(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】集塵装置
(51)【国際特許分類】
B01D 46/42 20060101AFI20230530BHJP
F16J 13/22 20060101ALI20230530BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B01D46/42 Z
F16J13/22
F16J15/10 T
(21)【出願番号】P 2019058892
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-02-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月31日ウェブサイトにて公開 https://www.amano.co.jp/kankyo/product/dc_s/pif-sdd.php https://www.amano.co.jp/kankyo/pdf/catalog/pif-sd_d/ct_PiF-SD_D.pdf 平成31年1月1日発行の「新製品情報」第37巻、第1号(日刊工業新聞社)にて公開 平成31年1月15日発行の「メカトロニクス2月号」第44巻、第2号(Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社)にて公開 平成31年3月22日付にてアート金属工業株式会社への販売により公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 宇逸
(72)【発明者】
【氏名】福島 正人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭成
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056901(JP,A)
【文献】特開昭50-089269(JP,A)
【文献】特表2006-524785(JP,A)
【文献】実開昭57-128323(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02165748(EP,A1)
【文献】特開2011-020076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90、
F16J 12/00-13/24、15/00-15/14
F27D 17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の内部に吸い込んだ含塵空気中の粉塵を濾過し、該装置本体の外部に清浄空気を排出する集塵装置であって、
前記装置本体の外面に開口された放散口と、
前記放散口を閉塞する放散口蓋と、
通常時は前記装置本体と前記放散口蓋とを結合し、前記装置本体の内部における粉塵爆発時に破断して該装置本体から前記放散口蓋を切り離す破断部材と、
前記粉塵爆発時に前記放散口蓋が前記装置本体から切り離された場合に該放散口蓋が該装置本体の周囲に飛散しないように設けられる飛散防止手段と、
前記放散口蓋の周囲を囲むように設けられる放散ダクトと、
を備え、
前記飛散防止手段は、前記放散口蓋と前記放散ダクトとを連結する連結手段を備え、前記放散口及び前記放散口蓋は前記装置本体の略垂直な面に設けられ、
前記装置本体と前記放散口蓋には、それぞれ、固定部材が設けられ、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材と間には、
連続した同一平面が形成され、該同一平面に前
記破断部材が固定されると共に、該装置本体に対する放散口蓋の固定位置を調整可能な位置調整機構が設けられ、
前記破断部材を前記装置本体側の固定部材及び前記放散口蓋側の固定部材に押さえ付けるための押え部材をさらに備え、
前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材は、それぞれ、締結孔と、 縁部に形成される切り欠き部と、を備え、
前記破断部材は、前記各固定部材の締結孔に対応した位置にそれぞれ形成される締結孔と、該各締結孔の間に設けられる破断部と、を備え、
前記押え部材は、前記破断部材の締結孔に対応して2個設けられ、該各押え部材には、前記破断部材の締結孔に対応した位置に締結孔が設けられていると共に、前記各切り欠き部に係合可能な係合部が設けられ、
前記破断部材は、前記放散口蓋の上下に設けられ、上側の破断部材の前記破断部の強度は下側の破断部材の前記破断部の強度より弱く設定されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
含塵空気中の粉塵を捕集するフィルタと、
前記フィルタに捕集された後に該フィルタから除去された粉塵を収容する粉塵収容部と、を備え、
前記放散口は、前記フィルタと前記粉塵収容部との間に形成された空間を臨む位置に設けられている請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記連結手段は、前記粉塵爆発時に前記装置本体から切り離された前記放散口蓋に干渉しない位置に配置されている請求項1又は2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記連結手段の一端は前記放散口蓋の下端部に接続され、該連結手段の他端は該放散口蓋の下端部の下方外側において前記放散ダクトに接続されている請求項3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記連結手段は剛体で構成され、前記他端を中心に回動可能に設けられている請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記放散ダクトは、上方に開放部を有すると共に、下方にV字型の傾斜部を備え、前記傾斜部の下端部分に開口部が形成されている請求項4又は5に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記放散ダクトの前記開放部は、仕切りにより複数の区画に仕切られ、該区画は前記放散口蓋が通過不能な大きさに設定されている請求項6に記載の集塵装置。
【請求項8】
前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材のいずれか一方には凸部が設けられ、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材のいずれか他方には前記凸部が嵌合可能な凹部が設けられている請求項
7に記載の集塵装置。
【請求項9】
前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材との間には、該装置本体に対する放散口蓋の固定位置を調整可能な位置調整機構が設けられている請求項
7又は
8に記載の集塵装置。
【請求項10】
前記放散口蓋は、前記放散口に対向する平面部と、該平面部に直交する方向に形成された縁部と、を備え、
前記平面部の前記放散口側の面の外周部には、前記放散口の縁部に接触するように弾性を有するシール部材が設けられ、
前記縁部には、前記放散口蓋側の固定部材が取り付けられ、該固定部材の一端は前記平面部の外面と接するように延出して形成されている請求項
1~
9のいずれかの請求項に記載の集塵装置。
【請求項11】
装置本体の内部に吸い込んだ含塵空気中の粉塵を濾過し、該装置本体の外部に清浄空気を排出する集塵装置であって、
前記装置本体の外面に開口された放散口と、
前記放散口を閉塞する放散口蓋と、
通常時は前記装置本体と前記放散口蓋とを結合し、前記装置本体の内部における粉塵爆発時に破断して該装置本体から前記放散口蓋を切り離す破断部材と、
前記粉塵爆発時に前記放散口蓋が前記装置本体から切り離された場合に該放散口蓋が該装置本体の周囲に飛散しないように設けられる飛散防止手段と、
前記放散口蓋の周囲を囲むように設けられる放散ダクトと、
を備え、
前記飛散防止手段は、前記放散口蓋と前記放散ダクトとを連結する連結手段を備え、
前記放散口及び前記放散口蓋は前記装置本体の略垂直な面に設けられ、
前記装置本体と前記放散口蓋には、それぞれ、固定部材が設けられ、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材と間には、連続した同一平面が形成され、該同一平面に前記破断部材が固定されると共に、該装置本体に対する放散口蓋の固定位置を調整可能な位置調整機構が設けられ、
前記破断部材を前記装置本体側の固定部材及び前記放散口蓋側の固定部材に押さえ付けるための押え部材をさらに備え、
前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材は、それぞれ、締結孔と、縁部に形成される切り欠き部と、を備え、
前記破断部材は、前記各固定部材の締結孔に対応した位置にそれぞれ形成される締結孔と、該各締結孔の間に設けられる破断部と、を備え、
前記押え部材は、前記破断部材の締結孔に対応して2個設けられ、該各押え部材には、前記破断部材の締結孔に対応した位置に締結孔が設けられていると共に、前記各切り欠き部に係合可能な係合部が設けられ、
前記破断部材は、前記放散口蓋の上下左右の少なくとも4箇所に設けられていることを特徴とする集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含塵空気中の粉塵を捕集する集塵装置に関し、特に、含塵空気中に含まれる金属粉、樹脂粉、穀物粉などの粉塵爆発の危険性がある粉塵を捕集するために使用される集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、気体中に一定濃度以上の粉塵が浮遊している状態で、火花などの着火源からエネルギーが与えられると、爆発を引き起こすことがあり、これを粉塵爆発という。粉塵爆発は、粉塵の性質、粒度分布、形状、濃度、可燃性ガスの有無などによって危険性が左右される。特に、粉塵爆発の可能性の高い粉体(以下、「爆発性粉塵」と記す)としては、爆発指数(Kst値)の高い、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛といった金属粉や、エポキシのような樹脂粉末、コーンスターチやでんぷんなどの食品粉末が挙げられる。
【0003】
従来、集塵装置において、これらの爆発性粉塵を捕集する時に万一粉塵爆発が起こった場合に集塵装置の破損を最小限に抑えるため、集塵装置内部の急激な圧力上昇に追従するように圧力および火炎を外部に放散する技術が提案されている。
【0004】
この種の従来の技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、ベントパネルが8文字型断裂片を介して装置の支持部品に取付けられた過圧力ベントパネル構造物が知られている。この構造物では、粉塵爆発時に、装置内部で発生した急激な圧力上昇により、8文字型断裂片が破断してベントパネルが装置から切り離されることで、開口部を通して装置内部の圧力が大気に放出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術では、ベントパネルが装置から切り離されると、ベントパネルが飛散したり、火炎や爆風が放散されたりすることにより、周囲の作業者などに危険を及ぼしてしまうという問題がある。
【0007】
また、各部品の製作誤差が考慮されていないため、8文字型断裂片を装置の支持部品に固定する際に、位置合わせが難しいという問題や、メンテナンス時のチェックなどで、8文字型断裂片にクラックやひび割れなどの異常が発見されて部品の交換が必要となった場合に、部品の取り付けや交換作業に手間が掛かるという問題がある。
【0008】
さらに、例えば、異物の吸引やフィルタの著しい目詰りなどにより装置が全閉状態に近い吸引状態になった場合、ベントパネルに対して装置の内側(内部)方向の力が作用すると共に、8文字型断裂片に圧縮方向の力が作用するため、8文字型断裂片の劣化により、強度を適正範囲に維持することが困難となる虞もある。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、粉塵爆発時における放散口蓋の周囲への飛散(吹き飛び)を防止することで周囲への危険を回避することができ、爆発時に破断する部品の取り付け及び交換作業を容易に行うことができると共に破断する部品の強度を適正範囲に維持することのできる集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の集塵装置は、装置本体の内部に吸い込んだ含塵空気中の粉塵を濾過し、該装置本体の外部に清浄空気を排出する集塵装置であって、前記装置本体の外面に開口された放散口と、前記放散口を閉塞する放散口蓋と、通常時は前記装置本体と前記放散口蓋とを結合し、前記装置本体の内部における粉塵爆発時に破断して該装置本体から前記放散口蓋を切り離す破断部材と、前記粉塵爆発時に前記放散口蓋が前記装置本体から切り離された場合に該放散口蓋が該装置本体の周囲に飛散しないように設けられる飛散防止手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の集塵装置によれば、粉塵爆発時の爆発圧力によって前記放散口蓋が前記装置本体から切り離された場合に該放散口蓋が該装置本体の周囲に飛散しないので、安全性を高めることができる。
【0012】
本発明の第2の集塵装置は、上記した第1の集塵装置において、含塵空気中の粉塵を捕集するフィルタと、前記フィルタに捕集された後に該フィルタから除去された粉塵を収容する粉塵収容部と、を備え、前記放散口は、前記フィルタと前記粉塵収容部との間に形成された空間を臨む位置に設けられているのが好ましい。
【0013】
本発明の第2の集塵装置によれば、前記フィルタから除去された粉塵は前記粉塵収容部に向かうため、該フィルタと該粉塵収容部との間の空間は、粉塵濃度の高い粉塵雲が発生しやすい最も爆発し易い領域となるが、その空間と前記放散口が連通しているので、爆発時の圧力を速やかに放散口蓋に伝達することができ、爆発時における装置本体の内圧を低く抑えることで、装置本体の損傷を最小限に留めることができる。
【0014】
本発明の第3の集塵装置は、上記した第1又は第2の集塵装置において、前記放散口蓋の周囲を囲むように設けられる放散ダクトを備え、前記飛散防止手段は、前記放散口蓋と前記放散ダクトとを連結する連結手段を備え、該連結手段は、前記粉塵爆発時に前記装置本体から切り離された前記放散口蓋に干渉しない位置に配置されているのが好ましい。
【0015】
本発明の第3の集塵装置によれば、粉塵爆発時には爆風により前記放散口蓋が前記装置本体の外側方向に移動するが、前記連結手段が該放散口蓋の移動方向に干渉しない位置に配置されているため、該放散口蓋の開口動作に支障を与えることがない。
【0016】
本発明の第4の集塵装置は、上記した第3の集塵装置において、前記放散口及び前記放散口蓋は前記装置本体の略垂直な面に設けられ、前記連結手段の一端は前記放散口蓋の下端部に接続され、該連結手段の他端は該放散口蓋の下端部の下方外側において前記放散ダクトに接続されているのが好ましい。
【0017】
本発明の第4の集塵装置によれば、爆風に誘導されて前記放散口蓋が上方に誘導されるのを阻止することができるため、安全性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第5の集塵装置は、上記した第4の集塵装置において、前記連結手段は剛体で構成され、前記他端を中心に回動可能に設けられていてもよい。
【0019】
本発明の第5の集塵装置によれば、爆発時に前記放散口蓋の動作範囲を規制することができ、前記放散ダクトにおいて該放散口蓋が接触すると想定される箇所のみを部分的に補強すればよいので、補強コストの増大を抑制することができる。
【0020】
本発明の第6の集塵装置は、上記した第4又は第5の集塵装置において、前記放散ダクトは、上方に開放部を有すると共に、下方にV字型の傾斜部を備え、前記傾斜部の下端部分に開口部が形成されているのが好ましい。
【0021】
本発明の第6の集塵装置によれば、爆発時の爆風を上方に誘導することで、周囲の安全性を確保することができる。また、上方の開放部から前記放散ダクト内に侵入した雨水や落ち葉などが下方の傾斜部を経由して前記開口部から排出されるので、該放散ダクト内に堆積物が堆積することがない。したがって、爆発時に該放散ダクト内の堆積物によって前記連結アームや放散口蓋の動作が妨げられることがないため、該連結アームや放散口蓋を正常に動作させることができる。
【0022】
本発明の第7の集塵装置は、上記した第6の集塵装置において、前記放散ダクトの前記開放部は、仕切りにより複数の区画に仕切られ、該区画は前記放散口蓋が通過不能な大きさに設定されているのが好ましい。
【0023】
本発明の第7の集塵装置によれば、仮に爆発時の圧力や爆風により、前記連結手段が破断して前記放散口蓋が上方に飛散したとしても、前記仕切り部材に衝突した後、前記放散ダクト内に落下し、該放散ダクト内に留めることができるため、周囲の安全性を担保することができる。また、爆発時の圧力、爆風、火炎は、前記仕切り部材の間から外部に放散されるので、放散性能に悪影響を及ぼすことがない。
【0024】
本発明の第8の集塵装置は、上記した第4~第7のいずれかの集塵装置において、前記装置本体と前記放散口蓋には、それぞれ、固定部材が設けられ、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材と間には、連続した同一平面が形成され、該同一平面に前記破断部材が固定されるのが好ましい。
【0025】
本発明の第8の集塵装置によれば、前記破断部材を前記装置本体と前記放散口蓋のそれぞれの固定部材に固定する際、該破断部材に変形やストレスを掛けることなく、該破断部材を安定的に固定することができる。
【0026】
本発明の第9の集塵装置は、上記した第8の集塵装置において、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材のいずれか一方には凸部が設けられ、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材のいずれか他方には前記凸部が嵌合可能な凹部が設けられているのが好ましい。
【0027】
本発明の第9の集塵装置によれば、前記凸部が前記凹部に嵌合することにより、容易に位置決めを行うことができると共に、前記放散口蓋が前記放散口側(装置本体側)に移動するのを防止するストッパとしての機能を果たすため、例えば、前記フィルタの目詰りによる集塵室のマイナス圧の上昇や、該放散口蓋のパッキンの劣化やへたりが生じたとしても、該放散口蓋が該放散口側(内側)に移動することがない。したがって、前記破断部材に圧縮方向の力が作用しないので、該破断部材の性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0028】
本発明の第10の集塵装置は、上記した第8又は第9の集塵装置において、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材との間には、該装置本体に対する放散口蓋の固定位置を調整可能な位置調整機構が設けられているのが好ましい。
【0029】
本発明の第10の集塵装置によれば、前記放散口や前記放散口蓋などの部品に製作上の誤差が生じた場合でも、前記破断部材の固定位置を適正な位置に調整することができる。
【0030】
本発明の第11の集塵装置は、上記した第8~第10のいずれかの集塵装置において、前記破断部材を前記装置本体側の固定部材及び前記放散口蓋側の固定部材に押さえ付けるための押え部材をさらに備え、前記装置本体側の固定部材と前記放散口蓋側の固定部材は、それぞれ、締結孔と、縁部に形成される切り欠き部と、を備え、前記破断部材は、前記各固定部材の締結孔に対応した位置にそれぞれ形成される締結孔と、該各締結孔の間に設けられる破断部と、を備え、前記押え部材は、前記破断部材の締結孔に対応して2個設けられ、該各押え部材には、前記破断部材の締結孔に対応した位置に締結孔が設けられていると共に、前記各切り欠き部に係合可能な係合部が設けられているのが好ましい。
【0031】
本発明の第11の集塵装置によれば、前記破断部材を固定する際、該破断部材にボルトの締め付けによる回転力(モーメント)が作用しないので、該破断部材の位置がずれたり、該破断部材が変形したりすることなく、該破断部材を所定の位置に安定的に固定することができる。
【0032】
本発明の第12の集塵装置は、上記した第11の集塵装置において、前記破断部材は、前記放散口蓋の上下に設けられ、上側の破断部材の前記破断部の強度は下側の破断部材の前記破断部の強度より弱く設定されているのが好ましい。
【0033】
本発明の第12の集塵装置によれば、爆発時に、前記放散口蓋の上側の破断部材の方が下側の破断部材よりも早く破断し、上側の放散口蓋の方が早く開口するので、爆風を上方に向かわせることができ、危険性を低下させることができる。
【0034】
本発明の第13の集塵装置は、上記した第8~第12のいずれかの集塵装置において、前記放散口蓋は、前記放散口に対向する平面部と、該平面部の縁部において該平面部に直交する方向に形成された縁部と、を備え、前記平面部の前記放散口側の面の外周部には、前記放散口の縁部に接触するように弾性を有するシール部材が設けられ、前記縁部には、前記放散口蓋側の固定部材が取り付けられ、該固定部材の一端は前記平面部の外面と接するように延出して形成されているのが好ましい。
【0035】
本発明の第13の集塵装置によれば、爆発時に前記放散口蓋の平面部に大きな圧力が作用して該放散口蓋が外側方向に移動するが、前記固定部材の一端が前記平面部に接触しているので、爆発時の圧力を直接的に且つレスポンス良く前記破断部材に伝達することで、該破断部材を破断させて素早く前記放散口を開放することができる。また、前記シール部材が該放散口の縁部と接触することで、シール性を確保することができる。さらに、前記放散口蓋の平面部に対して該シール部材の押し付け力による反力が作用しても、前記固定部材の一端が前記平面部に接触することにより、該放散口蓋の変形を抑えることができる。
【0036】
本発明の第14の集塵装置は、上記した第4~第13のいずれかの集塵装置において、前記破断部材は、前記放散口蓋の上下左右の少なくとも4箇所に設けられているのが好ましい。
【0037】
本発明の第14の集塵装置によれば、放散口蓋の上下左右の4箇所に亘り、前記破断部材を固定することで、前記放散口蓋を安定的に支持固定することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、粉塵爆発時における放散口蓋の周囲への飛散(吹き飛び)を防止することで周囲への危険を回避することができ、爆発時に破断部材の取り付け及び交換作業を容易に行うことができると共に破断部材の強度を適正範囲に維持することのできることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態に係る集塵装置を後面側から示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る集塵装置の放散ダクトを示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る集塵装置の内部を示す側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る集塵装置において放散口に放散口蓋を取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る集塵装置において放散口に放散口蓋を取り付けた状態を上方から示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る集塵装置において放散口に放散口蓋を取り付けた状態を下方から示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る集塵装置において放散口蓋を内側上方から示す斜視図である。
【
図9】(A)は本発明の実施形態に係る集塵装置の破断部材の周辺部分を示す側面図、(B)は本発明の実施形態に係る集塵装置の破断部材の周辺部分を示す平面図、(c)は本発明の実施形態に係る集塵装置の破断部材の周辺部分を示す後面図(背面図)である。
【
図10A】本発明の実施形態に係る集塵装置において破断部材を取り付ける手順を示す斜視図である。
【
図10B】本発明の実施形態に係る集塵装置において破断部材を取り付ける手順を示す分解斜視図である。
【
図10C】本発明の実施形態に係る集塵装置において破断部材を取り付ける手順を示す斜視図である。
【
図10D】本発明の実施形態に係る集塵装置において破断部材を取り付ける手順を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る集塵装置の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
[集塵装置]
【0041】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る集塵装置について説明する。なお、図中の「Fr」は「前」、「Rr」は「後」、「L」は「左」、「R」は「右」、「U」は「上」、「D」は「下」をそれぞれ示す。また、以下の説明では、上下及び前後左右の方向を示す用語を使用している場合があるが、それらの用語はあくまでも説明の便宜上用いているものであって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0042】
図1及び
図3に示すように、本実施形態に係る集塵装置1は、上下に長い略直方体形状の装置本体2と、装置本体2の上方に配設される上下に扁平な略直方体状の排気部3と、装置本体2の後面に開口された放散口4と、放散口4を閉塞する放散口蓋5と、放散口蓋5の周囲を囲むように設けられる放散ダクト6と、を備えている。
まず、
図1及び3を参照しつつ、装置本体2及び排気部3について説明する。
【0043】
装置本体2は、その四方外面が本体ケース10により覆われており、装置本体2の内部は、仕切板11によって、集塵室12と清浄室13とが前後に隣り合うように仕切られている。具体的には、仕切板11より後方に集塵室12が形成され、仕切板11より前方に清浄室13が形成されている。また、本体ケース10の前面には、フィルタ点検扉10aが開閉自在に取り付けられている。
【0044】
仕切板11は、装置本体2のベース部14上に立設される縦仕切板15と、縦仕切板15の上端から後方に向かって上傾する傾斜仕切板16と、傾斜仕切板16の上端が接続する横仕切板17と、を有している。
【0045】
縦仕切板15は、装置本体2と左右方向の幅が略同一で、ベース部14の前後方向中央より前側位置から直立した平板形状の部材である。縦仕切板15には、上下方向に長い長方形状の開口部(図示省略)が上下方向に2箇所、左右方向に4箇所の合計8箇所にそれぞれ形成されている。これらの開口部により、集塵室12と清浄室13とは連通している。
【0046】
傾斜仕切板16は、縦仕切板15と同一の左右幅の平板形状の部材である。傾斜仕切板16は、その下端部を縦仕切板15の上端部に接続し、後方に約45度の傾きで上方に延設されている。
【0047】
横仕切板17は、縦仕切板15と同一の左右幅の平板形状の部材である。横仕切板17は、集塵室12の天面を構成するように、本体ケース10の上端に略水平に設けられている。傾斜仕切板16の上端部は、横仕切板17の前後方向中央よりやや後側に接続されている。また、横仕切板17には、傾斜仕切板16との接続部分より前側に開口が形成されている。
【0048】
集塵室12は、装置本体2の内部後方において、仕切板11と、本体ケース10と、により囲まれた上下方向に長い略直方体形状の空間である。集塵室12には、本体ケース10の側面の上部後方に設けられる吸込口30と、左右方向に沿って所定間隔で設けられる整流板31と、各整流板31の下方において上下2段左右4列に配設される合計8つのフィルタ32と、各フィルタ32を取り付けるためのフィルタ支持部33と、フィルタ32の下方に配設される粉塵収容部34と、が設けられている。
【0049】
図1に良く示されるように、吸込口30には逆止弁36が接続されておる、集塵装置1の外部で発生した含塵空気は、吸込口30を介して集塵室12内部に吸い込まれる。
【0050】
各フィルタ32は、帯電防止処理が施されていると共にアース接地されており、前後に長く左右に扁平な略直方体形状を成すフィルタフレーム44と、フィルタフレーム44に取り付けられる左右一対の濾材45と、を有している。
【0051】
フィルタフレーム44は、樹脂製であり、上側プレート部44aと、下側プレート部44bと、上下一対のプレート部44a,44bの後端部を連結する後側プレート部44cと、上下一対のプレート部44a,44bの前端部を連結する枠状のフランジ部44dと、により構成されている。
【0052】
各濾材45は、側面視で矩形状の不織布等の材料を前後方向に連続的に山折りと谷折りとを繰り返して、折り目が上下方向に延びたプリーツ状に形成されている。一対の濾材45は、空隙を介して起立姿勢で対向配置された状態で、フィルタフレーム44に支持されている。具体的には、一対の濾材45は、各濾材45の上端面に当接した上側プレート部44aと、各濾材45の下端面に当接した下側プレート部44bと、により挟持されている。また、各濾材45の後端面は、後側プレート部44cにより閉塞され、各濾材45の前端面はフランジ部44dの枠内に露出している。このようにフィルタ32を構成することで、各濾材45において粉塵を濾過された後の清浄空気は前記空隙の前端部分から清浄室13へ流入するようになっている。
【0053】
粉塵収容部34は、装置本体2のベース部14の下方に設けられている。粉塵収容部34は、上方が開口したトレイ状に形成されたバケット46と、バケット46の上方において下方に向かって窄まるように傾斜して形成された塵埃導入板47と、を有している。また、本体ケース10の前面下部には、バケット点検扉10bが開閉自在に取り付けられており、このバケット点検扉10bを開放することで、バケット46を前方に引き出すことができるようになっている。
【0054】
清浄室13は、装置本体2の内部前方において、仕切板11と、本体ケース10と、ベース部14とにより囲まれた上下方向に長い略直方体形状の空間である。清浄室13の上部は、上記した傾斜仕切板16に沿って、上方に向かって前後方向に広がるように形成されている。また、清浄室13には、各フィルタ32に付着した塵埃をパルスジェットによって払い落とす除塵装置20が設けられている。
【0055】
除塵装置20は、圧縮空気を貯蔵するためのヘッダータンク21と、ヘッダータンク21に接続される左右一対のブローチューブ22と、各ブローチューブ22への圧縮空気の供給制御を行うための一対の電磁弁23と、を有している。各ブローチューブ22には、ヘッダータンク21から供給され、電磁弁23により圧力調整された圧縮空気を各フィルタ32内に噴射するための複数の噴射孔(エアー吹出口)24が開口されている。
【0056】
排気部3は、四方外面を覆う排気ケース25と、排気ケース25内に配置含塵空気を吸引するための吸引力を発生させるスクロール26と、を有している。スクロール26は、所謂遠心ファン装置であり、モータ27により回転駆動される吸気ファン28を内蔵している。スクロール26は、その吸気口が横仕切板17の開口に連通するように取り付けられている。また、排気ケース25の側面には排気口29が形成され、排気口29の上部には排気口29から雨水が浸入するのを防止するために、ルーフ19が取り付けられている。
【0057】
次に、
図3~
図10Dを参照しつつ、放散口4及び放散口蓋5について説明する。
図5に良く示されているように、放散口4は、左右幅方向に長い矩形状を有しており、装置本体2の集塵室12(ダーティエリア)の後面側のフィルタ32と粉塵収容部34との間に形成された空間を臨むように設けられている。具体的には、放散口4は、開口高さが下段側のフィルタ32の上方の空間から粉塵収容部34の上端迄に亘ると共に、開口幅が4つのフィルタ32間の3つの流通路に亘るように開口している。放散口4の外周縁部72は、本体ケース10と直交する後方に延出している。外周縁部72の先端部73は、本体ケース10と平行を成すように外側に折り曲げられてフランジ状を成している。
【0058】
本体ケース10の後面には、放散口4の上方及び下方にそれぞれ2箇所ずつ、合計4個のスライドプレート固定部材50が装置本体2側の固定部材として取り付けられている。各スライドプレート固定部材50は、本体ケース10に固定される左右一対の脚部51と、本体ケース10から後方に突出する頂部52と、を有している。スライドプレート固定部材50の頂部52には、固定用の丸孔53が形成されている。
【0059】
上下のスライドプレート固定部材50には、それぞれ、スライドプレート54が固定可能となっている。スライドプレート54はスライドプレート固定部材50と共に、装置本体2側の固定部材として機能する。各スライドプレート54は、左右幅方向に細長い形状を有しており、鉛直面55と、鉛直面55の上下端部から前方に屈曲されて形成された上下水平面56と、によりコの字状断面を形成している。
図10A~
図10Cに示されているように、各スライドプレート54の左右には、それぞれ、スライドプレート固定部材50の丸孔53に対応する位置に横長孔57が形成されている。なお、本実施形態とは反対に、スライドプレート54に丸孔を形成し、スライドプレート固定部材50に横長孔を形成してもよい。
【0060】
図10Aに良く示されているように、各スライドプレート54には、鉛直面55の左右端部から前方に屈曲した端面58が固定部として形成されている。鉛直面55と端面58との角部(折り曲げ部)には凹部59が形成され、凹部59の上下に傾斜部60が形成されている。端面58の上端には切欠き部61が形成され、端面58の中央部にはボルト貫通孔62が形成されている。端面58の裏側にはボルト貫通孔62に対応する位置に溶接ナット63(
図9(B)参照)が取り付けられている。
【0061】
また、
図5~
図7に良く示されているように、本体ケース10の後面には、下方のスライドプレート固定部材50の下方且つ該各スライドプレート固定部材50の間に受け部材64が取り付けられている。受け部材64は、水平姿勢で後方に延出する受け板65と、受け板65の前端部から下方に屈曲する前面部66と、受け板65の左右端部から下方に屈曲する側面部67と、受け板65の後端部から後斜め上方に屈曲する止め部68と、により構成されている。
【0062】
図4~
図8に良く示されているように、放散口蓋5は、左右幅方向に長い矩形状を有しており、放散口4に対向するように平面部70が形成されている。平面部70の裏面(内面)の外周部には、パッキン71が着脱可能に取り付けられている。放散口蓋5による放散口4の閉塞時に、このパッキン71が放散口4の外周縁部72の先端部73によって押圧され、パッキン71の厚みが半分程度になるように圧縮されることで、シール性が確保されるようになっている。
【0063】
また、平面部70の裏面には、パッキン71の内周に沿ってL字型のパッキン押さえ板74がスポット溶接により固定されている。放散口蓋5の軽量化を図るため、パッキン押さえ板74のスポット溶接しない箇所はR状に切り欠かれている。さらに、平面部70の裏面の中央には、横方向にLアングルの補強板75がスポット溶接により固定されている。なお、図中において、スポット溶接痕は、黒丸で示している。補強板75は、強度アップのため、中央部に向かうに従って平面部70の裏面からの突出長が大きくなるよう太鼓状に形成され、スポット溶接しない箇所はR状に切り欠かれている。
【0064】
平面部70の上下左右四辺の縁部76はそれぞれ前方に折り曲げられている。上側縁部76と下側縁部76には、それぞれ2個ずつで合計4個の破断部材固定部材77が取り付けられている。
図10A及び
図10Bに良く示されているように、破断部材固定部材77は、縁部76に沿って形成される水平板部78と、水平板部78に直交するように延出する鉛直板部79と、により構成されている。
【0065】
鉛直板部79は、上側縁部76から上方に突出又は下側縁部76から下方に突出するように形成される突出片部80と、前端面81aが平面部70の表面(外面)に接するように延出する延出片部81と、により構成されている。突出片部80の前端面から前方に突出するように凸部82が形成され、凸部82はスライドプレート54の凹部59に嵌合可能となっている。凸部82が凹部59に嵌合し易くするため、凸部82の先端の上下角部には、凹部59の上下傾斜部60に対応する位置にそれぞれ傾斜部83が形成されている。突出片部80の上端には切欠き部84が形成され、突出片部80の中央部にはボルト貫通孔85が形成されている。突出片部80の裏側にはボルト貫通孔85に対応する位置に溶接ナット86(
図9(B)参照)が取り付けられている。
【0066】
凸部82が凹部59に嵌合すると、突出片部80の表面と端面58の表面とにより同一平面が形成されるようになっており、この平面に破断部材87が配置される。
図10Bに良く示されているように、破断部材87は、金属製の板材で製作されており、その中央には小断面の破断部88が形成されている。破断部88は、所定の引っ張り荷重が作用すると破断するように形成され、破断部88の断面を変更することで、設定された破断力に容易に対応することができる。
【0067】
破断部材87には、端面58のボルト貫通孔62及び突出片部80のボルト貫通孔85に対応する位置にそれぞれ、取付孔89,90が形成されている。取付孔89,90のうちのいずれか一方の取付孔89は丸孔の形状を有し、他方の取付孔90は横に長い長孔の形状を有している。破断部材87は、引っ張り方向の力で破断するため、他方の取付孔90はできる限り小さい長孔に形成されている。目視では丸孔と長孔の区別が分かり難いため、容易に識別できるように、例えば長孔が形成された側の端部に目印として窪み部91が形成されている。
【0068】
破断部材87には、破断部材87を前記同一平面に押さえ付けるため、2個の押え部材92が配置される。各押え部材92は、破断部材87の取付孔89,90にそれぞれ対応するように形成される丸孔93を有する押え板部94と、押さえ板部94の上端から破断部材87側に略直角に折り曲げられて切欠き部61,84に係合可能な折り曲げ片部95(係合部)と、を有している。
【0069】
なお、上記実施形態において、スライドプレート54は、装置本体2側に取り付けられているが、放散口蓋5側に取り付けられてもよい。また、スライドプレート54は、左右幅方向に位置調整可能に設けられているが、その調整方向は、放散口蓋5の取り付け方向や位置に応じて任意に変更可能である。
【0070】
図3~
図7に示されているように、放散口蓋5の下側縁部76には、破断部材固定部材77の左右外側に、2個一対で合計4個の連結アーム固定板96が取り付けられている。各連結アーム固定板96は、下側縁部76から下方に突出するように形成される突出片部97と、前端面98aが平面部70の表面(外面)に接するように上方に延出する延出片部98と、により構成されている。各突出片部97にはそれぞれ丸孔96aが形成されている。
【0071】
上記した構成を備えた放散口蓋5を本体ケース10の後面に取り付ける場合、まず、
図10Aに示されているように、放散口蓋5の上側縁部76の左側に固定されている破断部材固定部材77の凸部82を上側のスライドプレート54の凹部59に嵌合させる。この時、破断部材固定部材77の凸部82とスライドプレート54の凹部59にはそれぞれ傾斜部83,60が形成されているため、凸部82と凹部59の嵌合作業を円滑に行うことができる。
【0072】
次いで、
図10Bに矢印で示されているように、スライドプレート54の左側の端面58の表面と破断部材固定部材77の突出片部80の表面とが同一平面となるように放散口蓋5及び又はスライドプレート54を幅方向(図中矢印方向)に移動させて、位置合わせを行う。なお、破断部材固定部材77の凸部82とスライドプレート54の凹部59が嵌合すると、スライドプレート54の端面58の表面と破断部材固定部材77の突出片部80の表面とが同一平面を形成するように、予め凸部82と凹部59の寸法を設定しても良い。この場合には、
図10Bの矢印方向への位置合わせ作業が不要となるので、さらに作業の簡素化を図ることができる。
【0073】
次いで、
図10Cに示すように、破断部材87の窪み部91を破断部材固定部材77側(後側)に向けた姿勢で、破断部材87を前記同一平面上の所定の位置に配置する。さらに、破断部材87上に前後2個の押え部材92を配置し、各押え部材92の折り曲げ片部95をそれぞれ、切欠き部61,84に係合させる。その後、バネ座金付きの固定用ボルト100を、各押え部材92の丸孔93、破断部材87の取付孔89,90、スライドプレート54のボルト貫通孔62及び破断部材固定部材77のボルト貫通孔85に挿通し、各溶接ナット63,86に締め付ける。なお、締め付ける順番は、丸孔の形状である一方の取付孔89の方からとする。
【0074】
この時、各押え部材92には、係合部95が切欠き部61,84に係合していることにより、固定用ボルト100の締め付けによる回転モーメントが発生しないため、破断部材87は、締付時によじれたり、ねじれたりすることなく、スライドプレート54及び破断部材固定部材77の所定の位置に確実且つ容易に固定される。また、破断部材87の取り付け作業時に、特別なジグを用意する必要がないため、使い勝手がよい。
【0075】
以降、上側のスライドプレート54の右側部分、及び下側のスライドプレート54の左側及び右側部分についても、上記したのと同様の手順を繰り返して、放散口蓋5の上下左右に合計4個の破断部材87を固定する。
【0076】
次いで、放散口蓋5を受け部材64上に載置し、装置本体2のスライドプレート固定部材50の各丸孔53に、放散口蓋5のスライドプレート54の各横長孔57を合わせる。この状態で、バネ座金付きの固定用ボルト101をスライドプレート54の横長孔57に差し込んだ後、スライドプレート固定部材50の溶接ナット103(
図9(B)参照)に仮締めする。次に、この状態を維持しながら、放散口蓋5が放散口4に対して左右幅方向に均等な位置になるように移動させて幅方向の取付位置を調整した後、固定用ボルト101を本締めして、スライドプレート54の取付位置を固定する。この時、固定用ボルト101を本締めすると、パッキン71の厚みは半分程度につぶれて、放散口4の外周縁部72の先端部73に密着してシール性を確保することができる。
なお、破断部材87の交換時等に破断部材87を取り外す場合には、上記した取付手順と逆の手順により行う。
次に、
図1~
図5を参照しつつ、放散ダクト6について説明する。
【0077】
放散ダクト6は、外観が直方体形状を有しており、上方に開放部18が形成されている。この開放部18は、格子状に配置された複数の仕切り部材35によって区画されている。複数の仕切り部材35によって区画された1つのエリアの大きさ(
図2のL1寸法)は、放散口蓋の5の短手方向(高さ方向)の大きさ(
図5のL2寸法)よりも小さく設定されている。
【0078】
放散ダクト6の後面上部には、矩形状の点検用開口が形成され、該点検用開口は上部点検扉37によって閉塞可能となっている。上部点検扉37は、ボルトナット等の締結具38によって着脱可能となっている。また、放散ダクト6の後面下部及び左右側面は、カバー板39によって覆われている。なお、
図1においては、放散ダクト6の内部が分かるように放散ダクト6の左側側面部のカバー板39を省略している。
【0079】
放散ダクト6の下部には、側面視でV字型を有する傾斜部40が形成されている。傾斜部40は、装置本体2の本体ケース10の後面下部から後下方に傾斜する第1傾斜面41と、第1傾斜面41の下端から後上方に傾斜する第2傾斜面42と、を有している。傾斜部40の下端部分には、複数(
図2では6個)の長方形状の開口部43が所定間隔で形成されている。これにより、集塵装置1を屋外に設置し、放散ダクト6の内部に雨水や落ち葉が侵入したとしても、放散ダクト6内に堆積することがなく、開口部43を介して外部に排出させることができる。
【0080】
傾斜部40の第2傾斜面42には、矩形状の点検用開口が形成され、該点検用開口は下部点検扉48によって閉塞可能となっている。下部点検扉48は、ボルトナット等の締結具49によって着脱可能となっている。第2傾斜面42の下部の左右端部側には、それぞれ、平面視で放散口蓋5の連結アーム固定板96に対応する位置に連結アーム取付板69が固定され、連結アーム取付板69には丸孔69aが形成されている。この丸孔69aと連結アーム固定板96の丸孔96aとに連結アーム99が挿通され、放散口蓋5が放散ダクト6と接続されることによって、飛散防止手段が構成される。
【0081】
連結アーム99は、例えばステンレス製のワイヤーロープを留め具99aで環状にした形状を有しており、放散口蓋5の後方に下傾した姿勢に維持されている。なお、連結アーム99は、設定された引っ張り強度を備えていれば、チェーン等、ワイヤーロープ以外の部材で形成されていてもよい。
【0082】
次に、
図3及び
図4を参照して、上記した構成を備えた本実施形態に係る集塵装置1の作用について説明する。なお、
図3において、含塵空気および清浄空気の流れを太矢印で示している。
【0083】
ユーザの操作により、集塵装置1の運転が開始されると、塵埃発生源からの含塵空気は、吸気ファン28の駆動により、吸込口30から集塵室12へ吸い込まれる。集塵室12に流入した含塵空気は、整流板31により整流された後、下降気流となって集塵室12の下方へと流れ、各フィルタ32の濾材45によって塵埃が捕集される。含塵空気から塵埃が除去された清浄空気は清浄室13へと排気される。
【0084】
このようにして清浄室13へと排気された清浄空気は、吸気ファン28の回転による吸引力により上昇気流となり、スクロール26内に吸い込まれ、排気口29を介して集塵装置1の外部に排気される。
【0085】
一方、ユーザの操作により、除塵動作が開始されると、圧空源から供給された圧縮空気がヘッダータンク21に蓄積される。そして、各電磁弁23が一定時間間隔で開閉制御されることで、各ブローチューブ22に圧縮空気が導入され、各噴射孔24から一定時間間隔で圧縮空気が各フィルタ32に向かって噴射される。これにより、各フィルタ32の濾材45に付着した塵埃が払い落とされる。払い落とされた塵埃は、下降気流に乗って落下し、各塵埃導入板47によってバケット46内に導かれ、蓄積される。その後、ユーザは、定期的に、バケット点検扉10bを開放してバケット46を前方に引き出し、バケット46内に堆積した塵埃を廃棄する。
【0086】
一方、集塵装置1の集塵室12内で粉塵爆発が発生した場合、集塵室12内の圧力が上昇することにより、放散口蓋5を介して破断部材87に外側方向に圧力が作用する。その後、破断部材87の破断部88が破断圧力に達すると、破断部88が破断する。そして、4個の破断部材87の破断部88がすべて破断すると、放散口蓋5は、放散口4から切り離され、連結アーム取付板69を支点に外側方向(後方)に回転移動し、圧力と火炎と爆風が放散ダクト6内に放散される。
【0087】
この時、
図4に良く示されているように、放散口蓋5の連結アーム固定板96とその後下方の連結アーム取付板69との間には、連結手段として連結アーム99が接続されており、放散口蓋5の移動方向と干渉しないため、連結アーム99が放散口蓋5の移動動作に悪影響を及ぼす虞はない。また、放散ダクト6の上方の開放部18が仕切り部材35によって区画され、区画された1つのエリアの大きさが放散口蓋5の短手方向の長さより小さく設定されているため、例え爆発時の圧力で連結アーム99が破断したとしても、放散口蓋5は仕切り部材35によって放散ダクト6内に留まり、外部に飛散することがない。このように放散口蓋5に対して複数の飛散防止手段が設けられているため、高い安全性を担保することができる。
【0088】
上記したように本実施形態に係る集塵装置1によれば、破断部材87を用いることで、集塵室12の耐圧に達する前に圧力と火炎と爆風を装置本体2の外部に放散しているので、集塵室12の破損を最小限に留めることができる。また、破断部材87を予め設定された破断力で確実に作動させることができると共に、破断部材87を瞬時に破断させて、放散口蓋5が全開(フルオープン)可能な構造を実現することができる。
【0089】
また、破断部材固定部材77の延出片部81が放散口蓋5の平面部70の表面(外面)に接するように設けられているので、平面部70の強度を向上させることができる。さらに、延出片部81は、平面部70の裏面の外周部に取り付けられているパッキン71の位置よりも内側まで延出して設けられているので、パッキン71の反力による平面部70の変形を抑えると共に、爆発時に平面部70に作用する圧力を破断部材87に素早く伝達することができる。
【0090】
放散ダクト6の後面側と下部傾斜面には、主に放散口蓋5、破断部材87の状態、連結アーム99の状態を点検できるように上部点検扉37及び下部点検扉48が着脱可能に取付けられているため、破断部材87の交換作業や保守点検作業を容易に行うことができる。
【0091】
また、放散口蓋5の重量が重い場合には、放散口蓋5の作動速度が大幅に遅くなることで粉塵爆発による圧力上昇に追従することができず、装置本体2の内部圧力が大きく上昇してしまい、集塵装置1の大幅な破損に繋がる虞がある。さらに、粉塵爆発時に質量のある放散口蓋5が飛散すると、強い破壊力があるので、大変危険でもある。しかしながら、本実施形態に係る集塵装置1によれば、上記したように放散口蓋5の軽量化が図られているため、そのような虞はない。
【0092】
なお、上記した実施形態に係る集塵装置1では、連結アーム99が、ワイヤーロープやチェーンなどの弛む部材により構成されているが、例えば、
図11に示されているように、連結アーム110が棒状の剛体により構成されていてもよい。
【0093】
以下、この変形例において、仮に、集塵室12内で粉塵爆発が発生し易い、下段のフィルタ32の下端と粉塵収容部34との間の空間で粉塵爆発が発生した場合の作用について、
図11を参照して説明する。
【0094】
図11中に、放散口蓋5に作用する力が矢印で図示されているように、集塵室12内で粉塵爆発が発生すると、まず、放散口蓋5の下部に対して、外側方向(後方)に水平力Fが作用する。
【0095】
一方、連結アーム110上には、水平力Fの反力Rが作用する。そこで、この反力RをX方向の成分Rxと、Y方向の成分Ryに分力すると、Ry に対応する力として、放散口蓋5の上方の破断部材87に下方向の鉛直力Wが作用すると予想される。そこで、放散口蓋5が放散口4から移動するまでは、力の釣り合いとして、下式が成立すると考えられる。
F=Rx
Ry=W
【0096】
その後、粉塵爆発によって水平力Fがさらに大きくなり、鉛直力Wが上側の破断部材87の破断部88のせん断力より大きくなった際に、上側の破断部材87の破断部88が破断し、放散口4の上部が開口した状態Aとなる。
【0097】
放散口4の上部が開口されたことにより、水平力Fが下側の破断部材87の破断部88のせん断力より大きくなると、下側の破断部材87の破断部88が破断し、放散口4の下部が開口した状態Bとなる。
【0098】
そして、連結アーム110は、放散口4から切り離され、連結アーム取付板69を支点に外側方向(後方)に回転移動し、圧力と火炎と爆風が放散ダクト6内に放散される。これにより、粉塵爆発により発生する爆風(爆発による圧力)を、速やかに上方に向かわせることができる。
なお、上記した各実施形態の説明は、本発明に係る集塵装置の一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の技術は、金属粉、樹脂粉、穀物粉など、粉塵爆発の危険性がある粉塵を含んだ含塵空気を集塵する集塵装置で利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 集塵装置
2 装置本体
4 放散口
5 放散口蓋
6 放散ダクト
18 開放部
32 フィルタ
34 粉塵収容部
35 仕切り部材(飛散防止手段)
40 傾斜部
43 開口部
50 スライドプレート固定部材
54 スライドプレート(位置調整機構)
59 凹部
61 切欠き部
62 ボルト貫通孔(締結孔)
70 平面部
71 パッキン(シール部材)
76 縁部
77 破断部材固定部材
82 凸部
84 切欠き部
85 ボルト貫通孔(締結孔)
87 破断部材
88 破断部
89 取付孔(締結孔)
90 取付孔(締結孔)
92 押え部材
93 丸孔(締結孔)
95 折り曲げ片部(係合部)
99 連結アーム(連結手段、飛散防止手段)
110 連結アーム(連結手段、飛散防止手段)