IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアールアイ インターナショナルの特許一覧

特許7287941支配末梢神経系振動に基づく徐波活動最適化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】支配末梢神経系振動に基づく徐波活動最適化
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/377 20210101AFI20230530BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A61B5/377
A61B5/16 130
A61B5/0245 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020502098
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018042493
(87)【国際公開番号】W WO2019018400
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】62/533,299
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】デ ザンボッティ, マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, フィオナ シー.
(72)【発明者】
【氏名】コレイン, イアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】フォウザンフォー, モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ウィルバー(ゴールドストーン), エイミー
(72)【発明者】
【氏名】ウィロビー, エイドリアン
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0057232(US,A1)
【文献】特表2016-520348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/377
A61B 5/16
A61B 5/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザから1つ以上の生体信号を受け取ることと、
前記1つ以上の生体信号を使用して睡眠段階を分類することと、
前記1つ以上の生体信号に基づいて、時間及び前記睡眠段階の関数として、支配末梢神経系(PNS)振動を決定することと、
前記支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、及び周波数を含む、前記支配PNS振動の少なくとも1つの特性を特徴付けすることと、
前記支配PNS振動の前記位相、前記位相変移、前記振幅、及び前記周波数に基づいて、SWA生成を最大化するために最適時間窓の指示を出力し、前記最適時間窓内でユーザに対して刺激を供給するように構成及び配置された刺激回路に提供することと、
前記ユーザの皮質脳波(EEG)信号に基づいて、前記刺激に対して応答するフィードバックを提供することと、
を備える、徐波活動(SWA)を向上させる装置の作動方法。
【請求項2】
前記支配PNS振動の少なくとも1つの特性を特徴付けすることは、前記1つ以上の生体信号にわたる支配律動、異なる生体信号の律動の余剰、及び位相変移を特徴付けることを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記フィードバックに基づいて、前記支配PNS振動の前記位相に応じて前記刺激のタイミングを適応させる及び最適化し、特定のユーザのSWAを最大化すること、をさらに備える、請求項1の方法。
【請求項4】
前記支配PNS振動の前記位相に応じて末梢ニューロモデュレーションを提供することによって、前記PNSの予備刺激を供給し、前記刺激による前記SWA向上の最大化のために前記刺激を供給する前に、前記PNSの状態を最適化すること、をさらに備える、請求項1の方法。
【請求項5】
前記睡眠段階を分類することは、PPGから導出されたHR変動(HRV)測定と組み合わせた前記ユーザの行動を使用することにより、又はEEG及び電気眼球図記録図(EOG)信号と組み合わせた動きを使用することにより、前記生体信号を処理すること、をさらに備え、
前記生体信号は、ビートトゥビート血圧(BP)、心拍数、及びインピーダンスカルジオグラフィ(ICG)からの前駆出時間(PEP)を含む、
請求項1の方法。
【請求項6】
前記最適時間窓は、自律神経系(ANS)、心血管(CV)律動、及び他の生体信号の少なくとも1つについてである、請求項1の方法。
【請求項7】
前記支配PNS振動の前記位相又は前記位相変移は、前記ユーザ内の皮質脳波(EEG)徐波活動(SWA)を最大化するために前記ユーザに前記刺激を供給するための前記最適時間窓を決定するために使用される、請求項1の方法。
【請求項8】
請求項1の方法を実行するための処理回路により実行可能なプログラム指令をその内部に保存する固定記録媒体。
【請求項9】
1つ以上のバイオセンサを有するセンサ回路によって、ユーザから取得された生体信号を受け取るように構成及び配置されるデータ転送回路であって、前記生体信号は、末梢神経系(PNS)生体信号及び中枢神経系(CNS)生体信号を含む、データ転送回路と、
処理回路であって、
1つ以上の前記PNS生体信号を使用して複数の睡眠段階を分類し、
前記PNS生体信号に基づいて、時間及び前記睡眠段階の関数として、支配PNS振動の位相、振幅、及び周波数を含む、前記支配PNS振動の少なくとも1つの特性を特徴付けし、
前記支配PNS振動の前記位相に基づいて、刺激又は一連の刺激が前記ユーザ内の皮質脳波(EEG)徐波活動(SWA)を向上させるように特徴付けられる、最適時間窓を決定する、ように構成及び配置される処理回路と、
を備え、
データ転送回路は、決定された最適時間窓の指示を出力し、皮質脳波(EEG)徐波活動(SWA)生成を最大化するために前記決定された最適時間窓の少なくとも1つ内で前記ユーザに前記刺激を供給するように構成及び配置される刺激回路に、出力するようにさらに構成及び配置される、
徐波活動(SWA)を向上させる装置。
【請求項10】
前記ユーザから取得されたEEG信号に基づいて、前記刺激に対する前記ユーザの応答を示すフィードバック信号を提供するように構成及び配置されるフィードバック回路をさらに備える、請求項9の装置。
【請求項11】
前記処理回路は、前記フィードバック信号に基づいて、CV機能又はPNS及び/若しくはCNS測定の他の特徴を向上させるように、前記フィードバック回路と共にさらに構成及び配置される、請求項9の装置。
【請求項12】
前記処理回路は、
前記最適時間窓を決定するように構成及び配置されるデータ処理回路と、
前記ユーザのEEG信号に基づいて、前記刺激に対する前記ユーザの応答を示すフィードバック信号を提供するように構成及び配置されるフィードバック回路と、
を備え、
前記データ処理回路は、前記フィードバック信号に基づいて、前記最適時間窓を調整するように構成及び配置される、
請求項9の装置
【請求項13】
音刺激、触覚刺激、電気刺激、及びニューロモデュレーションの少なくとも1つを供給するように構成及び配置される前記刺激回路をさらに備える、請求項9の装置。
【請求項14】
少なくとも2つの前記バイオセンサを有し、少なくとも2つの異なる種類の前記PNS生体信号を取得するようにさらに構成及び配置される前記センサ回路をさらに備え、
前記処理回路は、前記2つの異なる種類のPNS生体信号に関連付けられた前記支配PNS振動の少なくとも前記位相に応答する前記最適時間窓を決定するように構成及び配置される、
請求項9の装置。
【請求項15】
前記処理回路は、
EEG信号からEEG特徴を抽出することと、
前記1つ以上のバイオセンサから他の生理学的特徴を抽出することと、
のすくなくとも1つによって前記睡眠段階を分類する、
請求項9の装置。
【請求項16】
前記処理回路は、目的の周波数内のEEG信号のスペクトル分析を定量化することによって、前記皮質脳波(EEG)徐波活動(SWA)生成を最適化するように構成及び配置される、請求項9の装置。
【請求項17】
少なくとも2つのバイオセンサを有し、末梢神経系(PNS)生体信号と、睡眠段階を示す信号とを含む生体信号をユーザから取得し、前記ユーザの自律神経系(ANS)及び/又は中枢神経系(CNS)を示す出力信号を提供するように構成及び配置されるセンサ回路と、
処理回路であって、
前記睡眠段階を示す信号を使用して、複数の睡眠段階を分類し、
前記PNS生体信号のパラメータに基づいて、前記睡眠段階及び時間の関数として、支配PNS振動を決定し、
前記支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、及び周波数を含む、前記支配PNS振動の特性を特徴付けし、
前記支配PNS振動の少なくとも前記位相に応答する前記PNS状態及び前記CNS状態のための最適時間窓を決定するように構成及び配置される、処理回路と、
皮質脳波(EEG)徐波活動(SWA)生成を最大化するためも少なくとも1つの前記最適時間窓内で前記ユーザに刺激を供給するように構成及び配置される刺激回路と、
前記処理回路にフィードバック信号を提供するように構成及び配置されるフィードバック回路と、
を備え、
前記フィードバック信号は、前記ユーザのEEG信号に基づいて前記刺激に対する前記ユーザの応答を示し、
前記処理回路は、前記フィードバック信号に基づいて、前記最適時間窓を調整するようにさらに構成及び配置される、
装置。
【請求項18】
前記処理回路は、前記EEG信号を提供するように構成及び配置されるEEGセンサを含む、請求項17の装置。
【請求項19】
前記処理回路は、BPを示す信号を提供するように構成及び配置される血圧(BP)センサを備え、
前記処理回路は、
前記BPを示す信号を使用して前記BPのピークを検出し、
検出された前記ピークに基づいて、目的の支配周波数を決定し、
前記BPを示す信号を、前記目的の支配周波数に分解し、
前記目的の支配周波数に分解された前記BPを示す信号に基づいて、前記最適時間窓を決定するように構成及び配置される、
請求項17の装置。
【請求項20】
前記処理回路は、前記PNS生体信号のパラメータに関連する前記支配周波数に基づいて、支配PNS振動を決定するように構成及び配置される、請求項17の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
2017年7月17日に出願された米国仮出願番号62/533,299
【0002】
本発明は、認可番号U01AA021696及びR21AA024841のもと、アメリカ国立衛生研究所のアルコール乱用及びアルコール依存症に関する国立研究所と、認可番号R01HL103688のもと、アメリカ国立衛生研究所の国立心肺血液研究所とからの政府の支援によって作られた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。実験はこれらの許可のもとに行われたが、本明細書に開示される発明は、これらの許可のもとの資金を使用して導出されたものではない。
【背景技術】
【0003】
睡眠は、人間の基本的欲求であり、最適な身体的精神的健康に必要なものである。睡眠は、複数の生体系が関与する複雑な生理的なプロセスであり、個人の健康のために必須である。典型的には、中枢神経系(CNS)における現象と定義され、皮質脳波(EEG)賦活の状態が個人の意識の状態を決定する。いくつかの重要なEEG律動のうち、EEG徐波活動(SWA)は、睡眠のホメオスタシス、健康、及び疾患、並びに認識処理において中心的な役割を果たす。事実、不十分な又は変化したSWAの夜間の分布パターンは、いくつかの疾患及び状態に関連している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記及びその他の徐波活動(SWA)の最適化に関する課題を克服することを目的とする
【0005】
本開示の様々な様態は、睡眠ステージ及び時間の関数としての支配末梢神経系(PNS)振動の特徴に基づいてSWAの生成を最小化及び/又は最適化するために使用可能な装置及び方法を対象とする。本方法は、支配PNSの振動に基づいて、ユーザへの刺激を供給するために最適なウィンドウを決定することを含んでよい。装置は、閉ループ刺激系の一部を形成してよく、刺激に対するユーザの応答を示すフィードバックを使用して最適なウィンドウを批評する。
【0006】
様々な特定の実施の形態において、EEG SWAを増強させる方法は、ビートトゥビート血圧(BP)、心拍数(HR)、脈圧(PP)、及びインピーダンスカルジオグラフィ(ICG)からの前駆出時間を含む末梢又はPNS生体信号等の1つ以上の生体信号をユーザから受け取ることと、任意に、EEG信号及び/又は他のCNS信号を導出することと、を含む。生体信号は、自律神経系(ANS)及び心臓(CV)調律を含んでよいが、これらに限定されない。生体信号の例は、BP、HR、呼吸、フォトプレチィスモグラフィ(PPG)測定、及びICG測定を含む。1つ以上のPNS生体信号は、CNS EEG信号と組み合わされてよく、ユーザの睡眠段階を分類するために使用される。例えば、睡眠段階は、フォトプレチィスモグラフィ(PPG)から導出されたHR変動(HRV)の測定と併用した筋肉活動を使用することにより、又はEEG及び電気眼球図記録図(EOG)信号並びにHRV測定と併用したユーザ行動(例えば、動き)を使用することにより、1つ以上のPNS生体信号を処理することにより分類可能である。
【0007】
本明細書において支配PNS振動と称される、PNSにおける支配振動は、1つ以上の生体信号に基づいて、かつ睡眠の時間及び段階の関数として、決定される。例えば、PNS生体信号は、支配PNS振動を決定するために、目的の支配周波数に分解することができる。支配PNS振動の少なくとも1つの特性が特徴付けられ、これは、支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、及び/又は周波数を含んでよい。支配PNS振動の特性は、1つ以上のPNS生体信号にわたる支配律動、異なるPNS生体信号における余剰、及び/若しくは位相変移(例えば、複数のバイオリズム)を含む又は示してよい。
【0008】
方法は、さらに、(複数の)支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、又は周波数に基づいて、SWA生成を最大化するための最適なウィンドウの表示を提供することを含む。特定の例として、刺激のため及び特定のユーザのEEG SWAを最大化するために、支配PNS振動の位相又は位相変移が、目的の範囲又は時間ウィンドウ等の最適なウィンドウを決定するために使用される。表示は、最適なウィンドウ内のユーザに刺激を供給できる刺激回路に提供される。最適なウィンドウは、ANS及びCV律動及び/又は他の生体信号の1つ又は組み合わせのためであってよい。
【0009】
フィードバックは、ユーザのEEG信号に基づき得る、刺激に応答するように提供されてよい。フィードバックは、刺激のタイミングを適応させる又は最適化するために使用されてよい。例えば、刺激のタイミングは、フィードバックに基づいて支配PNS振動に応じて、及び/又はEES SWA(例えば、EEGデルタパワー)を最大化するために、及び/又は特定のユーザのために目的(例えば、スピンドル密度及び又は振幅及び/又は力の増加)の他のEEG周波数の特性を調節するために、適応及び/又は最適されてよい。いくつかの実施の形態において、方法は、さらに、フィードバックに基づいて最適化可能な、PNSの予備刺激を供給することを含む。予備刺激は、支配PNS振動に応じて末梢ニューロモデュレーション(例えば、経皮的迷走神経刺激)を提供して、(目的の)刺激の前にPNSの状態を、その効果(例えば、SWA増強)を最大化するように最適化することを含む。
【0010】
いくつかの実施の形態によれば、上記の方法は、固定記録媒体によって提供できる。例えば、記録媒体は、処理回路によって方法を実行するように実行可能なプログラム指令を保存してよい。
【0011】
様々な特定の実施の形態は、データ転送回路及び処理回路を含む装置を対象とする。データ転送回路は、1つ以上のバイオセンサによってユーザから取得された中枢神経系(CNS)生体信号及びPNS生体信号等の生体信号を受信する。データ転送回路は、1つ以上のバイオセンサを備える有線又は無線通信であってよい。バイオセンサは、生体信号を取得し、ユーザのANS状態及び/又はCNS状態を示す信号を出力してよい。
【0012】
処理回路は、HRV及び/又はEEG等の1つ以上のPNS生体信号を使用して複数の睡眠段階を分類してよく、1つ以上のPNS生体信号を使用して、支配PNS振動の特性を(夜の)時間及び睡眠段階の関数として特徴付けしてよい。例えば、処理回路は、EEG信号からEEG特徴を抽出する及び/又は1つ以上のPNS生体信号(例えば、EOG、筋緊張、HR、HRV)とユーザ行動(例えば、動き)とから他の生理的特徴を抽出することによって、睡眠段階を分類してよい。支配PNS振動の特性は、PNS生体信号の位相、振幅、及び/又は周波数を含んでよい。処理回路は、支配PNS振動の位相及び/又は他の特性に基づいて最適なウィンドウを決定し、ここで、刺激又は一連の刺激は、ユーザの目的(例えば、スピンドル活動の増加)のEEG SWA及び/又は他のEEG律動を増強(例えば、最大化)させると特徴付けられている。
【0013】
様々な特定の実施の形態において、装置は、さらに、EEG信号に基づいて刺激に対するユーザの応答を示すフィードバック信号を提供するフィードバック回路を備える。処理回路は、フィードバック回路と共に配置されてよく、フィードバック信号に基づいて、EEG SWA生成、脳血流(例えば、経頭蓋ドップラー超音波法により検出される血流速度、近赤外線分光法により検出される脳血流振動)の他のEEG律動(例えば、シグマ周波数範囲、12-15Hz内の活動)及びCNS測定、末梢CV機能、及び/又は他の特定の振動律動を向上させる。例えば、フィードバック回路は、フィードバック信号に基づいて、CV機能、又は他のPNS(例えば、高周波HRV)及び/若しくはCNS(例えば、スピンドル活動、脳血流のような特定のEEG律動)測定の特徴を向上させてよい。装置は、さらに、音響刺激、触覚刺激、電気刺激、及びニューロモデュレーション(例えば、迷走神経刺激)の少なくとも1つ等の刺激を供給する刺激回路を備えてよい。刺激は、モダリティに応じて、異なる身体位置(例えば、耳、胃、手)及び/又は特定の神経末端(例えば、迷走神経の頸枝)を目標としてよい。関連する特定の実施の形態において、処理回路は、データ処理回路及びフィードバック回路を備えてよい。データ処理回路は、最適なウィンドウを決定し、フィードバック信号に基づいて最適なウィンドウを調整する。例えば、処理回路は、例えば目的の周波数(例えば、4Hz未満)内のEEG信号のスペクトル分析を定量化することによって、EEG SWA生成を最適化してよい。
【0014】
別の特定の実施の形態において、装置は、さらに、ユーザから生体信号(例えば、PNS生体信号及びCNS生体信号)を取得するために使用される1つ以上のバイオセンサを有するセンサ回路を備える。センサ回路は、異なるPNS生体信号、CNS生体信号、及び他の信号等の異なる種類の生体信号を取得する少なくとも2つのバイオセンサを備えてよい。例えば、センサ回路は、フィードバック信号を導出するために使用されるEEG信号を取得するセンサを備えてよい。処理回路は、2つの異なる種類のPNS生体信号に関連付けられた支配PNS振動の少なくとも位相に応答する最適なウィンドウを決定してよい。
【0015】
本開示の他の関連する特定の実施の形態は、センサ回路及び上記の処理回路を備える装置を対象とする。センサ回路は、例えばユーザからPNS生体信号、CNS生体信号、及び/又は睡眠段階を示す信号等の生体信号を取得し、ユーザのANS状態及び/又はCNS状態を示す出力信号を提供する少なくとも2つのバイオセンサを備える。処理回路は、睡眠段階を示す信号を使用して複数の睡眠段階を分類し、PNS生体信号のパラメータ(例えば、ピーク及び/又は他のイベント)を決定する。処理回路は、さらに、PNS生体信号のパラメータに基づいて、かつ睡眠段階及び時間の関数として、支配PNS振動を決定し、支配PNS振動の振幅、位相、及び周波数を含む支配PNS振動の特性を特徴付けし、少なくとも支配PNS振動の位相に応答するPNS状態及びCNS状態のための最適なウィンドウを決定する。特定の実施の形態において、支配PNS振動は、睡眠のN2とN3との間のPNS生体信号の周波数等のPNS生体信号パラメータに関連付けられた支配周波数に基づいて決定されるが、本実施の形態は限定されない。装置は、さらに、EEG SWA生成のための最適なウィンドウ、及びフィードバック回路の少なくとも1つ内のユーザに対して刺激を供給する刺激回路を備える。フィードバック回路は、処理回路にフィードバック信号を提供し、フィードバック信号は、ユーザのEEG信号に基づいて刺激に対するユーザの応答を示し、処理回路は、フィードバック信号に基づいて最適なウィンドウを調整する。特定の実施の形態において、上記の装置のセンサ回路は、さらに、フィードバック回路にEEG信号を提供するEEGセンサを備えてよい。
【0016】
特定の実施の形態において、センサ回路は、血圧を示す信号を提供するBPセンサを備えてよい。処理回路は、BPを示す信号を使用してBPにおけるピーク(例えば、心臓の収縮期、中間期、拡張期のピーク)を検出し、検出されたピークに基づいて目的の支配周波数を決定し、目的の支配周波数におけるBPを示す信号を分解し、分解された目的の支配周波数におけるBPを示す信号に基づいて刺激のために最適なウィンドウを決定することにより、支配PNS振動を、睡眠段階及び時間の関数として決定してよい。
【0017】
本開示に係る実施の形態は、提示される特定の実施の形態の全ての組み合わせを含む。本発明のさらなる実施の形態及び適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明によって明らかとなる。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、説明の目的のためのみに提供され、発明の精神及び範囲内の様々な変更及び変形は、当業者にとって、詳細な説明から明らかであることが理解される。本明細書において提示される発行物、特許、特許出願は、その中の提示も含んで、全ての目的のために本明細書にその全体が参照として組み込まれる。
【0018】
様々な例示的な実施の形態は、付される図面と共に、以下の詳細な説明を考慮してより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A-1Bは、様々な実施の形態に係る、装置の例を示す。
図2図2は、様々な実施の形態に係る、徐波活動を増強させるために使用される例示的な装置を示す。
図3図3A-3Bは、様々な実施の形態に係る、徐波活動を増強させるための例示的な方法を示す。
図4図4A-4Eは、様々な実施の形態に係る、徐波活動を増強させるための刺激のための最適なウィンドウを決定するための例示的な方法を示す。
図5図5は、様々な実施の形態に係る、例示的な刺激のための最適なウィンドウを示す。
図6図6A-6Cは、様々な実施の形態に係る、例示的な刺激のための最適なウィンドウを示す。
【0020】
本明細書において説明される様々な実施の形態は、図面の例示及び以下の詳細な説明によって示される様態に対する変更、変形が可能である。しかしながら、それらは、発明を説明される特定の実施の形態に限定することを意図するものではないことが理解される。反対に、その意図は、請求の範囲に画定される様態を含む、開示の範囲内の全ての変更例、同等例、及び代替例を含むことである。また、「例」の用語は、説明のためのみで本出願を通じて使用され、限定を意図しない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の様態は、睡眠段階の関数としての支配末梢神経系(PNS)振動に基づいて徐波活動(SWA)を最大化するために使用される様々な装置の適用可能であろう。ある実装例において、装置は、支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、又は周波数に基づいて、SWA生成のための刺激のために最適なウィンドウを提供するために使用される。いくつかの特定の実装例において、上記の装置及び/又は方法は、閉ループ刺激系を備え、最適なウィンドウ中の刺激に対する特定のユーザの応答を示すフィードバックは、刺激のタイミングを批評し、特定のユーザのためのSWA生成を最大化する。本発明は、そのような適用には限定されないが、発明の様々な様態は、この文脈において、様々な例の説明を通じて認識され得る。
【0022】
従って、以下の説明において、様々な特定の詳細が、本明細書の特定の例を説明するために提示される。しかしながら、当業者にとって、これらの例の1つ以上の他の例及び/又は変形例が、以下の全ての特定の例によらず実行可能である点、明らかである。他の例において、本明細書の例の説明を曖昧にしないように、周知の特徴については詳細に説明しない。説明のため、異なる図において同一の参照番号が使用され、同一の要素又は同一の要素の追加的な例を示す。
【0023】
本開示に係る様々な実施の形態は、(夜の)時間及び睡眠段階の関数としての支配PNS振動に基づいて決定される最適なウィンドウ中にユーザに刺激を供給することによって、ユーザのSWAを増強する技術を対象とする。上記のように、睡眠は、主に皮質の賦活状態に基づいて定義されるが、いくつかの生物学的領域において起こるイベントの統合されたカスケードとして広く見ることもできる。例えば、中枢神経系(CNS)及び自律神経系(ANS)の振動並びにその夜間における相互作用の間には動的な統合がある。睡眠の間、生物学系には復元及び再編成が行われる。健康な系において、バイオリズムは、調和的に現れ、互いに相互作用する。睡眠の間、CNS皮質賦活は徐々に同期し、非急速眼球運動(NREM)睡眠、徐波睡眠(SWS)の最深段階と診断される高電圧低周波脳波(EEG)をもたらす。このパターンは、筋肉弛緩及び急速眼球運動(REM)を伴う低電圧、混在周波数EEGの期間と周期的に交互し、REM睡眠を特徴付ける。異なる睡眠段階を特徴づける明確なEEGパターンと関連して、ANS及び心臓(CV)心係数(例えば、デルタパワーと称されるEEG SWAの増加)の調整されたパターンがさらに存在し、これらは、高周波心拍変動(HRV)活動の増加に関連付けられる。
【0024】
EEG SWAは、睡眠ホメオスタシス、健康及び疾患、並びに認識処理(例えば、記憶の定着)において役割を果たす。不十分な又は変化したSWAの夜間の分布パターンは、いくつかの疾患及び状態(例えば、不眠症、大鬱病性障害、アルツハイマー病及び関連障害)に関連している。非侵襲的聴覚刺激(例えば、ピンクノイズのパルス)を介して等、EEGを介してSWAを向上させることは、健康目的及び疾患の治療に役立ち得る。音刺激のタイミングを低速振動(SOs<1Hz)の位相に位相固定することは、SWA向上、及び睡眠に依拠する記憶の定着に関連する改善に有益であり得ることが示されている。本開示に係る実施の形態は、ANS及びCV系における振動等の、PNS振動と称される、特定の振動末梢律動に応じて時限閉ループ刺激を使用して、人間の睡眠中のEEG SWAを向上させることを対象とする。様々な実施の形態は、CNS-ANSカップリングに関し、特に、時間及び睡眠段階の関数である、SWAの生成に刺激がより効果的な支配PNS振動の位相にわたる最適なウィンドウの存在に関する。これらのウィンドウを目標とすることは、SWA向上を最大化させることができる。
【0025】
多数の関連する実施の形態は、睡眠回復(例えば、心拍変動、血圧、心拍数、及び呼吸)を反映する1つ以上の追加的な方法を対象とするSWAを向上させるEEG系の方法に関する。例示的な方法は、末梢刺激に続く徐波がCV律動における特定の変動(音色により引き出されるEEG低速振動に応答する二相性心臓振動)に関連しているという前提で、CV律動を操作することに使用することができる。
【0026】
特定の実施の形態において、SWAを向上させる方法は、ユーザから1つ以上の生体信号を受け取ることを含む。生体信号は、ANS及びCV律動に関してよいが、これに限定されない。生体信号は、本明細書ではPNS生体信号及びCNS生体信号と称される、PNS関連生体信号及びCNS関連生体信号を含む。例示的なPNS生体信号は、血圧(BP)、心拍数(HR)、呼吸、フォトプレチィスモグラフィ(PPG)測定、及びインピーダンスカルジオグラフィ(ICG)測定を示す信号を含む。特定の実施の形態において、生体信号は、他の信号の中でも、BP、HR、及び/又はインピーダンスカルジオグラフィ(ICG)からの前駆出時間を含む。
【0027】
生体信号は、SWA向上のために処理されてよい。例えば、睡眠段階は、PNS生体信号を使用して等、1つ以上の生体信号を使用して分類されてよい。睡眠段階は、ユーザ行動(例えば、動き)の表示をPPGから導出されたHR変動(HRV)の測定と組み合わせて使用して、又は動きをEEG及び電気眼球図記録図(EOG)信号と組み合わせて使用して、分類することができる。いくつかの実施の形態において、刺激は、夜間の刺激のために、特定の睡眠期間(例えば、N2及び/又はN3睡眠)中に与えられてよい。睡眠は、EEG系方法及び/又はアクチグラフ(対象において検知された動き)と、他の生体信号(例えば、HR及びその変動、ガルバニック皮膚反応及び皮膚温度)とを組み合わせて使用して評価することができる。EEG特徴の単独及び/又は他の生理学的特徴と組み合わせたリアルタイム抽出は、睡眠段階(起きている、N1、N2、N3、又はREM)をリアルタイムで分類することに使用できる。
【0028】
方法は、さらに、1つ以上の生体信号に基づいて、時間(夜の時間)及び睡眠段階の関数として支配PNS振動を決定することを含む。例えば、PNS生体信号は、ピーク又は他のイベント等のPNS生体信号のパラメータを使用して、目的の支配周波数に分解することができる。これは、末梢刺激のための、例えば最適なウィンドウである、タイミングを決定するために使用できる。特定の実施の形態において、方法は、さらに、支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、及び/又は周波数を含む支配PNS振動の少なくとも1つの特性を特徴付けることを含んでよい。睡眠は、呼吸及び他のイベント、BP、及び/又はパルス波に応答する、呼吸等の、複数のバイオリズムの変動を伴ってよい。これらのリズムにおける支配周波数、そして他の特徴(例えば、振幅)は、個人によって、睡眠段階及び時間の関数として異なり得る。本方法は、これらの振動の特徴のリアルタイム推定を可能にする。特性は、例えば1つ以上の生体信号における振幅、位相、及び/又は周波数等の支配リズムと、生体信号における余剰と、位相変移とを特徴付ける。
【0029】
SWA生成を最大化するために最適なウィンドウ又は複数のウィンドウの表示は、支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、又は周波数に基づいて、決定され、刺激回路に提供されてよい。刺激回路は、少なくとも1つの最適なウィンドウ内で、ユーザに刺激を供給することができる。特定の例として、支配PNS振動の位相又は位相変移が、ユーザに刺激を提供するため、及びユーザ内のEEG SWAを最大化するために、使用することができる。
【0030】
特定の実施の形態において、複数の生体信号からの異なるパラメータが取得され、これらは、自動検出アルゴリズムを使用してストリーミングされる生体信号から導出されてよい、吸気/呼気における心臓の収縮期(SBP)、中間期(MBP)、拡張期(DBP)のピーク、拍動間隔(IBIs)、脈圧力(PP)、前駆出時間(PEP)、パルス通過時間(PTT)、パルス到着時間(PAT)を含むが、これらに限定されない。例示的なアルゴリズムは、適応的領域分割、ノイズ及びアーティファクト検出、包絡線検波、多段階スペクトルHR検出、スケーリング及び標準化、外れ値除去、自己回帰モデリングを含む。CV支配周波数及びその対応する位相及び振幅を推定するために、特定の例として、最後2分(時間は調整可能である)のパワースペクトル密度(PSD)が計算される。PSDは平滑化され、支配周波数は、最も支配的なピークがその突出に応じて検出及びランク付けされるピーク検出アルゴリズムを使用して、検出される。ピークの突出は、他のピークと比べて、その固有の高さ及びその位置によってどの程度そのピークが目立っているかに基づいて定義される。呼吸周波数は、最初に、0.15~0.4Hzの間で最も突出したピークであると推定される。支配ピークの残りの検索は、0.02Hzと推定された呼吸周波数との間に限定される。各支配周波数に対応する瞬時位相及び振幅を計算するために、狭い通過帯域を備えるフィルタが設計され、対応する心血管信号に適用され、目的の周波数以外の必要のない周波数成分を除外する。ヒルベルト変換がフィルタされた波形に適用され、その瞬時振幅、周波数、及び位相が計算される。導出された瞬時位相に基づいて、フィルタされた心血管信号は、例えば目的の領域(ROIs)である複数の最適なウィンドウに分割され、そこに対して末梢刺激が適用される。
【0031】
瞬時振幅、周波数、及び位相は、また、カルマン又は粒子フィルタ等の適応トラッキングアルゴリズムを使用してリアルタイムで抽出することができる。測定モデルは、観察された生体信号について、複数の調和的に関連した正弦関数の加算/乗算として定義される。各正弦関数は、生体信号の主要な周波数を表し、瞬時振幅、周波数、位相の3つのパラメータを含む。生体信号の他のバリエーションは、低周波成分、インパルスノイズ成分、及びホワイトノイズ成分を使用してモデル化されてよい。瞬時周波数、位相、及び振幅の全てを含むモデルのパラメータは、自己回帰移動平均(ARMA)又は自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデルを使用してモデル化される系の状態を形成する。状態モデルのパラメータは、全ての使用可能な測定に基づいて状態の事後確率密度関数(PDF)を構築することにより、適応的に推定され、ベイズ理論を使用することにより追跡される。再帰型フィルタアプローチが、2つの段階:予測及び更新から成るこの目的のために使用できる。予測段階において、系モデルは、1つの測定ずつ、状態PDFを予測するために使用される。更新段階において、予測PDFは、最新の測定を使用して修正される。このようなアプローチは、系における動的な変化により頑強であってよい。モデルパラメータの初期値は、上記の説明のように、前のウィンドウ内のPSD主周波数を分析することにより取得できる。適応的フィルタパラメータは、生理学的変動に対するより良好な適用のために、各睡眠段階において最初期化されてよい。
【0032】
BPを使用する特定の例として、BP測定は、BPセンサを使用して取得され、処理回路に提供される。処理回路は、BPを示す生体信号を使用してBPのピークを検出し、検出されたピークに基づいても目的の1つ以上の支配周波数を決定し、目的の支配周波数におけるBPを示す生体信号を分解することにより、睡眠段階及び時間の関数として支配PNS振動を決定する。分解された生体信号を使用して、刺激のための最適なウィンドウが決定できる。特定の例ではBP測定について説明したが、最適なウィンドウは、ANS、CV律動、及び他の生体信号の少なくとも1つについてであってよい。いくつかの特定の実施の形態において、(複数の)最適なウィンドウは、1つ又はそれ以上の生体信号の特性の組み合わせの結果であってよい。
【0033】
方法は、さらに、ユーザから取得された信号に基づく刺激に対する応答するフィードバックを提供することを含んでよい。フィードバックに基づいて、方法は、支配PNS振動の位相に応じて等、刺激のタイミングを適応させる及び最適化することを含む。従って、フィードバックは、EEGデルタパワー等のSWA生成を最大化するために使用されてよい。最適なウィンドウは、フィードバックを使用して更新される。特定の実施の形態において、フィードバックは、閉ループ刺激系におけるフィードバックであり、系全体の効率を評価するために使用されるSWAを定量化することを含んでよい。上記の説明のように、装置の主要な目標は、EEG SWAを最大化することであってよいが、実施の形態は限定されない。SWAは、目的の周波数(<4Hz)内のEEG信号のスペクトル分析によってリアルタイムで定量化されてよい。しかしながら、装置は、SWAの増強に限定されず、心臓機能(例えば、HRV)、特定の振動律動、又は回復的睡眠に反映される他のパラメータをさらに又は代替的に目的とする、及び/又は測定の組み合わせを最大化させてよい。
【0034】
様々な特定の実施の形態において、方法は、さらに、PNSの予備刺激を供給することを含んでよい。予備刺激は、1つ以上の支配PNS振動の位相に応じて、経皮的迷走神経刺激等の末梢ニューロモデュレーションを提供すること、及びSWA増強を最大化するために、刺激を供給する前にPNSの応対を最大化することを含んでよい。
【0035】
上記の方法は、データ転送回路及び処理回路を有する装置によって実装されてよい。データ転送装置は、1つ以上のバイオセンサを有するセンサ回路によって、ユーザから取得された生体信号を受け取る。生体信号は、PNS生体信号及びCNS生体信号を含んでよい。データ転送装置は、有線又は無線によってバイオセンサと通信してよい。処理回路は、複数の睡眠段階を分類し、時間及び睡眠段階の関数として支配PNS振動の特性を特徴付け、位相及び又は他の特性の最適なウィンドウを決定し、それをデータ転送装置に通信してよい。データ転送装置は、さらに、EEG SWA生成を最大化するために、最適なウィンドウ内でユーザに刺激を供給する刺激回路に、最適なウィンドウの表示を出力してよい。装置は、さらに、フィードバック信号を提供し、ユーザから取得されたEEG信号に基づいて、刺激に対するユーザの応答示すことに使用されるフィードバック回路を備えてよい。フィードバック信号は、EEG SWA生成をさらに最大化するため等、最適なウィンドウを調整するため、及び/又は中枢血行動態、CV機能、又は特定の振動律動等の他の機能を向上させるために、使用されてよい。
【0036】
複数の特定の実施の形態において、装置は、さらに、1つ以上のバイオセンサを有するセンサ回路を備える。バイオセンサは、PNS生体信号と、睡眠段階を示す信号とを含む生体信号を取得し、ユーザのANS状態及びCNS状態を示す信号を出力可能である。いくつかの特定の実施の形態において、バイオセンサは、EEG信号を提供するEEGセンサを備え、フィードバック信号を導出するためにフィードバック回路に備えられてよい。
【0037】
特定の例として、装置は、センサ回路と、処理回路と、刺激回路と、フィードバック回路と、を備える。センサ回路は、PNS生体信号、CNS生体信号、及び睡眠段階を示す信号等の生体信号をユーザから取得し、ユーザのANS状態及び/又はCNS状態を示す出力信号を提供する2つ以上のバイオセンサを備える。処理回路は、睡眠段階を示す信号を使用して複数の睡眠段階を分類し、PNS生体信号のパラメータ(例えば、ピーク又は他のイベント)を決定し、パラメータに基づいて睡眠段階及び時間の関数として支配PNS振動を決定し、支配PNS振動の振幅、位相、及び周波数を含む支配PNS振動の特性を特徴付けし、支配PNS振動の少なくとも位相に対して応答するPNS状態及びCNS状態についての最適なウィンドウを決定する。特定の実施の形態において、処理回路は、N2及びN3段階の間のPNS生体信号の周波数等のPNS生体信号のパラメータに関連した支配周波数に基づいて、支配PNS振動を決定する。刺激回路は、EEG SWA生成を最大するために、少なくとも1つの最適なウィンドウ内でユーザに刺激を供給する。フィードバック回路は、処理回路にフィードバック信号を提供し、フィードバック信号は、ユーザのEEG信号に基づいて刺激に対するユーザの応答を示し、処理回路は、さらに、フィードバック信号に基づいて最適なウィンドウを調整する。いくつかの実施の形態において、フィードバック回路は、処理回路の特定の要素を備えてよいが、実施の形態は限定されない。
【0038】
他の実施の形態において、SWAを向上させるために開示される方法は、また、特定のEEGパラメータを最適化して、有益な効果をさらにもたらすことに使用されてよい。回復的睡眠を最大化及び/又は特定の生物学的処理(例えば、意識の定着)を向上させるための目的となるEEG測定可能パラメータは、中枢(例えば、血流速度等の中枢血行動態、脳血行動態における振動、その他)又は末梢(例えば、血圧変動インデックス、心臓機能、その他)生体信号の特性の単独又は組み合わせで、インデックスの絶対値を増加させること、振動の振幅及び位相(例えば、EEGスピンドル活動)を調節することを含むが、これに限定されない。
【0039】
図1A-1Bを参照すると、図1A-1Bは、様々な実施の形態に係る、装置の例を示す。様々な実施の形態及び装置は、人体等の睡眠調節系によってSWA生成を向上させるために使用される。
【0040】
睡眠調節系は、ANSと、解剖学的、生理学的に密接に関連してよい。ANSは、求心性及び遠心性の交感及び副交感神経経路を介して、体の内部プロセス(例えば、血圧、心筋機能、呼吸、体温、消化、排尿)の大部分を調節し、内部的及び外部的なストレッサーに対する適応的な応答を可能とし、体のホメオスタシス環境を保証する。
【0041】
ANS機能を反映する測定は、EEG振動と共に、ホメオスタシス(例えば、睡眠の時間及びその前の覚醒に関係する)及び概日プロセスの両方に依拠して、また睡眠中の位相性のイベントに関連して、夜の睡眠にわたって変動する。これらの相互作用は、CNSとANSとの間の動的な相互作用を反映する。
【0042】
図1Aは、SWAの増強を実行する装置の例である。装置は、ユーザから生体信号を取得し、取得された生体信号を処理し、SWA生成の向上のために、いつユーザを刺激するかの表示を刺激回路112に提供するために使用される、データ転送回路104と、処理回路106と、を備える。データ転送回路104及び処理回路106は、データ処理コンピュータ等の計算装置102の一部であってよい。データ転送回路104は、生体信号101の中でも、PNS生体信号、CNS生体信号等を、センサ回路108から受け取る。データ転送回路104は、バイオセンサから取得されたデータを集計するために使用される、異なるバイオセンサ及び/又はセンサ回路108と有線及び/又は無線通信してよい。
【0043】
生体信号101は、他の信号の中でも、ANS律動、CV律動に関する。特定の実施の形態において、生体信号は、PNS生体信号及びCNS生体信号を含む。例示的な生体信号は、BP、HR、呼吸、PPG測定、EEG測定、及びICG測定を含む。いくつかの実施の形態において、バイオセンサは、BP及びHR等の生の生理学的データを収集し、データを処理して、ビートトゥビートBP、心拍数、及びICGからのPEPを含む生体信号を出力してよい。
【0044】
様々な実施の形態において、装置は、さらに、少なくとも1つのバイオセンサを有するセンサ回路108を備える。バイオセンサは、生体信号を取得するために使用され、EEGセンサ、ユーザウェアラブル装置(例えば、スマートウォッチ、スマート眼鏡、スマート服)、及び/又はスマートベッド等の他のユーザ装置を含んでよく、これらは、睡眠時にユーザに着られるあるいは使用されて、生体信号を取得する。特定の実施の形態において、バイオセンサは、PNSを示すもの及びCNSを示すもの等の2つの異なる種類の生体信号、並びに/又は2つ以上の異なるPNS生体信号を取得してよい。
【0045】
データ転送回路104は、SWA生成の向上のために、生体信号101を処理回路106に提供する。処理回路106は、生体信号を受け取り、複数の睡眠段階に分類するために1つ以上の生体信号を処理する。睡眠段階は、EEG信号からEEG特徴を抽出することにより、並びに/又は1つ以上の生体信号から、EOG、筋緊張、動き、HR、及び/若しくはHRV等の他の生理学的特徴を抽出することにより、分類できる。同様に、睡眠段階を示す生体信号が、睡眠段階を分類することに使用できる。
【0046】
処理回路106は、1つ以上の支配PNS振動及び支配PNS振動の特性を決定してよい。例えば、支配PNS振動は、例えばPNS生体信号である1つ以上の生体信号を使用して、時間(例えば、夜の時間)及び睡眠段階の関数として決定できる。例示的な支配PNS振動は、呼吸、ANS振動、及びSV振動を含む。支配PNS振動は、PNS生体信号におけるピーク又は他のイベント等のPNS生体信号のパラメータを使用して決定できる。支配PNS振動の1つ以上の特性は、1つ以上の生体信号にわたる支配リズム、異なる生体信号の律動における余剰、及び位相変移によって特徴付けられ、またそれらを含む又は参照できる。様々な実施の形態において、PNS生体信号は、支配周波数に分解され、支配PNS振動を決定する。支配PNS振動の例示的な特性は、支配PNS振動の位相、位相変移、振幅、及び周波数を含む。
【0047】
処理回路106は、(複数の)支配PNS振動の特性を使用して、EEG SWAを最適化するための刺激を供給するための最適なウィンドウを決定する。例えば、(複数の)支配PNS振動の位相及び/又は他の特性は、刺激又は一連の刺激が予期される(だろう)あるいはユーザ内のEEG SWAを向上又は最大化させると特徴付けられる、最適なウィンドウを決定するために使用される。
【0048】
いくつかの実施の形態において、最適なウィンドウは、生体信号の2つ以上の特性について、及び/又は2つ以上の生体信号の特性についてである。例えば、処理回路106は、2つ以上のPNS生体信号に関連する位相を使用して等、2つ以上の支配PNS振動の特性に応答する最適なウィンドウを決定できる。特定の実施の形態において、最適なウィンドウは、PNS及びCNS状態の両方に重なるROI等のPNS状態及びCNS状態についてである。
【0049】
最適なウィンドウは、刺激回路112に通信されてよい。例えば、データ転送回路104は、決定された最適なウィンドウの表示又はそれを示す信号を、刺激回路112に出力する。いくつかの実施の形態において装置の一部を形成してよい刺激回路112は、EEG SWA生成を最大化するために、少なくとも1つの最適なウィンドウ内でユーザに刺激103又は一連の刺激を供給するように構成される。刺激回路112は、末梢刺激を供給してよい、及び/又はPNS刺激回路を含む若しくはそう称される。末梢刺激は、経頭蓋直流刺激、経頭蓋磁気刺激、音刺激、触覚刺激、電気刺激、及びニューロモデュレーション(例えば、迷走神経刺激)を含む、異なる方法を使用することを含むが、これに限定されない。モダリティに応じて、刺激は、異なる身体位置(例えば、耳、胃、手)及び/又は特定の神経末端(例えば、迷走神経の頸枝)を目標としてよい。
【0050】
末梢刺激の例は、50ミリ秒(msec)(例えば、2msecの上昇及び下降時間)の間、60デシベル(dB)周辺においてバイノーラル方式で提供される1000Hzの聴覚刺激の使用を含むが、これに限定されない。刺激は、単独で又はブロック(例えば、5パルス)で提供されてよい。強度は、動的に調整されて、徐波生成を最大化する、及びEEGアルファ律動及びより高い周波数EEG活動の増加、動き、筋緊張の増加により測定された応答の潜在的な覚醒型を最小化してよい。刺激の間の不応期は、変化しやすく、機械学習アルゴリズムによって自動的に決定されてよい。
【0051】
音刺激を使用することの複数の利点は、電気刺激を使用するような他の使用可能な方法と比較して、閉ループの分析実装例及びリアルタイム自動化の低減されたシステム複雑性、実現可能性、単純性と、目的の主要な出力変数の干渉の不在を含むが、これに限定されない。
【0052】
複数の特定の実施の形態において、刺激回路112は、PNSの予備刺激の提供を含む。PNSを予備刺激することは、SWA向上を最大化するために目標に刺激を供給するまえに、PNSの状態を最適化するために支配PNS振動の位相に応じて、末梢ニューロモデュレーション(例えば、経皮的迷走神経刺激)を提供することを含んでよい。データ転送回路104は、刺激回路112等に、決定された支配PNS振動及びそれぞれの位相に基づいて、予備刺激を行うタイミングを通信してよい。
【0053】
様々な実施の形態において、装置は、刺激に対するユーザの応答を示し、SWA生成及び/又は他の振動をさらに最適化するために使用される、システムに提供されたフィードバックを含む閉ループ刺激系に一部を形成してよい。例えば、装置及び/又は系は、さらに、ユーザから取得されたEEG信号に基づいて等、刺激に対するユーザの応答を示すフィードバック信号を提供するフィードバック回路110を備えてよい。フィードバック信号は、刺激の関数としてEEGデルタパワー、また任意に他の生体信号、を含むあるいは示す。特定の実施の形態において、処理回路106は、データ転送回路104を介してフィードバック信号を受け取り、目的の周波数(例えば、4Hz未満)内のEEG信号のスペクトル分析を定量化することにより、及び/又はEEGデルタパワーに基づいて最適なウィンドウを調整することにより、フィードバック信号を処理してSWA生成を増強させる。処理回路106は、代替的に及び/又は追加的に、CV機能又は他の特定の振動律動を向上させるためにフィードバック信号を使用してよい。そのような実施の形態において、システムは、EEG測定と、CV又は他の振動律動を示す1つ以上の生体信号とを含んでよく、EEG SWA生成、CV機能、及び/又は他のPNS振動をさらに最大化するための最適なウィンドウを調整することにそれを使用する、刺激に対するユーザの応答をフィードバック可能である。例えば、上記のように、EEG SWA生成は、フィードバック信号に基づいて、他のEEG律動(例えば、シグマ周波数範囲、12~15Hz)及び脳血流のCNS測定(例えば、経皮的ドップラー超音波法により検出された血流速度、近赤外線分光法により検出される脳血流振動)、末梢CV機能、及び/又は他の特定の振動律動と共に(又は代替的に)、最大化できる。
【0054】
図1Bは、様々な実施の形態に係る、装置の例を示す。装置は、図1Aに示されるものと同様の要素を含んでよく、さらなる説明が提供される。様々な実施の形態において、センサ回路は、ユーザ115からPNS生体信号及びCNS生体信号を取得する複数のバイオセンサ116、118を備える。図示されるように、バイオセンサ116、118は、ユーザ115によって着られる、あるいはユーザ115と接触し、それにより、ユーザの睡眠中に生体信号が取得される。バイオセンサは、EEG信号を取得するために使用される電極等のユーザウェアラブル装置、スマートウォッチ、及びスマートベッド等の他の種類の装置を含んでよい。バイオセンサは、スマートフォン等の計算装置105、又は生体信号を集計し、それを計算装置105に出力するセンサ回路に、無線(又は有線)でデータを直接通信してよい。
【0055】
計算装置105は、上記のデータ転送回路104と、処理回路106と、任意のフィードバック回路110と、を備えてよい。処理回路106は、生体信号を処理して、ユーザ115に刺激又は一連の刺激を供給するために刺激回路112に通信される最適なウィンドウを決定する。生体信号は、刺激に応答して取得され、フィードバック回路110に提供されて、ユーザの応答を示し、EEG SWAを最大化するために最適なウィンドウをさらに調整するために処理回路106によって使用されるフィードバック信号を提供する。
【0056】
図2は、様々な実施の形態に係る、SWAを増強させるために使用される例示的な装置を示す。図2に示される装置230は、図1Aに説明される装置及び/又は図1Bに説明される計算装置105を含んでよい。図示されるように、装置230は、同様に、センサ回路240から生体信号を取得し、刺激回路242に刺激のタイミング(例えば、最適なウィンドウ)の表示を出力することに使用されるデータ転送回路232を備える。データ転送回路232は、フィードバック信号の生成に使用される、そのような刺激に対する応答である生体信号を取得できる。
【0057】
装置230の処理回路234は、データ処理回路236と、フィードバック回路238と、を備える。データ処理回路236は、上記のように、生体信号を処理して、最適なウィンドウを決定する。フィードバック回路238は、刺激に対するユーザの応答を示すフィードバック信号を、データ処理回路236に提供する。フィードバック信号は、時間及び刺激の関数としてEEGデルタパワーを含んでよい、ユーザのEEG測定に基づく、及び/又は追加の生体信号を含んでよい。データ処理回路236は、最適なウィンドウを調整することにより、フィードバック信号を処理する。
【0058】
図3A-3Bは、様々な実施の形態に係る、SWAを増強させるための例示的な方法を示す。例えば、図3Aは、閉ループ刺激法を示す。358に示されるように、1つ以上の生体信号を受け取る。上記のように、そのような生体信号は、ANS及びCV律動、及び/又はユーザのANS状態及びCNS状態、及び/又は睡眠段階を示すあるいはそれらに関連するPNS生体信号及びCNS生体信号を含む。350において、1つ以上の生体信号は、ユーザの睡眠段階を分類することに使用される。特定の実施の形態において、睡眠段階は、動きとPPGから導出されたHRV測定とを組み合わせて使用して、及び/又は動きとEEG及びEOG信号とを組み合わせて使用して等、1つ以上の生体信号(例えば、末梢、又はPNS生体信号)とユーザの行動とを処理することにより、分類できる。
【0059】
方法は、さらに、352において、1つ以上のPNS生体信号等の1つ以上の生体信号に基づいて、時間及び睡眠段階の関数として支配PNS振動を決定することを含む。例えば、PNS生体信号は、PNS生体信号のパラメータ(例えば、ピーク又は他のイベント)に基づいて、目的の支配周波数に分解することができる。354において、支配PNS振動の少なくとも1つの特性は、特徴付けられる。例示的な特性は、位相、位相変移、振幅、及び周波数を含む。1つ以上の特性に基づいて、EEG SWA生成を最適化するために使用できる最適なウィンドウが、識別可能である。最適なウィンドウは、支配PNS振動の複数の特性について、又は、例えばピーク/イベント等の特性、若しくは例えば位相、位相変移、振幅等のパラメータ等の1種類以上のPNS生体信号に関連する複数の支配PNS振動の1つ以上の特性についてであってよい。特定の例として、支配PNS振動の位相又は位相変移が、EEG SWA生成を最大化するためにユーザに刺激を供給するために最適なウィンドウを決定することに使用される。別の特定の例として、(複数の)最適なウィンドウは、ANS律動、CV律動、及び他の生体信号の少なくとも1つについてであってよい。
【0060】
356において、1つ以上の最適なウィンドウの表示は、刺激回路に出力され、357において、刺激回路は、少なくとも1つの最適なウィンドウの間に1つ以上の刺激を供給する。358において、刺激に応答して、刺激に対するユーザの応答を示すフィードバック信号が提供される。フィードバック信号は、EEG及び他の生体信号等の1つ以上の取得された生体信号に基づいていてよい。上記のように、フィードバックは、支配PNS振動の位相に応じて、特定のユーザ(及び/又は目的の他のEEG律動(例えば、スピンドル活動の増加))のためのEEG SWA生成を最大化するために、刺激のタイミングを適応させる及び最適化するために使用されてよい。
【0061】
図示されていないが、様々な実施の形態は、PNSの予備刺激を供給することを含んでよい。上記のように、予備刺激は、支配PNS振動に基づいていてよい。例えば、末梢ニューロモデュレーションが、支配PNS振動の位相に応じて、特定のユーザに提供されてよい。
【0062】
図3Bは、閉ループ末梢刺激のための機械学習のために使用されるフィードバックを提供する特定の例である。機械学習(ML)モジュール抽出された特徴360から学習し、特徴パターン及び刺激の存在に基づいて、時間の各瞬間のフィードバック出力(例えば、EEGデルタパワー)における変更を予測するように設計される。時間は、秒、又は心拍数等の以下の固有のバイオリズムに基づいていてよい。抽出された特徴は、支配PNS振動の生体信号のパラメータ及び/又は特性を含んでよい。
【0063】
第1のMLモジュール361は、抽出された特徴360について継続的に訓練され、フィードバック出力における変化のパーセンテージを予測する。出力測定としてEEGデルタパワーが与えられた場合、過去X秒における平均パワーが計算され、次のX秒(例えば、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒)における平均パワーと比較され、その差がパーセンテージで表され、ここで、正の値は増加を表し、負の値は減少を表す。実施の形態は出力測定としてEEGデルタパワーを使用することに限定されず、他のCNSインデックス(例えば、EEGスピンドル活動、脳血流)及び生体信号を、EEGデルタパワーと組み合わせて及び/又はその代替として、含んでよいことが理解される。フィードバック出力レベルにおける増加又は現象の量を表すフィードバック出力値は、シグモイド伝達関数を使用して、1と1との間にマッピングされる。これらの値は、どのMLモジュールが訓練されたかに基づいてML目標値を形成する。訓練されたMLの出力は、また、フィードバック出力レベルにおける増加又は減少の確率値として見ることができ、刺激366の調整を決定するための動作モジュール364に提供されてよい。
【0064】
刺激が適用された場合、供給された刺激に応じてフィードバック出力における変化のパーセンテージを計算する第2のMLモジュール262が訓練される。第2のMLモジュール362は、フィードバックの変更に基づいて訓練され、第1のMLモジュールのように、フィードバック出力レベルにおける増加又は減少の量を表す値を出力する。
【0065】
訓練された第2のMLモジュールは、入力される特徴を連続的に読み取り、刺激が適用される前提で、EEGデルタパワーにおける増加又は減少の量を出力する。
【0066】
刺激が適用された任意の時間において、第2のMLモジュール362は、入力された特徴及びフィードバック出力レベルから学習することができる。同様に、出力は、刺激366をトリガするために動作モジュール364に提供される。
【0067】
第1のMLモジュール361は、連続的に、入力された特徴を読み取り、フィードバック出力変更に基づいて訓練する。また、第1のMLモジュール361は、刺激が適用されない前提で、EEGデルタパワーにおける増加及び減少を表す値を連続的に出力する。この値が閾値未満だった場合、それは、EEGデルタ周波数におけるパワーが著しく減少し、また、動作モジュール364を介して刺激366がトリガされるだろうことを意味する。
【0068】
MLモジュールの特定の例は、入力された特徴パターンとフィードバック出力の変化の量との間の関係を定義する回帰分析モデルである。しかしながら、実施の形態は限定されておらず、別の例は、入力された特徴とフィードバック出力変更との間のより複雑又は非線形関係を発見できる多層パーセプトロン(MLP)等のニューラルネットワークである。
【0069】
ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNNs)、及び長・短期記憶(LSTM)等のディープラーニング方法が、既に抽出された特徴から学習する、又は多チャンネル生理学的信号から最も適切な特徴を抽出し、入力されたデータとフィードバック出力変更との間の根本的な関係を探すために、MLモジュールに組み込まれてよい。
【0070】
特徴選択方法が、フィードバック出力変更を予測する特徴の最良のセットを選択するために適用されてよい。フィルタ法、ラッパー法、及び/又は埋め込み法を含む異なる特徴選択方法が適用されてよい。特徴選択方法は、固体毎に、又は複数の固体から収集されたデータの一般セットに、適用及び適合させることができる。選択された最良の特徴は、その後、上記のオンラインMLに提供できる。
【0071】
入力された特徴の次元はとても高い場合があるため、主成分分析又は線形判別分析等の統計的方法が、特徴をより低い次元部分空間に変換することに使用でき、これにより、より正確で効率的な入力パターンの表示が可能となる。このような入力されたデータの効果的な表示は、学習システムの学習及び一般化能力を向上させることができる。複数の分析技術(例えば、グレンジャー因果性、転送エントロピー)が、複数の生理学的入力の間の動的な関係から情報を導出し、これらの計算出力をシステム全ての入力変数として使用するために使用されてよい。
【0072】
図4A-4Eは、様々な実施の形態に係る、SWAを増強させるための刺激のための最適なウィンドウを決定するための例示的な方法を示す。より具体的には、図4A-4Eは、BPに関し、夜の時間及び睡眠段階の関数として支配PNS振動を決定することの例を示す。BP信号を処理した後、自動アルゴリズムが、BP信号のパラメータを検出し(例えば、図4A)、支配周波数を決定(例えば、図4B)し、BP信号を支配周波数に分解(例えば、図4C-4D)するために使用され、その後、刺激の供給のために最適なウィンドウを決定する(例えば、図4E)ことに使用される。
【0073】
例えば、図4Aは、BPを示す生体信号において検出されるピークの例である。ピークは、連続BP信号と比較した、かつ時間の関数として、心臓の収縮期、中間期、及び拡張期を含んでよい。ピークに基づいて、図4Bにおいて0.06~0.22Hzの周波数によって示される、目的の1つ以上の支配周波数が識別される。BP信号は、目的の支配周波数に(又はそれぞれに)分解される。例えば、図4Cは、0.22Hzの周波数(例えば、呼吸周波数)に分解されたBP信号を示す。刺激のための最適なウィンドウは、目的の支配周波数に分解されたBP信号を使用して、決定される。図4Eは、時間の関数として、0,22Hzの呼吸周波数における収縮期BPの位相バリエーションである。より具体的には、図4Eは、末梢刺激を供給するための最適なウィンドウ(例えば、タイミング)を決定するための特徴の抽出である。
【0074】
以下の表1は、様々な実施の形態に係る、支配PNS振動の特性の例を示す。
【表1】
【0075】
支配PNS振動の特性は、1つ以上の生体信号にわたる支配律動(例えば、振幅、周波数、位相)の特徴、律動における余剰(例えば、呼吸周波数は、複数のCV測定に反映できる)、及び律動における位相変移を含み、計算できるが、これに限定されない。表1は、異なる生体信号についての抽出された異なる支配周波数の例であるが、実施の形態は限定されない。より具体的には、表1は、異なる睡眠段階(例えば、N2及びN3)及び夜間の異なる時間における複数の生体信号の支配周波数の例である。支配律動は、複数の生体信号(例えば、呼吸)に反映でき、夜間にわたって、そして異なる睡眠段階について、変動する。
【0076】
図5は、様々な実施の形態に係る、最適なウィンドウの例を示す。理論的根拠は、脳及び身体信号の間のカップリングの複数のレベルの存在に基づく。具体的には、支配PNS振動(例えば、BP振動の下向きの傾き又は位相、呼吸の位相)、状態(例えば、心臓の低下調節)、及び/又はイベント(例えば、位相性心臓振動)内の特定の時間ウィンドウがあってよく、EEG特徴(例えば、EEG SWAの増加、分離された徐波振幅)の強い関係性を示す。
【0077】
加えて、末梢刺激は、刺激時のPNS振動の特定の特徴(例えば、心周期内の位相、タイミング)に依拠し、刺激の種類及び特徴(例えば、期間、強度)にも依拠する、異なる特徴(例えば、異なる大きさ及び位相変移)を備えるEEG SWA及び自律振動を引き出すことができる。
【0078】
図6A-6Cは、様々な実施の形態に係る、例示的な刺激のための最適なウィンドウを示す。例えば、図6Aは、呼吸及び心周期の末梢律動のための最適なウィンドウを示す。示されるように、呼吸周期は、4つの呼吸位相等の異なる位相に分離される。特定の実施の形態において、呼吸周期は、吸気及び呼気のピークに基づいて、4つの等しい位相に分割される。しかしながら、実施の形態は限定されておらず、呼吸周期は、他の変更例の中でも、8の位相や16の位相に分割される。同様に、心周期は、図示される3つの心周期等の異なる位相に分離されるが、実施の形態は限定されない。(複数の)最適なウィンドウは、呼吸及び心周期の両方のROIを含み、この間にEEG SWA生成の刺激関連増強が最大化されるが、実施の形態は限定されず、他の最適化を対象とする及び/又は含む。
【0079】
図6Aの底部パターンは、1つの心周期における心周期の例を示す。心周期は、等しい長さの3つの位相又は期間に分割されてよい。この文脈における心周期は、後のECG R波の間の時間を含む又は参照する。心周期は、また、より具体的な電気生理学的特徴に基づいて分割される(例えば、QRS複合に加えて、p及びt波を使用して分割できる)等、図示されるよりも多い又は少ない数に分割されてよい。
【0080】
図6Bは、呼吸周期と比較したSWAの刺激増強を示す。特定の実施の形態において、50ミリ秒(例えば、2ミリ秒の上昇及び効果時間)の間、80dBにおいて、バイノーラル方式で、1,000Hzの音刺激がユーザに供給される。EEGデルタパワーにおける音に関する変化は、時間の関数として、刺激の前後に、音が発生する呼吸周期の関数として、表示される。特定の実施の形態において、EEGデルタパワーの最大の増加は、刺激の3秒後に明らかであり、呼吸位相1(図6Aを参照)において刺激が供給された時に、最大のピークEEGデルタパワーが起きる。EEGデルタパワーにおける最低の増加は、呼吸周期3において刺激が供給された時に起きる。
【0081】
図6Cは、時間の関数として、刺激の前後に、音が発生する心周期の関数として、呼吸位相1内のEEGデルタパワーの音に関する変化を示す。示されるように、特定の実施の形態について、EEGデルタパワーの最大の増加は、心周期の第2及び第3位相と比較して、心周期の第1位相において刺激が供給された時に起こる。この特定人物について、刺激のための最適なウィンドウを提供するEEGデルタパワーの最大の増加は、呼吸位相1及び心周期の第1位相内で供給された刺激により明らかである。特定の例において、呼吸周期の第1位相は、呼気のピーク(例えば、カーブの最低値)と、呼気のピーク及び吸気のピークの間の半分との時間と相互に関連する。
【0082】
実施の形態は、睡眠段階及び夜の時間の関数として、支配PNS振動に基づいて、ユーザ内のSWA生成を増強することを対象とするが、上記で説明される特定の例に限定されない。同一のものを使用する装置及び方法は、刺激に対するユーザの応答がシステムにフィードバックされる閉ループ刺激を提供することを含み、さらに、刺激のタイミングを改良するために使用される。EEG SWAを増強することは、疾患及び状態の治療等の様々な目的に有用であり得る。
【0083】
様々な実施の形態は、参照としてその全てが本明細書に組み込まれる、2017年7月17日に出願された“Overclocking the Human System by Optimizing and Hacking the Brain-Body Interplay During EEG Slow Wave Deep state”と題される米国仮出願(62/533,299)の実施の形態に応じて、実装される。例えば、当該明細書の説明における実施の形態は、上記の実施の形態と、(すべてを含む)異なる程度で組み合わされてよい。上記の図1A-1Bと合わせて説明される特定の例として、本明細書において様々な説明がなされたEEG SWA最適化は、米国仮出願62/533,299の図1に説明及び図示されるように適用される刺激によって、実装されてよい。米国仮出願において説明される実施の形態は、いかなる意味においても、具体的に記載されない限り、本開示の技術全体及び請求の範囲の一部を限定することを意図しない。
【0084】
当業者は、(請求の範囲を含む)明細書において使用される様々な用語は、示されない限り、当分野において単純な意味を示すことが認識できる。例として、本明細書は、ブロック、モジュール、装置、システム、ユニット、制御装置、及び/又は他の回路の種類の図示(例えば、図1Aの参照番号104、106、108は、本明細書に説明されるブロック/モジュールを図示する)等、図示される又は用語を使用する様々な回路又は回路によって、請求される開示を実装するのに有用な様態を説明及び/又は図示する。複数の回路又は回路は、他の要素と共に使用されて、ある実施の形態がどのような形態、又は構造、ステップ、機能、動作、活動、その他によって実行され得るかを示す。例えば、上記で説明されるある実施の形態において、1つ以上のモジュールは、図1B及び図2において示されるアプローチ
実行され得る、これらの動作/活動を実装するために構成及び配置される個別論理回路又はプログラマブル論理回路である。ある実施の形態において、そのようなプログラマブル回路は、指令のセット(又は複数のセット)として実行される(及び/又はプログラマブル回路がどのように実行されるかを定義する構成データとして使用される)プログラムを保存及びプログラムにアクセスするための保存回路を含む1つ以上のコンピュータ回路であり、図3A-3Bにおいて説明されるアルゴリズム又はプロセスは、関連するステップ、機能、動作、活動、その他を実行するためにプログラマブル回路によって使用される。アプリケーションによって、指令(及び/又は構成データ)は、メモリ(回路)に保存され、メモリからアクセス可能である指令(オブジェクトコード、ファームウェア、又はソフトウェアのいずれかの形態で特徴付けられる)と共に、論理回路における実装のために構成されてよい。
【0085】
上記の様々な実施の形態、及び説明された仮出願は、共に及び/又は別の方法で実装されてよい。本開示及びその元となる仮特許出願において図示される1つ以上の項目は、特定の適用に応じて有用であるように、別個に若しくはより一体化した方法で実装されてよく、又はいくつかの場合において除去される及び/若しくは動作不能にされてよい。本明細書の説明を鑑みて、当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の変更を加えることができる点、認識すべきである。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図6C