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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ホームドア装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019123658
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008228
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509335144
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクシア
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】堤 裕正
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋部に対して扉が移動するホームドア装置であって、
前記戸袋部又は前記扉に設けられ、前記扉の移動方向に延出するレールと、
前記レールを移動可能に保持する転動体を有する保持構造体と、を備え、
前記保持構造体は、前記扉の移動方向と直交する方向である前記扉の厚み方向に延出する軸を中心に前記転動体を回転させる回転軸と、
前記回転軸に案内されて前記扉の厚み方向に前記転動体を移動可能なスライド機構と、を備え
前記スライド機構は、前記回転軸が収容される収容部が設けられる第1固定部と、
前記回転軸を回転するとともに、前記転動体に固定される第2固定部と、を備え、
前記第2固定部の幅は、前記収容部の幅よりも小さく、
前記第2固定部が前記回転軸に案内されて前記収容部内を前記扉の厚み方向に移動可能であ
ホームドア装置。
【請求項2】
戸袋部に対して扉が移動するホームドア装置であって、
前記戸袋部又は前記扉に設けられ、前記扉の移動方向に延出するレールと、
前記レールを移動可能に保持する転動体を有する保持構造体と、を備え、
前記保持構造体は、前記扉の移動方向と直交する方向である前記扉の厚み方向に延出する軸を中心に前記転動体を回転させる回転軸と、
前記回転軸に案内されて前記扉の厚み方向に前記転動体を移動可能なスライド機構と、を備え
前記スライド機構は、前記回転軸を回転する第1固定部と、
前記回転軸が固定される一対の取付部が設けられるとともに、前記転動体に固定される第2固定部と、を備え、
前記第1固定部の前記回転軸に取り付けられる縮小部の幅は、前記一対の取付部の間の幅よりも小さく、
前記第1固定部が前記回転軸に案内されて前記取付部の間を前記扉の厚み方向に移動可能であ
ホームドア装置。
【請求項3】
前記保持構造体は、前記保持構造体を固定するボルトを備え、
前記ボルトを挿通させる挿通孔が前記第1固定部に設けられ、
記挿通孔の内径は、前記ボルトの外径よりも大きく、
前記ボルトの頭部と前記第1固定部との間に隙間設けられ、
前記第1固定部は、前記ボルトに対して鉛直方向に前記隙間だけ移動可能であるとともに、前記ボルトに対して傾くことが可能であ
請求項1又は2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記レールは、鉛直方向において並んで複数備えられ、
前記保持構造体は、前記複数のレールのそれぞれに設置される
請求項1~のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラットホームに設置されて、プラットホームと線路等の軌道とを区画するホームドア装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ホームドア装置は、プラットホームに沿って延出し、扉がプラットホームの延出方向に移動することで、プラットホームと軌道との区画を開閉する。
【0003】
特許文献1のホームドア装置は、扉が戸袋部に対して移動するためのレールが扉又は戸袋に設置され、このレールを保持するガイドブロックが設置されている。ガイドブロックにはベアリング等の転動体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-105547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなホームドア装置では、転動体に局所的な荷重が掛かることを避けるためにはレールが歪まないようにする必要があり、歪まないためにレールの強度を高める必要がある。その結果、レールの重量が増加することとなる。そこで、レールの強度を高めることなく、レールに歪みがあったとしても、扉がスムーズに移動することが望まれている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レールに歪みがあったとしても、扉がスムーズに移動することのできるホームドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するホームドア装置は、戸袋部に対して扉が移動するホームドア装置であって、前記戸袋部又は前記扉に設けられ、前記扉の移動方向に延出するレールと、前記レールを移動可能に保持する転動体を有する保持構造体を備え、前記保持構造体は、前記扉の移動方向と直交する方向である前記扉の厚み方向に前記転動体を移動可能なスライド機構を備える。
【0008】
上記構成によれば、保持構造体のスライド機構によって、扉の厚み方向に移動することができるので扉の厚み方向のレールの歪みを吸収することができる。このため、保持構造体の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉をスムーズに移動させることができる。
【0009】
上記ホームドア装置について、前記保持構造体は、前記扉の厚み方向に延出する軸を中心に前記転動体を回転させる回転部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、保持構造体の回転部によって、扉の厚み方向を軸として回転することができるのでレールの上下方向の歪みを吸収することができる。このため、保持構造体の転動体に局所的な荷重が掛かることを更に抑制することができ、扉をスムーズに移動させることができる。
【0010】
上記ホームドア装置について、前記回転部は、回転軸を備え、前記スライド機構は、前記回転軸に案内されて前記扉の厚み方向に移動する移動部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、スライド機構を扉の厚み方向に移動させるための部材を回転軸が兼ねるため、部品点数を低減することができる。
【0011】
上記ホームドア装置について、前記保持構造体は、前記保持構造体を固定するボルトと、前記ボルトが挿通される固定部と、を備え、前記固定部に設けられ、前記ボルトを挿通させる挿通孔の内径は、前記ボルトの外径よりも大きく、前記ボルトの頭部と前記固定部との間に隙間を設けることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、ボルトの頭部と固定部との間に隙間を設けることで、保持構造体が扉の移動方向及び扉の厚み方向の少なくとも一方に傾くことができるのでレールの歪みを吸収することができる。
【0013】
上記ホームドア装置について、前記レールは、鉛直方向において並んで複数備えられ、前記保持構造体は、前記複数のレールのそれぞれに設置されることが好ましい。
上記構成によれば、複数のレールを設置したときには扉のたわみによって扉の厚み方向の歪みがレールに発生するため、保持構造体によって扉の厚み方向の歪みを吸収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レールに歪みがあったとしても、扉がスムーズに移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ホームドア装置の第1の実施形態の構成を示す正面図。
図2】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の構成を示す拡大正面図。
図3】(a)は同実施形態のホームドア装置の保持構造体の構成を示す拡大側面図、(b)は同実施形態のホームドア装置の保持構造体の図2の3-3断面図。
図4】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の動作を示す拡大正面図。
図5】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の動作を示す拡大断面図。
図6】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の動作を示す拡大正面図。
図7】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の動作を示す拡大側面図。
図8】ホームドア装置の第2の実施形態の保持構造体の構成を示す拡大正面図。
図9】同実施形態のホームドア装置の保持構造体の図8の9-9断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図1図7を参照して、ホームドア装置の第1の実施形態について説明する。このホームドア装置は、鉄道等のプラットホームに設置される。
【0017】
<ホームドア装置10>
図1に示すように、ホームドア装置10は、略矩形状の戸袋部11を備えている。戸袋部11は、プラットホーム1に固定されている。戸袋部11は、戸袋部11から図中左側へ進出する扉12を移動可能に支持しているとともに、扉12を駆動する駆動装置が収納されている。
【0018】
ホームドア装置10は、プラットホーム1の軌道側の縁部に沿って設置される。ホームドア装置10は、プラットホーム1を軌道側とプラットホーム1側とに区画する。なお、図示しないが、ホームドア装置10は、プラットホーム1に複数設置され、ホームドア装置10の扉12によって乗降通路が開閉される。
【0019】
ホームドア装置10の扉12には、扉12の移動方向に延出するレール13が鉛直方向において並んで2本設置されている。ホームドア装置10の戸袋部11には、各レール13を移動可能に保持する保持構造体20が1本のレール13に対して2個ずつ設置されている。すなわち、4個の保持構造体20によって扉12が保持されている。保持構造体20は、レール13に対して鉛直方向下方に位置し、レール13を下から保持している。
【0020】
<保持構造体20>
次に、図2及び図3(a)、図3(b)を参照して、保持構造体20の構成について説明する。
【0021】
保持構造体20は、戸袋部11に設けられる固定板21に取り付けられる。固定板21は、長方形であって、各保持構造体20に対して設けられてもよいし、同じレール13に設けられる2個の保持構造体20を取り付けられる大きさであってもよい。保持構造体20は、固定板21に固定される第1固定部22と、第1固定部22に取り付けられる第2固定部23と、第2固定部23に固定されるガイドブロック24とを備えている。
【0022】
第1固定部22は、直方体のブロックであって、4本のボルト25によって固定板21に螺子止めされている。第1固定部22には、ボルト25を挿通する挿通孔22Aが形成されている。挿通孔22Aの内径D1は、ボルト25の螺子部25Aの外径D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。また、ボルト25は、第1固定部22を固定板21に完全に締め付けていない。すなわち、ボルト25の頭部25Bの下面と第1固定部22の上面との間には隙間Gが設けられている。このため、第1固定部22は、固定板21に対して鉛直方向Zに隙間Gだけ移動することが可能である。また、第1固定部22は、挿通孔22Aの内径D1とボルト25の螺子部25Aの外径D2との隙間があるため、ボルト25に対して傾くことが可能である。
【0023】
扉12の移動方向Xにおける第1固定部22の中央には、扉12の移動方向Xと直交する扉12の厚み方向Yに延出する回転軸22Bが固定されている。第1固定部22には、収容部22Cが設けられている。収容部22Cは、鉛直上方に開口し、回転軸22Bが固定されている。回転軸22Bには、第2固定部23が取り付けられる。扉12の厚み方向Yに案内される。
【0024】
ガイドブロック24は、レール13を移動可能に保持する転動体(図示略)を有している。すなわち、ガイドブロック24の転動体がレール13に接触している。このため、レール13に歪みが発生したときに、レール13にガイドブロック24(転動体)が追従することができないと、転動体に局所的な負荷がかかるおそれがある。
【0025】
第2固定部23は、直方体が2段重なった形状であって、下部が扉12の移動方向X及び厚み方向Yのいずれにも縮小した形状である。第2固定部23は、下部取付部23Aと上部取付部23Bとからなる。下部取付部23Aは、第1固定部22の収容部22Cに挿入されて、回転軸22Bが挿通されて第2固定部23に取り付けられる。第2固定部23は、扉12の厚み方向に延出する回転軸22Bを中心に転動体を回転させる回転部に相当する。ここで、第2固定部23は回転軸22Bを中心に回転した際に、第2固定部23の上部取付部23Bの下面の角部が第1固定部22の上面に当接することで、第2固定部23の過度な回転が規制されている。このため、第2固定部23の上部取付部23Bの下面の角部の位置や第1固定部22の上面の高さを変更することで、第2固定部23を所望の回転範囲に設定することが可能である。
【0026】
扉12の厚み方向Yにおいて、第2固定部23の幅W1は、収容部22Cの幅W2よりも小さく設定されている(W1<W2)。第2固定部23は、回転軸22Bに対して摺動可能に取り付けられている。すなわち、第2固定部23は、回転軸22Bに案内されて扉12の厚み方向に移動することができる。第2固定部23は、回転軸22Bに案内されて扉12の厚み方向に移動する移動部に相当する。上部取付部23Bの上部には、ガイドブロック24が固定されている。よって、第1固定部22の回転軸22Bと第2固定部23の下部取付部23Aとによってスライド機構30が構成されている。
【0027】
次に、図4図7を参照して、上記のように構成されたホームドア装置10の動作について説明する。
まず、図4を参照して、レール13が鉛直方向Zにおいて歪んだときの動作について説明する。図4では、レール13の図中左側が下がり、レール13の図中右側が上がった状態にレール13が歪んでいる。
【0028】
このように鉛直方向Zにおいてレール13に歪みがあると、ガイドブロック24がレール13の歪みに追従するため、第2固定部23もガイドブロック24とともにレール13に追従する。すなわち、第2固定部23が回転軸22Bを回転中心として図中反時計回りに回転することで、ガイドブロック24及び第2固定部23が一体となって、レール13の鉛直方向Zにおける歪みに合わせて追従する。よって、レール13が鉛直方向Zにおいて歪んだとしても、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0029】
次に、図5を参照して、レール13が扉12の厚み方向Yにおいて歪んだときの動作について説明する。図5では、レール13が図中左側に変位した状態にレール13が歪んでいる。
【0030】
このように扉12の厚み方向Yにおいてレール13に歪みがあると、ガイドブロック24がレール13の歪みに追従するため、第2固定部23もガイドブロック24とともにレール13に追従する。すなわち、第2固定部23が回転軸22Bに案内されて図中左側へ移動することで、ガイドブロック24及び第2固定部23が一体となって、レール13の扉12の厚み方向Yにおける歪みに合わせて追従する。つまり、扉12の厚み方向Yにおいては、保持構造体20の第2固定部23が水平を維持したままレール13の歪みに対応することができるため、傾いて対応する必要がなく、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができる。よって、レール13が扉12の厚み方向Yにおいて歪んだとしても、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0031】
次に、図6を参照して、レール13が鉛直方向Zにおいて撓んだときの動作について説明する。図6では、レール13の全体が図中上側へ上がった状態にレール13が撓んでいる。
【0032】
このように鉛直方向Zにおいてレール13が撓んでいると、ガイドブロック24がレール13の撓みに追従するため、第1固定部22及び第2固定部23もガイドブロック24とともにレール13に追従する。すなわち、第1固定部22がボルト25に沿って図中上側へ移動することで、ガイドブロック24及び第2固定部23及び第1固定部22が一体となって、レール13の鉛直方向Zにおける撓みに合わせて追従する。よって、レール13が鉛直方向Zにおいて撓んだとしても、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0033】
次に、図7を参照して、レール13が鉛直方向Z及び扉12の厚み方向Yにおいて歪んだときの動作について説明する。図7では、レール13が図中左側に変位するとともに、図中下側に変位した状態にレール13が歪んでいる。
【0034】
このように鉛直方向Z及び扉12の厚み方向Yにおいてレール13に歪みがあると、ガイドブロック24がレール13の歪みに追従するため、第1固定部22及び第2固定部23もガイドブロック24とともにレール13に追従する。すなわち、第1固定部22がボルト25と挿通孔22Aとの隙間によって図中左側へ傾くことで、ガイドブロック24及び第2固定部23及び第1固定部22が一体となって、レール13の鉛直方向Z及び扉12の厚み方向Yにおける歪みに合わせて追従する。つまり、レール13が水平を維持することができず傾いた状態、言い換えれば捩れた状態になったときには、第1固定部22が傾くことで対応することができる。よって、レール13が鉛直方向Z及び扉12の厚み方向Yにおいて撓んだとしても、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)保持構造体20のスライド機構30によって、扉12の厚み方向Yに移動することができるので扉12の厚み方向Yのレール13の歪みを吸収することができる。このため、保持構造体20の転動体に局所的な荷重が掛かることを抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0036】
(2)保持構造体20の第2固定部23が扉12の厚み方向Yを軸として回転することができるのでレール13の上下方向の歪みを吸収することができる。このため、保持構造体20の転動体に局所的な荷重が掛かることを更に抑制することができ、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0037】
(3)スライド機構30を扉12の厚み方向Yに移動させるための部材を回転軸22Bが兼ねるため、部品点数を低減することができる。
(4)ボルト25の頭部25Bと第1固定部22との保持構造体20を固定する部分に隙間Gを設けることで、保持構造体20が扉12の移動方向X及び扉12の厚み方向Yに傾くことができるのでレール13の歪みを吸収することができる。
【0038】
(5)複数のレール13を設置したときには扉12の撓みによって扉12の厚み方向Yの歪みがレール13に発生するため、保持構造体20によって扉12の厚み方向Yの歪みを吸収することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
以下、図8及び図9を参照して、ホームドア装置の第2の実施形態について説明する。この実施形態のホームドア装置は、スライド機構の構成が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
<保持構造体20>
図8及び図9に示すように、保持構造体20は、固定板21に固定される第1固定部122と、第1固定部122に取り付けられる第2固定部123と、第2固定部123に固定されるガイドブロック24とを備えている。
【0041】
第1固定部122は、直方体状のブロックであって、4本のボルト25によって固定板21に螺子止めされている。第1固定部122には、ボルト25を挿通する挿通孔122Aが形成されている。挿通孔122Aの内径D1は、ボルト25の螺子部25Aの外径D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。また、ボルト25は、第1固定部122を固定板21に完全に締め付けていない。すなわち、ボルト25の頭部25Bの下面と第1固定部122の上面との間には隙間Gが設けられている。このため、第1固定部122は、固定板21に対して鉛直方向Zに隙間Gだけ移動することが可能である。また、第1固定部122は、挿通孔122Aの内径D1とボルト25の螺子部の外径D2との隙間があるため、ボルト25に対して傾くことが可能である。
【0042】
扉12の移動方向Xにおける第1固定部122の中央には、第2固定部123を取り付ける扉12の厚み方向Yに縮小した縮小部122Bが形成されている。
第2固定部123は、直方体から一対の腕が下方へ延出した形状である。第2固定部123は、下部取付部123Aと上部取付部123Bとからなる。下部取付部123Aには、回転軸123Cが固定されている。回転軸123Cには、第1固定部122が取り付けられる。下部取付部123Aは、第1固定部122の縮小部122Bを挟むように装着されて、回転軸123Cが挿通されることで、第1固定部122に取り付けられる。第2固定部123は、扉12の厚み方向に延出する回転軸123Cを中心に転動体を回転させる回転部に相当する。ここで、第2固定部123は回転軸123Cを中心に回転した際に、第2固定部123の上部取付部123Bの下面の角部が第1固定部122の上面に当接することで、第2固定部123の過度な回転が規制されている。このため、第2固定部123の上部取付部123Bの下面の角部の位置や第1固定部122の上面の高さを変更することで、第2固定部123を所望の回転範囲に設定することが可能である。
【0043】
扉12の厚み方向Yにおいて、第1固定部122の縮小部122Bの幅W3は、第2固定部123の上部取付部123Bの間の幅W4よりも小さく設定されている(W3<W4)。第1固定部122は、回転軸123Cに対して摺動可能に取り付けられている。すなわち、第2固定部123は、第1固定部122が回転軸123Cに案内されることで扉12の厚み方向に移動することができる。第2固定部123は、回転軸123Cに案内されて扉12の厚み方向に移動する移動部に相当する。よって、第1固定部122の縮小部122Bと第2固定部123の回転軸123Cとによってスライド機構130が構成されている。
【0044】
次に、上記のように構成されたホームドア装置10の動作について説明する。なお、鉛直方向Zにおける歪み以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
レール13が鉛直方向Zにおいて歪んだときには、ガイドブロック24がレール13の歪みに追従するため、第2固定部123もガイドブロック24とともにレール13に追従する。すなわち、第2固定部123が回転軸123Cを回転中心として回転することで、ガイドブロック24及び第2固定部123が一体となって、レール13の鉛直方向Zにおける歪みに合わせて追従する。よって、レール13が鉛直方向Zにおいて歪んだとしても、ガイドブロック24の転動体に局所的な荷重が掛かることがなく、扉12をスムーズに移動させることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)~(5)の効果を奏することができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0046】
・上記各実施形態では、保持構造体20がレール13を鉛直下方から保持したが、保持構造体20がレール13を鉛直上方から保持してもよい。
・上記各実施形態では、1本のレール13に2個の保持構造体20を設置したが、1本のレール13に1個の保持構造体20を設置してもよい。
【0047】
・上記各実施形態では、扉12に2本のレール13を設置したが、扉12を保持することができれば、扉12に1本のレール13を設置してもよい。
・上記各実施形態では、扉12にレール13を設け、戸袋部11に保持構造体20を設けたが、戸袋部11にレールを設け、扉12にこのレールを保持する保持構造体を設けてもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、スライド機構30,130を回転軸22B,123Cに案内される機構を採用したが、扉12の厚み方向Yに延出する凸条部と溝部との組み合わせからなるスライド機構等の他のスライド機構を採用してもよい。
【0049】
・上記各実施形態では、ボルト25の螺子部25Aの外径D2と挿通孔22A,122Aの内径D1との間に隙間を設けたが、ボルト25の螺子部25Aの外径D2と挿通孔22A,122Aの内径D1とを同径としてもよい(D2≒D1)。このようにすれば、ボルト25の頭部25Bと第1固定部22,122の上面との間の隙間Gがあったとしても、レール13が鉛直方向Zに歪んだときに第1固定部22,122が傾くことがなくなる。また、第1固定部22,122はボルト25に対してボルト25に沿って鉛直方向Zにのみ移動することができる。なお、鉛直方向Zにおけるレール13の歪みがあったとしても、回転軸22B,123Cによって、第2固定部23,123が回転することでレール13の歪みに追従することができる。
【0050】
・上記各実施形態では、ボルト25の頭部25Bと第1固定部22,122の上面との間の隙間Gを設けたが、レール13の鉛直方向Zにおける撓みが少なければ、ボルト25の頭部25Bと第1固定部22,122の上面との間の隙間Gをなくしてもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、第2固定部23,123が第1固定部22,122に対して回転したが、レール13の鉛直方向Zにおいて歪みが少なければ、第2固定部23,123が第1固定部22,122に対して回転しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…プラットホーム、10…ホームドア装置、11…戸袋部、12…扉、13…レール、20…保持構造体、21…固定板、22…第1固定部、22A…挿通孔、22B…回転軸、22C…収容部、23…第2固定部、23A…下部取付部、23B…上部取付部、24…ガイドブロック、25…ボルト、25A…螺子部、25B…頭部、30…スライド機構、122…第1固定部、122A…挿通孔、122B…縮小部、123…第2固定部、123A…下部取付部、123B…上部取付部、123C…回転軸、130…スライド機構、D1…挿通孔の内径、D2…ボルトの螺子部の外径、G…隙間、W1,W2,W3,W4…幅、X…扉の移動方向、Y…扉の厚み方向、Z…鉛直方向。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9