのビームオフセットを受ける。それによって、板11が回転するとき、以下が変化し得る。
【0042】
a)異なるスペクトル成分についての、板11と第2の相互作用エリア(格子7B上の入射エリア)との間の経路長、
【0043】
b)第2の相互作用領域(格子7Bでの入射エリア)でのビームのサイズ(すなわち、ファニングアウト)、したがって第2の分散素子(格子7B)の位相寄与、および
【0044】
c)異なるスペクトル成分についての、第2の分散素子(格子7B)と反射器要素9との間の経路長。
【0045】
異なるスペクトル成分の間の位相差に対するこれらの効果の寄与、または分散の寄与が、図2Aおよび2Bでガラス板について示されている。図2Aおよび2Bは、機能原理に対する前述の寄与を考慮に入れた場合における、位相(φ=β+β*(ω-ω)+β/2*(ω-ω+...)のβ係数を示す。β係数は、ガラス板の回転角の関数として与えられ、それによって、図2Bは、ガラス板の0°位置の周りの寄与を拡大した形で示す。0°位置では、中心波長はガラス板上に直交して降下する(入射角0°)。与えられる値は、垂直格子距離Igrating 50mm、板厚10mm、格子定数588nmを有する機構に対応する。図2Aおよび2Bでは、グラフが以下のような寄与に割り当てられる。
【0046】
21(点線):板のない圧縮器であり、それによって、圧縮器格子の距離が、βが0°位置の回転角δの板を有するものと同様の大きさとなるように適合される。
【0047】
23(破線):機能原理のポイント1)および2a)による、格子間の経路についての位相に対する板の寄与が含まれる。
【0048】
25(一点短鎖線):機能原理のポイント1)、2a)、および2b)による、格子間の経路についての板の寄与と、第2の格子の寄与が含まれる。
【0049】
27(実線):機能原理のポイント1)、2a)、および2b)、および2c)による、板のすべての寄与が含まれる。
【0050】
すべての寄与が、図示される角度範囲内の分散調節に関係することがわかる。それらは本質的に同程度の大きさであるからである(特に図2Bを参照)。
【0051】
板回転のβに対する寄与を、格子圧縮器の長さの変化のβ寄与と比較した場合、これらも同程度の大きさである。
【0052】
図3Aから3Dに示されるように、ガラス板が回転するとき、特に小さい格子定数について、分散次数の比の変化は、β自体よりも著しく小さい。図3Cおよび3Dでは、相対的デルタ(rel.Δ(β3/β2)またはrel.Δ(β4/β2))が、分散次数の関係を特徴付ける値として例示的に示されている。例えば、相対的デルタΔ(β3/β2)は以下によって与えられる。
【0053】
【0054】
ガラス板を回転することは、格子距離を変更することとほぼ同じ効果を有するので、間隔の変化が、分散調節中の回転角の変化に置き換えられ得る。したがって、ガラス板は、特に小さい格子定数について、パルス持続時間/パルス形状を設定または制御するために使用され得る。
【0055】
図4Aおよび4Bは、そのスペクトル幅を、最小可能持続時間300fsにする実現パルス圧縮の計算を例示的に示す。図4Aは、圧縮器がガラス板の非最適向き、または格子間の非最適距離を有する、分散調節ユニットの設定のための強度曲線を示す。ガラス板の角度位置を最適化することによって、図4Bの強度曲線に示されるように、パルス持続時間が大幅に圧縮され得る。
【0056】
高スペクトル幅を有する超短パルスでは、パルス品質(特に、パルス持続時間およびパルス形状)が、βの高次β、β...に対して敏感に反応する。小さい角度範囲内のみでガラス板を回転する場合であっても、パルス持続時間は変化する。したがって、本明細書で開示する概念の適用は、パルス品質の最適化(特に大きい格子定数および(超)短パルスについての最適化)に、よりふさわしい。
【0057】
大きい格子定数では、高次β、β...に対するβの比は、小さい格子定数よりもずっと激しく変化する。これが図5Aから5Dに示されており、図3Aから3Dと類似の、格子定数588nmについてのβの例示的角度依存性およびβに対する相対比が示されている。このとき、入射角、すなわちガラス板の回転と、圧縮器格子間の距離とを調節することによってパルス品質を最適化するために、高次に対する寄与がさらに使用され得る。
【0058】
図6は、達成可能最少パルス持続時間70fsのスペクトル幅を有するパルスの圧縮中のストレッチャ-圧縮器システムの非最適同調についての例示的計算を示す。ガラス板を使用しない場合の、即ち、純粋に圧縮器距離調節に基づいた場合のパルス圧縮の結果が、点線31で示される強度曲線である。例えば、この結果、ガラス板のない圧縮器の後で、120fsのパルス持続時間が得られる。システムが本発明のように圧縮器内のガラス板によって補完され、圧縮器格子間の距離と、ガラス板の回転角δの両方が最適化される場合、例示的に計算された強度曲線の実線によって示されるように、パルス持続時間が、例えば80fs未満までさらに低減され得る。
【0059】
図1に戻ると、レーザシステム1は、制御ユニット13およびパルス持続時間測定デバイス15を備え、光学ユニット4は、パルス持続時間測定値に応じて光学素子11の角度位置を設定するための角度調節デバイス17を備える。
【0060】
例えば、パルス持続時間測定デバイス15は、パルス持続時間依存測定信号(例えば、自己相関信号)を出力するように構成される。例えば、パルス持続時間測定デバイス15には、ミラー19でピックアップされた出力ビーム10の(非反射)部分が供給される。パルス持続時間測定デバイス15は制御ユニット13に測定信号を送信し、制御ユニット13は角度調節デバイス17に制御信号を出力する。例えば、制御ユニット13は、最適化アルゴリズムを使用して、パルス持続時間の低減のために角度位置(および場合によっては分散素子の距離)を変更し、パルス持続時間を、最短パルス持続時間、または特定の材料処理応用例のために必要とされるパルス持続時間(またはパルス形状)に設定する。
【0061】
角度調節デバイス17は、例えば、回転角δの特にステップフリーの調節を可能にする、光学素子の電動式の回転可能なホルダ、および/または圧電制御素子を介して回転可能なホルダでよい。これにより、例えば、能動的に設定され、具体的には制御される、回転角の調節による、パルス持続時間の設定、具体的には制御が可能となる。
【0062】
図7は、格子ストレッチャとして構成された分散調節ユニット50での、本明細書で開示される分散適合の概念の例示的実装を示す。角分散寄与の逆転を達成するために、ストレッチャでは、少なくとも1つの分散素子上の相互作用領域間にレンズ系(例えば、望遠鏡機構)が設けられ得、それによって、例示的に2つの透過型格子7A’、7B’が図7に示されている。圧縮器については、代替として、少なくとも1つの分散素子が、反射型回折格子、プリズム、またはグリズムとして構成され得る。
【0063】
レーザビームを集束する機構が第1の格子の像を生み出し、その結果、ファンアウトされたスペクトル成分が集束する。一例として、2つのレンズ51A、51Bを備える望遠鏡機構51が図7に示されている。平行平面板として構成された光学素子11’が、望遠鏡機構51の後ろの第2の格子7B’の前に挿入される。図1の板11と同様に、光学素子11’は回転可能に取り付けられ、ストレッチャ機構の分散挙動を適合させるように、入射角に関して調節され得る。
【0064】
図1と同様に、分散調節ユニット50は反射器要素9’と共に折り返される。図1の圧縮器構成とは対照的に、光学素子11’は、収束するファンアウトエリア内に配置される。代替または追加として、第1のレンズ51Aの正面に光学素子がさらに配置され得る。集束機構はまた、1つまたは複数のレンズおよび/またはミラーをも含み得る。
【0065】
圧縮器機構に関して上記で説明した分散に関する側面は、ストレッチャ機構に転用することができ、特に、機能的な原理と、パルス持続時間およびパルス形状の調節のための応用に転用できる。
【0066】
図8Aから8Cは、ストレッチャ機構および圧縮器機構で使用され得る光学ユニットのための回転可能に取り付けられた光学素子の別の実施形態を示す。
【0067】
図8Aでは、光学ウェッジ(wedge)対35(2重ウェッジ構造)が導入される。光学ウェッジは、例えば超短オプティクスで知られている。光学ウェッジ対35は、複数ウェッジ構成の一例である。ウェッジ35A、35Bは、例えば同一である。光学ウェッジ対35は、光学ユニット4の回転可能な光学素子として使用され得る。ウェッジ35A、35Bはそれぞれ、鋭角で収束する2つの平面側面を有する。ウェッジ35A、35Bは、ウェッジの側面のそれぞれが互いに平行な光学素子の入射面11Aまたは出射面11Bとして働くように、ファンアウトされたビーム経路中に配置される。他の側面は、例えばほぼ一定の厚さを有する、ウェッジ間の薄いエアギャップ37を形成する。
【0068】
ウェッジ35A、35Bのうちの少なくとも1つが、移動可能(矢印39)となるように(例えば、直線状にスライドするテーブル上に)取り付けられ、その結果、ウェッジ対35の厚さは、ウェッジ35A、35Bの挿入位置に応じて調節され得る。したがって、分散調節のための更なる可変な設定として、挿入が使用され得る。角度設定は、2重ウェッジ35(矢印41A)全体を回転することによって調節される。
【0069】
いくつかの実施形態では、ガラス板の特別な実施形態として2重ウェッジが使用され得、それによって2つのウェッジが、同一の角度の周りに一緒に回転され得る。
【0070】
複数ウェッジ構成はまた、光学素子の機械的回転が不要である一実施形態を作成する一方式でもある。これが、図10に関連して以下で一例として説明される。機械的移動を必要としない他の実施形態が、例示的に図11に関連して説明され、この実施形態は、例えば、EOMまたは複屈折結晶の屈折率の変化に基づいている。
【0071】
回転可能な光学素子を備える光学ユニットに戻ると、図8Bは、初期位置で角分散を本質的に不変のままにすることを可能にする別の実施形態を示す。この目的で、光学ユニットは、反対方向(矢印41B、41B’)に回転され得る、1対の同一の、例えば平行平面の透過板、43A、43Bを備える。それによって、第1の板43Aの平行オフセットが、適切な向きを有する第2の板43Bによって補われ(図8Bでは破線で示される)、その結果、この位置では、分散が、例えば格子と板42A、43Bの材料分散との間の距離のみによって決定される。
【0072】
図8Cは、2つの平行平面板45A、45Bの別の機構を示すが、2つの平行平面板45A、45Bは異なる厚さおよび/または材料である。例えば、薄板45Aは分散特性の微同調のために使用され、厚板45Bは粗調整のために使用され得る。この場合も、分散は一方または両方の板45A、45B(矢印47A、47B)を回転することによって設定される。
【0073】
図8Aから8Cに示される実施形態は、平行平面入射面および出射面を一緒に提供し、したがって光学ユニットの前後でスペクトル伝播方向を維持する複数の光学素子からなる光学ユニットの例である。
【0074】
分散調節ユニットの別の構成は、例えば、2対の分散素子を有する折り返しの無い機構と、ファンアウトエリアのうちの少なくとも1つの中に配置される1つの光学ユニットとを含む。さらに、ストレッチャおよび圧縮器機構は、特に光学素子に関して、互いに対して適合され得る。
【0075】
本明細書で提案される分散調節ユニットが使用され得るレーザシステムの例には、例えば0.1μJ以上のパルスエネルギーと、例えば50ps以下の範囲内のパルス持続時間とを有するレーザシステムが含まれる。そのようなレーザシステムの応用分野には、ガラス切断(例えば、ディスプレイおよび医用製品の切断)、マーキング、眼手術などの医用応用例、射出ノズルの穿孔、および科学実験の実施が含まれる。
【0076】
本明細書で開示される概念に基づいて、分散調節のための方法は、図9に示される以下のステップを含み得る。
【0077】
角分散部分が、パルスレーザビームのスペクトルファニングおよび組合せによって与えられる(ステップ61)。パルスレーザビームのファンアウトエリア内に光学素子を導入することによって(ステップ63)、角分散部分が、例えば平行平面板、複数ウェッジ構造、EOMなどを介して影響を受ける。特に、導入された光学素子による材料分散も、分散解析の中で考慮され得る。例えば平行平面板の形態の光学素子が、回転可能に取り付けられており、これによって、レーザビームに対するその角度が調節可能である。さらに、レーザパルのパルス持続時間が分散調節の後に測定される場合(ステップ65)、光学素子は、例えば、測定されたパルス持続時間の関数として角度が調節され、分散が調節され得る(ステップ67)。これにより、分散調節ユニット内の様々に組合せ可能な分散寄与によるパルス整形と同様に、特に、パルス持続時間の圧縮または伸長が可能となる。さらに、分散調節は、角分散調節と共に、または角分散調節に加えて実施され得る。
【0078】
また、例えば、分散境界条件が、例えば自己位相変調のために、必要とされるパルスエネルギーの関数として再現可能に変化するシステムにおいて、いくつかの制御概念が実装され得る。例えば、これらの制御概念によって、光学ユニット、例えば光学素子の角度位置またはEOMに印加される電圧が、必要とされるパルスエネルギーの関数として調節される。したがって、前述のパルス持続時間測定値は、パルスエネルギーパラメータの提供によって置き換えられ、または補充され得る。例えば、1radより小さいB-integral値を有するパルスについて(本質的に自己位相変調なし)、光学素子に対してほぼ直交する入射が設定され得る。パルスエネルギーが増大するにつれて、パルス持続時間に対する分散効果を補償するように光学素子が回転する。
【0079】
さらに、伝播方向及び伝播長の少なくとも一方を変更することによって、個々のスペクトル成分の伝播に対する電磁放射の個々のスペクトル成分の平行オフセットが引き起こされ得る。平行オフセットは入射角に依存する。具体的には角分散領域内で生成される分散を変更するために、(a)光学素子を回転すること、及び/又は、(b)光学素子の厚さ、及び/又は、屈折率、及び/又は、回折パラメータを変更することによって、伝播方向、及び/又は、伝播長が変更される。
【0080】
この方法は以下のステップを含みうる。即ち、分散適合の後にレーザパルスのパルス持続時間を測定するステップと、分散の適合のために、光学素子内の伝播方向、及び/又は、伝播長を設定するステップ、特に、レーザパルスを圧縮または伸長するために、測定したパルス持続時間の関数として角度位置を設定するステップとを含み得る。この方法はまた、以下のステップを含みうる。即ち、自己位相変調分散寄与パラメータ、特にパルスエネルギーパラメータを与えるステップと、特に、自己位相変調によって引き起こされるレーザパルスの伸長を補償するために、自己位相変調分散寄与パラメータに応じて伝播方向、及び/又は、伝播長を変更するステップとを含み得る。
【0081】
一般には、光学素子の調節デバイスは、パルス持続時間依存測定信号、平均パルス出力パラメータ、ピークパルス出力パラメータ、及び/又は、パルスエネルギーパラメータの関数として、分散調節ユニットの分散寄与を設定するように構成され得る。これは、具体的には、分散調節ユニットの前、及び/又は、後で、光ビーム経路の自己位相変調分散寄与を割り当てるために行われる。
【0082】
いくつかの実施形態では、例えば、光学素子の厚さが、例えば格子対の距離の変化なしに、パルス長が最小限に抑えられ得るように選択され得る。一般には、必要とされる厚さは、分散調節ユニットの異なる光学構成要素のパラメータに依存する。例えば、必要とされる厚さは、例えば格子の垂直線間隔によって引き起こされる、実装される分散角度ファニングと、入射角とに依存する(有効厚は、ほぼ直交する入射または斜めの入射、例えば中心波長に関するブリュースター角の入射によって影響を受ける)。さらに、必要とされる厚さは、レーザパルスの持続時間、レーザパルスのスペクトル幅、レーザパルスエネルギー、自己位相変調を有する光学系の傾向などのレーザビームパラメータに依存する。
【0083】
図10は、図8Bによる2重ウェッジ構造70について例示的に示される、複数のウェッジ構成の厚さの変化により、光学ユニットの前後で電磁放射の個々のスペクトル成分の伝播に関する個々のスペクトル成分の入射角依存平行オフセットが生じることをさらに示す。
【0084】
具体的には、2つの厚さに対してビームオフセットが引き起こされる。つまり、ウェッジ35Aの入射面11Aに直交しない光路71を有する入射スペクトル成分について、入射面11Aに対する法線nに対する角度ε(≠0)の下で、ウェッジ35A、35Bを通る斜めの通過によってビームオフセットが引き起こされる。このビームオフセットは2重ウェッジ構造70の厚さに依存する。2重ウェッジ構造70がより厚く設定されるほど、出射光路73、73’は入射光路71に対してより平行に変位する。角分散領域内の異なるスペクトル成分は、互いにある角度をもって進む光路に関連付けられるので、角度εは異なる値となり、平行ビームオフセットも異なってくる。その結果、(図10の矢印39に沿った変位による)光学素子の厚さの変化のみによって角分散が変化し、したがって分散調節が可能となる。さらに、前述のように、オフセットは、第2の相互作用エリアと後方反射器などとの間の異なる経路などの別の位相効果を有することに触れておく。
【0085】
完全さのために、当業者に知られており、必要とされる光学的条件が満たされる限り類推によって実装され得る、3つ以上のウェッジを有する複数ウェッジ構造の別の実施形態が指摘される。
【0086】
別の実施形態では、光学素子が光学ユニット4内で使用され得、屈折率や複屈折などの光学素子の光学的特性が具体的に制御可能である。
【0087】
図11は、図1に示されるものと類似の構造を有するレーザシステム1’を示す。しかしながら、板11の代わりに、電極83を備える電気光学変調器(EOM)81が設けられる。電極83に印加される電圧が、制御デバイス13と共に制御され得る。電圧に応じて、特定の屈折率がEOM81で設定される。特定の屈折率は、角分散領域8内の光路8A、8B、8Cを決定する。電圧、したがって屈折率を変更する場合、光路も変化する。これが、EOM81内に光路8A’、8B’、8C’によって例示的に示されている。EOM81の電圧設定は、例えば、機械的回転またはスライドイン設定と比較して、分散のより高速な調節を可能にし得る。さらに、固定空間一体化により、入射角に対して最適化された反射防止被覆を使用し得る。残りの構成要素、および光路の変化の効果に関して、上記の説明に対する参照が行われる。
【0088】
アナログ構成では、2つの音響光学変調器の機構が、光路を調節するための光学素子として使用され得る。
【0089】
完全さのために、図12は分散調節ユニット5’を示し、分散調節ユニット5’は、例えばレーザシステム1または1’内の分散調節ユニット5の代わりに使用され得る。分散調節ユニット5’は、圧縮器として例示的に構成されるが、ストレッチャとしても構成され得る。分散調節ユニット5’は、本明細書で開示されるような分散調節のための光学素子を備える光学ユニット4’を有する。図1と同様に、例えば、分散調節ユニット5’は後方反射器9を含み、後方反射器9は、後方の進路からそこで進路の高さを変位する。偏向プリズム9’を介して第2の折返しが行われ、したがって必要な分散素子7はただ1つである。これは、第2の折返しが、(1つの)分散素子7上でレーザ放射と分散素子7との間の空間的に分離された相互作用領域を与え得るからである。この結果、コンパクトな光学機構が得られる。
【0090】
レーザ光、具体的には超短パルスレーザの拡張スペクトル範囲内(通常は、応用例に応じて200nmから10μmの波長範囲内)のレーザ光を参照して例示的実施形態が説明された。しかしながら、使用は一般に、角分散変動の概念が実装され得ることを条件として、スペクトル幅を有する電磁放射に移転可能である。
【0091】
本明細書で説明される分散調節ユニットの実施形態はまた、単一または複数のパスで、自由ビーム圧縮器、及び/又は、ストレッチャを備える発振器システムについて使用され得る。
【0092】
本明細書で説明される実施形態からわかるように、光学素子は、例えば、その位置の少なくとも1つの分散素子、及び/又は、少なくとも1つの分散素子に対する向きとは無関係に調節され得る。
【0093】
本明細書で説明される実施形態からわかるように、好ましくは、光学素子、具体的には1つまたは複数の平行平面(ガラス)板または光学ウェッジは、光学素子全体にわたって、具体的にはビーム通路の領域内で均質に形成された屈折率を有する材料からなる。屈折率の均質性は、例えば光学素子が回転するとき、光の偏向が材料の屈折率の変化によって影響を受けないようなものである。具体的には、光線が、例えばそれに対応して均質に与えられた屈折率を有する平行平面(ガラス)板を通過するとき、平行オフセットは、材料自体の屈折率の変化によって影響されず/妨げられない。
【0094】
この説明および/または特許請求の範囲で開示されるすべての特徴は、元の開示の目的で、ならびに実施形態および/または特許請求の範囲内の特徴の構成とは無関係の特許請求される発明を制限する目的で、互いに対して別々に、無関係に開示されることが意図されることが明示的に述べられる。元の開示の目的で、ならびに具体的には値範囲の限定として、特許請求される発明を制限する目的で、すべての値範囲またはエンティティのグループの指示が、あらゆる可能な中間値または中間エンティティを開示することが明示的に述べられる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12