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特許7287786表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20230530BHJP
   H03H 3/10 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018568396
(86)(22)【出願日】2017-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 FR2017051701
(87)【国際公開番号】W WO2018002504
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】1656191
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルタス ゴーダン
(72)【発明者】
【氏名】イザベル フイエ
【合議体】
【審判長】國分 直樹
【審判官】千葉 輝久
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-135076(JP,A)
【文献】特開昭61-288506(JP,A)
【文献】特開平10-297931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張係数が有用層(10)より低い支持基板(20)上に置かれた、自由な第1の面(1)と第2の面(2)とを有する圧電材料の前記有用層(10)を備えた表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)であって、
前記有用層(10)と前記支持基板(20)との間に置かれたトラップ層(30)と、
前記有用層(10)と前記トラップ層(30)との間に、0.3ミクロンより大きい山から谷の振幅を有する、定められた粗さの少なくとも1つの機能性界面(31)であって、前記定められた粗さに対応する波長を有する干渉波の前記トラップ層(30)内への拡散を可能にして前記有用層(10)内への干渉反射を回避するように構成された、該機能性界面(31)と、
を備え、
前記トラップ層(30)は、前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との界面に到達しないように前記拡散された干渉波を吸収によって遮蔽する材料により構成され、前記材料は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファス、または多結晶ゲルマニウムの中から選択された材料から形成され、
前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との前記界面に決して到達しないように、前記0.3ミクロンより大きい振幅の大きさと等しい波長を有する干渉波が前記トラップ層(30)によって吸収されて遮蔽され、これによって前記支持基板(20)との前記界面から前記有用層(10)内への前記干渉反射を回避するようにしたことを特徴とするハイブリッド構造(100)。
【請求項2】
前記トラップ層(30)は、前記支持基板(20)と直接接触することを特徴とする請求項1に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項3】
前記トラップ層(30)は、前記支持基板(20)の表面層内の注入によって、または前記支持基板(20)の前記表面層のエッチングおよび構造化によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項4】
前記機能性界面(31)は、前記有用層(10)と前記トラップ層(30)との間の界面によって形成され、前記有用層(10)の前記第2の面(2)は前記定められた粗さを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項5】
前記機能性界面(31)は、前記有用層(10)の前記第2の面(2)上に配置された第1の中間層(40)と、前記トラップ層(30)との間の界面によって形成され、
前記トラップ層(30)は前記定められた粗さを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項6】
前記第1の中間層(40)は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選択された材料、または前記有用層(10)を形成するものと同じ材料を備えたことを特徴とする請求項5に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項7】
前記機能性界面(31)の定められた粗さとは異なる、第2の機能性界面(32)を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項8】
前記第2の機能性界面(32)は、前記有用層(10)と、前記第1の中間層(40)上に配置された第2の中間層(50)との間の界面によって形成され、前記第2の機能性界面(32)は、山から谷の振幅が0.1ミクロンより大きい第2の定められた粗さを有することを特徴とする請求項7に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項9】
前記第2の中間層(50)は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選択された材料、または前記有用層(10)を形成するものと同じ材料を備えたことを特徴とする請求項8に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項10】
前記第1の中間層(40)および前記第2の中間層(50)は、同じ材料から形成されたことを特徴とする請求項8または9に記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項11】
前記有用層(10)は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶、亜鉛酸化物(ZnO)、および窒化アルミニウム(AlN)の中から選択された圧電材料を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項12】
前記支持基板はバルク基板、または少なくとも1つのバッファ層を備えた若しくは電極配線からなるマイクロエレクトロニクス構成要素のすべてまたは一部を備えた複合基板であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載のハイブリッド構造(100)を備えたことを特徴とする表面弾性波デバイス(200)。
【請求項14】
第1の面(1)、および定められた粗さを有する第2の面(2)を備えた圧電材料の有用層(10)を用意するステップと、
前記有用層(10)より低い熱膨張係数を有する支持基板(20)を用意するステップと、
前記有用層(10)を前記支持基板(20)上に配置するための組み立てステップと
を含む、表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)の製造方法であって、
前記組み立てステップの前に、前記有用層(10)の前記第2の面(2)上にトラップ層(30)を形成するステップを含み、
前記トラップ層(30)と前記有用層(10)との間の界面は、0.3ミクロンより大きい山から谷の振幅を有する、定められた粗さの機能性界面(31)を形成することにより、前記機能性界面(31)は、前記定められた粗さに対応する波長を有する干渉波の前記トラップ層(30)内への拡散を可能にして前記有用層(10)内への干渉反射を回避するように構成され、
前記トラップ層(30)は、前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との界面に到達しないように前記拡散された干渉波を吸収によって遮蔽する材料により構成され、前記材料は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファス、または多結晶ゲルマニウムの中から選択された材料から形成され、
前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との前記界面に決して到達しないように、前記0.3ミクロンより大きい振幅の大きさと等しい波長を有する干渉波が前記トラップ層(30)によって吸収されて遮蔽され、これによって前記支持基板(20)との前記界面から前記有用層(10)内への前記干渉反射を回避するようにし、
前記組み立てステップは前記トラップ層(30)と前記支持基板(20)との間で実行されることを特徴とするハイブリッド構造(100)の製造方法。
【請求項15】
第1の面(1)および第2の面(2)を備えた圧電材料の有用層(10)を用意するステップと、
前記有用層(10)より低い熱膨張係数を有する支持基板(20)を用意するステップと、
前記有用層(10)を前記支持基板(20)上に配置するための組み立てステップと
を含む、表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造(100)の製造方法であって、
前記組み立てステップの前に、
前記支持基板(20)上に定められた粗さを有するトラップ層(30)を形成するステップと、
前記トラップ層(30)上に第1の中間層(40)を形成するステップであって、前記トラップ層(30)と前記第1の中間層(40)との間の界面は、0.3ミクロンより大きい山から谷の振幅を有する、定められた粗さの機能性界面(31)を形成することにより、前記機能性界面(31)は、前記定められた粗さに対応する波長を有する干渉波の前記トラップ層(30)内への拡散を可能にして前記有用層(10)内への干渉反射を回避するように構成され、
前記トラップ層(30)は、前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との界面に到達しないように前記拡散された干渉波を吸収によって遮蔽する材料により構成され、前記材料は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファス、または多結晶ゲルマニウムの中から選択された材料から形成され、
前記拡散された干渉波が前記支持基板(20)との前記界面に決して到達しないように、前記0.3ミクロンより大きい振幅の大きさと等しい波長を有する干渉波が前記トラップ層(30)によって吸収されて遮蔽され、これによって前記支持基板(20)との前記界面から前記有用層(10)内への前記干渉反射を回避する、該ステップと
を含むことを特徴とするハイブリッド構造(100)の製造方法。
【請求項16】
前記組み立てステップは、前記第1の中間層(40)と前記有用層(10)の前記第2の面(2)との間で実行されることを特徴とする請求項15に記載のハイブリッド構造(100)の製造方法。
【請求項17】
前記組み立てステップの前に、第2の定められた粗さを有する前記有用層(10)の前記第2の面(2)上に第2の中間層(50)を形成するステップを含み、
前記組み立てステップは、前記第1の中間層(40)と前記第2の中間層(50)との間で実行され、前記有用層(10)と前記第2の中間層(50)との間の界面は、前記機能性界面(31)の定められた粗さとは異なる、第2の機能性界面(32)を形成することを特徴とする請求項16に記載のハイブリッド構造(100)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面弾性波デバイスの分野に関する。具体的には表面弾性波デバイスの製造のために適合されたハイブリッド構造、およびそのハイブリッド構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波デバイス(SAW)は、電気信号を弾性波に、およびその逆に変換する、圧電基板上に作り上げられた1つまたは複数のインターデジタルトランスデューサを用いる。このようなSAWデバイスまたは共振器は、しばしばフィルタリング用途に用いられる。圧電基板上の無線周波数(RF)SAW技術は、高い絶縁性および低い挿入損失などの優れた性能をもたらす。この理由によりSAWデバイスは、無線通信用途におけるRFデュプレクサのために用いられる。それでもなお、バルク弾性波(BAW)技術に基づくRFデュプレクサに対してより競合的となるために、RF SAWデバイスは、その周波数応答の温度安定性が改善される必要がある。
【0003】
温度に従ったSAWデバイスの動作周波数依存性、または周波数の熱係数(TCF)は、一方でトランスデューサのインターデジタル電極の間の間隔における変動に依存し、これは一般に、用いられる圧電基板の高い熱膨張係数(CTE)によるものであり、他方でTCFは、圧電基板の膨張または収縮には表面弾性波の速度の増加または減少を伴うので、熱速度の係数に依存する。周波数の熱係数(TCF)を最小にするために、従って目標は、特に弾性波が伝搬することになる表面領域における、圧電基板の膨張/収縮を最小にすることである。
【0004】
下記の非特許文献1は、SAWデバイスの周波数応答の温度依存性問題を克服するために一般に用いられる手法の概観を述べている。
【0005】
1つの手法は、例えばシリコン基板上に配置された圧電材料の層から構成されたハイブリッド基板を用いることである。シリコンの低いCTEは、温度に従った圧電層の膨張/収縮を制限することを可能にする。タンタル酸リチウム(LiTaO3)の圧電層の場合、上記の論文はLiTaO3の厚さと、シリコン基板の厚さとの間の10倍の比は、周波数の熱係数(TCF)を適切に改善することを可能にすることを示している。
【0006】
下記の特許文献1は、また、補償層(例えばシリコン)上に配置された圧電層を備えた、SAW用途に適した構造を開示している。
【0007】
このようなハイブリッド基板の欠点の1つは、(下記の非特許文献2で「スプリアス音響モード」と呼ばれる)干渉弾性波の存在に由来し、これはハイブリッド基板上に配置された共振器の周波数特性に悪影響を及ぼす。これらの干渉共振は具体的には、下にある界面、特にLiTaO3とシリコンとの間の界面上の望ましくない反射に関連する。これらの干渉共振を低減するための1つの解決策は、LiTaO3層の厚さを増加することであり、これはTCF改善を保つためにはシリコン基板の厚さも増加しなければならず、その結果ハイブリッド基板の全体の厚さは、特に携帯電話市場における、最終の構成要素の厚さ低減の必要性にもはや適合しなくなる。K.Hashimotoによって提案された他の解決策は、LiTaO3層の下面を、その上における弾性波反射を制限するように粗面化することである。このような粗面化は、ハイブリッド基板の製造のために、組み立てられることになる非常に平滑な表面を必要とする直接接合プロセスが用いられるとき、取り扱いの難しさを提起する。
【0008】
従来技術によるハイブリッド基板の他の欠点は、半導体シリコン材料の支持体の存在から生じ、たとえそれが高抵抗であっても、自由電荷キャリアを含む可能性があり、および特にソリッド圧電基板に関連して挿入損失およびRF信号の歪み(直線性)を増加させることによって、デバイスの性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
無線周波数デバイスの性能を改善するために、下記特許文献2は、支持基板上に配置された、特定の欠陥の密度を特徴とするトラップ層を備えた構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】DE102004045181
【文献】WO2016/087728
【非特許文献】
【0011】
【文献】K.Hashimoto,M.Kadota and al,”Recent development of temperature compensated SAW devices”,IEEE Ultrasonic.Symp.2011,pages 79-86,2011
【文献】”Characterization of bonded wafer for RF filters with reduced TCF”,BPAbbott et al,Proc 2005 IEEE International Ultrasonics Symposium Sept 19-21,2005,pp.926-929
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点のいくつかまたはすべてを救済することである。本発明の目標は、上述の干渉弾性波の低減および/または除去を可能にし、高い周波数で動作するデバイスに対する安定な性能を確実にする、ハイブリッド構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、熱膨張係数が有用層より低い支持基板上に置かれた、自由な第1の面と第2の面とを有する圧電材料の有用層を備えた表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造に関する。ハイブリッド構造は、
・ 有用層と支持基板との間に置かれたトラップ層と、
・ 有用層とトラップ層との間に、定められた粗さの少なくとも1つの機能性界面と
を備える。
【0014】
本発明によるハイブリッド構造のトラップ層は、前記ハイブリッド構造上に精巧に作り上げられたSAW RFデバイスを動作させる間に、支持基板内で場合によっては生成される自由電荷キャリアを効果的に捕捉する。このようにしてRF性能(直線性、挿入損失)は、大規模圧電基板上の技術のものと同等、さらにはそれより優れた良好なレベルに達する。
【0015】
定められた粗さの機能性界面は、有用層内で深く伝搬することができる弾性波の効率的な拡散を可能にし、従ってSAWデバイスの信号品質に悪影響を及ぼすことが知られているそれらの干渉反射を回避する。弾性波のこの拡散は、機能性界面が有用層とトラップ層との間に位置するという事実によって、より効率的なものに変えられる:実際、自由キャリアの捕捉における品質に加えて、トラップ層は下にある、支持基板との界面を効率的に遮蔽することを可能にし、前記界面はハイブリッド構造において弾性波を反射するのに寄与する。
【0016】
単独でまたは組み合わせて選ばれる、本発明の有利な特徴によれば、
・ トラップ層は、支持基板と直接接触する;
・ トラップ層は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファスまたは多結晶ゲルマニウムの中から選択された材料から形成される;
・ トラップ層は、支持基板の表面層内の注入によって、または支持基板の表面層のエッチングおよび構造化によって形成される;
・ 機能性界面の定められた粗さは0.3ミクロンより大きい山から谷の振幅を有し、0.5ミクロン以上、さらには1ミクロンであることが有利である;
・ 機能性界面は有用層とトラップ層との間の界面によって形成され、有用層の第2の面は定められた粗さを有する;
・ 機能性界面は、有用層の第2の面上に配置された第1の中間層と、トラップ層との間の界面によって形成され、トラップ層は定められた粗さを有する;
・ 第1の中間層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選択された材料、または有用層を形成するものと同じタイプの材料を備える;
・ ハイブリッド構造は、第2の機能性界面を備える;
・ 第2の機能性界面は、有用層と、第1の中間層上に配置された第2の中間層との間の界面によって形成され、第2の機能性界面は、山から谷の振幅が0.1ミクロンより大きい第2の定められた粗さを有する;
・ 第2の中間層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選択された材料、または有用層を形成するものと同じタイプの材料を備える;
・ 第1の中間層および第2の中間層は、同じ材料から形成される;
・ 有用層は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶、亜鉛酸化物(ZnO)、または窒化アルミニウム(AlN)の中から選択された圧電材料を備える;
・ 支持基板はソリッド基板、または少なくとも1つのブランク層を備えたもしくはマイクロエレクトロニクス構成要素のすべてまたは一部を備えた複合基板である。
【0017】
本発明はまた、上記のようなハイブリッド構造を備えた表面弾性波デバイスに関する。
【0018】
本発明はさらに、表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造の製造方法に関し、方法は、
・ 第1の面、および定められた粗さを有する第2の面を備えた圧電材料の有用層を用意するステップと、
・ 有用層より低い熱膨張係数を有する支持基板を用意するステップと、
・ 有用層を支持基板上に配置するための組み立てステップと
を含み、方法は組み立てステップの前に、有用層の第2の面上にトラップ層を形成するステップを含み、トラップ層と有用層との間の界面は定められた粗さの機能性界面を形成し、組み立てステップはトラップ層と支持基板との間で実行されることを特徴とする。
【0019】
本発明はまた、表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造の他の製造方法に関し、方法は、
・ 第1の面および第2の面を備えた圧電材料の有用層を用意するステップと、
・ 有用層より低い熱膨張係数を有する支持基板を用意するステップと、
・有用層を支持基板上に配置するための組み立てステップと
を含み、方法は組み立てステップの前に、
・ 支持基板上に定められた粗さを有するトラップ層を形成するステップと、
・ トラップ層上に第1の中間層を形成するステップであって、トラップ層と第1の中間層との間の界面は、定められた粗さの機能性界面を形成する、ステップと
を含むことを特徴とする。
【0020】
単独でまたは組み合わせて選ばれる、この製造方法の有利な特徴によれば、
・ 機能性界面の定められた粗さは0.3ミクロンより大きい山から谷の振幅を有し、0.5ミクロン以上、さらには1ミクロンであることが有利である;
・ 組み立てステップは第1の中間層と、有用層の第2の面との間で行われる;
・ ハイブリッド構造の製造方法は、組み立てステップの前に、第2の定められた粗さを有する有用層の第2の面上に第2の中間層を形成するステップを含み、組み立てステップは第1の中間層と第2の中間層との間で実行され、有用層と第2の中間層との間の界面は第2の機能性界面を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下に続く詳しい説明から明らかになるであろう。
図1】本発明によるハイブリッド構造を示す図である。
図2】本発明によるハイブリッド構造を示す図である。
図3】本発明によるハイブリッド構造を示す図である。
図4】本発明による表面弾性波デバイスを示す図である。
図5-1】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図5a~5cである。
図5-2】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図5d、5eである。
図6-1】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図6a~6cである。
図6-2】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図6d、6eである。
図7-1】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図7a~7cである。
図7-2】本発明によるハイブリッド構造の製造方法を示す図7d、7eである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
説明の部分において同じタイプの要素に対しては、図中では同じ参照番号が用いられ得る。
【0023】
図は概略表示であり、見やすいように原寸に比例していない。特にz軸に沿った層の厚さは、xおよびy軸に沿った横方向寸法に対して原寸に比例していない。
【0024】
図1に示されるように本発明は、自由な第1の面1と、第2の面2とを有する圧電材料の有用層10を備えた表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造100に関する。有用層10は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶、亜鉛酸化物(ZnO)、または窒化アルミニウム(AlN)の中から選択された圧電材料を備える。
【0025】
有用層10は、有用層10より熱膨張係数が低い支持基板20上に配置される。支持基板20は、例えばシリコンまたはゲルマニウムから形成される。
【0026】
本発明によるハイブリッド構造100はまた、有用層10と支持基板20との間に置かれたトラップ層30を備える。「トラップ層」という用語は、支持基板20内に存在することがあり得る自由電荷キャリアを捕捉することができる層を意味すると理解される。例としてトラップ層30は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファスまたは多結晶ゲルマニウムの中から選ばれた材料から形成される。トラップ層30はまた、以下を含む技法または技法の組み合わせによって形成され得る:
・ 支持基板20の表面層内へのイオン注入;シリコン基板に対して、支持基板20から生じる電荷キャリアを捕捉することができる乱された表面層を生成するために、例えばアルゴン、シリコン、または窒素イオンの注入が実行され得る;
・ または支持基板20の表面層のエッチングおよび構造化による;例えば機械的、湿式または乾式化学エッチングにより、表面の、支持基板20から生じる電荷キャリアに対する好ましい捕捉場所の構造化を誘起する。
【0027】
トラップ層30の厚さは、数十nmから数ミクロン、さらには数十ミクロンの間とすることができる。
【0028】
トラップ層30は支持基板20と直接接触することが有利であり、これは支持基板20内で生成される、電荷キャリアの効率的な捕捉を可能にする。
【0029】
本発明によるハイブリッド構造100はまた、有用層10とトラップ層30との間に、定められた粗さの少なくとも1つの機能性界面31を備える。機能性界面31の粗さは、約50から500ミクロンの測定プロファイル、または約50×50から500×500μm2の測定表面に対する、例えば機械的または光学的形状測定によって測定される最大の山から谷の振幅によって定義される。山から谷の定められた粗さは、0.3ミクロンより大きいことが有利である。さらには0.5ミクロン以上、さらには1ミクロンであることが有利である。0.3から5ミクロンの間であることが好ましい。
【0030】
また機能性界面31の粗さのスペクトル密度(PSD)は、除去されることが望ましい干渉波の波長のスペクトル帯域のすべてまたは一部をカバーすることが有利である。定められた粗さは、少なくとも干渉波長の1/4に等しい空間的波長および振幅を有することが好ましい。
【0031】
従って機能性界面31の定められた粗さは、有用層10における分散の影響を受けやすい弾性波を効率的に拡散させる能力に対して、ハイブリッド構造100上に製造されることになるSAWデバイスの弾性波の周波数に応じて、振幅において、および場合によってはスペクトル密度において適合されることができる。
【0032】
本発明によるハイブリッド構造100のトラップ層30は、ハイブリッド構造100の第1の面1上に作り上げられたRF SAWデバイスの動作時に、支持基板20内で場合によっては生成される自由電荷キャリアを効果的に捕捉する。このようにしてRF性能(直線性、挿入損失)は、大規模圧電基板上の技術のものと同等、さらにはそれより優れた非常に良好なレベルに達する。
【0033】
定められた粗さの機能性界面31は、有用層10内で深く分散することができる弾性波の効率的な拡散を可能にし、従ってSAWデバイスの信号品質に悪影響を及ぼすことが知られているそれらの干渉反射を回避する。
【0034】
図1に示される第1の実施形態によれば、機能性界面31は、有用層10とトラップ層30との間の界面によって形成される。
【0035】
図2に示される第2の実施形態によれば、機能性界面31は、有用層10の第2の面2上に配置された第1の中間層40と、トラップ層30との間の界面によって形成される。例として第1の中間層40は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選ばれた材料、または有用層と同じタイプの材料を備えることができる。
【0036】
これら2つの実施形態はトラップ層30が、下にある、支持基板20との界面から離れること、およびそれを遮蔽することを可能にするという点で有利であり、後者は通常のハイブリッド構造において、有用層10の体積内に分散する弾性波の反射に大きく寄与するものである。支持基板20との界面は、機能性界面31に到達する弾性波のすべてではないものの大部分が、後者によって効率的に拡散され、従ってその界面に決して到達しないようになるという意味で、遮蔽される。
【0037】
図3に示される第3の実施形態によれば、ハイブリッド構造100は、その山から谷の振幅が0.1ミクロンより大きい第2の定められた粗さを有する、第2の機能性界面32を備える。これは、0.1から5ミクロンの間であることが好ましい。第2の機能性界面32は、振幅およびスペクトル密度の両方において第1の機能性界面31の定められた粗さと異なる、第2の定められた粗さを有し得ることに注目されるであろう。スペクトル密度は、除去されることが望ましい干渉波の波長のスペクトル帯域を、相補的なやり方でカバーするように選ばれ得るので有利である。
【0038】
第2の機能性界面32は、有用層10と、第1の中間層40上に配置された第2の中間層50との間の界面によって形成される。例として第2の中間層50は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選ばれた材料を備え、それはまた有用層10を構成するものと同じタイプの材料を備え得る:LiTaO3で作られた有用層10に対して、第2の中間層50は例えば堆積されたアモルファスLiTaO3層からなることができる。
【0039】
この第3の実施形態の有利な変形によれば、第1の中間層40および第2の中間層50は同じ材料から形成され、従ってこれら2つの層の間の界面は、2つの層の間で音響インピーダンスには差がないことにより、干渉反射に対する寄与はわずかであるかまたは無い。
【0040】
述べられる様々な実施形態において、支持基板はバルク基板である。あるいはそれは少なくとも1つのブランク層、またはマイクロエレクトロニクス構成要素のすべてまたは一部を備えた構造化された層を備えた、複合基板からなることができ、これらの構成は、有用層10内またはその上に表面弾性波デバイスを、および支持基板内に構成要素(スイッチ、増幅器、他のフィルタなど)を含んだ、共同統合されたシステムを生産するために特に有利である。
【0041】
本発明はまた、図4に示されるハイブリッド構造100を備えた表面弾性波デバイス200に関する。デバイス200は例えば、弾性波がそれらの間で分散する、有用層10の第1の面1上のインターデジタル金属電極201を備える。
【0042】
ハイブリッド構造100は、700MHzから3GHzの範囲の弾性波周波数を用いた表面弾性波デバイス200の製造に特に適する。
【0043】
本発明はまた、表面弾性波デバイス200のためのハイブリッド構造100の製造方法に関し、これは図5~7を参照して述べられる。
【0044】
製造方法は最初に、第1の面1、および定められた粗さを有する第2の面2を備えた、圧電材料の有用層10を用意するステップを含む。粗さは、約50から500ミクロンの測定プロファイル、または約50×50から500×500μm2の測定表面に対する、例えば機械的または光学的形状測定によって測定される山から谷の最大振幅によって定義される。定められた粗さは0.3ミクロンより大きい、さらには0.5ミクロン以上、さらには1ミクロンより大きいことが有利である。さらには0.3から5ミクロンの間であることが好ましい。
【0045】
また機能性界面31の粗さのスペクトル密度は、除去されることが望ましい干渉波の波長のスペクトル帯域のすべてまたは一部をカバーすることが有利である。定められた粗さは、少なくとも干渉波長の1/4に等しい空間的波長および振幅を有することが好ましい。
【0046】
従って機能性界面31の定められた粗さは、有用層10における分散の影響を受けやすい弾性波を効果的に拡散させる能力に対して、ハイブリッド構造100上に製造されることになるSAWデバイスの弾性波の周波数に応じて、振幅において、および場合によってはスペクトル密度において適合されることができる。
【0047】
定められた粗さは、第2の面2上で、機械的ラッピング技法、化学機械研磨、湿式または乾式化学エッチング、またはこれらの様々な技法の組み合わせによって達成されることができる。目標は、有用層10の第2の面2上に、面全体にわたって定められた振幅の一様な粗さを作り出すことである。例としてこのような粗さは、半導体産業において用いられるウェハ(タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム)の粗面化された裏面の通常の処理によって得られることができる。
【0048】
前に述べられたように、および限定することなく、有用層10はタンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶、亜鉛酸化物(ZnO)、または窒化アルミニウム(AlN)の中から選択された圧電材料を備える。
【0049】
有利な実施形態によれば有用層10は、定められた粗さの第2の面2と、第1の面1’とを有するドナー基板11内に含まれる(図5a)。
【0050】
本発明による製造方法はまた、有用層10の、またはドナー基板11の第2の面2上に、トラップ層30を形成するステップを含む(図5b)。トラップ層30と、有用層10(またはドナー基板11)との間の界面は、定められた粗さの機能性界面31を形成する。トラップ層30は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファスまたは多結晶ゲルマニウムの中から選ばれた材料から形成されることが有利である。トラップ層30は、知られている化学的析出技法(PECVD、LPCVDなど)によって準備されることができる。
【0051】
トラップ層30は通常、数十nmから数ミクロン、さらには数十ミクロンの間の厚さを有する。
【0052】
トラップ層30を形成するステップは、例えば化学機械研磨、平滑化プラズマエッチング、または湿式化学エッチングからなる、トラップ層30の自由表面を平滑化するステップを含むことが有利である。トラップ層30の自由表面は、後続の組み立てステップのために、低い粗さ(原子間力顕微鏡法によって測定され、通常0.5nm RMS未満)、および良好な平坦性を有するようになることが好ましい。
【0053】
製造方法はまた、有用層10より低い熱膨張係数を有する支持基板20(図5c)を用意するステップを含む。支持基板20はシリコンで作られることが有利であり、この材料は広く利用可能であり、半導体産業に適合する。あるいはこれはまた、方法の後続のステップ、および表面弾性波デバイスの準備に適合するゲルマニウムまたは他の材料で作られ得る。
【0054】
製造方法は次いで、支持基板20上にドナー基板11(または有用層10)を配置するための組み立てステップを含む(図5d)。組み立てステップは、トラップ層30と支持基板20との間で行われ、従ってトラップ層30および支持基板20の表面特性は適切に制御されなければならない。組み立てステップは、分子付着による直接接合を含むことが有利であり、この接合技法は、追加の材料の層の使用が不要であるという点で好ましい。
【0055】
あるいは組み立てステップは、接着接合、金属接合、陽極接合、または最新技術から知られており、意図された利用に適合する任意の他のタイプの接合を含むことができる。
【0056】
組み立てステップは接合の前に、接合前の表面からの良好なレベルの清浄度(粒子、炭化水素、および金属汚染物質などの除去)を確実にするクリーニングシーケンスを含むことが有利である。
【0057】
方法の変形によれば組み立てステップの前に、トラップ層30と同じタイプの層が、支持基板20上に配置されることができ、トラップ層30に接合されるように準備されるようになる。実際、トラップ層30および支持基板20のタイプに応じて、特に分子付着による直接接合の場合に、同じタイプの2つ材料の間に接合界面を形成することが有利となり得る。
【0058】
接合界面を強固にするために、接合されたハイブリッド構造101は熱処理を受けることができる。ドナー基板11の(または有用層10の)、および支持基板20の材料は、非常に異なる熱膨張係数を示し、従って適用される熱処理は、接合された構造101の損傷または破損の温度より低い温度のままでなければならないことが留意されるべきである。温度範囲は通常、数十度から500℃の間である。
【0059】
有用層10がドナー基板11内に含まれる図5aから5eに示される場合において、製造プロセスは、有用層10、および表面弾性波デバイスがその上に準備されることになる第1の面1を形成するように、ドナー基板11を薄くするステップをさらに含む(図5e)。
【0060】
この薄くするステップは、従来技術の様々な知られている技法、特に以下を用いて実行されることができる:
・ Smart-Cut(登録商標)プロセスであり、これは非常に薄い有用層(通常1ミクロン以下の厚さのもの)の形成に特に適する:これは弱体化された埋め込まれた平面を形成するように組み立てステップの前に、その第2の面2のレベルにおける、ドナー基板11内へのガス種の注入に基づく;組み立ての後、有用層10のみを支持基板20と一体として残すように、ドナー基板11は弱体化された平面に沿って分離することになる。
・ 数ミクロンから数十、さらには数百ミクロンの範囲の厚さの有用層の形成に適した、機械的研削またはラッピング、化学機械研磨および化学エッチングを含む、化学機械的な薄くするプロセス。
【0061】
この製造プロセスの終わりにおいて、本発明によるハイブリッド構造100が得られる(図5e)。
【0062】
本発明は、最初に第1の面1および第2の面2を備えた圧電材料の有用層10を用意するステップを含む、表面弾性波デバイスのためのハイブリッド構造100の他の製造方法に関する。
【0063】
上述のように、および限定することなく、有用層10はタンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶、亜鉛酸化物(ZnO)、または窒化アルミニウム(AlN)の中から選択された圧電材料を備える。
【0064】
有利な実施形態によれば有用層10は、第2の側2および第1の面1’を有するドナー基板11内に含まれる(図6a)。
【0065】
製造方法はまた、有用層10より低い熱膨張係数を有する支持基板20を用意するステップを含む。支持基板20はシリコンで作られることが有利であり、この材料は広く利用可能であり、半導体産業に適合する。あるいは上述のようにこれは、後続の製造ステップに適合するゲルマニウムまたは他の材料で形成されるまたはそれを備えることができる。
【0066】
製造方法はまた、支持基板20上にトラップ層30を形成するステップを含む(図6b)。トラップ層30は所定の粗さを有する。
【0067】
トラップ層30は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、アモルファスまたは多結晶ゲルマニウムの中から選択された材料から形成されることが有利である。これは、化学的析出(CVD)の知られている技法によって準備されることができる。
【0068】
トラップ層30はまた以下を含む技法または技法の組み合わせによって形成され得る:
・ 支持基板20の表面層内へのイオン注入;シリコン基板に対して、支持基板20からの電荷キャリアを捕捉することができる擾乱された表面層を生成するために、例えばアルゴンイオン、シリコン、窒素などの注入が、実行され得る;
・ または支持基板20の表面層のエッチングおよび構造化による;例えば機械的エッチング、湿式または乾式化学的により、表面の、支持基板20からの電荷キャリアに対する捕捉に優位な場所の構造化を誘起する。
【0069】
トラップ層30は、数十nmから数ミクロンまたは数十ミクロンの範囲の厚さを有することができる。
【0070】
トラップ層30の自由表面の粗さは、支持基板20上のそれの形成の後に、約50から500ミクロンの測定プロファイル、または約50×50から500×500μm2の測定表面に対する、例えば機械的または光学的形状測定によって測定される最大の山から谷の振幅によって定義される。定められた粗さは0.3ミクロンより大きい、さらには0.5ミクロン以上、さらには1ミクロン以上であることが有利である。これは0.3と5ミクロンの間であることが好ましい。
【0071】
また機能性界面31の粗さのスペクトル密度は、除去されることが望ましい干渉波の波長のスペクトル帯域のすべてまたは一部をカバーすることが有利である。定められた粗さは、少なくとも干渉波長の1/4に等しい空間的波長および振幅を有することが好ましい。
【0072】
定められた粗さは、トラップ層30の自由表面上で、層の堆積の後に直接、または機械的ラッピング技法、化学機械研磨、湿式または乾式化学エッチング、またはこれらの技法の組み合わせによって得られることができる。目標はトラップ層30の自由表面上に、定められた振幅の一様な粗さを作り出すことである。例としてこのような粗さは、半導体産業において用いられるシリコンウェハの粗面化された裏面の処理のためになされる「酸エッチング」タイプの処理、または「アルカリエッチング」によって得られ得る。他の例によればトラップ層30の自由表面の定められた粗さは、多結晶シリコン内へのトラップ層30の堆積の前に、支持基板20の表面の機械的研削(通常、グレーン2000のダイヤモンド砥石を用いて)、および湿式化学エッチング(通常TMAHによる)によって得られ得る;支持基板20上の堆積の後、トラップ層30の自由表面は、このようにして山から谷で約0.5ミクロンの定められた粗さを有する(6b’)。
【0073】
製造方法は次いで、トラップ層30上に第1の中間層40を形成するステップを含む。トラップ層30と、第1の中間層40との間の界面は、定められた粗さの機能性界面31を形成する。第1の中間層40は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンの中から選択された材料、または有用層10と同じタイプの材料を備えることができる。これは化学的析出によって準備され得る。ドナー基板11(または有用層10)上の後続の組み立てステップのために、平滑化ステップ(例えば化学機械研磨)が第1の中間層40の自由表面上で実行されることが有利である。このオプションは、後続の組み立てステップが分子付着による接合を含むときに、特に適する。
【0074】
第1の中間層40はまた高分子材料を備えることができ、これは例えば遠心分離によって堆積され得る。このタイプの材料の利点は、平滑化が堆積時に直接実行されることができることである。このオプションは、後続の結合ステップが接着接合を含むときに、特に適する。
【0075】
最後に製造方法は、支持基板20上にドナー基板11(または有用層10)を配置するための組み立てステップを含む;具体的には組み立ては、第1の中間層40と、ドナー基板11の第2の面2との間で実行される(図6d)。
【0076】
組み立てステップは、分子付着による直接接合を含むことが有利であり、この接合技法は、追加の材料層の使用が不要であるという点で有利である。あるいは結合ステップは、接着接合、金属接合、陽極接合、または従来技術において知られており、意図された用途に適合する任意の他の種類の接合を含むことができる。組み立てステップは接合の前に、接合前の表面に対して、良好なレベルの清浄度(粒子、炭化水素、および金属汚染物質の除去)を確実にするクリーニングシーケンスを含むことが有利である。
【0077】
接合界面を強固にするために、接合されたハイブリッド構造101は、ヘテロ構造に対する損傷を防止するために、低温または中温で熱処理を受けることができ、通常数十度から500℃の間である。
【0078】
有用層10がドナー基板11内に含まれる図6aから6eに示される場合において、製造方法は、有用層10、および表面弾性波デバイスがその上に作り上げられることになる第1の面1を形成するように、ドナー基板11を薄くするステップをさらに含む(図6e)。
【0079】
この薄くするステップは前に論じられたように、従来技術において知られている様々な技法からなされることができる。
【0080】
この製造方法の終わりにおいて、本発明によるハイブリッド構造100が得られる(図6e)。
【0081】
図7aから7eに示される、上記の製造方法の変形によれば、有用層10(または有用層10がドナー基板内に含まれる場合はドナー基板11)の第2の面2は、第2の定められた粗さを有する(図7a)。第2の定められた粗さの山から谷の振幅は、0.1ミクロンより大きいことが有利である。
【0082】
製造方法のこの変形は、図7bに示されるように有用層10またはドナー基板11の第2の面2上に、第2の中間層50を形成するステップを含む。第2の中間層50は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンから選択された材料または材料の積み重ねを備えることができる。第2の中間層50はまた、熱膨張の差に関連する問題を制限するために、有用層10を形成するものと同じタイプの材料を備えることができる。
【0083】
有用層10と、第2の中間層50との間の界面は、第2の機能性界面32を形成する。第2の中間層50を形成するステップは、組み立てステップのために、その自由表面を平滑化するステップを含むことが有利である。
【0084】
組み立てステップの前に、第1の所定の粗さを有するトラップ層30が、支持基板20上に形成される。次いで第1の中間層40が、トラップ層30上に形成される(図7c)。これら2つの層の間の界面は、定められた粗さの機能性界面31を形成する。
【0085】
任意選択で第1の中間層40および第2の中間層50は、同じ材料から構成され得る。
【0086】
製造方法のこの変形は、第1の中間層40および第2の中間層50の組み立てをさらに含み、直接接合によることが有利であるが、これは限定するものと解釈されるべきではない。
【0087】
任意選択で、接合された構造101の接合界面を強固にするために、熱処理が実行され得る。
【0088】
有用層10がドナー基板11に含まれるとき、すでに前に述べられたように、薄くするステップが実行され、ハイブリッド構造100を得ることになる(図7e)。
【0089】
もちろん本発明は述べられた実施形態に限定されず、「特許請求の範囲」によって定義される本発明の範囲内での代替的実施形態に適用されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】