(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル免疫グロブリンの誘導性細胞外膜捕捉のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20230530BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20230530BHJP
C12N 5/24 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230530BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230530BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230530BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C12Q1/04 ZNA
C12N5/10
C12N5/12
C12N5/24
C12N15/10 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
G01N33/48 M
G01N33/53 Y
G01N33/536 A
(21)【出願番号】P 2020501430
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 US2018024073
(87)【国際公開番号】W WO2018175917
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-124062
(73)【特許権者】
【識別番号】519344682
【氏名又は名称】ランケナウ・インスティテュート・フォー・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダッサン,スコット・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ピュリゲダ,ラマ・デヴドゥ
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536345(JP,A)
【文献】特表2004-520037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0377887(US,A1)
【文献】特開2016-163574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
C07K
C12M
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリドーマ細胞の不均一な集団の中のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を同定する方法であって、
(a)アンカーをその形質膜外側表面上に発現した不死化細胞をB細胞の細胞系譜の細胞と融合させることによって調製された、ハイブリドーマ細胞の不均一な集団を提供する工程であって、前記アンカーは、i)選択されたリンカーに結合して第1の複合体を形成することができる抗体又はその断片を含む細胞外領域、及びii)アンカーを細胞表面に固定する膜貫通アミノ酸配列、を含み、前記アンカーは、前記モノクローナル抗体に結合できない、工程と、
(b)(a)の細胞を十分な量の前記リンカーと接触する工程であって、前記リンカーは、前記モノクローナル抗体の保存ドメインと結合して第2の複合体を形成する可変領域を含む可溶性の抗体又は抗体断片であり、前記接触は、前記第1及び第2の複合体を形成すると前記モノクローナル抗体がそれを分泌するハイブリドーマ細胞の表面に結合することを可能にする、工程と、
(c)前記ハイブリドーマ細胞によって分泌され且つアンカー-リンカー-モノクローナル抗体によって形成される前記第1の及び第2の免疫複合体によってそれに結合する、前記モノクローナル抗体の、存在、抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性を同定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
(b)は、前記細胞を過剰濃度の前記リンカーと接触させることを更に含み、前記過剰は、過剰な非結合リンカーを結合することによって、前記モノクローナル抗体とこれを分泌しない他の細胞との結合に比べて、ハイブリドーマの細胞表面上の第1の複合体のリンカーとそのハイブリドーマ細胞によって分泌されるモノクローナル抗体との間の結合の特異性を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の複合体において前記モノクローナル抗体が特異的に結合する、検出可能に標識された抗原に前記ハイブリドーマ細胞を接触させることと、第1の複合体アンカー-リンカーによって形成される多成分複合体に結合する細胞を形成することとを更に含み、前記リンカーは、前記抗原に結合された前記分泌されたモノクローナル抗体にも結合し、そして及び工程(c)は、前記細胞結合多成分複合体に会合する前記検出可能な標識を同定又は
定量することによって、選択された抗原に特異的なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を同定することを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体はヒト抗体であり、前記アンカー分子は選択された非ヒト由来リンカーに特異的なscFvを含み、前記リンカーは抗ヒトIg抗体又は抗ヒトIg抗体の抗体結合断片である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抗体又は抗体断片を含む選択された可溶性のリンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現するハイブリドーマ細胞であって、前記リンカーは、前記アンカーによって認識されない前記モノクローナル抗体と第2の複合体を形成するために設計されている、細胞であって、
前記アンカーが、
i.前記リンカー上の配列に特異的に結合する単鎖抗体可変領域(scFv)、各々が前記リンカー上の配列に結合するために設計されている2~6個のscFvから形成されるタンデムscFv、細胞表面上で発現されるときに1個又は2個の遊離Fv領域を有するFabであって前記リンカー上の配列に特異的に結合するFab、細胞表面上で発現されるときに1個又は2個の遊離Fv領域を有する抗体であって前記リンカー上の配列に特異的に結合する抗体、前記リンカー上の配列に特異的に結合する単一ドメイン抗体、又は前記リンカー上の配列に特異的に結合するラクダ抗体を含む細胞外領域ポリペプチドであって、前記リンカーに結合する細胞外領域ポリペプチド、
及び
ii
.内在性膜タンパク質に由来する膜貫通アミノ酸配列
を含む、ハイブリドーマ細胞。
【請求項6】
前記ハイブリドーマ細胞の形質膜外側表面上が、前記アンカー及び前記リンカーを含む第1の免疫複合体である、請求項
5に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項7】
前記リンカーの抗体断片は、Fv断片、Fab断片、Fv若しくは単鎖Fv、又は、単一ドメイン抗体、およびそれらの組換えバージョンである、請求項
5に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項8】
前記ハイブリドーマ細胞の形質膜外側表面上が、前記リンカーに結合した前記アンカーを含む多重免疫複合体であり、前記リンカーは前記モノクローナル抗体に結合する、請求項
5に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項9】
アンカーをその形質膜外側表面上に発現している不死化細胞とB細胞の細胞系譜の細胞を融合させることを含む、請求項
5に記載のハイブリドーマ細胞を作製する方法であって、前記アンカーは、i)選択されたリンカーに結合して第1の複合体を形成することができる抗体又はその断片を含む細胞外領域、及びii)内在性膜タンパク質に由来する膜貫通アミノ酸配列、を含み、前記アンカーは、前記ハイブリドーマ細胞から分泌される前記モノクローナル抗体に結合せず、前記リンカーは、前記ハイブリドーマ細胞によって分泌される前記モノクローナル抗体に結合する抗体又は抗体断片を含む、方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法であって、
(a)前記アンカーが
、ポリペプチドタグを含むか;または、
(b)前記抗体断片は、Fv断片、Fab断片、Fv若しくは単鎖Fv、又は単一ドメイン抗体、およびそれらの組換えバージョンであるか;または、
(c)作製された前記ハイブリドーマ細胞が、前記B細胞の細胞系譜の細胞内に由来する核酸配列から発現されるモノクローナル抗体を分泌し、前記不死化細胞によって提供される核酸配列からの前記アンカータンパク質を発現する、
前記方法。
【請求項11】
ATCC受託番号PTA-124062によって指定される、細胞株LCX-BGS株03.06.1
7。
【請求項12】
B細胞の細胞系譜の細胞を請求項
11に記載の細胞株と融合させることによって製造されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項13】
ウイルス抗原に結合する、ハイブリドーマ細胞によって分泌されたモノクローナル抗体を同定するための方法であって、
(a)ハイブリドーマ細胞の不均一な集団を提供する工程であって、各ハイブリドーマ細胞は、選択された可溶性のリンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側上に含み、ここで、前記アンカーは、前記
ハイブリドーマ細胞から分泌された前記モノクローナル抗体に結合することができず、且つ、前記リンカーは、前記ハイブリドーマ細胞によって分泌される前記モノクローナル抗体と第2の複合体を形成することができる抗体又はその断片を含み、
ここで、前記アンカーは、
i.前記リンカー上の配列に特異的に結合する単鎖抗体可変領域(scFv)、各々が前記リンカー上の配列に結合するために設計されている2~6個のscFvから形成されるタンデムscFv、細胞表面上で発現されるときに1個又は2個の遊離Fv領域を有するFabであって前記リンカー上の配列に特異的に結合するFab、細胞表面上で発現されるときに1個又は2個の遊離Fv領域を有する抗体であって前記リンカー上の配列に特異的に結合する抗体、前記リンカー上の配列に特異的に結合する単一ドメイン抗体、又は前記リンカー上の配列に特異的に結合するラクダ抗体を含む細胞外領域ポリペプチドであって、前記リンカーに結合する細胞外領域ポリペプチド、
及び
ii
.内在性膜タンパク質に由来する膜貫通アミノ酸配列
を含む、工程と、
(b)(a)の細胞を十分な量の前記リンカーと接触する工程であって、前記リンカーは、前記モノクローナル抗体の保存ドメインと結合して第2の複合体を形成する可変領域を含む可溶性の抗体又は抗体断片であり、前記接触は、前記第1及び第2の複合体を形成すると前記モノクローナル抗体がそれを分泌するハイブリドーマ細胞の表面に結合することを可能にする、工程と、
(c)前記ウイルス抗原が前記細胞結合アンカー-リンカー-mAb複合体に結合するために十分な時間、前記集団を多価ウイルス抗原と接触させ、細胞結合アンカー-リンカー-mAb-ウイルス抗原複合体を生じる工程と、
(d)前記細胞集団によって分泌される更なる免疫グロブリン(Ig)が、前記結合した多価ウイルス抗原上の他の結合部位に結合し、それによってアンカー-リンカー-mAb-ウイルス抗原-Igの検出可能な免疫複合体を形成することを可能にする工程と、
(e)細胞表面上の前記複合体のサイズ及び位置又は場所に基づいて、前記アンカー-リンカーmAbウイルス抗原-Ig複合体が結合した細胞を同定することを含む、工程とを含む、方法。
【請求項14】
前記多価ウイルス抗原は、1個以上の精製ウイルス抗原、全ビリオン、又は、ウイルス様粒子(VLP)であるか;または、前記同定する工程(e)は、接触により得られる(a)の細胞と、一価ウイルス抗原又は非ウイルス抗原とを比較することを含むか;または、前記一価ウイルス抗原はFab断片である、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル免疫グロブリンの誘導性抽出細胞外膜捕捉のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連特許出願
本特許出願は、2017年3月24日に出願された米国仮特許出願第62/476,599号の利益を主張する。本特許出願は、2017年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/526,608号の利益を主張する。前述の出願の全内容は、全てのテキスト、表、図面、及び、配列を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
寄託生物材料
以下の細胞株は、2017年3月24日に、米国タイプカルチャーコレクション、10801 University Boulevard、Manassas、Virginia、20110、USAに、特許手続の目的のための材料の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の下で寄託された。
【0004】
(a)受託番号PTS-124063-細胞株LCX(LCX 03.06.17)(これは、本明細書に説明のとおり、ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットと、構成的に活性なgp130欠失変異体サイトカイン受容体タンパク質とを異所性に発現する、K6H6/B5細胞株由来の細胞株である)
及び
(b)受託番号PTS-124062-融合パートナー細胞株LCX-BGS(これは、ヒトテロメラーゼ触媒サブユニットと、構成的に活性なgp130欠失変異体サイトカイン受容体タンパク質とを異所性に発現し、K6H6/B5細胞株由来し、本明細書に説明のとおり、その表面上にタンデムスコフアンカータンパク質BGSを発現する)。
【0005】
電子形式で提出された資料の参照による組込み
本出願人は、ここに電子形式で提出された配列表資料を参照により本明細書に組み込む。このファイルには、「MLH101PCT_ST25.txt」というラベルが付けられ、平成30年3月20日に作成され、15kBである。
【0006】
ハイブリドーマ法では、B細胞に由来する抗体を分泌する安定な実験室適合細胞株を作製するために、B細胞を融合パートナー細胞株に融合させる。この方法は、多大な有用性及び商業的可能性を有する高価値mAbを作製するために数十年間使用されてきた。その成功にもかかわらず、このような高価値抗体を産生するB細胞は、しばしば、免疫レパートリーにおいて非常に低い頻度で代表されることを考慮することが重要である。従って、ハイブリドーマmAbクローニング手順は、一般に、多様な抗体構造を発現する細胞株のポリクローナルプールを作製するために、数千又は数百万の細胞を用いて行われる。次の課題は、これらの細胞のうちのどれが所望の特異性を有する抗体を分泌しているかを同定することである。
【0007】
現在の技術水準では、各ハイブリドーマによって産生された抗体を含有する細胞培養上清を分析する間、交差汚染又は細胞異常増殖を防止するために、ハイブリドーマ細胞を互いに隔離して保持しなければならない。抗体分析の知見を、それらを分泌した細胞に関連付けることができるために、即ち、所望の特徴を有する抗体が存在し、目的が、サブクローニング及び更なる研究のためにそれを作製したハイブリドーマを同定することである場合、上清もまた、互いに隔離して保持される必要がある。このための方法は、典型的には、ハイブリドーマが維持されているアレイを反映するアレイ形式で抗体を配置することを含む。結果として、多数の無関係なハイブリドーマが、抗体が分析される間、単一又は少数クローン培養中で維持されなければならない。目的の抗体を分泌するハイブリドーマが同定され得る場合にのみ(その時点で、「モノクローナル抗体」又はmAb)、多数の無関係なハイブリドーマが放棄され得る。
【0008】
更に、所望の結合特異性の抗体を分泌するいずれのハイブリドーマも、mAb分泌を安定的に維持する子孫細胞株を同定するために、単一細胞クローニングの更なる工程を経なければならず、それ自体、数百の個々の細胞の維持及びmAb産生の個々の評価を必要とする。
【0009】
これらの実際的な障害は、ハイブリドーマが個別の世話及び培地交換を必要とするので、ハイブリドーマプロセスのスループットに厳しい制限を課し、上清は、個別に得られ、分析されなければならない(また補充されなければならない)。分析することができるハイブリドーマの数に対する制限の結果として、貴重であるが稀なmAbは、実質的に生成することが不可能な場合がある。更に、ハイブリドーマ法をハイスループットに適応させる費用は、ロボット工学及び自動化された液体処理への相当な投資を必要とし得る。
【0010】
例えば、酵母、大腸菌、293T細胞における所望のタンパク質の組換え産生のための更なる方法は、組換え遺伝子ライブラリー構築を必要とし、一般に、免疫グロブリン(Ig)断片として提示される。細胞の表面上に全長Igを発現する既存の哺乳動物Ig細胞ディスプレイ法が説明されている(非特許文献1)。1しかしながら、哺乳動物宿主からのB細胞の単離と、これらのB細胞によって発現されるIg分子の結合及び機能的特徴を評価し、従って所望の活性を有するmAbを同定及び単離するためのアッセイの実施との間に、遺伝子単離、クローニング及び発現工程を介在させる必要性は、有用なmAbの生成に対する実質的な障壁を与える。
【0011】
B細胞から生成されたハイブリドーマ細胞は、ときには、それらの形質膜外側上にIgを発現するが、これらのレベルは一般に、低く、予測不可能であり、一定でない(非特許文献1)。2ハイブリドーマによって発現される表面Igの量を増大させる方法は、B細胞受容体成分を発現する融合パートナー細胞株を用いて、増強された表面Ig発現を有するハイブリドーマ細胞を生成することが知られている(非特許文献3)。3しかし、このような方法は、ハイブリドーマ細胞表面上にIgを一定レベルで構成的に捕捉し、従って、細胞表面へのIg付着のタイミング及び程度の制御を可能にしない。
【0012】
ハイブリドーマ細胞とのIgの結合は、種々の単離方法、例えばゲルマイクロドロップ(GMD)及び親和性捕捉表面ディスプレイ(Affinity Capture Surface Display)(ACSD)法によって達成される(非特許文献4)。4GMD法では、ハイブリドーマ細胞は、分泌されたIgを捕捉するゲル微小液滴中に個々に封入される。ASCDでは、ハイブリドーマ細胞をビオチンで標識し、これを用いて細胞にアビジン標識捕捉抗体又はビオチン化捕捉抗体に結合したアビジン架橋のいずれかを付着させ、次いで分泌Igを捕捉することができる。これらの方法は、処理及び分析のための特殊な装置と、分析に時間及び費用を追加する複数の細胞/液滴インキュベーション及び洗浄工程とを必要とする。これらの方法はまた、細胞を、細胞生存率及び実験収率を損ない得るストレスの多い条件及び毒性試薬に曝露することを必要とする。
【0013】
不慣れな病原体又は未知の病原体への暴露のリスクがある軍隊、医療その他の職員は、しばしば、新興及び流行性のウイルス性疾患を罹患しやすく、暴露から彼らを保護するために利用可能な抗ウイルス療法はほとんど存在しない。有効な抗ウイルス戦略に対する重大な障害は、どのウイルスに遭遇するかを予測することが困難であることである。もう1つは、病原体が特定された後、創薬には何年もかかる可能性があるということである(非特許文献5)33。現場で新たなウイルス脅威に曝露された際に、そのような人員のリアルタイム保護(即ち、数年ではなく、数週間で数えられる)を可能にするペースで、新たな抗ウイルス薬の生成を可能にするための方法及び組成物が必要とされる。ウイルス感染を生き残った患者は、強力かつ特異的な抗ウイルス活性を有する抗体を産生する(非特許文献6、非特許文献7)34、35。これらの抗体は、同じ病原体に曝露された他のものを保護することができるmAbとして単離することができ、それらの完全なヒト起源のために薬物として安全である可能性が高い。しかし、ほとんどのヒトmAb発見方法は、抗体遺伝子の単離及び発現を必要とし、これは相当な専門知識及び基盤を必要とする労働集約的な技術的過程である(非特許文献8)36。更に、従来のmAb発見は、ウイルス抗原が完全に特徴付けられ、ウイルス特異的mAb結合アッセイに適合されることを必要とする。従って、抗ウイルスmAbプロジェクトは、患者の血液及びウイルス抗原を関連する現地から非流行地域に輸送することから始まる。これは、mAb発見が始まる前に克服されなければならない、実質的な実用的、制度的、及び、規制上の障壁を提示する。これらの障害を克服し、治療的抗ウイルスmAbのリアルタイム発見を可能にすることができる、ヒトmAb発見の効率化された効率的なモデルが必要である。
【0014】
迅速なスクリーニングと、新しいmAb及びハイブリドーマの獲得とに対する制限はまた、タンパク質の組換え産生に影響を及ぼす。従って、診断、治療及び研究用途のための細胞及びそれらの分泌タンパク質のより効率的な同定のための組成物及び方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Zhou C,et al.“Development of a novel mammalian cell surface antibody display platform”,mAbs(2010),2:5,508-518,DOI:10.4161/mabs.2.5.12970.
【文献】Mckinney,KL et al.,“Manipulation of Heterogeneous Hybridoma Cultures for Overproduction of Monoclonal Antibodies”,Biotechnol Prog.(1991 Sep-Oct),7(5):445-54.
【文献】Price,PW et al.“Engineered cell surface expression of membrane immunoglobulin as a means to identify monoclonal antibody-secreting hybridomas.”J Immunol Methods.(2009 Mar 31);343(1):28-41
【文献】Kumar N,Borth N,“Flow-cytometry and cell sorting:an efficient approach to investigate productivity and cell physiology in mammalian cell factories”,Methods(2012 Mar);56(3):366-74.doi:10.1016/j.ymeth.2012.03.004.
【文献】Flyak AI,et al.,Mechanism of human antibody-mediated neutralization of Marburg virus.Cell.2015;160(5):893-903.Epub 2015/02/28.
【文献】Jin Y,et al.Human monoclonal antibodies as candidate therapeutics against emerging viruses.Front Med.2017;11(4):462-70
【文献】Dessain SK,et al.Exploring the native human antibody repertoire to create antiviral therapeutics.Curr Top Microbiol Immunol.2008;317:155-83.
【文献】Tiller T,et al.Efficient generation of monoclonal antibodies from single human B cells by single cell RT-PCR and expression vector cloning.J Immunol Methods.2008;329(1-2):112-24.Epub 2007/11/13.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
一局面において、組成物は、核酸分子を含む細胞の表面上でのアンカーの発現を指令する調節配列と作動可能に会合したアンカーをコードする核酸分子を含む。アンカーは、選択されたリンカーと第1の複合体を形成するために設計される。リンカーは、アンカーによって認識されない標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。
【0017】
別の局面では、本明細書に説明の核酸分子を含む組換えベクターが提供される。
【0018】
なお更なる局面において、選択されたリンカーとの第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した細胞が提供される。リンカーは、アンカーによって認識されない標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。この細胞は、分泌と、アンカー-リンカー複合体への結合との際に、標的タンパク質が細胞に付着されることを可能にする。特定の実施形態では、細胞は初代細胞、B細胞の細胞系譜の細胞、又は、不死化細胞であってもよい。細胞は、本明細書に説明するような核酸分子又はベクターを更に含み得る。
【0019】
別の局面では、選択された標的タンパク質を発現及び分泌する組換え哺乳動物細胞は、選択されたリンカーとの第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現させることによって特徴付けられる。しかしながら、アンカーはまた、標的タンパク質を認識しないか、標的タンパク質と結合しないか、あるいは、標的タンパク質と複合体を形成しないために設計される。リンカーは、分泌された標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。この細胞は、分泌及びアンカー-リンカー複合体への結合の際に、標的タンパク質が細胞に付着されることを可能にする。
【0020】
更なる別の局面では、ハイブリドーマ細胞は、選択されたリンカーとの第1の複合体を形成するために設計されたアンカーを、その形質膜外側上にアンカーされて含む。リンカーは、細胞によって分泌されるモノクローナル抗体と第2の複合体を形成するために設計され、このモノクローナル抗体は、アンカーによって認識されない。このハイブリドーマ細胞は、その分泌されたモノクローナル抗体が分泌及びアンカー-リンカー複合体への結合の際に細胞に付着されることを可能にする。
【0021】
更なる別の局面では、細胞を作製する方法は、本明細書に説明する核酸分子又はベクターを、選択された細胞に安定的に送達する工程を含む。
【0022】
更なる局面において、ハイブリドーマ細胞を作製する方法は、選択されたリンカーと複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した不死化細胞とB細胞の細胞系譜の細胞とを融合させる工程を含む。リンカーは、B細胞又はB細胞に由来する細胞によって分泌される抗体に結合するために設計され、この抗体は、アンカーによって認識されない。
【0023】
別の局面では、細胞によって分泌される標的タンパク質(例えば、抗体又はモノクローナル抗体)の特徴を検出又は測定する方法は、本明細書に説明する核酸分子、ベクター及び細胞を使用する。リンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーを、集団の各細胞がその形質膜外側表面上に発現した、細胞集団が提供される。前記集団を、アンカーによって認識されない標的タンパク質と第2の複合体を形成するためにも設計されたリンカーと接触させる。接触工程は、リンカーが第1の複合体においてアンカーと結合することによって、細胞の形質膜外側に付着することを可能にする。これらの得られた細胞は、細胞が標的タンパク質を分泌し、標的タンパク質がリンカーとの第2の複合体の形成を介して細胞付着アンカー-リンカー第1複合体に結合し、それによって標的タンパク質を細胞に固定する条件下で、リンカーの存在下で維持される。その後、細胞に結合した標的タンパク質の特定の特徴を評価することができる。
【0024】
更なる別の局面では、分泌されたmAbを、該分泌されたmAbに特異的なIgによって固定された免疫複合体の形態で、誘導的に捕捉するための方法が説明されるが、ここで前記Igは、前記分泌されたmAbを分泌する細胞の表面上の、異種Ig分子部分によってハイブリドーマ細胞の表面にそれ自体固定されている。
【0025】
別の局面では、ウイルス抗原に結合するモノクローナル抗体を同定するための方法は、ハイブリドーマ細胞の集団を提供する工程を含み、各ハイブリドーマ細胞は、選択されたリンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側上に固定されて含み、リンカーは、細胞によって分泌されるモノクローナル抗体と第2の複合体を形成するために設計され、このモノクローナル抗体は、アンカーによって認識されない。前記集団を、前記ウイルス抗原が細胞結合アンカー-リンカー-mAb複合体に結合するのに十分な時間、多価ウイルス抗原と接触させ、細胞結合アンカー-リンカー-mAb-ウイルス抗原複合体を生じる。細胞集団によって分泌される更なる免疫グロブリン(Ig)は、結合した多価ウイルス抗原上の他の結合部位に結合することが可能であり、それによって、多価ウイルス抗原の非存在下で形成される免疫複合体と構造的及び機能的に異なる、アンカー-リンカー-mAb-ウイルス抗原-Igの検出可能な免疫複合体を形成する。次いで、アンカー-リンカー-mAb-ウイルス抗原-Ig複合体が結合した細胞を、細胞表面上の前記複合体のサイズ、コンホメーション、組成、及び/又は、位置若しくは場所に基づいて同定する。
【0026】
これらの組成物及び方法の別の局面及び変形は、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明において更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施例1に説明されるとおり、Gly-Ser連結アミノ酸(スペーサー)によって連結されたタンデムマウス抗ウサギscFvと、PDGF受容体(PDGFR)膜貫通(TM)ドメインと、Mycタグと、リーダー配列とを含む膜アンカーの遺伝子マップを示す略図である。
【
図2】
図2A及び2Bは、実施例3に説明されるとおりのとおり、B5-6T及びLCX融合パートナー細胞株の表面上にタンデムマウスscFv(これは、B細胞グロブリンスカフォールド、即ちBGSの例である)が観察されたことを実証するフローサイトメトリーのグラフである。
図2Aは、トランスフェクション後のB5-6T細胞が細胞表面上にタンデムマウスscFv(BGS)を首尾よく発現することを示す。
図2Bは、トランスフェクション後のLCX細胞が細胞表面上にタンデムマウスscFv(BGS)を首尾よく発現することを示す。
【
図3】
図3A及び3Bは、実施例3に説明されるとおり、タンデムマウスscFv(BGS)がウサギIgG(RAH、リンカー)のB5-6T及びLCX融合パートナー細胞株への結合を媒介することを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図3Aは、B5-6T BGS融合パートナー細胞はウサギIgGに結合するが、B5-6T細胞は結合しないことを示す。
図3Bは、LCX BGS融合パートナー細胞はウサギIgGに結合するが、LCX細胞は結合しないことを示す。
【
図4】
図4A及び4Bは、ヒトIgに特異的なウサギIg(RAH、リンカー)に結合した融合パートナー細胞株がポリクローナルヒトIgG(hIgG、標的タンパク質)に結合することを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図4Aは、RAHに結合したB5-6T BGS融合パートナー細胞がヒトIgGに結合することを示す。
図4Bは、RAHに結合したLCX BGS融合パートナー細胞がヒトIgGに結合することを示す。
【
図5】
図5A及び5Bは、B5-6T BGS及びLCX BGS融合パートナー細胞株へのヒトIgの結合がヒトIgに特異的なウサギIg(RAH、リンカー)の存在に依存することを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図5Aは、B5-6T BGS融合パートナー細胞がRAH(リンカー)の存在下でのみヒトIgG(標的タンパク質)に結合し、RAHが存在しない場合には結合しないことを示す。
図5Bは、LCX BGS融合パートナー細胞がRAH(リンカー)の存在下でのみヒトIgG(標的タンパク質)に結合し、RAHが存在しない場合には結合しないことを示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、融合パートナー細胞によるヒトIgGのRAH媒介捕捉にタンデムマウスscFv(BGS)が必要であることを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図6Aは、B5-6T BGS細胞がRAHの存在下でヒトIgGを捕捉するが、B5-6T細胞は捕捉しないことを示す。
図6Bは、LCX BGS細胞がRAHの存在下でヒトIgGを捕捉するが、LCX細胞は捕捉しないことを示す。
【
図7】
図7A及び7Bは、RAHの存在下でのB5-6T BGS細胞が標的タンパク質としてヒトIgG mAb、A12(
図7A)及び1B8(
図7B)を捕捉することを示すフローサイトメトリーのグラフである。
【
図8】
図8A及び8Bは、BoNT特異的mAb(標的タンパク質として)と複合体を形成したB5-6T BGS及びLCX BGS細胞がビオチン化BoNT抗原に結合するが、ビオチン化狂犬病ウイルス糖タンパク質(RABV GP)には結合しないことを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図8Aは、B5-6T BGS融合パートナー細胞がリンカー捕捉BoNT抗原としてRAHを介して6AヒトmAbに結合したが、RABV抗原には結合しなかったことを示す。
図8Bは、LCX BGS融合パートナー細胞がリンカー捕捉BoNT抗原としてRAHを介して6AヒトmAbに結合したが、RABV GPには結合しなかったことを示す。
【
図9】
図9A及び9Bは、実施例4に記載されるとおり、ヒトIgGを分泌する8C5(
図9A)及び9H2(
図9B)ハイブリドーマの表面上のタンデムマウスscFv(BGS)の発現を実証するフローサイトメトリーのグラフである。
【
図10】
図10A及び10Bは、実施例4に記載されるとおり、タンデムマウスscFv(BGS)が、mAb分泌ハイブリドーマ8C5(
図10A)及び9H2(
図10B)へのウサギIgG(リンカー)の結合を媒介することを各々示すフローサイトメトリーのグラフである。
【
図11】
図11A及び11Bは、リンカーとしてのRAHの存在下でのタンデムマウスscFv(BGS)の発現が、mAb分泌ハイブリドーマ8C5(
図11A)及び9H2(
図11B)に対するヒトIgG(標的タンパク質)の付着を増加させることを示すフローサイトメトリーのグラフである。
【
図12】
図12A及び12Bは、RAHが、タンデムマウスscFv(BGS)を発現するハイブリドーマ細胞株による分泌ヒトIgG(標的タンパク質)の捕捉を増強することを示すフローサイトメトリーのグラフである。
図12Aは、リンカーとしてのRAHが8C5分泌ハイブリドーマによる分泌モノクローナルヒトIgGの捕捉を増強することを示す。
図12Bは、リンカーとしてのRAHが9H2分泌ハイブリドーマによる分泌モノクローナルヒトIgGの捕捉を増強することを示す。
【
図13】
図13は、RAHの存在下でインキュベートされた8C5 BGSハイブリドーマが8C5ハイブリドーマよりも有意に良好にRABV GPに結合することを実証するフローサイトメトリーのグラフである。更に、B5-6T BGS融合パートナー細胞株は、実施例4に記載されるとおり、RABV GPに結合しない。
【
図14】
図14は、LCX細胞がhTERTを発現することを示すRT-PCRゲルの結果である。
【
図15】
図15は、実施例2に記載されるとおり、LCX細胞による構成的に活性なgp130 ΔYY突然変異タンパク質の表面発現を実証するフローサイトメトリーのグラフである。
【
図16】
図16は、タンデムマウスscFv(BGS)を発現するLCX BGS細胞による構成的に活性なgp130 ΔYY突然変異タンパク質の表面発現を実証するフローサイトメトリーのグラフである。
【
図17】
図17A~17Dは、ハイブリドーマ細胞株の2種の例:8C5 BGSハイブリドーマ細胞株及びB5-6T BGSハイブリドーマ細胞株の蛍光顕微鏡写真であり、各々、過剰のRAH Igリンカー、ビオチン化RABV GP、及び、Alexa 488標識ストレプトアビジンと共にインキュベートし、次いでパラホルムアルデヒドで固定し、DAPIで染色した。
図17Aは、Alexa 488(RABV)で染色された8C5 BGSの画像である。画像中の細胞の多くは、その表面上に、Alexa 488標識RABV GPを組み込んだ免疫複合体を有する。8C5 BGS細胞上のRABV GP染色の強度及びパターンの試験は、細胞が異なるレベルのシグナルを有すること、及び、互いに隣接する多くの細胞でさえ、異なるレベルのシグナルを有することを明らかにする。
図17Bは、Alexa 488で染色され、青色DAPI(核)染色画像と重ね合わされた8C5 BGSの画像である。
図17Cは、Alexa 488(RABV)で染色されたB5-6T BGSの画像である。
図17Dは、Alexa 488で染色され、青色DAPI染色画像と重ね合わされたB5-6T BGSの画像である。8C5 BGS細胞の多くは、RABV GPの付着を示す蛍光シグナルを示すが、B5-6T BGS細胞は示さない。これは、8C5 BGS細胞がRABV GPに特異的なmAbを分泌しているが、B5-6T BGS細胞は、いずれのmAbも分泌していないという事実と相関する。これは、フローサイトメトリーデータを裏付け、細胞の表面上に形成された3個の免疫複合体成分の存在を示し、抗体を含むmAb複合体は、その抗原結合特異性について分析され得、これは、次いで、それを分泌する細胞と相互参照され得る情報である。
【
図18】
図18A~18Cは、3枚の一連の蛍光顕微鏡写真である。
図18Aは、DAPIで染色したB5-6T(左パネル)、RAH及びAlexa 488標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体と培養した細胞(中央パネル)、並びに2枚の画像を重ね合わせたもの(右パネル)を示す。
図18Bは、DAPIで染色したB5-6T BGS(左パネル)、RAH及びAlexa 488標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体と培養した細胞(中央パネル)、並びに2枚の画像を重ね合わせたもの(右パネル)を示す。
図18Cは、DAPIで染色した8C5 BGS(左パネル)、RAH及びAlexa 488標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体と培養した細胞(中央パネル)、並びに2枚の画像を重ね合わせたもの(右パネル)を示す。この実験は、RAHに結合するその能力によって示されるとおり、細胞株による機能的アンカータンパク質発現の量に差があるか否かを決定するために行われた。B5-6T BGS細胞上のAlexa 488標識の量及び分布は、全ての細胞で本質的に同じであり、これらの細胞上での機能的RAHの一貫した発現を実証する。この結果は、B5-6T BGS細胞株上でのアンカー発現の均一性を実証するフローサイトメトリーデータと一致する。8C5 BGS細胞株の表面上のRAHの分布は、ヒトIgG(8C5 BGS細胞によって分泌される)の存在がヒトmAb(標的)の非存在下で形成されるものと構造的に異なる、細胞の表面上のRAH含有免疫複合体の形成をどのように誘導し得るかを示す。
【
図19】
図19は、普遍的な抗ウイルスmAbアッセイプラットフォーム及び発見方法を示す概略図である。ウイルス結合は、ハイブリドーマ細胞表面上のtell-tale免疫複合体の形成によって検出される。ハイブリドーマ細胞は、BGSアンカーを発現し(概略図において「OCMSタンデムscFv」と標識される)、顕微鏡下で、例えば、実施例4~7に記載されるとおり)、従来の方法を介して赤色蛍光シグナルで可視化され得、これは、一価ウサギFAb(概略図においてFAbと標識される)に結合する。ハイブリドーマによって分泌されたヒトIgG(概略図においてh-mAbとして標識される)は、例えば実施例14に記載されるとおり)、顕微鏡下で緑色蛍光シグナルで可視化することができ、この場合、それは、リンカーによって捕捉され、それは、ウサギFAbのような一価リンカーである。この概略図に示されるリンカーは、一価であるため、多価抗原が存在しない限り、複数のh-mAbを含む免疫複合体は形成されない。mAbがウイルス粒子に結合することができる場合、事象の1つが起こる。一実施形態では、ビリオンが大きな免疫複合体(CAP様複合体)の形成の核となる。別の実施形態では、mAbsは、ビリオンによって形質膜から離隔した(~30nm)部位でビリオンに結合する(層状複合体)。これは、もしmAbが標識されていれば、例えば赤と緑の蛍光シグナルが融合して黄色のシグナルを生じることがないような距離である。
【
図20】
図20は、本明細書に説明され、実施例16においてより詳細に説明される、普遍的な抗ウイルスヒトmAb発見方法を例示する4枚のパネルを示す。CAP様免疫複合体形成は、抗ウイルスmAb発現を実証する。これらのOCMSハイブリドーマをウサギ抗ヒトIg FAb及び3型ポリオウイルス(PV;左上のパネルは、ハイブリドーマ細胞株4G4 BGSでの結果を示す;左下のパネルは、ハイブリドーマ細胞株8C5 BGSでの結果を示す)又は狂犬病ウイルス糖タンパク質(右上のパネルは、4G4 BGSでの結果を示す;右下のパネルは、8C5 BGSでの結果を示す)のいずれかと一晩インキュベートした。ハイブリドーマ4G4 BGSは、PVに特異的なヒトmAbを産生する。ハイブリドーマ8C5 BGSは、狂犬病GPに結合するヒトmAbを産生する。ウイルス粒子は、細胞表面上のCAP様免疫複合体の形成の核となり、これは、FITC標識抗ヒトIgG二次抗体で検出される。ウイルス結合の非存在下では、細胞は細胞膜上に均一に分布したIgGスポットを示す。4G4 BGSハイブリドーマは、PVの存在下でCAP様免疫複合体を形成するが、RABV GPの存在下では形成しない。8C5 BGSハイブリドーマは、RABV GPの存在下でCAP様免疫複合体を形成するが、PVの存在下では形成しない。
【
図21】
図21Aは、ヒトIgの293T OCMS細胞への結合がヒトIgに特異的なウサギIg(RAH、リンカー)の存在に依存することを示すフローサイトメトリーのグラフを提供する。293T OCMS細胞株は、BGSアンカータンパク質を発現する293T細胞株であり、OCMSは、On-Cell mAbスクリーニングの頭字語であり、また293T BGSと命名される。293T OCMS細胞は、RAH(リンカー)の存在下でのみヒトIgGに結合し、RAHが存在しない場合には結合しない。左端の曲線は、ウサギ抗ヒト抗体(RAH)を含まない293T OCMSである。右端の曲線は、RAHを有する293T OCMSである。
図21Bは、ヒトIgに特異的なウサギIg(RAH、リンカー)に結合した293T OCMS細胞がポリクローナルヒトIgGに結合することを示すフローサイトメトリーのグラフを提供する。左端の曲線は、ヒトIgGを有さない293-OCMSである。右端の曲線は、ヒトIgGを有する293T OCMSである。
【
図22A】
図22Aは、RAHリンカーの存在下で培養し、ヒトIgGの結合について評価した後の、ヒトIgG遺伝子(抗PV mAb A12)の293T OCMS一過性トランスフェクションの4枚のパネルを示す。左上のパネルは、トランスフェクトされ、Alexa Fluor IgGで標識された293T BGSを示す。左下のパネルは、トランスフェクトされず、Alexa Fluor IgGで標識された293T BGSを示す。右上のパネルは、トランスフェクトされ、DAPI画像と重ね合わされた293T BGSを示す。左下のパネルは、トランスフェクトされず、DAPI画像と重ね合わされた293T BGSを示す。
【
図22B】
図22Bは、トランスフェクトされた293T BGS細胞がPVの検出に成功したことを示すグラフを示す。簡潔には、抗PV mAb A12を発現するヒトIgG遺伝子でトランスフェクト又は非トランスフェクトした293T BGS細胞をビオチン化PV I型とインキュベートし、そのようなPV I型との結合を評価し、その結果をプロットした。
図22Bに見られるとおり、トランスフェクトされた293T BGSは、左のより低いピークに伸びる右側の曲線として検出され、一方、トランスフェクトされていない293T BGS細胞は、左側のより高い曲線として検出された。
【
図23】
図23Aは、安定化ハイブリドーマ発現ライブラリー(SHEL)として定義される、ヒトIgGの発現について高度に濃縮されたハイブリドーマの集団を示すフローサイトメトリーのグラフを提供する。簡潔には、選択のためにFACS選別を行った。LCX-BGS細胞と初代ヒトB細胞との融合によって産生されたハイブリドーマの集団を、以下の方法によってヒトIgGを発現するものについての陽性選択に供した。それらを最初に洗浄し、培養培地中の過剰のリンカー、ウサギF(ab’)
2断片抗ヒトIgG(H+L)(Southern biotechカタログ番号6000-01)と共に一晩インキュベートした。次いで、細胞を1% PBS-BSAで2回洗浄し、ビオチン化タンパク質A(SigmaAldrichカタログ番号2165)と混合し、氷上でインキュベートした。1時間後、細胞を1% PBS-BSAで洗浄し、次いでAlexa Flour 488結合ストレプトアビジン(Jackson Immuno Researchカタログ番号016-540-084)と混合し、氷上で45分間インキュベートし、次いで再び洗浄した。次いで、ヒトIgGを発現している細胞の集団を、BD FACSAriaII上のFACSによって単離した。この陽性選択を更に2回繰り返し、その後、プロットされたフローサイトメトリーの結果が示すとおり、細胞集団は、ヒトIgG発現細胞について高度に濃縮された。IgGを発現する細胞について陽性に選択され、IgG発現の安定化を示すこのポリクローナル細胞集団は、ヒトIgG SHEL集団である。
図23Bは、高度に濃縮されたヒトIgA発現細胞を示すフローサイトメトリーのグラフを提供する。簡潔には、
図23Aに示される実験と同様に、LCX-BGS細胞と初代ヒトB細胞との融合によって産生されたハイブリドーマの集団を、ヒトIgAを発現するものについての陽性選択に供した。この陽性選択を更に2回繰り返し、その後、プロットされたフローサイトメトリーの結果が示すとおり、細胞集団は、ヒトIgA発現細胞について高度に濃縮された。IgGを発現する細胞について陽性に選択され、IgG発現の安定化を示すこのポリクローナル細胞集団は、ヒトIgA SHEL集団である。
【
図24】
図24は、実施例16に説明されるとおり、ヒト抗PV IgG mAbを分泌するOCMSハイブリドーマへのIII型PVの結合を示す9枚の顕微鏡パネルを示す。
【
図25】
図25は、実施例16に説明されるとおり、抗PV IgG mAbを分泌するIII型PV結合OCMSハイブリドーマのフローサイトメトリー分析を示す9枚の白黒フローサイトメトリーヒストグラムを示す。
【
図26】
図26は、実施例16に説明されるとおり、抗PV mAbを発現するハイブリドーマによるタンデムscFv及びヒトIgG発現を評価するフローサイトメトリーグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に説明する組成物及び方法は、新規モノクローナル抗体(mAb)及びハイブリドーマの迅速なスクリーニングと、獲得と、タンパク質の組換え産生とにおいて有用な、方法及び組成物を提供する。これらの組成物及び方法は、診断、治療及び研究用途のための細胞と、該細胞が分泌するタンパク質とのより効率的な同定を可能にする。
【0029】
ハイブリドーマ細胞と、該細胞が分泌するモノクローナル抗体との産生及び同定に様々な利点を付与する、核酸構築物及び分子、核酸構築物又は分子を担持する様々な型のベクター、細胞、細胞株、及び、方法が本明細書に開示される。この組成物及び方法は、ハイブリドーマを個別に培養する必要性を排除し、多数の細胞を維持及びスクリーニングするための障壁を減少させる。これらの組成物及び方法は、希少抗体の発見を可能にし、一方、mAbクローニングプロセスの速度を加速して、所望の特徴を有するものを単離し、特徴付ける。加えて、本方法及び組成物は、人件費及びインフラストラクチャ費を低減する。本明細書に詳細に説明される方法及び組成物の更なる利点は、Igスクリーニングのための細胞外mAbディスプレイを提供すること、及び、抗原駆動選別法によるポリクローナルハイブリドーマ集団のハイスループットスクリーニングを可能にすることを含む(即ち、mAbは、それを作製する細胞と物理的に関連づけられる)。これらの方法及び組成物は、組換えmAb発現を必要とするファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、及び、哺乳動物ディスプレイに有用である。これらの方法及び組成物は、Ig発現及び安定性を最適化し、稀な結合特異性を有するmAbの同定を容易にするためのハイブリドーマサブクローニング方法を効率化するために有用である。
【0030】
一局面において、本明細書に説明するようなヒト抗ウイルスmAb発見のための方法は、オンセルmAbスクリーニング(OCMS(商標))と称される。本明細書でより詳細に説明されるとおり、一実施形態では、OCMS法は、ハイブリドーマ法である。従来のハイブリドーマ法では、ヒトB細胞(例えばウイルス感染に応答して産生される抗体を作製する)は、融合パートナー細胞に融合され、これは、実験室で増殖し得るハイブリドーマ細胞を作製する。各々のハイブリドーマは、単一のモノクローナル抗体(mAb)を分泌する37。従来のmAb発見は、完全なmAbを作るものを見つけるために、数千から数百万の細胞を試験することを必要とする。対照的に、OCMS法では、分泌されたmAbがmAbを産生する細胞の表面に特異的に付着される。従って、抗ウイルス抗原特異的mAbを産生する細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞)は、単にウイルス又はウイルス抗原を添加することによって、それらの表面上のmAbがウイルスを捕捉するので、容易に同定及びスクリーニングされ得る。対象のB細胞からmAbスクリーニング及びクローン単離までのこの効率化された作業フローは、遺伝子クローニング及び発現、即ち、作製された各ハイブリドーマ細胞の個々の培養及びその機能的スクリーニングを必要としない。一実施形態では、OCMS法は、6~8週間で有効なヒトmAbを産生することができる。これは、部分的には、OCMSハイブリドーマがmAb分泌について遺伝的に安定化されていることに起因する22。別の実施形態では、OCMS細胞は、ウイルス結合に加えて、ウイルス中和についてのそれらのmAbのスクリーニングにおける使用のために操作され得る。OCMS法を用いて、本発明者らは、ポリオウイルス(PV)及びヒトNMDA受容体に特異的なヒトmAbをクローニングした。
【0031】
別の実施形態では、OCMS法は、全非標識ウイルスを用いてmAbを発見するのに有用である。以下に詳細に説明されるとおり、OCMS法を使用して、抗ウイルスmAb発見のための普遍的なアッセイを作製した。以下の実施例16を参照されたい。簡潔には、抗ウイルスmAbを発現するハイブリドーマがウイルスと接触すると、ハイブリドーマの表面にtell-tale免疫複合体が形成される。これらの複合体は、High-Content Imaging(本質的には、強力な画像解析ソフトウェアを伴う共焦点顕微鏡検査)を使用して、ハイスループットスクリーニングのために検出することができる。他の従来の方法(例えば、フローサイトメトリー、セルソーティング)もまた、これらの複合体を検出し、mAb発現ハイブリドーマを濃縮するために使用され得る。
【0032】
以下に説明するような更なる別の実施形態では、OCMS法は、ハイブリドーマでない組換え細胞において使用され得る。
【0033】
更なる別の方法及び組成物を以下に詳細に説明する。
【0034】
I.本発明の組成物及び方法において使用される成分及び定義
本明細書で議論される組成物及び方法の説明において、種々の成分は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する技術用語及び科学用語の使用によって、並びに、公開されたテキストを参照することによって、定義され得る。このようなテキストは、当業者に、本出願で使用される用語の多くに対する一般的なガイドを提供する。本明細書に含まれる定義は、本明細書中の成分及び組成物を説明する際の明確さのために提供され、請求項に記載される発明を限定することを意図するものではない。
【0035】
本明細書で使用される用語「アンカー」は、(a)リンカーに結合し、リンカーと複合体を形成する細胞外領域ポリペプチド、(b)任意的なポリペプチドタグ、及び、(c)内在性膜タンパク質に由来する膜貫通アミノ酸配列を含むタンパク質配列(又はそれをコードする核酸配列)を指す。更により具体的な実施形態において、アンカーは、配列番号1の核酸配列によってコードされる。
【0036】
アンカーの一実施形態では、「細胞外領域ポリペプチド」は、リンカー上の配列を特異的に認識し、それに結合することができる単鎖抗体可変領域(scFv)である。別の実施形態では、細胞外領域ポリペプチドは、2、3、4、5、又は、6個以上までのscFvから形成されるタンデムscFvであり、これは、適切な「スペーサー」ポリペプチドによって互いに分離され得、各scFvは、リンカー上の配列に結合するために設計される。更なる別の実施形態では、「細胞外領域ポリペプチド」は、Fabが細胞表面上で発現される場合、1個又は2個の遊離Fv領域を有するFabである。更なる別の実施形態では、「細胞外領域ポリペプチド」は、細胞表面上で発現される場合、1個又は2個の遊離Fv領域を有する抗体である。別の実施形態では、アンカーの細胞外領域ポリペプチドは、単一ドメイン抗体である。別の実施形態では、アンカーの細胞外領域ポリペプチドは、ラクダ抗体である。更なる別の実施形態では、アンカーの細胞外領域ポリペプチドは、アプタマーである。特定の実施形態では、アンカーの細胞外ドメインポリペプチドは、各scFvの重鎖Fv及び軽鎖Fv配列と、各鎖の間に介在する「スペーサー」とを交互に含む。別の特定の実施形態では、アンカーの細胞外ドメインは、各scFvの重鎖Fv及び軽鎖Fv配列を交互に含み、適切なスペーサーが各鎖の間に挿入される。
【0037】
「ポリペプチドタグ」とは、一般に、それが結合するポリペプチド配列の同定及び/又は精製を容易にする、異種ポリペプチド配列に組み込まれた短いアミノ酸配列を意味する。ポリペプチドタグは、アンカーの任意的な成分である。一例では、アンカーのための有用なポリペプチドタグは、Mycタグである。別の例では、ポリペプチドタグは、FLAGタグである。別の実施形態では、ポリペプチドタグは、NEタグである。更なる別の実施形態では、ポリペプチドタグは、HAタグである。更なる別の例では、ポリペプチドタグは、Hisタグ又はポリHisタグである。他の適切なタグは、Hisタグ若しくはポリHisタグ、又は、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識部位を含むが、これらに限定されない。更に他の適切なポリペプチドタグが、本明細書に説明する組成物及び方法において使用され得る。
【0038】
「切断タグ」とは、一般に、異種ポリペプチド配列に組み込まれた短いアミノ酸配列を意味し、これは、ポリペプチドが酵素的又は他の機構によってその部位で切断されることを可能にする。一例において、有用な切断タグは、3C PreScissionプロテアーゼ又はPSP切断タグである。別の例では、タグは、EKT(エンテロキナーゼ)切断タグである。別の実施形態では、タグは、FXa(第Xa因子)切断タグである。更なる別の実施形態では、タグは、TEV(タバコエコーウイルス)切断タグである。更なる別の例では、タグは、トロンビン切断タグである。更に他の適切な切断タグが、本明細書に説明する組成物及び方法において使用され得る。
【0039】
アンカーの別の成分は、内在性膜タンパク質に由来する膜貫通アミノ酸配列である。内在性膜タンパク質は、一般に、細胞のリン脂質二重層に埋め込まれた1個以上のセグメントを有する。ほとんどの内在性タンパク質は、膜リン脂質の脂肪アシル基と相互作用する疎水性側鎖を有する残基を含み、従ってタンパク質を膜に固定する。ほとんどの内在性タンパク質は、リン脂質二重層全体にわたって存在する。これらの内在性膜タンパク質の膜貫通ドメインは、残基4個~数百個の長さであり、二重層の各側の水性媒体中に伸びている。膜貫通ドメインは、αヘリックス又は複数のβ鎖である。有用な膜貫通タンパク質の例は、I型膜貫通受容体分子(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGF-R)、上皮成長因子受容体(EGF-R)、インテグリン、インスリン受容体、血管内皮成長因子受容体(VEGF-R)又は他の内在性タンパク質を含むが、これらに限定されない、内在性膜タンパク質由来の選択されたドメインである。5、6明示的な例として、配列番号1のヌクレオチド1603~1752によってコードされる配列を参照されたい(以下の表I参照)。
【0040】
本明細書で使用される用語「スペーサー」は、アンカーの分子部分を分離するために使用される少なくとも1個~約24個のアミノ酸を指す。従って、種々の実施形態において、スペーサーは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23個、最大約24個のアミノ酸の配列から形成される。
【0041】
「リンカー」とは、アンカーとの第1の複合体、及び、標的タンパク質との第2の複合体を形成するために設計されたアミノ酸配列(又はそれをコードするポリヌクレオチド配列)を意味し、該標的タンパク質は、アンカーによって認識されない。従って、リンカーの機能は、細胞の表面上で発現されるアンカーと、細胞によって分泌される標的タンパク質との間に架橋(又は連結)を形成することであり、それによって標的タンパク質を固定化し、その標的タンパク質を分泌する細胞の同定、及び、その細胞によって分泌される標的タンパク質の特徴付けを可能にする。「免疫グロブリンリンカー」又は「Igリンカー」とは、アンカーとの第1の免疫複合体、及び、標的タンパク質との第2の免疫複合体(前記標的タンパク質は、前記アンカーによって認識又は結合されない)を形成するために設計された抗体又はその断片(又はそれをコードするポリヌクレオチド配列)のアミノ酸配列を意味する。従って、Igリンカーの機能は、細胞の表面上で発現されるアンカーと、細胞によって分泌される標的タンパク質との間に架橋(又は連結)を形成し、それによって標的タンパク質を固定化し、その標的タンパク質を分泌する細胞の同定、及び、その細胞によって分泌される標的タンパク質の特徴付けを可能にすることである。一実施形態では、リンカーは、標的タンパク質及びアンカーがリンカーの非存在下で互いに結合しない条件下で、アンカー及び標的タンパク質の両方に結合することができる。一実施形態では、Igリンカーは、抗体又は抗体断片である。本明細書に示される特定の例では、Igリンカーは、抗体断片がFv断片、Fab断片、Fv若しくは単鎖Fv、又は、単一ドメイン抗体と、それらの組換えバージョンとである。一実施形態では、Igリンカーは、Igリンカーがアンカーと第1の複合体を形成する細胞によって分泌される標的タンパク質の種とは異なる種である。一実施形態では、リンカーは、ウサギFAbである。
【0042】
本明細書で使用される「抗体又は断片」は、モノクローナル抗体(mAb)、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植抗体、2個以上の標的に結合し得る多重特異性結合構築物、二重特異性抗体、二特異性抗体、又は、多重特異性抗体、又は、親和性成熟抗体、単抗体鎖又はscFv断片、ダイアボディ、相補的scFvs(タンデムscFvs)又は二特異性タンデムscFvsを含む単鎖、Fv構築物、ジスルフィド結合Fv、Fab構築物、Fab’構築物、F(ab’)2構築物、Fc構築物、モノクローナル抗体機能に不可欠でないドメインが除去された一価又は二価構築物、1個のVL、1個のVH抗原結合ドメイン、及び、リンカードメインによって任意的に連結された1個又は2個の定常「エフェクター」ドメインを含む単鎖分子、ヒンジ領域を欠く一価抗体、単一ドメイン抗体、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)結合タンパク質又はナノボディである。また、この定義には、親和性体(affibody)、即ち、いずれかの所定の標的に対する高い親和性及び特異性のために単離され得る、一般に小さい(~6.5kDa)単一ドメインタンパク質である、操作された親和性タンパク質、及び、特定の標的に結合するアプタマー、ポリペプチド分子などの抗体模倣物も含まれる。本明細書中の組成物又は方法の説明において、用語「mAb」が使用される場合は、いつでも、この用語は、同一又は類似の結果を達成するために、いずれかの他の形態の抗体又は抗原特異的/抗原結合断片によって置き換えることができることが理解されるべきである。抗体又はmAbは、IgG、IgA、IgM、又は、IgEの場合がある。
【0043】
本明細書で使用される「標的タンパク質」又は「標的」は、細胞によって分泌されるいずれかの天然に存在するアミノ酸配列又は合成アミノ酸配列又は組換えアミノ酸配列を指す。一実施形態では標的は、抗体又はその断片である。以下の実施例において標的は、モノクローナル抗体又はその断片である。更なる別の実施形態では標的タンパク質は、細胞によって分泌されるいずれかのタンパク質又はポリペプチドの場合がある。一実施形態では、標的タンパク質は、mAbである。更なる実施形態では、標的タンパク質は、免疫グロビンである。別の実施形態では、標的タンパク質は、IgGである。更なる別の実施形態では、標的タンパク質は、IgAである。特定の実施形態では、標的タンパク質は、ヒトIgである。
【0044】
本明細書で使用される「細胞」とは、標的タンパク質を分泌する哺乳動物又は非哺乳動物細胞を意味する。従って一実施形態では、細胞は初代細胞である。別の実施形態では細胞は不死化細胞である。特定の実施形態では細胞は哺乳動物細胞である。別の実施形態では細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞、酵母細胞、又は、他の非哺乳動物細胞であってもよい。一実施形態では哺乳動物細胞はヒト細胞である。
【0045】
「B細胞の細胞系譜の細胞」又は「B細胞」とは、免疫グロブリン(例えば、抗体又はその断片)を産生し得る哺乳動物免疫系の細胞を意味する。本明細書に説明する本発明の文脈において、B細胞の細胞系譜の細胞は、標的タンパク質(即ち、抗体又はその断片)を産生し、分泌する。
【0046】
「不死化」細胞とは、適切な条件下で維持された場合に無限の複製が可能である細胞を意味する。一実施形態において不死化細胞は、実験室において無期限に増殖状態で維持され得る哺乳動物細胞である。一実施形態において不死化細胞は、得られる不死化細胞を生成するために別の細胞(例えば、非不死化細胞)に融合され得る融合パートナー細胞である。別の実施形態では融合パートナー細胞は、アンカーを発現する核酸分子を有する不死化細胞(例えば、BGS融合パートナー)の場合がある。別の実施形態では融合パートナー細胞はBGSを発現しない。更なる別の例として不死化細胞は、B細胞と融合パートナー細胞との間の融合によって生成されるハイブリドーマ細胞株である。
【0047】
一実施形態において、選択された細胞は、アンカーを発現する核酸分子を含む。この文脈における「含む」とは、核酸分子が、感染、レトロウイルス形質導入、エレクトロポレーション又はトランスフェクションによるその送達のために、細胞中で安定的に又はエピソーム的に運ばれることを意味する。別の実施形態では、細胞は、アンカーを発現し、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれる複製不能組換えレトロウイルスで形質導入される。更なる別の実施形態では細胞は、核酸分子によるエレクトロポレーションのためにアンカーを含む。本明細書に説明するアンカーを発現する細胞は、「BGS」(B細胞グロブリンスカフォールド)又はOCMS細胞株と称される。特定の実施形態では、用語「BGS」又は「OCMS」は、アンカーを指す。しかしながら、形成されたアンカー及び複合体が免疫複合体でない場合でさえ、用語「BGS」、「BGS+」、「OCMS」、又は、「OCMS+」は、にもかかわらず、細胞がアンカーを発現し、分泌された標的を捕捉するために複合体を形成する際に有用であることを示す。特定の実施形態では、用語「BGS-」又は「OCMS-」は、細胞がアンカーを発現しない細胞であることを示す。
【0048】
用語「種」又は「異種」が標的タンパク質又はリンカー又はIgリンカーの起源を定義するために使用される場合、種は、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ロバ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラクダ種、及び、ニワトリから選択され得るが、これらに限定されない。更に他の非哺乳動物起源の種を、選択される標的タンパク質に依存して使用し得る。Igリンカー、アンカー、及び、標的タンパク質は、特定の実施形態では、互いに異種起源の各々であることが理解される。
【0049】
本明細書で使用される「と複合体を形成する」、「に結合する」、又は、そのいずれかの文法的変形は、構成要素のランダムな関連付けではなく、特定の相互作用による構成要素の関連付けからエンティティを形成することを指す。特定の複合体内に含まれる相互作用は、相互作用に関与する構成要素又は構成要素の一部、及び、形成される相互作用又は結合のタイプによって定義される、ある特定のタイプの相互作用に限定される。当業者によって理解されるとおり、このような特異的相互作用は、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)及び非共有結合(例えば、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力及び疎水性相互作用)を含み得る。更なる実施形態では、本明細書で使用される「免疫複合体」は、その抗原に対する抗体の少なくとも1種類の相互作用を含む複合体を指す。これらの定義は、本明細書において、名詞、動詞又は形容詞としてのこれらの用語の使用の両方に適用される。
【0050】
本明細書で使用される用語「CAP様免疫複合体」は、ウイルス粒子が存在し、OCMSハイブリドーマの表面上のmAbに結合される場合、その細胞又は他の細胞によって分泌される更なるmAbもまた、ウイルス粒子を被覆することを意味する。これは、ハイブリドーマ表面上のmAbの分布を単に観察することによって検出することができるtell-tale免疫複合体(アンカー-リンカー-mAb-ウイルス-追加mAb)を作り出す。一実施形態では、ウイルスは1個を超えるエピトープを有する多価抗原であり、それは、抗原によって結合され得る。特定の実施形態では、そのようなエピトープの1個は、ウイルス上で複数回生じ得る。一実施形態では、標的タンパク質としてのmAbが認識され、追加のmAbのエピトープとは異なるエピトープに結合する。別の実施形態では、標的タンパク質としてのmAbが認識され、更なるmAbと同じであるがウイルスの異なる分子部分にあるエピトープに結合する。本明細書で使用される用語「エピトープ」又はそのいずれかの文法的変形は、免疫系(例えば、抗体、B細胞又はT細胞)によって認識される抗原の一部である抗原決定基を指す。ポリオウイルス等のウイルスの直径(30nm)は、mAbの直径(約15nm)よりも大きいことに留意されたい。CAP様免疫複合体では、ビリオンがアンカーの細胞外領域ポリペプチド(例えば、タンデムscFv)によって結合されたmAbの全てを細胞の1つの極上に隔離する大きな免疫複合体の形成の核となる(
図20参照)。従って、CAP様複合体は、そのサイズ及び位置によって同定され得る。一実施形態では、tell-tale、ウイルス依存性、CAP様構造は、それらの幅(標識された隣接画素の数)、蛍光強度、及び、染色された(例えば、DAPI染色された)核からの距離に基づいて、OCMSハイブリドーマ細胞の表面上で同定される。一実施形態では、ウイルス依存性CAP様免疫複合体を提示するOCMSハイブリドーマを、Perkin-Elmer Operetta High Content Imaging System中の黒底CellCarrierプレート中で画像化する。PerkinElmerのHarmony High Content Imaging and Analysis Softwareデータ処理ソフトウェア及びスポット検出アルゴリズムを使用して、画像を分析する。一実施形態では、CAP様複合体形成は、ウイルス結合の前にアンカーの細胞外領域ポリペプチド(例えば、タンデムscFv)を凝集させることによって促進される。別の実施形態では、CAP様複合体形成は、ウイルス結合の前にマウスタンデムscFvを凝集させるために、ポリクローナル抗マウス血清を添加することによって促進される。
【0051】
用語「層状免疫複合体」とは、mAb分泌レベルが低い場合に優勢の場合がある複合体を指す。アンカーは、細胞膜のいたる所に(across the cell membrane)分布したままであるが、mAb(例えば、ヒトIgG)は形質膜から離れた所に(far from the plasma membrane)見え、細胞膜の遠位のビリオンに付着している。層状複合体では、ウイルスは、細胞表面から>30nmに観察され得る層でmAbに結合する。この距離では、mAb及びアンカーの蛍光標識は重なり合わないので、複合体は、CAP様複合体について上記した技術を用いて、例えば、アンカー(例えば、タンデムscFv)をPEウサギIgGで標識し、ヒトmAbをFITC二次mAbで標識することによってアッセイすることができる。層状構造は、ヒトmAbがウイルス粒子によって細胞から隔てられる場合にのみ存在する緑色FITCシグナルに基づいて同定される。
【0052】
用語「普遍的な抗ウイルスmAb発見」又は「普遍的な抗ウイルスmAb方法又はプラットフォーム」とは、例えばOCMSハイブリドーマ技術及び自動化High-Content Imagingを使用して、全ビリオン及び単一の共通セットの診断試薬を使用して、多様なウイルスに結合するmAbを同定する能力を指す。アッセイの原理を
図19に示す。OCMSハイブリドーマ技術は、ヒトB細胞を実験室適合融合パートナー細胞株LCXに融合させることによってヒトB細胞を不死化し、それによってヒトB細胞に由来するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞を作製する。一実施形態では、ヒトB細胞は、アンカーを含む。別の実施形態では、融合パートナー細胞は、アンカーを含む。OCMSハイブリドーマは、リンカー(例えば、ウサギIgG)に結合することができるアンカー(例えば、タンデムscFv)をその形質膜外側上に提示する。リンカー(例えば、ウサギIgG)が培養培地に添加される場合、それは、アンカー(例えば、タンデムscFv)によって捕捉される。現在のOCMS法の一実施形態において、ヒトIgG(標的タンパク質)に特異的なウサギFAbが使用され、その結果、ハイブリドーマによって分泌されるヒトIgGは表面上に捕捉される。特定の実施形態では、これらのアッセイは、ハイブリドーマが分泌するヒトIgGのみに結合するために、培地中の過剰のウサギFAbを用いて行われる。例えば、培養物中の過剰のウサギFAbは、培養物中の他の細胞によって分泌されたヒトIgGを捕捉し得るが、そのIgGは、目的の分泌ハイブリドーマから更に離れている。あるいは、ハイブリドーマ上のアンカーによって結合されたリンカーは、ハイブリドーマが分泌するmAb又はIgGのみに結合するために選択され得る。試薬は非毒性であるので、実験は生きた細胞上で行われ、所望のmAbを発現する細胞は、フローサイトメトリー又は他の一般的な方法を用いて単離することができる。最適な普遍的な抗ウイルスmAb発見プラットフォームにおいて、インプットは、回復期B細胞のサンプル及び病原性ウイルスのサンプルである。アウトプットは、臨床、診断、治療、又は、研究用途のためのmAbを製造するために使用され得るハイブリドーマRNAサンプルである。一実施形態では、最優先の目標は流行中断である:ウイルス感染を生き残った者からmAbを同定し、それらを、流行の広がりを停止させるのに十分な速さで、RNA治療剤の形態で軍隊その他の職員及び集団に送達することである
40。特定の実施形態では、「mAb」、「IgG」及び「ヒトIgG」は、互換的に使用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0053】
本明細書で使用される「安定化ハイブリドーマ発現ライブラリー(Stabilized Hybridoma Expression Library)又はSHEL(商標)」とは、mAbのみを分泌するハイブリドーマ細胞のライブラリーを意味する。一実施形態ではSHEL集団は、実質的な又は有意な数の非分泌細胞集団を含まない。一実施形態ではSHEL集団は、非分泌細胞集団を含まない。対照的に従来のハイブリドーマライブラリーは、mAbを分泌するハイブリドーマがより速く増殖する非分泌ハイブリドーマ細胞によって圧倒される傾向があるため、ポリクローナル培養において維持することができない。SHELライブラリーは、OCMS法を用いて作製される。OCMS法は、ポリクローナルハイブリドーマ集団を分析し、選別して、mAbを分泌するだけの集団を作製することを可能にし、従って、培養物中で無期限に維持し、必要に応じて凍結保存することができる。従って、SHEL集団は、スクリーニング後に廃棄する必要がなく、各ハイブリドーマに対して実施することができる試験の数を増加させるという利点を有する。実施例12を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用される用語「作動可能に会合する」又は「作動可能に連結された」は、哺乳動物細胞の形質膜上の所望の位置における、選択されたタンパク質(例えば、アンカー)又はいずれかの組換えタンパク質などをコードする所望の遺伝子又は核酸配列の発現を可能にするための、核酸分子の成分の関係を説明する。簡単にするために、コード核酸配列を「トランスジーン」と称する。アンカートランスジーンは、アンカーをコードするトランスジーンの転写、翻訳、適切な細胞内輸送、及び/又は宿主細胞における発現を可能にする様式で、調節成分に作動可能に連結される。本明細書で使用される「作動可能に会合する」又は「作動可能に連結された」配列は、目的のトランスジーン(例えば、アンカー又は発現が意図されるいずれかの組換えタンパク質)と連続する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランスで又は離れて作用する発現制御配列との両方を含む。
【0055】
本明細書に説明する核酸配列において使用するための発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(polyA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、ウイルス形質導入効率及び核-細胞質翻訳効率を増強する配列(即ち、Kozakコンセンサス配列)、RNA翻訳効率を増強する配列、改善されたタンパク質プロセシング、発現収率及び安定性を生じる配列、並びに所望の場合、コードされる産物の分泌を増強する配列を含む。天然、構成的、誘導性及び/又は組織特異的であるプロモーターを含む多数の発現制御配列が当該分野で公知であり、利用され得る。
【0056】
核酸配列における使用のための適切な構成的又は誘導性プロモーター配列は、種々の商業的供給源(Invitrogen、Clontech及びAriadを含むがこれらに限定されない)から入手可能である。多くの他の系(例えば、天然プロモーター、組織特異的プロモーターなど)が説明されており7、8、9、当業者によって容易に選択され得る。特定の実施形態では、BGSをコードする核酸配列は、プロモーター/エンハンサー活性化、プロモーター/エンハンサー抑制、又は、エピジェネティック因子(例えば、特異的非コードRNA分子の発現)を介してそれらの発現レベルを制御し得る核酸配列との作動可能な会合を介する調節に従順である。
【0057】
一実施形態では、ベクターを使用して、アンカーコード配列及びそれに作動可能に連結された調節配列を、細胞、例えば、融合パートナー細胞、B細胞、又は、ハイブリドーマ細胞に送達することができる。本明細書で使用される場合、ベクターは、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミド、細菌、ウイルス又はナノ粒子を含むが、これらに限定されない、いずれかの遺伝子エレメントを含み得る。「ウイルスベクター」とは、非病原性ウイルス又は非複製ウイルスを意味する。一実施形態では、望ましいウイルスベクターは、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターであってもよい。別の実施形態では、望ましいベクターは、アデノウイルスベクターである。更なる別の実施形態では、適切なベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。種々の有用なレンチウイルスベクターと、細胞を形質導入し、異種を発現する際に使用するためのそのようなベクターを作製するための方法及び操作とが説明されている10。本明細書の教示を前提として本明細書に説明される組成物及び方法の成分を作製するために、多くの公知のベクターが当業者によって使用され得る。いずれかのこのようなベクター又は成分の使用は、これらの教示によって包含される。
【0058】
「選択マーカータンパク質」とは、組換え配列の成分の検出のために慣用的に使用されるタンパク質を意味する。一実施形態ではこのような選択マーカーは、抗生物質耐性タンパク質である。一実施形態では選択マーカーは、ピューロマイシンに対する耐性を付与する。一実施形態では選択マーカーは、ブラスチシジンに対する耐性を付与する。別の適切なマーカーは、抗生物質G418に対する耐性を哺乳動物細胞に付与するカナマイシン耐性(KanR)である。更なる他の選択マーカーは、当業者に公知であり、本明細書に説明する使用に適する。
【0059】
本明細書で使用される「標識」又は「レポーター分子」又は「検出可能な標識成分」は、アンカー、リンカー、二次抗体、標的(例えば、mAb)、標的によって認識される分子(例えば、抗原)、又は、標的タンパク質の他の結合パートナータンパク質と関連して有用な化学的又は生化学的分子部分であり、単独で又は他の成分と協力して標的の検出を可能にする。このような標識又は成分は、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、消光剤、放射性ヌクレオチド、酵素、酵素基質、補因子、阻害剤、放射性同位体、磁性粒子、及び、当技術分野で公知の他の分子部分を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、「標識」又は「レポーター分子」は、リガンドと共有結合又は非共有結合する。このような標識は、測定可能なシグナル(例えば、放射能)を単独で、又は、別の成分(例えば、基質の存在下での酵素シグナル)と関連して生成することが可能である。標識を抗原に付着させる方法は、慣用的である。
【0060】
組成物(核酸分子又は細胞)のいずれかの実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び、合成技術を含む。このような技術は、文献11に説明されているようなcDNAの従来のクローニング技術、ウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、及び、所望のヌクレオチド配列を提供するいずれかの適切な手法を含む。標準的なトランスフェクション及び同時トランスフェクション技術、例えば、CaPO4沈殿技術が使用される。使用される他の従来の方法は、相同組換え、シグナル生成を測定する方法などを含む。
【0061】
「4G4」とは、3種類のセービンPV血清型全てに結合するヒトmAbを分泌するハイブリドーマ細胞株を意味する。特定の実施形態では、「4G4」は、4G4細胞によって分泌されるmAbを指す。一実施形態では4G4細胞は、OCMS、BGS又は他のアンカーを発現し得る。
【0062】
「8C5」とは、狂犬病糖タンパク質に結合するヒトmAbを分泌するハイブリドーマ細胞株を意味する。特定の実施形態では「8C5」は、8C5細胞によって分泌されるmAbを指す。一実施形態では8C5細胞は、OCMS、BGS又は他のアンカーを発現し得る。
【0063】
用語「a」又は「an」は、1つ以上を指す。例えば、「発現カセット」は、1つ以上のこのようなカセットを表すと理解される。従って、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び、「少なくとも1つ」は、本明細書では、互換的に使用される。
【0064】
本明細書で使用される用語「約」は、特に明記しない限り、与えられた参照からの±10%の変動を意味する。
【0065】
用語「第1の」及び「第2の」は、本明細書全体を通して、組成物及び方法の様々な形態及び構成要素を区別するための参照用語として使用される。
【0066】
単語「含む」及び「含んでいる」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきであり、即ち、他の特定されていない構成要素又はプロセス工程を含むべきである。
【0067】
単語「からなる」、「からなっている」、及び、その変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきであり、即ち、特に列挙されていない構成要素又は工程を排除するべきである。
【0068】
本明細書で使用されるとおり、「から本質的になる」という語句は、説明した組成物又は方法の範囲を、特定の材料又は工程、並びに説明した又は請求項に記載された方法又は組成物の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本明細書において、方法又は組成物が特定の工程又は特徴を「含む」ものとして説明されている場合は常に、それらの工程又は特徴から本質的になり、それらの工程又は特徴からなる同じ方法又は組成物を包含することも意図されている。
【0069】
II.組成物
以下及び実施例においてより詳細に説明されるとおり、種々の組成物及び成分は、標的タンパク質を分泌する特定の細胞を調製する際に有用であり、多成分複合体(multi-part complex)の一部として細胞の形質膜外側上に標的タンパク質を捕捉するための方法において有用である。多成分複合体は、細胞結合アンカーとリンカーとの間の「第1の」複合体、及び、結合リンカーと標的タンパク質との間に形成される「第2の」複合体を含む。更なる他の複合体は、細胞に結合した多成分複合体の一部の場合がある。例えば、以下に説明するとおり、標的が抗体である場合、「第3の」複合体は、結合した標的タンパク質とその抗原との間で形成され得る。また、「第4の」複合体は、結合した抗原と更なる標的との間に形成され得る。本明細書中の教示を利用することによって、細胞を、それが分泌する標的タンパク質(例えば、mAb、IgG、IgA、又は、ヒトIg)に物理的に付着させることが可能である。その標的は、適切な特異性のリンカーが第1及び第2の複合体を形成することによってアンカーを介して細胞に結合される場合にのみ、標的を分泌する細胞に付着するであろう。
【0070】
従って、1つの組成物は、以下に説明する方法における使用のための所望の細胞の構築に有用な核酸分子である。この核酸分子は、核酸分子を含む細胞の表面上でのアンカーの発現を指示する調節配列と作動可能に会合したアンカーをコードする。アンカーは、選択されたリンカーと第1の複合体を形成するために設計され、リンカーは、選択された標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。発現するアンカーが標的タンパク質に実質的に結合しないことは、この核酸分子の必要条件である。
【0071】
アンカーは、リンカーに結合する細胞外領域ポリペプチドを含むので、そのポリペプチドは、リンカーとのみ複合体を形成しなければならない。例えば、細胞外領域ポリペプチドがリンカー上の配列(又は上記の定義で同定された他の細胞外ペプチドのいずれか)に特異的に結合する単鎖抗体可変領域(scFv)を含む場合、そのポリペプチドは、標的タンパク質といかなる方法でも結合してはならない。実施例に示されるとおり、アンカーのscFvは、特定の種の免疫グロブリン(例えば、ウサギ免疫グロブリン)のみを同定し得る。従って、リンカーがウサギ抗体(又は標的タンパク質に特異的なウサギ種抗体)であり、標的タンパク質がウサギ種抗体でない場合、アンカーは、リンカーに結合し、標的タンパク質には結合しない。実施例及び上記に説明したとおり、アンカーの細胞外領域は、各scFvの重鎖Fv及び軽鎖Fv配列と、各鎖の間に介在するスペーサーとを交互に含むことができる。例えば、
図1を参照されたい。
【0072】
本明細書に説明する核酸分子の一部はまた、プロモーター、リーダー配列、任意的なエンハンサー、及び/又は、選択マーカータンパク質をコードする任意的な配列を含む調節配列であり、これらは、アンカーをコードする核酸配列と作動可能に会合し、アンカーが選択された細胞において発現され、任意的にマーカータンパク質によって同定されることを可能にする。マーカータンパク質は、設計選択として、アンカー又は追加の調節配列を発現させるために使用されるのと同じ調節配列と関連させることができる。
【0073】
特定の実施形態では、アンカーの発現を制御するプロモーターは、誘導性プロモーター又は抑制性プロモーターである。この実施形態は、アンカー発現が従来のインデューサー又はリプレッサーの使用によって制御されることを可能にし、このような制御は、以下の方法における使用のために所望される。
【0074】
アンカーの調節配列、ポリペプチドタグ、切断タグ、膜貫通配列、スペーサー及び他の分子部分は、本明細書及び以下の実施例に指示されるとおり、上記に提供され、組み立てられたこれらの成分又は関連する引用の定義に提供されるリストから選択され得る。従って、一実施形態では核酸分子は、以下の表1に記載されるアンカー成分を含む。例えばアンカーは、ウサギ抗ヒト抗グロブリンであるIgリンカーに結合することができるGly-Serスペーサーによって分離されたタンデムscFvを含み、ポリペプチドタグは、Mycタグであり、膜貫通タンパク質は、PDGF内在性膜タンパク質に由来する。
【0075】
リンカーと細胞によって分泌されたmAbとの相互作用によって、アンカー配列を発現する細胞の表面上に形成された複合体を細胞の表面から除去できることも有利な場合がある。一実施形態では、特に分泌されたmAbが抗原に結合している場合、複合体の除去が望ましい。例えば、細胞が異なる抗原の集団に曝露され、抗原の1つがmAbに結合することが認められる場合、細胞の表面から複合体全体を分離し、複合体中の分子の組成を分析する(例えば、質量分析法によって)ことにより、mAbによって結合された抗原の同定が可能になる。この理由のために、アンカー分子上への切断タグの組み込みが有用である。一実施形態では、アンカーがウサギ抗ヒト抗グロブリンであるIgリンカーに結合することができるGly-Serスペーサーによって分離されたタンデムscFvを含み、親和性タグはMycタグであり、膜貫通タンパク質は、PDGF内在性膜タンパク質に由来し、TeV切断タグは、タンデムscFvと膜貫通ドメインとの間に位置する。
【0076】
特定の実施形態では、リンカーは抗体又は抗体断片である。抗体又は断片は、上記のものいずれかの場合があるが、一実施形態において抗体断片は、Fv断片である。別の実施形態では抗体断片はFab断片である。なお更なる実施形態では、Igリンカーは、Fv若しくは単鎖Fv、又は、単一ドメイン抗体、及び/又は、これらの例のいずれかの組換えバージョンである。
【0077】
更なる別の実施形態では、アンカーは、リンカーがアンカーの種と異種の哺乳動物種のものであり、標的タンパク質がリンカー及びアンカーと異なる種のものになるために、リンカー及び標的タンパク質を念頭に置いて設計される。
【0078】
この教示から容易に理解され得るとおり、多種多様なアンカー及びアンカーを発現する核酸分子は、標的タンパク質、細胞、及び、本明細書に説明する方法において有用な他の成分の選択に依存して構築され得る。
【0079】
具体的には、本発明の特定の実施形態では、リンカー抗体の種がアンカーを発現する細胞によって分泌される抗体の種と異なる限り、アンカータンパク質の種結合特異性は、実際的には、リンカー抗体のいずれかの種に対して向けられる場合があることが明らかである。更なる別の実施形態では、リンカー抗体は、アンカータンパク質に組み込まれた抗体の種に特異的ではない。一実施形態では、アンカードメイン中のscFv分子部分はマウス起源であり、リンカーIgは、ウサギ起源であり、ヒトIgに対して強力な結合を示すが、マウスscFv分子部分に対する結合活性は、ほとんど又は全く示さなかった。この試薬のセットは、分泌されたヒトIgを、それを分泌する細胞株の表面に誘導的に付着させるために適する。別の実施形態では、アンカー抗体ドメインは、ラクダ抗体に特異的であるマウスscFvドメインであり、ラクダ抗体は、ウシ抗体に特異的であるが、マウスIgに対しては反応性を有さない。この試薬のセットは、分泌されたウシIgを、それを分泌する細胞の表面に誘導的に付着させるのに適する。別の実施形態では、ラクダ抗体に特異的なウサギscFvをアンカーポリペプチドに組み込み、ラクダ抗体はマウスIgに特異的である。この試薬のセットは、分泌されたマウスIgを、それを分泌する細胞の表面に誘導的に付着させるのに適する。試薬の更なるセットは、ラクダ抗体に特異的なマウスscFv配列を発現するアンカータンパク質を含み、ラクダIgは、ウサギIgに特異的に結合するが、マウスIgには結合しない。この試薬のセットは、分泌されたマウスIgを、それを分泌する細胞の表面に誘導的に付着させるのに適する。更なる例は、当業者には容易に明らかである。
【0080】
以下に説明する方法において有用な更なる別の成分は、核酸分子を含む細胞の表面上でのアンカーの発現を指示する調節配列と作動可能に会合したアンカーをコードする核酸分子を含むベクターである。アンカーは、選択されたリンカーと第1の複合体を形成するために設計され、リンカーは、アンカーによって認識されない標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。特定の実施形態では、ベクターは、本明細書に説明する核酸分子のいずれか、又は、本明細書及び実施例によって一般的に又は具体的に教示される構築かを保有する。一実施形態では、ベクターはプラスミドである。別の実施形態では、レンチウイルスなどの組換えウイルスベクターが好ましい。ベクターは、核酸分子を細胞内に輸送するために一般的に使用される多くのベクターの中から選択され、選択可能なマーカータンパク質を含んでもよい。このようなベクターは、当業者の選択で、選択された細胞にトランスフェクト又は感染される。核酸分子を細胞に挿入するためのエレクトロポレーションは、本明細書に説明する方法において有用な細胞を提供する際に使用するための別の実施形態である。
【0081】
従って、本明細書で提供される組成物は、各々が、選択されたリンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した様々な細胞であり、リンカーは、アンカーによって認識されない標的タンパク質と第2の複合体を形成するために設計される。特定の実施形態では、これらの細胞は、本明細書に説明する核酸分子のいずれかを含む。別の実施形態では、これらの細胞は、本明細書に説明するベクターのいずれかを含む。更なる別の実施形態では組成物は、mAbsの分泌のために実質的に濃縮されたハイブリドーマのSHEL集団を含む。一実施形態では集団は、本明細書に説明のOCMS法の使用によって作製される。
【0082】
一実施形態において、標的タンパク質を単離又は同定するための方法のいくつかにおいて細胞が使用される前に、細胞は、その細胞表面上にアンカーの細胞外分子部分を含む。別の実施形態では、リンカーに曝露された細胞は、その形質膜外側表面上に、アンカーとリンカーとの間に形成された第1の複合体を含む。一例として細胞は、マウス抗ウサギ抗体又はそのscFvのみをアンカーとして発現する。
【0083】
別の実施形態では、細胞は、その細胞表面上に、リンカー上の配列と複合体で結合したアンカーのscFvを含み、これは、アンカーのそれに対する異種抗体又は抗体断片である。例えば、一実施形態ではリンカーは、ウサギ抗ヒト抗体である。従って細胞は、例えば、Fv断片、Fab断片、Fv若しくは単鎖Fv、又は、単一ドメイン抗体、及び、ウサギ抗ヒト抗体の組換えバージョンであるウサギリンカーに結合したマウスscFvアンカー構築物をその表面に結合している。
【0084】
更なる別の実施形態では、細胞は、その形質膜外側表面上に、リンカーに結合したアンカーを含む多重複合体を含み、分泌された標的タンパク質(例えば、抗体)の存在下では、複合体は、標的タンパク質にも結合したリンカーを更に含む。
【0085】
上記のとおり特定の実施形態では、リンカーは、アンカーの種と異なる種のものであり、標的タンパク質は、リンカー及びアンカーに対して異なる種のものである。実施例に示すとおり、アンカーはマウス抗体に由来し、リンカーはウサギ抗ヒト抗体に由来し、標的タンパク質はヒト抗体である。
【0086】
なお更なる実施形態では、細胞は、その表面上に、更により層状の複合体(例えば、アンカー-リンカー-標的タンパク質(抗体)の間の相互作用によって形成される複合体)を含み、これは、抗体が指向される抗原(例えば、裸の抗原、又は、標的タンパク質及びそれが分泌された細胞を単離、定量又は同定する際の更なる使用のために標識される抗原)に更に連結され得る。従って、更なる実施形態は、以下の成分:細胞、細胞表面上のアンカータンパク質、アンカータンパク質に結合したリンカー、及び、細胞によって分泌されたmAbを含む細胞ベースの免疫複合体である。
【0087】
更なる別の実施形態は、以下の成分:細胞、細胞表面上のアンカータンパク質、アンカータンパク質に結合したリンカー、細胞によって分泌されたmAb、及び、分泌されたmAbが結合する抗原を含む、細胞ベースの免疫複合体である。更なる別の実施形態では、この複合体内の抗原は、標識された抗原に特異的な発現されたmAbを含有する本発明の細胞ベースの免疫複合体の同定を可能にする標識(ビオチン、蛍光分子、又は、磁気ビーズなどの分子構造又は修飾)に関連するか、又は、それを含有する。あるいは、別の実施形態では、複合体は、mAbによって結合された抗原に対して親和性を有する同様に標識された分子を含み、従って、標識された抗原に特異的な発現されたmAbを含む、本明細書に説明する細胞ベースの免疫複合体の同定を可能にする。
【0088】
更なる別の実施形態では、これらの細胞のいずれかは、アンカーを発現する細胞に対して行われる従来の不死化技術の使用によって不死化された細胞である。あるいは、既に不死化された細胞が上記の核酸分子又はベクターを含むように操作され、その結果、得られる不死化細胞は、アンカー、及び/又は、本明細書に説明する多重免疫複合体の更なる成分のいずれかを発現する。細胞が不死化され、選択されたアンカーを発現し、不死ハイブリッド細胞を作製するために初代細胞に融合するのに適する場合、それは、融合パートナー細胞株と称される。
【0089】
更なる別の実施形態では、上記の細胞のいずれかは、B細胞の細胞系譜の細胞の場合がある。細胞の別の実施形態は、細胞の種、例えば、ヒトその他の哺乳動物、又は、非哺乳動物において異なる。同様にいくつかの実施形態では、細胞は、調節配列がいずれかの方法の実施の間に、細胞におけるアンカー発現が誘導又は抑制されることを可能にする核酸分子を含む。
【0090】
更なる別の実施形態では、上記の細胞のいずれかは、治療的、研究的又は診断的使用を有するいずれかの所望の標的タンパク質を組換え法で発現及び分泌するために、遺伝子工学技術によって操作された組換え哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、標的タンパク質は、抗体ではないが、いずれかの選択されたタンパク質の高レベル産生又は分析のために、以下に説明する方法において使用される場合がある。
【0091】
1つの特定の実施形態では、本明細書に説明する組成物及び成分は、その形質膜外側上に固定されたアンカーを含むハイブリドーマ細胞を提供し、アンカーは、選択された免疫グロブリン(Ig)リンカーと第1の免疫複合体を形成するために設計され、リンカーは、細胞によって分泌されるモノクローナル抗体と第2の免疫複合体を形成するために設計され、モノクローナル抗体はアンカーによって認識されない。別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、その細胞の形質膜外側表面上に、アンカー及びIgリンカーを含む第1の免疫複合体を更に含む。この細胞は、アンカーを発現する元の細胞がIgリンカーの存在下にある場合に提供される。もう1つの特定の実施形態では、Igリンカーは、抗体若しくは抗体断片、又は、Fv断片、Fab断片、Fv若しくは単鎖Fv、又は、単一ドメイン抗体、及び/又は、その組換えバージョンである。
【0092】
別の実施形態では、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体に結合したリンカーと共に、リンカーに結合したアンカーを含む多成分免疫複合体をその細胞の形質膜外側表面上に更に含むハイブリドーマ細胞が提供される。アンカーを発現する元の細胞がリンカーの存在下にあり、ハイブリドーマがmAbを分泌している場合、細胞を単離することができる。上記のとおり、これらのハイブリドーマ細胞では、リンカーがアンカーの種と異種の哺乳動物種のものであり、モノクローナル抗体がリンカー及びアンカーと異なる種のものである。
【0093】
更なる別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞は、その細胞の形質膜外側表面上に、リンカーに結合したアンカーを含む免疫複合体を含み、リンカーは、細胞株によって分泌されるモノクローナル抗体に結合し、モノクローナル抗体によって特異的に認識される抗原と免疫複合体を更に形成する。この細胞は、アンカーを発現する元の細胞がリンカーの存在下にあり、ハイブリドーマがmAbを分泌しており、細胞が抗原の存在下にある場合に単離される場合がある。
【0094】
以下に説明する方法において有用な組成物の特定の実施形態は、mAbを分泌し、そのmAbを免疫複合体中のその形質膜外側上に捕捉する、哺乳動物細胞株であり、免疫複合体は、(1)アンカーとして、ハイブリドーマによって分泌される抗体の種とは異なる抗体の種に特異的であるハイブリドーマ細胞株の形質膜外側に付着した抗体、及び、(2)アンカーによって認識される種の抗体であり、それ自体がハイブリドーマによって分泌されるmAbの種に特異的であるリンカーを含む。例えば、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体はヒト抗体であり、アンカーは、ウサギ免疫グロブリンに特異的なマウス抗ウサギscFvを含み、リンカーはウサギ抗ヒト種抗体又は結合断片である。
【0095】
本明細書に説明するとおり、一実施形態において、融合パートナーを生成するために使用される細胞株は、、転写-3タンパク質のシグナルトランスデューサー及びアクチベーター(STAT3)を構成的に活性化し、サイトカイン依存性細胞株のサイトカイン非依存性増殖を誘導し得るサイトカイン受容体分子である、変異糖タンパク質130(gp130)を発現する細胞株である。重要なことに、gp130は、IL-6及びIL-11と、カルドプトリフィン1(CT-1)、白血球遊走阻止因子(LIF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、及び、オンコスタチンM(OSM)も含むような多様なサイトカインに対するヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体のファミリーの共有要素である。gp130の突然変異型は、Y-186からY-190までの5個のアミノ酸を欠失しており(YSTVY欠失)、gp130 ΔYYと称される。19
【0096】
本明細書に説明する組成物及び方法の特定の局面において、gp130 ΔYYを構成的に発現し、アンカーを発現する融合パートナー細胞株は、多くの方法において有用である。生きている細胞又は細胞集団によって発現されるgp130 ΔYYの量は、標準的な免疫蛍光法及び蛍光活性化セルソーティング法(FACS)によって容易に評価することができ、gp130 ΔYYの発現を失った集団内の細胞は、同じ方法によって容易に同定及び除去することができる。結果として、単純な試験によって、細胞融合実験の前に、集団中の融合パートナー細胞の全てが、必要とされる構成的サイトカインシグナル伝達活性を発現するか否かを容易に決定することができる。
【0097】
サイトカイン活性の量は、培養培地中の分泌サイトカインの蓄積に依存しないため、培養条件が変化することにつれてgp130 ΔYY誘導シグナル伝達のレベルは、実質的に変化しないと予想され、これは、培養細胞へのストレスを減少させる。更に、gp130 ΔYY発現融合パートナー細胞株とB細胞との融合によって作製されたハイブリドーマ細胞集団は、ハイブリドーマ細胞作製及び増殖の初期段階においてさえ、例えば、蛍光標識gp130抗体を培養培地に添加し、蛍光顕微鏡で分析することによって、標準的な免疫蛍光法によって容易に分析される。これは、特別な取り扱いで、重要なmAbを発現するが、安定なmAb発現に重要である自律性サイトカイン活性を発現しない細胞を同定し、提供することを可能にするので、即座の利益を有する。
【0098】
融合相手細胞株においてIL-6又はIL-11を発現させることの最も重要な利点の1つは、サイトカイン発現が初代ヒトB細胞との細胞融合によって形成されたハイブリドーマにおけるヒトmAbの発現を安定化させることができることである。13、22この作用は、異所性hTERT遺伝子も発現するヘテロミエローマ細胞株においてサイトカインが発現される場合に、とりわけ強力である。hTERT及びgp130 ΔYYを発現するが、IL-6又はIL-11を含まない融合パートナー細胞株もまた、ヒトmAbクローニングに有用である。
【0099】
一実施形態では、LCX細胞株が提供され、これは、レトロウイルスhTERT遺伝子及びレトロウイルスgp130 ΔYY遺伝子で形質導入されたK6H6/B5細胞株である。LCX細胞株、株名称03.06.17は、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110 USAに位置するAmerican Type Culture Collection(ATCC)の受託番号PTA-124063で、2017年3月24日に寄託された。この細胞株及びその子孫では、gp130 ΔYYのレベルを容易に監視することができる。LCX細胞株は、初代ヒトB細胞との細胞融合を介してヒトmAbをクローニングするのに有効である。このLCX細胞株を使用して、実施例1に説明のとおりアンカーも発現させる場合、これは、LCX-BGSと称される新規融合パートナー細胞株である。例示的なLCX-BGS細胞株、株名称03.06.17は、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110 USAに位置するAmerican Type Culture Collection(ATCC)の受託番号PTA-124062で2017年3月24日に寄託された。LCX BGSは、ヒトmAbをクローニングするための融合パートナーとしての使用に適する。LCX BGSをBリンパ球と融合させて、ヒトmAbを分泌するハイブリドーマを生成することができ、本明細書に説明の方法を使用して、それらのmAbをそれらの形質膜外側上に捕捉することができる。
【0100】
フローサイトメトリーによってLCX-BGS細胞株の表面上でgp130 ΔYY及びBGS分子部分の両方を同時に評価することができるので、この細胞株は、ヒトmAbクローニングのためのハイブリドーマ法のハイスループットの、工業的規模の適用への適応に特に適する。LCXは、hTERTの存在下及び異所的に発現されたIL-6又はIL-11の非存在下でヒトmAbの効率的なクローニングを可能にする、構成的に活性なサイトカイン受容体gp130 ΔYYを発現する細胞株の一例である。LCX-BGSは、gp130 ΔYY及び適切なアンカーを構成的に発現する細胞株の一例である。この細胞株は、分泌サイトカインを発現する融合パートナー細胞株の使用における重要な限界を克服し、工業的規模のハイスループットヒトmAbクローニング方法への適応に理想的である細胞の実施形態である。
【0101】
細胞株LCX及びLCX-BGSの実施形態は、gp130 ΔYYの量が生きている細胞の集団に対するフローサイトメトリーによって評価できるので、融合パートナー細胞株によって発現されるサイトカインシグナル伝達活性のより良好な標準化を可能にする。更にこの細胞株は、品質管理モニタリングのために、生細胞培養上の融合パートナー細胞株gp130 ΔYY発現の保存の評価を可能にする。それは、更に、例えばgp130 ΔYYの発現量(及びサイトカインシグナル伝達の大きさ)を滴定することによって、又は、gp130 ΔYYトランスジーンの発現を維持するハイブリドーマ細胞の割合を評価することによって、融合パートナー細胞株の最適化を可能にする。
【0102】
LCX-BGS又はLCXに類似する細胞は、典型的なハイブリドーマ実験の場合によくあるとおり、少量培養(100個未満の細胞)を含むポリクローナル細胞培養中の(gp130 ΔYY発現の結果として)サイトカイン活性のリアルタイム評価を可能にする。これらの細胞はまた、これらの細胞に特別な取り扱いを与えるために、mAb発現の不安定性の代用指標である構成的サイトカインシグナル伝達を有さないハイブリドーマのリアルタイム同定において有用である。最後に、LCX-BGSは、融合パートナー細胞株及びそれらに由来するハイブリドーマに対して、より一貫した成長条件、例えば、培養培地中の細胞の密度、細胞が培養中に存在した時間、及び、何時培養培地が更新又は置換されたかに応じて、大きく変化しない、より安定したレベルのサイトカインシグナル伝達を使用することを可能にする。
【0103】
更に他の細胞株及び融合パートナー細胞株が、本明細書に説明する教示に従って開発される場合がある。
【0104】
更なる別の局面は、本明細書に説明する2種以上のハイブリドーマ細胞株、以下に説明する方法に由来するハイブリドーマ細胞の集団、以下に説明する方法に由来する融合パートナー細胞の集団、又は、融合パートナー細胞に由来するハイブリドーマ細胞の集団を含む、ハイブリドーマmAb発現ライブラリーを含む。一局面において、融合パートナー細胞は、hTERT及びgp130 ΔYYを発現する。別の局面では、融合パートナー細胞は、hTERT、アンカー、及び、gp130 ΔYYを発現する。
【0105】
III.方法
上記のこれらの核酸分子、ベクター及び細胞型のいずれか又は全ては、選択された分泌標的タンパク質の分析及び/又は生成又は産生のため、所望の特徴を有する細胞(例えば、標的タンパク質高産生体)の生成及び/又は同定のため、並びに、ハイブリドーマのハイスループットスクリーニング及び評価のためのいずれかの数の方法において使用される場合がある。これらの核酸によってコードされる遺伝子の安定な発現又は一過性の発現を生じる条件下で核酸を細胞に導入するための多様な方法は、一般的に使用されており、当業者に周知である。本明細書に説明する組成物は、以下の方法その他の類似の方法において使用される場合がある。
【0106】
一局面において、本明細書に説明するようなアンカーを発現する細胞を生成するための方法は、アンカーを発現する核酸分子又はベクターを、選択された細胞(哺乳動物、非哺乳動物、初代又は不死化)に安定的に又は一過性に送達することを含む。例えば、不死化細胞株におけるアンカータンパク質の異所性発現は、アンカータンパク質をコードする核酸配列を含有する複製欠損レトロウイルス又はレンチウイルスによる細胞の形質導入によって達成される場合がある。方法及びプラスミドベクター、並びに、有用な複製欠損レトロウイルス又はレンチウイルスを作製するために使用される場合がある方法の例は、pMSCV及びpLION IIベクター並びにプラスミドを含み、説明されている。12、13、14
【0107】
特定の実施形態では、これらの方法を使用して作製されたレトロウイルス又はレンチウイルス粒子は、細胞に感染し、レシピエント細胞においてアンカータンパク質を発現し得る核酸配列を細胞に提供する。アンカーをコードするトランスジーンは、レシピエント細胞において安定な又は誘導可能な発現を可能にする核酸配列に作動可能に連結される。アンカーをコードする配列及び必要な調節エレメントを含む核酸を導入する代替的な方法もまた、当業者に周知であり、リン酸カルシウムトランスフェクション、エレクトロポレーション、及び、カチオン性脂質媒介トランスフェクションを含む。
【0108】
アンカーの異所性発現は、種々の方法を用いて確認される。一実施形態では、アンカーは、マウスIgに特異的な抗血清によって結合されるマウスscFvドメインを含み、マウスIgは、蛍光分子部分で標識される。アンカータンパク質をコードする核酸配列を含む細胞集団をそのような抗血清と接触させることは、細胞がアンカータンパク質を発現する場合、蛍光抗血清を細胞の表面に結合させる。この手段により、アンカータンパク質を発現する細胞は、顕微鏡検査、フローサイトメトリーその他の方法によりそれらの蛍光シグナル伝達に基づいて同定される。別の実施形態では、更なる抗原がアンカータンパク質に組み込まれ、アンカータンパク質は、アンカー発現を評価するために使用される分子によって結合される。一実施形態では、アンカータンパク質がMycタグを有する場合、Mycタグに特異的な抗体を用いてアンカー発現を評価する。タグに結合する抗体の使用によるタンパク質発現の確認を可能にするために、目的のタンパク質に融合される他のポリペプチドタグ(例えば、FLAGタグ、NEタグ、HAタグ、又は、Hisタグ若しくはポリHisタグ)の使用及び検出は、当技術分野で周知である。
【0109】
この方法は、組換えタンパク質を発現及び分泌するハイブリドーマ細胞株その他の安定な細胞株を作製するための更なる改変に有用な成分のような種々の細胞の作製を可能にする。これらの方法は、細胞及びそれらが分泌するタンパク質の特徴(定量的、構造的、機能的、抗原的、触媒的、及び、相互作用的特徴を含む)を評価するための広範な有用性を有する。
【0110】
構成されるとおり、抗体又は他のタンパク質を分泌する細胞は、自発的であろうと組換え的に発現されようと、アンカータンパク質と組み合わせて、細胞を適切なリンカータンパク質と接触させることによって、分泌タンパク質が細胞の表面に誘導的に付着され得る能力を有する。アンカータンパク質を発現しない細胞に比べて、この型の細胞の一般的な有用性は、分泌タンパク質がそれを発現する細胞に物理的に連結されている間に分析できることである。これは、細胞が異なる分子を分泌する不均一な細胞集団によって発現される分泌タンパク質を分析する場合に特に有用であり、目的は、特定の特徴を有する分子を分泌する細胞集団の個々のメンバーを同定及び/又は単離することである。
【0111】
一実施形態では、mAbのポリクローン集団を分泌し、アンカータンパク質を発現する細胞集団を、分泌されたmAbが細胞に付着する適切な培養条件下で、mAbに特異的なリンカー分子と接触させる。この細胞集団を、任意的に、蛍光標識抗原と接触させる。抗原に特異的なmAbを分泌する細胞は、それらの膜に付着した蛍光シグナルに基づいて容易に同定される。この手段により、所望の抗原結合特異性を有するmAbを分泌し、さもなければ容易に区別することができなかったハイブリドーマのポリクローン集団の中に存在するハイブリドーマを容易に同定し、単離することができる。
【0112】
アンカータンパク質を発現する細胞の別の用途は、全てが同じ分子を異なる速度で分泌する細胞の多様な集団の分析を容易にすることである。この実施形態において、目的は、特定の速度で分子を分泌する細胞集団の個々のメンバーを同定及び/又は単離することである。1つのこのような実施形態において、サイトカイン又はmAbを分泌し、アンカータンパク質を発現する細胞集団は、分泌タンパク質がその産生速度に比例して細胞に付着する適切な培養条件において、サイトカイン又はmAbに特異的なリンカー分子と接触する。これにより、集団の高発現メンバーが同定され、単離される。
【0113】
元の細胞が不死化されていない場合、この方法の別の実施形態は、従来の方法によって、現在核酸分子又はベクターを保有する細胞を不死化することを含む。従って、この方法は、分泌された標的タンパク質を固定化する目的のために、アンカーを発現する所望の不死化細胞を作製するために適合される場合がある。このような不死化細胞は、以下の実施例に説明されるとおり、ハイブリドーマの生成のための融合パートナー細胞の場合がある。
【0114】
本明細書に説明する方法及び組成物の特定の実施形態では、アンカーは、その細胞による分子の分泌の開始の前又は後のいずれかの時点で細胞に導入される。例えば、アンカータンパク質は、特定のタンパク質を分泌しない不死化細胞、例えば、CHO又は293T細胞上で発現され、この細胞は、タンパク質及び他の生物学的分子の工業的産生のために一般的に使用される。これらの細胞上でのアンカータンパク質発現の確立に続いて、これらの細胞によって、標的(例えば、免疫グロブリン又はサイトカイン)の分泌を誘導するこれらの細胞の集団に更なる核酸が提供される。これらの細胞によって分泌される標的の量は、細胞集団を、分泌される標的に特異的なリンカーと接触させることによって評価され、所望の量の標的を特異的に分泌する細胞が同定される。この方法は、工業的有用性の一例において、最大量の商業的に価値のあるタンパク質を分泌する集団の中の細胞を迅速かつ効率的に同定することができる。
【0115】
更なる別の実施形態では、ハイブリッド細胞(又はハイブリドーマ)を作製するために別の細胞と融合されることが意図される細胞にアンカーが導入される。このような細胞は融合パートナー細胞と称される。融合パートナー細胞上でのアンカータンパク質発現の確立に続いて、細胞は、所望の標的タンパク質の多様なアイソフォームを分泌する細胞からなる別の細胞集団に融合される場合がある。本方法のこの実施形態は、アンカータンパク質及び所望の標的タンパク質の多様なアイソフォームの両方を発現する細胞のポリクローン集団を作製する。望ましいタンパク質の理想的なアイソフォームを分泌するハイブリドーマは、本発明によって提供される方法を使用して容易に同定及び単離される。
【0116】
従って、別の局面では、ハイブリドーマ細胞を作製する方法は、B細胞の細胞系譜の細胞を、このような融合パートナー細胞(例えば、選択されたリンカーと複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した不死化細胞)と融合させることを含み、前記リンカーは、B細胞又はB細胞に由来する細胞によって分泌される抗体に結合するために設計され、前記抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、前記アンカーによって認識されない。
【0117】
細胞株を作製する方法に加えて、得られる細胞を使用することができる様々な異なる方法がある。一例として、細胞によって分泌される標的タンパク質の特徴を検出又は測定するための方法は、アンカーを発現する新規な細胞を使用することができる。1つのそのような方法では、細胞集団が提供され、該集団の各細胞は、リンカーと第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現している。次いで、この細胞集団を、第1の複合体を形成し、アンカーによって認識されない標的タンパク質との第2の複合体を形成するために設計されたリンカーと接触させる。該リンカーへの前記細胞集団の曝露は、リンカーが第1の複合体においてアンカーと結合することによって、細胞の形質膜外側に付着することを可能にする。この得られた細胞集団は、細胞が標的タンパク質を分泌する条件下でリンカーの存在下で維持される。標的タンパク質は、第2の複合体、即ち結合したリンカー-標的タンパク質複合体の形成を介して、細胞付着した第1の複合体に結合する。従って、標的タンパク質は、それを分泌した細胞に結合される。特定の実施形態では、次いで、結合した標的タンパク質を、第1及び第2の免疫複合体によって細胞に結合した標的タンパク質の存在、抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性を同定することを目的とする種々のアッセイに供する。
【0118】
この方法では、成分及び細胞の生成について上述した要件が適用される。即ち、リンカーは、アンカーの種と異なる種のものであり、標的タンパク質は、リンカー及びアンカーに対して異なる種のものである。特定の実施形態では、異なる種のアンカー、リンカー、及び、標的タンパク質の使用は、本明細書に説明する方法及び組成物に必須である。一実施形態では、組成物及び方法は、マウス起源であり、ウサギ起源のIgリンカーに特異的に結合することができるアンカー分子を用いて実施するために具体化される。この場合、ウサギIgリンカーは、例えば、分泌された標的タンパク質に特異的なウサギmAb又はFabである。従って、本発明の特定の実施形態は、より具体的には、次のとおり表現することができる。(1)アンカータンパク質は以下:分泌タンパク質に対する親和性が最小であること、及び、Igリンカータンパク質に結合することという特徴を有する。(2)Igリンカータンパク質は以下:アンカータンパク質及び分泌された標的タンパク質に結合することという特徴を有する。
【0119】
リンカー又はIgリンカーは、リンカーの重要な特性が2個の分子部分のいずれも関連しない条件下で2個の別個の分子部分に対する親和性を有すること、及び、2個の分子部分の存在下でIgリンカーが2個の分子部分を1個の分子複合体に組み込む免疫複合体を作製することを考慮すると、多くの構成において満たすことができる役割を有する。特定の実施形態では、アンカータンパク質は、カノニカル結合(即ち、アンカータンパク質scFvドメインの抗原結合部位がIgリンカー上の特異的抗原を認識する)、又は、非カノニカル結合を介して、Igリンカータンパク質のFc又はFabドメインに結合する。特定の実施形態では、分泌されたmAb上で認識される抗原が細胞の表面上のscFvによって発現される抗原と同じである。この場合、分泌標的タンパク質上の1個の結合部位と、アンカータンパク質上の別の結合部位とに特異的なIgリンカーは、分泌タンパク質を分泌細胞上のアンカーに連結する。例えば、本実施形態のアンカー分子を発現し、マウスIgを分泌するハイブリドーマは、ウサギポリクローナル抗マウスIg抗血清からなるIgリンカーと接触すると、分泌されたマウスIgを細胞表面に付着させる。この実施形態では、アンカーの本質的な特徴は、異なる種のIgに結合することではない。むしろ、それは、分泌された分子に結合しないが、Igリンカーによって結合される可能性がある分子である。この説明から、アンカーは、細胞によって分泌される分子と非常に類似しているか、又は、異なる場合があることが明らかである。
【0120】
アンカー分子が他の分子に結合する(例えば、免疫グロブリンに由来する抗原結合ドメインを有する)分子であるか、又は、単に機能性リンカーによって特異的に結合される場合があるタンパク質であるかにかかわらず、本発明において同等に機能できることが更に明らかである。本発明において、アンカーは、MYCタグを含み、それ自体は、MYCタグを認識するIgリンカーによって認識される場合がある。アンカーを発現する細胞がMYCタグも有する組換えタンパク質を分泌する場合、適切なIgリンカーは、市販されているポリクローナル抗MYCタグ抗血清である。本明細書に説明するタグ、例えば、FLAGタグ、NEタグ、HAタグ、又は、Hisタグ、若しくは、ポリHisタグのいずれも、この目的のために有用である。別の実施形態では、いずれかの分子がタグとして使用される場合があることは明らかである。
【0121】
本明細書に説明する方法の更なる別の局面は、最適に大量の商業的に価値のあるタンパク質を発現する組換え細胞株の迅速かつ効率的な作製のための方法である。細胞ベースの系における組換えタンパク質の産生において、産生されたタンパク質の単離を容易にするために、ポリペプチドタグを分子の配列に組み込むことが一般的である。本発明の一実施形態では、アンカータンパク質(293T-アンカー)を発現する293T細胞株が作製される。293Tアンカー細胞は、MYCタグを含む分泌タンパク質をコードする核酸でのリン酸カルシウムトランスフェクションによって提供され、それによって、多様なレベルのMYCタグ化タンパク質を分泌する細胞の集団を作製する。この細胞集団をポリクローナル抗MYC Igリンカーと接触させることは、分泌タンパク質上のMYCタグをアンカータンパク質上のMYCタグに結合させる分子複合体を作製することによって、分泌タンパク質を細胞に付着させる。
【0122】
この方法によって発現細胞の表面に付着する分泌タンパク質の量を測定することにより、各細胞によって個々に分泌されるタンパク質の量を直接測定することが可能になる。特定の実施形態では、この方法は、最大量の商業的に価値のあるタンパク質を分泌する集団の中で、細胞を迅速かつ効率的に同定するために有用である。
【0123】
アンカータンパク質を発現する細胞集団によって分泌されるタンパク質が評価される本発明の方法において、例えば、数万又は数千以上の個々のクローンを含む単一の容器内でポリクローナル細胞集団を維持することができることが有利である。リンカーの存在下で維持された分泌細胞が、該細胞自体が分泌した分子に優先的に結合し、前記細胞が分泌しなかった分子に比較的少なく結合することを確実にするために、この方法は、以下の工程を含むために改変できる。接触工程は、細胞を過剰濃度のリンカーと接触させることを含むことができる。過剰は、細胞表面上の第1の複合体と細胞によって分泌される標的タンパク質との間の結合の特異性を、それを分泌しない集団中の他の細胞への標的タンパク質の結合に比べて増加させる。これらの条件下で、アンカー分子は、ほとんど又は完全にリンカータンパク質に結合する。分泌された分子がそれを分泌する細胞に付着したリンカーによって捕捉されない場合、それは、(1)細胞が新たな非結合アンカー分子を産生した場合、又は、(2)細胞に既に結合したリンカー分子を置換した場合にのみ、非分泌細胞に結合する可溶性リンカータンパク質に結合する。これは、標的タンパク質の存在、抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性を同定することに向けられたアッセイによって得られる結果の精度を改善する。更に、これらの方法工程は、単離されたクローン又は少数クローン集団として細胞を分析する必要性を軽減することによって、大きな細胞集団内の個々のメンバーの分析を単純化するので、有利である。この方法は、集団内の細胞の大部分又は全てが標的タンパク質を分泌している場合に特に適する。
【0124】
基本的な方法の更なる別の改変は、集団内の細胞のいくつかが標的タンパク質を分泌しておらず、従って、他の細胞によって分泌される標的タンパク質に結合するために利用可能な結合部位を有する場合に有用である。本方法のこの実施形態は、分泌標的タンパク質と同じ種又は型の競合タンパク質と組み合わせて、細胞をIg-リンカーと接触させることを含む。この実施形態では、それらを産生した細胞に付着しない分泌分子は、細胞培養培地に入り、リンカータンパク質と複合体を形成する。それらはリンカー分子のプールに結合し、リンカー分子のいくつかは、分泌された分子に類似するタンパク質に結合するが、実施されるアッセイによって、分泌された分子から容易に区別可能である。本方法のこの変形において、競合タンパク質は、異なる構造、活性、又は、抗原結合特異性を有する。
【0125】
一実施形態では、標的タンパク質は、特定のヒト抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体であり、競合タンパク質は、異なる抗原に結合するヒト抗体であり、細胞に結合した抗体は、特定のヒト抗原に結合する能力についてアッセイされる。別の実施形態では、標的タンパク質はIg分子であり、リンカーはIg分子のFcドメインに結合し、競合体はIg Fcドメインであり、アッセイは、標的タンパク質に含まれるIg FAbドメインの存在を検出する。この実施形態は、個々の細胞によって分泌される標的タンパク質の量が、細胞の一部が標的タンパク質を発現し、細胞の一部が発現しないポリクローン集団内で評価される一般的なプロセスを例示する。この特定の実施形態は、ハイブリドーマ又は組換え細胞の集団によって分泌されるIgの量を測定するために特に適切であるが、適切なIgリンカータンパク質及び標的様競合分子の選択を介して、いずれかの分泌標的タンパク質の検出に容易に適合できる。リンカーがIg FAbドメインに結合し、競合体がIg FAbドメインであり、アッセイが、標的タンパク質のFcドメインの存在を検出する、逆の実施形態もこの目的に適する。これらの実施形態では、競合タンパク質の存在は、標的タンパク質の、それを分泌しなかった細胞への結合に比べて、細胞表面上の第1の複合体と、細胞によって分泌される標的タンパク質との間の結合の特異性を増加させる。競合タンパク質は、さもなければ標的タンパク質分子に結合するために利用可能である非分泌細胞上の標的タンパク質結合部位(即ち、リンカー分子)を占有することによって、そうする。この「競合」は、非分泌細胞上のアンカー分子に結合したリンカー分子上の結合部位によって結合した標的タンパク質の量を制限する。
【0126】
本明細書に説明する方法の別の改変は、リンカー及び標的タンパク質に予め又は同時に曝露された細胞を、標的タンパク質が第3の複合体結合反応において特異的に結合する検出可能に標識された抗原と接触させることを含む。従って、標的タンパク質に結合したリンカーに結合したアンカーを含む多成分複合体をその外膜表面上に有する細胞は、抗原と接触し、標的タンパク質とのその免疫複合体を介して抗原を細胞に結合する。この結合した多成分複合体中の細胞上の標識抗原の存在は、細胞結合した多成分複合体に関連する検出可能な標識を同定又は定量することによって、抗原に結合する標的タンパク質を分泌する細胞の迅速な同定を可能にする。
【0127】
本方法のこの改変において使用するための抗原は、標的タンパク質(例えば、抗体又は抗体断片)が天然に結合する抗原から選択される。一実施形態において、標的タンパク質がモノクローナル抗体である場合、標識のために選択される抗原は、単一の抗原である。標的タンパク質が、複数の抗原又は複数の相同分子によって共有される希少なエピトープに結合することができる抗体である場合、その標的タンパク質が結合するいくつかの抗原を、この使用のために標識することができる。
【0128】
本明細書に説明する細胞を使用する更なる別の方法は、予め選択された特徴を有するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を同定する方法であり、前記細胞は、前記特徴を有するモノクローナル抗体を分泌しない細胞の集団の中に存在する。この方法において、ハイブリドーマ細胞の集団は、本明細書に説明するとおり、選択されたリンカーとの第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した不死化細胞とB細胞の細胞系譜の細胞を融合させることによって調製される。この細胞集団を、2つの結合事象、即ち、リンカーがアンカーと第1の複合体を形成すること、及び、集団中の単一ハイブリドーマ細胞によって分泌される単一モノクローナル抗体と第2の複合体を形成することに関与するために設計されたリンカーと接触させて、多成分複合体を形成する。モノクローナル抗体は、リンカーのものとは異なる種の場合がある。モノクローナル抗体は、アンカーによって認識されない。リンカーと細胞集団との接触は、リンカーがアンカーとの第1の複合体における結合によって、ハイブリドーマ細胞の形質膜外側に付着することを可能にする。これらの細胞は、ハイブリドーマ細胞がそのモノクローナル抗体を分泌する条件下でリンカーの存在下で維持される。mAbが分泌される場合、アンカーに結合したリンカーは、ハイブリドーマ細胞によって分泌されるモノクローナル抗体と第2の複合体を形成する。このようにして、モノクローナル抗体は、付着した免疫複合体を介してそれを分泌するハイブリドーマ細胞に結合する。その分泌されたmAbが付着したハイブリドーマ細胞の集団の存在は、そのモノクローナル抗体の存在、抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性の同定を可能にする。この方法はまた、所望の特徴(例えば、集団中の他の細胞よりも高度に細胞を発現及び分泌すること)を有する特定のmAbを産生するハイブリドーマ細胞の同定を可能にする。従って、この方法の任意的な工程は、細胞がリンカーと接触した後のいずれかの時点でハイブリドーマ細胞を単離することを含む。
【0129】
この方法のなお更なる実施形態では、細胞の集団は、過剰濃度のIgリンカーと接触する。過剰なIgリンカーは、細胞表面上の第1の免疫複合体とそのハイブリドーマ細胞によって分泌されるモノクローナル抗体との間の結合の特異性を、それを分泌しない他の細胞へのモノクローナル抗体の結合に比べて増加させる。種々の実施形態において、Igリンカーは、異なるレベルの結合価を有する。例えばIgリンカーは、単量体scFv、ラクダ抗体、又は、単一ドメインFabである。この場合、全てのIgリンカーは、1個の標的タンパク質のみに結合する。別の実施形態では、Igリンカーが従来のIgG(2個の抗原結合部位を有する)、又は、標的タンパク質に特異的なポリクローナル抗血清である場合、過剰のIgリンカーの存在下で、標的分子に結合する複数のIgリンカー分子の連結を含む多量体複合体が細胞の表面上に形成され、それ自体、培養培地からより多くのIgリンカー分子を補充することができ、次いで、これらの分子は、より多くの標的分子に結合することができる。このような複合体がアビディティー効果によって安定化されることは、明らかである。
【0130】
更に、連結されたIg分子のアセンブリは、免疫複合体中の複数の免疫グロブリン分子の存在から生じる生物学的効果について評価できる複合体を作製する。例えば、T細胞上の刺激分子に結合するmAbは、しばしば、それらの最適な刺激活性について架橋又は表面固定化に依存することがよく知られている。15、16更に、IgG免疫複合体は、古典的な補体系を活性化し、これは、強力な抗菌、抗ウイルス、炎症誘発、及び、抗腫瘍効果を奏することができる。17、18
【0131】
本明細書に説明する試薬及び方法によってハイブリドーマ細胞の表面上に構築された免疫複合体は、別の実施形態では、それらの免疫複合体に限定された効果を発揮する能力について評価される。これは、従来技術のハイブリドーマによって発現されるmAbの免疫複合体依存性活性を評価するための既存の方法に比べて有利である。
【0132】
この方法の別の改変において、細胞は、分泌されたモノクローナル抗体と同じ種又は型の競合抗体と接触する。競合抗体は、異なる又は非特異的な抗原結合特異性を有する。競合抗体の存在は、過剰な非結合リンカーを結合することによって、細胞表面上の第1の複合体と細胞によって分泌されるモノクローナル抗体との間の結合の特異性を、それを分泌しない細胞へのそのモノクローナル抗体の結合に比べて増加させる。
【0133】
更なる別の改変は、より一般的な方法について上述したものに類似している。ハイブリドーマ細胞の集団を、モノクローナル抗体が別の免疫複合体結合において特異的に結合する検出可能に標識された抗原と更に接触させる。分泌されたmAbが特異的に結合する標識された抗原を提供することによって、標識された多重免疫複合体が、所望のmAbを分泌するハイブリドーマの外表面膜上に形成される。多重免疫複合体は、第1の免疫複合体アンカー-リンカーによって形成され、リンカーはまた分泌されたモノクローナル抗体に結合し、モノクローナル抗体はまた標識された抗原に結合する。これらの標識された細胞が提供された後、選択された抗原に特異的なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞は、細胞結合多成分複合体に会合する検出可能な標識を検出及び/又は定量することによって迅速に同定される。
【0134】
この方法の特定の実施形態では、以下の実施例に例示されるとおり、モノクローナル抗体はヒト抗体であり、アンカーは1つの種(例えば、マウス)のscFvを含み、Igリンカーは、ヒトでもマウスでもない抗ヒトIg抗体(例えば、抗ヒトウサギ抗体)かヒト抗体の抗体結合断片かである。
【0135】
これらの方法の種々の改変は、核酸分子、ベクター、細胞の構成要素と、方法構成要素との選択に基づいてなされ得、このような改変は、本明細書の教示を考慮して、当該分野の技術の範囲内であると考えられる。そのような変形は、これらの方法の他の任意的な改変を提供する。
【0136】
ハイブリドーマ及びその分泌抗体を生成及びその特徴を同定する方法の1つの改変において、リンカーは、標的タンパク質(即ち、モノクローナル抗体)のFc分子部分に特異的に結合する。従って、本方法の任意的な別の工程は、リンカー及び分泌された標的タンパク質に曝露されたハイブリドーマ細胞を、標的モノクローナル抗体と同じ種のIgG Fcドメイン競合体と接触させる工程を含む。また、接触反応には、標的モノクローナル抗体と同じ哺乳動物種のIg Fabドメインに特異的な検出可能に標識された抗体が添加される。接触混合物の種々の要素は、免疫複合体、即ち、リンカーを有するアンカー、標的mAbと結合した又は遊離のリンカー、IgG Fcドメイン競合体と結合した又は遊離の標的mAb、及び、検出可能に標識された抗体と結合した又は遊離の標的mAb、を形成する。ハイブリドーマ細胞によって分泌される標的モノクローナル抗体のいくつかは、アンカー-リンカーとの免疫複合体において細胞に結合され、一方、標的mAbのいくつかは、過剰の非結合リンカーによって培地中で結合される。Ig Fcドメインは、標的mAbを分泌しないハイブリドーマ細胞へのインタクトな標的mAbの結合を減少させるために競合し、抗Ig FAb抗体は、細胞表面に結合した分泌された標的mAbに結合する。結合していない複合体を、結合した多重免疫複合体を有する細胞から分離し、標識された抗体を使用して、ハイブリドーマ細胞及びそれらの結合した標的mAbを同定し、その分析及び定量を可能にする。
【0137】
同様に、本方法は、以下のとおり改変される。標的モノクローナル抗体のFAb分子部分に特異的に結合するリンカーを選択する。リンカーと分泌された標的mAbとに暴露されたハイブリドーマ細胞は、標的mAbと同じ種のIg FAbドメイン競合体、及び、標的mAbと同じ哺乳動物種のFcドメインに特異的な検出可能に標識された抗体にも暴露される。ハイブリドーマ細胞によって分泌される標的モノクローナル抗体は、アンカー-リンカーとの免疫複合体において細胞に結合され、過剰のリンカーによって培地中で結合される。Ig FAbドメインは、モノクローナル抗体を分泌しないハイブリドーマ細胞へのインタクトな標的mAbの結合を減少させるために競合する。標識抗Ig FAb抗体は、細胞表面に結合した分泌標的mAbに結合する。結合していない複合体を、結合した多重免疫複合体を有する細胞から分離し、標識された抗体を使用して、ハイブリドーマ細胞及びそれらの結合した標的mAbを同定し、その分析及び定量を可能にする。
【0138】
これらの説明した成分を使用する更なる別の方法は、選択された組換え標的タンパク質を産生するための方法である。このような方法では、上記の細胞は、誘導性又は抑制性プロモーター及び関連する調節配列の制御下で、適切なアンカーを発現するために作製される。しかしながら、前記細胞はハイブリドーマではなく、いずれかの所望の標的タンパク質(例えば、所望の治療タンパク質)を発現及び分泌するために遺伝子工学的方法によって改変された細胞である。標的タンパク質を発現及び分泌するための調節配列を有する適切な発現カセットの選択は周知であり、適切な配列及び選択された組換えトランスジーンを有する適切な遺伝子カセットは、エレクトロポレーション、ウイルスベクターによる感染、又は、プラスミドによるトランスフェクションによって、アンカーを発現するために作製された細胞に挿入できる。標的タンパク質を発現するための細胞の操作及びアンカーを発現するための細胞の説明した操作は、いずれかの順序で行われる場合がある。この細胞を培養して、標的タンパク質の発現及び哺乳動物細胞からのその分泌を可能にする。細胞はまた、アンカーの発現を誘導するか又はターンオンする化合物と同時に又は順番に接触する。次いで、この方法は、細胞を設計されたIg-リンカーと接触させる工程を含み、Ig-リンカーは、細胞上のアンカー及び発現された組換え標的タンパク質に結合し、標的タンパク質がアンカー-Igリンカー免疫複合体を介して細胞の表面に付着することを可能にする。次いで、誘導化合物を除去する。この方法では、大量の標的タンパク質を発現する細胞を、免疫複合体の定量的検出に基づいて同定し、単離し、分析することができる。誘導化合物の使用は、アンカーが一過性に又は制御可能に発現されることを可能にする。
【0139】
この方法の更なる改変において、細胞を過剰濃度のリンカーと接触させる。過剰のリンカーは、細胞表面上のアンカー-リンカー複合体と、細胞によって分泌される標的タンパク質との間の結合の特異性を、それを分泌しない他の細胞への標的タンパク質の結合に比べて増加させる。上記の他の方法と同様の様式で、細胞はまた、分泌された標的タンパク質と同じ種又は型の競合タンパク質と接触される場合がある。競合タンパク質は、標的タンパク質と同じ種又は型のものである。競合タンパク質の存在は、過剰な非結合リンカーを結合することによって、細胞表面上の第1の免疫複合体と、細胞によって分泌される標的タンパク質との間の結合の特異性を増加させる。
【0140】
別の局面では、本明細書に説明するハイブリドーマmAb発現ライブラリーを維持するための方法は、以下の工程を含む。
【0141】
(a)
(i)B細胞の細胞系譜の細胞を、選択されたリンカーとの第1の複合体を形成するために設計されたアンカーをその形質膜外側表面上に発現した不死化細胞と融合させることによって調製された、ハイブリドーマ細胞の集団を、
(ii)アンカーとの第1の複合体、及び、単一のハイブリドーマ細胞によって分泌される単一のモノクローナル抗体との第2の複合体を形成するために設計されたリンカーであって、モノクローナル抗体がアンカーによって認識されない、リンカーと接触させる工程であって、
前記接触は、第1の複合体においてアンカーと結合することによって、リンカーがハイブリドーマ細胞の形質膜外側に付着することを可能にする、工程、
(b)(a)の細胞を、リンカーがハイブリドーマ細胞によって分泌されるモノクローナル抗体と第2の複合体を形成し、モノクローナル抗体が、付着した第1及び第2の複合体を介してそれを分泌するハイブリドーマ細胞に結合する条件下でリンカーの存在下で維持する工程、
(c)ハイブリドーマ細胞によって分泌され、アンカー-リンカー-モノクローナル抗体によって形成された細胞結合多重免疫複合体によって結合されたモノクローナル抗体の存在、抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性を同定する工程と、
(d)所望の抗原特異性、抗原結合親和性、力価、量、又は、生物学的活性を有するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の集団を単離する工程、及び、
(e)(d)に由来する集団を培養する工程。
【0142】
別の局面では、本明細書に説明するハイブリドーマmAb発現ライブラリーを維持するための方法であって、細胞の特徴及び単離及び単離は、ハイブリドーマ細胞によって発現されるモノクローナル抗体の発現の量(amount)、量(quantity)、又は、速度である。
【0143】
上述した融合パートナー細胞の集団又はそれに由来するハイブリドーマの少数クローン集団における異所性サイトカインシグナル伝達活性を監視び最適化するための別の方法は、以下の工程を含む。
(a)細胞をgp130 ΔYY受容体分子に特異的な検出可能なモノクローナル抗体と接触させる工程、
(b)検出可能なモノクローナル抗体に結合した細胞を単離する工程、及び、
(c)(b)に由来する細胞を培養する工程。
【0144】
一局面において、ヒト抗ウイルスmAb発見のためのオンセルmAbスクリーニング(OCMS(商標))法は、上記のようなBGS足場を産生するための細胞を作製する工程を含み、それは、それらの分泌されたmAbを、mAbを産生する細胞の表面に特異的に付着する場合がある。細胞(例えば、既知又は未知の起源のウイルス感染から回復した患者のB細胞から生成されたハイブリドーマ細胞)が抗ウイルス抗原特異的mAbを産生する場合、これらは、この方法によって容易に同定及びスクリーニングできる。
【0145】
従って、別の実施形態として、抗ウイルスmAb発見のための普遍的なアッセイが提供される。現在、ウイルス表面抗原に結合するmAbを同定するために、mAbのパネルがウイルス抗原への結合について試験される試験が実施される必要がある。この目的のために、ウイルス抗原は、mAb結合アッセイ(例えば、ELISA、フローサイトメトリー、又は、High Content Imaging)に組み込まれなければならない。現在の技術水準によれば、これらのアッセイ形式の各々は、試験されるべき抗原(又は複数の抗原)に特異的であり、組換えウイルス抗原分子又は精製ビリオン、蛍光標識、ビオチン、エピトープタグ、及び/又は、ウイルス抗原に特異的な捕捉若しくは二次抗体を含む場合がある。従って、mAbクローニングのためのウイルス抗原試験を調製するプロセスは、複雑であり、抗ウイルスmAbを得る際の成功に対する重要な障壁となる場合がある。本発明によって提供される普遍的抗ウイルスmAb結合試験は、各ウイルス抗原に対する特異的結合アッセイを作製する必要なしに、mAbを得ることを可能にする。
【0146】
本発明の細胞は、異なるウイルス抗原についての共通の試薬、即ち、抗ウイルスmAb発見のための普遍的アッセイを使用して、mAbについてのスクリーニングを可能にする。アンカー/リンカーが分泌されたmAb(又は分泌されたタンパク質)を細胞表面に結合するBGS/OCMS細胞株又はハイブリドーマの集団が生成される。多価ウイルス抗原(精製ウイルス抗原、ビリオン又はウイルス様粒子(VLP)など)を、これらの複合体を提示する細胞に添加する場合、ウイルス抗原は、その後、ハイブリドーマの表面上のmAbに結合する。その細胞によって分泌される更なるmAbは、ウイルス粒子を被覆するであろう。ハイブリドーマ細胞表面上のこれらの付加的なmAbの位置と配置は、リンカー分子を介して細胞に密接に結合しているmAbの場合とは異なる。結果として、ハイブリドーマ細胞の表面に結合したウイルス抗原の存在は、ハイブリドーマ形質膜に対するヒトmAbの配置を観察することによって推測できる。ウイルス抗原の存在下又は非存在下でのハイブリドーマ表面上のmAb局在の相違は、FAbのような一価リンカータンパク質を使用することによって増幅される場合がある。以下の実施例16に説明するとおり、OCMS法を使用して、High-Content Imaging(本質的に、強力な画像解析ソフトウェアを伴う共焦点顕微鏡検査)を使用するハイスループットスクリーニングを使用する普遍的なアッセイを作製した。
図20を参照されたい。
【0147】
BGSを介して細胞表面に結合したmAbが抗ウイルスmAbである場合、mAbは、ウイルス又はウイルス抗原を捕捉し、検出可能なCAP様免疫複合体を形成する。分泌されたmAbが抗ウイルス性でない場合、それは、ウイルス抗原に結合せず、複合体は形成されないであろう。別の実施形態では、ウイルス抗原が多価である場合、それは、結合したmAbと結合することによって、あるいは、細胞によって産生される他のIg又は細胞に結合しない添加されたヒトIgG試薬と結合又は架橋することによって、大きな複合体を更に形成し、細胞に付着された更に大きなCAP様免疫複合体を形成するであろう。あるいは、ウイルス全体が使用される場合、ウイルスは抗体よりも大きい(例えば、約30nm以上のオーダー)ため、更に大きな複合体が細胞に付着して産生されるであろう。従って、抗ウイルスmAbを発現するハイブリドーマがウイルスと接触すると、ハイブリドーマの表面にtell-tale免疫複合体が形成される。このOCMS法は、細胞上に形成された免疫複合体の形状及びサイズを画像化することによって、抗ウイルス抗体を分泌する細胞の同定を可能にする。従って、細胞表面上に形成されたCAP様又は層状免疫複合体の検出は、関連する有用な抗ウイルスmAbが同定され、遺伝子クローニング及び発現なしに得られることを可能にする。別の実施形態では、OCMS法は、ウイルス結合に加えて、ウイルス中和のためのmAbのスクリーニングに使用するために細胞を操作することによって改変することができる。
【0148】
OCMS法の別の実施形態では、mAbの構成及び機能が指向性進化(mAbの多様な集団を作製し、所望の特徴を有する集団を選択する)によって最適化される38。ウイルス性疾患を生き残った患者から単離されたヒトmAbは、治療薬として有用である可能性が高いが、mAbの安定性、発現レベル、結合速度論、又は、結合特異性に関して理想的ではない可能性がある。細胞における活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現は、体細胞超変異を介して抗体多様化の自然メカニズムを活性化する39。ヒトmAbのための指向性進化システムを使用して、AIDは、ハイブリドーマにおいて一過性に活性化され、得られた集団は、改善された結合活性を有する改変体についてスクリーニングされる。これらの実験は、従来のハイブリドーマ法では実用的ではないが、OCMSのハイスループット能力によってのみ実施可能である。
【0149】
未知のウイルスであっても、ウイルス流行の迅速な評価及び診断並びに治療にこれらの方法は大きな価値を有することが予想される。OCMS法においてインタクトなビリオンを使用することができることにより、本方法を実施し、最初にウイルスの同一性を知らずに、tell-tale免疫複合体の検出のために監視し、抗ウイルス抗体を発現する細胞を選択するであろう。治療用組成物を作製するための更なる分析なしに、抗体のクローニングに直接進むであろう。
【0150】
更なる別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞以外の細胞を用いて同様の戦略を実行することができる。BGS発現細胞を作製し、そのような細胞を組換えヒト重鎖配列及び軽鎖配列で一過性にトランスフェクトすることによって、抗原を発現する細胞を迅速に同定できる。簡潔には、ヒトIgGも発現したBGS発現細胞がウサギ抗ヒトIgG及びヒトIgGに特異的な蛍光標識二次抗体と接触する。この接触後、発現したヒトIgGはRAHによって細胞表面に捕捉され、蛍光二次抗体で標識される。このようなアッセイは、細胞表面へのその結合を同定することによって、組換え法で発現された抗体又は抗体(抗原結合)断片を発現する細胞の同定をわずか数時間で可能にし、このような抗体又は断片が、IgGをほとんど又は全く発現しない細胞から分離されることを可能にする。実施例14を参照されたい。
【0151】
これらの方法及び組成物の他の改変は、当技術分野の知識と組み合わせて、本明細書に提供される教示を使用することによって設計できることが予想される。このような改変は、本発明に包含される。
【0152】
IV.実施形態
本明細書に提供される教示を使用して構築物において生成できる変形の数を考慮すると、これらの組成物を使用する多くの他の方法は、迅速かつ複雑な標的同定又は他の使用のために使用できる。例えば、組成物及び方法は、例えば、品質管理のために、細胞によって分泌されるいずれかの分子(例えば、タンパク質)を追跡するための方法において使用される場合がある。別の実施形態では、そのハイブリドーマ細胞に結合したモノクローナル抗体は、その抗原への結合について評価される場合があるか、又は、T細胞活性化のような免疫複合体に組み込まれた場合にのみ発現する場合がある活性について評価できる。
【0153】
これらの組成物及び方法は、選択された所望の特徴を有するmAbの同定及び単離のための、mAbを分泌する多様なハイブリドーマのバルク培養及びスクリーニングのために使用される場合がある。この実施形態において、本明細書に説明する組成物及び方法は、ハイブリドーマ細胞によって分泌される抗体のハイスループットスクリーニングを容易にするための系を作製する。
【0154】
別の実施形態では、細胞-アンカー-リンカー(例えば、Igリンカー)-標的(例えば、mAb)複合体は、標的によって認識及び結合される場合がある多様な分子(例えば、ポリペプチド)を産生する細胞(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、又は、酵母細胞)の集団の迅速なスクリーニングを可能にする。更により簡単には、これらの方法は、免疫複合体媒介機能について評価できる免疫複合体を作製する簡単な手段を提供する。
【0155】
以下の実施例に説明されるとおり、例示的な融合パートナー細胞株LCX BGSは、本明細書の教示によって生成される。LCX BGSをBリンパ球と融合させて、ヒトmAbを分泌し、アンカーを発現するハイブリドーマを生成する。本明細書に説明する方法によって生成される2種の例示的なハイブリドーマ細胞株は、ハイブリドーマ8C5 BGS及びハイブリドーマ9H2 BGSと称される。
【0156】
V.実施例
以下の実施例は、リンカー分子と接触した場合に、細胞によって分泌される標的分子をそれらの形質膜外側上に捕捉する哺乳動物細胞の生成の証拠を提供する。また、これらの教示による特定の融合パートナー細胞及びハイブリドーマも開示される。以下の実施例は、本明細書に説明する方法及び組成物の特定の実施形態を開示する。これらの実施例は、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいずれかの及び全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【実施例1】
【0157】
アンカーをコードする核酸分子の生成
アンカーをコードする核酸分子は、下記の表中の以下の要素を用いて構築される。簡潔には、マウス抗ウサギ抗体重鎖(VH)の可変ドメインをコードする核酸配列を、(Gly4Ser)3をコードするスペーサーを介して抗体軽鎖(VL)の可変ドメインに連結し、単鎖可変断片(scFv)をコードする配列を生じた。更に、scFvをコードする2個の核酸配列を、上記のスペーサーによって一緒に連結し、タンデムscFvコード配列を生じた。核酸分子中の更なる配列は、細胞表面上でのscFvの発現を確実にするためのκ軽鎖免疫グロブリンタンパク質由来のN末端リーダー配列(AKA、シグナルペプチド)をコードする配列を含んでいた。配列は、NCBI参照配列:XP_003753129.1(Igκ鎖V-III領域MOPC 63アイソフォームX2;種ドブネズミ(Rattus norvegicus))の下でNCBIデータベースに提供される。核酸分子又は構築物中の更なる配列は、エピトープタグ又はプロテアーゼタグ配列(即ち、c-Myc)、及び、血小板由来成長因子受容体(PDGF受容体、PDGFR)膜貫通(TM)ドメインをコードする配列である。58.92%のシトシン及びグアニンを含むヌクレオチド1781個を有する核酸分子/構築物を、マウス細胞発現について更に最適化した。アンカーの実施形態をコードする核酸分子/構築物の配列は、配列番号1として提供される。対応するタンパク質配列は、配列番号2である。核酸分子を、説明したプロトコルに従って、レトロウイルス導入プラスミドpMSCV及びレンチウイルス導入プラスミドpLION IIに連結した。13、14、15
【0158】
【実施例2】
【0159】
LCX融合パートナー細胞株の確立
IL-6の異所性発現によるシグナル伝達は、hTERTも発現するハイブリドーマによるヒト免疫グロブリンの安定な分泌に不可欠である。従って、ハイブリドーマプロトコルの最適化及び標準化は、バルク細胞集団における個々の細胞のIL-6刺激活性がリアルタイムで効率的に評価可能であることを必要とする。しかし、ポリクローン集団における個々の細胞によるIL-6の分泌速度を測定することは困難である。LCX細胞株は、異所性hTERTを発現し、IL-6様シグナルを形質導入する分子の表面発現を評価することによって監視することができるIL-6シグナル伝達活性を提供するために作製された。親K6H6/B5細胞を、レトロウイルス形質導入によってgp130 ΔYYタンパク質(IL-6受容体ファミリーの構成的に活性なメンバー)に加えてhTERTを発現するために改変し、RT-PCRを行って、説明されるとおりLCX細胞における異所性hTERT遺伝子の発現を確認した(
図14を参照されたい)。
13
【0160】
フローサイトメトリーを用いて細胞表面抗原を検出するための従来の免疫蛍光染色を実施して、記載のとおりgp130の発現を確認した。19
【0161】
モノクローナルマウス抗gp130抗体を、LCX細胞、及び、陰性対照として、gp130を発現しないK6H6/B5細胞と共にインキュベートした。洗浄後、APC結合抗マウスIgGを試験細胞と共にインキュベートした。次いで、フローサイトメトリーを実施して、試験細胞がそれらの細胞表面上にgp130を発現したか否かを検出した。
図15に示される結果は、gp130がLCX細胞上で観察されたが、親K6H6/B5細胞上では観察されなかったことを実証する。
【実施例3】
【0162】
強力なポリオウイルス中和活性を有するヒトモノクローナル抗体を分泌する安定なハイブリドーマの確立
LCX細胞株を使用して、初代ヒトB細胞との融合後にヒトIgを安定的に分泌するハイブリドーマを作製した。B5-6T融合パートナー細胞株の使用で標準化されたプロトコルに従って、本発明者らは、ポリオウイルス(PV)(1~3型)に対して免疫性のある個体由来のB細胞にLCX細胞株を説明したプロトコルに従って融合させた。20これは、ポリオウイルスと免疫反応性のヒトIgGの発現について評価された、ヒトを分泌するハイブリドーマの集団を作製した。ハイブリドーマ上清をELISAによって評価し、PV結合可能なヒトmAbを安定的に分泌するハイブリドーマの同定及びサブクローニングを可能にした。PV反応性mAbを、表2に列挙されるマイクロ中和試験を用いて、インビトロでの中和について試験した。多くのmAbsは、高い中性化能(LX-2D6、LX-5G5、LX-4A4、LX-3E9、LX-1A7、LX-10C6及びLX-2E1など)を有することが確認され、4個のmAbsは、2株以上を中性化することが確認された。
【0163】
従って、構成的に活性なIL-6受容体gp130 ΔYYを発現する細胞株、LCX細胞株が作製され、有用なヒトモノクローナル抗体を分泌する安定なハイブリドーマを作製するためのヒトB細胞との融合パートナーとして有効であることが実証された。
【0164】
【実施例4】
【0165】
アンカータンパク質を発現する融合パートナー細胞株の作製
Igリンカータンパク質と相互作用することができるアンカータンパク質を細胞の形質膜外側上に発現する哺乳動物細胞株を作製し、確立するために、以下の実験を行った。現在の実験環境では、アンカーは、実施例1に説明されるとおりIgリンカーとしてのウサギ抗ヒトIgG(RAH)に結合し、第1の免疫複合体を形成するために設計された、タンデムマウス抗ウサギscFv分子部分を含んでいた。LCX及びB5-6T細胞を培養し、説明のとおり維持した。21LCX細胞を培養し、10%ウシ胎仔血清を含むATCC処方RPMI-1640培地中で、37℃で5% CO2を含む大気中で維持した。
【0166】
第2の免疫複合体は、標的タンパク質としてアンカー及びヒト免疫グロブリンによって捕捉されたRAHによって形成された。任意的な第3の免疫複合体は、ヒト免疫グロブリン及びそれらの対応する抗原によって形成された。上記の3個の免疫複合体における結合の存在、特異性、親和性、力価、量、及び、生物学的活性を分析した。LCX及びB5-6T細胞を、実施例1に記載の構築物を用いてDNAで生成した複製欠損レンチウイルス粒子で、従来の方法によって形質導入した。12、13
【0167】
形質導入細胞を一次ビオチン化抗マウスIgG、続いてストレプトアビジンAPCで免疫染色することにより、形質膜外側上のタンデムscFvの発現を検出した。タンデムscFvを発現する細胞をフローサイトメトリーにより4回単離して、安定な高発現の、均一な細胞集団を生成した。フローサイトメトリーによる親(LCX、B5-6T)対形質導入細胞株(LCX BGS、B5-6T BGS)の抗マウスIgG染色の比較は、タンデムscFvを発現する2個の融合パートナー細胞株の存在を確立する。
【0168】
これらの結果を、B5-6T細胞については、
図2Aに、LCX細胞については、
図2Bに各々プロットした。これらの実験はまた、哺乳動物細胞の外表面上のアンカータンパク質の発現が、マウス免疫グロブリン抗原と反応性のIgリンカーによって認識される場合があるマウス免疫グロブリン抗原を外表面に与えることを確立する。
【実施例5】
【0169】
LCX BGS及びB5-6T BGS細胞の表面上でのヒトIGGを含有する免疫複合体の生成
アンカーは、2つの方法のうちの1つでリンカーと相互作用することができる。一実施形態では、アンカーは、リンカーによって認識又は結合できる。例えば、アンカーは、抗原(例えば、c-mycタグ又はscFv配列自体(本実施形態におけるとおり))を含む場合があり、これは、リンカータンパク質(例えば、及び、mycタグ又はscFv分子部分に特異的な抗体)によって認識される。例えば、細胞を、c-mycタグ配列に特異的なヤギ抗体、又は、マウスscFv抗原に特異的なヤギ抗体と接触させ、洗浄し、更にAPC標識抗ヤギ二次抗体とインキュベートし、次いでフローサイトメトリーによって分析し、リンカーとして使用してもよい抗体によって認識されるc-mycタグ又はマウスIgエピトープの能力を実証する。あるいは、アンカーがそれ自体、リンカータンパク質上のエピトープに結合することができる抗原結合ドメインを含む場合がある。
【0170】
本実施形態において、このドメインは、ウサギIgに特異的に結合するタンデムscFvである。本発明者らは、LCX BGS及びB5-6T BGSによって発現されるアンカーが、ヒトIg(RAH)に特異的なウサギIgGから構成されるIgリンカーに結合する能力を、細胞表面タンパク質の免疫染色、続いてフローサイトメトリーにより試験した。LCX、LCX BGS、B5-6T、及び、B5-6T BGSの生細胞をビオチン化RAHと共にインキュベートした。洗浄後、APC結合ストレプトアビジンを試験サンプルに適用した。次いで、APCからの蛍光シグナルをフローサイトメトリーによって評価し、データを
図3A及び3Bにプロットした。LCX BGS及びB5-6T BGS融合パートナー細胞は、LCX及びB5-6T細胞に比べて、RAHに有意に結合した(
図3A及び3B)。これらの結果は、アンカーの発現されたタンデムマウスscFvドメインがウサギIgに対するその予測される親和性を維持し、従ってLCX BGS及びB5-6T BGS融合パートナー細胞株の形質膜外側上にウサギIgを付着させようとしていることを実証する。
【0171】
LCX BGS及びB5-6T BGS細胞株の表面上でのアンカー発現は、ヒトIgGの誘導性付着を可能にする。LCX BGS及びB5-6T BGS細胞株をRAHと共にインキュベートし、洗浄し、次いで、RAH後にポリクローナルヒトIgGと共に、又は、それなしでインキュベートした。次いで、Alexa 488結合ヤギ抗ヒトIgGを、フローサイトメトリーによる検出のために適用した。B5-6T BGS(
図4A)及びLCX BGS(
図4B)融合パートナー細胞の両方において、ポリクローナルヒトIgGが細胞表面上に観察された。LCX BGS及びB5-6T BGS細胞株の表面へのヒトIgGの結合がRAH Ig-リンカーの存在に依存することを確認するために、本発明者らは、上記と同じ条件下で、RAHの存在下及び非存在下で、これらの細胞株へのヒトIgGの結合を比較した(
図5A、5B)。これらのデータは、B5-6T(
図5A)及びLCX(
図5B)融合パートナー細胞の両方の表面へのヒトIgGの付着にRAHが必要であることを実証する。
【0172】
更なる実験において、本発明者らは、LCX及びB5-6T細胞株によるアンカータンパク質(タンデムマウスscFv)の発現がヒトIgGのRAH媒介結合に必須であるか否かを試験した。RAHの存在下での、LCX、LCX BGS、B5-6T、及び、B5-6T BGS細胞株へのヒトIgGの結合を、RAH、ヒトIgG、及び、Alexa 488結合ヤギ抗ヒトIgGを上記のとおり試験細胞とインキュベートすることによって評価した。フローサイトメトリーを実施し、LCX BGS及びB5-6T BGS細胞株にヒトIgGが結合するが、アンカーを発現しなかったLCX及びB5-6T細胞には結合しないことを実証した。従って、融合パートナー細胞株は、アンカーが存在する場合にのみ、ヒトIgGの捕捉に成功した。
【0173】
これらのデータは、哺乳動物細胞の形質膜外側上に発現され、RAHに結合することができる機能性アンカータンパク質の存在を確立し、これは、アンカータンパク質がIgリンカーと第1の免疫複合体を形成できること、免疫複合体が細胞の外側分子部分上に形成されること、IgリンカーがヒトIgGと第2の免疫複合体を形成できること、及び、ヒトIgGがアンカー又はIgリンカータンパク質のいずれかの非存在下で細胞に付着しないことを示す。更に、本発明は、細胞、その形質膜外側上で発現されるアンカータンパク質、アンカータンパク質によって結合されるリンカータンパク質、及び、アンカータンパク質によって複合体に結合される異種IgGという最小限4つの成分からなり、細胞及び細胞を含む免疫複合体と異種IgGとの相互作用のためにIgリンカーの存在を必要とする、新規免疫複合体の存在を確立する。
【実施例6】
【0174】
ヒトIGGを分泌するハイブリドーマ細胞の表面上のアンカー分子の発現
本明細書に説明する組成物及び方法の新規かつ有用な能力は、それらが、細胞によって分泌されるタンパク質をその細胞の表面に誘導的に付着可能にすることである。細胞に付着されている間、タンパク質の構造的及び/又は機能的特徴は、タンパク質が表面に固定化されることを必要とするアッセイを使用して評価される。分泌タンパク質がmAbである本実施例において、このようなアッセイは、抗原結合アッセイ、mAbグリコシル化又はアイソタイプについての試験、リンパ球刺激又は補体依存性細胞傷害性などの免疫複合体媒介機能、及び、触媒活性を含むが、これらに限定されない。
【0175】
分泌されたmAbは、それを産生する細胞と物理的に関連しているので、所望の特徴を有するタンパク質が見出される場合、そのタンパク質を分泌する細胞が容易に同定及び単離される場合がある。分泌モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の表面上での分泌モノクローナル抗体の誘導性捕捉を実証するために、本発明者らは、以前に生成され、ヒトmAb、8C5及び9H2を安定的に分泌することが見出された2種のハイブリドーマ上でアンカーの発現を誘導した。8C5は、狂犬病糖タンパク質(RABV GP)に特異的であり、9H2は、ポリオウイルス1型、2型及び3型に特異的である。この細胞を、タンデムマウスscFvアンカー遺伝子を含むレトロウイルス粒子で形質導入し、ハイブリドーマ8C5 BGSハイブリドーマ及び9H2 BGSを得た。4種のハイブリドーマの細胞表面上のタンデムマウスscFv(BGS)の発現を、実施例3に記載の実験と同様の方法によって評価した。ビオチン化抗マウスIgGを試験細胞に適用し、続いてAPC結合ストレプトアビジンとインキュベートした。次いで、scFvの存在をフローサイトメトリーによって検出した。結果を各々
図9A及び
図9Bにプロットした。8C5 BGS及び9H2 BGSハイブリドーマは、両方とも、親ハイブリドーマ8C5及び9H2に比べて蛍光シグナルの陽性ピークを示し、それらの細胞表面上でのアンカーの発現を示した。
【0176】
BGSハイブリドーマへのIgリンカーとしてのRAHの結合を、実施例3に記載のプロトコルを介して更にアクセスした。ビオチン化RAHを、8C5、8C5 BGS、9H2、及び、9H2 BGS細胞とインキュベートし、続いて洗浄し、APC結合ストレプトアビジンとインキュベートした。フローサイトメトリーの結果は、両方のアンカー発現ハイブリドーマ(8C5 BGS、
図10A及び9H2 BGS、
図10B)がビオチン化RAHの捕捉に成功し、第2の免疫複合体を形成したが、8C5及び9H2ハイブリドーマは、捕捉しなかったことを示した。本発明者らは、RAH Igリンカーの存在下で9H2 BGS及び8C5 BGSハイブリドーマによって産生されたmAbの表面捕捉を評価した。8C5、8C5 BGS、9H2、及び、9H2 BGSハイブリドーマを、RAH Igリンカーの存在下で、Alexa 488結合ヤギ抗ヒトIgGと同時に培養した。8C5 BGS(
図11A)及び9H2 BGS(
図11B)ハイブリドーマの両方からの蛍光シグナルのピークは、8C5及び9H2ハイブリドーマのものに比べて正のスケール範囲にシフトし、これは、タンデムマウスscFv(BGS)がRAHリンカーの存在下で、それらを分泌するハイブリドーマへの分泌モノクローナルヒトIgGの付着を増加させる(アンカー)ことを示す。
【0177】
分泌されたmAbのハイブリドーマへの結合におけるRAH Igリンカーの役割を評価するために、更なる実験を行った。8C5 BGS(
図12A)及び9H2 BGS(
図12B)BGSハイブリドーマの両方を、RAHの存在下又は非存在下で、Alexa 488結合ヤギ抗ヒトIgGと共にインキュベートした。分泌されたヒトIgGの増加した捕捉は、RAH非存在下に比べてRAH存在下で、その中心がスケールの正の方向にシフトしたより広い蛍光ピーク、及び、たフローサイトメトリーのグラフにおける曲線下のより大きな面積によって示されるとおり、両方のハイブリドーマにおいて観察された。
【実施例7】
【0178】
MABを分泌するハイブリドーマの表面上に捕捉された分泌MABによる特異的抗原の結合、並びにハイブリドーマ細胞の表面上の第1、第2及び第3の免疫複合体の確立
ヒトIgG及び抗原によって形成される第3の免疫複合体の存在を確立するために、更なる実験を行った。上記のとおり、8C5 mAbは、RABV GPに結合する。本発明者らは、B5-6T、8C5及び8C5 BGS細胞を過剰のRAHの存在下で一晩培養し、次いで細胞を洗浄し、追加のRAH、ビオチン化RABV GP抗原、及び、検出分子としてのAPC標識ストレプトアビジンを添加した。
図13に示される結果は、B5-6T融合パートナー細胞及び8C5ハイブリドーマに比べて、8C5 BGSハイブリドーマのサンプルにおいて、抗原陽性細胞のより高いパーセンテージ及び抗原のより強い結合を明らかにし、これは、第1、第2及び第3の免疫複合体の特異的な形成に成功したことを示す。この実験は、細胞によって分泌されるmAbを含み、膜結合アンカータンパク質及びIgリンカータンパク質からなる架橋を介して細胞の形質膜外側に付着される有用かつ新規な細胞を含む免疫複合体の存在を確立し、mAbは、その抗原に結合し、抗原は、更に検出分子に結合する。本明細書に説明する方法及び組成物の使用によって、抗原に結合できるmAbを分泌する細胞は、容易に同定され、単離される。
【0179】
細胞を含む免疫複合体の性質を、蛍光顕微鏡によって更に特徴付けた(
図17A~17D)。本発明者らは、示された8C5及び8C5 BGS及びB5-6T BGS細胞株を、過剰のRAH Igリンカー、ビオチン化RABV GP、及び、Alexa 488標識ストレプトアビジンと共にインキュベートした。本発明者らは、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、DAPIで染色し、蛍光顕微鏡で調べた。8C5 BGS細胞の多くは、RABV GPの付着を示す蛍光シグナルを示すが、8C5細胞は、同じmAbを分泌しているにもかかわらず、示さない。これは、フローサイトメトリーデータを裏付け、細胞の表面上に形成される3個の免疫複合体成分の存在を示し、抗体を含むmAb複合体は、その抗原結合特異性について分析可能で、これは、次いで、それを分泌する細胞と相互参照可能な情報である。
【0180】
8C5 BGS細胞上のRABV GP染色の強度及びパターンの試験は、細胞が異なるレベルのシグナルを有することを明らかにする。この知見がクローンによるアンカータンパク質発現のレベルの差を反映するか否かを決定するために、8C5 BGS細胞及びB5-6T BGS細胞を、RAH及びAlexa 488標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体と共に培養した(
図18)。B5-6T BGS細胞上のAlexa 488標識の量及び分布は、全ての細胞で本質的に同じであり、その結果は、B5-6T BGS及び8C5 BGS細胞株上のアンカー発現の均一性を実証するフローサイトメトリーデータと一致する(
図3A及び10A)。
【0181】
8C5 BGS細胞の表面上の一貫したアンカー発現レベルにもかかわらず、RABV GP標識の量は、細胞間で広範に変化する(
図17)。これは、集団中の個々の8C5 BGS細胞が異なるレベルのmAbを発現すること、更に、細胞培養培地中の過剰なRAHは、1個の細胞によって分泌されたmAbが別の細胞に結合するのを防ぐのに十分であることを示唆する。
【0182】
図18で観察されたB5-6T BGS及び8C5 BGS細胞へのRAHの結合パターンが異なることも有益である。B5-6T BGS細胞上の染色は、均一に分布しているが、8C5 BGS細胞上の染色は、高度に局在化しており、細胞膜上に単一の高強度「キャップ」構造を形成する。この実験におけるRAHはmAbであるので、これは、8C5 BGS細胞によって分泌されるヒトmAbの存在が細胞の表面上のアンカードメインの免疫複合体媒介架橋を可能にすることを示唆する。これらの免疫複合体は、ヒトmAbに結合するウサギmAbを認識するアンカードメインからなり、ヒトmAbは、各々培養培地及び細胞から更なるウサギ及びヒトmAbを補充することができる。
【0183】
ウサギmAbの二価の性質は、複数の複合体が形質膜外側上の局在性アレイにおいて互いに会合することを可能にする。8C5 BGS細胞上のこの同じパターンにおけるRABV GPの結合(
図17)は、免疫複合体アレイ中のmAbがそれらの標的抗原と相互作用することを妨げられないことを示す。従って、多価Igリンカーの存在下で、分泌されたmAbの複数のコピーを含む免疫複合体が、アンカータンパク質を発現する細胞の表面上に形成される場合がある。更に、これらの免疫複合体中のmAbは、それらの標的抗原へのカノニカル結合を可能にするために構成される。
【実施例8】
【0184】
細胞の不均一な集団の中からの望ましい量のタンパク質を安定的に分泌する細胞の同定及び単離。
【0185】
8C5 BGS細胞集団を再び
図17に示す実験に供し、100万個の細胞を10cmの培養皿に蒔く。8C5 BGS細胞を、過剰のRAH Igリンカー、ビオチン化RABV GP、及び、Alexa 488標識ストレプトアビジンと共に培養する。免疫複合体の形成に続いて、最高レベルの8C5 mAb発現(Alexa 488蛍光のレベルによって示される)を有する細胞をプレートからピペットで移すか、又は、フローサイトメトリーによって単離し、それによって、最適量の8C5 mAbを産生するために培養可能な高発現サブクローンを同定する。
【0186】
この実験の変形において、発現されたIgGの量は、特異的抗原結合の代わりに測定される。100万個の8C5 BGS細胞を10cmの培養皿に蒔き、(サブモル量の単離されたヒトIgG Fcドメインの存在下又は非存在下での)ヒトIgG Fcドメインに特異的な過剰のRAH Igリンカー、ヒトIgG FAbドメインに特異的なビオチン化マウスIgG、及び、Alexa 488標識ストレプトアビジンと共に培養する。これらの方法に従って、最適量のmAbを分泌するハイブリドーマを同定し、単離する。
【0187】
ヒトエリスロポエチン(EPO)をコードする遺伝子及びブラスチシジン耐性タンパク質をコードする遺伝子を発現するプラスミドを、アンカータンパク質を均一に発現するCHO細胞の集団に導入する。この細胞集団は、ブラスチシジンに耐性であり、従ってEPOを発現可能なポリクローン集団が誘導されるまで、ブラスチシジンの存在下で継代される。細胞集団を洗浄し、EPOに特異的な過剰のウサギIg及びヒトEPOに特異的なAlexa 488標識マウスmAbの存在下で培養する。細胞を蛍光顕微鏡又はフローサイトメトリーによって分析し、最高レベルのEPO発現を発現する細胞を単離し、更なる研究のために増殖させる。
【0188】
同様の実験において、発現されたEPOタンパク質は、タンパク質タグ(例えば、6X HISタグ)を組み込む。ブラスチシジン発現後、6X HISタグに特異的な過剰のウサギIg、及び、Alexa 488標識マウス抗EPO mAbの存在下で細胞を培養する。分泌されたEPOの、それを分泌しなかったいずれかの細胞への結合を減少させるために、抗6X HIS特異的ウサギIgの量の画分を、6X-HISタグも含むがマウス抗EPO mAbによって認識されない異種ポリペプチドと混合する。
【0189】
この実験の更なる改変において、マウス抗EPO mAbをビオチンと結合させ、CHO細胞を懸濁培養物中で維持する。免疫複合体の形成に続いて、細胞をすすぎ、ストレプトアビジンに結合した磁気ビーズと混合する。細胞複合体は、EPOを発現しない細胞からのEPO発現細胞の分離を可能にする磁場に供される。更なる改変体において、EPO遺伝子は、Mycタグを分泌EPOタンパク質に結合するために改変される。Igリンカーは、Mycタグと免疫反応性のポリクローナル抗血清であり、その結果、アンカー及び分泌EPO分子の両方におけるMycタグとの相互作用を介してEPOを細胞表面に付着する。更に、検出分子は、ストレプトアビジンAlexa 488のいずれかと結合したビオチン化マウス抗EPO mAbであるか、又は、ストレプトアビジン結合磁気ビーズである。
【実施例9】
【0190】
アンカータンパク質を発現する融合パートナー細胞株の最適化。
本明細書に説明する方法及び組成物によって可能にされるアンカータンパク質を発現するハイブリドーマは、異なる方法によって確立できる。一実施例では、アンカータンパク質の発現は、既存のmAb分泌ハイブリドーマのレトロウイルス遺伝子導入によって誘導される。あるいは、アンカーを発現する融合パートナー細胞をB細胞に融合させて、アンカータンパク質及びB細胞に由来するIg遺伝子によってコードされるmAbの両方を発現するハイブリドーマを産生する。
【0191】
上記の実施例におけるとおり、アンカータンパク質をコードする核酸は融合パートナー細胞株に導入され、融合パートナー細胞株を発現する細胞の均一な集団が確立される。その集団由来の単一細胞を単離し、増殖させる。個々のクローン由来のDNAを単離し、制限酵素で消化し、サザンブロッティングによって試験する。サザンブロッティングデータは、各細胞クローン内に存在するアンカートランスジーンのゲノムコピーの数及び性質の決定を可能にし、異なるクローン集団のパネルが指定される。細胞を更なる研究のために増殖させる。アンカー発現融合パートナー細胞株の各々の異なる集団を、標準的な方法に従ってB細胞の細胞系譜の細胞に融合し、適切な希釈で96ウェルプレートに蒔き、次いでHAT選択に供する。クローンの増殖に続いて、ウェル中の細胞を洗浄し、ウサギIg結合Alexa 488と接触させ、洗浄し、蛍光顕微鏡で調べる。
【0192】
新たなハイブリドーマ(90%以上)においてアンカーの最も一貫した発現を生じた融合パートナー細胞株を、更なる融合のために使用する。このマイルストーンを達成しない融合パートナー細胞株クローンは、アンカー遺伝子の更なるレトロウイルス形質導入を受ける。この第2のアンカー遺伝子は、Mycタグの代わりにHisタグを有し、構築物は、追加の抗生物質耐性遺伝子を含んでも含まなくてもよい。アンカー発現細胞クローンを第2のアンカー構築物で形質導入した後、第2のアンカー構築物を発現する細胞を、それらのHisタグ配列の発現によって同定し、フローサイトメトリーによって単離し、先に説明した細胞融合実験において再試験する。
【実施例10】
【0193】
モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマライブラリーの作製及びスクリーニング
本発明の融合パートナー細胞株は、モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマのライブラリーの作製及びスクリーニングのために使用できる。原則として、この方法は、いずれかの哺乳動物種由来のB細胞の細胞系譜の細胞と共に使用される場合があるが、B5-6T BGS及びLCX BGS細胞株は、ヒトmAbを安定的に分泌するハイブリドーマを作製するために適する。B5-6T細胞株のような細胞を用いてハイブリドーマを作製する方法は、ヒトB細胞22、23、野生型マウス由来のマウスB細胞24、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列に遺伝子導入されたマウス25、及び、ウサギ26を含む多くの様々な種由来のB細胞と共に使用するための最新技術として周知である。
【0194】
ヒト末梢血単核細胞を、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)を受けた8日後にボランティアから入手し、Ficoll遠心分離を使用して単離し、次いで、使用するまで、90% Hyclone Defined FBS(Invitrogen、Carlsbad、CA)及び10% DMSO(Sigma-Aldrich)中で液体窒素下で凍結保存する。細胞融合の前に、CD27陽性細胞を、製造業者の説明書に従って、抗CD27磁気ビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)で単離する。これらの細胞を、IL-2及び他のサイトカイン並びにpen/strepを補充したIMDM中の多量体CD40L(Ultra-CD40L、Richard Kornbluth、M.D.、Multimeric Biotherapeutics、Inc、La Jolla、CA、USAの提供)の存在下で8日間培養する。培養細胞を、電気融合によりB5-6T BGS又はLCX BGS融合パートナー細胞株に融合し、細胞を、96ウェルプレート中のウェル当たり100~2000個の初代細胞で、又は、10cm培養皿当たり10,000~200,000個の細胞の密度で播種する。新生のハイブリッド細胞を、Advanced RPMI+1%ウシ胎仔血清中のHAT(Sigma-Aldrich)で選択する。
【0195】
HAT耐性ハイブリドーマの出現後、融合の約7~17日後に、細胞培養培地を除去し、RAHを、ビオチン化ポリオウイルス1型、2型及び3型、並びに、ストレプトアビジンAlexa 488と共に添加する。細胞を1~8時間インキュベートし、蛍光シグナルを獲得する細胞をピペッティングによって単離し、96ウェルプレートに入れる。3~10日後、細胞を再びPVへの結合について試験する。別の方法では、ストレプトアビジン結合磁気ビーズを、ストレプトアビジン488ビーズに加えて、又は、その代わりにハイブリドーマに添加する。細胞インキュベーション後、PV mAbを発現する細胞を、磁気アフィニティーカラム上で単離する。
【実施例11】
【0196】
安定化されたハイブリドーマ発現ライブラリー(SHEL)の生成及び維持
ハイブリドーマ法によるmAbクローニングの現在の技術水準における重要な弱点は、mAbを分泌するハイブリドーマがより速く増殖する非分泌ハイブリドーマ細胞によって圧倒される傾向があるため、ハイブリドーマライブラリーをポリクローナル培養物中で維持することができないことである。その結果、ハイブリドーマライブラリーは、典型的には、スクリーニング後に廃棄される。これは、各ハイブリドーマについて実施可能な試験の数に実際的な制限を課し、潜在的に価値のあるB細胞サンプルを失う。
【0197】
本明細書に説明する方法及び組成物は、ポリクローナルハイブリドーマ集団が分析され、選別されて、mAbのみを分泌し、従って、培養物中で無期限に維持でき、必要に応じて凍結保存できる集団を作製することを可能にする。前述のとおり、ヒト又はマウスB細胞を、アンカータンパク質を発現する融合パートナー細胞株に融合させ、HAT選択に供し、10cm皿当たり約0.1~1000万個のB細胞の密度で蒔く。HAT耐性クローンの確立後、細胞を洗浄し、過剰のウサギ抗ヒト(RAH)Igリンカー、分泌されたmAbに特異的なビオチン化二次抗体(ヤギ抗ヒトIg又はヤギ抗マウスIg Fcドメインのいずれか)、及び、ストレプトアビジン結合磁気ビーズと共にインキュベートする。ハイブリドーマを培養皿から穏やかに除去し、mAb分泌ハイブリドーマを磁気カラム上で陽性に選択する。
【0198】
別の方法では、ハイブリドーマをAlexa 488結合ストレプトアビジンと接触させ、陽性細胞をフローサイトメトリーによって単離する。次いで、陽性に選択されたIg発現培養を、増殖させ、維持し、本明細書に説明する方法に従って、アンカーの発現によって可能になるように、更なる抗原又は機能的アッセイでスクリーニングする。質の制御のために、mAb集団の複雑さを評価し、免疫グロブリン遺伝子レパートリーのディープシーケンシング及びジニ指数の算出を含む一般的な方法によって前向きに監視する。27
【0199】
本明細書に示すこの実施例では、ヒト初代B細胞をLCX BGS融合パートナー細胞株に融合させ、HAT耐性細胞集団を選択し、その後、ヒトIgGを発現する細胞を非発現細胞から単離し、それによって安定化ハイブリドーマ発現ライブラリー(SHEL(商標))を作製した。ポリクローナルヒトIgGを発現するSHELライブラリーの作製において、本発明者らは、ヒトB細胞の集団をLCX BGS融合パートナー細胞株に融合させ、融合細胞を5枚の96ウェルプレートに、1ウェル当たり約1000個のB細胞の密度で蒔いた。融合の14日後(14日目)、プレートを、従来の方法に従って、PV抗体の発現についてスクリーニングした。6クローンのパネルを選択し、96ウェルプレートから取り出した後、融合後16日目に、残りのウェル中の細胞をプールし、HATを含まない培養培地中で更に3日間培養した。
【0200】
次いで、細胞を、以下の方法によりヒトIgGを発現するものについて陽性選択に供した。まず細胞を洗浄し、培養培地中の過剰のリンカー、ウサギF(ab’)
2断片抗ヒトIgG(H+L)(Southern biotechカタログ番号6000-01)と共に一晩インキュベートした。次いで、細胞を1% PBS-BSAで2回洗浄し、ビオチン化プロテインA(SigmaAldrichカタログ番号2165)と混合し、氷上でインキュベートした。1時間後、細胞を1% PBS-BSAで洗浄し、次いでAlexa Flour 488結合ストレプトアビジン(Jackson Immuno Researchカタログ番号016-540-084)と混合し、氷上で45分間インキュベートし、次いで再び洗浄した。次いで、ヒトIgGを発現している細胞の集団を、BD FACSAriaII上のFACSによって単離した。この陽性選択を更に2回繰り返し、その後、フローサイトメトリーによって示されるとおり、細胞集団は、ヒトIgG発現細胞について高度に濃縮された(
図23Aを参照されたい)。
【0201】
異なるドナー由来のB細胞をLCX BGS細胞株に融合させて、同様の実験を行った。細胞融合の16日目に、5枚の96ウェルプレートからの細胞をプールし、3日間培養し、次いでヒトIgAを発現するものについて陽性に選択した。細胞を洗浄し、過剰のリンカー、ウサギ抗ヒトIgA(Abcamカタログ番号ab193189)と共に一晩インキュベートした。次いで、細胞を1% PBS-BSAで2回洗浄し、次いでヤギF(ab)2抗ヒトIgA-Alexa Fluor 647(Southern Biotechカタログ番号2052-31)と混合し、氷上で45分間インキュベートした。次いで、ヒトIgAを発現している細胞を、FACSによって非発現細胞から分離した。細胞をこの陽性選択に2回かけた。第2の選別からのフローサイトメトリーデータを
図23Bに示す。
【実施例12】
【0202】
免疫複合体依存性機能を有するMABSの同定
抗体によって発揮される多くの機能が免疫複合体の形成に依存することは、周知である。例えば、複数のIgG抗体からなる免疫複合体は、古典的補体経路を活性化し、T細胞を活性化し、Fc受容体を介して、マクロファージ、NK細胞、及び、好中球におけるエフェクター応答を活性化することができる。28、16、29
【0203】
このような免疫複合体媒介機能を評価するための方法は、当技術分野で周知である。本実施例において、ハイブリドーマは、T細胞活性化刺激の検知のための確立されたプロトコルに従って、T細胞活性化、T細胞によるCD154発現の誘発のための周知の試験を用いて、本発明を用いてそれらの形質膜外側上に提示された免疫複合体によって誘発されたT細胞活性化についてスクリーニングされる。30
【0204】
関節リウマチ又は癌を有するヒト対象から末梢血単核細胞を得、96ウェルプレート中のウェル当たり約1000個のB細胞の密度で蒔き、HAT選択に供されたB5-6T BGS又はLCX BGS融合パートナー細胞株に融合する。HAT耐性クローンの確立及びHT含有培地への変換後、細胞を洗浄し、約1,000~100,000個のPBMC又はCD3+T細胞を培養皿に添加する。細胞を、過剰のRAH Igリンカー、マウス刺激性IgG(抗CD28、抗CD49d)、ヒトCD154に特異的なビオチン化二次抗体、及び、ストレプトアビジンAlexa 488と共にインキュベートする。免疫複合体を発現しているハイブリドーマに隣接するT細胞は、CD154の発現を活性化するであろう。ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシンBを、いくつかのウェルにおいて陽性対照として使用する。T細胞活性化に関連するハイブリドーマ細胞を、陽性ウェルから単離し、増殖させ、上記の方法を使用して、Ig発現の継続について試験する。次いで、これらの細胞を、同じ条件下でT細胞活性化について再試験するが、ただし、RAH Igリンカーが、単量体RAH Igリンカーで置換されている陰性対照サンプルを含むが、ここで前記単量体RAH Igリンカーは、mAb及びポリクローナルIgリンカーによって形成されるコンカテマー化多量体免疫複合体を誘導することができない。
【実施例13】
【0205】
MAB分泌ハイブリドーマに結合した抗原の特徴付け
本明細書に説明のとおり調製されたmAbを分泌するハイブリドーマは、連結免疫複合体において、mAbをそれらの形質膜外側上に捕捉するが、ここで、前記連結免疫複合体は、アンカーが細胞表面から切断された後に残存するアビディティー効果によって安定化され、該アビディティー効果は、結合した抗原の特徴付けに使用することができる。以前に説明したMycタグの代わりにtevプロテアーゼタグを含むアンカー分子は、あまり特徴付けられていない抗原で、複数の抗原を含む抗原混合物内に存在することが知られている抗原に特異的なmAbを分泌するハイブリドーマ細胞において発現される。抗原混合物を最初にビオチン化する。次いで、アンカー発現細胞株を、過剰のIgリンカーと共にインキュベートし、これは、分泌されたmAbをハイブリドーマ細胞表面、ビオチン化抗原混合物、及び、ストレプトアビジンAlexa 488に付着させる。抗原が細胞表面に結合したことを視覚的に確認した後、細胞を培養培地から取り出し、AcTEVプロテアーゼ(Thermo Fisher)による切断に好ましい条件下で処理する。切断反応に続いて、細胞を遠心分離により上清から除去し、所望により、AcTEVプロテアーゼをサイズ排除クロマトグラフィーにより除去する。得られたサンプルを分析して、質量分析又は結合した抗原の特徴付けに適切な他の方法によって、mAbに結合した抗原の組成を同定する。
【実施例14】
【0206】
293 OCMS細胞株におけるA12の一過性のトランスフェクション
293T又は293T OCMS細胞を、24ウェルプレート中の丸いCorning(商標)BioCoat(商標)12mm #1German Glass Coverslips(Corning、カタログ番号354087)上に細胞5×10
4個/ウェルで蒔き、5%C02インキュベーター中、37℃でインキュベートした。一晩インキュベートした後、X-treme Gene 9 DNA遺伝子トランスフェクション試薬を使用して、A12重鎖及び軽鎖DNAの各々0.5μg又は1μgで一過性トランスフェクションを行った。24時間後、各ウェルから培地を除去し、1μg/mlのウサギ抗ヒトIgG Fc特異的mAb(Abcam H169-1-5)を有する10% FBSを有する500μlのDMEMを加え、一晩インキュベートした。翌日(トランスフェクションの48時間後)、細胞を、1% BSAを含むPBS(PBS-BSA)で3回洗浄し、PBS-BSA中に1:200希釈した、抗ヒトIgG F(ab)2断片特異的(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-546-097)のAlexa Fluor 488結合ヤギF(ab)2断片とともにCO2インキュベーター中、37℃で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、細胞をPBS-BSAで3回洗浄し、室温で15分間PBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定後、細胞をPBSで1回、dH2Oで1回洗浄し、次いでカバーガラスにDAPIを含むProLong(登録商標)Gold Antifade試薬(P36935、Thermo Fisher Scientific)をマウントし、63x/1.3 NAオイル対物レンズを有するC2+ニコン共焦点顕微鏡で画像化し、画像をImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/ij/)で分析した。
図19を参照されたい。
【実施例15】
【0207】
強力なポリオウイルス中和活性を有するヒトモノクローナル抗体を分泌する安定なハイブリドーマの確立
LCX BGS細胞株を用いて、初代ヒトB細胞との融合後にヒトIgGを安定的に分泌するハイブリドーマを作製した。B5-6T融合パートナー細胞株の使用により標準化されたプロトコルに従って、本発明者らは、LCX BGS細胞株を、ポリオウイルス(PV)(1~3型)に対して免疫性の2人の個体由来のB細胞に、説明されたプロトコルに従って融合させた。20実験は、全PVビリオン、非標識PVビリオン、生PVビリオン又はUV-C不活化PVビリオン(セービンワクチン株)を用いて行われる41。これは、3型ポリオウイルスと免疫反応性のIgGの発現について評価されたヒトIgGを分泌するハイブリドーマの集団を生成した。ハイブリドーマ上清をELISAによって評価し、PV結合可能なヒトmAbを安定的に分泌するハイブリドーマの同定及びサブクローニングを可能にした。本発明者らは、マイクロ中和アッセイにおいて7種のヒトmAbの中和力価(以下の表3)を試験し、100 TCID50のセービン3及びサウケット3 PV株でのチャレンジに対して細胞培養物の50%を保護する希釈の逆数として結果を表にした。全てのmAbは、両方の株に対して3型PV中和活性を有していた。
【0208】
【0209】
本発明者らは、これらのハイブリドーマを、それらの分泌されたヒトIgGの付着について試験した。
図24は、ヒト抗PV IgG mAbを分泌するOCMSハイブリドーマへのIII型PVの結合を示す9枚の顕微鏡パネルを示す。ヒトPV mAbを分泌するハイブリドーマを、RAHリンカー抗体の存在下で一晩インキュベートした後、ビオチン標識III型PVへの結合について免疫蛍光によって分析した。Alexa-Fluor 488ストレプトアビジンを用いてPVを検出し、共焦点顕微鏡で分析した。核をDAPIで染色した。スケールバー=5μm。この実験で単離された7種のハイブリドーマ集団の全ては、LCX BGS融合パートナー細胞株及び8C5 BGSハイブリドーマ(狂犬病糖タンパク質に特異的なIgGを発現する)を除いて、それらの細胞の多くの周辺で緑色シグナルを示した。細胞の多くは、細胞の一方の極にキャップ様構造でPVを付着した。PVの画像の各々において、細胞のいくつかは、それらが強陽性細胞に隣接していた場合でさえ、結合を示さず、示された条件(過剰のRAHを含む)がハイブリドーマが分泌しなかったmAbに結合することを妨げるのに十分であることを示した。
【0210】
本発明者らは、更に、これらのハイブリドーマを分析して、フローサイトメトリーによってそれらのPV結合のレベルを評価した。
図25は、抗PV IgG mAbを分泌するIII型PV結合OCMSハイブリドーマのフローサイトメトリー分析を示す9枚の白黒フローサイトメトリーヒストグラムを示す。ヒトPV mAbを分泌するハイブリドーマを、ビオチン標識III型PVへの結合についてフローサイトメトリーにより分析した。APC標識ストレプトアビジンを使用してPVを検出した。PVハイブリドーマ中の細胞の大部分は、陰性対照LCX BGS及び8C5 BGS細胞株に比べて、いくらかの結合を示した。
【0211】
次に、本発明者らは、アンカーの存在の代理としてRAH結合を使用して、機能的アンカー分子部分の存在についてハイブリドーマを試験した。細胞をRAHと一晩インキュベートした後、本発明者らは、フローサイトメトリーを用いて、ヒトIgG及びRAH結合を同時に評価した。
図26は、抗PV mAbを発現するハイブリドーマによるタンデムscFv及びヒトIgG発現を評価するフローサイトメトリーグラフを示す。
図25で分析した抗PV-mAbを発現しているハイブリドーマを、RAH(タンデムscFv融合タンパク質の機能的発現の指標)の結合、及び、ヒトIgGの発現について評価した。RAHとのインキュベーション後、細胞を、アロフィコシアニン結合AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ウサギIgG(H+L)検出試薬を用いてRAH結合について、並びに、ビオチン化タンパク質A及びAlexa Flour 488結合ストレプトアビジン試薬を用いてヒトIgG結合について評価した。細胞の大部分は、細胞融合後にアンカーの発現を維持し、細胞によって分泌されたヒトIgGを捕捉することができた。各パネルの二重陽性パーセントは:3A3、63%;5E12、48%;1A9、56%;5H3、82.7%;5F6、55%;4G4、80%である。クローニング手順の間、これらの細胞は、アンカー及びRAHを介したヒトIgG又はPV結合について陽性に選択されなかったことに留意されたい。
【0212】
従って、BGSアンカータンパク質と共に、構成的に活性なIL-6受容体gp130 ΔYYを発現する細胞株、LCX細胞株が作製され、該細胞株は、有用なヒトモノクローナル抗体を分泌する安定なハイブリドーマを作製するために、ヒトB細胞との融合パートナーとして有効であることが実証された。更に、クローニング及びスクリーニング手順の間のアンカー発現についての陽性選択なしでさえ、LCX BGS融合パートナー細胞株に由来するハイブリドーマは、有意なアンカー発現を維持し、OCMS法を用いた分析に対してそれらを適切なものとした。
【実施例16】
【0213】
普遍的な抗ウイルスMABスクリーニング方法
上記のとおり、以下は、普遍的な抗ウイルスmAbスクリーニング方法の例を提供する。本明細書に提供される特定の実施例において、狂犬病糖タンパク質GPに特異的なヒトmAbを分泌する8C5、及び、3型ポリオウイルス(PV)に結合するヒトmAbを分泌する4G4の2種のハイブリドーマが示される。ハイブリドーマを洗浄し、ヒトIgG(H+L)(Rockland、カタログ番号809-4102)及び3型PV又は狂犬病GPに特異的な過剰のウサギFAb断片を含有する細胞培養培地中で一晩インキュベートした。それらをPBS+BSAで洗浄し、PBS-BSA中で1:200で、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-546-170)Alexa Fluor 488結合F(ab)2断片と共に1時間インキュベートした。1時間後、細胞をPBS-BSAで3回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで15分間室温にて固定した。固定後、細胞をPBSで1回、dH2Oで1回洗浄し、次いで、カバーガラスに、DAPI(P36935、Thermo Fisher Scientific)を含むProLong(登録商標)Gold Antifade試薬(P36935、Thermo Fisher Scientific)をマウントし、63x/1.3 NAオイル対物レンズを有するC2+ニコン共焦点顕微鏡で画像化し、画像をImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/ij/)で分析した。
【0214】
図21において緑色シグナルは、ハイブリドーマ細胞に結合したヒトIgGを示す。4G4 mAbについては、PVIII型の存在下で、tell-taleキャップ構造が形質膜外側上に現れ、これは、ハイブリドーマ表面上の4G4 IgGに結合したPVによって核形成された免疫複合体である。4G4は狂犬病GPに結合しないので、ハイブリドーマ表面上のIgGは、細胞核を取り囲むスポットに均一に分布する。逆の状況が8C5ハイブリドーマで観察される。GPの存在下では、キャップ構造が形成され、これは、GPに特異的な8C5 IgG及びGP自体を含む多価複合体である。PVに暴露された8C5ハイブリドーマには、キャップは見られない。
【0215】
本発明の重要な特徴は、両方のウイルスに特異的なmAbが単一セットの試薬で検出され、いずれの抗原も、使用前に標識又は改変される必要がなく、更なるウイルス特異的免疫試薬は必要とされなかったことである。従って、本発明の一実施形態は、検出試薬及びプロトコルの共通のセットを使用して、ウイルス抗原に特異的なmAbを同定するための普遍的な方法である。
【0216】
ポリオウイルス3型(PV3)特異的OCMSハイブリドーマの4G4-OCMS、又は、抗狂犬病糖タンパク質OCMSハイブリドーマ(8C5 OCMS)細胞を、ウサギ抗ヒトIgG(H+L)(Rockland、カタログ809-4102)の1μg/ml Fab断片及び10μLのPV3(2×103pfu/ウェル)又は1μg/mlの狂犬病糖タンパク質(GP)を含む1% Advanced RPMI中の24ウェルプレート中の丸いCorning(商標)BioCoat(商標)12mm #1 German Glass Coverslips(Corning、カタログ354087)上に細胞5×104個/ウェルで蒔いた。このプレートを、CO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を、1%BSAを含むPBS(PBS-BSA)で3回洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的(Jackson Immuno Research、カタログ109-546-170)Alexa Fluor 488結合F(ab)2断片をPBS-BSA中で1:200希釈して添加し、CO2インキュベーター中、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、細胞をPBS-BSAで3回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで室温にて15分間固定した。固定後、細胞をPBSで1回、dH2Oで1回洗浄し、次いで、カバーガラスに、DAPI(P36935、Thermo Fisher Scientific)を含むProLong(登録商標)Gold Antifade試薬をマウントし、63x/1.3 NAオイル対物レンズを有するC2+ニコン共焦点顕微鏡で画像化し、画像をImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/ij/)で分析した。
【0217】
レーザー出力及び画像捕捉時間は、300~3,000の蛍光カウントを与えるために設定される。本発明者らは、最初に局所画素強度最大値を計算し、次いで全ての強度最大値の周りに4個の画素円を描いた。スポットは、SpotToCell強度(全ウェル計算)、そのコントラスト(隣接画素と比較)、及び、DAPI染色画素(核)からのその距離に基づいて、実数として指名した。データは、肉眼で確認した。最初の研究のために、96ウェルプレートを使用し、収集されたデータは、DAPI染色された核の数と比較した、各ウェルにおける陽性シグナルの数である。陽性データポイントの数を結合ハイブリドーマと非結合ハイブリドーマについて比較し、スチューデントt検定を用いて有意性を計算した。
【0218】
使用することができる他の方法は、蛍光を発生させるために分子の対を一緒にする必要がある蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)試薬を使用して系を適合させることを含む42。FRETは、2個の分子が近接しているか否かについての詳細な情報を提供する。細胞又はmAbへの非特異的ウイルス結合が起こり、これが偽陽性率を増加させ得る場合、培養培地は、更なる血清、精製アルブミン、又は、穏やかな界面活性剤などの結合手順の間、このようなバックグラウンドを減少させるために適合できる。
【実施例17】
【0219】
MAB分泌ハイブリドーマ上でウイルスマイクロ中和を試験するための方法
治療用mAbは、それらが臨床開発のために指定できる前に、インビトロでウイルス中和活性を示す必要がある。第1のこのような試験は、典型的には、培養細胞株をウイルスに感染させ、細胞変性作用を予防するmAbの能力を測定するマイクロ中和試験である。20、43OCMS mAbクローニング方法の利点の1つは、組換えmAb発現を必要とせずに、マイクロ中和アッセイで試験することができる全長IgGを安定的に産生することである。普遍的な抗ウイルスmAbクローニングアッセイの必須のコンパニオンは、ウイルス中和を試験するために使用できる細胞株のパネルである。OCMSハイブリドーマ自体がウイルス中和を試験するために使用されるならば、有利であろう。
【0220】
mAbsの抗ウイルス中和活性を評価するために、それらを分泌するハイブリドーマを保護するそれらの能力をアッセイする。最初に本発明者らは、ハイブリドーマをウイルス誘導殺傷に対して感受性にする。次に、mAb分泌ハイブリドーマを希釈系列のウイルスと共にインキュベートする。いずれかの生きているハイブリドーマは、中和mAbを分泌すると推定される。この概念は、白血球マーカーPSGL-1を介して細胞に感染するエンテロウイルス71(PV関連)の研究で最初に発生した。PSGL-1は本発明者らのハイブリドーマによっても発現される。本発明者らは、EV71が3日間のインキュベーション期間にわたってOCMSハイブリドーマを死滅させるが、PVは死滅させないことを見出した。LCX OCMS細胞株におけるEV71のPVに対する細胞毒性を比較する24時間の実験において、本発明者らは、Fixable Viability dye eFluor 780(eBioscience)を用いて細胞死を検出した。EV71処理細胞の25%が死滅したのに対し、モック処理細胞及びPV暴露細胞は、各々6%及び4%であった。
【0221】
本発明者らは、ヒト抗PV mAbを発現するハイブリドーマにPV受容体(CD155)を導入し、細胞生存率がmAb中和力価と相関するか否かを試験する。本発明者らは、Operetta High-Content Imaging Systemを用いてこの検出方法を最適化する。
【実施例18】
【0222】
ウイルス性細胞変性効果を検出するための手順
ウイルスの細胞への感染能は、多数の因子、とりわけ、細胞表面上のウイルスに対する受容体の存在、及び、感染した細胞のサイトカイン応答に起因する44。EV71誘導殺傷に対するLCX OCMS細胞株の感受性は、それらがヒトPV受容体(hPVR、CD155)を発現した場合、それらも殺傷されることを示唆する45。本発明者らは、レトロウイルス遺伝子形質導入を用いてLCX OCMS細胞中でCD155を発現させ、2logの範囲内のCD155発現の6種の細胞クローンのパネルを単離する。本発明者らは、上記のOperettaアッセイを用いてPV感染についてこれらを試験し、CD155発現及びPV用量(50%組織培養感染用量、TCID50)の最適レベルを同定する。次いで本発明者らは、既知の中和能力を有するヒトPV mAbのパネル(9H2、8H4、7E2、及び、対照mAb、6A)22、20、46を、先に説明したとおり、1mg/mlストックからの希釈系列において試験し、Karber式を使用して中和力価を計算する46、47。
【0223】
次いで本発明者らは、CD155発現を、その最適レベルで、9H2、8H4、7E2、及び、6Aハイブリドーマに導入する。96ウェルプレートに蒔いたCD155発現細胞を、希釈系列のウイルスの存在下で細胞変性について評価し、各々の細胞株についてTCID50を計算する46、47。TCID50値は、従来のマイクロ中和試験を用いて得られたmAb中和力価と相関する。TCID50値はまた、(a)新鮮に洗浄されたハイブリドーマ、対、一晩インキュベートされたハイブリドーマ(低対高初期mAb濃度)と、(b)低密度対高密度でプレートされたハイブリドーマとを比較するために、異なるプロトコル下でハイブリドーマについて測定される。
【0224】
実施例17~18は、OCMSハイブリドーマの効率がウイルス中和試験のためにmAb発現ハイブリドーマ自体を使用することによって最大化できるか否かを示す。ハイブリドーマがhPVRの発現にもかかわらず、PVによって致死的に感染されない場合、本発明者らは、細胞のEV71感染を用いて同じ実験を行う。細胞殺傷の分析は、Operettaシステム(PerkinElmer)を用いて、又は、顕微鏡検査によって行われる。
【実施例19】
【0225】
OCMSプラットフォームは、MAB構造及び機能を遺伝的に最適化するために適合される。
本明細書で同定されるヒトmAbは、優れた抗ウイルス治療薬候補である可能性が高い。にもかかわらず、mAbの安定性、発現レベル、結合動力学、又は、結合特異性を改善するために、ヒトmAbを改変することが重要な場合がある。OCMSプラットフォームのハイスループットスクリーニング能力を使用して、本発明者らは、クローニングされたmAbの指向性進化、即ち、突然変異誘発、続いて改善されたmAb変異体の選択を行う。
【0226】
体細胞超変異による抗体多様化の自然なメカニズムは、DNA修飾タンパク質である活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現を介して、いずれかの細胞において誘導することができる39。本発明者らは、本明細書で参照されるヒトmAbの能力を改善するためのシステムを確立する。mAb発現ハイブリドーマにおいて、本発明者らは、タモキシフェン曝露によって活性化できる融合タンパク質としてAIDを発現する。次いで、本発明者らは、AID発現を活性化し、結果として生じる変異mAbの結合活性を分析する。本発明者らは、本発明者らの実験モデルとして、ポリオウイルス株への交差反応性mAb結合を使用する。この指向性進化実験では、本発明者らは、ハイブリドーマ細胞集団を処理し、次いで細胞集団を標識PVビリオンと混合し、フローサイトメトリーを使用してそれらを分析して、改善されたPV結合能力を有するクローンを同定する。突然変異クローンをIg遺伝子配列決定により分析する。
【0227】
(a)タモキシフェンの存在下で抗体遺伝子変異を活性化することができるAID-エストロゲン受容体融合タンパク質(AID-ER)を発現するレトロウイルス遺伝子構築物。
【0228】
本発明者らは、Doiらの研究に基づいて、タモキシフェン処理によりIg遺伝子に体細胞超変異を誘導することができる、公表されたAID-ER融合タンパク質を発現するDNAを合成する48。この構築物はGFPカセットを含み、ベクターpBabe Puro(Addgeneプラスミド#1764)を使用して、線維芽細胞に導入される22。本発明者らは、ERドメインに対する抗体を用いた免疫蛍光染色を用いて、線維芽細胞におけるAID-ER融合タンパク質の局在を決定する。本発明者らは、このタンパク質が未処理の状態において、主に細胞質内に位置することを確認し、このタンパク質の核への移動を誘導するための最適な濃度及び時間経過を決定する。
【0229】
(b)AID-ERは、タモキシフェン処理により細胞質から核へ移動する。
【0230】
本発明者らは、抗ウイルスmAbを発現するハイブリドーマにおいてAID-ER遺伝子を発現し、タモキシフェン処理中の遺伝子突然変異の動態を確立する。ヒトmAbを発現するハイブリドーマ細胞におけるAID-ERの活性を試験するために、本発明者らは、レンチウイルス遺伝子導入を用いて、以下のハイブリドーマ細胞株にAID-ER遺伝子を導入する。この遺伝子は全て、ヒトmAbをセービンPV株に特異的とする。本発明者らは、突然変異誘発性変化について容易に評価することができる特有の結合活性を有するIgG mAbを発現するハイブリドーマを選択した。2H5は、セービン1型及び2型に対して低い親和性結合及び中和活性を有する20。9H2は、セービン1型、2型及び3型に一般的な線状エピトープと結合するが、セービン3との結合は、やや少ない46。7E5及び8H4は、両方ともセービン1型及び2型のみに結合し、それらが非常に類似しており、それらの抗原結合ドメインにおいて3個のAAのみが異なるため、興味深い。特にそれらは、セービン1型PV上の同じエピトープに結合するが、セービン2型上の異なったエピトープに結合する46。本発明者らは、ピューロマイシン選択トランスファーベクターpCDH-EF1-FHC(Addgene #64874)49を用いて細胞集団を作製し、次いで免疫蛍光法及びウエスタンブロット法によるAID-ER発現の評価のために個々のクローンを単離する。
【0231】
ハイブリドーマを異なる用量及びスケジュールでタモキシフェンで処理し、フローサイトメトリー及び精製したAlexa-Fluor標識セービン1、2及び3ビリオンを用いてPV結合活性について集団を試験する。この種の実験のためのモデルは、Bowersらに示されている38。本発明者らは、最初に、PV結合活性を失ったサブクローンの生成について高結合性ハイブリドーマを試験し、単位時間(例えば、時間、日、細胞分裂)当たりに生じる非結合性クローンの数を測定する。次いで、これらの集団におけるIg遺伝子のディープシーケンシングを行って同義及び非同義突然変異の割合を経時的に計算し、この割合を将来の研究のためのベースラインとして使用する。
【0232】
本発明者らは、一連の機能獲得実験(指向性進化)を行って、現実世界の薬物発見努力をモデル化し、mAb改善に必要な突然変異処理/割合を確立する。例えば、本発明者らは、PV1型及び2型に対する2H5の結合親和性と、PV3型に対する9H2の結合親和性とを増加させることを試みる。本発明者らは、改善された1型及び2型結合活性を有するサブクローンを同定するために、7E5及び8H4 mAbについて同様の実験を行う。これらの実験の全てについて、本発明者らは、集団をディープシーケンシングして、ベースライン変異率が予想されたものから変化するか否かを決定し、改善されたmAbクローンを単離及び配列決定する。データは、IGMTデータベース中の参照Ig配列を使用し、更にRep-seq(Ig配列解析)ソフトウェアスイートを用いて解析される50。
【0233】
これらの実験は、天然の体細胞超突然変異プロセスを使用し、OCMS mAbクローニングプラットフォームを使用して、稀な、改善された異常値を単離する、ヒト抗体の指向性進化のための基本的パラメーターを確立する。別の実施形態では、本発明者らは、全長AIDを試験する。異常サブクローンを直ちにIg遺伝子配列決定及び組換え法で発現に供する。もしAID-ERが漏出性で、望ましくないときに突然変異を引き起こすならば、ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にある構築物にこの遺伝子を導入し、AID活性を2段階に制御する。
【0234】
米国仮特許出願第62/476,599号及び第62/526,608号を含む、各々及び全ての特許、特許出願及び明細書、並びに本明細書全体を通して引用されるウェブサイトを含む刊行物、並びに本明細書及び配列表において特定される配列は、参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく改変を行うことができることが理解されよう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0235】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、数値識別子<223>の下のフリーテキストを含む配列について提供される。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
参考文献
1.Zhou C,et al.“Development of a novel mammalian cell surface antibody display platform”,mAbs(2010),2:5,508-518,DOI:10.4161/mabs.2.5.12970.
2.Mckinney,KL et al.,“Manipulation of Heterogeneous Hybridoma Cultures for Overproduction of Monoclonal Antibodies”,Biotechnol Prog.(1991 Sep-Oct),7(5):445-54.
3.Price,PW et al.“Engineered cell surface expression of membrane immunoglobulin as a means to identify monoclonal antibody-secreting hybridomas.”J Immunol Methods.(2009 Mar 31);343(1):28-41
4.Kumar N,Borth N,“Flow-cytometry and cell sorting:an efficient approach to investigate productivity and cell physiology in mammalian cell factories”,Methods(2012 Mar);56(3):366-74.doi:10.1016/j.ymeth.2012.03.004.
5.Dobson,L et al.,“The human transmembrane proteome”,Biol Direct.2015 May 28;10:31.doi:10.1186/s13062-015-0061-x.PMID:26018427.
6.The website for the Human Transmembrane Proteome database,database version:d.1.4,dated June 24,2016 at address http://htp.enzim.hu.
7.米国特許第7,906,111号
8.Khan,KH,“Gene Expression in Mammalian Cells and its Applications”,Adv.Pharm Bull,(2013 Dec)392):257-263;
9.Green MR and Sambrook J,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”,2012 Cold Spring Harbor Laboratory Press
10.Manjunath N et al,Adv.Drug Deliv.Rev.,(2009)61(9):732-745
11.Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY
12.Tiscornia G et al,“Production and purification of lentiviral vectors.”Nature protocols(2006)1:241-245;
13.Dessain SK et al.,“High efficiency creation of human monoclonal antibody-producing hybridomas.”,J Immunol Methods(2004)291:109-122;
14.Garry Nolan,https://www.addgene.org/1730/.
15.Vitale LA et al.,“Development of a human monoclonal antibody for potential therapy of CD27-expressing lymphoma and leukemia.”Clin Cancer Res(2012),18:3812-3821(2012)
16.Walker C et al,“T cell activation by cross-linking anti-CD3 antibodies with second anti-T cell antibodies:dual antibody cross-linking mimics physical monocyte interaction.”Eur J Immunol(1987),17:1611-1618
17.Merle,NS et al.“Complement System Part I - Molecular Mechanisms of Activation and Regulation.”Frontiers in Immunology(2015),6:262
18.Taylor,RP et al,“The role of complement in mAb-based therapies of cancer.”Methods(2014)65:18-27
19.Sommer J et al.,“Constitutively active mutant gp130 receptor protein from inflammatory hepatocellular adenoma is inhibited by an anti-gp130 antibody that specifically neutralizes interleukin 11 signaling.”J Biol Chem(2012)287:13743-13751.
20.Puligedda RD et al.,“Human monoclonal antibodies that neutralize vaccine and wild-type poliovirus strains.”Antiviral Res(2014),108:36-43,Epub 2014/05/16.
21.米国特許第8,557,575号
22.Adekar SP et al.,“Hybridoma populations enriched for affinity-matured human IgGs yield high-affinity antibodies specific for botulinum neurotoxins.”J Immunol Methods(2008),333:156-166.Epub 2008/03/04.
23.Yu X et al,“An optimized electrofusion-based protocol for generating virus-specific human monoclonal antibodies.”J Immunol Methods(2008 Jul 31)336(2):142-51
24.Greenfield EA,“Antibodies:A Laboratory Manual.”Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,ed.2nd(2014)
25.Mompo SM,A.Gonzalez-Fernandez,“Antigen-specific human monoclonal antibodies from transgenic mice.”Methods Mol Biol(2014)1060:245-276
26.Spieker-Polet H et al,“Rabbit monoclonal antibodies:generating a fusion partner to produce rabbit-rabbit hybridomas.”Proc Natl Acad Sci U S A(1995)92:9348-9352
27.Hoehn KB et al,“The Diversity and Molecular Evolution of B-Cell Receptors during Infection.”Mol Biol Evol(2016)33:1147-1157
28.Ravetch JV,Bolland S,“IgG Fc receptors.”Annu Rev Immunol(2001)19:275-290.
29.Chattopadhyay PK,et al,“Live-cell assay to detect antigen-specific CD4+ T-cell responses by CD154 expression.”Nature protocols(2006)1:1-6.
30.Kohler G,Milstein C,“Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.”Nature(1975)256:495-497.
31.Zhu Y,et al.,“Improved fusion partners transfected with DNA fragment encoding IL-11 on generation of human B lymphocyte hybridomas.”Hum Antibodies(1999),9:1-7.
32.Harris JF,et al,“Increased frequency of both total and specific monoclonal antibody producing hybridomas using a fusion partner that constitutively expresses recombinant IL-6.”J Immunol Methods(1992),148:199-207.
33.Flyak AI,et al.,Mechanism of human antibody-mediated neutralization of Marburg virus.Cell.2015;160(5):893-903.Epub 2015/02/28.
34.Jin Y,et al.Human monoclonal antibodies as candidate therapeutics against emerging viruses.Front Med.2017;11(4):462-70
35.Dessain SK,et al.Exploring the native human antibody repertoire to create antiviral therapeutics.Curr Top Microbiol Immunol.2008;317:155-83.
36.Tiller T,et al.Efficient generation of monoclonal antibodies from single human B cells by single cell RT-PCR and expression vector cloning.J Immunol Methods.2008;329(1-2):112-24.Epub 2007/11/13.
37.Smith SA,Crowe JE,Jr.Use of Human Hybridoma Technology To Isolate Human Monoclonal Antibodies.Microbiology spectrum.2015;3(1).Epub 2015/06/25.PubMed PMID:26104564.
38.Bowers PM,et al.Mammalian cell display for the discovery and optimization of antibody therapeutics.Methods.2014;65(1):44-56.Epub 2013/06/25.
39.Pavri R,Nussenzweig MC.AID targeting in antibody diversity.Adv Immunol.2011;110:1-26.
40.Romani B,et al.Antibody production by in vivo RNA transfection.Scientific reports.2017;7(1):10863.
41.Lorenz CM,et al.The effect of low intensity ultraviolet-C light on monoclonal antibodies.Biotechnol Prog.2009;25(2):476-82.
42.Gaborit N,et al.Time-resolved fluorescence resonance energy transfer(TR-FRET)to analyze the disruption of EGFR/HER2 dimers:a new method to evaluate the efficiency of targeted therapy using monoclonal antibodies.J Biol Chem.2011;286(13):11337-45.Epub 2011/02/02.
43.Lee SS,et al.Development of a micro-neutralization assay for ebolaviruses using a replication-competent vesicular stomatitis hybrid virus and a quantitative PCR readout.Vaccine.2017;35(41):5481-6.
44.McFadden G,et al.Cytokine determinants of viral tropism.Nat Rev Immunol.2009;9(9):645-55.
45.Mendelsohn CL,et al.Cellular receptor for poliovirus:molecular cloning,nucleotide sequence,and expression of a new member of the immunoglobulin superfamily.Cell.1989;56(5):855-65.
46.Puligedda RD,et al.Characterization of human monoclonal antibodies that neutralize multiple poliovirus serotypes.Vaccine.2017.doi:10.1016/j.vaccine.2017.03.038.PubMed PMID:28343771.
47.Organization WH.Manual for the virological investigation of polio.Geneva,Switzerland1997.
48.Doi T,et al.The C-terminal region of activation-induced cytidine deaminase is responsible for a recombination function other than DNA cleavage in class switch recombination.Proc Natl Acad Sci U S A.2009;106(8):2758-63.
49.Yousefzadeh MJ,et al.Mechanism of suppression of chromosomal instability by DNA polymerase POLQ.PLoS genetics.2014;10(10):e1004654.
50.Lefranc MP.IMGT,the International ImMunoGeneTics Information System.Cold Spring Harb Protoc.2011;2011(6):595-603.
【配列表】