(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ポリマーキャパシタの製造方法およびポリマーキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230530BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20230530BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20230530BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/028 G
H01G9/145
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2020504135
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2018070166
(87)【国際公開番号】W WO2019020692
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】102017117160.6
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドバイ, ラースロー
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】須原 宏光
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/094462(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031207(WO,A1)
【文献】特開2012-243856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/02-9/035
H01G 9/07-9/18
H01G 9/21-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード箔(2)、カソード箔(3)およびセパレータ箔(4)を巻回して巻回体(5)を形成する工程と、
溶媒、ポリマー前駆体、及び少なくとも1つが130℃未満の沸点を有する1つ以上の添加剤(20)を含む分散液を前記巻回体(5)に含浸させる工程と、
130℃未満の沸点を有する前記添加剤(20)が前記巻回体(5)の中に少なくとも部分的に残存するように、超臨界流体抽出によって前記巻回体(5)から前記溶媒を抽出し、前記超臨界流体抽出の温度および圧力は設定可能となっており、添加剤(20)の少なくとも1つが、前記分散液中の初期量の少なくとも30%の量で前記巻回体の中に残存する工程と、
を備えているポリマーキャパシタの製造方法。
【請求項2】
前記超臨界流体抽出は、60℃未満の温度(T)および1気圧以上の圧力(P)で実施される、請求項1に記載のポリマーキャパシタの製造方法。
【請求項3】
前記添加剤(20)の少なくとも1つが、少なくとも2つの成分の共沸混合物を含む、請求項1又は2に記載のポリマーキャパシタの製造方法。
【請求項4】
前記添加剤(20)の少なくとも1つが、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、不飽和アルコール、分子量が200g/mol未満の
低分子量エステル、酢酸エチルまたは酢酸プロピルを含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリマーキャパシタの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は、水を含むか、または主に水からなる、請求項1~4のいずれかに記載のポリマーキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーキャパシタの製造方法およびポリマーキャパシタに関する。特に、キャパシタは、固体ポリマー電解質および液体電解質を含むハイブリッドポリマーキャパシタであってもよい。
【背景技術】
【0002】
このようなキャパシタは、通常、セパレータ箔が間に介在するアノード箔及びカソード箔が巻回されて形成された巻回体を含む。アノード箔は、誘電体層によって覆われている。ポリマーは、アノード箔、特にアノード箔の誘電体層を覆い、カソードとして機能する。ポリマーは、溶媒、ポリマー前駆体、および任意に添加剤を含有する分散液を巻回体に含浸させることによって塗布される。
【0003】
特許文献1に記載されているような標準的な方法では、分散液は含浸によって塗布され、その後、溶媒は真空中および/または高温での蒸発によって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの溶媒の除去の条件は、箔の劣化につながる可能性があり、添加剤の量の望ましくない減少につながる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ポリマーキャパシタの改良された製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、改良された特性を有するポリマーキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、ポリマーキャパシタの製造方法に関する。ポリマーキャパシタは、固体電解質を形成するポリマーを含み、さらに液体電解質を含むハイブリッドポリマーキャパシタであってもよい。セパレータ箔は、液体電解質で含浸されてもよい。
【0008】
この方法は、巻回体を形成するためにアノード箔、カソード箔およびセパレータ箔を巻回する工程と、溶媒およびポリマー前駆体を含む分散液を巻回体に含浸させる工程と、超臨界流体抽出プロセスにおいて巻回体から溶媒を抽出する工程とを含む。
【0009】
特に、前記ポリマー前駆体は、溶媒の除去後に重合したポリマーを形成する粒子である。前記ポリマーは導電性である。前記分散液は、1つ以上の添加剤を含み得る。前記添加剤は、ポリマーの導電率を増加させ、それによってキャパシタのESR(等価直列抵抗)を減少させるために使用することができる。添加剤は、、代替的にまたは追加的に、分散による以外の方法で、巻回体要素に添加されてもよい。一例として、箔を巻回体要素に巻き付ける前に、1つ以上の添加剤を箔に添加することができる。
【0010】
超臨界流体抽出プロセスでは、その超臨界相の流体が、溶媒を抽出するために使用される。例として、二酸化炭素または亜酸化窒素を流体として使用することができる。巻回体は抽出セルに貯蔵され、そこに流体が導入される。抽出セル内の温度および圧力は、流体の超臨界相が達成されるように設定される。
【0011】
液体の超臨界相の温度-圧力領域内では、溶媒が巻回体から選択的に抽出されるように温度および圧力を調整することができる。特に、分散液の他の成分は、超臨界流体抽出プロセスにおいて、巻回体から抽出されないか、または少量のみ抽出される場合がある。これにより、初期の分散液に含まれているか、他の方法によって巻回体要素に大量にまたは抽出プロセス中の初期の量で添加され得る添加剤の保持が可能になる。特に、低沸点を有する添加剤を巻回体に保持することができる。
【0012】
超臨界流体抽出プロセスは、低いプロセス温度、例えば60℃未満で実施することができる。これにより、高温による巻回体の損傷を防止することができる。従来の蒸発プロセスでは、溶媒は蒸気として蒸発し、これにより、例えば、箔上の酸化物および水酸化物の生成による巻回体の損傷につながる可能性がある。これにより、寿命の短縮および電気的性能の低下につながる可能性がある。
【0013】
超臨界流体抽出プロセスは、1気圧を超える圧力で実施することができる。これとは対照的に、従来の蒸発プロセスは、しばしば、添加剤の望ましくない除去につながり得る低圧または真空条件で実施される。1気圧を超える圧力でプロセスを実施することによって、添加剤を巻回体内に保持することができ、巻回体の損傷が防止される。
【0014】
一実施形態では、分散液中の1つ以上の添加剤は、低沸点を有していてもよい。特に、沸点は130℃未満であってもよい。添加剤は、例えば、単一の成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、添加剤は、少なくとも2つの成分の共沸混合物を含むことができる。共沸混合物は、その個々の成分の沸点とは異なり得る特徴的な沸点を有する。この場合、共沸混合物は、特に130℃未満の低沸点を有することができる。
【0015】
超臨界流体抽出プロセスは、抽出プロセス中に巻回体内にこれらの低沸点添加剤を保持することを可能にする。従って、巻回体の特性、特にポリマーの特性を改善するために、低沸点添加剤を使用することができる。標準的な蒸発プロセスでは、このような低沸点添加剤は、当該プロセス中に除去される。
【0016】
超臨界流体抽出プロセスを使用することにより、一般に、低沸点添加剤および/または高沸点添加剤であり得る添加剤を、巻回体中に大量に保持することが可能になる。特に、添加剤は、少なくとも初期量の80%の量で、すなわち溶媒を抽出する前の量で巻回体中に残留することができる。これは、抽出工程の前の分散液中または巻回体要素中の初期量であってもよい。他の実施形態では、添加剤は、巻回体中により少ない量、例えば、50%~75%の量で残ってもよい。プロセスパラメータに応じて、その量は、例えば、1%~30%であってもよい。
【0017】
一実施形態では、添加剤の少なくとも1つは、より高い沸点、例えば130℃を超える沸点を有していてもよい。
【0018】
低沸点を有する添加剤は、短鎖または中鎖アルキルアルコール、低分子量エステル、酢酸エチルまたは酢酸プロピルからなるか、またはこれらを含むことができる。短鎖または中鎖アルキルアルコールには、例えば、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールのような不飽和アルコール、および鎖状アルコール(t-ブチルアルコール)が含まれる。より高い沸点を有する添加剤は、例えば、特定の塩およびポリマーからなるか、またはそれらを含み得る。特に、このような添加剤は、ポリオール、ポリアルキレングリコール、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトール、およびPEG300-PEG2000のようなポリエチレングリコールからなるか、またはこれらを含み得る。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、上記の方法によって製造されるポリマーキャパシタに関する。特に、ポリマーキャパシタは、ポリマーと液体電解質とを含むハイブリッドポリマーキャパシタであってもよい。超臨界流体抽出プロセスのために、ポリマーキャパシタは、標準的な蒸発プロセスによって製造された同等のキャパシタには存在しない添加剤を含むことができる。
【0020】
さらなる態様によれば、本発明は、アノード箔、カソード箔およびセパレータ箔が巻回されて形成された巻回体を含むポリマーキャパシタに関する。ポリマーは、少なくともアノード箔を覆う。また、ポリマーは、カソード箔またはセパレータ箔上に配置されてもよい。前記キャパシタは、ハイブリッドポリマーキャパシタであってもよい。
【0021】
1種以上の添加剤がポリマー中に分布している。前記添加剤は、最初に、溶媒およびポリマー前駆体を含む分散液中に含有されていてもよい。添加剤の少なくとも1つは、130℃未満の沸点を有し得る。キャパシタは、上述の開示された方法によって製造され得る。前記キャパシタ、および特に前記添加剤は、開示された方法に関連して記載されたような特性を有し得る。
【0022】
特に、添加剤のうちの少なくとも1つは、短鎖または中鎖アルキルアルコール、低分子量エステル、酢酸エチルまたは酢酸プロピルからなるか、またはそれらを含むことができる。
【0023】
低沸点添加剤に加えて、または低沸点添加剤の代わりに、キャパシタは、より高い沸点を有する1つ以上の添加剤を含んでもよい。この添加剤は、大量に存在してもよい。
【0024】
一例として、低沸点を有する添加剤の少なくとも1つの重量は、巻回体の乾燥重量の少なくとも0.2%である。いくつかの実施形態では、重量は、巻回体の乾燥重量の少なくとも30%であってもよい。巻回体の乾燥重量は、任意の種類の分散液、添加剤および液体電解質を添加する前の巻回体の重量である。
【0025】
低沸点を有する添加剤の少なくとも1つの重量は、ポリマーの重量と少なくとも同じであってもよい。いくつかの実施形態では、重量は、ポリマーの重量の最大15倍以上であってもよい。
【0026】
追加的にまたは代替的に、低沸点を有する添加剤の少なくとも1つの表面積は、アノード箔の表面積の少なくとも25%であってもよい。いくつかの実施形態では、相対表面積は、少なくとも50%であってもよい。
【0027】
高沸点添加剤は、巻回体の乾燥重量の少なくとも2%の重量で存在することができる。いくつかの実施形態では、重量は、巻回体の乾燥重量の30%以上であってもよい。
【0028】
本開示は、本発明のいくつかの態様を含む。方法およびキャパシタに関して記載されたすべての特徴は、それぞれの特徴が特定の態様の文脈において明示的に言及されていない場合であっても、他の態様に関して本明細書で開示される。
【0029】
さらなる特徴、改良および便宜は、図面に関連する例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ポリマーキャパシタの構造を概略的に示した斜視図である。
【
図2】ポリマーキャパシタを製造する方法における工程を示したフロー図である。
【
図4】超臨界流体抽出プロセスを実施するための装置を概略的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、部分的に巻き戻された状態のポリマーキャパシタ1を示している。キャパシタ1は、アノード箔2と、カソード箔3と、それらの間のセパレータ箔4とを備えている。この図では、1つのセパレータ箔4のみが示されている。箔2、3の反対側において、カソード箔3とアノード箔2との間に別のセパレータ箔が存在する。箔2、3、4は、共通の軸の周りに巻回され巻回体5になる。
【0032】
巻回体5は、缶(図示せず)内に配置することができる。この缶は、アルミニウムなどの金属を含むことができる。
【0033】
アノード箔2は、第1のコンタクト構造6によって電気的に接触される。カソード箔3は、第2のコンタクト構造7によって電気的に接触される。コンタクト構造6、7の各々は、複数の積み重ねられたコンタクト要素8、9を含むことができる。コンタクト構造6、7および複数のコンタクト要素8、9は、タブの形状を有することができる。コンタクト要素8、9は巻回体5の両側に延びている。特に、第1のコンタクト構造6は、上方に延在するリードアウト10を有することができ、第2のコンタクト構造7は、下方に延在する第2のリードアウト11を有することができる。さらに、コンタクト構造6、7は、巻回体5の相対する側面に配置されている。第1のコンタクト構造6を形成する複数の第1のコンタクト要素8と、第2のコンタクト構造7を形成する複数の第2のコンタクト要素9とを使用することによって、巻回体5の金属抵抗を低減することができる。これにより、キャパシタ1のESRが低減される。
【0034】
あるいは、コンタクト構造6、7の各々は、単一のコンタクト要素8、9によって形成されてもよい。
【0035】
カソード箔3は、巻回体5の軸方向に延長部12を有することができる。特に、カソード箔3は、アノード箔2を越えて軸方向に延びることができる。延長部12は、缶の底部に電気的かつ機械的に接続されてもよい。追加的に又は代替的に、アノード箔2は、軸方向、例えば、反対の軸方向に延長部12を有することができる。
【0036】
アノード箔2は、誘電体層、特に酸化物層によって覆われたアルミニウム箔を含むことができる。また、カソード箔3は、酸化物層によって覆われたアルミニウム箔を含むことができる。セパレータ箔4は、紙材料で形成されていてもよい。
【0037】
アノード箔2、特にアノード箔2上に形成された誘電体層は、ポリマー13によって覆われている。ポリマー13は、導電性を有し、固体電解質として機能する。また、ポリマー13は、カソード箔3およびセパレータ箔4上に配置されていてもよい。ポリマー13は、溶媒、ポリマー前駆体および1種以上の添加剤20を含有する分散液を巻回体5に含浸させることによって塗布することができる。その後、溶媒を抽出し、ポリマー前駆体を重合させてポリマー13を形成する。添加剤20は、重合したポリマー13中に分布している。
【0038】
添加剤20の機能は、例えば、ポリマー粒子間のポリマー13の相互接続を改善することであってもよい。一例として、添加剤20は、二次化学結合及び分子間結合を強化することができる。これにより、ポリマー13の導電率を低下させることができ、キャパシタ1のESRを低下させることができる。
【0039】
一例として、低沸点の添加剤20の少なくとも1つの重量は、ポリマー13の重量と少なくとも同じであってもよい。
【0040】
添加剤20は、低沸点を有する材料、例えば、短鎖または中鎖アルキルアルコール、低分子量エステル(<200g/mol)、酢酸エチルまたは酢酸プロピルを含むか、またはそれらからなってもよい。短鎖または中鎖アルキルアルコールには、例えば、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコールのような不飽和アルコール、および鎖状アルコール(t-ブチルアルコール)が含まれる。
【0041】
添加剤20は、少なくとも2つの成分の共沸混合物を含むことができる。共沸混合物は、蒸留によってその成分に分離することはできない。共沸混合物は、その個々の成分の沸点とは異なり得る特徴的な沸点を有する。
【0042】
それに加えて、添加剤20のうちの少なくとも1つは、特定の塩またはポリマーなどの高沸点を有する材料を含むか、またはそれからなってもよい。
【0043】
さらに、巻回体5には、液体電解質を含浸させることができる。特に、セパレータ箔4には、液体電解質を含浸させることができる。この場合、ポリマーキャパシタ1は、ハイブリッドポリマーキャパシタである。
【0044】
キャパシタ1は、以下の説明する工程により製造することができる。
【0045】
図2は、
図1に示すキャパシタ1のようなポリマーキャパシタを製造する方法のフロー図を示す。
【0046】
工程Aでは、アノード箔2、カソード箔3およびセパレータ箔4が準備され、巻回され巻回体5が形成される。巻回体5を形成する前に、1つ以上の第1のコンタクト要素8をアノード箔2に取り付け、1つ以上の第2のコンタクト要素9をカソード箔3に取り付けることができる。
【0047】
次に、工程Bにおいて、巻回体5に、溶媒およびポリマー前駆体を含む分散液を含浸させる。分散液はまた、1つ以上の添加剤20を含んでいてもよい。溶媒は、水を含んでいてもよく、または主に水からなっていてもよい。
【0048】
その後、工程Cにおいて、溶媒は、抽出され、それによって部分的または完全に除去される。溶媒の除去は、ポリマー前駆体の重合およびポリマー13の相互接続を可能にする。溶媒の抽出は、超臨界流体抽出プロセスを使用することによって達成され、超臨界流体は、溶媒を抽出するために使用される。
【0049】
一例として、二酸化炭素(CO2)または亜酸化窒素(N2O)のような流体が、超臨界状態になる。
【0050】
図3は、固相S、気相G、液相Lおよび超臨界流体相SCFを示す圧力-温度相図を示す。温度Tおよび圧力Pを臨界温度Tcおよび臨界圧力Pcより高く設定することによって、臨界点Cを超え、流体はその超臨界状態にされる。一例として、CO
2の臨界温度Tcは31℃であり、臨界圧力Pcは74barである。
【0051】
超臨界流体抽出プロセスは、低温、例えば60℃未満の温度で溶媒を除去することを可能にし、さらに、超臨界流体抽出プロセスは、真空条件(<1atm)を設定することなく溶媒を除去することを可能にする。また、超臨界領域内の温度T及び圧力Pを特定の値に調整することにより、添加剤20を同時に抽出することなく、溶媒を選択的に抽出することができる。
【0052】
このプロセスは、低沸点を有する添加剤20をポリマー分散液中で使用することを可能にし、それによって、抽出プロセスの間、添加剤20は、巻回体5中に残る。一例として、低沸点の添加剤20は、130℃未満の沸点を有し得る。
【0053】
さらに、低いプロセス温度は、従来の蒸発法で引き起こされる、箔2、3の劣化につながり得る高温水、特に水蒸気によるアノード箔2およびカソード箔3の損傷を防止する。このような損傷は、アノード箔2およびカソード箔3の静電容量および安定性の変化、ならびにキャパシタ1の寿命および電気的性能の低下につながる可能性がある。超臨界流体抽出は、アノード箔2およびカソード箔3をそのままの状態に保つことを可能にし、キャパシタ1の長い寿命および良好な電気的性能を保証する。
【0054】
さらに、超臨界流体抽出は、添加剤20の量を初期レベルまたはほんのわずかに減少したレベルに維持することを可能にする。したがって、結果として得られるキャパシタ1は、大量の添加剤20を含むことができ、それによって、ポリマー13の導電率を最大にし、キャパシタ1のESRを低減する。これとは対照的に、従来の蒸発法は、高温および/または真空による添加剤の量の大幅な損失をもたらす。
【0055】
図2に戻ると、超臨界流体抽出プロセスを実施した後、ステップDを実施することができ、ステップDは、巻回体5に液体電解質を含浸させ、キャパシタ1を最終的に組み立てることを含む。
【0056】
図4は、
図2に記載された方法において超臨界流体抽出プロセスを実行するための例示的な装置14を示す。
【0057】
装置14は、流体が貯蔵される貯蔵タンク15を備える。この流体は、気相であってもよい。流体は、例えば、CO2またはN2Oであってもよい。流体は、コンプレッサー16によって圧縮され、抽出セル17に送り込まれ、その中に分散液が含浸された巻回体5が貯蔵される。
【0058】
T-P制御ユニット18によって、抽出セル17内の温度Tは、流体の臨界温度Tcよりも高い温度に設定される。抽出セル17内の圧力Pは、流体の臨界圧力Pcよりも大きい圧力に設定されている。圧力Pは、最適な圧力が確実に設定されるように、背圧調整器19によって調整することができる。特に、圧力及び温度は、流体がその超臨界状態にあり、水が含浸した巻回体5から選択的に抽出されるように設定される。抽出された溶媒および流体の流出は、流量計21によって制御される。
【符号の説明】
【0059】
1 キャパシタ
2 アノード箔
3 カソード箔
4 セパレータ箔
5 巻回体
6 第1のコンタクト構造
7 第2のコンタクト構造
8 第1のコンタクト要素
9 第2のコンタクト要素
10 第1のリードアウト
11 第2のリードアウト
12 延長部
13 ポリマー
14 装置
15 貯蔵タンク
16 コンプレッサー
17 抽出セル
18 T-P制御ユニット
19 背圧調整器
20 添加剤
21 流量計
T 温度
P 圧力