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特許7287972循環腫瘍細胞のユニバーサル検出のためのプローブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】循環腫瘍細胞のユニバーサル検出のためのプローブ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/37 20060101AFI20230530BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230530BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20230530BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20230530BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20230530BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230530BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
C12N15/37 ZNA
C12N7/01
C12Q1/66
C12Q1/6886 Z
G01N33/50 F
C12N5/071
C12N5/10
C12N15/53
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020543352
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019018120
(87)【国際公開番号】W WO2019161139
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】62/630,570
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510194415
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ショーン シャオリウ
(72)【発明者】
【氏名】フー, シンピン
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/140961(WO,A2)
【文献】特表2016-531591(JP,A)
【文献】特表2005-538731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0335292(US,A1)
【文献】Liu Y. et al.,Efficiency of delivery of DNA to cells by bovine papillomavirus type-1 L1/L2 pseudovirions.,Appl Microbiol Biotechnol. ,56(1-2),2001年05月,pp.150-156
【文献】Database GenBank[online], Accession No.AFI79293.1,2012年06月19日,[retrived on 2021-10-14], retrived from the Internet, <URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AFI79293.1/〉,Definition: Nanoluc IL6 (secNluc) reporter[Nanoluc luciferase reporter vector pNL1.3[secNluc]]
【文献】Nandi A, Das G, Salzman NP.,Characterization of a surrogate TATA box promoter that regulates in vitro transcription of the simian virus 40 major late gene. ,Mol Cell Biol. ,5(3),1985年,pp.591-594
【文献】Buck CB. et al.,Arrangement of L2 within the papillomavirus capsid.,J Virol.,82(11),2008年05月26日,pp.5190-5197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/37
C12N 7/01
C12Q 1/66
C12Q 1/6886
G01N 33/50
C12N 5/071
C12N 5/10
C12N 15/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環腫瘍細胞(CTC)を検出するためのプローブであって、
ヒトまたはウシまたは他のパピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成されるキャプシドへとパッケージされ、かつマーカー遺伝子を含む改変SV40ウイルスを含み、
ここで、前記改変SV40ウイルスは、配列番号1のヌクレオチド671に対応するヌクレオチド位置においてチミン(T)を、配列番号1のヌクレオチド672に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド677に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド695に対応するヌクレオチド位置においてシトシン(C)を、および配列番号1のヌクレオチド708に対応するヌクレオチド位置においてシトシンを含むように改変されており;かつ
前記改変SV40ウイルスは、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されている、プローブ。
【請求項2】
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)は、配列番号10のものである、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記マーカー遺伝子は、前記改変SV40ウイルスの中SV40ウイルス後期プロモーターの下流に挿入されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
SV40ウイルス後期プロモーターは、内因性開始コドンを排除することによって改変されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
循環腫瘍細胞(CTC)を検出し得るプローブをアセンブリするためのプロセスであって、
パピローマウイルスL1およびL2遺伝子改変SV40構築物と哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることを包含するか、または前記パピローマウイルスL1およびL2遺伝子を哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることから形成されるキャプシドへの前記改変SV40構築物のインビトロアセンブリを包含し、
ここで、前記改変SV40構築物は、配列番号1のヌクレオチド671に対応するヌクレオチド位置においてチミン(T)を、配列番号1のヌクレオチド672に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド677に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド695に対応するヌクレオチド位置においてシトシン(C)を、および配列番号1のヌクレオチド708に対応するヌクレオチド位置においてシトシンを含むように改変されており;かつ
前記改変SV40構築物は、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されているものである、プロセス。
【請求項7】
前記共トランスフェクトすることは、pSV-GFPおよびpHPVL1,2を293TT細胞へと共トランスフェクトすることを包含する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記哺乳動物細胞は、293TT細胞である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プローブは、マーカー遺伝子を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)は、配列番号10のものである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
SV40ウイルス後期プロモーターは、内因性開始コドンを排除することによって改変されている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項13】
患者から集めた血液において循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための方法であって、
前記血液から有核細胞を単離する工程;
前記血液から単離した前記有核細胞、およびCTCを検出するためのプローブを含む混合物を調製する工程であって、ここで前記プローブは、パピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成される改変キャプシドを有し、かつマーカー遺伝子を含む改変SV40ウイルスを含む、工程;ならびに
前記混合物中のCTCを検出する工程、
を包含し、
ここで、前記改変SV40ウイルスは、配列番号1のヌクレオチド671に対応するヌクレオチド位置においてチミン(T)を、配列番号1のヌクレオチド672に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド677に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド695に対応するヌクレオチド位置においてシトシン(C)を、および配列番号1のヌクレオチド708に対応するヌクレオチド位置においてシトシンを含むように改変されており;かつ
前記改変SV40ウイルスは、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されたものである、方法。
【請求項14】
前記有核細胞は、PBMCまたはCTCを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための組成物であって、
ヒトまたはウシまたは他のパピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成されるキャプシドへとパッケージされ、かつマーカー遺伝子を含む改変SV40ウイルスを含み、
ここで、前記改変SV40ウイルスは、配列番号1のヌクレオチド671に対応するヌクレオチド位置においてチミン(T)を、配列番号1のヌクレオチド672に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド677に対応するヌクレオチド位置においてチミンを、配列番号1のヌクレオチド695に対応するヌクレオチド位置においてシトシン(C)を、および配列番号1のヌクレオチド708に対応するヌクレオチド位置においてシトシンを含むように改変されており;かつ
前記改変SV40ウイルスは、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されている、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年2月14日出願の米国仮出願第62/630,570号(その全体において本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
政府の権益に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所の国立がん研究所によって与えられた1 R01 CA187923-01A1および1 R01 CA203852-01の下で政府支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、血流中の循環腫瘍細胞(CTC)を検出するために使用され得るプローブ、およびこのようなプローブを使用してCTCを検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
循環腫瘍細胞(CTC)は、原発腫瘍または転移部位のいずれかから血流へと入った悪性腫瘍細胞である。CTCは、腫瘍増殖の比較的初期のステージで循環血液中に出現すると考えられている。CTCは、リキッドバイオプシーを経て容易に入手できることから、それらは、腫瘍学において、早期診断の可能性、化学療法有効性およびがんの予後の評価、ならびに個体特異的抗がん薬の選択を含む種々の適用にとって魅力的な供給源である。しかし、近年の集中的な研究にも拘わらず、血液中のCTCの単離および/または検出のための効果的でかつ単純な方法は未だになく、予後不良をもたらしている。これは、比較的後期のステージまで明確で特有の臨床上の症状を生じないこともある内臓腫瘍(例えば、膵臓がんおよび肺がん)に特にあてはまる。いくつかの理由が、CTCの検出のための効率的方法がないということに寄与している。第1に、CTCは、全血球量のうちのごくわずかな部分であるに過ぎない。第2に、CTCは、これらが由来する腫瘍細胞と同様に、全ての悪性腫瘍細胞タイプの中で、特有の、十分に定義されたユニバーサルな表面マーカーを欠いている。第3に、多くのCTCは上皮間葉転換(EMT)を受けており、これにより、悪性度と関連する表面マーカーの変化が生じ得ると考えられている。
【0005】
現在、CTCの単離/同定ストラテジーには2つの大きな分類がある:1)特有の生体マーカー(すなわち、EpCAM)の免疫学的認識に依拠する免疫ベースの捕捉/検出(depletion)、および2)CTCの物理的特性を利用する技術である。各ストラテジーは、特有の欠点を有する。
【0006】
第1の検出方法、免疫ベースの捕捉/検出(deletion)に関しては、CELLSEARCHTMは、免疫ベースの捕捉アプローチの例であり、CTC検出に関してFDA承認を受けている唯一の方法である。その方法は、まず鉄ナノ粒子にコンジュゲートした抗EpCAM抗体を通じてCTCを結合させ、続いて、磁石で捕捉することによって全血中のCTCを富化する。次いで、CTCは、以下によってさらに特徴づけられ、確認される:1)有核細胞を同定するためのDAPI染色、2)上皮構造サイトケラチン(CK8、CK18、およびCK19)に関するさらなる抗体染色、ならびに3)CTCを循環白血球(WBC)から区別する抗CD45。これは、扱いづらくかつコストのかかる検出方法である。より重要なことには、この方法は、血液中の比較的小さな割合のCTCを捕捉し得るに過ぎず、これは主に、腫瘍細胞および検出のために依拠する生体マーカーの不均一性に起因する。
【0007】
第2の検出方法、CTCの物理的特性を利用することに関しては、物理的特性に基づくCTCの単離は、CTCの比較的大きなサイズに主に依拠する。この原理に基づくいくつかの方法が報告されている。それらは、特定の孔サイズを有するフィルターベースの膜、富化ストラテジーにおいてCTCのサイズおよび変形する能力の両方に依存する微小流体デバイス、ならびに密度遠心分離とサイズベースの濾過と統合したデバイスを使用することを含む。物理的特性に基づく単離の主な欠点のうちの1つは、多くの血球(例えば、単球/マクロファージ)が、サイズにおいて類似であるか、またはCTCよりさらに大きく、そのため単離手順後にCTCから分離されないことである。よって、物理的特性に基づく方法から単離されたCTCは頻繁に、免疫染色またはRT-PCR分析(これは、扱いづらくかつコストがかかる)のいずれかによってさらに確認される必要がある。
【0008】
従って、血液中のCTCの単離および/または検出のための効果的かつ単純なデバイスおよび方法は、当該分野で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本明細書で開示されるある種の実施形態の要旨は、以下でさらに記載される。この節が、読み手にある種の実施形態の簡潔な要旨を提供するために示されているに過ぎず、これらの説明が、本出願の範囲を限定するとは意図されないことが理解される。実際に、本開示は、本明細書で示されていないこともある種々の実施形態を含み得る。
【0010】
血中の循環腫瘍細胞(CTC)を検出するためのプローブが、このようなプローブを製造するための方法、およびこのようなプローブを使用してCTCを検出するための方法を含めて本明細書で開示される。一実施形態において、そのプローブは、ヒトまたはウシまたは他のパピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成されるキャプシドへとパッケージされた改変SV40ウイルスを含み得る。そのプローブは、マーカー遺伝子を含み得、上記マーカー遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質が挙げられ得る。一実施形態において、上記SV40ウイルスは、内因性開始コドンを排除することによるもの、4個の72塩基対(bp)縦列反復エンハンサー配列を挿入することによるもの、ならびに/または野生型SV40において、ヌクレオチド298をシトシン(C)からチミン(T)へ、ヌクレオチド299をシトシンからチミンへ、ヌクレオチド304をシトシンからチミンへ、および/もしくはヌクレオチド322をGからCへと置換することによるものを含む、少なくとも3つの方法で改変され得る。
【0011】
一実施形態において、本明細書で開示されるプローブは、パピローマウイルスL1およびL2遺伝子と改変SV40構築物とを哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることによって、またはパピローマウイルスL1およびL2遺伝子を哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることから形成されるキャプシドへの上記改変SV40構築物のインビトロアセンブリによって、作製される。
【0012】
別の実施形態において、本明細書で開示されるプローブは、血液中のCTCを検出するために使用される。患者から血液が集められ、PBMCおよびCTCのような有核細胞がその血液から単離される。単離した有核細胞および本明細書で開示されるプローブを含む混合物が調製され得る。いったん混合されると、上記CTCは、その混合物中で検出され得る。
【0013】
前述の要旨ならびに以下の詳細な説明は、添付の図面および配列表とともに読まれる場合によりよく理解される。例証目的のみのために、ある種の実施形態が図面の中で示される。しかし、本明細書で開示される発明の概念が図面に示される正確な配置および手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】図1Aは、本明細書で開示される実施形態およびに配列番号1~5の配列情報を従って、SV40プローブ(pSV-GFP)の詳細な構成要素およびその構築のために導入される改変を図示する。改変のために使用されるシミアンウイルス40(SV40)ゲノム配列は、776野生株(GenBank:J02400.1)に由来する。ラージTおよびスモールT配列を、これらが合成される場合にヒト発現について最適化した。SV40ゲノムに、以下を含むいくつかの変化を導入した:1)余分の4×72塩基対(bp)縦列反復エンハンサー配列(配列番号13)の挿入、2)配列番号1の671番、672番および677番のCからTへの、配列番号1の695番のGからCへのヌクレオチド変異、ならびに3)配列番号1において708番のヌクレオチド配列をAからCへと変異させて、元の開始コドンを欠失させる。pSV-GFPにおけるGFP遺伝子は、他のマーカー遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)であってもよい。一実施形態において、そのルシフェラーゼ遺伝子は配列番号10のものであり得る。これはDeep Sea Shrimpに由来し、「Sluc」(分泌型ナノルシフェラーゼ)といわれるものであり、ヒト化によってならびにそれをFlagおよびHAタグと連結することによって改変されている。Slucを選択する利点は、以下である:1)その配列は、一般に使用されるルシフェラーゼ遺伝子(例えば、ホタルおよびウミシイタケのLuc遺伝子)の配列より遙かに短く、これは、パピローマウイルスに由来するVLPのパッケージング収容力が限られていることから重要である、2)Slucは他のルシフェラーゼより顕著に安定であり、その結果、蓄積され検出を用意にし得る、および3)Slucは本来的に分泌され、そのため検出をより容易にする。図1Bは、本明細書で開示される実施形態および配列番号6~7の詳細な配列情報に従って、そのプローブをパッケージングするためのHPV16 L1およびL2キャプシドを図示する。同じ改変SV40プローブを、ウシパピローマウイルス(BPV)のL1およびL2タンパク質に由来するキャプシドの内部にも同じ効率でパッケージングできた(その詳細な配列情報は、配列番号8~9)。
図1-2】図1Cは、pSV-GFP(SV40プローブ)がHPV L1およびL2タンパク質に由来するキャプシド内部にパッケージングされた、アセンブリされた形態でのCTC-UniProを図示する。
【0015】
図2図2Aは、本明細書で開示される実施形態および配列番号11からの配列情報からの詳細な配列情報に従って、pcDNA-GFPコントロール構築物(配列番号11)を図示する。図2Bは、コントロールpcDNA-GFPがHPVに由来するキャプシド内部にパッケージングされた、アセンブリされた形態でのコントロールpcDNA-GFPを図示する。
【0016】
図3-1】図3Aは、本明細書で開示される実施形態に従って、コントロールpcDNA-GFP構築物ではなくCTC-UniProによる悪性腫瘍細胞の特異的検出を図示する。図3Bは、本明細書で開示される実施形態に従って、pcDNA-GFPコントロール構築物によるヒト肺がん細胞株(A549および5838)の検出を図示する。
図3-2】図3Cは、本明細書で開示される実施形態に従って、CTC-UniProによるヒト肺がん細胞株(A549および5838)の検出を図示する。
【0017】
図4図4は、本明細書で開示される実施形態に従って、pcDNA-GFPコントロール構築物に対するCTC-UniProによる悪性腫瘍細胞におけるプローブ増幅の定量的測定の比較を図示する。
【0018】
図5図5は、本明細書で開示される実施形態に従って、PBMCと混合したA549腫瘍細胞、PBMCと混合したA1944腫瘍細胞、およびヒトPMBC単独の(GFP同定を通じた)CTC-UniProによる検出の比較を図示する。
【0019】
図6図6は、本明細書で開示される実施形態に従って、2種の異なる腫瘍溶解性HSVベースのウイルスベクター(Baco-1およびFusOn-H2)による(しかし、CTC-UniProによってではない)、PBMCの非特異的検出の比較を図示する。
【0020】
図7図7は、本明細書で開示される実施形態に従って、5×10 PBMCを添加した単一腫瘍細胞を定量的に検出するにあたっての、ルシフェラーゼ含有CTC-UniProの能力を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本明細書で示される発明の概念が、それらの適用において、以下の説明で示されるかまたは図面の中で図示される構築の詳細または構成要素の配置に限定されないことが、理解されるべきである。本明細書で使用される表現法および用語法が説明目的に過ぎず、限定とみなされるべきではないことも理解されるべきである。
【0022】
記載される特徴のうちのいずれか1つが、別個に、または他の特長と組み合わせて使用され得ることもさらに理解されるべきである。他の考案されたシステム、方法、特徴および利点は、図面および本明細書中の詳細な説明を試験する際に、当業者に明らかであるかまたは明らかになる。全てのこのようなさらなるシステム、方法、特徴、および利点は、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0023】
血液中のCTCを極めて高感度で正確に検出する単純な手順において使用され得る新規なユニバーサルプローブが、本明細書で開示される。本明細書で使用される場合、用語「CTC-UniPro」とは「CTCユニバーサルプローブ」を表し、2つの重要な構成要素を含む新規なプローブである。その第1の構成要素である、ヒトパピローマウイルス(HPV)および/もしくはウシパピローマウイルス(BPV)もしくは他の種に由来するパピローマウイルスのL1およびL2タンパク質から形成されるウイルス様粒子(VLP)は、そのプローブが他の血球ではなくCTCに選択的に侵入することを可能にする。これにより、そのプローブは、血流中でCTCを検出するための極めて高度の特異性を得る。その第2の構成要素である、マーカー遺伝子を含みVLPにパッケージングされる本明細書で開示される改変SV40ウイルスゲノムは、そのプローブが、腫瘍細胞内で大々的に増幅されることを可能にする。これにより、そのプローブは、血中で希にしか現れずかつ低濃度であるCTCを検出するための高い感度を得る。専らSV40に基づくプローブに伴う大きな問題は、それらがCTCに加えて他の血球(例えば、T細胞および単球)にも進入し得ることである。SV40キャプシドをHPVまたは他のパピローマウイルスから形成されるVLPで置き換えることは、がん細胞の大部分が上皮起源のものであり、パピローマウイルスが専ら上皮細胞に感染するという事実を利用する。従って、この新規なプローブは、HPV-VLP媒介性進入の特異性およびSV40増幅によって提供される感度を併せ持つ。
【0024】
健常ドナーから調製された単核細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー遺伝子を有するCTC-UniProと混合する場合、単一のGFP陽性細胞は検出されない。健常ドナーから調製された同じ単核細胞をルシフェラーゼマーカー遺伝子を有するCTC-UniProと混合する場合、非常に低いバックグラウンドシグナルのみが高感度の機械で検出された。これらは、そのプローブの極度の特異性を証明する。なぜならそのプローブは、いかなる正常な血球をも検出しないからである。しかし、腫瘍細胞を添加した同じ単核細胞をこのCTC-UniProと混合した場合、その腫瘍細胞は高い精度および感度で検出される。その同じ実験を、異なる組織起源のほぼ十数種の腫瘍細胞で反復し得、各場合において、その添加した腫瘍細胞はそのCTC-UniProで容易に検出される。これは、そのプローブが、実質的に全ての腫瘍タイプを検出するためにユニバーサルに使用され得ることを証明する。タグ化膜タンパク質を有するCTC-UniProは、さらなる分析のためにCTCを正確に集めることを可能にする。
【0025】
CTC-UniProは、CTCを簡便に信頼性高く検出するための特異的かつ高感度のプローブであり、これは、広範囲のがんタイプのより早期の診断、化学療法有効性およびがん予後のより良好な評価、ならびに個体特異的抗がん薬のより良好な選択をもたらし得る。
【0026】
一実施形態において、そのCTC-UniProは、改変SV40ウイルスに基づく。これは、短期間内で非常に大きな増幅を受け得、検出における高感度を可能にする。
【0027】
一実施形態において、プローブの選択性を増大させるために、そのSV40ウイルスは、元のキャプシドをウイルス様粒子で置き換えることによって改変され得る。例えば、そのキャプシドは、ヒトパピローマウイルス16のL1およびL2キャプシドタンパク質によって形成され得る。
【0028】
一実施形態において、そのプローブは、SV40ウイルスの改変によって調製され得、その結果、そのプローブは、検出を容易にするためにマーカー遺伝子を有する。例示に過ぎないが、そのマーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、またはタグ(例えば、HAタグ)を含む膜タンパク質であり得る。そのマーカー遺伝子は、SV40後期プロモーターの下流に挿入され、その結果、そのマーカーはそのウイルスとともに増幅し、ウイルスを検出可能にする。SV40遺伝子の後期プロモーターも改変され得、マーカー遺伝子の増幅を増大させる。例えば、SV40内因性開始コドンからの干渉は、野生型SV40におけるヌクレオチド335のアデニン(A)をシトシン(C)で置換する(配列番号1において708をAからCにするものとして示される)ことによって排除され得、これは、そのマーカー遺伝子の発現を促進する。なお別の実施形態において、配列番号12にさらに示される72塩基対エンハンサー配列(配列番号1の252~323)はさらに4回反復され(配列番号13)、288bpのエンハンサーとして挿入され、後期プロモーターの活性を強化する。さらに、野生型SV40において298をシトシン(C)からチミン(T)へ、299をCからTへ、および304をCからTへ(配列番号1において671、672および677をCからTにするものとして示される)とする一連のヌクレオチド置換も、後期プロモーターの活性を強化し得る。さらなる改変は、野生型SV40において322番においてGからCへのヌクレオチド変異(配列番号1において695をGからCにするものとして示される)を含み得る。全てのこれらの改変は、CTC-UniProの極めて高い検出感度を可能にするために重要である。
【0029】
例示に過ぎないが、図1A図1Cは、本明細書で記載されるCTC-UniProプローブの構築を図示する。そのCTC-UniPro(図1C)は、pSV-GFP(図1A)およびpHPVL1,2(図1B)を293TT細胞(これは、高レベルのSV40のラージTおよびスモールT抗原を発現する14)に共トランスフェクトすることによって形成され得る。他の哺乳動物細胞も、生成効率がわずかに低いとはいえ使用され得る。そのpSV-GFPは、HPVに由来するキャプシド内部にパッケージされる。48~72時間後にその細胞は集められ、溶解緩衝液でまたは超音波処置を通じて溶解され得る。そのプローブは、細胞デブリを遠心沈殿させた後にその上清を採取することによって集められ得る。別の実施形態において、そのプローブは、GE Capto Core 700カラムを通過させ、次いでPD-10カラムを通過させることによって、または他の精製手順によってさらに精製され得る。
【0030】
なお別の実施形態において、そのプローブの力価は、その採取したプローブの連続希釈物と293TT細胞とをインキュベートすることによって力価測定され得、ここでGFP陽性細胞は、フローサイトメトリーによって定量され得る。
【0031】
CTC-UniProプローブは、精製L1とpSV-GFP構築物とを混合することによって、またはL1およびL2でトランスフェクトした293TT細胞から採取したVLPとpSV-GFP構築物とを混合することのいずれによっても、インビトロでアセンブリされ得る。
【0032】
CTC-UniPro - 健常細胞からの腫瘍細胞の選択的検出
【0033】
一実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、腫瘍細胞のみを検出する。例えば、2種の異なるヒト肺がん細胞株に由来する腫瘍細胞および健常血液に由来する末梢血単核細胞(PBMC)を、等量のCTC-UniProと混合し、24~72時間インキュベートし得る。図3Aに示されるように、蛍光顕微鏡下で撮影した写真は、GFP陽性細胞が肺がん細胞株において広く検出されること、およびGFP陽性細胞がPBMCで検出されないことを示す。28種の腫瘍細胞株(以下の表1で同定される)に由来する腫瘍細胞および3名の異なるドナーに由来するPBMCを使用する実施形態において、そのCTC-UniProは、類似の結果を達成した。
表1.腫瘍細胞株
【表1】
【0034】
CTC-UniPro - プローブ中のT抗原の存在の結果としての腫瘍細胞中での自己増幅
【0035】
一実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、広く種々の悪性腫瘍細胞において自己増幅し得る。例えば、一実施形態において、コントロール構築物は、そのCTC-UniProと同じHPVキャプシド殻の中にパッケージされ得る。図2A~2Bに図示されるように、このコントロールは、強力な哺乳動物プロモーター、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-P)によって駆動されるGFP、およびSV40複製起点(Ori)およびプロモーターを含むpcDNA-GFPコントロール構築物(図2A)を含み得る。そのコントロール構築物(図2B)は、pcDNA-GFPコントロール構築物(図2A)およびpHPVL1,2(図1B)を293TT細胞へと共トランスフェクトすることによって形成され得る。そのpcDNA-GFPコントロール構築物は、HPVに由来するキャプシドの内部へとパッケージされる。そのpcDNA-GFP単独では、CTC-UniPro中に含まれ自己増幅に必要なT抗原15を欠いている。
【0036】
一実施形態において、2種のヒト肺がん細胞株(A549および5838)は、CTC-UniProまたはpcDNA-GFP コントロール構築物のいずれかとともにインキュベートされ得る。図3Bに示されるように、24時間後および72時間後にpcDNA-GFPを含むウェルにおいてGFPは低く検出される。対照的に、図3Cに示されるように、CTC-UniProを含むウェルにおいて高レベルのGFPが存在し、これは、そのプローブの顕著な増幅を示す。当業者は、その高い増幅がT抗原の存在に起因することを理解する。
【0037】
なお別の実施形態において、293TT細胞(これは、自己増殖に必要なT抗原を発現する)は、pcDNA-GFP構築物およびCTC-UniProの両方とともにインキュベートされ得る。例示に過ぎないが、図3Bは、pcDNA-GPFおよび293TT細胞を有するウェルにおけるGFP発現の増大を示し、これはCTC-UniProおよび293TT細胞が代わりに使用される図3Cに認められるものに類似する。繰り返しになるが、当業者は、293TT細胞におけるpcDNA-GFP構築物によるGFPの増強された検出が、自己増幅を引き起こすT抗原の付加に起因することを理解する。
【0038】
なお別の実施形態において、蛍光イルミネーターは、293TT細胞の添加ありでも添加なしでも、CTC-UniProおよびpcDNA-GFP構築物によるGFP発現を定量するために使用され得る(各インキュベーションに関して三連のウェル)。図4は、CTC-UniProがCTCに進入後におよそ80倍自己増幅し得ること(つまり、検出感度の顕著な増強)を図示する。T抗原から生じる増幅の増大は、T抗原が自己増幅に必要であること、およびT抗原の発現を操作することによって自己増幅がさらに改善され得ることを含むことも明らかに示す。
【0039】
CTC-UniPro - 広い範囲の腫瘍細胞の検出
【0040】
一実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、広い範囲の腫瘍細胞を検出し得る。例示に過ぎないが、CTC-UniProが希なCTCを検出する能力を決定するために、500万個のヒトPBMCを種々の数の腫瘍細胞と混合し得、CTC-UniProとともにインキュベートし得る。図5に示されるように、CTCは、PBMC中のCTCの濃度が1:5,000,000程度の低さである場合ですら、CTC-UniProによって検出され得る。
【0041】
一実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、CTCを極めて高感度で定量的に検出し得る。例示に過ぎないが、CTC-UniProが希なCTCを検出する能力を決定するために、500万個のヒトPBMCを、種々の数の腫瘍細胞と混合し得、CTC-UniProとともにインキュベートし得る。図7に示されるように、CTCは、PBMC中のCTCの濃度が1:5,000,000程度の低さである場合ですら、CTC-UniProによって定量的に検出され得る。
【0042】
別の実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、種々の組織起源の悪性腫瘍細胞に由来するCTCを検出し得る。例示に過ぎないが、PBMCを48タイプを超える腫瘍細胞と混合し得、その混合物中のそれらの全てをCTC-UniProで容易に検出し得る。例示に過ぎないが、図3Aは、pcDNA-GFPではなくCTC-UniProが、3種の異なる器官組織起源の腫瘍細胞(肺に由来するH1944およびH358、肝臓に由来するHuh-7、および前立腺に由来するPC-3)を容易に検出し得ることを示す。従って、CTC-UniProは、多くの異なる組織に由来するCTC(表1に列挙されるとおり)を検出するにあたってユニバーサルな能力を有する。
【0043】
CTC-UniPro - 他のウイルスベースの検出方法との比較
【0044】
一実施形態において、本明細書で記載されるCTC-UniProは、他の検出器より高感度で血流中のCTCを検出し得る。例えば、CTC-UniProは、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)によるCTCの検出と比較される。HSVは、CTCを検出し得るが、正常血球(例えば、リンパ球、単球、および樹状細胞)にも感染し得、特異性の問題をもたらす16~20。Baco-1(HSV-1に由来する)およびFusOn-H2(HSV-2に由来する)は、GFP遺伝子を含む21,22。ヒトPBMCは、Baco-1、FusOn-H2、またはCTC-UniProのいずれかとインキュベートされ得る。図6は、インキュベーション後24時間程度の期間での腫瘍溶解性HSVを含むウェルにおけるGFP検出、および72時間のインキュベーション後のGFP検出の顕著な増大を図示する。比較において、CTC-UniProを含むウェルでは、72時間後にGFP陽性細胞は検出されなかった。腫瘍溶解性HSVをCTCの検出に使用した場合、それらは顕著な偽陽性診断を生じると思われる。さらに、HSVは、その細胞溶解性の性質に起因して短い時間量でCTCを破壊し得、CTCの不正確な定量を引き起こし、CTCのその後の採取の可能性を排除する。
【0045】
CTC-UniProは、HPV-16が上皮細胞にのみ感染する能力23に起因してCTCに対して極めて高い特異性を有する。これは、臨床状況において、がん患者から血液が採血され、そこからPBMCが単離されるからである。PBMCは上皮起源ではないので、それらはCTC-UniProが検出(すなわち、感染)できない(例えば、図3Aに示されるとおり)。CTC-UniProによって検出され得る唯一の細胞は、PBMCに含まれるCTCのみである。
【0046】
一実施形態において、がん患者の血液が集められる。血液からPBMCは分離され、そのPBMCは、本明細書で記載されるCTC-Uniproによる検出の前に種々の比で腫瘍細胞と混合される。次いで、CTCは、CTC-Uniproを使用して検出され得る。そのCTC-Uniproは、例えば、緑色としてCTCを示すことによって、それらを同定し得る(例えば、図5)。
【実施例
【0047】
細胞株およびCTC-UniProの構築のためのウイルス
293TT細胞株を、国立がん研究所から得た。肺がん細胞株A549、H1944、5838およびH358、ならびにアフリカミドリザル腎臓(Vero)細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville,MD)から得た。293TT細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS,Mediatech,Manassas,VA)、100ユニット/mL ペニシリン、および100μg/mL ストレプトマイシン、1% 非必須アミノ酸、および1% Glutamax(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を補充したDMEM(GE Healthcare Life Sciences HyClone Laboratories South Logan,Utah)中で培養した。他の細胞を、10% FBSを含むDMEM中で培養した。全ての細胞を、5% COを有する加湿雰囲気中、37℃でインキュベートした。I型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)ベースの腫瘍溶解性ウイルスBaco-1およびHSV-2ベースのFusOn-H2を、University of Houston Department of Biology and Biochemistry Laboratoryにおいて最初から構築した。両方のウイルスはGFP遺伝子を含むので、それらの感染は、緑色の蛍光細胞またはプラークの出現によって容易に同定可能であり得る。それらを増幅させ、本明細書で記載されるようにVero細胞で力価測定した。GFPの代わりにLuc遺伝子は、より正確な定量的測定を可能にし得る。タグ(例えば、HAタグ)を含む膜タンパク質は、磁性ビーズにコンジュゲートした抗HA抗体の使用を通じて、CTCのその後の容易な採取を可能にし得る。
【0048】
CTC-UniProおよびコントロールベクターの調製および精製
構築ストラテジーの詳細は、図1A図1Cに図示される。CTC-UniProは、2つの重要な構成要素を含む:特定のCTC診断プローブ(pSV-GFP)(図1A)、およびプローブがCTCに進入しその後の増幅および検出を可能にするパッケージングシステム(pHPV1,2)(図1B)。図1Aに示されるように、そのpSV-GFPを、野生型(wt)SV40ゲノムに基づいていくつかの改変とともにデザインした。最初に、そのSV40ゲノムに沿ってヌクレオチド(nt)371~2532のVP1~3キャプシド遺伝子全体を欠失させ、GFP遺伝子で置き換えた。その欠失させた領域は天然のポリAシグナルを含むことから、合成ポリAをそのGFP遺伝子の最後に挿入し戻した。GFP発現を増強するために、3種の改変をSV40後期プロモーター領域に対して行った。第1に、72塩基対反復のさらなる4コピーを天然の21塩基対反復および2×72塩基対反復の下流に付加して、その後期プロモーターを強化した。第2に、以下を含む一連の変異をその後期プロモーターに導入した:ヌクレオチド298、299、304においてCからTへ、およびヌクレオチド322においてGからCへ、ならびにヌクレオチド335においてAからCへ。そのパッケージング構築物であるpHPVL1,2を、ヒトパピローマウイルス(HPV)16の配列に基づいて、L1およびL2遺伝子の両方を合成することによって構築した。これら2種の遺伝子は、2A配列によって分離される。
【0049】
上述の改変を、ヒト細胞発現のためのコドン最適化を伴うDNA合成を通じて行い、その合成を、GenScript(Piscataway,NJ)によって行った。そのコントロールベクターは、pcDNA-GFPに由来した(図1C)。そのコントロールベクターは、SV40 Ori-P配列のコピーならびにGFPカセット(そのマーカー遺伝子はCMVプロモーターによって駆動された)を含んだ。CTC-UniProおよびそのコントロールベクターの生成のために、293TT細胞をトランスフェクションの16時間前に10cmディッシュにプレーティングした。プラスミドpHPVL1,2をpSV-GFPまたはpCDNA-GFPのいずれかと混合し、次いで、その混合物を、Lipofectamine 2000(Thermo Fisher)を使用して293TT細胞へと共トランスフェクトした。これらの共トランスフェクションにより、pHAV1,2から発現したL1およびL2はウイルス様粒子(VLP)を形成し、次いで、これは、そのプローブ(pSV-GFP)またはそのコントロールベクター(pcDNA-GFP)をパッケージし得る。そのトランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの48時間後または72時間後に採取した。細胞ペレットをPBSで1回洗浄し、その後、それらを懸濁し、溶解緩衝液:9.5mM MgCl(Sigma,St.Louis,MO)、0.5% Triton(登録商標) 100(Thermo Fisher)、および0.1% Benzonase(Sigma)および25mM NHSO(pH9)を補充したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で溶解して、そのプローブを放出させた。その溶解物を37℃において24時間インキュベートしてVLPを成熟させ、その後、5M NaClを添加して最終濃度850mMにした。その溶解物を氷上で短時間冷却し、その後、それらを5,000gにおいて5分間4℃で遠心分離した。その清澄化したプローブを、GE Capto Core 700およびDP-10カラム(GE Healthcare Bio-Sciences,Pittsburgh,PA)で製造業者のプロトコールに従ってさらに精製した。その精製したプローブについて、小さいアリコートを293TT細胞とともに48時間インキュベートすることによって定量した。GFP陽性細胞を蛍光顕微鏡(Nikon Instruments Inc.Melville,NY)によって確認し、フローサイトメトリー(BD Biosciences,San Jose,CA)によって定量した。
【0050】
ヒトPBMC調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、Gulf Coast Regional Blood Center(Houston,TX)から得られるバッフィーコートから調製した。そのバッフィーコートを等量のPBSと混合し、その後、それらをLymphoprep(STEMCELL Technologies,Vancouver,BC,Canada)に載せ、ブレーキを外して室温において800gで30分間の遠心分離を行った。PBMCを血漿:Lymphoprep境界面にある層から集め、2% FBS-PBSで2回洗浄した。その細胞ペレットを赤血球溶解緩衝液(Sigma)で処理して赤血球を除去し、再び2% FBS-PBSで2回洗浄した。その精製したPBMCを実験のために直接使用した。
【0051】
プローブによる腫瘍細胞検出
CTC-UniProが腫瘍細胞の中で増幅する能力を試験するために、種々の組織起源の1~2×10 腫瘍細胞を、12ウェルプレートまたは24ウェルプレートで一晩プレーティングした。次いで、2感染単位(IU)/細胞のCTC-UniProまたはコントロールベクターのいずれかとともに、各個々の実験に依存して24~96時間にわたって、細胞をインキュベートした。次いで、細胞を蛍光顕微鏡下で分析した。臨床診断の状況を模倣するために、10個または100個のがん細胞を、12ウェルプレートにおいてRPMI1640 + 10% FBS中で2×10 PBMCと混合した。その混合した細胞またはPBMC単独を、1×10 IUのCTC-UniProとともに37℃で72時間インキュベートした。腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがPBMCに感染する能力を試験するために、細胞を、Baco-1またはFusOn-H2のいずれかに1pfuで72時間にわたって感染させた。
【0052】
GFP定量
がん細胞におけるプローブ強度を定量的に測定するために、記載の細胞を、2IUのCTC-UniProまたはそのコントロールベクターのいずれかとともにインキュベートした。その細胞を72時間後に採取した。GFPの定量的測定を、GFP Quantification Kit(BioVision,Milpitas,CA)で行った。簡潔には、その採取した細胞をアッセイ緩衝液で10分間溶解した。その上清を遠心分離によって清澄化し、その後、それらを96ウェルプレートへと移した。そのサンプルを蛍光マイクロプレートリーダー(VictorTM X4,PerkinElmer,Akron,OH)で定量した。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
循環腫瘍細胞(CTC)を検出するためのプローブであって、
ヒトまたはウシまたは他のパピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成されるキャプシドへとパッケージされた、マーカー遺伝子を含む改変SV40ウイルスを含む、プローブ。
(項目2)
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、項目1に記載のプローブ。
(項目3)
前記ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)は、配列番号10のものである、項目2に記載のプローブ。
(項目4)
前記マーカー遺伝子は、前記改変SV40ウイルスの中でSV40ウイルス後期プロモーターの下流に挿入されている、項目1に記載のプローブ。
(項目5)
前記SV40ウイルス後期プロモーターは、内因性開始コドンを排除することによって改変されている、項目1に記載のプローブ。
(項目6)
前記SV40ウイルスは、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されている、項目1に記載のプローブ。
(項目7)
前記SV40ウイルスは、以下のうちの1または複数:ヌクレオチド298をシトシン(C)からチミン(T)へと置換すること、ヌクレオチド299をシトシンからチミンへと置換すること、ヌクレオチド304をシトシンからチミンへと置換すること、およびヌクレオチド322をグアニン(G)からCへと置換すること、によって改変されている、項目1に記載のプローブ。
(項目8)
循環腫瘍細胞(CTC)を検出し得るプローブをアセンブリするためのプロセスであって、
パピローマウイルスL1およびL2遺伝子と改変SV40構築物とを哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることを包含するか、またはパピローマウイルスL1およびL2遺伝子を哺乳動物細胞へと共トランスフェクトすることから形成されるキャプシドへの改変SV40構築物のインビトロアセンブリを包含する、プロセス。
(項目9)
前記共トランスフェクトすることは、pSV-GFPおよびpHPVL1,2を293TT細胞へと共トランスフェクトすることを包含する、項目8に記載のプロセス。
(項目10)
前記哺乳動物細胞は、293TT細胞である、項目8に記載のプロセス。
(項目11)
前記プローブは、マーカー遺伝子を含む、項目8に記載のプロセス。
(項目12)
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、項目11に記載のプロセス。
(項目13)
前記ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)は、配列番号10のものである、項目11に記載のプロセス。
(項目14)
SV40ウイルス後期プロモーターは、内因性開始コドンを排除することによって改変されている、項目8に記載のプロセス。
(項目15)
SV40ウイルスは、4個の72縦列反復エンハンサー配列を挿入することによって改変されている、項目8に記載のプロセス。
(項目16)
前記SV40は、以下のうちの1または複数:ヌクレオチド298をシトシン(C)からチミン(T)へと置換すること、ヌクレオチド299をシトシンからチミンへと置換すること、ヌクレオチド304をシトシンからチミンへと置換すること、およびヌクレオチド322をグアニン(G)からCへと置換すること、によって改変されている、項目8に記載のプロセス。
(項目17)
患者において循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための方法であって、
患者から血液を集める工程;
前記血液から有核細胞を単離する工程;
前記血液から単離した有核細胞、およびCTCを検出するためのプローブを含む混合物を調製する工程であって、ここで前記プローブは、パピローマウイルスのL1およびL2キャプシドタンパク質から形成される改変キャプシドを有し、マーカー遺伝子を含む改変SV40ウイルスを含む、工程;ならびに
前記混合物中のCTCを検出する工程、
を包含する、方法。
(項目18)
前記有核細胞は、PBMCまたはCTCを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、およびタグを含む膜タンパク質からなる群より選択される、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記SV40ウイルスは、(i)SV40の内因性開始コドンを排除する、(ii)4個の72縦列反復エンハンサー配列をSV40に挿入する、および(iii)SV40においてヌクレオチド298をシトシン(C)からチミン(T)へと置換する、(iv)SV40においてヌクレオチド299をシトシンからチミンへと置換する、(v)SV40においてヌクレオチド304をシトシンからチミンへと置換する、および(vi)SV40においてヌクレオチド322をグアニン(G)からCへと置換する、
のうちの1または複数によって改変されている、項目17に記載の方法。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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