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特許7287843自動車のバックドアダンパー取付部補強構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】自動車のバックドアダンパー取付部補強構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B60J5/10 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019114651
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000877
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】江藤 康郎
(72)【発明者】
【氏名】船越 健司
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-059727(JP,U)
【文献】特開2015-127171(JP,A)
【文献】特開2011-057188(JP,A)
【文献】米国特許第8899658(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のバックドアのダンパー取付け構造において、
断面形状として三辺により車両内方に隆起した形状を形成するインナーパネルと、
車両の外方に配設されたアウターパネルと、
車両内方側は前記インナーパネルとアウターパネルとに挟持され、車両内方側から車両外方に前記インナーパネルの前記三辺のうち車両内方側の二辺を斜交いに直結するように延設され、前記インナーパネルの第三辺に車両外方側が屈曲して当接するリインフォースメントと、
前記インナーパネルの第三辺とこれに当接するリインフォースメントとを連結部材で連結固定することにより、前記インナーパネル、リインフォースメント及びアウターパネルで構成された斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間を形成したことを特徴とする自動車のバックドアダンパー取付部補強構造。
【請求項2】
記アウターパネルは、車両外方に隆起した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の自動車のバックドアダンパー取付部補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のバックドアの剛性を向上する自動車のバックドアダンパー取付部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハッチバック式の自動車のバックドアは、例えば、図1の自動車の背面斜視図に示すように、車両1の車体後端部が上方向に開いて、荷物の出し入れが容易にできる構造を有しており、近年セダンタイプの自動車に代わって広く普及してきた。また、バックドアの開閉が自動化するに従い、バックドアを無理やり開閉するとバックドアの作動を補助するダンパー取付部に過剰な力が加わりバックドアが変形する虞があった。その対策として厚板のリインフォースメントをダンパー取付部分に設定し、補強を行ってきた。
【0003】
以下、従来のバックドアの補強対策の一例について、図面に基づき説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0004】
図8は、バックドア2の内装材を取り外した状態を車両後部右側面から車両後方(R)外方(OUT)に向かって見た一例を示す斜視図である。本図において、バックドア2は、その周縁部に、機械的強度を保持するための梁部3が形成されている。
【0005】
具体的には、梁部3は、バックドア2を形成するインナーパネル121の周縁部に沿って断面略コの字状または台形状に車両内方(IN方向)に隆起させて形成するとともに、その周縁端はアウターパネル120と折り曲げて接合し溶接することにより形成されている。なお、アウターパネル120は、バックドア2の外装を構成するパネルであり、全体的に見て緩やかな曲線状に外方(OUT方向)に張り出して形成されている。
【0006】
梁部3の断面は、図9において、図8に示すバックドア2のB-B方向矢視図に示すように、インナーパネル121とアウターパネル120の周縁端129が接着されて一定の閉鎖断面空間を形成している。すなわち、閉鎖断面空間は、インナーパネル121とアウターパネル120に囲まれた断面略台形状をしており、機械的強度を確保するためにさらに内部にリインフォースメント123、124を挿入し、車両外方をボルトナットなどの締結部材141により締付け固定し、車両内方は溶接により連結固定している。
また、梁部3の車両上方にはバックドアガラス4が嵌め込まれ、車両外方の側面にはバックドア2の開閉を支持するダンパー5が配設されている。
【0007】
すなわち、ダンパー5及びダンパー5の取付部分にバックドア2の開閉方向の大きな力が加わることの対策として厚板のリインフォースメント123、124をインナーパネル121側に設定することにより補強を行ってきた。
【0008】
ここで、ダンパー5の取付部分におけるインナーパネル121とアウターパネル120とを補強する構造については、下記特許文献1乃至2に開示されている技術がある。
【0009】
特許文献1には、樹脂製のリヤゲートインナを有するリヤゲートの補剛構造において、補剛体は、リヤゲートインナの窓用開口部の両側のピラーインナ部を通って車体上方向に伸長してリヤゲートの上縁方向に延在するように形成された樹脂製のインナ側部リブ、インナ側部リブの下端部に上端縁が当接されたダンパステーが取り付けられる金属製のダンパステーリンフォースを備え、剛性の低下を招くことなく軽量化を図ることができるリヤゲートの補剛構造が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、テールゲートは、窓開口部を形成する樹脂製の窓枠部を有し、窓枠部は、車内側に位置する底壁と、底壁の両端から延出する外側壁及び内側壁とを有し、テールゲートは、外側壁と内側壁との車外側端同士を接続して閉断面を有すると共に、ヒンジ機構に取り付けられるヒンジ補強部材を備える。ヒンジ補強部材は、外側壁に沿った外側壁補強部を有し、ヒンジ部材は、連結ボルト及びナットを介して、外側壁補強部及び外側壁にそれぞれ共締めされ、樹脂製のテールゲートに対して大きな荷重が付与された場合であっても、テールゲートの変形を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-024669号公報
【文献】特開2017-109586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1は、樹脂製のインナーパネルによって軽量化が図られたリヤゲートにおいて、ダンパステーが取り付けられる位置に金属製のダンパステーリンフォースを配して金属製の部材による補剛部分を減らす一方で、インナー側部を通るインナー側部リブが樹脂によって形成させることにより、樹脂製の部材による補剛部分を増大させ、剛性の低下を招くことなくリヤゲートの軽量化を図るものである。
【0013】
すなわち、従来と同程度の剛性を実現するとともに、リアゲートの軽量化を図ることを目的とするものであり、ダンパー及びダンパーの取付部分にバックドアの開閉方向の大きな力が加わることに対する強度の改善を図るものではない。
【0014】
また、特許文献2は、テールゲートの両側端部に金属製の補強部材を配設し、この補強部材と内側壁とで閉断面を形成することでテールゲートの変形を抑制する機能を実現するものであり、ダンパー及びダンパーの取付部分にバックドアの開閉方向の大きな力が加わることに対する強度の改善を図るものではない。
【0015】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、自動車のバックドアのダンパー取付け構造において、バックドアの開閉時や開状態において、ダンパー及びダンパーの取付部分に加わる大きな力に対して強度を向上するよう構成したバックドアダンパー取付部補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、自動車のバックドアのダンパー取付け構造において、断面形状として三辺により車両内方に隆起した形状を形成するインナーパネルと、車両の外方に配設されたアウターパネルと、車両内方側は前記インナーパネルとアウターパネルとに挟持され、車両内方側から車両外方に前記インナーパネルの前記三辺のうち車両内方側の二辺を斜交いに直結するように延設され、前記インナーパネルの第三辺に車両外方側が屈曲して当接するリインフォースメントと、前記インナーパネルの第三辺とこれに当接するリインフォースメントとを連結部材で連結固定することにより、前記インナーパネル、リインフォースメント及びアウターパネルで構成された斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間を形成したことを特徴とする。
【0017】
また、前記アウターパネルは、車両外方に隆起した形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、この発明は、自動車のバックドアのダンパー取付け構造において、インナーパネルとリインフォースメント及びアウターパネルとの間に一定の閉鎖断面空間を形成すると共に、リインフォースメントは、前記一定の閉鎖断面空間が斜交い構造を形成する方向に沿って延設するよう構成することにより、リインフォースメントの枚数を減らし、厚みを従来よりも薄くして軽量化を実現し、コスト低減を図ることができると共に、簡単な構造でダンパー取付部分の構造の剛性強度を向上することができる効果を奏する。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間は、断面略六角形としたことにより外力に対して変形しにくく、かつ、角の部分が鈍角であるため、荷物の出し入れの際に頭などが当たってもけがをするおそれが少なく安全を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】バックドアを取り付けた自動車又は本発明の実施形態における自動車の背面斜視図である。
図2】本発明の実施形態における自動車のバックドアを開状態にしたときの背面斜視図である。
図3】バックドアを構成するインナーパネルを車両後方から見た状態を示す図である。
図4】ダンパー取付部の周辺部分の拡大図である。
図5】バックドアの取付け構造を示す図である。
図6】本発明の実施形態における自動車のバックドアを開状態にしたときの後部側面図である。
図7図4に示すバックドアのA-A方向矢視の断面図である。
図8】従来の車両のバックドアの内装材を取り外した状態を、車両後部右側面から車両後方外方に向かって見た斜視図である。
図9図8に示すバックドアのB-B方向矢視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、自動車のバックドアのダンパー取付け構造において、インナーパネルとリインフォースメント部材及びアウターパネルとからなる斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間を形成することにより、剛性強度を向上したダンパー取付け構造を提供することを要旨としている。
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各部の配置や寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における自動車の背面斜視図である。本図に示すように、例えば、コンパクトカーやステーションワゴンあるいはミニバンなどと呼ばれているいわゆるワンボックスカーの後部には、縦横法に開閉可能なバックドア2が取り付けられている。
【0024】
図2は、本発明の実施形態における自動車のバックドア2を開状態にしたときの背面斜視図である。本図に示すように、いわゆるワンボックスカーのバックドア2は、車両後部上端を支点にして上方に大きな角度で広い面積のドアを開閉することができるため、後部からトランクに荷物の出し入れを容易にすることができ、また、トランクの容量を大きく確保することができるなどの利便性を有している。
【0025】
図3は、バックドア2を構成するインナーパネル21を車両前方から見た状態を示す図である。本図に示すように、バックドア2のインナーパネル21は、側面視で一部屈曲を有する略薄型方形状で、上半部分に略長方形の開口部28を有し、開口部28の下端周縁には梁部27が、車両幅方向に延設され、梁部27の両端は、前記バックドア2の外周に形成された梁部3と接合して、梁部3及び梁部27全体として略日の字状の梁部を形成している。
【0026】
バックドア2は、前記インナーパネル21と、自動車の外装を構成するアウターパネル20と、補強用のリインフォースメント23とを溶接などにより連結固定されて構成されている。すなわち、インナーパネル21、アウターパネル20及びリインフォースメント23は、例えば、自動車用冷間圧延鋼板や自動車用高張力鋼板をプレス加工して形成されており、バックドア2は、従来例の図8で説明したのと同様に、車両内方に配設されたインナーパネル21と、車両外方に配設されたアウターパネル20と、両者の間に挿入されたリインフォースメント23とを溶接などにより連結固定されてバックドア2の骨格を構成している。
【0027】
そして、バックドア2の上半部に形成された前記開口部28は、バックドアガラス4の形状に沿った形態に開口している。また、バックドアガラス4はこの開口部に嵌め込まれ、その周縁を接着剤などで固定している。
【0028】
また、バックドア2は、図2に示すように、その上端部の両端と車両後端上部のルーフ部分とがヒンジ6、6を介して上下に開閉自在に取り付けられており、いわゆる跳ね上げ式の車両用後部ドアを形成している。ヒンジ6、6は、開閉作動の支点として作用し、例えば、ステンレス鋼などで形成されており、ボルト61及びナット62を用いてバックドア2を車両後端上部に連結している。
【0029】
また、バックドア2に形成された上下方向の梁部3の外方側面には、図8に示す従来例と同様に、それぞれダンパー5、5が設けられている。
ダンパー5は、例えば、ピストンロッド5bとシリンダー5aとから構成され、シリンダー5aの内部にはオイルとガスが封入されており、バックドア2を開くとき又は閉じるときにピストンロッド5bが伸張又は収縮し、閉じるときは油圧で閉じる速度を緩衝するとともに、開くときはガスの膨張と油圧により付勢して跳ね上げ作動を行うものである。
【0030】
ダンパー5、5の連結は、具体的には、図2に示すように、本図から見て右側のダンパー5は、シリンダー5a側が右側のリアピラー9の車両内方の上部にダンパー取付具56により連結されている。また、ピストンロッド5b側はバックドア2の開口部28下端周縁の梁部3の右側面に図示しないダンパー取付具52により連結されている。
【0031】
同様に、左側のダンパー5は、シリンダー5a側が左側のリアピラー9の車両内方の上部にダンパー取付具56により連結されている。また、ピストンロッド5b側はバックドア2の開口部28下端周縁の梁部3の左側面にダンパー取付具52により連結されている。なお、ダンパー5、5の取付構造の詳細については後述する。
【0032】
また、図1に示すように、車体後端部の車両幅方向の両端部に、バックドア2から車体後端部へ延出する形状のドア用リアランプ11、11及び車両用リアランプ12、12が取り付けられている。すなわち、バックドア2には当該ドア用リアランプ11、11が取り付けられ、車体後端部の両端部からリアフェンダーパネル7に延出して車両用リアランプ12、12が取り付けられている。そして、バックドア2を閉じたときに、ドア用リアランプ11と車両用リアランプ12が連なりあって、両方のランプで一のリアランプを構成する。
【0033】
ドア用リアランプ11及び車両用リアランプ12は、例えば、赤色のテールランプやブレーキランプ、白色のバックランプ(後進ランプ)及び黄色のターンシグナルランプなどで構成されている。そして、これらのドア用リアランプ11と車両用リアランプ12が点灯又は点滅することにより車両の運行を円滑に行うことができるよう構成されている。
【0034】
次に、バックドア2に設けたダンパー5の取付構造について説明する。図4は、図3におけるインナーパネル21にリインフォースメント23などを取り付けたときのダンパー取付部50の周辺部分の拡大図である。なお、図中のランプ交換作業用孔25は、車両内方からランプを交換するために設けられている孔である。
【0035】
図4において、ダンパー取付部50、50は、バックドア2に設けられた開口部28下端の車両幅方向に形成された梁部27と梁部3との接合個所の左右両端にそれぞれ配設され、締結部材41によりインナーパネル21の背面に挿入されたリインフォースメント23と共締めされて梁部3の車両外方の側面に形成されている。
【0036】
左右のダンパー取付部50、50には、図4に示すように、それぞれにダンパー5、5を取り付けるためのダンパー取付金具51、51が埋め込まれている。ダンパー取付金具51、51には、図5に示すように、それぞれダンパー取付具52が2個所の孔を用いてダンパー取付ネジ53、53により固定されている。そして、ダンパー5のピストンロッド5b側は、ダンパー取付具52のロッド固定部52aに嵌入固定されている。
【0037】
また、ダンパー5のシリンダー5a側には、図2に示すように、左右のリアピラー9、9の後端上部にダンパー取付部54、54が形成されている。そして、左右のダンパー取付部54、54には、前記ダンパー取付部50、50と同様に、図示しないダンパー取付金具が埋め込まれ、図5に示すように、これにダンパー取付具56が、ダンパー取付ネジ57、57により固定されている。そして、ダンパー5のシリンダー5a側は、ダンパー取付具56の突起部56aと回動自在に係合している。
【0038】
以上のようにしてダンパー5、5によりバックドア2とリアピラー9、9間を連結することにより、バックドア2は、前記ヒンジ6、6を支点にして、先述のように跳ね上げ作動を行い、上下に開閉作動することができる。
【0039】
次に、バックドア2の開閉を力一杯に行う行為や、バックドア2に人がぶら下がるなどの行為をされたときに、ダンパー5、5及びダンパーの取付部分に対して加わる力について説明する。
【0040】
図6は、本発明の実施形態における自動車のバックドア2を開状態にしたときの後部側面図である。本図の後部側面図に示すように、バックドア2の先端部(力点とする)に下向きの力fが加わったときに、力fの向きとダンパー5とのなす角の余弦成分の力をf1とし、正弦成分の力をf2とする。
【0041】
仮に、力f1の全てがダンパー取付部50、50に加えられるとすれば、力f1は、それぞれの左右のダンパー5、5に分散されて、一のダンパー5には例えば力f3が加わる。この力f3は、ダンパー取付具56、56を押し付ける方向に働く力であるため、これに対してダンパー取付部54、54には、反力f3が発生する。したがって、ダンパー取付部50、50、54、54は、この押し付ける力及び反力f3に対して、変形等を生じないような機械的強度を保持する必要がある。
【0042】
また、バックドア2のダンパー取付部50、50には、力fの向きとダンパー5とのなす角の正弦成分の力f2が、ヒンジ6、6及びバックドア2のダンパー取付部50、50、54、54などに加わる。仮に、力f2の全てがダンパー取付部50、50に加えられるとすれば、力f2は、それぞれの左右のダンパー5、5に分散されて、一のダンパー5には力f4が加わる。この力はバックドア2の開閉方向に働く引っ張り力となり、また、力のモーメントNによる力が発生し捩じり力として働く。
【0043】
力のモーメントNは、ダンパー取付部54、54の表面と、前記作用点との力f1方向の距離をrとすると、N=r×f2で表される。この力のモーメントNにより作用点において発生する力は、力点と支点と作用点との距離の関係で決まるため、仮に、ヒンジ6、6を支点とすると、支点と各作用点となるダンパー取付部50、50、54、54などとの距離の方が、支点と力点の距離よりも短いため、梃子の原理にしたがって力f2よりもはるかに大きな力が、各作用点となるダンパー取付部50、50、54、54などに対して加えられる。
【0044】
したがって、このような大きな力が加えられても、各構成部分が変形などを生じないような機械的強度を保持する必要がある。実際の力の加わり方はもっと複雑で、バックドア2のダンパー取付部50、50、54、54をはじめとして、これ以外の各構成部分にもそれぞれの力が加えられる。
【0045】
次に、以上説明した力に耐えるためのバックドア2のダンパー取付部50、50の補強構造について、さらに詳しく説明する。図7は、図4に示すバックドア2のA-A方向矢視、すなわちバックドア2の上方から見た断面図である。
【0046】
本図において、アウターパネル20は、周縁端29から車両内方(図7の右方)に向かって延設されると直ぐに車両後方に屈曲した後さらに車両内方に屈曲して延設され、次に車両前方に屈曲した後さらに車両内方に屈曲して延設し、断面略コの字状または台形状に形成されている。また、アウターパネル20は、周縁端29において、インナーパネル21を包み込むように折り曲げ重ねられて溶接によりインナーパネル21と連結固定されている。
【0047】
インナーパネル21は、周縁端29から車両内方に向かって延設されると直ぐに車両前方に屈曲した後さらに車両内方に屈曲して延設され、次に車両後方に屈曲した後さらに車両内方に屈曲して延設し、前記アウターパネル20とは逆のコの字状に形成されている。
このように形成されているため、前記アウターパネル20と対向して合わせることで、断面略六角形の閉鎖断面空間を形成することができる。
【0048】
リインフォースメント23は、図7に示すように、車両内方において前記アウターパネル20とインナーパネル21とに挟持され、溶接などにより連結固定されている。また、リインフォースメント23は、前記連結固定個所から車両外方に延設されて前記インナーパネル21に形成された断面略コの字状の二辺を斜交いに直結し、前記断面略コの字状の第三辺にその車両外方側が略逆L字状に屈曲して当接している。
【0049】
前記インナーパネル21とリインフォースメント23との当接面には、その略中央に両者を連通する貫通孔42が貫設されている。そして、前記インナーパネル21の第三辺と、これに当接するリインフォースメント23の略逆L字状の屈曲面とは、前記貫通孔42を用いてボルトナットなどの締結部材41により共締めされて連結固定されている。
【0050】
これにより、インナーパネル21には、その周縁に沿って車両前方に断面略コの字状の隆起が形成され、アウターパネル20には、その周縁に沿って車両後方にインナーパネル21とは逆向きの断面略コの字状の隆起が形成される。そして、両者を溶接及び締結部材41により共締めすることによって、前記インナーパネル、リインフォースメント及びアウターパネルとで構成された全体として断面略六角形で、しかも内部に斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間を形成することができる。
【0051】
また、締結部材41により共締めされたインナーパネル21とリインフォースメント23との前記当接面には、図4に示すように、ダンパー5、5を取り付けるためのダンパー取付金具51、51が埋め込まれる。これによりダンパー取付部50、50が形成される。
【0052】
すなわち、本発明に係る自動車のバックドアダンパー取付部補強構造は、前記インナーパネル21、リインフォースメント23及びアウターパネル20とで構成された斜交い構造を有する一定の閉鎖断面空間を形成し、さらに前記閉鎖断面空間において、前記インナーパネル21とリインフォースメント23が当接して重ね合わさった個所を締結部材41及びダンパー取付金具51で連結固定し、その連結固定された面をダンパー取付部50、50とすることにより強度を確保するよう構成したものである。
【0053】
本発明の実施例は、図7の断面図に示すように、断面略六角形とし、さらに内部にリインフォースメント23を斜交いに延設した構造としているため、あらゆる方向の力が加えられてもこれに耐えうる強度を有する。したがって、このような構造を実現することにより、ダンパー取付部50、50に加えられる前記力f1、f2により発生する引っ張り力や押し付け力や捩じり力などに対して、バックドア2の変形を防止することができる。
【0054】
以上のように、バックドア2に加えられた外力を断面略六角形の構造及びリインフォースメントを内部に延設した斜交い構造で支えることができるため、外力が加えられても変形しにくく、バックドア2のダンパー5、5の取付部分の構造の剛性強度を向上し、過負荷による変形を抑止する自動車のバックドアダンパー取付部補強構造を提供することができる効果を奏する。
【0055】
また、以上の説明では、インナーパネル21とアウターパネル20から形成される一定の閉鎖断面空間は、断面略六角形であるとして説明をしたが、断面略六角形に限定されるものではなく、内部に配設したリインフォースメント23を斜交いに延設することができるものであれば、断面が略台形状や略方形状、略五角形または略七角形などの多角形であっても差し支えない。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0057】
1 車体
2 バックドア
3、27 梁部
4 バックドアガラス
5 ダンパー
5a シリンダー
5b ピストンロッド
6 ヒンジ
7 リアフェンダーパネル
9 リアピラー
20 アウターパネル
21 インナーパネル
23 リインフォースメント
25 ランプ交換作業用孔
28 開口部
41 締結部材
50、54 ダンパー取付部
51 ダンパー取付金具
52、56 ダンパー取付具
53、57 ダンパー取付ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9