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特許7287795ブロックポリイソシアネート組成物、水系塗料組成物及び塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、水系塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20230530BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20230530BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230530BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230530BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230530BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C08G18/73
C08G18/42
C08G18/48
C09D201/00
C08G18/66
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019041569
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143231
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 希絵
(72)【発明者】
【氏名】福地 崇史
(72)【発明者】
【氏名】武井 麗
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112510(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061524(WO,A1)
【文献】特開2016-113523(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061954(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/194672(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056408(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ジイソシアネート及び該脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、
(B)活性水素基含有親水性化合物と、
(C)二官能ポリエステルポリオール及び二官能ポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、
(D)ピラゾール系化合物と、
から得られるブロックポリイソシアネート組成物であって、ブロック剤として前記(D)ピラゾール系化合物のみを含み、かつ、
以下の条件(1)~(3)を満たす、ブロックポリイソシアネート組成物。
(1)前記(B)活性水素基含有親水性化合物に由来する構造単位に対する(A)イソシアネート成分に由来する構造単位の質量比((A)/(B))が50/50以上90/10以下である;
(2)前記(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下である;
(3)前記(A)イソシアネート成分の遊離イソシアネート基が実質的に存在しない
【請求項2】
前記(C)ポリオールの数平均分子量が300以上3000以下である、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、1種類以上の主剤と、を含む、水系塗料組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の水系塗料組成物を硬化させてなる、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、水系塗料組成物及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン塗料組成物では、得られた塗膜において、耐候性や、耐薬品性等に優れた性能を示すために、塗料、インキ、接着剤、粘着剤等の幅広い分野で使われている。二液型ポリウレタン塗料組成物の硬化剤の中でも特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)から誘導されたポリイソシアネート組成物は、工業的入手の容易さや、耐候性に優れるといった理由から多用されている。
【0003】
近年、環境保護の観点から、溶剤系塗料として利用されている架橋型の二液型ポリウレタン塗料組成物は水系化が望まれている。しかし、二液型ポリウレタン塗料組成物において、硬化剤として用いられるポリイソシアネート組成物は、水への分散が困難である。そのため、親水性基を有するポリイソシアネート組成物の開発が進められている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0004】
また、ハンドリングの容易さの観点から、主剤と硬化剤とが混和した状態においても、塗料物性が変化しない1液型塗料が望まれている。これらは硬化剤のイソシアネート基をブロック剤により保護し、現場塗装後に熱をかけることで、イソシアネート基の再生と主剤であるポリオールの水酸基との反応により熱硬化型塗膜となる。このようなブロックイソシアネート組成物には溶剤型が主に使用されているが、環境保護の観点より水系化が切望されている。
【0005】
水分散可能なブロックポリイソシアネート組成物については、ポリイソシアネートにノニオン性及びカチオン性からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン性の親水性基を導入する手法が知られている(例えば、特許文献3等参照)。特許文献3には、カチオン性基を導入したブロックポリイソシアネートが、塗料配合時に低温硬化可能となることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第01/88006号
【文献】国際公開第2016/104485号
【文献】特許第5344875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に記載のブロックポリイソシアネートは、水への分散性や硬化性が不十分であり、改良の余地がある。また、塗膜としたときの耐水性、水系主剤との相溶性の検証はなされていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水に容易に分散可能であり、主剤との相溶性に優れ、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が良好なブロックポリイソシアネート組成物を提供する。前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いた水系塗料組成物及び塗膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るブロックポリイソシアネート組成物は、(A)脂肪族ジイソシアネート及び該脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、(B)活性水素基含有親水性化合物と、(C)二官能ポリエステルポリオール及び二官能ポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、(D)ピラゾール系化合物と、から得られるブロックポリイソシアネート組成物であって、 以下の条件(1)~(3)を満たす。
(1)前記(B)活性水素基含有親水性化合物に由来する構造単位に対する(A)イソシアネート成分に由来する構造単位の質量比((A)/(B))が50/50以上90/10以下である;
(2)前記(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下である;
(3)前記(A)イソシアネート成分の遊離イソシアネート基が実質的に存在しない。
前記(C)ポリオールの数平均分子量が300以上3000以下であってもよい。
【0010】
本発明の第2態様に係る水系塗料組成物は、上記第1態様に係るブロックポリイソシアネート組成物と、1種類以上の主剤と、を含む。
【0011】
本発明の第3態様に係る塗膜は、上記第2態様に係る水系塗料組成物を硬化させてなる。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のブロックポリイソシアネート組成物によれば、水に容易に分散可能であり、主剤との相溶性に優れ、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が良好なブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0014】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上の水酸基(-OH)を有する化合物を意味する。
【0015】
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(モノマー)を複数結合した反応物を意味する。
【0016】
≪ブロックポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、以下の成分(A)~(D)から得られる。
(A)脂肪族ジイソシアネート及び該脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分(以下、単に「(A)イソシアネート成分」と略記する場合がある);
(B)活性水素基含有親水性化合物;
(C)二官能ポリエステルポリオール及び二官能ポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール(以下、単に「(C)ポリオール」と略記する場合がある);
(D)ピラゾール系化合物
【0017】
すなわち、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記成分(A)~(D)の反応物を含み、具体的には、(A)イソシアネート成分に(B)活性水素基含有親水性化合物に由来する構造単位、及び、(C)ポリオールに由来する構造単位が導入されており、さらに、(A)イソシアネート成分のイソシアネート基の少なくとも一部が(D)ピラゾール系化合物により封止されている。
【0018】
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、以下の条件(1)~(3)を満たす。
(1)前記(B)活性水素基含有親水性化合物に由来する構造単位に対する(A)イソシアネート成分に由来する構造単位の質量比((A)/(B))が50/50以上90/10以下である;
(2)前記(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下である;
(3)前記(A)イソシアネート成分の遊離イソシアネート基が実質的に存在しない。
【0019】
条件(1)について、(A)/(B)の下限値は50/50であり、55/45が好ましく、60/40がより好ましい。一方で、(A)/(B)の上限値は、90/10以下であり、85/15が好ましく、80/20がより好ましい。
すなわち、(A)/(B)は、50/50以上90/10以下であり、55/45以上85/15以下が好ましく、60/40以上80/20以下がより好ましい。
(A)/(B)が上記範囲内であることで、水に容易に分散可能であり、主剤との相溶性に優れ、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が良好なブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【0020】
(A)/(B)は、H-NMR測定により算出できる。
具体的な測定方法としては、まず、ポリイソシアネート組成物のCDCl溶液を調製する。次いで、得られた溶液を以下の測定条件でH-NMR測定を行い、(A)イソシアネート成分由来のメチレン基及び(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基を確認する。各組成物の特徴的ピーク(化学シフト値)は、(A)イソシアネート成分由来のメチレン基が1.4ppm付近であり、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基が3.5ppm付近、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチル基が3.4ppm付近である。(A)イソシアネート成分由来のメチレン基のH-NMR積分値をx、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基のH-NMR積分値をy、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチル基のH-NMR積分値をzとしたときに、(A)/(B)は以下の式で算出することができる。
【0021】
(A)/(B)=(x×168/4)/(y×44/4+z×76/3)
【0022】
条件(2)について、(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上20質量%以下であり、3質量%以上18質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量が上記範囲内であることで、塗膜としたときの硬化性が良好になる傾向がある。
(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量は、後述する実施例に記載の方法を用いて、測定することができる。
【0023】
条件(3)について、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に含まれる(A)イソシアネート成分のイソシアネート基は、(B)活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応して結合を形成しているか、(C)ポリオールの水酸基と反応してウレタン結合を形成しているか、或いは、(D)ピラゾール系化合物により封止されており、(A)イソシアネート成分の遊離イソシアネート基は実質的に存在しない。そのため、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、水に対する安定的な分散性を有しながら、水や主剤と混合しても反応せず、加熱等の処理を施すことで、イソシアネート基の反応性が再生し、硬化させることができる。なお、ここでいう「遊離イソシアネート基」とは、(B)活性水素基含有親水性化合物の活性水素基や(C)ポリオールの水酸基と反応しておらず、(D)ピラゾール系化合物等の封止剤によりブロックされていないイソシアネート基を示し、水や主剤の活性水素基との反応性を保持した状態のイソシアネート基を意味する。また、「遊離イソシアネート基が実質的に存在しない」とは、遊離イソシアネート基が全く存在しない状態、又は、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が奏する効果を妨げない程度の極微量の遊離イソシアネート基しか存在しない状態を意味し、後述する実施例に示すように、ブロックポリイソシアネート組成物を試料とした赤外スペクトルによる測定において、イソシアネート基の特性吸収が存在しない状態を意味する。
【0024】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、水に容易に分散可能であり、主剤との相溶性に優れ、硬化性及び耐水性が良好な塗膜が得られる。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0025】
<(A)イソシアネート成分>
(A)イソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネート及び該脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を含む。
【0026】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、HDI、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(A)イソシアネート成分として、脂肪族ジイソシアネートに加えて、脂環式ジイソシアネートを用いてもよい。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。これら脂環式ジイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、(A)イソシアネート成分として、上記脂肪族ジイソシアネートに加えて、脂肪族トリイソシアネートを用いてもよい。脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナト-ヘキサノエート等が挙げられる。これら脂肪族トリイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート、3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート、3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネート、3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート、2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート、1つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるウレタン基を有するポリイソシアネート、2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート、1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート、1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、ここでいう「ポリイソシアネート」には、上記脂肪族ジイソシアネートのみから誘導されたポリイソシアネートに加えて、上記脂肪族ジイソシアネートと、ジイソシアネート以外の化合物(例えば、モノアルコール等のアルコール、水、アミン)とを反応させて得られるポリイソシアネートも包含される。
【0028】
<(B)活性水素基含有親水性化合物>
(B)活性水素基含有親水性化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、ノニオン系親水性化合物、アニオン系親水性化合物、カチオン系親水性化合物等が挙げられる。中でも、製造のしやすさから、ノニオン系親水性化合物又はアニオン系親水性化合物が好ましく、ノニオン系親水性化合物がより好ましい。これらの活性水素基含有親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[ノニオン系親水性化合物]
ノニオン系親水性化合物としては、例えば、ポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテル等が挙げられる。中でも、ブロックポリイソシアネート組成物の粘度を低くする観点から、ポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテルとしては、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
前記一般式(I)中、R11は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12は炭素数1以上4以下のアルキル基である。
また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、単一成分ではなく、アルキレンオキシドの重合度を示すn11(以下、「重合度n11」又は単に「n11」と称する場合がある)の数が異なる物質の集合体である。そのため、一般式(I)中、アルキレンオキシドの重合度n11はその平均数(平均値)で示される。n11の平均数は5.0以上20以下である。
【0032】
・R11
一般式(I)中、R11は、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、親水性を付与できる観点から、炭素数2のアルキレン基、すなわち、エチレン基が好ましい。
【0033】
・R12
一般式(I)中、R12は、炭素数1以上4以下のアルキル基であり、親水性を付与できる観点から、炭素数1のアルキル基、すなわち、メチル基が好ましい。
【0034】
・n11
n11の平均数の下限値は、水分散性と水分散安定性と塗膜外観との観点から、5.0であり、5.2が好ましく、5.4がより好ましく、6.0がさらに好ましい。一方、上限値は、塗膜硬度の観点から、20であり、18が好ましく、16がより好ましい。
すなわち、n11の平均数は、5.0以上20以下であり、5.2以上18以下が好ましく、5.4以上16以下がより好ましく、6.0以上16以下がさらに好ましい。
n11の平均数が上記下限値以上であると、乳化力がより増すため分散性がより向上し、より容易に分散することができる。そのため、主剤への分散性がより向上し、塗膜の外観がより優れる傾向にある。一方、n11の平均数が上記上限値以下であると、ゲル化等の過度の粘度上昇をより防ぐことができ、より容易に分散することができる傾向にある。更に、塗膜の硬度がより優れる傾向にある。
【0035】
ポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテルの数平均分子量の下限値は、分散性の観点から、200が好ましく、300がより好ましく、400がさらに好ましい。一方、上限値は、塗膜の硬度の観点から、2000が好ましく、1200がより好ましく、1000がさらに好ましい。
すなわち、ポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテルの数平均分子量は、200以上2000以下が好ましく、300以上1200以下がより好ましく、400以上1000以下がさらに好ましい。
【0036】
ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテルの市販品としては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名「ユニオックスM400」、「ユニオックスM550」、「ユニオックスM1000」、「ユニオックスM2000」、日本乳化剤社製の商品名「MPG-081」、「MPG-130」等が挙げられる。
【0037】
(A)イソシアネート成分へのポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテルの導入量は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。
具体的には、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を試料として、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未導入のポリイソシアネート、単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールが1つ導入されたポリイソシアネート、2つ導入されたポリイソシアネート、及び、3つ以上導入されたポリイソシアネートのピーク面積比から求めることができる。LCによる測定条件としては、例えば、以下のもの等が挙げられる。
【0038】
(測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm C18 内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とした。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0039】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、(A)イソシアネート成分にポリ(オキシアルキレン)モノアルキルエーテルに由来する親水性基(ポリアルキレンオキシド単位)が導入されていることで、良好な水分散性を有する。
なお、本明細書において、「水分散性」とは、ブロックポリイソシアネート組成物がO/W型になるように、水に分散され得る性質を意味する。水分散性は、後述する実施例に示すように、例えば、水にブロックポリイソシアネート組成物を添加し、棒やハンドミキサー等を用いて機械的に攪拌することによって、水に分散するか否かを確認することで評価することができる。なお、ここでいう「O/W型」とは、水を連続相とする水中油滴のエマルジョンを意味する。
【0040】
[アニオン系親水性化合物]
アニオン系親水性化合物としては、例えば、カルボン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物等が挙げられる。中でも、アニオン系親水性化合物としては、製造のしやすさ、水系塗料における配合性から、カルボン酸基含有化合物が好ましい。カルボン酸基含有化合物としては、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸、及びそれらの誘導体等が挙げられる。中でも、モノヒドロキシカルボン酸又はジヒドロキシカルボン酸が好ましく、モノヒドロキシカルボン酸がより好ましい。
【0041】
(B)活性水素基含有親水性化合物として、カルボン酸基含有化合物又はスルホン酸基含有化合物を使用する場合には、ブロックポリイソシアネート組成物の製造後、中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、例えば、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、3級アミン等が挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0042】
[カチオン系親水性化合物]
カチオン系親水性化合物としては、例えば、水酸基含有アミノ化合物等が挙げられる。
(B)活性水素基含有親水性化合物として、水酸基含有アミノ化合物を使用する場合には、ブロックポリイソシアネート組成物の製造後、中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2-エチルヘキサン酸等の有機酸が挙げられる。
【0043】
<(C)ポリオール>
(C)ポリオールは、二官能ポリエーテルポリオール及び二官能ポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールである。
【0044】
二官能ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、触媒を用いて、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を、二価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム付加及びブロック付加からなる群より選ばれる少なくとも1種の付加重合させることで得られる二官能ポリエーテルポリオール類;ジアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られる二官能ポリエーテルポリオール類;これら二官能ポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆる二官能ポリマーポリオール類等が挙げられる。
前記触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、強塩基性触媒、複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。複合金属シアン化合物錯体としては、例えば、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0045】
二官能ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸の単独又は混合物と、二官能アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる二官能ポリエステルポリオール;ジオールを用いてε-カプロラクトンを開環重合して得られるような二官能ポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
二官能アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0046】
(C)ポリオールの数平均分子量は、300以上3000以下が好ましく、350以上2500以下がより好ましく、400以上2000以下がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることにより、柔軟性及び作業性がより優れる傾向にある。数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
<(D)ピラゾール系化合物>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、(A)イソシアネート成分のイソシアネート基の少なくとも一部は、(D)ピラゾール系化合物によって封止されている。ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。これらピラゾール系化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、(D)ピラゾール系化合物としては、低温又は短時間の乾燥において硬化性がより優れる傾向にあることから、3,5-ジメチルピラゾールが好ましい。
【0048】
<有機溶剤>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、有機溶剤を更に含有することができる。
有機溶剤を含有することで、ブロックポリイソシアネート組成物の粘度がより低くなるため、水分散性がより向上する。また、ブロックポリイソシアネート組成物を水分散した際のイソシアネート基の残存率がより高くなり、水系塗料組成物としたときのポットライフがより向上する傾向がある。
【0049】
有機溶剤としては、イソシアネート基と反応する官能基を有しないものであって、ブロックポリイソシアネート組成物と相溶するものであればよい。
このような有機溶剤としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物等が挙げられる。エステル化合物としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、メトキシプロピルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、グルタル酸ジイソプロピル等が挙げられる。エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ジエトキシエタン等が挙げられる。ケトン化合物としては、例えば、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン,p-シメン等が挙げられる。ポリエチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0050】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物中の有機溶剤の含有量の下限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。一方で、有機溶剤の含有量の上限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。
すなわち、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物中の有機溶剤の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、3質量%以上60質量%以下がより好ましく、5質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
有機溶剤の含有量が上記範囲であることで、ブロックポリイソシアネート組成物の粘度がより低くなり、水系塗料組成物としたときのポットライフがより向上し、且つ、有機溶剤の含有量が多くなりすぎることをより効果的に抑制することができる。
【0051】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、(A)イソシアネート成分と、(B)活性水素基含有親水性化合物と、(C)ポリオールと、(D)ピラゾール系化合物とを反応させることで得られる。
(A)イソシアネート成分のイソシアネート基と(B)活性水素基含有親水性反応物と(C)ポリオールとの反応、及び、(A)イソシアネート成分のイソシアネート基と(D)ピラゾール系化合物との反応を同時に行うこともでき、予めいずれかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、(A)イソシアネート成分と(B)活性水素基含有親水性反応物と(C)ポリオールとの反応を先に実施し、その終了後、(D)ピラゾール系化合物との反応を行うことが好ましい。
また、(A)イソシアネート成分として脂肪族ジイソシアネートを反応に用いてもよく、予め脂肪族ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを反応に用いてもよい。
【0052】
反応工程においては、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。有機金属塩に含まれる金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
反応工程の反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。一方、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0053】
(B)活性水素基含有親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全に(A)イソシアネート成分と反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性をより向上させ、水系塗料組成物として用いたときの硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
【0054】
<ブロックポリイソシアネート組成物の物性>
[有効イソシアネート基(NCO)含有率]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、有効NCO含有率は、特に制限されないが、ブロックポリイソシアネート組成物の保存安定性がより良好となることから、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上9質量%以下がさらに好ましい。
なお、有効NCO含有率は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0055】
<使用用途>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、塗料組成物(特に、水系二液型ポリウレタン塗料組成物)の硬化剤として用いることができる。
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、例えば、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤等に用いられる。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を含有する粘着剤組成物及び接着剤組成物は、特に限定されないが、例えば、自動車、建材、家電、木工品、太陽電池用積層体等に用いられる。中でも、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の家電の液晶ディスプレイ用等の光学部材は、各種機能を発現するため、各種被着体のフィルム及びプレートを積層させる必要がある。よって、各種被着体のフィルム及びプレート間には十分な粘着性又は接着性が要求されることから、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を含有する粘着剤組成物及び接着剤組成物は、家電の液晶ディスプレイ用等の光学部材の接着に好適に用いられる。
【0056】
≪水系塗料組成物≫
本実施形態の水系塗料組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物と、1種以上の主剤と、を含む。本実施形態の水系塗料組成物は、上記構成を有することで、硬化剤であるブロックポリイソシアネート組成物と、主剤との相溶性に優れ、硬化性及び耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0057】
<主剤>
水系塗料組成物に用いられる主剤としては、水性ポリオールが好ましい。水性ポリオールとしては、水酸基を含有する、ラテックス、エマルジョン、ディスパージョン、水溶性樹脂と表現されるもの全てを含む。水性ポリオールとして具体的には、例えば、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ウレタンディスパージョン、アクリルエマルジョン、フッ素共重合体エマルジョン、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ゴム系ラテックス、ポリブタジエン共重合体、ウレタンアクリルエマルジョン、及び、これらコポリマー又は混合物等が挙げられる。
中でも、水性ポリオールとしては、操作性及び耐水性が優れることから、ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンと表現されるものが好ましい。また、中でも、塗膜としたときの耐候性、光沢及び強靭性に特に優れることから、アクリルエマルジョン、フッ素共重合体エマルジョン、ウレタンディスパージョン又はこれらのポリマーが特に好ましい。
【0058】
ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンと表現される水性ポリオールを用いる場合、それらの粒子径の下限値は、5nmが好ましく、10nmがより好ましく、40nmがさらに好ましい。一方で、粒子径の上限値は、1.0μmが好ましく、500nmがより好ましく、300nmがさらに好ましい。
すなわち、粒子径は、5nm以上1.0μm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましく、40nm以上300nm以下がさらに好ましい。
粒子径が上記範囲であることで、塗膜としたときの光沢がより高く、耐水性もより優れる。また、ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンとしての安定性もより十分なものとなる。
【0059】
水性ポリオールの水酸基価の下限値は、1mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/gがより好ましく、10mgKOH/gがさらに好ましい。一方で、水酸基価の上限値は、300mgKOH/gが好ましく、200mgKOH/gがより好ましく、150mgKOH/gがさらに好ましい。
すなわち、水性ポリオールの水酸基価は、1mgKOH/g以上300mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がさらに好ましい。
水性ポリオールの水酸基価が上記範囲であることで、架橋点がより十分なものとなり、より柔軟で強靱な塗膜を得ることができる。
【0060】
本実施形態の塗料組成物において、水性ポリオールの水酸基に対する上記ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)の下限値は、0.3が好ましく、0.5がより好ましく、0.6がさらに好ましい。一方で、モル比の上限値は、5.0が好ましく、3.0がより好ましく、2.5がさらに好ましい。
すなわち、水性ポリオールの水酸基に対する上記ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)は、0.3以上5.0以下が好ましく、0.5以上3.0以下がより好ましく、0.6以上2.5以下がさらに好ましい。
モル比(イソシアネート基/水酸基)が上記範囲であることで、架橋点がより十分なものとなり、より柔軟で強靱な塗膜を得ることができる。
【0061】
<その他添加剤>
本実施形態の水系塗料組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物及び上記主剤に加えて、その用途及び使用方法等に応じて、公知慣用の種々の塗料用添加剤を含有することができる。塗料用添加剤としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。これら添加剤は、本実施形態の水系塗料組成物が奏する効果を妨げない範囲内で、適宜、選択して使用することができる。
【0062】
<水系塗料組成物の製造方法>
本実施形態の水系塗料組成物は、例えば、まず主剤の水分散体、又は、その水溶液に、必要に応じて上記塗料用添加剤を加えたものを調製する。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加する。次いで、攪拌機を用いて強制攪拌することによって、水系塗料組成物を得ることができる。
【0063】
<使用用途>
本実施形態の水系塗料組成物は、以下に限定されないが、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装等の塗装方法により、各種素材を成形してなる被塗物に塗装するための、プライマー、中塗り又は上塗り用塗料として好適に用いられる。また、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車、プラスチックの塗装等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。また、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
【0064】
水系塗料組成物の塗装対象となる被塗物の素材としては、ガラス;アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレス等の各種金属;木材、紙、モルタル、石材等の多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等が施された部材;シリコーン系硬化物、変性シリコーン系硬化物、ウレタン系硬化物等のシーリング材硬化物;塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;天然皮革、人工皮革等の皮革類;植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維類;不織布、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層;印刷インキ、UVインキ等のインキ類からなる層等が挙げられる。
【0065】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、上記水系塗料組成物を硬化させてなる。本実施形態の塗膜は、硬化性及び耐水性が良好である。
【0066】
本実施形態の塗膜は、上記水系塗料組成物を被着体に塗装し、乾燥させることで得られる。塗装方法としては、上記水系塗料組成物の使用用途に記載の方法と同様の方法が挙げられる。また、被着体としては、上記水系塗料組成物の使用用途に記載の被塗物と同様のものが挙げられる。
【実施例
【0067】
以下に、具体的な実施例及び比較例を示して本実施形態をより詳しく説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における、各種の物性及び評価は、以下のとおり測定及び評価した。
【0068】
<物性の測定方法>
[物性1]ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(質量%)
三角フラスコにポリイソシアネート1~3gを精秤した(Wg)。次いで、三角フラスコにトルエン20mLを添加し、ポリイソシアネートを溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mLを添加し、混合後、15分間、室温で放置した。次いで、三角フラスコにイソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。この滴定値をV2mLとした。
次いで、同様の操作をポリイソシアネートなしで行い、この滴定値をV1mLとした。次いで、以下に示す式により、ポリイソシアネートのNCO含有率を算出した。
【0069】
NCO含有率(質量%)= (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0070】
[物性2]不揮発分
ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分は、次のように求めた。まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤後、各ブロックポリイソシアネート成分をアルミ皿上に約1g乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート成分を均一厚さに調整後、105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート成分を精秤した(W2)。次いで、以下に示す式により、ブロックポリイソシアネート成分の不揮発分を算出した。
【0071】
不揮発分(質量%) = W2/W1×100
【0072】
[物性3]有効イソシアネート基(NCO)含有率
ブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は、次のように求めた。ここでいう有効NCO含有率(質量%)とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート成分中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化するものであり、イソシアネート基の質量%として表される。以下に示す式により、有効NCO含有率を算出した。なお、以下に示す式において、「S」はブロックポリイソシアネート成分の不揮発分(質量%)を表す。「W1」は反応に使用したポリイソシアネートの質量(g)を表す。「A」はポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(質量%)を表す。「W2」はブロック化反応後のブロックポリイソシアネートの質量(g)を表す。
【0073】
有効NCO含有率(質量%)= {S×(W1×A)}/W2
【0074】
[物性4](A)/(B)
(B)活性水素基含有親水性化合物に由来する構造単位に対する(A)イソシアネート成分に由来する構造単位の質量比((A)/(B))は、H-NMR測定により算出した。
具体的な測定方法としては、まず、ポリイソシアネート組成物のCDCl溶液を調製した。次いで、得られた溶液を以下の測定条件でH-NMR測定を行い、(A)イソシアネート成分由来のメチレン基及び(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基を確認した。各組成物の特徴的ピーク(化学シフト値)は、(A)イソシアネート成分由来のメチレン基が1.4ppm付近であり、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基が3.5ppm付近、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチル基が3.4ppm付近であった。(A)イソシアネート成分由来のメチレン基のH-NMR積分値をx、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチレン基のH-NMR積分値をy、(B)活性水素基含有親水性化合物由来のメチル基のH-NMR積分値をzとしたときに、(A)/(B)は以下の式で算出した。
【0075】
(A)/(B)=(x×168/4)/(y×44/4+z×76/3)
【0076】
[物性5](C)ポリオールに由来する構造単位の含有量
(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量は、(A)イソシアネート成分(B)活性水素基含有親水性化合物、(C)ポリオール、及び(D)ピラゾール系化合物の配合量から、以下の式で算出した。なお、以下の式において、(A)~(D)はそれぞれの成分の配合量(g)を表す。
【0077】
(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量(質量%)
=(C)/((A)+(B)+(C)+(D))×100
【0078】
<評価方法>
[水系一液型ポリウレタン塗料組成物の製造]
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物に対し、後述する合成例4で得られたアクリル樹脂水分散体(固形分42%、樹脂分水酸基価66mgKOH/g、酸価16mgKOH/g)を、官能基比率(NCO/OH)が1.0となるように配合した。更に、この混合物に、固形分が40%になるように脱イオン水を加え、ディスパー羽を使用し、1000rpmで5分間撹拌し、水系一液型ポリウレタン塗料組成物を調製した。
【0079】
[評価1]水分散性
ブロックポリイソシアネート組成物と、脱イオン水とを、1:9の質量比でガラス瓶中に量り取り、分散させるため30回振とうさせ水分散液とした。水分散液の外観を以下の評価基準に従い、評価した。
【0080】
(評価基準)
○:良好に分散し、沈殿物無し
×:沈殿物あり
【0081】
[評価2]主剤との相溶性
各水系一液型ポリウレタン塗料組成物をガラス板上に塗装し、乾燥させて塗膜を作製した。次いで、作製した塗膜の表面外観を観察し、主剤との相溶性について以下の評価基準に従い、評価した。
【0082】
(評価基準)
○:外観が透明であり、濁りなし
×:濁りやブツあり
【0083】
[評価3]塗膜の硬化性
各水系一液型ポリウレタン塗料組成物をポリプロピレン板上に塗装し、乾燥させて塗膜を作製した。次いで、作製した塗膜のアセトンに23℃×24時間後浸漬後、未溶解部分の質量を浸漬前の質量で除し、未溶解部分の割合(質量%)を算出した。塗膜の硬化性を以下の評価基準に従い、評価した。
【0084】
(評価基準)
◎:85質量%以上
○:70質量%以上85質量%未満
×:70質量%未満
【0085】
[評価4]塗膜の耐水性
各水系一液型ポリウレタン塗料組成物をガラス板上に塗装し、乾燥させて塗膜を作製した。次いで、作製した塗膜にゴムリングを置き、中央部位に脱イオン水を滴下した。23℃、24時間処理後、ガラス基材/塗膜の間に生ずるブリスターの状態から、塗膜の耐水性を以下の評価基準に従い、評価した。
【0086】
(評価基準)
○:外観に変化なし
×:白濁やブリスター膨れあり
【0087】
<(A)イソシアネート成分の製造>
[合成例1]ポリイソシアネートPa-1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000gを仕込み、2官能ポリプロピレングリコール(三洋化成製、商品名「サンニックス PP-400」、数平均分子量400)(以下、「PP400」と略記する場合がある):85.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持し、ウレタン化反応を進行させた。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が66%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートPa-1を得た。得られたPa-1のNCO含有率は16.7質量%であった。
【0088】
[合成例2]ポリイソシアネートPa-2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が41%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートPa-2を得た。得られたPa-2のNCO含有率は21.8質量%であった。
【0089】
[合成例3]ポリイソシアネートPa-3の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、メチルセルソルブ/トリメチルリン酸=1/1混合溶液:333.3gを仕込み、撹拌下反応器内温度を140℃に保持し、イオン交換水:13.3gを加え、反応を開始した。収率が35%になった時点で降温し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートPa-3を得た。得られたPa-3のNCO含有率は22.0質量%であった。
【0090】
<主剤の製造>
[合成例4]アクリル樹脂水分散体の製造
反応容器内に、脱イオン水:70質量部、40%乳化剤水溶液:2質量部、メチルメタクリレート:0.37質量部、n-ブチルアクリレート:0.23質量部、n-ブチルメタクリレート:0 .24質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:0.15質量部、及び、アクリル酸:0.01質量部を仕込み、窒素気流中で混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部を加えた。次に、70℃に昇温して、メチルメタクリレート:29質量部、n-ブチルアクリレート:18質量部、n-ブチルメタクリレート:19質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:12質量部、アクリル酸:1質量部、40%乳化剤水溶液:2質量部、3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部、及び、脱イオン水:40質量部からなる混合液を反応液に3時間かけて添加した。次に、70℃に保持したまま、メチルメタクリレート:7.63質量部、n-ブチルアクリレート:3.77質量部、n-ブチルメタクリレート:4.76質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:2.85質量部、アクリル酸:0.99質量部、及び、3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部からなる混合液を反応液に2時間かけて添加した。1時間熟成後、脱イオン水:15質量部を反応液に2添加し、30℃に降温した。ジメチルエタノールアミンで中和して、固形分42%のアクリル樹脂水分散体を得た。アクリル樹脂水分散体の樹脂分水酸基価は66mgKOH/g、酸価は16mgKOH/g、数平均分子量は150000、pHは7.1、平均粒子径は0.1μmであり、外観は乳白色であった。なお、平均粒子径は、平均粒子径測定器(サブミクロン粒度分布測定装置、商標「コールターN4Plus」、ベックマンコールター株式会社製)を用いて測定した値である。
【0091】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-1の製造
攪拌機、温度計及び冷却管を取り付けた四ツ口フラスコの内部を窒素置換し、合成例1で得られたポリイソシアネートPa-1:100g、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):41.3g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.01g、及び、モノアルコール(エクセノール908、AGC株式会社製):1.59gを混ぜて、110℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:27.8gを添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:76.4gを添加、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-1を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は4.8質量%であり、水への分散性を有していた。
【0092】
[実施例2]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-2の製造
攪拌機、温度計及び冷却管を取り付けた四ツ口フラスコの内部を窒素置換し、合成例2で得られたポリイソシアネートPa-2:100.0g、MPG-081:53.9g、JP-508T:0.01g、及び、エクセノール908:2.08gを混ぜ、110℃で2時間ウレタン化反応を行った。次いで、反応液に二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:13.5gを添加し、110℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:35.7gを添加し、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:87.9gを添加して、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-2を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は5.3質量%であり、水への分散性を有していた。
【0093】
[実施例3]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-3の製造
攪拌機、温度計及び冷却管を取り付けた四ツ口フラスコの内部を窒素置換し、合成例3で得られたポリイソシアネートPa-3:100.0g、MPG-081:54.4g、JP-508T:0.01g、及び、エクセノール908:2.10gを混ぜ、110℃で2時間ウレタン化反応を行った。次いで、反応液に二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:6.3gを添加し、110℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.5gを添加し、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:86.7gを添加して、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-3を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は6.0質量%であり、水への分散性を有していた。
【0094】
[実施例4]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-4の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:89.8g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートとしてJP-508T:0.02g、二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:6.2g、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール34.2g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:99.5gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-4を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は4.5質量%であり、水への分散性を有していた。
【0095】
[実施例5]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-5の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:71.8g、二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:3.1g、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール38.2g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:92.2gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-5を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は5.4質量%であり、水への分散性を有していた。
【0096】
[実施例6]ブロックポリイソシアネート組成物BPa-6の製造
PP400の代わりに、2官能ポリエステルポリオールとしてOD-X-2722(DIC株式会社製、数平均分子量2000):31.1g、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.2g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:97.0gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-6を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は5.3質量%であり、水への分散性を有していた。
【0097】
[比較例1]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-1の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:71.8g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートとしてJP-508T:0.02g、二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:3.1g、ブロック剤としてメチルエチルケトオキシム34.6g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:90.7gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-1を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は5.5質量%であり、水への分散性を有していた。
【0098】
[比較例2]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-2の製造
PP400の代わりに、2官能ポリエステルポリオールとしてOD-X-2722:31.1g、ブロック剤としてメチルエチルケトオキシム35.5g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:95.4gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-2を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は5.4質量%であり、水への分散性を有していた。
【0099】
[比較例3]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-3の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:35.7g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートとしてJP-508T:0.02g、PP400の代わりにポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製、商品名「デュラノール T5652」、数平均分子量2000)(以下、単に「T5652」と略記する場合がある):103.3g、ブロック剤としてメチルエチルケトオキシム31.5g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:116.8gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-3を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は3.9質量%であり、水への分散性を有していた。
【0100】
[比較例4]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-4の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:125.7g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートとしてJP-508T:0.02g、二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:6.2g、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール29.2g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:112.8gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-4を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は3.4質量%であり、水への分散性を有していた。
【0101】
[比較例5]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-5の製造
メトキシポリエチレングリコールとしてMPG-081:7.2g、二官能ポリエーテルポリオールとしてPP400:6.2g、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール45.7g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:69.1gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-5を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は8.7質量%であり、水への分散性は有していなかった。
【0102】
[比較例6]ブロックポリイソシアネート組成物BPb-6の製造
PP400等の(C)ポリオールを添加せず、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール42.2g、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:84.6gを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BPb-6を製造した。得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は6.5質量%であり、水への分散性は有していなかった。
【0103】
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物を用いて、上記に記載の方法に従い、各種物性の測定及び評価を行った。結果を以下の表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から、ブロックポリイソシアネート組成物BPa-1~BPa-6(実施例1~6)では、水分散性を有し、主剤との相溶性に優れ、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が良好であった。
また、(C)ポリオールに由来する構造単位の含有量が6.6質量%以上であるブロックポリイソシアネート組成物BPa-2及びBPa-6(実施例2及び6)では、塗膜としたときの硬化性が特に優れていた。
【0106】
一方、(D)ピラゾール系化合物以外のブロック剤であるメチルエチルケトオキシムを用いたブロックポリイソシアネート組成物BPb-1~BPb-3(比較例1~3)では、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が不良であり、さらに、(C)ポリオール以外のポリオールであるT5652を用いたブロックポリイソシアネート組成物BPb-3(比較例3)では、主剤との相溶性も不良であった。
また、(A)/(B)が50/50未満であるブロックポリイソシアネート組成物BPb-4(比較例4)では、塗膜としたときの硬化性及び耐水性が不良であり、(A)/(B)が90/10超であるブロックポリイソシアネート組成物BPb-5(比較例5)は、水分散性を有していなかった。
また、(C)ポリオール等のポリオールを一切用いないブロックポリイソシアネート組成物BPb-6(比較例6)は、水分散性を有していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、例えば、塗料組成物、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤等に用いられる。