(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】安全通路装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20230530BHJP
E02D 5/00 20060101ALI20230530BHJP
E04G 3/00 20060101ALI20230530BHJP
E04G 27/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E02D17/04 Z
E02D5/00
E04G3/00 L
E04G27/00
(21)【出願番号】P 2019089323
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391014550
【氏名又は名称】丸藤シートパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】平形 義明
(72)【発明者】
【氏名】福原 俊久
(72)【発明者】
【氏名】内山 喜章
(72)【発明者】
【氏名】竹井 涼介
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021397(JP,A)
【文献】特開平10-169187(JP,A)
【文献】実開昭63-037758(JP,U)
【文献】特開平08-284393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E02D 5/00
E04G 3/00
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行面(12)を持つ2つの鋼材(11)をそれらの長手方向端部に設けられた継手部(13)で繋ぎ合わせた構造体(10)の上に、当該継手部を越えて当該2つの鋼材の間に跨って配置可能な安全通路装置(20)
であって、
前記継手部を越えて前記2つの鋼材の間を跨ぐように形成された上面(22)と、
前記安全通路装置の幅方向の左右に形成され、前記安全通路装置の長手方向に延びる脚部(23)を有し、
前記脚部のうち前記構造体に接地する部位である下面(21)に前記継手部が嵌まり込む嵌合溝(21a)が形成されている
安全通路装置。
【請求項2】
前記脚部は、前記嵌合溝を除き、前記安全通路装置の長手方向全体に亘って形成されている
請求項1に記載の安全通路装置。
【請求項3】
前記上面は、前記継手部の近傍から前記歩行面に向かって下るように形成された斜面(22a)を含む
請求項
1に記載の安全通路装置。
【請求項4】
前記上面は、2つの前記斜面の間に形成された平面(22b)をさらに含む
請求項3に記載の安全通路装置。
【請求項5】
脱着自在の複数の構成物品により構成されている
請求項1から請求項4のいずれかに記載の安全通路装置。
【請求項6】
前記嵌合溝を有する中央部材(24)と、
前記中央部材に脱着可能であり、前記2つの鋼材の歩行面上にそれぞれ配置される2つの側方部材(25)と、を備え、
前記中央部材と前記2つの側方部材とを連結することにより前記下面と前記上面とが形成される
請求項5に記載の安全通路装置。
【請求項7】
前記安全通路装置の幅方向に沿った回動軸を持つヒンジ構造(26)が設けられている
請求項1から請求項4のいずれかに記載の安全通路装置。
【請求項8】
前記嵌合溝を有する中央部材(24)と、
前記2つの鋼材の歩行面上にそれぞれ配置される2つの側方部材(25)と、
前記中央部材と前記2つの側方部材とを回動自在に連結するヒンジ構造(26)と、を備え、
前記中央部材と前記2つの側方部材とにより前記下面と前記上面とが形成されている
請求項
1に記載の安全通路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば山留支保工を構成する切梁や腹起しなどの仮設構造体の上に配置するための安全通路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山留支保工構造は、一般的に、地盤の掘削面に当接するように立設した複数の土留壁(覆工板)と、この土留壁を支持するように水平に架け渡された複数の腹起しと、角部において隣り合う腹起しの間に仮設された火打ち梁とを含んで構成される。また、長尺の腹起しを採用した場合、その中央部分に大きな曲げモーメントが作用するため、これを抑制するために、対向する腹起し同士の間を架け渡すようにして一又は複数の切梁が設置されることもある。腹起しや切梁は、通常、H形鋼や角形鋼管などの鋼材の端部同士を継ぎ合わせることによって所望の長さを確保することができる。
【0003】
また、切梁や腹起しなどの仮設構造体がH形鋼や角形鋼管で構成されている場合、作業員は必要時に応じてその上面を歩行することができる。ただし、このような仮設構造体は高所に設置されることが一般的であるため、作業員の安全を確保するために歩行することが予め想定されている仮設構造体には安全措置を施す必要がある。このような安全措置の一例として、例えば特許文献1には、仮設構造体に手摺りや親綱ロープを取り付けることが提案されている。これにより、作業員は手摺や親綱ロープを把持しながら仮設構造体上を歩行することができるようになるため、安全性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、切梁や腹起しなどの仮設構造体は、長手方向の端部(継手部)を突き合わせた状態でボルト締め等によって連結することが一般的である。例えば、角形鋼管は、四角筒状の鋼管本体と、この鋼管本体の長手方向両端に設けられたフランジとを有しており、角形鋼管を連結する際にはこのフランジを突き合わせた状態でボルト締めを行う。ところが、フランジは鋼管本体の側面から外方に向かって突出した部位であるため、このフランジを突き合わせて連結すると作業員用の歩行面上の障害物となり、作業員がこのフランジに躓く恐れがある。仮設構造体に手摺りや親綱ロープを設けていたとしても、作業員がフランジに躓いた場合には仮設構造体から落下してしまうこと想定され、大変に危険である。
【0006】
そこで、本発明は、仮設構造体上を歩行する作業員が2つの鋼材の継手部を安全に乗り越えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記課題を解決する手段について鋭意検討した結果、2つの鋼材の継手部を超えるように配置可能な安全通路装置を仮設構造体上に設置することにより、作業員が鋼材の継手部を安全に乗り越えることができるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明は、2以上の鋼材11を繋ぎ合わせた構造体10の歩行面12に配置するための安全通路装置20に関する。構造体10は、歩行面12を持つ2つの鋼材11を、それらの長手方向端部に設けられた継手部13で繋ぎ合わせることによって構成されたものである。なお、鋼材11同士の継手部13は、歩行面12上に突出し、作業員の歩行の障害となり得る。安全通路装置20は、構造体10の継手部13を越えて、2つの鋼材11の間に跨って配置可能な構造を有することを特徴とする。安全通路装置20は、後述するように継手部13が嵌まり込む嵌合溝21aを有することが好ましいが、その他、例えば継手部13を越えることのできるアーチ状(図示省略)に形成されていてもよい。このような構造の安全通路装置20を構造体10の歩行面12上に配置するで、継手部13が歩行の障害となる場合であっても、作業員はより安全に継手部13を乗り越えることができるようになる。
【0009】
本発明に係る安全通路装置20は、継手部13が嵌まり込む嵌合溝21aが形成された下面21と、継手部13を越えて2つの鋼材11の間を跨ぐように形成された上面22とを有することが好ましい。このように安全通路装置20の下面21に継手部13を嵌め合わせるための嵌合溝21aを設けておくことで、安全通路装置20の位置ずれを抑制することができる。より具体的には、安全通路装置20が鋼材11の長手方向に沿ってずれる現象(縦ずれ)を防止できる。
【0010】
本発明に係る安全通路装置20において、上面22は、継手部13の近傍から歩行面12に向かって下るように形成された斜面22aを含むことが好ましい。このように、作業員が歩行可能な上面22に緩やかな斜面22aを設けておくことで、作業員が安全通路装置20に躓きにくくなりスムーズな歩行が可能となる。
【0011】
本発明に係る安全通路装置20において、上面22は、2つの斜面22aの間に形成された平面22bをさらに含むことが好ましい。安全通路装置20の平面22bは、鋼材11の歩行面12とほぼ平行に形成されている。このように、安全通路装置20の斜面22aの間に平面22bを設けておくことで、安全通路装置20の上面22を構成する面同士のなす角が緩やかなものとなるため、作業員が安全通路装置20上を歩きやすくなる。
【0012】
本発明に係る安全通路装置20は、脱着自在の複数の構成物品により構成されていてもよい。このように安全通路装置20を組み立て式とすることで、当該装置の収納や搬送が容易になる。例えば、安全通路装置20は、嵌合溝21aを有する中央部材24と、中央部材24に脱着可能な2つの側方部材25を備えるものであってもよい。2つの側方部材25は、2つの鋼材11の歩行面12上にそれぞれ配置される。そして、これらの中央部材24と2つの側方部材25とを連結することにより、前述した下面21と上面22とが形成されるようになっている。また、中央部材24が前述した平面22bを構成し、2つの側方部材25が前述した斜面22aを構成することが好ましい。
【0013】
本発明に係る安全通路装置20は、その幅方向に沿った回動軸を持つヒンジ構造26が設けられていてもよい。このようにヒンジ構造26を設けることで、安全通路装置20を折り畳むことが可能になる。例えば、安全通路装置20は、嵌合溝21aを有する中央部材24と、2つの鋼材11の歩行面12上にそれぞれ配置される2つの側方部材25と、中央部材24と2つの側方部材25とを回動自在に連結するヒンジ構造26とを備える。この場合に、中央部材24と2つの側方部材25とにより前述した下面21と上面22とが形成される。
【0014】
本発明に係る安全通路装置20は、歩行面12上での安全通路装置20の幅方向への摺動を防止するための横ずれ防止手段をさらに備えることが好ましい。横ずれ防止手段としては、例えば、鋼材11の歩行面12上に安全通路装置20の側壁(内面又は外面)と接触するリブを設けることや、鋼材11の歩行面12や安全通路装置20の下面21に滑り止めシートを貼付することが挙げられる。このように横ずれ防止手段を設けることで、安全通路装置20を歩行面12上により安全に設置できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の安全通路装置によれば、仮設構造体上を歩行する作業員が2つの鋼材の継手部を安全に乗り越えられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、角形鋼管からなる仮設構造体(切梁)に安全通路装置を設置した例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、H形鋼からなる仮設構造体(腹起し)に安全通路装置を設置した例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、安全通路装置の第1の実施形態を示している。
【
図4】
図4は、安全通路装置の第2の実施形態を示している。
【
図5】
図5は、安全通路装置の第3の実施形態を示している。
【
図6】
図6は、安全通路装置の第4の実施形態を示している。
【
図7】
図7は、安全通路装置の第5の実施形態を示している。
【
図8】
図8は、安全通路装置の第6の実施形態を示している。
【
図9】
図9は、安全通路装置の第7の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は、本発明に係る安全通路装置20の使用態様の一例として、山留支保工の切梁として機能する構造体10に安全通路装置20を設置した例を示している。切梁構造体10は、複数の角形鋼管からなる鋼材11を長手方向に連結することによって構成されている。角形鋼管(鋼材11)は、四角筒状の鋼管本体11aと、その長手方向の両端部にフランジ11bとを有している。フランジ11bは、鋼管本体11aの側面から外方に突出した部位であり、2つの角形鋼管のフランジ11bを突き合わせてボルト締めすることで継手部13が形成される。また、角形鋼管は、その上面部分が平坦な歩行面12となっており、現場作業員は必要に応じて角形鋼管の歩行面12を歩き進むことができる。ただし、フランジ11b同士を突き合わせた継手部13が歩行面12上に突出しているため、作業員の歩行の障害となり得る。そこで、この継手部13を作業員が安全に乗り越えられるようにするために、継手部13を越えて当該2つの角形鋼管の間に跨って安全通路装置20が設置される。
【0019】
図2は、本発明に係る安全通路装置20の使用態様の別例として、山留支保工の腹起しとして機能する構造体10に安全通路装置20を設置した例を示している。腹起し構造体10は、複数のH形鋼からなる鋼材11を長手方向に連結することによって構成されている。H形鋼(鋼材11)は、互いに対向する一対のフランジプレート11cと、これらのフランジプレート11cの面に直交するウェブプレート11dとを含み、断面形状がH形となる。また、H形鋼の長手方向の両端部にはエンドプレート11eが設けられており、2つのH形鋼のエンドプレート11eを突き合わせてボルト締めすることで継手部13が形成される。また、H形鋼は、ウェブプレート11dの上面部分が平坦な歩行面12となっており、現場作業員は必要に応じて角形鋼管の歩行面12を歩き進むことができる。ただし、ウェブプレート11dの前後両端にはエンドプレート11eが設けられているため、エンドプレート11e同士を突き合わせて継手部13を形成すると、この継手部13が作業員の歩行の障害となり得る。そこで、
図2に示した例においても、この継手部13を作業員が安全に乗り越えられるようにするために、継手部13を越えて当該2つのH形鋼の間に跨って安全通路装置20が設置される。
【0020】
図3は、安全通路装置20の第1の実施形態を示している。(a)は安全通路装置20の平面図であり、(b)はb-b線における安全通路装置20の長手方向断面図であり、(c)はc-c線における安全通路装置20の幅方向断面図である(
図3から
図9において同じ)。第1の実施形態に係る安全通路装置20は、分離したり折り曲げたりすることのできない一体型であり、また作業員が歩行可能な上面22が斜面22aと平面22bに分かれている。具体的に説明すると、第1の実施形態の安全通路装置20は、切梁や腹起しなどの構造体10の歩行面12に接する下面21と、作業員が歩行する通路となる上面22とを有している。なお、本実施形態において、安全通路装置20は、
図3(c)に示されるように、幅方向の左右の両側縁に沿って長手方向に延びる脚部23が形成されており、これらの左右の脚部23の間は空隙となっている。この場合、左右の脚部23のうち、構造体10の歩行面12に接地する部位が「下面21」となる。ただし、脚部23の間に空隙を形成せずに(すなわち中実構造として)、安全通路装置20の下面21と構造体10の接地面積を増やすこととしてもよい。
【0021】
安全通路装置20の下面21には、そのほぼ中央付近に、構造体10の継手部13が嵌まり込む嵌合溝21aが形成されている。この嵌合溝21aは、構造体10の継手部13に対応する位置に形成されるものであり、基本的には安全通路装置20を幅方向に横断するように形成されている。
図3の実施形態においては、左右の脚部23のそれぞれに嵌合溝21aが形成されることとなる。安全通路装置20の長手方向における嵌合溝21aの幅は、継手部13の厚み以上であればよい。特に、安全通路装置20を構造体10上に設置したときに、安全通路装置20が構造体10の長手方向に摺動してしまうこと(縦ずれ)を防止するために、安全通路装置20の嵌合溝21aの幅は、若干のクリアランスを設けつつも継手部13の厚みとほぼ同じ値とすることが好ましい。例えば、このクリアランスは、1~30mm程度とすることが好ましく、1~15mm程度とすることが特に好ましい。また、嵌合溝21aの深さは、継手部13の高さ以上とすればよい。これにより、嵌合溝21a内に継手部13を完全に収めることができる。
【0022】
安全通路装置20の上面22は、その長手方向の前後に設けられた2つの斜面22aと、これらの斜面22aの間に設けられた平面22bとに区分される。具体的には、安全通路装置20の平面22bは、構造体10の歩行面12とほぼ平行となる。平面22bは、嵌合溝21aの直上に形成されており、安全通路装置20の長手方向にみて、嵌合溝21aの幅以上の長さを持つ。例えば、平面22bの長さは、嵌合溝21aの幅に対して、1~10倍であることが好ましく、1.5~6倍であることが特に好ましい。また、平面22bは、安全通路装置20の頂部に位置することになる。安全通路装置20の下面21から平面22bまでの高さは、継手部13の高さより高ければ問題ないが、安全通路装置20を高くしすぎてしまうと、作業員が安全通路装置20上を歩きにくくなる。このため、安全通路装置20の高さは、継手部13の高さに対して1.1~2倍の範囲であることが好ましく、1.1~1.5倍の範囲であることが特に好ましい。他方で、安全通路装置20の斜面22aは、それぞれ平面22bから構造体10の歩行面12に向かって下るように傾斜する面である。斜面22aと平面22bは連続的に繋がっている。斜面22aと平面22bのなす角は、作業員が歩きやすいように、150~175°程度の緩やかな角度であることが好ましい。なお、安全通路装置20の高さと、斜面22aと平面22bのなす角が決まれば、各斜面22aの長手方向の長さは自ずと決定する。
【0023】
図4は、安全通路装置20の第2の実施形態を示している。なお、第2の実施形態以降の実施形態については、前述した第1の実施形態と同じ構成についての説明は割愛し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。第2の実施形態に係る安全通路装置20は、構成物品を分離可能な組み立て型であり、作業員が歩行可能な上面22は斜面22aと平面22bに分かれている。
図4に示されるように、第2の実施形態に係る安全通路装置20は、中央部材24と2つの側方部材25の合計3つの構成物品に別れており自在に着脱することができる。これらの中央部材24と側方部材25を組み合わせることにより、前述した第1の実施形態に係る安全通路装置20とほぼ同じ構成となる。
【0024】
中央部材24は、前述した嵌合溝21aを含む部材である。また、側方部材25は、前述した斜面22aを含む部材である。中央部材24と側方部材25は、それぞれ係合部24a,25aを有しており、この係合部24a,25aを係合させることで互いに連結する。係合部24a,25aの構造は特に限定されないが、例えば
図4(b)に示されるように、中央部材24と側方部材25の係合部24a,25aの一方を下向きの爪状とし、他方を上向きの爪状として、互いに噛み合う構造とすればよい。また、中央部材24の上面部分全体と、側方部材25の上面部分のうちの中央部材24寄りの一部は、構造体10の歩行面12と平行な平坦面となっている。このため、中央部材24と側方部材25とを連結することにより、安全通路装置20に前述した平面22bが形成されることとなる。
【0025】
図5は、安全通路装置20の第3の実施形態を示している。第3の実施形態に係る安全通路装置20は、折り畳み型であり、作業員が歩行可能な上面22は斜面22aと平面22bに分かれている。
図5に示されるように、第3の実施形態に係る安全通路装置20は、中央部材24と2つの側方部材25の合計3つの構成物品に別れており、中央部材24と側方部材25のそれぞれがヒンジ構造26を介して連結されている。このため、ヒンジ構造26を介して、側方部材25を折り畳むことが可能である。
【0026】
第3の実施形態においても第2の実施形態と同様に、中央部材24は、前述した嵌合溝21aを含む部材である。また、側方部材25は、前述した斜面22aを含む部材である。中央部材24と各側方部材25はヒンジ構造26を介して連結されている。ヒンジ構造26のヒンジ軸は、安全通路装置20の幅方向と平行な方向に延在する。また、第3の実施形態において、中央部材24の上面部分によって前述した平面22bが形成され、側方部材25の上面部分によって前述した斜面22aが形成されている。
【0027】
図6は、安全通路装置20の第4の実施形態を示している。第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例である。第4の実施形態では、安全通路装置20が2つの側方部材25に別れており、これらの側方部材25がヒンジ構造26を介して連結されている。このため、ヒンジ構造26を介して、安全通路装置20を二つ折りにすることが可能である。2つの側方部材25は、ほぼ対称構造となっている。このため、ヒンジ構造26は、安全通路装置20のほぼ中央に位置することとなる。また、安全通路装置20の嵌合溝21aは、ヒンジ構造26の直下に位置する。各側方部材25は、安全通路装置20の中央寄りの一部に構造体10の歩行面12と平行な平坦面を有しており、側方部材25を連結することで前述した平面22bが形成される。また、各側方部材25は、安全通路装置20の長手方向の前後両端部分がそれぞれ斜面22aとなっている。
【0028】
図7は、安全通路装置20の第5の実施形態を示している。第5の実施形態に係る安全通路装置20は、分離したり折り曲げたりすることのできない一体型であり、作業員が歩行可能な上面22は2つの斜面22aで構成されている。第5の実施形態に係る安全通路装置20は、上面22が2つの対称的な斜面22aのみからなり、平面22bが設けられていない点で第1の実施形態と異なる。すなわち、
図7に示されるように、安全通路装置20の上面22は、長手方向のほぼ中央に設けられた頂角部22cを頂点として、長手方向両端に向かって下るように2つの斜面22aが形成されている。2つの斜面22aのなす角(すなわち頂角部22cの角度)は、例えば130~170°とすればよい。また、安全通路装置20の下面21の嵌合溝21aは、頂角部22cのほぼ直下に位置することとなる。このように、上面に平坦な面を設けない構造とすることもできる。
【0029】
図8は、安全通路装置20の第6の実施形態を示している。第6の実施形態に係る安全通路装置20は、構成物品を分離可能な組み立て型であり、作業員が歩行可能な上面22は2つの斜面22aで構成されている。
図8に示されるように、第6の実施形態に係る安全通路装置20は、2つの側方部材25に別れており自在に着脱することができる。これらの2つの側方部材25を組み合わせることにより、前述した第5の実施形態に係る安全通路装置20とほぼ同じ構成となる。
【0030】
側方部材25は、それぞれ前述した斜面22aを含む部材である。2つの側方部材25は、それぞれ係合部25aを有しており、この係合部25aを係合させることで互いに連結する。係合部25aは、例えば2つの側方部材25の係合部25aの一方を下向きの爪状とし、他方を上向きの爪状として、互いに噛み合う構造とすればよい。係合部25aによって側方部材25同士を連結させることにより頂角部22cが形成される。この頂角部22cの直下には下面21の嵌合溝21aが位置する。
【0031】
図9は、安全通路装置20の第7の実施形態を示している。第7の実施形態に係る安全通路装置20は、折り畳み型であり、作業員が歩行可能な上面22は2つの斜面22aで構成されている。第7の実施形態では、安全通路装置20が2つの側方部材25に別れており、これらの側方部材25がヒンジ構造26を介して連結されている。このため、ヒンジ構造26を介して、安全通路装置20を二つ折りにすることが可能である。2つの側方部材25は、ほぼ対称構造となっている。このため、ヒンジ構造26は、安全通路装置20のほぼ中央に位置することとなる。安全通路装置20の上面22は、長手方向のほぼ中央に設けられた頂角部22cを頂点として、長手方向両端に向かって下るように2つの斜面22aが形成されている。また、安全通路装置20の嵌合溝21aは、ヒンジ構造26及び頂角部22cの直下に位置している。
【0032】
図10は、安全通路装置20の横ずれ防止手段の一例を示している。横ずれ防止手段は、前述したすべての実施形態に適用可能である。具体的に説明すると、角形鋼管などからなる鋼材11の歩行面12には、フランジ11bよりも高さの低いリブ14が立設されている。安全通路装置20の脚部23は、このリブ14に接触可能な位置に形成される。
図10に示した例では、2つの脚部23の内面側にリブ14が接触する。ただし、脚部23の外面側にリブ14を接触させるような設計に変更することもできる。安全通路装置20の脚部23がリブ14に当接することで、安全通路装置20の幅方向への位置ずれ(すなわち横ずれ)を防止することができる。また、
図10に示されるように、安全通路装置20の脚部23とリブ14の間に隙間が生じる場合、この脚部23に形成されたネジ穴にボルト30を差し込んで、このボルト30の先端をリブ14に当接させることとしてもよい。これにより、安全通路装置20の横ずれが抑制されるため、作業員が安全通路装置20上をより安全に歩行することができる。
【0033】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0034】
10…構造体 11…鋼材
11a…鋼管本体 11b…フランジ
11c…フランジプレート 11d…ウェブプレート
11e…エンドプレート 12…歩行面
13…継手部 20…安全通路装置
21…下面 21a…嵌合溝
22…上面 22a…斜面
22b…平面 22c…頂角部
23…脚部 24…中央部材
24a…係合部 25…側方部材
25a…係合部 26…ヒンジ構造
30…ボルト