(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】配管支持具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/10 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
F16L3/10 Z
(21)【出願番号】P 2019084192
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(72)【発明者】
【氏名】金子 敏也
(72)【発明者】
【氏名】古田 徹也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 達也
(72)【発明者】
【氏名】森 潤
(72)【発明者】
【氏名】川▲さき▼ 裕太
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/236490(WO,A1)
【文献】特開2011-214648(JP,A)
【文献】特開平07-135729(JP,A)
【文献】特開2008-291956(JP,A)
【文献】特表2019-513205(JP,A)
【文献】特開2007-333072(JP,A)
【文献】特開2006-275076(JP,A)
【文献】特開2018-044662(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102906480(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第1176349(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第1544527(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010053357(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第108533835(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
H02G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の周面の一部を支持する第一の支持部、前記第一の支持部の一端側に形成された第一の係合部、及び、前記第一の支持部の他端側に形成された第一の締結部を備える第一の支持部材と、
前記周面の他部を支持する第二の支持部、前記第二の支持部の一端側に形成されて前記第一の係合部に係合する第二の係合部、及び、前記第二の支持部の他端側に形成されて前記第一の締結部と締結部材により締結される第二の締結部を備える第二の支持部材とを備え、
前記第二の締結部に、前記第一の締結部に取り付けられた締結部材が前記配管の軸方向に沿って嵌入可能な切欠部が設けられ
、
前記第二の係合部は、前記配管の軸方向に沿って前記第一の係合部に係合することを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記第一の支持部材は、前記配管が配設される配設箇所に固定される固定部を備え、
前記第一の支持部は、前記固定部が前記配設箇所に固定された状態で前記周面の一部を下方から支持することを特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記第一の支持部に、前記周面の一部との間に介在する第一の防振部材が設けられるとともに、前記第二の支持部に、前記周面の他部との間に介在する第二の防振部材が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶や構造物等に配設される配管を支持する配管支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や構造物等に配設される円筒状の配管を支持する配管支持具として、例えば特許文献1に記載のクランプが知られている。
図9に示すように、この種の配管支持具100は、配管110が配設される船舶や構造物等の壁部120に取り付けられたボルト130が挿通するように、板材101B、防振ゴム101A、ブロック101、ブロック102、防振ゴム102A及び板材102Bを順に重ね合わせ、板材102Bの上でナット140をボルト130に螺合させることにより構成されている。
【0003】
ブロック101には上部に半円状の凹部101aが設けられ、ブロック102には下部に半円状の凹部102aが設けられ、配管110は、その外周面111が凹部101a及び凹部102aに挟持されることによって、配管支持具100に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、狭隘な空間に配管が集積されて配設されるような場合には、配管支持具100によるとブロック101、ブロック102及びボルト130が他の配管の邪魔になり、集積度を高めることが難しいばかりでなく、配管110の配設作業時に、ボルト130の上方にブロック102等を一旦持ち上げてから壁部120の方に下ろさなければならず、そのための作業スペースが必要であるところ、狭隘な空間ではその確保が難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、狭隘な空間でも作業スペースをとらずに配管を配設することができる配管支持具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る配管支持具は、配管の周面の一部を支持する第一の支持部、前記第一の支持部の一端側に形成された第一の係合部、及び、前記第一の支持部の他端側に形成された第一の締結部を備える第一の支持部材と、前記周面の他部を支持する第二の支持部、前記第二の支持部の一端側に形成されて前記第一の係合部に係合する第二の係合部、及び、前記第二の支持部の他端側に形成されて前記第一の締結部と締結部材により締結される第二の締結部を備える第二の支持部材とを備え、前記第二の締結部に、前記第一の締結部に取り付けられた締結部材が前記配管の軸方向に沿って嵌入可能な切欠部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この配管支持具では、第二の締結部に、第一の締結部に取り付けられた締結部材が配管の軸方向に沿って嵌入可能な切欠部が設けられているので、第二の支持部材を配管の近くでその軸方向に沿って(第一の支持部材に対して相対的に)移動させることにより、第一の支持部材に組み付けることができ、作業スペースとしては配管の近くに第二の支持部材を動かせるだけの若干の空間があればよく、狭隘な空間でも作業スペースをとらずに配管の配設作業を行うことが可能となる。
【0009】
前記第二の係合部は、前記配管の軸方向に沿って前記第一の係合部に係合してもよく、これにより、第二の係合部を第一の係合部に係合させるための作業(第二の係合部を第一の係合部に対して係合のために相対的に移動させる作業)も上記若干の空間の中で収めることができる。
【0010】
また、前記第一の支持部材が、前記配管が配設される配設箇所に固定される固定部を備え、前記第一の支持部が、前記固定部が前記配設箇所に固定された状態で前記周面の一部を下方から支持するようにすれば、第二の支持部材を第一の支持部材に組み付ける際に、作業者は配管を持たずに第一の支持部材に仮置きして組付けを行うことができ、配管の配設作業が容易となる。
【0011】
さらに、前記第一の支持部に、前記周面の一部との間に介在する第一の防振部材が設けられるとともに、前記第二の支持部に、前記周面の他部との間に介在する第二の防振部材が設けられてもよく、これにより、防振部材が直接配管に接してその振動を減衰させ、防振性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る配管支持具よれば、狭隘な空間でも作業スペースをとらずに配管を配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】発明を実施するための形態に係る配管支持具を示す説明図である。
【
図3】
図1の配管支持具の第一のバンド片の係合部を示す説明図である。
【
図4】
図1の配管支持具の第一のバンド片の締結部を示す説明図である。
【
図5】
図1の配管支持具の第二のバンド片の係合部を示す説明図である。
【
図6】
図1の配管支持具の第二のバンド片の締結部を示す説明図である。
【
図7】
図1の配管支持具の第一のバンド片に配管を仮置きした状態を示す説明図である。
【
図8】
図7の第一のバンド片に対する第二のバンド片の組付けを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る配管支持具10は、円筒状の配管110(
図7及び
図8参照)を支持する第一のバンド片20及び第二のバンド片30と、第一のバンド片20に設けられて配管110との間に介在する防振ゴム40と、第二のバンド片30に設けられて配管110との間に介在する防振ゴム50と、第一のバンド片20及び第二のバンド片30を締結するボルト60、座金61及びナット62とを備える。
【0016】
第一のバンド片20は、帯状の金属板が折り曲げられてなる係合バンド片20Aと、同じく帯状の金属板が折り曲げられてなる締結バンド片20Bとにより構成され、係合バンド片20Aは、係合部21と、正面視円弧状の内周面22Aaを有する円弧部22Aと、接合部23aと、取付部23bとを有する。係合部21は、円弧部22Aの一端側に設けられ、接合部23aは、円弧部22Aの他端側に下方に延在するように設けられ、取付部23bは、接合部23aの下端から矢印Wで示す水平方向(
図1の左向き)に延在するように設けられている。
【0017】
係合部21には、
図3に示すように、円弧部22Aから円弧の外側に起立する(
図1参照)起立部21aと、起立部21aの先端からその起立方向と逆方向に折曲する平面部21bと、平面部21bの先端に形成されて鉤状(L字状)を呈する係合片21cとが設けられている。平面部21bには係合孔21dが形成され、係合片21cには係合突起21eが形成され、平面部21b及び係合片21cにより矢印Cで示す方向(
図3の左右方向、
図1の紙面垂直方向)に延在する係合溝21fが形成されている。係合溝21fは、
図1において、手前側が開放されている。
【0018】
締結バンド片20Bは、取付部23cと、接合部23dと、正面視円弧状の内周面22Baを有する円弧部22Bと、締結部24とを有する。接合部23dは、円弧部22Bの一端側に下方に延在するように設けられ、取付部23cは、接合部23dの下端から水平方向(
図1の右向き)に延在するように設けられ、締結部24は、円弧部22Bの他端側に設けられている。
【0019】
締結部24には、ボルト60の軸部60aが挿通されるボルト挿通孔24aが形成されるとともに、
図4に示すように、ボルト挿通孔24aの周囲に回転規制部24bが形成され、この回転規制部24bにより、ボルト挿通孔24aに軸部60aが挿通されたボルト60の頭部60bの回転が規制される。
【0020】
係合バンド片20A及び締結バンド片20Bは、接合部23a及び接合部23dが接合されて第一のバンド片20を構成し、接合部23a、取付部23b、取付部23及び接合部23dは、
図9の壁部120のような配管110の配設箇所に固定される固定部23を構成し、固定部23の固定時には、同一面をなす取付部23b及び取付部23cが、その配設箇所に取り付けられるようになっている。
【0021】
また、係合バンド片20Aと締結バンド片20Bとの接合により、円弧部22A及び円弧部22Bは支持部22を構成し、内周面22Aa及び内周面22Baは、支持部22の正面視円弧状の内周面22aを構成する。
【0022】
第一のバンド片20では、係合部21及び支持部22Bは全体として略半円形を呈し、円弧部22Aは円弧部22Bよりも長く、内周面22aの円弧が一部をなす円の中心(配設される配管110の中心軸)よりも上方まで(
図1において、9時の位置よりも上方まで)延在し、係合部21及び締結部24はW方向に対して約45度をなす直線上で対向している。
【0023】
第二のバンド片30は、係合部31と、円弧状の内周面32aを有する支持部32と、締結部33とを備え、係合部31は支持部32の一端側に設けられ、締結部33は支持部32の他端側に設けられている。第一のバンド片20と同様に、係合部31及び支持部32は、全体として略半円形を呈し、係合部21及び締結部24は、
図1においては、W方向に対して約45度をなす直線上で対向している。
【0024】
係合部31には、
図5に示すように、支持部32から円弧の外側に起立する(
図1参照)起立部31aと、起立部31aの先端からその起立方向と逆方向に折曲する平面部31bと、平面部31bの先端に形成されて鉤状(L字状)を呈する係合片31cとが設けられている。平面部31bには係合孔31dが形成され、係合片31cには係合突起31eが形成され、平面部31b及び係合片31cによりC方向(
図5の左右方向、
図1の紙面垂直方向)に延在する係合溝31fが形成されている。係合溝31fは、係合溝21fとは逆に、
図1において奥側が開放されている。
【0025】
締結部33には、
図6に示すように、ボルト60の軸部60aの径よりも若干大きい幅寸法を有してC方向(
図6の左右方向、
図1の紙面垂直方向)に延在するする切欠部33aが形成されている。切欠部33aは、係合溝31fと同様に、
図1において奥側が開放されている。
【0026】
防振ゴム40は、配管110の外周面111(
図7及び
図8参照)に沿う内周面40aと、内周面40aと同軸の円弧状を呈する外周面40bとを有し、外周面40bにおいて支持部22の内周面22aに接合され、第一のバンド片20に固着されている。
【0027】
同様に、防振ゴム50は、配管110の外周面111に沿う内周面50aと、内周面50aと同軸の円弧状を呈する外周面50bとを有し、外周面50bにおいて支持部32の内周面32aに接合され、第二のバンド片30に固着されている。
【0028】
配管110の配設作業の際、作業者は、まず、図示を略す配管110の配設箇所(船舶や構造物の床面や壁面等)に第一のバンド片20の固定部23を固定する。このとき、第一のバンド片20には、締結部24のボルト挿通孔24aに予めボルト60の軸部60aを挿通させ、軸部60aに座金61とナット62を予め組み付けておいてもよい。また、第一のバンド片20では、支持部22が、内周面22aの円弧が一部をなす円の中心よりも上方まで延在しているので、固定部23が床面のように水平な箇所に固定されても、あるいは、壁面のような垂直又は垂直に近い箇所に固定されても、上記円の中心の鉛直下方に支持部22及び防振ゴム40が位置し、配管110の外周面111を下方から支持することができる。そこで、作業者は、
図7に示すように、配管110を第一のバンド片20に仮置きする。
【0029】
続いて、作業者は、
図8に示すように、配管110の軸方向であるC方向に沿って第二のバンド片30を移動させ、第二のバンド片30を第一のバンド片20に組み付ける。
【0030】
詳細には、配管110の外周面111の近くで
図8の左側から右側(
図1の手前側から奥側)に向かって第二のバンド片30をスライドするように移動させ、係合溝21fに係合片31cを進入させて係合片31cを平面部21bの下方に潜らせつつ、係合溝31fに係合片21cを進入させて係合片21cを平面部31bの下方に潜らせ、係合突起31eを係合孔21dの箇所に、係合突起21eを係合孔31dの箇所に、それぞれ位置決めすることによって、係合部31を係合部21に係合させる。
【0031】
また、作業者は、切欠部33aにボルト60の軸部60aが嵌入するように締結部33を締結部24に重ね合わせ、締結部33と締結部24との間に座金61が挟まれた状態でナット62を締め付ける。このナット62の締付けにより、締結部24と締結部33との締結が強固になるとともに、係合突起21e及び係合突起31eが係合孔31d及び係合孔21dにそれぞれ深く入り込むので、係合部21と係合部31との係合も強固になり、これにより作業が完了する。
【0032】
本実施の形態に係る配管支持具10では、第二のバンド片30に、締結部24に取り付けられたボルト60が配管110の軸方向に沿って嵌入可能な切欠部33aが設けられているので、第二のバンド片30を配管110の近くでその軸方向に沿って移動させることにより、第一のバンド片20に組み付けることができ、作業スペースとしては配管110の近くに第二のバンド片30を動かせるだけの若干の空間があればよく、狭隘な空間でも作業スペースをとらずに配管の配設作業を行うことが可能となる。ここでは、係合溝31fが切欠部33aと同じ側に開放され、係合部31は配管110の軸方向に沿って係合部21に係合するので、係合部31を係合部21に係合させるための作業も、上記若干の空間の中で収めることができる。
【0033】
また、第一のバンド片20が、配管110が配設される配設箇所に固定される固定部23を備え、支持部22が、固定部23がその配設箇所に固定された状態で配管110の外周面111の一部を下方から支持するので、第二のバンド片30を第一のバンド片20に組み付ける際に、作業者は配管110を持たずに第一のバンド片20に仮置きして組付けを行うことができ、配管110の配設作業が容易となっている。
【0034】
さらに、第一のバンド片20の支持部22に、配管110の外周面111の一部との間に介在する防振ゴム40が設けられるとともに、第二のバンド片20の支持部32に、配管110の外周面111の他部との間に介在する防振ゴム50が設けられているので、防振ゴム40及び防振ゴム50が直接配管110に接してその振動を減衰させ、防振性能の向上を図ることができる。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0036】
例えば、上記実施の形態では、第一のバンド片20が係合バンド片20A及び締結バンド片20Bにより構成されるとしたが、単一の部材により構成されてもよく、係合部の係合形態や締結部の締結形態も、公知のあらゆる方法を採ることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 配管支持具
20 第一のバンド片(第一の支持部材)
21 係合部(第一の係合部)
22 支持部(第一の支持部)
23 固定部
24 締結部(第一の締結部)
30 第二のバンド片(第二の支持部材)
31 係合部(第二の係合部)
32 支持部(第二の支持部)
33 締結部(第二の締結部)
33a 切欠部
40 防振ゴム(第一の防振部材)
50 防振ゴム(第二の防振部材)
60 ボルト(締結部材)
110 配管
111 外周面(周面)