(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】灯具システムおよび車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/50 20060101AFI20230530BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230530BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20230530BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20230530BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20230530BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20230530BHJP
B60Q 1/24 20060101ALN20230530BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20230530BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230530BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230530BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20230530BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
F21V7/00 590
F21V9/40 400
F21V14/04
B60Q1/26 Z
B60Q1/00 G
B60Q1/24 B
F21Y105:10
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W102:20
(21)【出願番号】P 2020549268
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037497
(87)【国際公開番号】W WO2020067113
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018179033
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018182198
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185195
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185196
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185197
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173060
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 範彦
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030515(JP,A)
【文献】特開2016-049891(JP,A)
【文献】特開2016-142888(JP,A)
【文献】特開2010-211404(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136374(WO,A1)
【文献】特開2015-164828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
F21V 7/00
F21V 9/40
F21V 14/04
B60Q 1/26
B60Q 1/00
B60Q 1/24
F21Y 105/10
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度分布が可変であるビームを路面に照射する配光可変ランプと、
前記配光可変ランプを制御し、所定のイベントの開始とともに前記路面に前記イベントに対応するパターンを描画し、前記イベントの終了とともに前記パターンを消灯するコントローラと、
を備え、
前記所定のイベントは
先行車の追い越しであり、自車が追い越し車線を走行しており、前記先行車が走行車線の前記自車より前を走行している状況において、前記自車が前記先行車を追い越すものであり、
前記配光可変ランプは、
前記先行車と前記自車の距離が所定の距離まで縮まると、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、進行方向が長手である所定第1範囲にわたる第1パターンを描画
し、前記自車が前記先行車を追い越すと、前記第1パターンを消灯することを特徴とす
る灯具システム。
【請求項2】
前記第1範囲は、前記先行車の前縁より前に伸びていることを特徴とする請求項
1に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記所定のイベントは車線変更であり、
前記配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、先端が隣の車線内まで伸びている第2パターンを描画することを特徴とする請求項1
または2に記載の灯具システム。
【請求項4】
前記所定のイベントは交差点への進入であり、
前記配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、先端が交差点内まで伸びている第3パターンを描画することを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項5】
前記所定のイベントは渋滞時の合流であり、
前記配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、先端が合流先の路線内まで伸びている第4パターンを描画することを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項6】
前記所定のイベントは車線逸脱であり、
前記配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、車幅を示す2本のラインの少なくとも一方を含む第5パターンを描画することを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項7】
前記所定のイベントは先行車との接近であり、
前記配光可変ランプは、前記先行車と自車の間の路面にロービームより明るい照度で第6パターンを描画することを特徴とする請求項1から
6のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項8】
前記所定のイベントは、最低法定速度からの逸脱であり、
前記配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、加速を促す第7パターンを描画することを特徴とする請求項1から
7のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項9】
強度分布が可変であるビームを路面に照射する配光可変ランプを備え、
自車が追い越し車線を走行しており、先行車が走行車線の前記自車より前を走行している状況において、前記自車が前記先行車を追い越す際に、前記配光可変ランプは、前記先行車と前記自車の距離が所定の距離まで縮まると、車両前方の路面にロービームより明るい照度で、進行方向が長手である所定第1範囲にわたる第1パターンを描画し、前記自車が前記先行車を追い越すと、前記第1パターンを消灯することを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間やトンネル内での安全な走行に車両用灯具が重要な役割を果たす。近年、車両の周囲の状態にもとづいて、配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)ランプの採用が進められている。ADBランプは、前方車や歩行者の有無を検出し、前方車あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、前方車の運転者や歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0003】
また空間的な分解能が高いADB光源を用いて、運転支援のための図形や文字等を路面に描画する技術が提案されている。路面は通常のヘッドランプによっても同時照射されているため、運転者やその他の交通参加者が、路面に描画された図形や文字を視認するためには、十分なコントラスト比を得る必要があり、したがって高輝度な路面描画用の光源が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-030527号公報
【文献】特開2017-037806号公報
【文献】特開2016-055691号公報
【文献】特開2014-144725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1) 本発明のある態様はこうした状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、交通安全に寄与する灯具の提供にある。
【0006】
(2) 歩行者との衝突事故、接触事故を防止するためには、運転者が歩行者にいち早く気づくとともに、歩行者も車両に気づき、双方が回避行動を取ることが重要である。
【0007】
本発明のある態様はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、交通安全に寄与する車両用灯具の提供にある。
【0008】
(3) 車両用の灯具の高機能化が進んでおり、その一例として、路面に光ビームのパターンを照射し、図形や文字を描画するランプが提案されている。
【0009】
路面は通常のヘッドランプによっても同時照射されているため、運転者やその他の交通参加者が、路面に描画された図形や文字を視認するためには、十分なコントラスト比を得る必要があり、したがって高輝度な路面描画用の光源が必要となる。
【0010】
路面描画には、高分解能な描画が可能な光源としてDMD(Digital Micromirror Device)やμLED(発光ダイオード)などが採用しうるが、それら単独で十分な輝度を得ることが難しい場合がある。
【0011】
本発明者は、車両の左右に光源を配置し、それらが生成するビームを重ね合わせることにより、路面に図形や文字を描画することを検討し、以下の問題を認識するに至った。
図24、
図25を参照してこの問題を説明する。
【0012】
図24(a)、(b)は、スクリーンである路面900に、理想的な状態で左右の光源902,904からビームBMl,BMrが照射される様子を示す図である。
図24(a)はスクリーンである路面900を横から見た図であり、
図24(b)は路面900を上から見た図である。以下の説明では、「図形」といった場合、文字を含む。
【0013】
理想的な状態では、左ビームBMlが描画する図形906と右ビームが描画する図形908は、路面900上で完全に重なるため、運転者や交通参加者に対して、シャープな図形を提示できる。
【0014】
しかしながら実際の走行中に理想状態となることは希であり、現実的にはピッチングにより左右のビームの照射角が変動したり、路面に傾斜があったりすると、理想状態から逸脱する。
図25(a)、(b)は、現実的な状態で路面に左右のビームが照射される様子を示す図である。現実的な状態では、スクリーンである路面900’は、理想的な状態から傾く。その結果、左ビームBMlが描画する図形906’と右ビームが描画する図形908’はスクリーン上で位置ズレを起こし、図形の輪郭が2重となり、にじみが生ずる。輪郭のにじみは、運転者や交通参加者に対する視認性を著しく低下させる。
【0015】
本発明のある態様はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、路面に描画される図形の視認性の改善にある。
【0016】
(4) 自動車の付加価値の向上のために、カーテシーランプが搭載される車両が増えている。カーテシーランプは、ドアが開いたときに、搭乗者の足下を照らすことにより、搭乗者の乗り降りを支援し、また後続車にドアが開いていることを知らせる役割がある。
【0017】
本発明のある態様はこうした状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、自動車の付加価値を高めることができる灯具システムの提供にある。
【0018】
(5) 歩行者や自転車の運転者などの交通参加者は、正面から接近する自動車には、ヘッドランプを手がかりに素早く気づくことができる。ところが、後方から接近する自動車には、ヘッドランプが点灯していたとしても気がつきにくい。
【0019】
本発明のある態様はこうした状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、車両前方の交通参加者に対して、後方車両の接近を知らせることが可能な灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1) 本発明のある態様は、強度分布が可変であるビームを路面に照射する配光可変ランプと、配光可変ランプを制御し、所定のイベントの開始とともに路面に、当該イベントに対応したパターンを描画し、イベントの終了とともにパターンを消灯するコントローラと、を備える。
【0021】
路面描画をイベント駆動とし、イベント毎にパターンを規定しておくことにより、運転者を煩わせることなく周囲の交通参加者に、自車の存在や運転者の意思を、適切な態様、適切なタイミングで伝達できる。
【0022】
所定のイベントは、先行車の追い越しであり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、進行方向が長手である所定第1範囲にわたる第1パターンを描画してもよい。これにより、先行車に自車の追い越しを知らせることができる。
【0023】
第1範囲は、先行車の前縁より前に伸びていてもよい。これにより先行車の運転者の死角とならない範囲に第1パターンが照射されるため、より確実に追い越しを知らせることができる。
【0024】
所定のイベントは車線変更であり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、先端が隣の車線内まで伸びている第2パターンを描画してもよい。これにより、隣の車線の後続車に、車線変更の意思を通知できる。
【0025】
所定のイベントは交差点への進入であり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、先端が交差点内まで伸びている第3パターンを描画してもよい。これにより、交差点内の車両に、交差点への進入の意思を通知できる。
【0026】
所定のイベントは渋滞時の合流であり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、先端が合流先の路線内まで伸びている第4パターンを描画してもよい。これにより、合流先の路線内の車両に、合流の意思を通知できる。
【0027】
所定のイベントは車線逸脱であり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、車幅(左縁および右縁)を示す2本のラインの少なくとも一方を含む第5パターンを描画してもよい。これにより、自車の運転者に警告を与えることができる。
【0028】
所定のイベントは先行車との接近であり、配光可変ランプは、先行車と自車の間の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で第6パターンを描画してもよい。これにより、自車の運転者に警告を与えることができる。
【0029】
所定のイベントは、最低法定速度からの逸脱であり、配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、加速を促す第7パターンを描画してもよい。これにより、自車の運転者に警告を与えることができる。
【0030】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、強度分布が可変であるビームを路面に照射する配光可変ランプを備える。配光可変ランプは、先行車を追い越す際に、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、進行方向が長手である所定範囲にわたるパターンを描画する。
【0031】
(2) 本発明のある態様は、灯具システムに関する。灯具システムは、強度分布が可変であるビームを生成可能な配光可変ランプと、配光可変ランプを制御する配光コントローラと、を備える。配光コントローラは、歩行者が検出されると、歩行者の顔に照射されるビームの一部分の強度を一時的に変化させる。
【0032】
これにより、歩行者のみにパッシングするのと同じ効果が得られるため、歩行者に車両の存在を気づかせることができ、ひいては回避行動を促すことができる。また自車の運転者に対しても、局所的な自車前方の一部分が点滅するため、注意を引くことになり、歩行者の存在を気づかせることができる。
【0033】
歩行者の検出方法は特に限定されず、カメラ、LiDARやステレオカメラ、ToFカメラなどの出力にもとづいて検出してもよい。
【0034】
歩行者が検出されると、配光コントローラはさらに、路面に所定のパターンを描画してもよい。歩行者が地面を見て歩行している場合に、路面に描画されたパターンを見ることで、車両の存在を気づかせることができる。
【0035】
パターンは、灯具システムを搭載する車両から歩行者あるいは前記歩行者の足下に向かって伸びてもよい。これにより、歩行者は、自分に対する報知・警告であることを認識しやすくなる。また、自車の運転者には、歩行者の方向を知らせることができる。
【0036】
路面への描画は、所定の条件を満たすときに有効となってもよい。所定の条件は、車速をパラメータとして規定されてもよい。所定の条件は、歩行者との距離をパラメータとして規定されてもよい。
【0037】
複数の歩行者が検出されたとき、最も危険と判定される所定人数の歩行者を照射対象としてもよい。複数の歩行者すべてに対して、顔部分を照射したり、路面にパターンを描画すると、却って運転者を混乱させるおそれがある。そこで照射対象の人数を限定することにより、安全性を高めることができる。
【0038】
(3) 本発明のある態様の灯具システムは、車両の左前方に設けられ、強度分布が可変である第1ビームを路面に照射して第1パターンを描画する第1配光可変ランプと、車両の右前方に設けられ、強度分布が可変である第2ビームを路面に照射して第2パターンを描画する第2配光可変ランプと、を備える。第1パターンおよび第2パターンは、路面上で互いに重ね合わさる第1図形および第2図形を含んでおり、基準状態で路面に描画される第1図形と第2図形には、意図的な差異が導入されている。
【0039】
予め意図的な差異を導入しておくことにより、第1図形と第2図形がずれて路面に投影された場合に、位置ズレに起因する輪郭のにじみを目立たなくすることができ、視認性の低下を防止できる。
【0040】
第1図形と第2図形の一方は、他方に対してインセット(アウトセット)していてもよい。
【0041】
第1図形と第2図形のインセット量あるいはオフセット量は、左右方向よりも前後方向の方が大きくてもよい。
【0042】
第1図形と第2図形は、明るさが異なっていてもよい。
【0043】
また第1ビームと第2ビームの強度が異なっていてもよい。
【0044】
(4) 本発明のある態様は灯具システムに関する。灯具システムは、強度分布が可変であるビームを路面に照射可能な配光可変ランプと、灯具システムを搭載する車両の走行時において配光可変ランプを制御し、ビームによって路面に運転の支援のための図形を描画する配光コントローラと、を備える。配光コントローラは、車両の駐車中に、所定の条件を満たす人物が当該車両に近接すると、ビームによって地面に所定のパターンを描画する。
【0045】
(5) 本発明のある態様は車両用灯具に関する。車両用灯具は、強度分布が可変であるビームを路面に照射する配光可変ランプを備える。配光可変ランプは、車両前方の路面にロービームより明るい照度または暗い照度で、進行方向が長手である所定範囲にわたるパターンを描画する。
【0046】
この態様によると、自動車が交通参加者を追い越すのに先行して、路面に所定範囲を占めるように描画されたパターンが交通参加者の横を通過する。このパターンはロービームより明るいため、車両前方の交通参加者に、自動車の後方接近を知らせることができる。
【0047】
パターンは、進行方向に並べられた複数の図形を含んでもよい。複数の図形を進行方向に並べることで、車両が走行するときに、複数の図形が次々と交通参加者の横を通り過ぎていくこととなり、交通参加者の周囲の路面は、明、暗、明、暗…と交互に照らされるため、均一なパターンを照射する場合に比べてより注意喚起できる。
【0048】
パターンは、複数の図形が同じ速度で車両から遠ざかる方向にスライドするアニメーションであってもよい。これにより、交通参加者に、後方から自動車が接近していることを直感的に提示することができる。
【0049】
複数の図形の車両に対する相対速度は、10km/h~165km/hであってもよい。
【0050】
複数の図形の移動速度は、車両前方の交通参加者との距離に応じて変化してもよい。これにより交通参加者は、アニメーションの速度にもとづいて、車両までの距離を知ることができる。また距離が短いほどアニメーションの速度を高めることで、適切な行動対処をより強く促すことができる。
【0051】
パターンは、車速が所定値以下のときに描画されてもよい。たとえば所定値は時速20km/h~40km/hの範囲で定めてもよい。
【0052】
パターンは、車両が通行する道の幅が所定幅より狭いときに描画されてもよい。たとえば所定幅は4mである。
【0053】
パターンは、車両が通行する道の幅が所定幅より狭いことを条件として描画されてもよい。たとえば所定幅は4mである。あるいはパターンは、車両が通行する道にガードレールが設置されていないことを条件として描画されてもよい。あるいはパターンは、対向車とすれ違うときに描画されてもよい。
【0054】
複数の図形の横幅は、車両と実質的に同一かそれより広くてもよい。
【0055】
パターンは、車幅を示す2本のラインを含み、2本のラインの長さが時間とともに進行方向に向かって伸びてもよい。
【0056】
パターンは、車幅を示す2本のラインと、2本のラインの一方と隣接して配置され、時間とともに進行方向に向かって伸びる、または時間とともに進行方向に向かって移動するアニメーション図形と、を含んでもよい。
【0057】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0058】
1. 本発明のある態様によれば、周囲の交通参加者に、自車の存在や運転者の意思を、適切な態様、適切なタイミングで伝達できる。
【0059】
2. 本発明のある態様によれば、交通安全に寄与する灯具システムを提供できる。
【0060】
3. 本発明のある態様によれば、路面に描画される図形の視認性を改善できる。
【0061】
4. 本発明のある態様によれば、自動車の付加価値を高めることができる。
【0062】
5. 本発明のある態様によれば、車両前方の交通参加者に自動車の後方接近を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】実施の形態1に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)のブロック図である。
【
図2】配光可変ランプが路面に描画するパターンの一例を示す図である。
【
図3】実施例1に係る第1パターンを示す図である。
【
図4】
図4(a)~(d)は、第1パターンの描画を説明する図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、実施例2に係る第2パターンの描画を説明する図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、実施例3に係る第3パターンの描画を説明する図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、実施例4に係る第4パターンの描画を説明する図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、実施例5に係る第5パターンの描画を説明する図である。
【
図9】
図9(a)~(d)は、実施例6に係る第6パターンの描画を説明する図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、実施例7に係る第7パターンの描画を説明する図である。
【
図11】悪天候時のパターンの照射を説明する図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、灯具システムの実装例を示す図である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
【
図14】
図14(a)~(f)は、パターンの変形例を示す図である。
【
図15】
図15(a)~(d)は、パターンのアニメーション表示を説明する図である。
【
図16】実施の形態2に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)のブロック図である。
【
図17】
図16の灯具システムによるパーソナルパッシングを説明する図である。
【
図18】
図16の灯具システムによる路面描画を説明する図である。
【
図20】別の走行シーンにおけるパーソナルパッシングを説明する図である。
【
図21】別の走行シーンにおけるパーソナルパッシングを説明する図である。
【
図22】
図22(a)、(b)は、灯具システムの実装例を示す図である。
【
図23】
図23(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
【
図24】
図24(a)、(b)は、スクリーンである路面に、理想的な状態で左右の光源からビームが照射される様子を示す図である。
【
図25】
図25(a)、(b)は、現実的な状態で路面に左右のビームが照射される様子を示す図である。
【
図26】実施の形態3-1に係る灯具システムのブロック図である。
【
図27】運転席から見た視野の一例を示す図である。
【
図28】
図28(a)、(b)は、灯具システムによる基準状態におけるパターンの描画を説明する図である。
【
図29】
図29(a)、(b)は、灯具システムによる現実状態におけるパターンの描画を説明する図である。
【
図30】
図30(a)、(b)は、複数の図形を含むパターンを説明する図である。
【
図31】
図31(a)、(b)は、実施の形態3-2に係る基準状態におけるパターンの描画を説明する図である。
【
図32】
図32(a)、(b)は、実施の形態3-2に係る現実状態におけるパターンの描画を説明する図である。
【
図33】
図33(a)、(b)は、灯具システムの実装例を示す図である。
【
図34】
図34(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
【
図35】実施の形態4に係る灯具システムのブロック図である。
【
図38】
図38(a)、(b)は、灯具システムの実装例を示す図である。
【
図39】
図39(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
【
図40】実施の形態5に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)のブロック図である。
【
図41】配光可変ランプが路面に描画するパターンPTNの一例PTN_Aを示す図である。
【
図42】灯具システムが路面に描画するパターンPTN_Bを示す図である。
【
図43】パターンPTN_Bの一例を上から示す図である。
【
図44】
図44(a)、(b)は、灯具システムの実装例を示す図である。
【
図45】
図45(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
【
図46】
図46(a)~(c)は、変形例に係るパターンPTN_Bを示す図である。
【
図47】変形例に係るパターンPTN_Cを示す図である。
【
図48】
図48(a)~(c)は、変形例に係るパターンPTN_Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0065】
(第1の態様)
図1は、実施の形態1に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ110、カメラ120、配光コントローラ130、ロービーム102、ハイビーム104を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0066】
本実施の形態において、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0067】
配光可変ランプ110は白色光源を含み、配光コントローラ130から路面900に描画すべきパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布902を有するビームBMを路面に車両前方の路面に900照射に照射し、パターンPTNを描画する。パターンPTNは、ビームBMの照射エリア904内に形成される。
【0068】
配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービームの照射エリアの一部とオーバーラップしてもよい。
【0069】
カメラ120は、車両前方を撮像する。配光コントローラ130は、カメラ120が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110が路面900に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。
【0070】
ハイビーム104は、配光可変ランプ110と同様に、配光可変であってもよい。この場合、配光コントローラ130は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム104の配光を制御してもよい。ECU(Electronic Control Unit)140は、灯具システム100を統括的に制御する。具体的には、ロービーム102、ハイビーム104、配光可変ランプ110のオン、オフなどの指令を発生する。また配光制御に必要な情報を配光コントローラ130に送信する。
【0071】
配光コントローラ130はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0072】
より詳しくは、配光コントローラ130は、灯具システム100を搭載する車両の走行時に、配光可変ランプ110を制御し、ビームBMによって路面に運転の支援のための図形を描画する。図形の種類は特に限定されないが、たとえば、法定速度、道路標識などを、運転者が見やすいように描画してもよい。あるいは、他の車両の運転を支援するために、自車の進行方向を示す図形を描画してもよい。
【0073】
図2は、配光可変ランプ110が路面900に描画するパターンPTNの一例(PTN_A)を示す図である。パターンPTNの種類や形態は、走行シーンに応じてさまざまである。
図2は走行中の1シーンを示しており、路面900に描画されるパターンPTN_Aは、制限速度を示す図形(文字)であってもよい。あるいはパターンPTNはカーナビゲーションシステムと連動した情報を示す図形や文字であってもよい。パターンPTNは、灯具システム100を搭載する車両(自車ともいう)906の運転者908が見やすい位置に、適切な大きさで描画される。
【0074】
配光コントローラ130は、配光可変ランプ110を制御し、所定のイベントEVT_#(#はイベントを区別する文字であり、たとえば#=1,2,…のように表記する)の開始とともに路面900にイベントEVT_#に対応するパターンPTN_#を描画し、イベントEVT_#の終了とともにパターンPTN_#を消灯する。
【0075】
各イベントEVTの発生および終了の検出・判定は、配光コントローラ130が行ってもよいし、ECU140が行ってもよい。
【0076】
配光可変ランプ110による路面描画をイベント駆動とし、イベントEVT_#ごとにパターンPTN_#を規定しておくことにより、運転者を煩わせることなく周囲の交通参加者に、自車の存在や運転者の意思を、適切な態様、適切なタイミングで伝達できる。
【0077】
以下では、灯具システム100が描画可能なパターンのうち、実施の形態に係る灯具システム100に特徴的なパターンPTN_#(#=1,2…)を、いくつかの実施例をもとに説明する。
【0078】
(実施例1)
実施例1において所定のイベントEVT_1は、先行車の追い越しであり、追い越しイベントEVT_1が発生すると、路面に第1パターンPTN_1が描画される。
図3は、実施例1に係る第1パターン(追い越し通知パターン)PTN_1を示す図である。以下の説明において、進行方向左側が走行車線を、進行方向右側が追い越し車線である。
【0079】
追い越しイベントEVT_1の発生は、自車906と先行車907との距離および相対速度差などを考慮して判定することができる。たとえば、配光コントローラ130(あるいはECU140)は、距離が50m以下、相対速度差が20km/h以上の場合に、追い越しイベントEVT_1の発生と判定してもよい。
【0080】
追い越しイベントEVT_1の終了は、自車906と先行車907の距離にもとづいて判定してもよい。あるいはカメラの画像にもとづいて追い越しイベントEVT_1の終了と判定してもよく、たとえば先行車907がカメラの視野から外れたこと、あるいはカメラの画像の所定範囲から外れたことを、追い越しイベントEVT_1の終了の条件としてもよい。
【0081】
路面900には配光可変ランプ110に加えてロービームも照射されうる。配光可変ランプ110は、車両906の前方の路面900にロービームBMLより明るい照度または暗い照度で、進行方向(x軸方向)が長手である所定の第1範囲912_1(x1~x2、y1~y2)わたる第1パターンPTN_1を照射する。x軸の原点を車両の前縁にとるとき、x1=1m~15m、x2=30m~60mとしてもよい。一実施例においてx1=7m、x2=45mである。最も簡易には第1パターンPTN_1は均一な照射パターンであってもよいが、後述するようにその限りでない。
【0082】
第1パターンPTN_1の描画により、先行車907に自車906の追い越しを知らせることができる。これにより先行車907が自車906の存在に気づかずに、追い越し車線にレーン変更するのを抑制できる。
【0083】
第1範囲912_1は、先行車907の前縁より前に伸びていることが望ましい。これにより、路面の先行車907の運転者の死角とならない部分に第1パターンPTN_1が照射されるため、先行車907に、より確実に追い越しを知らせることができる。
【0084】
図4(a)~(d)は、第1パターンPTN_1の描画を説明する図である。
図4(a)~(d)には、追い越しシーンが時系列で示される。なお実際には車両906および先行車907は走行しているが、ここでは説明の簡潔化のため、先行車907を同じ位置に示す。
【0085】
図4(a)では、自車906の前方に、先行車907が存在している。
図4(b)二示すように、自車906と先行車907の距離がある程度まで縮まると、追い越しイベントEVT_1の発生と判定され、自車906の灯具システム100は、路面に第1パターンPTN_1を描画する。点灯のタイミング、すなわちイベントEVT_1の発生と判定するタイミングにおいて、第1パターンPTN_1は、先行車907の前縁より前に伸びていることが好ましい。たとえば第1パターンPTN1は、それぞれが車両前方に伸び、車幅方向に隣接する複数(たとえば2本)の矩形を含んでもよい。
【0086】
時間とともに自車906と先行車907の距離が縮まっていく。この状態は、追い越しイベントの最中であり、第1パターンPTN_1は描画されている。
【0087】
図4(d)で、自車906が先行車907を追い越すと、追い越しイベントEVT_1の終了と判定される。追い越しイベントEVT_1の終了判定とともに、第1パターンPTN_1は消灯する。
【0088】
(実施例2)
実施例2において所定のイベントEVT_2は、車線変更であり、車線変更イベントEVT_2が発生すると、路面に第2パターンPTN_2が描画される。
図5(a)~(c)は、実施例2に係る第2パターン(車線変更通知パターン)PTN_2の描画を説明する図である。
図5(a)~(c)には、車線変更のシーンが時系列で示される。
【0089】
図5(a)において車両906は、レーンL1を走行している。
図5(b)において、車線変更のイベントEVT_2の発生が検出されると、第2パターンPTN_2が描画される。第2パターンPTN_2も、ロービームより明るい照度で路面に照射され、第2パターンPTN_2は、その先端が隣の車線L2内まで伸びている。これにより、隣の車線L2の後続車907に、車線変更の意思を伝達できる。
【0090】
たとえば第2パターンPTN_2は、それぞれが車幅方向に伸びており、進行方向に並べられた複数の矩形を含んでもよい。
図5の例では、前方の矩形ほど、車幅方向の長さが長い。
【0091】
車線変更イベントEVT_2の発生は、方向指示器(ウィンカー)の操作にもとづいて検出してもよい。あるいは方向指示器の操作と、実際の操舵の組み合わせにもとづいて検出してもよい。
図5(c)に示すように、車線変更イベントEVT_2の終了と判定されると、第2パターンPTN_2が消灯する。
【0092】
(実施例3)
実施例3において、所定のイベントEVT_3は、交差点への進入であり、交差点進入イベントEVT_3が発生すると路面に第3パターンPTN_3が描画される。
図6(a)~(c)は、実施例3に係る第3パターン(交差点進入通知パターン)PTN_3の描画を説明する図である。
図6(a)~(c)には、交差点進入シーンが時系列で示される。この例ではT字路への進入を示す。
【0093】
図6(a)において車両906は、交差点CRに接近する。
図6(b)において、交差点への進入のイベントEVT_3の発生が検出されると、第3パターンPTN_3が描画される。第3パターンPTN_3も、ロービームより明るい照度で路面に照射される。第3パターンPTN_3は、その先端が交差点CR内まで伸びている。これにより、交差点内のほかの車両907に、進入の意思を伝達できる。
【0094】
交差点進入イベントEVT_3の発生は、カーナビゲーションシステムの情報にもとづいて判定してもよい。あるいは、カメラ画像にもとづいて判定してもよい。
図6(c)に示すように、交差点進入イベントEVT_3の終了と判定されると、第3パターンPTN_3が消灯する。イベントEVT_3の終了の判定は、たとえば実際の右折(左折)の開始を条件としてもよく、ステアリングを右(あるいは左)に切った状態で走行したことを、イベントEVT_3の終了の条件としてもよい。
【0095】
(実施例4)
実施例4において、所定のイベントEVT_4は渋滞時の合流であり、合流イベントEVT_4が発生すると路面に第4パターンPTN_4が描画される。
図7(a)~(c)は、実施例4に係る第4パターン(合流通知パターン)PTN_4の描画を説明する図である。
図7(a)~(c)には、渋滞時の合流シーンが時系列で示される。
【0096】
図7(a)において車両906は、合流地点に接近する。
図7(b)において、合流イベントEVT_4の発生が検出されると、第4パターンPTN_4が描画される。第4パターンPTN_4も、ロービームより明るい照度で路面に照射される。第4パターンPTN_4は、その先端が合流先の車線L3内まで伸びている。これにより、車線L3内のほかの車両907に、合流の意思を伝達できる。
【0097】
合流イベントEVT_4の発生は、カーナビゲーションシステムの情報にもとづいて判定してもよい。あるいは、カメラ画像にもとづいて判定してもよい。
図7(c)に示すように、合流が終了するとイベントEVT_4の終了と判定され、第4パターンPTN_4が消灯する。
【0098】
(実施例5)
実施例5において、所定のイベントEVT_5は車線逸脱であり、車線逸脱イベントEVT_5が発生すると路面に第5パターンPTN_5が描画される。
図8(a)~(c)は、実施例5に係る第5パターン(車線逸脱警告パターン)PTN_5の描画を説明する図である。
図8(a)~(c)には、車線逸脱シーンが時系列で示される。
【0099】
図8(a)において車両906は、車線L1を走行している。
図8(b)において、車線逸脱の予兆が検出されると、第5パターンPTN_5が描画される。車線逸脱の予兆は、方向指示器の操作が検出されないにもかかわらず、隣の車線に向かって自車906が移動していることを条件として検出してもよい。自車906の移動は、カメラ画像にもとづいて検出してもよい。
【0100】
第5パターンPTN_5も、ロービームより明るい照度で路面に照射される。第5パターンPTN_5は、自車906の車幅を示してもよく、点滅することが好ましい。これにより、自車906の運転者に警告を与えることができる。
【0101】
図8(c)に示すように、車線逸脱のおそれが無くなると、イベントEVT_5の終了と判定され、第5パターンPTN_5が消灯する。
【0102】
(実施例6)
実施例6において、所定のイベントEVT_6は先行車との接近であり、接近イベントEVT_6が発生すると路面に第6パターンPTN_6が描画される。
図9(a)~(d)は、実施例6に係る第6パターン(接近警告パターン)PTN_6の描画を説明する図である。
図9(a)~(c)には、接近シーンが時系列で示される。実際には車両906および先行車907は走行しているが、ここでは説明の簡潔化のため、先行車907を同じ位置に示す。
【0103】
図9(a)において車両906の前方には、先行車907が走行しているが、それらの距離は十分に長い。
図9(b)において、先行車907と自車906の車間距離が所定値より短くなると、第6パターンPTN_6が描画される。これにより自車906の運転者に警告を与えることができる。第6パターンPTN_6は点滅させるとよい。接近イベントEVT_6の発生の判定条件は、車間距離が所定値以下であり、かつ自車と先行車の速度差が所定値以上であってもよい。
【0104】
第6パターンPTN6は、車間距離に応じて変化してもよく、
図9(c)に示すようにさらに車間距離が短くなると、第6パターンPTN6を点滅させてもよい。これにより、自車906の運転者に、より強い警告を与えることができる。
【0105】
図9(d)に示すように、自車906が減速するなどして、車間距離が所定値より大きくなると、接近イベントEVT_6の終了と判定され、第6パターンPTN_6が消灯する。
【0106】
(実施例7)
実施例7において、所定のイベントEVT_7は最低法定速度からの逸脱であり、速度逸脱イベントEVT_7が発生すると路面に第7パターンPTN_7が描画される。
図10(a)~(c)は、実施例7に係る第7パターン(車速逸脱警告パターン)PTN_7の描画を説明する図である。
図10(a)~(c)には、車速逸脱シーンが時系列で示される。
【0107】
法定最低速度が80km/hであるとする。
図10(a)において車両906は、時速80km/hで走行しており、第7パターンPTN_7は消灯している。
【0108】
図10(b)において、自車906の車速が60km/h以下に低下している。法定最低速度の乖離が、所定の許容値(たとえば20km)を超えると、第7パターンPTN_7が描画される。これにより、自車の減速に気がつかない運転者に、警告を与えることができる。第7パターンPTN_7には、加速を促すような形状やアニメーションを持たせるとよい。第7パターンPTN_7は、上り坂を示す図形を含み、間接的に加速を促してもよい。
【0109】
図10(c)において車両906の車速と法定最低速度との乖離が、許容値より小さくなると、第7パターンPTN_7が消灯する。この例では、法定最低速度との乖離を例としたが、法定最高速度(制限速度)からの超過についても同じ処理を行ってもよい。この場合、第7パターンPTN_7には、減速を促すような形状やアニメーションを持たせるとよい。
【0110】
(実施例8)
配光可変ランプ110を利用して、雨天や降雪時などの悪天候時に、白線や路肩を強調照射することができる。
図11は、悪天候時のパターンPTN_8の照射を説明する図である。これにより視認性を向上できる。
【0111】
続いて灯具システム100の実装例を説明する。
図12(a)、(b)は、灯具システム100の実装例を示す図である。
図12(a)では、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とともにヘッドランプ300Aに内蔵されている。
【0112】
図12(b)では、配光可変ランプ110は、ヘッドランプ230とは独立した灯具300Bに内蔵されている。この灯具300Bは、車両200前方のたとえばバンパー240に取り付けられる。
【0113】
図13(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。配光可変ランプ110は、DMD112とそのドライバ114、投影レンズ116を含む。
図13(a)では、配光可変ランプ110の配光パターンは、灯具300A(300B)の外部の車両側のECU250によって生成される。したがってこの例では、
図1の配光コントローラ130の機能は、ECU250に実装される。
【0114】
図13(b)では、灯具300A(300B)に灯具ECU310が設けられ、灯具ECU310に配光コントローラ130の機能が実装される。灯具ECU310は、ECU220と連携して、配光可変ランプ110を制御する。
【0115】
第1の態様に関連する変形例を説明する。
【0116】
(変形例1)
図14(a)~(f)は、パターンPTN_#の変形例を示す図である。
図14(a)に示すように、パターンPTN_#を構成する複数の図形は矩形に限定されず、矢印や三角形、円形など、その他の形状であってもよい。
図14(b)に示すように、パターンPTN_#はハの字であってもよいし、
図14(c)に示すように逆ハの字であってもよい。
図14(d)に示すように、パターンPTN_#は台形であってもよい。
図14(e)や(f)に示すように、パターンPTN_#は長さの異なる複数の図形の組み合わせであってもよい。
【0117】
(変形例2)
配光可変ランプ110は、パターンPTN_#をアニメーション表示してもよい。
図15(a)~(d)は、パターンPTN_#のアニメーション表示を説明する図である。
図15(a)に示すように、パターンPTN_#を点滅表示してもよい。
図15(b)に示すように、パターンPTN_#を構成する図形を、時間ともに伸張(あるいは圧縮)させてもよい。
図15(c)に示すようにパターンPTN_#を構成する図形をシーケンシャル点灯させてもよい。
図15(d)に示すようにパターンPTN_#を構成する図形を水平エスカレータのように移動させてもよい。
【0118】
(変形例3)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200Aあるいは灯具300Bそれぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを異ならしめてもよい。たとえば一方の配光可変ランプ110によって、
図1の照射エリア904の半分を照射し、他方の配光可変ランプ110によって、
図1の照射エリア904の半分を照射してもよい。
【0119】
(変形例4)
実施の形態1では、配光可変ランプ110が、ロービーム102およびハイビーム104に対する付加的な光源であったが、ロービーム102およびハイビーム104の少なくとも一方の機能を、配光可変ランプ110に統合してもよい。
【0120】
(第2の態様)
図16は、実施の形態2に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ110、カメラ120、配光コントローラ130、ロービーム210、ハイビーム220を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0121】
本実施の形態において、配光可変ランプ110は、ロービーム210およびハイビーム220とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0122】
配光可変ランプ110は白色光源を含み、配光コントローラ130から配光パターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布を有するビームBMを出射し、車両前方に照度分布(照射パターン)を形成する。配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0123】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも歩行者の顔(頭部)および路面をカバーするように定められる。したがって本実施の形態では、配光可変ランプ110による照射エリアは、ハイビームの照射エリアの一部およびロービームの照射エリアの一部とオーバーラップする。
【0124】
カメラ120は、車両前方を撮像する。配光コントローラ130は、カメラ120が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110に供給する配光パターンPTNを動的、適応的に制御する。配光パターンPTNは、配光可変ランプ110が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する白色光の照射パターン902の2次元の照度分布を規定する。配光コントローラ130はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0125】
ハイビーム220は、配光可変ランプ110と同様に、配光可変であってもよい。この場合、配光コントローラ130は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム220の配光を制御してもよい。ECU(Electronic Control Unit)140は、灯具システム100を統括的に制御する。具体的には、ロービーム210、ハイビーム220、配光可変ランプ110のオン、オフなどの指令を発生する。また配光制御に必要な情報を配光コントローラ130に送信する。
【0126】
配光コントローラ130は、カメラ画像IMGを処理することにより、歩行者を検出する。そして配光コントローラ130は、ビームBMの歩行者の顔に照射される一部分の強度を一時的に変化させる。本明細書において、これをパーソナルパッシングと称する。
【0127】
また配光コントローラ130は、歩行者が検出されると、路面に所定のパターンを描画してもよい。パターンは、灯具システムを搭載する車両から歩行者に向かって伸びてもよい。この路面へのパターンの描画は、所定の条件を満たすときにのみ有効とする。
【0128】
たとえば、所定の条件のパラメータとして車速を考慮してもよい。すなわち車速があるしきい値(たとえば時速30km/h)より高いときには、衝突したときの危険性が高いため、より強い注意喚起を促す意味で、路面描画を追加する。
【0129】
あるいは、所定の条件のパラメータとして自車と歩行者との距離を考慮してもよい。すなわち距離があるしきい値より短いときには、衝突したときの危険性が高いため、より強い注意喚起を促す意味で、路面描画を追加する。
【0130】
あるいは、所定の条件は、自車を起点とする所定の範囲に、歩行者が含まれるか否かであってもよい。
【0131】
所定の条件は、これらを複合的に考慮して定めてもよい。
【0132】
すなわち、路面描画は、ある基準で危険度を評価したときに、その危険度が相対的に高い状態において有効とし、相対的に低いときに無効とされる。
【0133】
以上が灯具システム100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図17は、
図16の灯具システム100によるパーソナルパッシングを説明する図である。
図17の走行シーンでは、先行車3および歩行者4が存在する。またロービームで走行しており、ロービームによってカットオフラインより下側の領域LBが照射されている。
【0134】
破線10は、配光可変ランプ110のビームBMの照射可能なエリアを示す。この場合に、配光コントローラ130は、歩行者4を検出すると、その頭部(顔)を含む部分12を、一時的に照射する。このシーンでは、その他の部分は照射しない。一時的な照射は繰り返し行ってもよい。
【0135】
パーソナルパッシングにより、歩行者4の顔の部分12のみにパッシングを与えることができ、歩行者4に自車の存在を気づかせることができ、ひいては回避行動を促すことができる。また自車の運転者に対しても、自車前方の局所的な一部分12が点滅するため、注意を引くことになり、歩行者6の存在を気づかせることができる。
【0136】
パーソナルパッシング用のビームの点滅の周期を、走行シーンに応じて動的に変化させてもよい。
【0137】
配光コントローラ130は、顔の部分12の照度が一定に近づくように、ビームの強度を調整してもよい。すなわち、歩行者までの距離が近いほど、ビームの強度を低下させ、遠いほどビームの強度を増大させてもよい。これにより、より遠方の歩行者に自車の存在を気づかせることができ、また歩行者との距離が近いときに与えるグレアを低減できる。
【0138】
図18は、
図16の灯具システム100による路面描画を説明する図である。上述の所定条件を満たす場合、配光可変ランプ110によって所定のパターン14が路面に描画される。この例においてパターン14は、自車から歩行者4に向かって伸びる方向に並べられた複数のバーである。パターン14の形状は特に限定されず、歩行者4に向かう矢印であってもよいし、その他の形状であってもよい。パターン14は、エスカレータのように路面上を移動してもよい。またパターン14は、顔の部分12と同様に点滅させてもよい。
【0139】
路面描画を追加することにより、歩行者4が地面を見て歩行している場合に、路面に描画されたパターン14を見ることで、車両2の存在を気づかせることができる。またパターン14の方向性によって、車両2が存在する方向を直感的に知覚させることができる。
【0140】
図19(a)~(d)は、
図16の灯具システム100の動作を時系列で説明する図である。
図19(a)では自車2の前方には、歩行者は存在せず、通常のロービームLB(あるいはハイビーム)のみで走行している。
図19(b)では、車両前方に歩行者4が検出される。歩行者4を検出すると、
図19(c)に示すように歩行者4の顔の部分12に対して、点滅するビームBMが照射される。
図19(d)に示すように、歩行者4が止まらずに、対向車線に存在し続ける場合、パターン14が追加的に路面に描画される。これにより歩行者4にさらなる注意喚起を与えることができる。
【0141】
図20は、別の走行シーンにおけるパーソナルパッシングを説明する図である。
図20の走行シーンでは、ABD機能付きのハイビームで走行している。ADBハイビームHBは、歩行者4および先行車3の部分がマスクされて照射される。配光可変ランプ110のビームBMは、歩行者4の顔の部分12に点滅照射される。
【0142】
図21は、別の走行シーンにおけるパーソナルパッシングを説明する図である。このシーンでは、複数の歩行者4A~4Dが検出される。すべての歩行者4A~4Dに対してパーソナルパッシングを行うと、却って運転者を混乱させるおそれがある。そこで配光コントローラ130は、最も危険と判定される所定人数(この例では2人)の歩行者4B,4Cをパーソナルパッシングの対象とし、歩行者4B,4Cの顔の部分12B,12Cを点滅照射する。
【0143】
続いて灯具システム100の実装例を説明する。
図22(a)、(b)は、灯具システム100の実装例を示す図である。
図22(a)では、配光可変ランプ110は、ロービーム210およびハイビーム220とともにヘッドランプ200に内蔵されている。
【0144】
図22(b)では、配光可変ランプ110は、ヘッドランプ200とは独立した灯具300に内蔵されている。この灯具300は、車両前方のたとえばバンパー302に取り付けられる。
【0145】
図23(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
図23(a)では、カメラ120は、灯具200(あるいは300)の外部に設けられており、配光可変ランプ110の配光パターンは、灯具200の外部の車両側のECU310によって生成される。したがってこの例では、
図16の配光コントローラ130の機能は、ECU310に実装され、ECU310は、カメラの画像や車両情報(車速やステアリング角)、測距情報等にもとづいて、配光可変ランプ110のビームBMを制御する。配光可変ランプ110は、DMD112とそのドライバ114、投影レンズ116を含む。
【0146】
図23(b)では、カメラ120は灯具200に内蔵され、灯具側のECUに、配光コントローラ130の機能が実装される。
【0147】
(変形例5)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200あるいは灯具300それぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを実質的に同一とし、2つのビームを重ね合わせてもよい。
【0148】
(変形例6)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200あるいは灯具300それぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを異ならしめてもよい。たとえば一方の配光可変ランプ110によって、
図17の照射エリア10の上側の領域を照射し、他方の配光可変ランプ110によって、
図17の照射エリア10の下側の領域を照射してもよい。
【0149】
(変形例7)
実施の形態2で説明したのとは反対に、車速が所定のしきい値(たとえば30km/h)より小さいことを条件として、路面描画を行ってもよい。この場合、歩行者に対して、長い時間、路面描画によって情報を提示でき、路面描画した文字やパターンの内容を歩行者が認識しやすくなる。
【0150】
(変形例8)
実施の形態2では、配光可変ランプ110が、ロービーム210およびハイビーム220に対する付加的な光源であったが、ロービーム210およびハイビーム220の少なくとも一方の機能を、配光可変ランプ110に統合してもよい。
【0151】
(第3の態様)
(実施の形態3-1)
図26は、実施の形態3-1に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、第1配光可変ランプ110および第2配光可変ランプ120を備える。第1配光可変ランプ110は、車両200の左前方に設けられ、強度分布が可変である第1ビームBMlを路面に照射して第1パターンPTNlを描画する。第2配光可変ランプ120は、車両の右前方に設けられ、強度分布が可変である第2ビームBMrを路面に照射して第2パターンPTNrを描画する。その限りでないが、たとえば第1配光可変ランプ110、第2配光可変ランプ120は、左ヘッドランプ202、右ヘッドランプ204に内蔵される。
【0152】
第1パターンPTNlおよび第2パターンPTNrは、路面上で互いに重ね合わさる第1図形Flおよび第2図形Frを含む。
図26の例では、2つの図形Fl,Frは矢印である。基準状態で路面に描画される第1図形Flと第2図形Frには、意図的な差異が導入されている。「基準状態」とは、設計段階において想定する最も典型的な状態であり、たとえば車両のピッチング角がゼロであり、路面が完全にフラットな状態である
図24の理想状態であってもよい。
【0153】
図26の例では、第1図形Flと第2図形Frの一方(Fl)は、他方(Fr)に対してインセットしている。言い換えれば第2図形Frは、第1図形Flに対してアウトセットしている。
【0154】
以上が灯具システム100の構成である。続いてその動作を、いくつかの走行シーンを例として説明する。
【0155】
図27は、運転席から見た視野の一例を示す図である。自車(不図示)前方の路面には、灯具システム100によって矢印のパターンPTNが描画される。たとえばこの矢印は、カーナビゲーションシステムと連動した図形であり、自車が直進(あるいはレーンキープ)すべき状態であることを示す。このパターンPTNは、左右の配光可変ランプ110,120が生成するビームの重ね合わせによって描画される。
【0156】
図28(a)、(b)は、灯具システム100による基準状態におけるパターンPTNの描画を説明する図である。ここでは図形を矩形に簡略化する。
図28(a)は、路面900を横から見た図であり、
図28(b)は路面900を上から見た図である。
【0157】
路面には、第1図形Flと第2図形Frが重ね併せて表示される。2つの図形の輪郭の距離dは十分に離れている。距離dをインセット量(あるいはアウトセット量)と称する。インセット量d1~d4は、図形のすべての辺において等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0158】
図29(a)、(b)は、灯具システム100による現実状態におけるパターンPTNの描画を説明する図である。
図29(a)は、路面900を横から見た図であり、
図29(b)は路面900を上から見た図である。現実状態では、路面900’が基準状態のそれ900に比べて傾いている。この傾きによって、
図29(b)の図形Fl’,Fr’は、
図29の図形Fl,Frに対して変形している。この変形によって、左側の辺のインセット量d
1’、d
3’は、もとの
図29におけるインセット量d
1、d
3から変化する。しかしながらインセット量の変化量Δdは、もとものとインセット量dに対して十分に小さい。したがって現実状態においても、図形Fl’,Fr’の輪郭は十分に離れており、
図25のような2重輪郭およびにじみの問題が解決される。
【0159】
言い換えれば、基準状態におけるインセット量dは、現実状態におけるインセット量d’が十分に確保できる程度に定めればよい。路面の左右方向の傾斜よりも、車両のピッチングの方が影響が大きいことに鑑みて、前後方向(y方向)のインセット量d2,d4(あるいはオフセット量)は、水平方向(x方向)のインセット量d1,d3(あるいはオフセット量)より大きいことが好ましい。たとえば水平方向のインセット量d2,d4(オフセット量)を5cm~50cm、前後方向のそれd1,d3を10cm~3m程度としてもよい。
【0160】
またピッチング角が変化した場合、y方向に像の歪みが生じ、インセット量d2,d4が変化するが、図形Fl,Fr’の輪郭は十分に離れているため、2重輪郭およびにじみの問題が解決される。
【0161】
パターンPTNには、複数の図形が含まれてもよい。
図30(a)、(b)は、複数の図形を含むパターンPTNを説明する図である。
図30(a)においてパターンPTNは、複数の文字(数字)を表す図形F
1,F
2を含む。図形F
1は数字の4であり、図形F
2は数字の0である。第1パターンPTNlは、図形Fl
1,Fl
2を含み、第2パターンPTNrは、図形Fr
1,Fr
2を含む。図形Fl
1は、図形Fr
1に対してインセットしており、図形Fl
2は、図形Fr
2に対してインセットしている。
【0162】
図30(b)においてパターンPTNは、複数の図形F
1~F
3を含む。図形F
1~F
3は矩形である。第1パターンPTNlは、図形Fl
1~Fl
3を含み、第2パターンPTNrは、図形Fr
1~Fr
3を含む。図形Fl
#(#=1,2,3)は、対応する図形Fr
#に対してインセットしている。
【0163】
(実施の形態3-2)
実施の形態3-1では、左右のビームにより描画されるパターンに含まれる図形Fl,Frは、それらの形状(大きさ)が異なっていたが、その限りでない。実施の形態3-2では、左右のビームが形成する図形Fl,Frの明るさを異ならしめる。最も簡易には、第1ビームBMlと第2ビームBMrの強度が異なっていてもよい。これにより灯具の構成を簡素化できる。
【0164】
図31(a)、(b)は、実施の形態3-2に係る基準状態におけるパターンの描画を説明する図である。
図31(a)は、パターンを上から見た平面図を、
図31(b)は照度分布(輝度分布)を示しており、上から順に、Fl,Fr,FlとFrの重ね合わせを表す。ここでは簡単のために図形Fl,Frを矩形で示し、それらのサイズは実質的に同一である。
【0165】
図31(a)に示すように、基準状態では、図形Fl,Frの輪郭は一致している。また
図31(b)の1段目、2段目に示すように、左ビームが描画する図形Flの照度は、右ビームが描画する図形Frの照度より高くなっている。
図31(b)の最下段に示すように、2つのビームを重ね合わせることにより、照度が高められている。
【0166】
図32(a)、(b)は、実施の形態3-2に係る現実状態におけるパターンの描画を説明する図である。
図32(a)は、パターンを上から見た平面図を示す。
図32(b)は照度分布(輝度分布)を示しており、上から順に、Fl,Fr,FlとFrの重ね合わせを表す。
【0167】
図32(a)に示すように、現実状態では、路面の傾きや車体のピッチングにより、左右のビームの図形Fl,Frが変形する。2つのビームの重ね合わせによる照度分布は、
図31(b)の最下段に示される。
【0168】
2つの図形Fl,Frの輪郭のずれにより、2つの境界B1,B2が発生する。もし、2つのビームの照度が等しければ、外側の輪郭と内側の輪郭における照度の差が実質的に等しくなるため、人間の目には、2つの境界B1,B2が同等に認識され、2重輪郭として把握される。
【0169】
実施の形態3-2では、2つの図形の明るさが異なっており、内側の境界B1における照度の差(あるいはコントラスト比)が高いため、境界B1が強調される。したがって、人間の目には、境界B2はあまり認識されなくなり、2重輪郭の問題を解決できる。
【0170】
続いて灯具システム100の実装例を説明する。
図33(a)、(b)は、灯具システム100の実装例を示す図である。
図33(a)では、配光可変ランプ110(120)は、ロービーム210およびハイビーム220とともにヘッドランプ202(204)に内蔵されている。
【0171】
図33(b)では、配光可変ランプ110(120)は、ヘッドランプ202(204)とは独立した灯具230(232)に内蔵されている。この灯具230(232)は、車両前方のたとえばバンパー240に取り付けられる。
【0172】
図34(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
図34(a)の灯具システム100Aでは、配光可変ランプ110(120)の配光パターンは、灯具300の外部の車両側のECU310によって生成される。ECU310は、カメラの画像や車両情報(車速やステアリング角)、測距情報等にもとづいて、配光可変ランプ110のビームBMを制御し、路面にパターンを描画する。配光可変ランプ110は、DMD(Digital Micromirror Device)112とそのドライバ114、投影レンズ116を含む。
【0173】
図34(b)の灯具システム100Bでは、灯具側にECU302が設けられ、このECU302が、カメラの画像や車両情報(車速やステアリング角)、測距情報等にもとづいて、配光可変ランプ110のビームBMを制御し、路面にパターンを描画する。
【0174】
第3の態様に関連する変形例を説明する。
【0175】
実施の形態3-1や3-2では、配光可変ランプ110が、ロービーム210およびハイビーム220に対する付加的な光源であったが、ロービーム210およびハイビーム220の少なくとも一方の機能を、配光可変ランプ110に統合してもよい。
【0176】
実施の形態3-1では、左右のビームが描画する2つの図形の大きさが異なっており、実施の形態3-2では、2つの図形の明るさが異なっていたが、それらを組み合わせてもよい。
【0177】
一方のビームが描画する第1図形Flと他方のビームが描画する第2図形Frに導入される差異は、大きさ、明るさに限定されず、その他の相違が導入されてもよい。たとえば、第1図形Flと第2図形Frは、大きさや明るさが同一で、照射位置が意図的にシフトされていてもよく、x方向(車体横方向)およびy方向(車両前後方向)に、オフセットしていてもよい。この場合のオフセットは、実施の形態3-1におけるインセットと同様に考えることができ、2重輪郭を抑制できる。
【0178】
(第4の態様)
図35は、実施の形態4に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ110、カメラ120、センサ122、配光コントローラ130、ロービーム210、ハイビーム220を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0179】
本実施の形態において、配光可変ランプ110は、ロービーム210およびハイビーム220とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0180】
配光可変ランプ110は白色光源を含み、配光コントローラ130から配光パターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布を有するビームBMを出射し、車両前方に制御信号SCTRLに応じた照度分布(照射パターン)を形成する。配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0181】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも路面をカバーするように定められる。したがって本実施の形態では、配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービームの照射エリアの一部とオーバーラップする。
【0182】
カメラ120は、車両前方を撮像する。配光コントローラ130は、カメラ120が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110に供給する配光パターンPTNを動的、適応的に制御する。配光パターンPTNは、配光可変ランプ110が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する白色光の照射パターン902の2次元の照度分布を規定する。配光コントローラ130はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0183】
より詳しくは、配光コントローラ130は、灯具システム100を搭載する車両の走行時において、配光可変ランプ110を制御し、ビームBMによって路面に運転の支援のための図形を描画する。図形の種類は特に限定されないが、たとえば、法定速度、道路標識などを、運転者が見やすいように描画してもよい。あるいは、他の車両の運転を支援するために、自車の進行方向を示す図形を描画してもよい。
【0184】
ハイビーム220は、配光可変ランプ110と同様に配光可変であってもよい。この場合、配光コントローラ130は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム220の配光を制御してもよい。ECU(Electronic Control Unit)140は、灯具システム100を統括的に制御する。具体的には、ロービーム210、ハイビーム220、配光可変ランプ110のオン、オフなどの指令を発生する。また配光制御に必要な情報を配光コントローラ130に送信する。
【0185】
配光コントローラ130は、車両の駐車中に、所定の条件を満たす人物が当該車両に近接すると、配光可変ランプ110を制御して、ビームBMによって地面に所定のパターンを描画する。
【0186】
センサ122は、所定条件を満たす人物の近接を検出するために設けられる。したがってセンサ122は、所定条件に応じて設計、選択すればよい。たとえば所定条件が、車のキーあるいはスマートフォンなどを所有している人物の近接である場合には、センサ122は、キーやスマートフォンと通信可能な、あるいはそれらが発する無線信号を受信可能なデバイスを選択すればよい。
【0187】
所定パターンは、車両に関連するロゴ、たとえば自動車メーカのロゴや商標、車両自体の車種名や商標であってもよい。あるいは、「Hello」などの文字列であってもよいし、模様などであってもよい。
【0188】
以上が灯具システム100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図36(a)、(b)は、
図35の灯具システム100の動作を説明する図である。
図36(a)は、通常の走行時の動作を示す。灯具システム100は、それを搭載する自車2の前方の路面3であって、運転者4から視認可能な箇所に、運転支援のための図形5を描画する。この例では、法定速度(40km/h)が描画されている。
【0189】
図36(b)は、
図35の灯具システム100の駐車時における動作を説明する図である。駐車時に、所定の条件を満たす人物6が近接すると、地面7に、所定のパターン8が描画される。人物6は自車2の運転者あるいは同乗者である。
図36(b)の例では、所定のパターン8は、文字列”Hello”である。文字列は、時間帯に応じて、"Good Morning"や"Good Evening"などのように変化してもよい。
【0190】
所定のパターンは、車両のドアの開錠とともに、あるいはドアオープンあるいはドアクローズ、人物6が車両2に対して所定距離以下まで近接したこと、のいずれかを条件として消滅してもよい。
【0191】
駐車時における描画は、運転席から視認可能である必要はなく、むしろ自車2に近い方が好ましい。パターン8が自車2に近ければ、パターン8は、自車2の位置を表すことになり、したがって人物6がパターン8を視認することにより自車2の位置を知ることができるからである。
【0192】
図37(a)~(c)は、
図35の灯具システム100の駐車時の動作を説明する図である。
図37(a)は、自車2が駐車されており、人物(運転者あるいは同乗者)6が不在の状態を示す。その後、
図37(b)に示すように、人物6が戻ってくると、自車2の前方の地面にパターン8が描画される。
【0193】
多くの駐車場において、駐車マスは、車両の横方向に並べられている。そして通路を挟んで対面して、別の駐車マスが存在する。そしてその通路の幅は、5m~8m程度である。そこでパターン8は、車両の前方のたとえば1~6mの範囲(たとえば車両のバンパーの前縁から4m先)に照射するとよい。これにより、通路にパターンが照射することができ、人物6が遠くから認識しやすくなる。
【0194】
そして
図37(c)に示すように、人物6が開錠して自車2に搭乗すると、パターン8は消滅する。
【0195】
以上が灯具システム100の動作である。
【0196】
駐車場において、運転者(あるいは同乗者)が自車を見失うことはしばしば起こる。従来では運転者がリモコンキーを押して、自車2のランプを点灯させることにより、自車を探索することが行われていた。しかしながらこれは、運転者が自車2の位置を把握していないにもかかわらず、自車2が開錠されることとなるため、セキュリティ上、正しい方法とは言えない。
【0197】
本実施の形態に係る灯具システム100では、人物6はボタンを押したりすることなく、自動的に地面にパターンが描画されるため、従来よりも「おもてなし感」を演出することができる。
【0198】
加えて路面描画に際して自車2のドアは開錠されないため、セキュリティの観点からも優れている。
【0199】
またパターン8を描画するための光源が、通常走行時に路面描画するための光源を兼ねているため、ハードウェアのコストアップも抑制される。
【0200】
続いて灯具システム100の実装例を説明する。
図38(a)、(b)は、灯具システム100の実装例を示す図である。
図38(a)では、配光可変ランプ110は、ロービーム210およびハイビーム220とともにヘッドランプ200に内蔵されている。
【0201】
図38(b)では、配光可変ランプ110は、ヘッドランプ200とは独立した灯具300に内蔵されている。この灯具300は、車両前方のたとえばバンパー302に取り付けられる。
【0202】
図39(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。
図39(a)では、カメラ120は、灯具200(あるいは300)の外部に設けられており、配光可変ランプ110の配光パターンは、灯具200の外部の車両側のECU310によって生成される。したがってこの例では、
図35の配光コントローラ130の機能は、ECU310に実装され、ECU310は、カメラの画像や車両情報(車速やステアリング角)、測距情報等にもとづいて、配光可変ランプ110のビームBMを制御する。配光可変ランプ110は、DMD112とそのドライバ114、投影レンズ116を含む。
【0203】
図39(b)では、カメラ120は灯具200に内蔵され、灯具側のECUに、配光コントローラ130の機能が実装される。
【0204】
第4の態様に関連する変形例を説明する。
【0205】
(変形例9)
図36(b)の例では、パターン8として汎用的な文字列「Hello」を描画した。将来、この灯具システム100を搭載した自動車が普及すると、駐車場の地面のあちこちに同じ文字列が描画され、搭乗者6はかえって自分の車を見失うことになるかもしれない。そこで、パターン8として、自車2(あるいは搭乗者6)に固有の図形を描画してもよい。これにより、人物6は、あちこちに描画されるパターンから、自車が描画したパターンを区別できる。
【0206】
(変形例10)
実施の形態4では、所定の条件を満たす人物6が自車に近接すると、自動的に地面にパターン8が描画されたがその限りない。たとえばリモコンに、パターン8の描画のトリガを与えるためのボタンを追加し、このボタンの押下をトリガとして、灯具システム100はパターン8を描画してもよい(ドアは開錠されない)。この場合、パターン描画にボタンの押下という1アクションが必要となるため、おもてなし感は低下するが、開錠せずに自車の位置を知ることができるという利点は享受できる。
【0207】
(変形例11)
駐車時に路面に描画するパターンは、ユーザが指定可能としてもよい。たとえば文字列を自由に編集可能としてもよいし、ユーザが画像データを指定できるようにしてもよい。
【0208】
(変形例12)
配光コントローラ130は、駐車時において、所定の条件を満たす人物の方向を検出し、その人物の方向に、パターンを移動させてもよい。また、ロゴやテキストを描画する際に、その人物が読みやすい向きに、パターンを回転、変形させてもよい。これによりおもてなし感を一層高めることができる。
【0209】
(変形例13)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200あるいは灯具300それぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを実質的に同一とし、2つのビームを重ね合わせてもよい。
【0210】
(変形例14)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200あるいは灯具300それぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを異ならしめてもよい。たとえば一方の配光可変ランプ110によって、
図36の照射エリア10の上側の領域を照射し、他方の配光可変ランプ110によって、
図36の照射エリア10の下側の領域を照射してもよい。
【0211】
(変形例15)
実施の形態4では、配光可変ランプ110が、ロービーム210およびハイビーム220に対する付加的な光源であったが、ロービーム210およびハイビーム220の少なくとも一方の機能を、配光可変ランプ110に統合してもよい。
【0212】
(第5の態様)
図40は、実施の形態5に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ110、カメラ120、配光コントローラ130、ロービーム102、ハイビーム104を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0213】
本実施の形態において、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0214】
配光可変ランプ110は白色光源を含み、配光コントローラ130から路面900に描画すべきパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布902を有するビームBMを路面に車両前方の路面に900照射に照射し、パターンPTNを描画する。パターンPTNは、ビームBMの照射エリア904内に形成される。
【0215】
配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0216】
配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービームの照射エリアの一部とオーバーラップしてもよい。
【0217】
カメラ120は、車両前方を撮像する。配光コントローラ130は、カメラ120が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110が路面900に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。
【0218】
ハイビーム104は、配光可変ランプ110と同様に、配光可変であってもよい。この場合、配光コントローラ130は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム104の配光を制御してもよい。ECU(Electronic Control Unit)140は、灯具システム100を統括的に制御する。具体的には、ロービーム102、ハイビーム104、配光可変ランプ110のオン、オフなどの指令を発生する。また配光制御に必要な情報を配光コントローラ130に送信する。
【0219】
配光コントローラ130はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0220】
より詳しくは、配光コントローラ130は、灯具システム100を搭載する車両の走行時に、配光可変ランプ110を制御し、ビームBMによって路面に運転の支援のための図形を描画する。図形の種類は特に限定されないが、たとえば、法定速度、道路標識などを、運転者が見やすいように描画してもよい。あるいは、他の車両の運転を支援するために、自車の進行方向を示す図形を描画してもよい。
【0221】
図41は、配光可変ランプ110が路面900に描画するパターンPTNの一例(PTN_A)を示す図である。パターンPTNの種類や形態は、走行シーンに応じてさまざまである。
図41は走行中の1シーンを示しており、路面900に描画されるパターンPTN_Aは、制限速度を示す図形(文字)であってもよい。あるいはパターンPTNはカーナビゲーションシステムと連動した情報を示す図形や文字であってもよい。パターンPTNは、灯具システム100を搭載する車両906の運転者908が見やすい位置に、適切な大きさで描画される。
【0222】
灯具システム100が描画可能なパターンのうち、実施の形態5に係る灯具システム100に特徴的なパターンPTN_Bを説明する。
【0223】
図42は、灯具システム100が路面に描画するパターン(接近通知パターン)PTN_Bを示す図である。路面900には配光可変ランプ110に加えてロービームも照射されうる。配光可変ランプ110は、車両906の前方の路面900にロービームBMLより明るい照度で、進行方向(x軸方向)が長手である所定範囲912(x
1~x
2、y
1~y
2)わたるパターンPTN_Bを照射する。x軸の原点を車両の前縁にとるとき、x
1=2~10m、x
2=30~60mとしてもよい。一実施例においてx
1=7m、x
2=45mである。最も簡易にはパターンPTN_Bは均一な照射パターンであってもよいが、後述するようにその限りでない。パターンPTN_Bは、車両906が前方の歩行者(交通参加者)910に近づいてから追い抜くまでの間、歩行者910の周囲の路面をある程度の長い時間にわたり照射する。
【0224】
以上が灯具システム100の基本構成である。この灯具システム100によると、自動車が交通参加者(歩行者や自転車)を追い越すのに先行して、路面に描画されたパターンPTN_Bが交通参加者の横を通過する。このパターンPTN_Bはロービームより明るいため、車両前方の交通参加者に、自動車の後方接近を知らせることができる。交通参加者は、配光可変ランプ110が出射するビームBMを直接見るのではなく、路面で反射したビーム(すなわち描画されたパターンPTN_B)を見るため、グレアを与えないという利点もある。
【0225】
本発明は、
図40や
図42、それに関連する説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0226】
続いて、パターンPTN_Bの具体例を説明する。
【0227】
図43は、パターンPTN_Bの一例を上から示す図である。
図43には、パターンPTN_Bのアニメーションの様子が示される。なお実際には車両906は走行しているが、ここでは説明の簡潔化のため、車両906を同じ位置に示す。パターンPTN_Bは、破線で示す所定範囲912内に描画される。この所定範囲912は、
図40の照射エリア904の内側の一部分でありうる。
【0228】
パターンPTN_Bは進行方向(x軸方向)に並べられた複数(N個、この例ではN=4)の図形Fi~Fi+N-1を含む。この例では、図形Fi~Fi+N-1は、すべて同型であり、車幅方向(y方向)に長いバー(矩形)であり、複数の図形によりストライプ状の模様が形成される。
【0229】
各図形(バー)のx方向の長さΔxは、2~5m程度とするのがよい。また隣接する図形の間隔dは、2m~5m程度とするのがよい。また複数の図形の横幅Δyは、車両と実質的に同一かそれより広くてもよく、1.5m~2.5m程度が好適である。
【0230】
複数の図形を進行方向に並べることで、車両が走行するときに、複数の図形が次々と交通参加者の横を通り過ぎていくこととなる。このとき交通参加者の周囲の路面は、明、暗、明、暗…と交互に照らされるため、均一なパターンを照射する場合に比べてより注意喚起できる。
【0231】
パターンPTN_Bは、前数の図形Fi~Fi+N-1が同じ速度で車両から遠ざかる方向にスライドするアニメーションである。このアニメーションは、水平型エスカレータと似ている。
【0232】
各図形Fj(i≦j≦i+n-1)は、所定範囲912内でのみ描画される。したがって先頭の図形(この例ではF1)が所定範囲912の前縁E1に達すると、一部が欠け、やがて所定範囲912から消失する。また所定範囲912の後縁E2からは、新たな図形(この例ではF5)が発生し、前縁E1に向かってスライドする。
【0233】
このアニメーションによって、交通参加者に、後方から自動車が接近していることを直感的に提示ことができる。
【0234】
パターンは、複数の図形が同じ速度で車両から遠ざかる方向にスライドするアニメーションであってもよい。これにより、交通参加者に、後方から自動車が接近していることを直感的に示すことができる。
【0235】
複数の図形の車両に対する相対速度は、10km/h~165km/hであってもよい。これにより、交通参加者の被認識性能を向上させることができる。
【0236】
複数の図形の移動速度は、車両前方の交通参加者との距離に応じて変化してもよい。これにより交通参加者は、アニメーションの速度にもとづいて、車両までの距離を知ることができ、ひいては追い抜かれるタイミングを知ることができる。また距離が短いほどアニメーションの速度を高めることで、適切な行動対処をより強く促すことができる。
【0237】
パターンPTN_Bは、周囲に後方接近を近接すべき交通参加者が存在する状況において照射すればよく、存在しないときは消灯することとしてもよい。そこでパターンPTN_Bは、車速が所定値以下のときに描画されてもよい。
【0238】
たとえば幹線道路や高速道路を走行中は、パターンPTN_Bを提示すべき交通参加者が存在しない可能性が高く、所定値を時速20km/h~40km/hの範囲で定めると、好適である。
【0239】
また、道幅が広い道路を走行中は、交通参加者とのクリアランスが十分にとれるため、後方接近を知らせる必要がないといえる。そこでパターンPTN_Bは、車両が通行する道の幅が所定幅より狭いときに描画されてもよい。たとえば所定幅は4mである。
【0240】
あるいはカメラなどによって車両前方の歩行者や自転車などを検出すると、パターンPTN_Bを描画することとしてもよい。
【0241】
続いて灯具システム100の実装例を説明する。
図44(a)、(b)は、灯具システム100の実装例を示す図である。
図44(a)では、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とともにヘッドランプ300Aに内蔵されている。
【0242】
図44(b)では、配光可変ランプ110は、ヘッドランプ230とは独立した灯具300Bに内蔵されている。この灯具300Bは、車両200前方のたとえばバンパー240に取り付けられる。
【0243】
図45(a)、(b)は、灯具システムの制御系の実装例を示す図である。配光可変ランプ110は、DMD112とそのドライバ114、投影レンズ116を含む。
図45(a)では、配光可変ランプ110の配光パターンは、灯具300A(300B)の外部の車両側のECU250によって生成される。したがってこの例では、
図40の配光コントローラ130の機能は、ECU250に実装される。
【0244】
図45(b)では、灯具300A(300B)に灯具ECU310が設けられ、灯具ECU310に配光コントローラ130の機能が実装される。灯具ECU310は、ECU220と連携して、配光可変ランプ110を制御する。
【0245】
第5の態様に関連する変形例を以下に説明する。
【0246】
(変形例16)
図46(a)~(c)は、変形例に係るパターンPTN_Bを示す図である。
図46(a)に示すように、パターンPTN_Bを構成する複数の図形は矩形に限定されず、矢印や三角形、円形など、その他の形状であってもよい。また
図46(b)に示すように、パターンPTN_Bを構成する複数の図形の大きさはすべて同一である必要はない。さらに
図46(c)に示すように、パターンPTN_Bを構成する複数の図形は形状が異なっていてもよい。
【0247】
(変形例17)
図47は、変形例に係るパターンPTN_Cを示す図である。パターンPTN_Cは、車幅を示す2本のライン914L,914Rを含む。歩行者910は、自分に近いライン914Lから離れる退避行動を取ることで、車両100との接触を避けることが可能となる。
【0248】
2台の車両がすれ違うような場合において、各車両がそれぞれ、
図47のようなパターンを描画すると、どのパターンが、どの車両によって描画されたものであるか区別が付きにくくなる。この問題は、以下の変形例により解決できる。
【0249】
図48(a)~(c)は、変形例に係るパターンPTN_Dを示す図である。
図48(a)~(c)のパターンPTN_Dは、
図47のパターンPTN_Cにアニメーションを取り入れたものである。
図48(a)のパターンPTN_Dは、車幅を示す2本のラインの長さが、時間とともに進行方向に向かって伸びていく。これにより車両100の運転者、他の車両の運転者あるいは歩行者に、そのパターンPTNC_Dがどの車両によって描画されたものであるかを知らせることができる。
【0250】
図48(b)のパターンPTN_Dは、
図47のパターンPTN_Cに、時間とともに伸張するアニメーション図形916L,916Rを追加したものである。
図48(b)では、アニメーション図形916L,916Rは、ライン914L,914Rと隣接して配置され、時間とともに、その長さが進行方向に向かって伸びていく。アニメーション図形916L,916Rの長さが、ライン914L,914Rと同じ長さまで伸びると、その長さが初期値に戻り、再び時間とともに伸びていく。なおアニメーション図形916L,916Rの一方を省略し、他方のみを描画することとしてもよい。
【0251】
図48(c)のパターンPTN_Dは、
図47のパターンPTN_Cに、時間とともにスライドするアニメーション図形918L,918Rを追加したものである。
図48(c)では、アニメーション図形918L,918Rは、ライン914L,914Rと隣接して配置され、時間とともに、その位置が進行方向に向かって移動していく。アニメーション図形918L,918Rの位置が、ライン914L,914Rの先端まで到達すると、その位置が初期値に戻り、再び時間とともに移動し始める。
【0252】
(変形例18)
アニメーションは、スライドに限定されない。たとえば複数の図形を、手前から奥にシーケンシャル点灯してもよい。
【0253】
(変形例19)
また路面に描画するパターンを、点滅させてもよいし、周期的に点灯してもよい。
【0254】
(変形例20)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ300Aあるいは灯具300Bそれぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを実質的に同一とし、2つのビームを重ね合わせてもよい。
【0255】
(変形例21)
配光可変ランプ110は、左右のヘッドランプ200Aあるいは灯具300Bそれぞれに内蔵してもよい。この場合において、左右の配光可変ランプ110の照射エリアを異ならしめてもよい。たとえば一方の配光可変ランプ110によって、
図40の照射エリア904の半分を照射し、他方の配光可変ランプ110によって、
図40の照射エリア904の半分を照射してもよい。
【0256】
(変形例22)
実施の形態5では、配光可変ランプ110が、ロービーム102およびハイビーム104に対する付加的な光源であったが、ロービーム102およびハイビーム104の少なくとも一方の機能を、配光可変ランプ110に統合してもよい。
【0257】
(変形例23)
これまでの説明では、パターンPTNを歩行者を追い越す際に描画することとしたが、追い越す際のみでなく、歩行者とすれ違う際に描画してもよい。
【0258】
また接触の可能性が特に高い状況に限って、上述のパターンを路面に描画することとしてもよい。接触の可能性が特に高い状況とは、(i)歩行者がスマートホンなどの電子機器を操作している場合、(ii)交通事故の発生が多い道路で歩行者が検出された場合などが例示される。これらの状況は、車載のカメラにもとづいて検出してもよいし、信号機などの交通インフラからの情報にもとづいて検出してもよい。
【0259】
(変形例24)
実施の形態において、光可変ランプ110は、車両906の前方の路面900にロービームBMLより明るい照度でパターンを照射することとしたがその限りでなく、ロービームBMLより暗い照度でパターンを照射してもよい。
【0260】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0261】
本発明は、車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0262】
100…灯具システム、102…ロービーム、104…ハイビーム、110…配光可変ランプ、112…DMD、114…ドライバ、116…投影レンズ、120…カメラ、130…配光コントローラ、140…ECU、200…車両、200A…ヘッドランプ、220…ECU、230…ヘッドランプ、240…バンパー、250…ECU、300…灯具、300A…ヘッドランプ、300B…灯具、310…灯具ECU、900…路面、902…強度分布、904…照射エリア、906…車両、908…運転者。